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特開2025-29384溶接トーチ狙い位置設定方法、ウィービング方法及び溶接システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029384
(43)【公開日】2025-03-06
(54)【発明の名称】溶接トーチ狙い位置設定方法、ウィービング方法及び溶接システム
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/12 20060101AFI20250227BHJP
   B23K 9/127 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
B23K9/12 331Q
B23K9/127 501B
B23K9/12 350D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133990
(22)【出願日】2023-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】518112321
【氏名又は名称】コベルコROBOTiX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】永金 拓
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 博文
(72)【発明者】
【氏名】久保 光弘
(72)【発明者】
【氏名】戸田 忍
(72)【発明者】
【氏名】児玉 克
(57)【要約】
【課題】溶接ワイヤの曲がり癖に影響されることなく、溶接トーチの狙い位置を設定することができ、作業効率及び溶接品質の向上を図ることができる、溶接トーチ狙い位置設定方法、ウィービング方法、及び溶接システムを提供する。
【解決手段】開先を有するワークに取付けられたガイドレールに沿って移動し、ワークを溶接する可搬型溶接ロボットの溶接トーチ狙い位置設定方法は、可搬型溶接ロボットが、溶接トーチと、溶接トーチを前記開先の延在方向、幅方向、深さ方向に移動させる移動機構と、を備え、開先の形状情報を算出する形状情報取得工程と、相関位置関係データを取得する相関位置取得工程と、積層設計工程と溶接トーチ狙い位置に、溶接トーチの溶接ワイヤの先端を移動させる狙い位置設定工程と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開先を有するワークに取付けられたガイドレールに沿って移動し、前記ワークを溶接する可搬型溶接ロボットの溶接トーチ狙い位置設定方法であって、
前記可搬型溶接ロボットは、
溶接トーチと、
前記溶接トーチを前記開先の延在方向、前記開先の幅方向、前記開先の深さ方向に移動させる移動機構と、
を備え、
前記溶接トーチを用いて、前記開先をタッチセンシングして、前記開先の形状情報を算出する形状情報取得工程と、
曲がり癖のある溶接ワイヤの先端と前記開先の形状の相関位置関係データを取得する相関位置取得工程と、
前記開先の形状情報をもとに、積層設計を行う積層設計工程と、
前記相関位置関係データに基づいて、前記積層設計された溶接パスの溶接トーチ狙い位置に、前記溶接トーチの前記溶接ワイヤの先端を移動させる狙い位置設定工程と、
を備える、
溶接トーチ狙い位置設定方法。
【請求項2】
前記可搬型溶接ロボットは、前記溶接トーチを前記開先の延在方向と垂直な面内で、前記溶接トーチの直線延長線上に仮想した前記溶接ワイヤの先端を中心に前記溶接トーチを回動させて、前記溶接トーチの角度を変更するトーチ角度調整機構をさらに備え、
前記タッチセンシングは、前記溶接トーチの角度を前記トーチ角度調整機構によって変更した、第1のトーチ角度と、第1のトーチ角度と異なる第2のトーチ角度で行われ、取得された2つの前記相関位置関係データに基づいて、前記第1のトーチ角度と前記第2のトーチ角度での、前記溶接ワイヤの先端の前記幅方向及び前記深さ方向におけるズレ量を算出するズレ量算出工程と、
前記積層設計された溶接パスの溶接トーチ狙い位置において、前記溶接トーチの前記溶接ワイヤの先端を移動させると共に、前記トーチ角度調整機構によって、前記溶接トーチを所望のトーチ角度に変更するトーチ角度変更工程と、
前記第1のトーチ角度と前記第2のトーチ角度での前記ズレ量から算出される、前記所望のトーチ角度における前記ズレ量を、前記移動機構によって修正するズレ量修正工程と、
をさらに備える、
請求項1に記載の溶接トーチ狙い位置設定方法。
【請求項3】
前記第2のトーチ角度は、前記所望のトーチ角度である、
請求項2に記載の溶接トーチ狙い位置設定方法。
【請求項4】
前記トーチ角度調整機構は、
前記ガイドレールに沿って移動するロボット本体側に設けられ、前記仮想した前記溶接ワイヤの先端を中心にした円弧リニアガイドを有する固定アーム部と、
前記固定アーム部に取付けられ、出力軸にピニオンギヤを備えた駆動モータと、
前記溶接トーチ側に設けられ、前記ピニオンギヤと噛合い、前記仮想した前記溶接ワイヤの先端を中心にした円弧に沿った円弧ラック部と、前記円弧リニアガイドに沿って摺動するガイドブロックを有する可動アーム部と、
を有する、
請求項2又は3に記載の溶接トーチ狙い位置設定方法。
【請求項5】
開先を有するワークに取付けられたガイドレールに沿って移動し、前記ワークを溶接する可搬型溶接ロボットのウィービング方法であって、
前記可搬型溶接ロボットは、
溶接トーチと、
前記溶接トーチを前記開先の延在方向、前記開先の幅方向、前記開先の深さ方向に移動させる移動機構と、
前記溶接トーチを前記開先の延在方向と垂直な面内で、前記溶接トーチの直線延長線上に仮想した溶接ワイヤの先端を中心に前記溶接トーチを回動させて、前記溶接トーチの角度を変更するトーチ角度調整機構と、
を備え、
溶接前に、前記トーチ角度調整機構によって変更される、第1のトーチ角度と、前記第1のトーチ角度と異なる第2のトーチ角度の前記溶接トーチを用いて、前記開先をタッチセンシングして、前記開先の形状情報を算出すると共に、曲がり癖のある前記溶接ワイヤの先端と前記開先の形状の相関位置関係データ、及び前記第1のトーチ角度と前記第2のトーチ角度での、前記溶接ワイヤの先端の前記開先の幅方向及び前記開先の深さ方向におけるズレ量を取得するズレ量取得工程と、
前記溶接トーチを前記開先の幅方向にウィービングしながら溶接する際に、前記トーチ角度調整機構によって、前記溶接トーチを所望のトーチ角度に変更するトーチ角度調整工程と、
前記第1のトーチ角度と前記第2のトーチ角度での前記ズレ量から算出される、前記所望のトーチ角度における前記ズレ量を、前記移動機構によって修正するズレ量修正工程と、
を備える
ウィービング方法。
【請求項6】
前記第1のトーチ角度と前記第2のトーチ角度とは、前記溶接トーチが前記開先の幅方向に移動する際の両端におけるトーチ角度である、
請求項5に記載のウィービング方法。
【請求項7】
開先を有するワークに取付けられたガイドレールに沿って移動し、前記ワークを溶接する可搬型溶接ロボットと、前記可搬型溶接ロボットの動作を制御する制御装置と、を有する溶接システムであって、
前記可搬型溶接ロボットは、
溶接トーチと、
前記溶接トーチを前記開先の延在方向、前記開先の幅方向、前記開先の深さ方向に移動させる移動機構と、
を備え、
前記制御装置は、
前記溶接トーチを用いて、前記開先をタッチセンシングして、前記開先の形状情報を算出すると共に、曲がり癖のある溶接ワイヤの先端と前記開先の形状の相関位置関係データを取得し、
前記開先の形状情報をもとに、積層設計を行い、
前記相関位置関係データに基づいて、前記積層設計された溶接パスの溶接トーチ狙い位置に、前記溶接トーチの前記溶接ワイヤの先端を移動させる、
溶接システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接トーチ狙い位置設定方法、ウィービング方法及び溶接システムに関する。
【背景技術】
【0002】
造船、鉄骨、橋梁等における溶接構造物の製造において、工場内における溶接作業は、作業能率を重視し、主に下向姿勢溶接を対象に定置型で大型の多軸溶接ロボットを適用したシステムが多用されている。なお、定置型の多軸溶接ロボットを適用したシステムとは、例えば、被溶接物(以下、「ワーク」と称する。)を定置型のポジショナーに設置し、多軸溶接ロボットを用いて自動溶接するタイプの溶接ロボットシステムのことである。
一方、大型の多軸溶接ロボットが適用できない現場溶接や、小物部材や複雑な形状の部材の溶接は、半自動溶接といった手動溶接や、作業員が一人で運ぶことができる軽量小型の可搬型溶接ロボットを用いた自動溶接が多用されている。特に、可搬型溶接ロボットは、持ち運びできる特長を活かして現場溶接での適用が進められている。
【0003】
このような可搬型溶接ロボットにおいて、溶接部の融合不良、溶け込み不良の欠陥を防止する観点から、特許文献1では、溶接トーチのワイヤ狙い位置を中心にして溶接トーチの角度を調整できる溶接トーチ角度調整器が示されている。特許文献1によれば、溶接トーチ角度調整器は、溶接トーチのワイヤ狙い位置を中心にして一定の曲率の円弧状溝を有するガイド部材を有し、ガイド部材の円弧状溝に沿って動くスライド部材、スライド部材を円弧状溝の任意位置に固定する手段、及びスライド部材に連結されている溶接トーチホルダを有する。さらに、特許文献1によれば、溶接トーチ角度調整器により、開先壁面に近い部分の溶接をする際に、溶接の狙い位置は変えることなく、溶接トーチが開先壁面と干渉することなく、溶け込みが得られやすいように溶接トーチ角度を調整できる。
【0004】
特許文献2では、溶接トーチのワイヤ狙い位置を中心にして一定の曲率の円弧状溝を有するガイド部材に同じ曲率の円弧ラックが取り付けてあり、スライド部材には円弧ラックに噛合するピニオンが取り付けてある。このピニオンがその回転により円弧ラックに沿って移動することにより、溶接トーチホルダがガイドに沿って移動することで、精度よく溶接トーチ角度を調整できることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-328831号公報
【特許文献2】特開平8-276267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2によれば、溶接トーチの角度調整は、溶接トーチのワイヤ狙い位置を中心にして一定の曲率の円弧状溝を有するガイド部材に沿って、溶接トーチホルダが移動することで行われている。しかし、実際には、溶接トーチ先端の溶接ワイヤは、曲がり癖などで曲がっているので、想定する溶接トーチのワイヤ狙い位置とはずれたところに溶接ワイヤの先端は位置している。この状態で、溶接トーチのワイヤ狙い位置を中心にして溶接トーチの角度調整をしても、実際の溶接ワイヤの先端は動いてしまい、ワイヤ狙い位置がずれてしまうことになる。
【0007】
また、溶接ワイヤの曲がり癖は、溶接ワイヤの収納状態や溶接ワイヤ送給装置から溶接トーチまでの送給経路によっても変化するものであり、その曲がり癖は任意となり、事前に溶接ワイヤの曲がり状態を予想して、回転中心を決めることは困難である。つまり、特許文献1及び特許文献2では、溶接ワイヤの曲がり癖についての言及は無く、実際の溶接ワイヤの先端位置を中心にして溶接トーチの角度調整はできておらず、溶接ワイヤの先端を狙い位置として溶接トーチの角度調整をするためには、溶接ワイヤの曲がり癖を考慮する必要がある。
【0008】
一般に、溶接ワイヤはスプールワイヤ及びパックワイヤと呼ばれる様に、円筒状の型枠や容器に収納されており、溶接トーチに供給される前に、矯正器と呼ばれる機器で収納による曲がり癖を矯正することがなされているが、完全に曲がり癖を矯正することは難しい。また、溶接チップと溶接ワイヤの安定した給電性を確保する観点では、一定度の曲がり癖があった方が給電が安定するため、溶接トーチから出てくる溶接ワイヤには曲がり癖が常に伴っている。溶接ワイヤの曲がり量は、溶接するたびに、あるいは送給装置と溶接トーチまでの溶接ワイヤの送給経路が代わるたびに、任意に変化するため、事前に溶接ワイヤの曲がり状態を予想して、溶接トーチの角度調整を行うことも困難である。
【0009】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、溶接ワイヤの曲がり癖に影響されることなく、溶接トーチの狙い位置を設定することができ、作業効率及び溶接品質の向上を図ることができる、溶接トーチ狙い位置設定方法、ウィービング方法及び溶接システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 開先を有するワークに取付けられたガイドレールに沿って移動し、前記ワークを溶接する可搬型溶接ロボットの溶接トーチ狙い位置設定方法であって、
前記可搬型溶接ロボットは、
溶接トーチと、
前記溶接トーチを前記開先の延在方向、前記開先の幅方向、前記開先の深さ方向に移動させる移動機構と、
を備え、
前記溶接トーチを用いて、前記開先をタッチセンシングして、前記開先の形状情報を算出する形状情報取得工程と、
曲がり癖のある溶接ワイヤの先端と前記開先の形状の相関位置関係データを取得する相関位置取得工程と、
前記開先の形状情報をもとに、積層設計を行う積層設計工程と、
前記相関位置関係データに基づいて、前記積層設計された溶接パスの溶接トーチ狙い位置に、前記溶接トーチの前記溶接ワイヤの先端を移動させる狙い位置設定工程と、
を備える、
溶接トーチ狙い位置設定方法。
(2) 開先を有するワークに取付けられたガイドレールに沿って移動し、前記ワークを溶接する可搬型溶接ロボットのウィービング方法であって、
前記可搬型溶接ロボットは、
溶接トーチと、
前記溶接トーチを前記開先の延在方向、前記開先の幅方向、前記開先の深さ方向に移動させる移動機構と、
前記溶接トーチを前記開先の延在方向と垂直な面内で、前記溶接トーチの直線延長線上に仮想した溶接ワイヤの先端を中心に前記溶接トーチを回動させて、前記溶接トーチの角度を変更するトーチ角度調整機構と、
を備え、
溶接前に、前記トーチ角度調整機構によって変更される、第1のトーチ角度と、前記第1のトーチ角度と異なる第2のトーチ角度の前記溶接トーチを用いて、前記開先をタッチセンシングして、前記開先の形状情報を算出すると共に、曲がり癖のある前記溶接ワイヤの先端と前記開先の形状の相関位置関係データ、及び前記第1のトーチ角度と前記第2のトーチ角度での、前記溶接ワイヤの先端の前記開先の幅方向及び前記開先の深さ方向におけるズレ量を取得するズレ量取得工程と、
前記溶接トーチを前記開先の幅方向にウィービングしながら溶接する際に、前記トーチ角度調整機構によって、前記溶接トーチを所望のトーチ角度に変更するトーチ角度調整工程と、
前記第1のトーチ角度と前記第2のトーチ角度での前記ズレ量から算出される、前記所望のトーチ角度における前記ズレ量を、前記移動機構によって修正するズレ量修正工程と、
を備える
ウィービング方法。
(3) 開先を有するワークに取付けられたガイドレールに沿って移動し、前記ワークを溶接する可搬型溶接ロボットと、前記可搬型溶接ロボットの動作を制御する制御装置と、を有する溶接システムであって、
前記可搬型溶接ロボットは、
溶接トーチと、
前記溶接トーチを前記開先の延在方向、前記開先の幅方向、前記開先の深さ方向に移動させる移動機構と、
を備え、
前記制御装置は、
前記溶接トーチを用いて、前記開先をタッチセンシングして、前記開先の形状情報を算出すると共に、曲がり癖のある溶接ワイヤの先端と前記開先の形状の相関位置関係データを取得し、
前記開先の形状情報をもとに、積層設計を行い、
前記相関位置関係データに基づいて、前記積層設計された溶接パスの溶接トーチ狙い位置に、前記溶接トーチの前記溶接ワイヤの先端を移動させる、
溶接システム。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、溶接ワイヤの曲がり癖に影響されることなく、溶接トーチの狙い位置を設定することができ、作業効率及び溶接品質の向上を図ることができる、可搬型溶接ロボットの溶接トーチ狙い位置設定方法、可搬型溶接ロボットの狙い位置修正方法、可搬型溶接ロボットのウィービング方法、及び溶接システムを提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態に係る溶接システムの構成を示す概略図である。
図2A図2Aは、溶接トーチを傾けた状態を示す可搬型溶接ロボットを示した図である。
図2B図2Bは、溶接トーチを立てた状態を示す可搬型溶接ロボットを示した図である。
図3図3は、トーチ近似直線移動機構を示した図である。
図4図4は、曲がり癖を有する溶接ワイヤを用いた場合の溶接トーチの先端を示した図である。
図5図5は、タッチセンサによって開先の形状情報の取得する手順を説明した図である。
図6図6は、相関位置取得工程を説明した図である。
図7図7は、開先に溶接継手を形成するための積層設計を示した図である。
図8図8は、曲がり癖のある溶接ワイヤを用いた溶接トーチのトーチ角度を調整した状況を示した模式図である。
図9図9は、曲がり癖のある溶接ワイヤを用いてトーチ角度を調整した場合における、溶接トーチの狙い位置の修正方法を示した模式図である。
図10図10は、第1トーチ角度θ1の開先形状データと、第2トーチ角度θ2の開先形状データと、を示した図である。
図11図11は、トーチ角度変化を伴うウィービング方法を示した模式図である。
図12図12は、別実施形態のトーチ角度調整機構を備えた可搬型溶接ロボットを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明を適用した溶接システムの構成を説明する。なお、各図は、本発明の説明のために作成されたものであり、本発明の実施形態は、図示の内容に限らない。
【0014】
<溶接システムの構成>
図1は、本実施形態に係る溶接システムの構成を示す概略図である。溶接システム50は、図1に示すように、可搬型溶接ロボット100(以下、「溶接ロボット」と称する。)と、送給装置300と、溶接電源400と、シールドガス供給源500と、制御装置600と、を備えている。
【0015】
(制御装置600)
制御装置600は、ロボット用制御ケーブル610によって溶接ロボット100と接続され、電源用制御ケーブル620によって溶接電源400と接続されている。制御装置600は、あらかじめ溶接ロボット100の動作パターン、溶接開始位置、溶接終了位置、溶接条件、ウィービング動作等を定めたティーチングデータを保持するデータ保持部601を有し、このティーチングデータに基づいて溶接ロボット100及び溶接電源400に対して指令を送り、溶接ロボット100の動作及び溶接条件を制御する。
【0016】
制御装置600は、後述するタッチセンシングにより得られる検知データから開先の形状情報を算出する開先形状情報算出部602と、この開先の形状情報をもとに、上記ティーチングデータの溶接条件を補正して取得する溶接条件取得部603と、を有する。そして、上記開先形状情報算出部602と溶接条件取得部603により、制御部604が構成されている。
制御部604は、曲がり癖のある溶接ワイヤ211´の先端220´を、所定の狙い位置に設定する狙い位置設定制御が実行可能に構成される。
【0017】
(溶接電源400)
溶接電源400は、制御装置600からの指令により、消耗電極(以下、「溶接ワイヤ」とも称する)211及びワークWに電力を供給することで、溶接ワイヤ211とワークWとの間にアークを発生させる。溶接電源400からの電力は、パワーケーブル410を介して送給装置300に送られ、送給装置300からコンジットチューブ420を介して溶接トーチ200に送られる。
【0018】
(シールドガス供給源500)
シールドガス供給源500は、シールドガスが封入された容器及びバルブ等の付帯部材から構成される。シールドガス供給源500から、シールドガスが、ガスチューブ510を介して送給装置300へ送られる。送給装置300に送られたシールドガスは、コンジットチューブ420を介して溶接トーチ200に送られる。溶接トーチ200に送られたシールドガスは、溶接トーチ200内を流れて、ノズル210にガイドされて、溶接トーチ200の先端側から噴出する。シールドガスとしては、例えば、アルゴン(Ar)や炭酸ガス(CO2)又はこれらの混合ガス等が用いられる。
【0019】
(送給装置300)
送給装置300は、溶接ワイヤ211を繰り出して溶接トーチ200に送る。送給装置300により送られる溶接ワイヤ211は、特に限定されず、ワークWの性質や溶接形態等によって選択され、例えば、ソリッドワイヤやフラックス入りワイヤ(以下、「FCW」とも言う)が使用される。また、溶接ワイヤ211の材質も問わず、例えば、軟鋼でも良いし、ステンレスやアルミニウム、チタンといった材質でも良い。さらに、溶接ワイヤ211の線径も特に問わない。なお、本実施形態において、溶接作業性の観点からFCWを適用することが好ましく、塩基性のFCWであればなお好ましい。さらに、塩基性のFCWを適用する場合は、正極性とすることが好ましい。
【0020】
(溶接ロボット100)
図2Aは、溶接トーチを傾けた状態を示す溶接ロボットを示した図である。図2Bは、溶接トーチを立てた状態を示す溶接ロボットを示した図である。図3は、トーチ近似直線移動機構を示した図である。
溶接ロボット100は、ロボット本体110と、ガイドレール120と、トーチ接続部130と、トーチ角度調整機構140と、トーチ近似直線移動機構150と、を備える。
ロボット本体110は、溶接対象のワークWに形成された開先10に沿って延在するガイドレール120に沿って移動する。ロボット本体110には、トーチ角度調整機構140と、トーチ近似直線移動機構150と、を介して、溶接トーチ200が取付けられるトーチ接続部130が姿勢変更可能に支持されている。
なお、本実施形態で示す例では、開先10は、傾斜した左右両面である開先壁11,12と、開先壁11、12の間に形成される底面であるルート部13と、によって台形状に形成されている。この構成は、図2A図3を参照するとよい。
【0021】
また、溶接ロボット100は、溶接を行う開先形状を検出する検出手段を有する。溶接ロボット100は、ワークWと溶接ワイヤ211間に電圧を印加し、溶接ワイヤ211がワークWに接触したときに生じる電圧降下現象を利用して、開先10の表面等をタッチセンシングする、タッチセンサを検出手段としている。
【0022】
ロボット本体110は、溶接トーチ200を直交3軸に移動可能な、X軸移動機構と、Y軸移動機構と、Z軸移動機構と、を備えた移動機構を有する。
X軸移動機構は、図2Aの矢印Xで示すように、ロボット本体110を、紙面に対して垂直方向であって溶接線方向となるX軸方向に延在するガイドレール120に沿って移動させる。
Y軸移動機構は、図2Aの矢印Yで示すように、ロボット本体110に設けた可動体112を、X軸方向及びZ軸方向に対して垂直な方向であり、開先10の幅方向でもあるY軸方向にスライド移動させる。
Z軸移動機構は、図2Aの矢印Zで示すように、ロボット本体110を、X軸方向及びY軸方向に対して垂直となる開先10の深さ方向であるZ軸方向へ伸縮移動させる。
移動機構は、溶接トーチ200を開先の延在方向、開先の幅方向、開先の深さ方向に移動させることができる構成であればよい。
【0023】
トーチ接続部130は、溶接トーチ200を固定するトーチクランプ132、134を備えている。
また、トーチ接続部130は、ロボット本体110に設けられるトーチ角度調整機構140により、溶接トーチ200先端のトーチ角度θが調整可能に構成される。トーチ角度θは、溶接トーチ200の直線延長線上に仮想した溶接ワイヤ211の先端220を中心とする角度であって、溶接トーチ200を開先幅方向に傾斜させた角度である。
また、トーチ接続部130は、トーチ角度調整機構140に設けられたトーチ近似直線移動機構150により、溶接トーチ200の高さ位置を変えることなく、溶接トーチ200先端のトーチ角度φが調整可能に構成される。トーチ角度φは、開先10の延在方向(X軸方向)に移動可能に支持されると共に、溶接トーチ200の直線延長線上に仮想した溶接ワイヤ211の先端220を中心とする角度であって、溶接トーチ200を溶接線方向に対して傾斜させた角度である。
【0024】
トーチ角度調整機構140は、スライド支持部141と、固定アーム部142と、可動アーム部143と、駆動モータ144と、を有する。
スライド支持部141は、Y軸方向にスライドする可動体112に取付固定された支持部材である。固定アーム部142は、スライド支持部141に取付固定される。可動アーム部143は、駆動モータ144の駆動力によって、固定アーム部142に対して所定の移動軌跡に沿って回動可能に支持される。この構成は、図2A及び図2Bを参照するとよい。
【0025】
固定アーム部142は、Y-Z平面上に延設されて、スライド支持部141に固定される支持板であって、円弧状のガイド溝142aが形成される。固定アーム部142の上端には、駆動モータ144が取付固定される。円弧状のガイド溝142aの軸心位置は、溶接トーチ200の直線延長線上に仮想した曲がり癖のない溶接ワイヤ211の先端220の位置となるように構成した。この構成は、図2Aを参照するとよい。
【0026】
可動アーム部143は、Y-Z平面上に延設されて、固定アーム部142に沿って回動する回動板である。可動アーム部143には、ガイド溝142aに挿通されるガイド体147と、可動アーム部143の上端側に取付固定される円弧ラック部148と、が設けられる。
可動アーム部143と、ガイド体147と、板状の固定アーム部142を挟むように配置されている。
円弧ラック部148は、ガイド溝142aと同じ曲率で形成されて駆動モータ144の出力軸に設けたピニオンギヤ144aと噛合う円弧状の噛合部148aが形成される。
【0027】
この構成によれば、トーチ角度調整機構140は、制御装置600から駆動モータ144に信号が送信され、この指令信号により駆動モータ144の回転軸が回転することで、円弧ラック部148を介して可動アーム部143がガイド溝142aに沿って回動する。
これにより、トーチ接続部130に支持される溶接トーチ200のトーチ角度θを任意に調整できる。この構成は、図2A及び図2Bを参照するとよい。
【0028】
なお、上述のトーチ角度調整機構140を、図12に示すように、溶接トーチ200のトーチ角度θを手動で調整可能なトーチ角度調整機構170としてもよい。図12は、別実施形態のトーチ角度調整機構を備えた溶接ロボットを示した図である。
トーチ角度調整機構170は、図12に示すように、スライド支持部171と、固定アーム部172と、可動アーム部173と、を有する。
スライド支持部171は、Y軸方向にスライドする可動体112に取付固定された支持部材であり、Z軸方向にもスライド移動可能に支持されている。
固定アーム部172は、スライド支持部171に取付固定される板状部材であって、円弧状のガイド溝172aが形成される。
可動アーム部173は、固定アーム部172のガイド溝172aに沿って揺動する回動板である。可動アーム部173は、ガイド溝172aに挿通されるとともに、手動で締結されることによってガイド溝172aに沿った作動が規制されるガイド体174と、固定アーム部172側に揺動可能に軸支される軸支部175と、を有する。この構成は、図12を参照するとよい。
【0029】
トーチ近似直線移動機構150は、トーチ接続部130が取付けられる摺動テーブル151と、トーチ角度調整機構140の可動アーム部143側に取付けられる溶接トーチ回転駆動部153と、摺動テーブル151と溶接トーチ回転駆動部153との間を連結するクランク152と、を有する。この構成は、図3を参照するとよい。
【0030】
摺動テーブル151は、溶接トーチ200に沿って延在する板状部材であって、その中間部には長手方向に沿った長溝151aが形成される。長溝151aには、溶接トーチ回転駆動部153に固定された固定ピン156が摺動自在に嵌合する。
溶接トーチ回転駆動部153は、不図示の駆動モータを有し、駆動モータの回転軸154が、クランク152の一端側に連結されている。
クランク152は、一端側が回転軸154に連結される一方で、他端側が連結ピン155を介して摺動テーブル151の上端側に連結されている。
【0031】
この構成によれば、不図示の駆動モータによってクランク152が回転軸154を中心として回動すると、摺動テーブル151は、固定ピン156を支点として回動すると共に、嵌合する固定ピン156に案内されて長溝151aに沿って移動する。
すなわち、溶接トーチ200が取りつけられたトーチ接続部130は、クランク152が図3の矢印R2に示すように回動することで、溶接トーチ200を傾けながら、X軸方向に対し溶接ワイヤ211の先端を図3に仮想線ILで示す近似直線に沿って駆動する。言い換えると、トーチ接続部130に支持される溶接トーチ200のトーチ角度φを、溶接ワイヤ先端の高さ位置を変えることなく任意に調整できる。この構成は、図3を参照するとよい。
【0032】
以上によれば、溶接トーチ200は、ロボット本体110がガイドレール120に沿って移動することで、開先10の延在方向であるX軸方向に移動可能である。また、溶接トーチ200は、ロボット本体110に支持されたトーチ接続部130の位置が制御されることによって、開先10の幅方向であるY軸方向及び開先10の深さ方向であるZ軸方向に移動可能である。
また、溶接トーチ200は、トーチ角度調整機構140によって、溶接トーチ200の直線延長上に仮想した溶接ワイヤ211の先端220を中心に溶接線と垂直なY-Z平面に沿って回動することで、溶接トーチ200のトーチ角度θを調整できる。
また、溶接トーチ200は、トーチ近似直線移動機構150によって、例えば、前進角又は後退角を設ける等の施工状況に応じて、溶接線に沿ったX-Z平面に沿って回動することで、溶接トーチ200のトーチ角度φを調整できる。
【0033】
次に、図4に基づき、実際に溶接ワイヤが溶接トーチに挿入された状況を説明する。図4は、曲がり癖を有する溶接ワイヤを用いた場合の溶接トーチの先端を示した図である。
図4に示すように、実際の曲がり癖を伴う溶接ワイヤ211´の先端220´は、溶接トーチ200の直線延長に想定した溶接ワイヤ211の先端220とは離れた位置となり、狙いがずれることになる。
溶接アークは溶接ワイヤ211の先端220から指向的に母材へ向かうので、実際に溶け込みが得られる母材の位置は、仮想した溶接ワイヤの先端220の延長上の母材位置よりずれることになり、融合不良、溶け込み不良の欠陥を誘発する場合があり、溶接品質に影響を及ぼすことになる。
以下、上記の溶接ワイヤ211の先端220の狙い位置のずれを無くすための溶接トーチ狙い位置設定方法について説明する。
【0034】
<溶接トーチの狙い位置の設定方法>
図5図7に基づき、曲がり癖のある溶接ワイヤを用いた場合の溶接トーチの狙い位置の設定方法について説明する。図5は、タッチセンサによって開先の形状情報の取得する手順を説明した図である。図6は、相関位置取得工程を説明した図である。図7は、開先に溶接継手を形成するための積層設計を示した図である。
【0035】
曲がり癖のある溶接ワイヤ211´を用いた場合の溶接トーチの狙い位置の設定方法は、形状情報取得工程S101と、相関位置取得工程S102と、積層設計工程S103と、狙い位置設定工程S104と、を有する。
【0036】
(形状情報取得工程S101)
図5に基づき、形状情報取得工程S101について説明する。
形状情報取得工程S101によるタッチセンシングによる開先10の形状情報の検出前には、溶接ロボット100は、走行方向のX軸と、開先10幅方向のY軸と、開先10深さ方向のZ軸と、トーチ角度θ、φと、がコントローラに電源が印加された後に、自動的に初期稼働が行われ、原点に設定される。各軸の駆動源には、パルスモータが採用されており、原点からの移動距離あるいはトーチ角度はパルスをカウントすることで算出されるが、検出方向はこれに限られない。
【0037】
タッチセンシングによる開先10の形状情報の検出する際は、走行方向のX軸は駆動を停止し、トーチ近似直線移動機構150によりトーチ角度φは母材に対して垂直固定とする。また、トーチ角度調整機構140ではトーチ角度θを予め設定した任意の第1トーチ角度θ1として固定する。この状態で、ロボット本体110を、開先10幅方向のY軸と開先10深さ方向のZ軸を駆動させ、Y-Z軸平面上での開先10の形状情報の検出を行う。
【0038】
なお、タッチセンシング前の準備として、チップ212からの溶接ワイヤの突き出し長さは、所定の長さに切断される。本実施形態では溶接ワイヤの突き出し長さは20~25mmの間で、自動切断機あるいは作業者がゲージなどを使って決められた寸法に切断されている。本実施形態では、所定の溶接ワイヤの突き出し長さに切断したあと、そのままの曲がり癖のついた溶接ワイヤ211´で開先の形状情報の検出を行う。
【0039】
形状情報取得工程S101では、制御装置600は、移動機構の作動を制御することによって溶接トーチ200の作動を制御し、タッチセンシングによる開先10の形状情報の取得を行う。具体的に説明すると、タッチセンサによる開先10の形状情報の検出は、曲がり癖のある溶接ワイヤ211´の先端220´が母材表面に接触したのを電気的に検出し、その時のY軸、Z軸の移動距離から検出した位置を特定する。タッチセンサによる検知点は、例えば、A0点からスタートし、A1点、A2点、・・ ・、A14点の順に、図中矢印で示す方向に移動しながらセンシングを行う。図5に基づいて、形状情報取得工程S101において、開先10の形状情報を取得するタッチセンシングの手順について具体的に説明する。
【0040】
[手順1]A0点近傍に曲がり癖のある溶接ワイヤ211´の先端220´がくるように、手動もしくは自動でY軸、Z軸を駆動させる。
[手順2]A0点からスタートし、A1点及びA3点の検知により、開先10の一端側のワーク表面Wuの位置を検知する。
[手順3]A4´点では、A1点及びA3点で検知したワーク表面Wuの位置よりも、設定した移動距離だけ下がったとき、開先10の中であると判断し、ワーク表面Wuの直下近傍の高さまで戻り、A5点の検出に向かう。
[手順4]A6点及びA9点の検知により、開先10の一端側の開先壁11の仮の傾斜角度η1を検知する。
[手順5]A5点及びA8点の検知により、開先10の他端側の開先壁12の仮の傾斜角度η2を検知する。
[手順6]仮の傾斜角度η1の検知により、開先10のルート部13が確実に検知できる位置を決めてから、ルート部13のA10点を検知する。例えば、実際にはA8点から所定の寸法だけ下方側の位置をルート部13として設定する。
[手順7]A1点、A3点及びA10点の検知により、板厚H1を算出し、板厚H1を利用して、開先10のルート部13に近いA11点及びA12点を検知し、A12点及びA6点の検知により、一端側の開先壁11のより正確な傾斜角度η1を検知する。また、A11点及びA5点の検知により、他端側の開先壁12における、より正確な傾斜角度η2を決定する。
[手順8]A6点及びA12点を結ぶ線(すなわち、一端側の傾斜面)、並びにA5点及びA11点を結ぶ線(すなわち、他端側の傾斜面)と、A3点、A1点を結ぶ線と平行でA10点を通る直線との交点から、ルートギャップGを算出する。
[手順9]また、開先10の他端側に開先壁12を構成する壁があるか否かをA13点で検知する。なお、本実施形態では壁は存在しない平継手の開先10としている。
[手順10]A5点及びA11点を結ぶ線の延長線上を過ぎても壁の検知がなければ、壁がなしであると判断して、そのまま進み、A14点で他端側のワーク表面Wiを検知する。次に、A14点及びA10点の検知により、板厚H2を算出し、板厚H1と板厚H2の差より、開先10の両側の段差Dを算出する。
[手順11]段差Dには閾値があらかじめ設けられており、それ以上であると、平継手の開先ではなくT継手の開先10と見なして、T継手の溶接条件を選定する。
[手順12]段差Dが閾値以下では、平継手の目違いと見なし、平継手の溶接条件を選定する。
【0041】
なお、開先10の形状情報を取得するタッチセンシングの手順1~手順12は、図5に示す台形状の開先10に限るものではなく、その他に、例えばV字型の開先でも同様の手順で開先形状を検知できる。また、タッチセンシングにおける検知点間の検知ピッチSpは、特に限定されるものではなく適宜設定することができる。
また、開先10の断面形状の情報を得るための検知点は、開先10の形状情報として十分な精度を保つ必要がある。このためには、検知点の数が5点以上であることが好ましい。
また、検知点の位置の選定によって、より高い精度で検知データを得ることができる。この5点の検知点は、例えば、図5に示すように、左右両側の開先壁11、12の上下端を含む4箇所の各角部分C1、C2、C3、C4と、ルート部13の部分C5に1点取ると良い。
また、センシング効率の観点から、開先形状情報を得るための検知点は10点以下であることが好ましい。
以上の様なタッチセンシングにより、曲がり癖のある溶接ワイヤ211´を用いて、開先10の形状情報を算出し、取得できる。
【0042】
(相関位置取得工程S102)
次に、図6に基づいて、相関位置取得工程S102について説明する。
相関位置取得工程S102では、制御装置600は、形状情報取得工程S101において取得された開先10の形状情報に基づいて、曲がり癖のある溶接ワイヤ211´の先端220´の位置と、開先10の形状と、の間の相関位置関係データを取得する。
【0043】
タッチセンシングにより取得された開先10の形状情報は、曲がり癖のついた溶接ワイヤ211´の先端220´が母材表面に接触した位置検出から成り立っている。このため、タッチセンシングで取得された開先10の形状情報と、曲がり癖のついた溶接ワイヤ211´の先端220´の位置と、の間には相関関係が成り立っている。
すなわち、相関位置取得工程S102では、図6に示すように、タッチセンシングで取得された開先10の形状情報から作図した開先形状の任意の地点に原点Oを設定することによって、曲がり癖のついた溶接ワイヤ211´の先端220´を任意に位置させたい地点(座標)から、原点Oまでの移動距離Yt、Ztを算出するための、相関位置関係データを取得できる。これにより、曲がり癖のある溶接ワイヤ211´の先端220´を開先10内の任意の座標(Y、Z)に正確に移動させることができる。
【0044】
(積層設計工程S103)
次に、図7に基づいて、積層設計工程S103について説明する。
積層設計工程S103では、制御装置600は、形状情報取得工程S101で取得された開先10の形状情報を基にして、開先10に溶接継手等を形成するための積層設計を行う。
図7に示す例では、6層13パスで溶接継手が完成する積層設計を表している。図7の丸数字は積層設計により設計された溶接パスのパス数を表している。積層設計で積層数が決まると、各溶接パスにおける適正な溶接条件が割り当てられる。次に、各溶接パスに、溶接トーチ200の狙い位置が設定され、さらに、狙い位置を基準にウィービング幅Wyも設定される。
図7において、各溶接パスに示した丸印が溶接トーチ200の狙い位置を表す座標データ(Y、Z)を示し、両矢印は各溶接パスにおけるウィービング幅Wyを示している。なお、溶接パス8~溶接パス13は、ウィービングしない、いわゆるストレートビードとなるため、ウィービングを示す両矢印の記載はない。ウィービングを伴うパスでは、溶接トーチ狙い位置を示す座標データ(Y、Z)がウィービング端に設定されている。
【0045】
(狙い位置設定工程S104)
次に、図6及び図7に基づいて、狙い位置設定工程S104について説明する。
狙い位置設定工程S104では、制御装置600は、曲がり癖のある溶接ワイヤ211´の先端220´を積層設計された各溶接パスの狙い位置に移動するために、原点Oから各溶接パスの狙い位置Y、Zまでの移動距離Yt、Ztを算出し、溶接ワイヤ211´の先端220´が各溶接パスの狙い位置Y、Zに移動するように、移動機構の作動を制御する。
【0046】
これにより、積層設計に基づいて実際に溶接作業を行う際は、ロボット本体110によるY軸、Z軸の移動によって、図6に示す様に、開先10の形状情報と、原点Oからの移動距離Yt、Ztと、に基づいて、溶接トーチ狙い位置(Y、Z)まで曲がり癖のある溶接ワイヤ211´の先端220´をもっていき、この位置を溶接スタートとすることができる。また、ウィービングが伴う場合はY軸を設定したウィービング幅Wyで揺動することで行われる。
以上の様に、本実施形態の溶接トーチの狙い位置の設定方法によれば、曲がり癖のある溶接ワイヤ211´の先端220´を、積層設計において設定された所定の各溶接パスの狙い位置(Y、Z)に正確に配置できるようになる。
【0047】
<第2実施形態>
図7では、本発明の溶接トーチ狙い位置設定方法の実施形態の一例としての積層設計を示しているが、このような開先壁に角度が伴う多層盛溶接では、開先壁の角度に応じで開先壁の母材が溶け込みやすい様に、溶接トーチが開先壁と干渉しない範囲で、トーチ角度θを調整することで、融合不良、溶け込み不良の欠陥を防止することができる。
【0048】
図7に示した積層設計では、溶接トーチ200は第1トーチ角度θ1で固定しており、紙面に対して左側の開先壁12の立板が溶けやすい角度となっている。具体的に説明すると、図7において、紙面に対して右側の開先壁11に比べ、立板の方の断面積が大きく、溶接アークからの入熱が逃げやすいことから、立板の溶け込みに有利な第1トーチ角度θ1に予め設定してある。よって、トーチ角度調整機構140によって融合不良、溶け込み不良の欠陥を防止が期待できるのは、右側の開先壁11に隣接する溶接パス4と、溶接パス7と、溶接パス11である。
【0049】
ここで、図8で示すように曲がり癖のある溶接ワイヤ211´は、単純にトーチ角度θを調整しただけでは、溶接ワイヤ211´の先端220´が動いてしまい、図7で設定した溶接トーチ200の狙い位置から外れて、かえって、融合不良、溶け込み不良を誘発する恐れがある。すなわち、第2実施形態の溶接トーチ狙い設定方法では、上記に加えて、溶接ワイヤ211に曲がり癖がついている場合でも、狙い位置が変わらない様にトーチ角度θを修正することを目的としている。
【0050】
ここで、図8に基づいて、曲がり癖のある溶接ワイヤ211´を用いた溶接トーチ200のトーチ角度θを調整した場合の、溶接ワイヤ211´の先端220´のずれ量について説明する。図8は、曲がり癖のある溶接ワイヤを用いた溶接トーチのトーチ角度を調整した状況を示した模式図である。
図8に示すように、トーチ角度θが第1トーチ角度θ1から第2トーチ角度θ2になるように、溶接トーチ200の角度を調整すると、曲がり癖のない溶接ワイヤ211を用いた場合には、溶接トーチ200が仮想した溶接ワイヤの先端220を中心に回動することになる一方で、曲がり癖のついた溶接ワイヤ211´を用いた場合には、溶接ワイヤの先端220´の位置が溶接トーチ200の角度調整の前後で大きくずれる。
【0051】
このとき、第1トーチ角度θ1の時の曲がり癖のある溶接ワイヤ211´の先端220´は、図6で求めた狙い位置なので、Y軸とZ軸の座標として(Y1、Z1)でその位置を特定できる。その一方で、この座標(Y1、Z1)に対してトーチ角度θを第1トーチ角度θ1から第2トーチ角度θ2にすることで溶接ワイヤ211´の先端220´の位置が座標(Y2、Z2)に移動し、所定のズレ量が発生する、曲がり癖のある溶接ワイヤ211´のトーチ角度θを変更したことによる、溶接ワイヤ211´の先端220´のズレ量は、Y軸、Z軸方向でそれぞれズレ量ΔY、ΔZとして表せる。
このズレ量ΔY、ΔZが既知となれば、トーチ角度θを第1トーチ角度θ1から第2トーチ角度θ2に調整すると同時に、Y軸及びZ軸を使ってズレ量ΔY、ΔZの分だけ修正すると、曲がり癖のある溶接ワイヤの先端220´は移動することなくトーチ角度θを調整することができる。以下、具体的に説明する。
【0052】
以下、図8図10に基づいて、第2実施形態における、溶接トーチの狙い位置設定方法について具体的に説明する。図9は、曲がり癖のある溶接ワイヤを用いてトーチ角度を調整した場合における、溶接トーチの狙い位置の修正方法を示した模式図である。図10は、第1トーチ角度θ1の開先形状データと、第2トーチ角度θ2の開先形状データと、を示した図である。
【0053】
曲がり癖のある溶接ワイヤを用いた場合の溶接トーチの狙い位置の設定方法は、形状情報取得工程S101と、相関位置取得工程S102と、積層設計工程S103と、狙い位置設定工程S104と、ズレ量検出工程S201と、トーチ角度変更工程S202と、ズレ量修正工程S203と、を有する。
第1実施形態と異なる点として、ズレ量検出工程S201と、トーチ角度変更工程S202と、ズレ量修正工程S203と、について以下説明する。各工程は、同様の作用効果を奏することができれば、順序は問わない。
【0054】
(ズレ量検出工程S201)
まず、図10に基づいて、ズレ量検出工程201による、ズレ量ΔY、ΔZの具体的な求め方について説明する。
ズレ量検出工程S201では、制御装置600は、トーチ角度調整機構140により、トーチ角度θを第1トーチ角度θ1から第2トーチ角度θ2に調整した後に、開先10へのタッチセンシングを実行し、溶接トーチ200を第2トーチ角度θ2で固定した状態で改めて開先10の形状情報A2を取得する。
次に、制御装置600は、図10に示すように、第1トーチ角度θ1で取得された開先10の形状情報A1と、第2トーチ角度θ2で取得された開先10の形状情報A2と、に基づいてY軸及びZ軸方向のズレ量ΔY、ΔZを算出する。
【0055】
次に、図9に基づいて、トーチ角度変更工程S202と、ズレ量修正工程S203と、について説明する。
(トーチ角度変更工程S202)
【0056】
トーチ角度変更工程S202では、制御装置600は、トーチ角度調整機構140の作動を制御することによって溶接トーチ200のトーチ角度θを、第1トーチ角度θ1の状態(図9の1)から、第2トーチ角度θ2の状態(図9の2)に変更する。これに伴い、曲がり癖のある溶接ワイヤ211´の先端220´に所定のズレ量ΔY、ΔZが発生する。
【0057】
(ズレ量修正工程S203)
ズレ量修正工程S203では、制御装置600は、移動機構の作動を制御することにより、ズレ量検出工程S201で算出したズレ量の分、溶接トーチ200をY軸方向及びZ軸方向に移動させることで、溶接トーチ200のズレ量ΔY、ΔZを修正する(図9の3)。
以上により、曲がり癖のある溶接ワイヤ211´の先端220´の狙い位置を変えることなく、トーチ角度θを第1トーチ角度θ1から第2トーチ角度θ2に変更できる。これによれば、曲がり癖のある溶接ワイヤ211´を用いた場合であっても、図7の積層設計をそのまま適用できる。
【0058】
なお、図7に示す右側の開先壁11の開先板に隣接する溶接パス4、溶接パス7、溶接パス10の適正なトーチ角度θが第2トーチ角度θ2である場合には、上述のトーチ位置設定方法によって、必要なパスのときだけ、トーチ角度θを第2トーチ角度θ2に調整することで、融合不良、溶け込み不良の欠陥防止につなげることができる。
【0059】
また、トーチ角度θを第1トーチ角度θ1から第2トーチ角度θ2に調整する間を、任意(所望)のトーチ角度θiに連続的に適宜調整することも可能である。任意のトーチ角度をθiに調整する際、同時に次式で求めるズレ量Δyi、ΔziをY軸及びZ軸の修正量とする。
Δyi=(θi-θ1)/(θ2-θ1)・ΔY・・・・式(1)
Δzi=(θi-θ1)/(θ2-θ1)・ΔZ・・・・式(2)
【0060】
上式は、トーチ角度θの変化割合に対して、Y軸及びZ軸の修正も比例するものとして求められる。例えば、図7の溶接パス6、溶接パス9、溶接パス13が該当する溶接パスとなる。開先壁11、12に隣接していないパスでは、開先壁11、12に適正なトーチ角度θiとして、第1トーチ角度θ1及び第2トーチ角度θ2の間の中間的なトーチ角度θiが予想されるため、より融合不良、溶け込み不良の欠陥防止につなげる際には、第1トーチ角度θ1から第2トーチ角度θ2の間である、任意のトーチ角度θiに調整する。
【0061】
なお、任意のトーチ角度θiは、第1トーチ角度θ1と第2トーチ角度θ2との間に限らなくてもよい。
【0062】
<第3実施形態>
上述の第2実施形態に記載の溶接トーチの狙い位置設定方法は、溶接トーチ200を、開先10の延在方向(溶接線方向)に沿って溶接作業を行いながら、開先10の幅方向に往復移動を繰り返すウィービング方法にも同様に適用できる。
図7の溶接パス1、溶接パス2のように溶接パスの両端が開先壁11、12に隣接する場合には、ウィービングの両端では近い開先壁11、12に適正したトーチ角度θに調整することで、より良好な溶接に繋がる。このためには、開先10の幅方向(Y軸方向)のウィービング動作に加え、ウィービング中にトーチ角度θを変化させる必要がある。
【0063】
図11は、トーチ角度変化を伴うウィービング方法を示した模式図である。図示する例では、ウィービング幅Wyに対して、紙面左端では第1トーチ角度θ1、右端では第2トーチ角度θ2となるようにウィービングする状態を表している。
【0064】
このとき、溶接ロボット100は、制御装置600によって、Y軸、Z軸及びトーチ角度θを次のように変動させるように指示される。
トーチ角度θ:第1トーチ角度θ1←→第2トーチ角度θ2
Y軸(開先左右方向):±(ウィービング幅Wy+ズレ量ΔY)
Z軸(開先板厚方向):±ズレ量ΔZ
上記の移動は何れも、単位時間当たりの移動量、移動速度は均一となるこのように、設定される。トーチ角度θは、式(1)、式(2)を使うことによって、第1トーチ角度θ1と第2トーチ角度θ2との間で設定できる任意のトーチ角度θiにすることも可能である。
【0065】
以上のように、本実施形態では、図7に示す積層設計の各溶接パスに対して、溶接ワイヤに曲がり癖があったとしても溶接トーチ200の狙い位置は変えずに、各溶接パスに合った適正なトーチ角度θに調整することができ、さらに、融合不良、溶け込み不良の欠陥防止につなげられ溶接品質の向上を図ることができる。
【0066】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0067】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 開先を有するワークに取付けられたガイドレールに沿って移動し、前記ワークを溶接する可搬型溶接ロボットの溶接トーチ狙い位置設定方法であって、
前記可搬型溶接ロボットは、
溶接トーチと、
前記溶接トーチを前記開先の延在方向、前記開先の幅方向、前記開先の深さ方向に移動させる移動機構と、
を備え、
前記溶接トーチを用いて、前記開先をタッチセンシングして、前記開先の形状情報を算出する形状情報取得工程と、
曲がり癖のある溶接ワイヤの先端と前記開先の形状の相関位置関係データを取得する相関位置取得工程と、
前記開先の形状情報をもとに、積層設計を行う積層設計工程と、
前記相関位置関係データに基づいて、前記積層設計された溶接パスの溶接トーチ狙い位置に、前記溶接トーチの前記溶接ワイヤの先端を移動させる狙い位置設定工程と、
を備える、
溶接トーチ狙い位置設定方法。
本構成によれば、溶接ワイヤの曲がり癖に影響されることなく、溶接トーチの狙い位置を設定することができ、作業効率及び溶接品質の向上を図ることができる。
【0068】
(2) 前記可搬型溶接ロボットは、前記溶接トーチを前記開先の延在方向と垂直な面内で、前記溶接トーチの直線延長線上に仮想した前記溶接ワイヤの先端を中心に前記溶接トーチを回動させて、前記溶接トーチの角度を変更するトーチ角度調整機構をさらに備え、
前記タッチセンシングは、前記溶接トーチの角度を前記トーチ角度調整機構によって変更した、第1のトーチ角度と、第1のトーチ角度と異なる第2のトーチ角度で行われ、取得された2つの前記相関位置関係データに基づいて、前記第1のトーチ角度と前記第2のトーチ角度での、前記溶接ワイヤの先端の前記幅方向及び前記深さ方向におけるズレ量を算出するズレ量算出工程と、
前記積層設計された溶接パスの溶接トーチ狙い位置において、前記溶接トーチの前記溶接ワイヤの先端を移動させると共に、前記トーチ角度調整機構によって、前記溶接トーチを所望のトーチ角度に変更するトーチ角度変更工程と、
前記第1のトーチ角度と前記第2のトーチ角度での前記ズレ量から算出される、前記所望のトーチ角度における前記ズレ量を、前記移動機構によって修正するズレ量修正工程と、
をさらに備える、
(1)に記載の溶接トーチ狙い位置設定方法。
本構成によれば、溶接ワイヤの曲がり癖に影響されることなく、溶接トーチのトーチ角度の変更をすることができ、作業効率及び溶接品質ができる。
【0069】
(3) 前記第2のトーチ角度は、前記所望のトーチ角度である、
(2)に記載の溶接トーチ狙い位置設定方法。
本構成によれば、溶接トーチのトーチ角度を連続的に変更しても、溶接ワイヤの狙い位置の誤差を補正できるため、作業効率及び溶接品質が向上する。
できる。
【0070】
(4) 前記トーチ角度調整機構は、
前記ガイドレールに沿って移動するロボット本体側に設けられ、前記仮想した前記溶接ワイヤの先端を中心にした円弧リニアガイドを有する固定アーム部と、
前記固定アーム部に取付けられ、出力軸にピニオンギヤを備えた駆動モータと、
前記溶接トーチ側に設けられ、前記ピニオンギヤと噛合い、前記仮想した前記溶接ワイヤの先端を中心にした円弧に沿った円弧ラック部と、前記円弧リニアガイドに沿って摺動するガイドブロックを有する可動アーム部と、
を有する、
(2)又は(3)に記載の溶接トーチ狙い位置設定方法。
本構成によれば、溶接トーチの角度を制御装置によって制御できるため、作業効率が向上する。
【0071】
(5) 開先を有するワークに取付けられたガイドレールに沿って移動し、前記ワークを溶接する可搬型溶接ロボットのウィービング方法であって、
前記可搬型溶接ロボットは、
溶接トーチと、
前記溶接トーチを前記開先の延在方向、前記開先の幅方向、前記開先の深さ方向に移動させる移動機構と、
前記溶接トーチを前記開先の延在方向と垂直な面内で、前記溶接トーチの直線延長線上に仮想した溶接ワイヤの先端を中心に前記溶接トーチを回動させて、前記溶接トーチの角度を変更するトーチ角度調整機構と、
を備え、
溶接前に、前記トーチ角度調整機構によって変更される、第1のトーチ角度と、前記第1のトーチ角度と異なる第2のトーチ角度の前記溶接トーチを用いて、前記開先をタッチセンシングして、前記開先の形状情報を算出すると共に、曲がり癖のある前記溶接ワイヤの先端と前記開先の形状の相関位置関係データ、及び前記第1のトーチ角度と前記第2のトーチ角度での、前記溶接ワイヤの先端の前記開先の幅方向及び前記開先の深さ方向におけるズレ量を取得するズレ量取得工程と、
前記溶接トーチを前記開先の幅方向にウィービングしながら溶接する際に、前記トーチ角度調整機構によって、前記溶接トーチを所望のトーチ角度に変更するトーチ角度調整工程と、
前記第1のトーチ角度と前記第2のトーチ角度での前記ズレ量から算出される、前記所望のトーチ角度における前記ズレ量を、前記移動機構によって修正するズレ量修正工程と、
を備える
ウィービング方法。
本構成によれば、溶接トーチ角度を開先壁への傾斜角に応じて可変しながらウィービング溶接することができるため、作業効率と溶接品質が向上する。
【0072】
(6) 前記第1のトーチ角度と前記第2のトーチ角度とは、前記溶接トーチが前記開先の幅方向に移動する際の両端におけるトーチ角度である、
(5)に記載のウィービング方法。
本構成によれば、ウィービング中に溶接トーチのトーチ角度を変更できるため、作業効率が向上する。
【0073】
(7) 開先を有するワークに取付けられたガイドレールに沿って移動し、前記ワークを溶接する可搬型溶接ロボットと、前記可搬型溶接ロボットの動作を制御する制御装置と、を有する溶接システムであって、
前記可搬型溶接ロボットは、
溶接トーチと、
前記溶接トーチを前記開先の延在方向、前記開先の幅方向、前記開先の深さ方向に移動させる移動機構と、
を備え、
前記制御装置は、
前記溶接トーチを用いて、前記開先をタッチセンシングして、前記開先の形状情報を算出すると共に、曲がり癖のある溶接ワイヤの先端と前記開先の形状の相関位置関係データを取得し、
前記開先の形状情報をもとに、積層設計を行い、
前記相関位置関係データに基づいて、前記積層設計された溶接パスの溶接トーチ狙い位置に、前記溶接トーチの前記溶接ワイヤの先端を移動させる、
溶接システム。
本構成によれば、溶接ワイヤの曲がり癖に影響されることなく、溶接トーチの狙い位置を設定することができ、作業効率及び溶接品質の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0074】
10 開先
50 溶接システム
100 可搬型溶接ロボット
110 ロボット本体
120 ガイドレール
140,170 トーチ角度調整機構
142 固定アーム部
142a ガイド溝(円弧リニアガイド)
143 可動アーム部
144 駆動モータ
144a ピニオンギヤ
147 ガイド体(ガイドブロック)
148 円弧ラック部
200 溶接トーチ
220 先端
600 制御装置
θ1 第1トーチ角度
θ2 第2トーチ角度
A1,A2 形状情報
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12