(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029443
(43)【公開日】2025-03-06
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
F16L 21/04 20060101AFI20250227BHJP
【FI】
F16L21/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134099
(22)【出願日】2023-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】503254607
【氏名又は名称】大同金属工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000180287
【氏名又は名称】エスケー化研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 澄
(72)【発明者】
【氏名】軽賀 英人
(72)【発明者】
【氏名】田中 康典
【テーマコード(参考)】
3H015
【Fターム(参考)】
3H015CA02
3H015CA05
3H015CA14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】より過酷な燃焼試験下においても流体の不漏状態を維持可能な管継手を提供する。
【解決手段】2カ所に管材Bを差し込む差込口が設けられ、これら差込口間が相互に連通された継手本体1と、管材Bを通す開口部を有するリング状に形成され、継手本体1の各差込口側から同心状に重なるように配置されるフォロワー2と、このフォロワー2を継手本体1の方向に押し付ける締結具3と、管材Bの外表面を取り囲むように密接し、継手本体1と、フォロワー2とで囲まれた収納空間に配置されるガスケット4と、フォロワー2に形成され、管材Bの管軸方向に沿って延びる内側リング部21と、を備え、収納空間内に収納されたガスケット4を内側リング部21の先端部210で押圧する管継手であって、フォロワー2の外表面200,220及び継手本体1の外表面100,110に耐火性シート50,51,52,60,61,62が設けられている。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2カ所に管材を差し込む差込口が設けられ、これら差込口間が相互に連通された継手本体と、
管材を通す開口部を有するリング状に形成され、前記継手本体の各差込口側から同心状に重なるように配置されるフォロワーと、
このフォロワーを前記継手本体の方向に押し付ける締結具と、
管材の外表面を取り囲むように密接し、前記継手本体と、前記フォロワーとで囲まれた収納空間に配置されるガスケットと、
前記フォロワーに形成され、管材の管軸方向に沿って延びる内側リング部と、を備え、
前記収納空間内に収納された前記ガスケットを前記内側リング部の先端部で押圧する管継手であって、
前記フォロワーの外表面及び前記継手本体の外表面に耐火性被覆材が設けられていることを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記フォロワーは、管材に直交する垂直部と、
前記継手本体の外表面の少なくとも一部を覆う外側リング部と、を備え、
前記垂直部の外表面と、前記外側リング部の外表面に耐火性被覆材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記外側リング部の先端部に耐火性被覆材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の管継手。
【請求項4】
前記外側リング部の内表面に耐火性被覆材が設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の管継手。
【請求項5】
前記垂直部の内表面に耐火性被覆材が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の管継手。
【請求項6】
前記垂直部の外表面と前記外側リング部の外表面に設けられる耐火性被覆材の厚みは、他の箇所の耐火性被覆材の厚みよりも厚くなるように設定されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の管継手。
【請求項7】
前記継手本体は、管軸方向に沿った中央リング体と、この中央リング体の両端に設けられる端部リング体とを備え、前記中央リング体の外表面と、前記端部リング体の外表面に前記耐火性被覆材が設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の管継手。
【請求項8】
外表面ごとに前記耐火性被覆材として耐火性シートを設け、外表面と外表面の境界部において、耐火性シート同士を重ね合わせて熱融着処理を行っていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火性を改善した管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶などで使用される管継手に対しては、高温度に耐える耐火性能が要求される。例えば、ISO19921や19922などでは、800℃の高温環境下で30分以上の燃焼試験を行う。その後、所定の水圧試験(2.4MPa、10分間)を行い、流体の不漏状態を保持するような性能が必要である。かかる要求に対応した管継手として、下記特許文献1に開示される管継手が公知である。
【0003】
この管継手は、2カ所に管材を差し込む差込口が設けられ、これら差込口間が相互に連通された継手本体と、管材を通す開口部が形成されたリング状に形成され、継手本体の各差込口側から同心状に重なるように配置されるフォロワー(リテーナ)と、フォロワーを継手本体に対して押し付ける締結具と、管材の外表面を取り囲むように密接し、継手本体と、フォロワーとで囲まれた収納空間に配置されるガスケットと、を備えている。更に、フォロワーには、継手本体に対して差込口が設けられた端部まわりを外嵌する防炎周壁が設けられている。
【0004】
また、別の特許文献2の管継手においては、ガスケットと継手本体(ソケット管)の端部を覆う円筒状の防炎カバーを設けている。
【0005】
管継手において不漏状態を維持するためには、ガスケットの性能が維持されることが重要である。特許文献1や特許文献2の管継手は、防炎周壁や防炎カバーを設けることで、ガスケットが継手本体の外部からの炎に対して直接的に曝されることがないようにし、高温環境からも可能な限り遮断するようにしている。これにより、船舶での使用に耐えられる管継手を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3154881号
【特許文献2】実用新案登録第3175106号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の性能試験では、800℃の高温環境下で30分以上という環境下ではあるが、管材に流体(80℃の湯)を流した状態で行っている。従って、この流体による放熱効果も耐火性能に影響している。
【0008】
しかしながら、近年においては、上記よりも更に過酷な条件下での耐火性能が要求されている。具体的には、管継手を使用する場所によっては、流体を流さないで耐火試験をクリアすることが要求されるようになった。前述の特許文献1や特許文献2に開示される管継手においても、流体を用いないドライな状態で同様の性能試験を行った場合、ガスケットが高熱により損傷してしまい、不漏状態を維持することが困難である。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、より過酷な燃焼試験下においても流体の不漏状態を維持可能な管継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明に係る管継手[1]は、
少なくとも2カ所に管材を差し込む差込口が設けられ、これら差込口間が相互に連通された継手本体と、
管材を通す開口部を有するリング状に形成され、前記継手本体の各差込口側から同心状に重なるように配置されるフォロワーと、
このフォロワーを前記継手本体の方向に押し付ける締結具と、
管材の外表面を取り囲むように密接し、前記継手本体と、前記フォロワーとで囲まれた収納空間に配置されるガスケットと、
前記フォロワーに形成され、管材の管軸方向に沿って延びる内側リング部と、を備え、
前記収納空間内に収納された前記ガスケットを前記内側リング部の先端部で押圧する管継手であって、
前記フォロワーの外表面及び前記継手本体の外表面に耐火性被覆材が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
かかる構成による管継手の作用・効果を説明する。この管継手は、継手本体と、フォロワーと、ガスケットと、締結具を備えている。ガスケットは、継手本体とフォロワーで囲まれた収納空間に配置され、管材表面と密接する。締結具は、フォロワーを継手本体に対して押し付ける作用をする。これにより、ガスケットを圧縮する方向に作用させ、管材表面とガスケットとの密着状態を確実にして、不漏状態を維持することができる。
【0012】
また、フォロワーの外表面と継手本体の外表面に耐火性被覆材を設けている。これにより、過酷な高温環境下において、ガスケットの方へ熱が伝わることを抑制し、ガスケットの劣化を抑制することができる。その結果、より過酷な燃焼試験下においても流体の不漏状態を維持可能な管継手を提供することができる。
【0013】
本発明に係る管継手[2]は管継手[1]において、前記フォロワーは、管材に直交する垂直部と、
前記継手本体の外表面の少なくとも一部を覆う外側リング部と、を備え、
前記垂直部の外表面と、前記外側リング部の外表面に耐火性被覆材が設けられていることが好ましい。
【0014】
本発明に係る管継手[3]は、管継手[1]又は[2]において、前記外側リング部の先端部に耐火性被覆材が設けられていることが好ましい。
【0015】
本発明に係る管継手[4]は、管継手[1]~[3]のいずれかにおいて、前記外側リング部の内表面に耐火性被覆材が設けられていることが好ましい。
【0016】
本発明に係る管継手[5]は、管継手[1]~[4]のいずれかにおいて、前記垂直部の内表面に耐火性被覆材が設けられていることが好ましい。
【0017】
本発明に係る管継手[6]は、管継手[1]~[5]のいずれかにおいて、前記垂直部の外表面と前記外側リング部の外表面に設けられる耐火性シートの厚みは、他の箇所の耐火性被覆材の厚みよりも厚くなるように設定されていることが好ましい。
【0018】
本発明に係る管継手[7]は、管継手[1]~[6]のいずれかにおいて、前記継手本体は、管軸方向に沿った中央リング体と、この中央リング体の両端に設けられる端部リング体とを備え、前記中央リング体の外表面と、前記端部リング体の外表面に耐火性被覆材が設けられていることが好ましい。
【0019】
本発明に係る管継手[8]は、管継手[1]~[7]のいずれかにおいて、外表面ごとに前記耐火性シートを設け、外表面と外表面の境界部において、耐火性シート同士を重ね合わせて熱融着処理を行っていることが好ましい。
【0020】
本発明に係る管継手[9]は、管継手[1]~[8]のいずれかにおいて、前記締結具は、ボルトとナットにより構成され、ナットと前記垂直部の外表面との間に皿バネ座金を介在させていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】第1実施形態に係る管継手の構成を示す中央断面図
【
図1E】管継手の一部を分解した状態を示す中央断面図
【
図2】第2実施形態に係る管継手の構成を示す断面図
【
図3】第3実施形態に係る管継手の構成を示す断面図
【
図4】第4実施形態に係る管継手の構成を示す断面図
【
図5】第5実施形態に係る管継手の構成を示す断面図
【
図6】第6実施形態に係る管継手の構成を示す断面図
【
図7】各部の温度測定データを示す図(耐火性シートなし)
【
図8】各部の温度測定データを示す図(耐火性シートあり)
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る管継手の好適な実施形態を図面を用いて説明する。
図1は、第1実施形態に係る管継手の構成を示す中央断面図である。
図1Bは、
図1Aに示す管継手の正面図(管軸方向から見た図)である。
図1Cは、フォロワーを管軸方向から見た正面図である。
図1Dは、フォロワーを管軸方向から見た背面図である。
図1Eは、管継手の一部を分解した状態を示す中央断面図である。
【0023】
図1Aに示すように、2つの管材Bを接続する管継手Aが示されている。
図1Aは、管軸を通る面で切断した断面図である。管継手Aは、継手本体1と、フォロワー2と、締結具3と、ガスケット4を備えている。
【0024】
<継手本体の構成>
継手本体1は、管材Bを差し込む差込口が2カ所設けられており、
図1Aに示すように、右側と左側の差込口から管材Bが差し込まれた状態を示している。フォロワー2は、継手本体1を挟んで一対配置されるが同じ形状である。
【0025】
継手本体1は、管軸方向に沿った中央リング体10と、この中央リング体10の両端にそれぞれ設けられる端部リング体11が一体化されている。左右の端部リング体11の形状は同じである。中央リング体10の外径は、端部リング体11の外径よりも小さくなるように設定されている。中央リング体10の内径は、端部リング体11の内径(ガスケット4が収容されない中央リング体10に隣接する箇所の内径)よりも大きくなるように設定されている。
【0026】
端部リング体11と中央リング体10とは溶接により結合されており、溶接個所は黒い三角で図示されている。継手本体1の素材は、SS400等の一般構造用圧延鋼材であるが、他の素材を用いてもよい。なお、継手本体1としては、中央リング体10と端部リング体11を一体成形により構成してもよい。
【0027】
中央リング体10の内径と、管材Bの外表面との間には所定の間隔が形成される。また、端部リング体11の前述の内径と、管材Bの間にもわずかな隙間S1が形成される。隙間S1の大きさは1.5mm程度である。この隙間S1により管材Bの揺動を許容する。隙間S1の大きさは上記数値に限定されるものではなく、適宜設定可能である。管材Bは、継手本体1の中央リング体10の位置にまで差し込まれた状態が図示されている。
【0028】
<フォロワーの構成>
フォロワー2は、管材Bと直交する垂直部20と、内側リング部21と、外側リング部22が一体形成されている。垂直部20は、所定の厚さを有する円板状に形成されている。
図1Dは、フォロワー2のみを示す背面図である。
図1Dに示すように、中央に管材Bを通すための開口部を有し、内側リング部21と外側リング部22の間に穴202が円周方向に沿って等間隔に6カ所形成されている。
【0029】
フォロワー2は、継手本体1の各差込口側から同心状に重なるように配置される。内側リング部21と外側リング部22で挟まれる空間部に継手本体1の端部リング体11が入り込むように配置されている。なお、外側リング部22は、前述の特許文献1に開示される防炎周壁に該当する。
【0030】
フォロワー2は、管材Bと直交する垂直部20を備えているが、この「直交」というのは、
図1Aに示すように、管材Bの管軸と、フォロワー2の中心軸が一致している状態でのことを指す。
【0031】
内側リング部21の外表面と管材Bの外表面の間には隙間S2が形成される。隙間S2は隙間S1と同じ程度であり、1.5mm程度である。隙間S2は、隙間S1と同様に設定されるものである。内側リング部21は、管軸方向に沿って延びており、その先端部210でガスケット4を押圧可能にしている。
【0032】
外側リング部22は、管軸方向に沿って延びており、その長さは、内側リング部21よりも長く延びている。内側リング部21と外側リング部22の間に形成されるリング状の空間(
図1D参照)に、継手本体1の端部リング体11が入り込んでいる。端部リング体11と外側リング部22の間、端部リング体11と内側リング部21の間には所定の大きさの隙間が形成されている。この隙間は、両者が接触するかしないかというレベルの隙間である。なお、後述の別の実施形態においては、端部リング体11の外表面や、外側リング部22の内表面に耐火性シートが貼り付けられるが、この場合にも、同じようなレベルの隙間が形成される。
【0033】
フォロワー2は、好ましくは、FCD450-10(球状黒鉛鋳鉄)により製造されるが、他の素材で製造してもよい。
【0034】
<締結具の構成>
締結具3は、スタッドボルト30と、ナット31と、皿バネ座金32により構成される。フォロワー2の垂直部20には穴202が形成され、スタッドボルト30を挿通させることができる。スタッドボルト30の先端は、端部リング体11に形成されたネジ穴114に螺合する。これにより、フォロワー2を継手本体1の方向に押し付けることができる。ネジ穴114も穴202に対応して円周方向に等間隔に6カ所設けられている。皿バネ座金32を用いることで、環境変化により各部の寸法変化が生じたとしても、所望の締結力を維持できるようにしている。
【0035】
なお、スタッドボルト30の個数は6箇所でなくてもよく、例えば、8箇所にしてもよく、好ましくは3カ所以上である。なお、端部リング体11にはネジ穴114を形成しているが、雌ねじなしの穴とし、スタッドボルト30を圧入固定または当接固定する構造としてもよい。スタッドボルト30としては、熱膨張を起こしにくい素材(クロム系金属、ステンレス、チタン等)を用いることができる。
【0036】
<ガスケットの構成>
ガスケット4もリング状に形成されるが、断面形状は
図1Aに示すように台形形状である。ガスケット4は、継手本体1とフォロワー2の間に形成される収納空間(
図1Eの符号C参照)に収納される。ガスケット4は、管材Bの外表面を取り囲むように密接する。収納空間Cは、ガスケット4の外形形状に対応した断面台形形状を有する。
【0037】
ガスケット4は、密接面40,テーパ面41,被押圧面42を有する。密接面40は、管材表面に密接する。被押圧面42は、フォロワー2の内側リング部21の先端部210により押圧される。これにより、ガスケット4が押し込まれて、管材表面との密着性が高まる。テーパ面41により、ガスケット4は、管材表面の方向に向けて圧縮力が作用する。また、先端部210もテーパ面となっており、管材表面の方向に向けて押圧力が作用するようにしている。
【0038】
前述のように、隙間S1,S2が形成されているので、管材Bはガスケット4の位置を中心として揺動が可能な状態で支持される。また、密接状態を保持したままで管材Bは管軸方向に移動が可能である。
【0039】
ガスケット4は、特定の材質に限定されるものではないが、難燃性及び耐熱性に優れた材質になるように添加物を調整したニトリルゴム等の適宜の素材を使用することができる。
【0040】
<耐火性シートの貼り付け>
次に、耐火性被覆材の一例である耐火性シートについて説明する。
図1Aに示すように、管継手の垂直部20の外表面と、継手本体1の外表面には耐火性シートが貼り付けられる(設けられる)。耐火性シートを貼り付けることで、高温環境下においてガスケット4が高温になることを抑制することができる。貼り付けは、ボンド等の接着剤を用いることができる。
【0041】
図1Aに示す実施形態において、垂直部20の外表面200に耐火性シート50が貼り付けられ、外側リング部22の外表面220に耐火性シート51が貼り付けられ、外側リング部22の先端部221(外表面の一部に相当)に耐火性シート52が貼り付けられる。
【0042】
また、継手本体1の中央リング体10の外表面100に耐火性シート60が貼り付けられ、端部リング体11の垂直面である外表面110に耐火性シート61が貼り付けられる。また、中央リング体10と端部リング体11の溶接個所にも耐火性シート62が貼り付けられる。
【0043】
耐火性シートとしては、火災等により周囲温度が上昇して、所定の温度に達すると発泡し、炭化断熱層を形成するものを用いることができる。
【0044】
耐火性シートについては特定の素材に限定されるものではないが、例えば、エスケー化研株式会社製のSKタイカシート、特開2021-41579号公報、特開2005-60946号公報等に記載のもの等を用いることができる。シートの厚みは、例えば、1.5mmのものが使用されるが、これに限定されるものではない。
【0045】
以上のように、高温環境下に晒される外表面に耐火性シートを貼り付けることで、ガスケット4への熱伝導を抑制し、ガスケット4が高温で劣化することを抑制することができる。
図1Aに示す実施形態では、フォロワー2の外側リング部22の先端部221は、端部リング体11の外表面を覆う十分な長さを備えている。かかる構成も耐火性能に寄与している。すなわち、外側リング部22は、端部リング体11を完全に覆うことができる程度の長さを有している。
【0046】
図1Cは、締結具3を取り除いた状態の図であるが、耐火性シート50には、スタッドボルト30を挿通するための穴500が形成されている。穴500の径は、ナット31や皿バネ座金32の径よりも小さくなるように設定されている。
【0047】
耐火性シートは、1つの面に1枚を貼り付けることを基本とする。例えば、垂直部20の外表面200に貼る耐火性シート50と外側リング部22の外表面220に貼る耐火性シート51は、別々のシートである。その場合、外表面と外表面の境界部において、耐火性シート同士を重ね合わせて熱融着処理を行っている。これにより、境界部(角の部分)において外表面が露出することがないので、効率よく耐火性を高めることができる。これに関しては、他の境界部に関しても同様である。また、後述する実施形態においても同様の処理を行っている。外表面と内表面の境界部に関しても同様である。
【0048】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る管継手について
図2により説明する。第1実施形態と異なる部分について主に説明する。第2実施形態においては、継手本体1の端部リング体11の外表面113に耐火性シート63が貼り付けられる。外側リング部22の長さは、第1実施形態に比べて短くなっているが、外側リング部22は、端部リング体11の外表面の一部を覆っている形態である。耐火性シート63は、外側リング部22の内周面にまで入り込んでおり、耐火性能を高めている。
【0049】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係る管継手について
図3により説明する。他の実施形態と異なる部分について主に説明する。第3実施形態においては、外側リング部22の先端部221に耐火性シート52が貼り付けられ、外側リング部22の内表面222に耐火性シート53が貼り付けられている。外側リング部22の長さは第2実施形態と同じであるが、端部リング体11の外表面113に貼り付けられている耐火性シート63と、外側リング部22の耐火性シート53は、部分的に二重になっており耐火性能を高めている。
【0050】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態に係る管継手について
図4により説明する。第3実施形態と異なるのは、フォロワー2の外表面に貼り付けられる耐火性シート50,51,52が2枚重ねになっており、他の箇所よりも厚みが2倍になっている点である。また、垂直部20の内表面201にも耐火性シート54が貼り付けられている。これにより、フォロアー2を介しての内部への伝熱を抑制している。なお、厚みを変える場合、2枚重ねではなく、厚みの大きなシートを貼り付けてもよい。例えば、耐火性シート50,51,52は厚み3mmのものを使用し、他の箇所は厚み1.5mmのものを使用してもよい。
【0051】
<第5実施形態>
次に第5実施形態に係る管継手について
図5により説明する。第5実施形態において、継手本体1の形状が他の実施形態と異なる。継手本体1は、中央リング体15と端部リング体17を有する。中央リング体15と端部リング体17の外径は同じである。端部リング体17の内側に収納空間Cが形成されガスケット4が収納される。継手本体1は、立設リング体16が2カ所設けられており、中央リング体15に対して溶接により結合される。溶接個所は黒い三角で示される。なお、立設リング体16を中央リング体15や端部リング体17と一体的に製造してもよい。
【0052】
締結具3は、ボルト30とナット31と皿バネ座金32を備える。立設リング体16には、ボルト30を挿通させるための穴160が形成される。継手本体1と管材Bの間に隙間S1が形成され、フォロワー2と管材Bの間に隙間S2が形成されることは、他の実施形態と同じである。締結具3により、フォロワー2を継手本体1に対して押し付ける作用をする。
【0053】
フォロワー2の外側リング部22は、立設リング体16を覆う程度の長さを有している。フォロワー2の垂直部20の外表面200に耐火性シート50が2枚重ねで貼り付けられ、外側リング部22の外表面220に耐火性シート51が2枚重ねで貼り付けられ、外側リング部22の先端部221に耐火性シート52が2枚重ねで貼り付けられている。
【0054】
継手本体1は、2つの立設リング体16の間の外表面に耐火性シートが貼り付けられる。具体的には、中央リング体15の外表面152に耐火性シート60が貼り付けられ、立設リング体16の外表面161に耐火性シート61が貼り付けられる。また、溶接個所の表面にも耐火性シート62が貼り付けられる。
【0055】
<第6実施形態>
次に第6実施形態に係る管継手について
図6により説明する。第6実施形態において、継手本体1は、概ね第5実施形態と同じである。締結具3は、左右のフォロワー2を1つのスタッドボルト30により締結するように設けられる。そのため、フォロワー2には、スタッドボルト30を挿通させるための穴が形成される。スタッドボルト30は、2つの皿バネ座金32と1つの平ワッシャ33を介してナット31により締結される。
【0056】
フォロワー2の外表面200,220,221には、耐火性シート50,51,52が貼り付けられる。継手本体1の外表面には耐火性シート60が貼り付けられる。
【0057】
<実験結果>
図7は、耐火性シートを貼り付けなかった場合の管継手の各部の温度変化を示すグラフである。
図8は、耐火性シートを貼り付けた場合の管継手の各部の温度変化を示すグラフである。管継手と耐火性シートの貼り付け場所は
図3に示す実施形態のものである。管継手は模式的に示している。グラフの縦軸は温度(℃)を示し、横軸は時間経過(分)を示す。
【0058】
熱電対を使用して(1)~(6)の箇所の温度を測定した。(1)は継手本体1の内表面の中央部を示す。(2)はガスケット4のテーパ面の位置を示す。(3)はガスケット4の管材Bと密接する箇所を示す。(4)はフォロワー2の表面温度を示す。(5)は、継手本体1の外側にある管材Bの表面温度を示す。(6)は、継手本体1の中央部の外表面から所定距離離れた位置を示す。(6)は加熱温度の値を示す。
【0059】
図7からも分かるように、耐火性シートを使用しない場合、ガスケット周囲(2)(3)の温度は500℃近くまで上昇する。これに対して、
図8に示すように、耐火性シートを用いた場合、ガスケット周囲(2)(3)の温度は200℃以下に抑えられる。従って、過酷な環境下においてもガスケットの劣化を抑制することができる。
【0060】
<別実施形態>
本実施形態においては、種々の実施形態について説明したが、ある実施形態の構成を他の実施形態に対して適宜採用してもよい。例えば、第2実施形態において、第1実施形態と同様に、外側リング部22の先端部にも耐火性シートを貼り付けてもよい。
【0061】
耐火性シートの表面には、適宜塗装を行うこともできる。
【0062】
耐火性シートに替えて、耐火性塗料の塗装によって耐火性被覆材を設けることもできる。耐火性塗料としては、火災等により周囲温度が上昇して、その塗膜が所定の温度に達すると発泡し、炭化断熱層を形成するものを用いることができる。耐火性塗料については特定の素材に限定されるものではないが、例えば、エスケー化研株式会社製のSKタイカコート、特開2021-41579号公報、特開2005-60946号公報等に記載のもの等を用いることができる。耐火性塗料による塗膜の厚みは、例えば、1.5mmとすることができるが、これに限定されるものではない。
【0063】
継手本体1としては、少なくとも2カ所に管材Bの差込口があればよく、差込口の数を増加させて三方継手や四方継手として構成してもよい。
【符号の説明】
【0064】
A 管継手
B 管材
C 収納空間
S1,S2 隙間
1 継手本体
100,110 外表面
10,15 中央リング体
11,17 端部リング体
2 フォロワー
20 垂直部
200 外表面
21 内側リング部
210 先端部
22 外側リング部
220 外表面
221 先端部
222 内表面
3 締結具
30 スタッドボルト
31 ナット
32 皿バネ座金
4 ガスケット
50,51,52,53,54 耐火性シート
60,61,62,63 耐火性シート