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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002946
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/24 20210101AFI20241226BHJP
   H01M 50/227 20210101ALI20241226BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20241226BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20241226BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20241226BHJP
   H01M 50/124 20210101ALI20241226BHJP
   H01M 50/131 20210101ALI20241226BHJP
   H01M 50/16 20210101ALI20241226BHJP
【FI】
H01M50/24
H01M50/227
H01M50/209
H01M50/103
H01M50/121
H01M50/124
H01M50/131
H01M50/16
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103354
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志村 陽祐
(72)【発明者】
【氏名】大林 叔朗
(72)【発明者】
【氏名】山中 篤
(72)【発明者】
【氏名】千原 真志
(72)【発明者】
【氏名】杉江 和紀
(72)【発明者】
【氏名】米川 紘輔
(72)【発明者】
【氏名】平尾 康裕
【テーマコード(参考)】
5H011
5H040
【Fターム(参考)】
5H011AA10
5H011CC02
5H011FF03
5H040AA33
5H040AT04
5H040AY08
5H040CC01
5H040LL06
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】樹脂ケースの透湿性が低減した蓄電モジュールを提供する。
【解決手段】本開示に基づく蓄電モジュール1は、複数の電極体100と、ケース200とを備えている。ケース200は、底部210と、周側壁部220と、蓋部250と、少なくとも1つの隔壁部260とを備えている。底部210は、第2方向D2において複数の電極体100の一方側に位置している。隔壁部260は、底部210および周側壁部220と一体的に成形されている。隔壁部260は、互いに隣り合う複数の電極体100同士の間に位置している。底部210、周側壁部220および蓋部250の各々は、樹脂層Rと、バリア層Bとを有している。樹脂層Rは、樹脂組成物からなる。バリア層Bは、樹脂層Rに積層されている。バリア層Bは、樹脂層Rより低い透湿性を有している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に並ぶ複数の電極体と、
前記複数の電極体を収容するケースとを備え、
前記ケースは、
前記第1方向に直交する第2方向において前記複数の電極体の一方側に位置する底部と、
前記底部の外周端から前記第2方向に沿って起立し、前記複数の電極体を取り囲む周側壁部と、
前記第2方向において前記複数の電極体の他方側に位置する蓋部と、
前記底部および前記周側壁部と一体的に成形され、互いに隣り合う前記複数の電極体同士の間に位置する少なくとも1つの隔壁部とを備え、
前記底部、前記周側壁部および前記蓋部の各々は、樹脂組成物からなる樹脂層と、該樹脂層に積層され、かつ、該樹脂層より低い透湿性を有するバリア層とを有する、蓄電モジュール。
【請求項2】
前記底部は、前記樹脂層として第1樹脂組成物からなる第1底樹脂層と、前記バリア層として底バリア層とを含み、
前記周側壁部は、前記樹脂層として前記第1樹脂組成物からなる第1周側樹脂層と、前記バリア層として周側バリア層とを含み、
前記隔壁部は、前記第1樹脂組成物からなり、
前記第1底樹脂層と、前記第1周側樹脂層と、前記隔壁部とが、互いに一体的に成形されている、請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記周側壁部は、第2樹脂組成物からなる第2周側樹脂層をさらに含み、
前記周側バリア層は、前記第1周側樹脂層から見て前記ケースの外側に配置され、
前記周側バリア層は、前記第2周側樹脂層を介して前記第1周側樹脂層に接合されている、請求項2に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記周側バリア層は、前記周側壁部から露出しないように、前記第1周側樹脂層に埋没している、請求項2に記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
前記底部は、第3樹脂組成物からなる第2底樹脂層をさらに含み、
前記底バリア層は、前記第1底樹脂層から見て前記ケースの外側に配置され、
前記底バリア層は、前記第2底樹脂層を介して前記第1底樹脂層に接合されている、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2019-106372号公報)に開示された電池ケースの収容部は、下部壁と複数(たとえば3つ、4つ、またはそれ以上)の側壁が一体化して内部に空間を形成し、下部壁に対向する開放面を有し、空間内に1つ以上(たとえば2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上)の隔壁が提供される。これにより、収容部は、空間内に配置される1つ以上の隔壁によって分離される複数の電池区画部を含む。それぞれの電池区画部には、電極組立体をそれぞれ収容できる。また、上述の電池ケースは、収容部の開放面を閉じるための蓋部をさらに含む。収容部は、ベースポリマー、およびベースポリマーに分散された無機吸湿剤を含む組成物の成形品である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-106372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、複数の電極体を収容可能な樹脂製のケースが開示されている。しかしながら当該ケースは樹脂製であるため、金属製のケースと比較して透湿性が高い。ケースの透湿性を低減させることについてはさらなる改善の余地がある。
【0005】
本開示は上記の課題に鑑みてなされたものであり、樹脂ケースの透湿性が低減した蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に基づく蓄電モジュールは、複数の電極体と、ケースとを備えている。複数の電極体は、第1方向に並んでいる。ケースは、複数の電極体を収容している。ケースは、底部と、周側壁部と、蓋部と、少なくとも1つの隔壁部とを備えている。底部は、第2方向において複数の電極体の一方側に位置している。第2方向は、第1方向に直交している。周側壁部は、底部の外周端から第2方向に沿って起立している。周側壁部は、複数の電極体を取り囲んでいる。蓋部は、第2方向において複数の電極体の他方側に位置している。隔壁部は、底部および周側壁部と一体的に成形されている。隔壁部は、互いに隣り合う複数の電極体同士の間に位置している。底部、周側壁部および蓋部の各々は、樹脂層と、バリア層とを有している。樹脂層は、樹脂組成物からなる。バリア層は、樹脂層に積層されている。バリア層は、樹脂層より低い透湿性を有している。
【0007】
上記の構成によれば、底部、周側壁部、および蓋部のそれぞれに、樹脂層とともにバリア層が配置される。これにより、蓄電モジュールにおいて、ケースが主に樹脂層で構成される場合であっても、ケースの透湿性を低減できる。ひいては、樹脂ケースの透湿性が低減した蓄電モジュールが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、樹脂ケースの透湿性が低減した蓄電モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係る蓄電モジュールを示す斜視図である。
図2】実施形態1に係る蓄電モジュールを部分的に分解した分解斜視図である。
図3図1の蓄電モジュールをIII-III線矢印方向に見た断面図である。
図4図1の蓄電モジュールをIV-IV線矢印方向に見た断面図である。
図5図1の蓄電モジュールにおける電極体をV-V線矢印方向に見た断面図である。
図6図6Aおよび図6Bは、実施形態2に係る蓄電モジュールの断面図である。
図7】実施形態3に係る蓄電モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0011】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る蓄電モジュールを示す斜視図である。図2は、実施形態1に係る蓄電モジュールを部分的に分解した分解斜視図である。図3は、図1の蓄電モジュールをIII-III線矢印方向に見た断面図である。図4は、図1の蓄電モジュールをIV-IV線矢印方向に見た断面図である。
【0012】
図1から図4に示すように、本開示の実施形態1に係る蓄電モジュール1は、複数の電極体100と、ケース200とを備えている。複数の電極体100は、第1方向D1に並んでいる。なお、後述する第2方向D2は、第1方向D1に直交する方向であり、第3方向D3は、第1方向D1および第2方向D2の両方に直交する方向である。ケース200は、複数の電極体100を収容している。
【0013】
本実施形態において、複数の電極体100は、第1電極体100A、第2電極体100B、および、第3電極体100Cを含んでいる。第3電極体100Cは、第1電極体100Aから見て、第2電極体100Bの反対に位置している。複数の電極体100は、4つ以上の電極体を含んでもよい。
【0014】
図5は、図1の蓄電モジュールにおける電極体をV-V線矢印方向に見た断面図である。図5に示すように、複数の電極体100の各々は、複数の電極110,120と、セパレータ130とを備えている。本実施形態において、電極体100はたとえばリチウムイオン二次電池などの二次電池のための電極体である。
【0015】
図5に示すように、複数の電極110,120は、第1方向D1に並ぶように配置されている。複数の電極110,120は、複数の正極電極110と、複数の負極電極120と、を有している。
【0016】
各正極電極110は、第3方向D3に長い長方形形状に形成されている。各正極電極110は、正極集電箔112と、正極集電箔112の両面に設けられた正極活物質層114と、を有している。正極集電箔112は、正極活物質層114が設けられていない正極タブ112p(図3および図4参照)を有している。正極タブ112pは、第3方向D3における一方側に向かって突出している。
【0017】
各負極電極120は、第3方向D3に長い長方形形状に形成されている。各負極電極120は、負極集電箔122と、負極集電箔122の両面に設けられた負極活物質層124と、を有している。負極集電箔122は、負極活物質層124が設けられていない負極タブ122n(図3および図4参照)を有している。負極タブ122nは、第3方向D3における他方側に向かって突出している。
【0018】
セパレータ130は、正極電極110および負極電極120間を絶縁している。セパレータ130は、絶縁材料からなり、イオンの透過を許容する微小な空隙を有している。図5に示すように、セパレータ130は、つづら折り状に形成されている。
【0019】
セパレータ130は、つづら折り状に形成される前の状態では長方形形状を呈している。セパレータ130は、各電極110,120間につづら折り状に形成されながら配置される。セパレータ130は、複数の介在部132aと、複数の上折返し部132bと、複数の下折返し部132cと、最外被覆部132dと、を有している。
【0020】
各介在部132aは、一方向に互いに隣接する一対の電極110,120間に介在している。つまり、各介在部132aは、正極電極110および負極電極120間を絶縁する機能を有している。各介在部132aは、矩形状の領域で構成されている。
【0021】
各上折返し部132bは、複数の介在部132aのうちの一の介在部132aの上端部と、複数の介在部132aのうち一方向における一方側に上記一の介在部132aに隣接する介在部132aの上端部と、を互いに連結している。本実施形態では、上折返し部132bは、正極電極110の上方に配置されている。
【0022】
各下折返し部132cは、複数の介在部132aのうちの上記一の介在部の下端部と、複数の介在部132aのうち一方向における他方側に上記一の介在部に隣接する介在部132aの下端部と、を互いに連結している。本実施形態では、下折返し部132cは、負極電極120の下方に配置されている。換言すれば、負極電極120は、下折返し部132c上に配置されている。
【0023】
最外被覆部132dは、各上折返し部132bおよび各下折返し部132cをまとめて被覆している。より詳細には、最外被覆部132dは、全ての電極110,120、全ての介在部132a、全ての上折返し部132bおよび全ての下折返し部132cを、第3方向D3と平行な中心軸まわりに巻回しながらまとめて被覆している。最外被覆部132dの終端132eは、一方向に正極活物質層114および負極活物質層124と重ならない範囲に設定されている。本実施形態では、最外被覆部132dの終端132eは、各電極110,120の下方に設けられている。なお、複数の電極110,120およびセパレータ130の周面と底面には、絶縁フィルムが被覆されていてもよいし、被覆されていなくてもよい。複数の電極110,120およびセパレータ130の周面と底面は、ケース200と直接に接していてもよい。
【0024】
図1から図4に示すように、ケース200は、底部210と、周側壁部220と、蓋部250と、少なくとも1つの隔壁部260とを備えている。底部210、周側壁部220および蓋部250の各々は、樹脂層Rと、バリア層Bとを有している。
【0025】
樹脂層Rは、電気的絶縁性を有している。樹脂層Rは、樹脂組成物からなる。バリア層Bは、樹脂層Rに積層されている。バリア層Bは、樹脂層Rより低い透湿性を有している。樹脂層Rおよびバリア層Bの詳細については後述する。
【0026】
底部210は、第2方向D2において複数の電極体100の一方側に位置している。底部210は、第1方向D1および第3方向D3に沿って延びている。第2方向D2から見て、底部210は矩形状の外形を有している。
【0027】
底部210は、樹脂層Rとして第1樹脂組成物からなる第1底樹脂層211と、バリア層Bとして底バリア層212と、第3樹脂組成物からなる第2底樹脂層213とを含んでいる。なお、第2樹脂組成物については後述する。
【0028】
底バリア層212は、第1底樹脂層211から見てケース200の外側に配置されている。底バリア層212は、第2方向D2から見て、第1底樹脂層211全体に重なるように配置されている。底バリア層212は、第2底樹脂層213を介して第1底樹脂層211に接合されている。
【0029】
第2底樹脂層213は、熱溶着により、第1底樹脂層211に接合されている。第2底樹脂層213と第1底樹脂層211とは、互いの接触面の全体が溶着されていてもよいし、互いの接触面の一部が溶着されてもよい。第2底樹脂層213は、第2方向D2から見たときの第1底樹脂層211の外周端部近傍にのみ溶着されてもよい。
【0030】
周側壁部220は、底部210の外周端から第2方向D2に沿って起立している。周側壁部220は、複数の電極体100を取り囲んでいる。周側壁部220は、底部210側とは反対側に向く開口OPを形成している。
【0031】
周側壁部220は、一対の第1壁部230と、一対の第2壁部240とを有している。一対の第1壁部230は、第1方向D1に並んでいる。一対の第1壁部230は、第3方向D3に沿って延びている。一対の第2壁部240は、第3方向D3に並んでいる。一対の第2壁部240は、第1方向D1に沿って延びている。
【0032】
周側壁部220は、樹脂層Rとして第1樹脂組成物からなる第1周側樹脂層221と、バリア層Bとして周側バリア層222と、第2樹脂組成物からなる第2周側樹脂層223とを含んでいる。
【0033】
周側バリア層222は、第1周側樹脂層221から見てケース200の外側に配置されている。周側バリア層222は、第1方向D1および第3方向D3から見て、第1周側樹脂層221全体に重なるように配置されている。周側バリア層222は、第2周側樹脂層223を介して第1周側樹脂層221に接合されている。
【0034】
第2周側樹脂層223は、熱溶着により、第1周側樹脂層221に接合されている。第2周側樹脂層223と第1周側樹脂層221とは、互いの接触面の全体が溶着されていてもよいし、互いの接触面の一部が溶着されてもよい。たとえば、第1方向D1から見たときに、一対の第1壁部230の各々の周端部近傍においてのみ、第2周側樹脂層223と第1周側樹脂層221とが互いに熱溶着されてもよい。第3方向D3から見たときに、一対の第2壁部240の各々の周端部近傍においてのみ、第2周側樹脂層223と第1周側樹脂層221とが互いに熱溶着されてもよい。
【0035】
蓋部250は、第2方向D2において複数の電極体100の他方側に位置している。蓋部250は、開口OPを閉塞している。蓋部250は、たとえばフィルム状の外形を有している。
【0036】
蓋部250は、樹脂層Rとして第4樹脂組成物からなる蓋樹脂層251と、バリア層Bとして蓋バリア層252とを含んでいる。
【0037】
蓋樹脂層251は、第1周側樹脂層221と、熱溶着などにより接合されている。蓋バリア層252は、蓋樹脂層251から見てケース200の外側に配置されている。蓋バリア層252は、蓋樹脂層251を介して第1周側樹脂層221に接合されている。
【0038】
隔壁部260は、互いに隣り合う複数の電極体100同士の間に位置している。隔壁部260は、ケース200の収容空間Sを区画している。本実施形態に係るケース200は、複数の隔壁部260を有している。複数の隔壁部260は、第1隔壁部260Aと第2隔壁部260Bとを含む。複数の隔壁部260は、3以上の隔壁部を含んでもよい。
【0039】
ケース200の収容空間Sには、第1隔壁部260Aによって、第1区画S1および第2区画S2が形成されている。また、収容空間Sには、第2隔壁部260Bによって、第1区画S1および第3区画S3が形成されている。第3区画S3は、第1区画S1から見て第2区画S2の反対に位置している。
【0040】
そして、第1電極体100Aが第1区画S1に収容されている。第2電極体100Bが、第2区画S2に収容されている。第3電極体100Cが、第3区画に収容されている。収容空間S(第1区画S1、第2区画S2、第3区画S3)には、電解液が注入されている。なお、電解液は図示されていない。電解液を注入する方法は特に限定されない。電解液は、蓋部250によって開口OPが閉塞される前に、開口OPから注入されてもよい。
【0041】
隔壁部260は、第1樹脂組成物からなる。隔壁部260は、底部210および周側壁部220と一体的に成形されている。具体的には、第1底樹脂層211と、第1周側樹脂層221と、隔壁部260とが、互いに一体的に成形されている。隔壁部260と蓋樹脂層251とは、熱溶着により互いに接合されてもよいし、されていなくてもよい。
【0042】
なお、本実施形態において、上述の「一体的に成形される」方法としては、射出成形などの公知の方法により1つのステップで各構成部品の成形と接合とが同時に行われる方法、または、複数の構成部品がそれぞれ別個に成形された後、互いに溶着、溶接もしくは接着などの公知の接合方法により互いに接合される方法などが挙げられる。
【0043】
ここで、本実施形態において、第1底樹脂層211、第1周側樹脂層221、および、隔壁部260を構成し得る、第1樹脂組成物について説明する。
【0044】
第1樹脂組成物は、ベースポリマーとして、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニル、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリサイクリックオレフィンコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、液晶ポリマー(LCP)、フッ素系樹脂、これらの混合物、これらのアロイ、又はこれらの共重合体を含むことができる。ベースポリマーは、これらに制限されない。
【0045】
第1樹脂組成物は、ベースポリマーとしてポリオレフィン、液晶ポリマー、または、フッ素系樹脂を含み得る。ポリオレフィンは、高密度ポリエチレン(HDPE:High Density Polyethylene)を含み得る。高密度ポリエチレン、液晶高分子、または、フッ素系樹脂は、比較的低い水蒸気透過率を有する。このため、これらを含む樹脂組成物で主に構成されるケース200は、耐透湿性が比較的高い。
【0046】
液晶ポリマーは、ヒドロキシ安息香酸のオリゴマーに由来する構造単位を含み得る。液晶ポリマーは、ヒドロキシ安息香酸のオリゴマー以外に、HNA(2,6-hydroxynaphthoic acid)、TPA(terephthalic acid)、IPA(isophthalic acid)、HQ(hydroquinone)、BP(biphenol)、PET(polyethylene terephthalate)、およびPEN(polyethylene naphthalate)からなる群より選択される2種以上をさらに含み、ヒドロキシ安息香酸(HBA)のオリゴマーとともに共重合したものであってもよい。
【0047】
フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、又はこれらの混合物又は共重合体などが挙げられる。フッ素系樹脂は、疎水性を帯びている。したがって、樹脂組成物の総重量を基準にして、樹脂組成物には、たとえば、約20重量%以下、約15重量%以下、約10重量%以下、約3重量%~約10重量%、約5重量%~約10重量%のフッ素系樹脂が含み得る。フッ素系樹脂の含有量が上記の範囲内であれば場合、第1樹脂組成物からなる成形品は、外気と接触する成形品の表面から水分を遮断する効果を有すると考えられる。
【0048】
第1樹脂組成物は、水蒸気透過率抑制の観点から、無機吸湿剤や、グラファイトをさらに含み得る。また、上記樹脂組成物は、グラファイト以外にも、既存の水分バリア性物質として知られた物質をさらに含むことができる。
【0049】
本実施形態において、底バリア層212および第2底樹脂層213、周側バリア層222および第2周側樹脂層223、ならびに、蓋樹脂層251および蓋バリア層252は、いわゆるラミネートフィルムで構成されている。
【0050】
底バリア層212、周側バリア層222、および、蓋バリア層252は、たとえばアルミニウムなどの金属により構成されている。本実施形態において、底バリア層212、周側バリア層222、および、蓋バリア層252の、各々の厚さは、成形性の観点から、たとえば、100μm以下であることが好ましい。
【0051】
第2底樹脂層213、第2周側樹脂層223、および、蓋樹脂層251の厚さは、いずれも、第1底樹脂層211、および、第1周側樹脂層221の厚さより薄い。第2底樹脂層213、第2周側樹脂層223、および、蓋樹脂層251の厚さは、たとえば50μm以下であってもよい。
【0052】
第2底樹脂層213を構成する第3樹脂組成物、第2周側樹脂層223を構成する第2樹脂組成物、蓋樹脂層251を構成する第4樹脂組成物の具体的な組成は特に限定されない。第2樹脂組成物、第3樹脂組成物、第4樹脂組成物に含まれるベースポリマーは、第1樹脂組成物の含まれるベースポリマーと同じであることが好ましい。これにより、第2底樹脂層213、第2周側樹脂層223、および、蓋樹脂層251を、第1樹脂組成物からなるケース200の他の樹脂層に熱溶着させることが容易となる。熱溶着をより容易にする観点から、これらの組成物のベースポリマーは、ポリエチレンまたはポリプロピレンであることも好ましい。
【0053】
本開示の実施形態1に係る蓄電モジュール1は、複数の導電部材300を備えている。各導電部材300は、第3方向D3において複数の電極体100と並んでいる。各導電部材300は、第1方向D1において互いに隣り合う複数の電極体100同士を電気的に接続してもよい。複数の導電部材300は、収容空間Sに露出するように、設けられている。複数の導電部材300は、部分的にケース200に埋没している。導電部材300は、各バリア層と接触しないように配置されている。導電部材300は、ケース200の外部に露出してもよい。
【0054】
本開示の実施形態1に係る蓄電モジュール1は、複数の集電部材400をさらに備える。複数の集電部材400は、複数の電極体100の各々の、第3方向D3における両側に位置している。各集電部材400は、正極タブ112pまたは負極タブ122nに溶接により接合されている。各集電部材400は、さらに導電部材300に接合されている。これにより、導電部材300と電極体100とが電気的に接続される。なお、正極タブ112pまたは負極タブ122nは、直接に導電部材300に溶接により接続されてもよい。
【0055】
上述したように、本開示の実施形態1に係る蓄電モジュール1において、底部210、周側壁部220および蓋部250の各々は、樹脂層Rと、バリア層Bとを有している。樹脂層Rは、樹脂組成物からなる。バリア層Bは、樹脂層Rに積層されている。バリア層Bは、樹脂層Rより低い透湿性を有している。
【0056】
上記の構成によれば、底部210、周側壁部220、および蓋部250のそれぞれに、樹脂層Rとともにバリア層Bが配置される。これにより、蓄電モジュール1において、ケース200が主に樹脂層Rで構成される場合であっても、ケース200の透湿性を低減できる。ひいては、樹脂ケースの透湿性が低減した蓄電モジュール1が提供される。
【0057】
さらに、本開示の実施形態1において、底部210は、樹脂層Rとして第1樹脂組成物からなる第1底樹脂層211と、バリア層Bとして底バリア層212とを含んでいる。周側壁部220は、樹脂層Rとして第1樹脂組成物からなる第1周側樹脂層221と、バリア層Bとして周側バリア層222とを含んでいる。隔壁部260は、第1樹脂組成物からなる。第1底樹脂層211と、第1周側樹脂層221と、隔壁部260とは、互いに一体的に成形されている。
【0058】
上記の構成によれば、第1底樹脂層211と、第1周側樹脂層221と、隔壁部260とが、いずれも第1樹脂組成物からなり、かつ、互いに一体的に成形されることで、ケース200の製造コストを低減できる。
【0059】
さらに、本開示の実施形態1において、周側壁部220は、第2樹脂組成物からなる第2周側樹脂層223をさらに含んでいる。周側バリア層222は、第1周側樹脂層221から見てケース200の外側に配置されている。周側バリア層222は、第2周側樹脂層223を介して第1周側樹脂層221に接合されている。
【0060】
上記の構成によれば、周側バリア層222を、周側壁部220に容易に配置できる。たとえば、樹脂シートとバリアシートとを含むラミネートフィルムを、第1周側樹脂層221の外側から溶着させることで、樹脂シートおよびバリアシートを、第2周側樹脂層223および周側バリア層222として配置できる。
【0061】
さらに、本開示の実施形態1において、底部210は、第3樹脂組成物からなる第2底樹脂層213をさらに含んでいる。底バリア層212は、第1底樹脂層211から見てケース200の外側に配置されている。底バリア層212は、第2底樹脂層213を介して第1底樹脂層211に接合されている。
【0062】
上記の構成によれば、底バリア層212を、底部210に容易に配置できる。たとえば、樹脂シートとバリアシートとを含むラミネートフィルムを、第1底樹脂層211の外側から溶着させることで、樹脂シートおよびバリアシートを、第2底樹脂層213および底バリア層212として配置できる。
【0063】
(実施形態2)
以下、本開示の実施形態2に係る蓄電モジュールについて説明する。本開示の実施形態2に係る蓄電モジュールにおいては、周側壁部の構成が主に、本開示の実施形態1に係る蓄電モジュール1と異なっている。よって、本開示の実施形態2に係る蓄電モジュールにおいて、実施形態1と同様の構成および効果については説明を繰り返さない。
【0064】
図6Aは、実施形態2に係る蓄電モジュールを一方向から見た断面図である。図6Bは、実施形態2に係る蓄電モジュールを他の方向から見た断面図である。図6Aおよび図6Bにおいては、それぞれ、図3および図4に示した実施形態1に係る蓄電モジュール1の断面と同様の断面視にて、蓄電モジュールを図示している。
【0065】
図6Aおよび図6Bに示すように、本開示の実施形態2に係る蓄電モジュール1aにおいて、周側バリア層222aは、周側壁部220aから露出しないように、第1周側樹脂層221aに埋没している。これにより、周側壁部220aの外表面における電気的絶縁性の確保が容易となる。
【0066】
第1周側樹脂層221aは、たとえば、周側バリア層222aを取り囲むように第2樹脂組成物を射出成形することで形成される。本実施形態において、周側バリア層222aは板状の部材であってもよい。
【0067】
(実施形態3)
以下、本開示の実施形態3に係る蓄電モジュールについて説明する。本開示の実施形態3に係る蓄電モジュールにおいては、底部の構成が主に、本開示の実施形態2に係る蓄電モジュール1aと異なっている。よって、本開示の実施形態3に係る蓄電モジュールにおいて、実施形態2と同様の構成および効果については説明を繰り返さない。
【0068】
図7は、実施形態3に係る蓄電モジュールの断面図である。図7においては、図6Aに示した実施形態2に係る蓄電モジュール1aの断面と同様の断面視にて、蓄電モジュールを図示している。
【0069】
図7に示すように、本開示の実施形態3に係る蓄電モジュール1bにおいて、底バリア層212bは、底部210bから露出しないように、第1底樹脂層211bに埋没している。これにより、底部210bの外表面における電気的絶縁性の確保が容易となる。
【0070】
第1底樹脂層211bは、たとえば、底バリア層212bを取り囲むように第3樹脂組成物を射出成形することで形成される。本実施形態において、底バリア層212bは板状の部材であってもよい。また、第2方向D2から見たときの底バリア層212bの外周端から、周側バリア層222bが起立するように延びてもよい。
【0071】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1,1a,1b 蓄電モジュール、100 電極体、100A 第1電極体、100B 第2電極体、100C 第3電極体、110 正極電極、112 正極集電箔、112p 正極タブ、114 正極活物質層、120 負極電極、122 負極集電箔、122n 負極タブ、124 負極活物質層、130 セパレータ、132a 介在部、132b 上折返し部、132c 下折返し部、132d 最外被覆部、132e 終端、200 ケース、210,210b 底部、211,211b 第1底樹脂層、212,212b 底バリア層、213 第2底樹脂層、220,220a 周側壁部、221,221a 第1周側樹脂層、222,222a,222b 周側バリア層、223 第2周側樹脂層、230 第1壁部、240 第2壁部、250 蓋部、251 蓋樹脂層、252 蓋バリア層、260 隔壁部、260A 第1隔壁部、260B 第2隔壁部、300 導電部材、400 集電部材、B バリア層、OP 開口、R 樹脂層、S 収容空間、S1 第1区画、S2 第2区画、S3 第3区画。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7