(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029475
(43)【公開日】2025-03-06
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/00 20240101AFI20250227BHJP
G06Q 10/0631 20230101ALI20250227BHJP
【FI】
G06Q50/00
G06Q10/0631
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134172
(22)【出願日】2023-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】521425652
【氏名又は名称】株式会社ゼロボード
(72)【発明者】
【氏名】松浦 聡子
(72)【発明者】
【氏名】村井 健介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊也
(72)【発明者】
【氏名】小野 泰司
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L010AA20
5L049AA20
5L049CC60
5L050CC60
(57)【要約】
【課題】 温室効果ガスの削減を支援することができるようにする。
【解決手段】 情報処理システムであって、温室効果ガスの排出量に関する排出量情報を含む環境に関する情報と、社会に関する情報と、統治に関する情報とを取得する取得部と、温室効果ガスの削減手段に関するソリューション情報を少なくとも記憶するソリューション記憶部と、排出量情報にマッチするソリューション情報を抽出する抽出部と、抽出したソリューション情報をユーザに提供する提供部と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温室効果ガスの排出量に関する排出量情報を含む環境に関する情報と、社会に関する情報と、統治に関する情報とを取得する取得部と、
前記温室効果ガスの削減手段に関するソリューション情報を少なくとも記憶するソリューション記憶部と、
前記排出量情報にマッチする前記ソリューション情報を抽出する抽出部と、
抽出した前記ソリューション情報をユーザに提供する提供部と、
を備えることを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
温室効果ガスの排出量に関する排出量情報を含む環境に関する情報と、社会に関する情報と、統治に関する情報とを取得するステップと、
前記温室効果ガスの削減手段に関するソリューション情報を記憶するステップと、
前記排出量情報にマッチする前記ソリューション情報を抽出するステップと、
抽出した前記ソリューション情報をユーザに提供するステップと、
をコンピュータが実行することを特徴とする情報処理方法。
【請求項3】
温室効果ガスの排出量に関する排出量情報を含む環境に関する情報と、社会に関する情報と、統治に関する情報とを取得するステップと、
前記温室効果ガスの削減手段に関するソリューション情報を記憶するステップと、
前記排出量情報にマッチする前記ソリューション情報を抽出するステップと、
抽出した前記ソリューション情報をユーザに提供するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素を削減するソリューションを導入することが行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
どのようなソリューションがあるのかを把握することが難しい。
【0005】
本発明はこのような背景を鑑みてなされたものであり、温室効果ガスの削減を支援することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の主たる発明は、情報処理システムであって、温室効果ガスの排出量に関する排出量情報を含む環境に関する情報と、社会に関する情報と、統治に関する情報とを取得する取得部と、前記温室効果ガスの削減手段に関するソリューション情報を少なくとも記憶するソリューション記憶部と、前記排出量情報にマッチする前記ソリューション情報を抽出する抽出部と、抽出した前記ソリューション情報をユーザに提供する提供部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
その他本願が開示する課題やその解決方法については、発明の実施形態の欄及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、温室効果ガスの削減を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る情報処理システムの全体構成例を示す図である。
【
図2】管理サーバ200のハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】管理サーバ200のソフトウェア構成例を示す図である。
【
図4】管理サーバ200のソフトウェア構成例の変形例1を示す図である。
【
図5】管理サーバ200のソフトウェア構成例の変形例2を示す図である。
【
図6】分析レイヤー270におけるデータ取得とデータ連携を示すイメージ図である。
【
図7】分析レイヤー270におけるオペレーションDXおよびESGデータパイプライン構築を示すイメージ図である。
【
図8】管理サーバ200の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態に係る情報処理システムの全体構成例を示す図である。本実施形態の情報処理システムは、管理サーバ200を含んで構成される。管理サーバ200は、ユーザ端末100と通信ネットワーク300を介して通信可能に接続される。通信ネットワークは、たとえばインターネットであり、公衆電話回線網や携帯電話回線網、無線通信路、イーサネット(登録商標)などにより構築される。なお、本情報処理システムをバイヤーとサプライヤーのユーザが使用する場合は、ユーザ端末100をバイヤーが使用する端末、ユーザ端末101をサプライヤーが使用する端末とする。
【0011】
ユーザ端末100は、ユーザが操作するコンピュータである。ユーザ端末100は、例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータなどとすることができる。
【0012】
管理サーバ200は、例えばワークステーションやパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータとしてもよいし、あるいはクラウド・コンピューティングによって論理的に実現されてもよい。
【0013】
<管理サーバ>
図2は、管理サーバ200のハードウェア構成例を示す図である。なお、図示された構成は一例であり、これ以外の構成を有していてもよい。管理サーバ200は、CPU201、メモリ202、記憶装置203、通信インタフェース204、入力装置205、出力装置206を備える。記憶装置203は、各種のデータやプログラムを記憶する、例えばハードディスクドライブやソリッドステートドライブ、フラッシュメモリなどである。通信インタフェース204は、通信ネットワーク3に接続するためのインタフェースであり、例えばイーサネット(登録商標)に接続するためのアダプタ、公衆電話回線網に接続するためのモデム、無線通信を行うための無線通信機、シリアル通信のためのUSB(Universal Serial Bus)コネクタやRS232Cコネクタなどである。入力装置205は、データを入力する、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、ボタン、マイクロフォンなどである。出力装置206は、データを出力する、例えばディスプレイやプリンタ、スピーカなどである。なお、後述する管理サーバ装置2の各機能部はCPU201が記憶装置203に記憶されているプログラムをメモリ202に読み出して実行することにより実現され、管理サーバ200の各記憶部はメモリ202及び記憶装置203が提供する記憶領域の一部として実現される。
【0014】
図3は、管理サーバ200のソフトウェア構成例を示す図である。管理サーバ200は、データ収集レイヤー250と、分析レイヤー270と、データ管理・ダッシュボードレイヤー240と、ソリューションレイヤー260と、を備える。分析レイヤー270は、一つの分析部の例を示すが、
図4の変形例1に示すように複数の分析部から構成してもよい。例えば、E1用の分析部270E1と、E2用の分析部270E2と、E3用の分析部270E3と、E4用の分析部270E4と、E5用の分析部270E5と、S1用の分析部270S1と、S2用の分析部270S2と、S3用の分析部270S3と、S4用の分析部270S4と、G用の分析部270Gと、から分析レイヤー270を構成してもよい。なお、一の分析部、例えば、分析部270E1の代わりに管理サーバ200を用いるようにしてもよい。この場合の管理サーバ200は、管理サーバ200の外部にデータ収集レイヤー250と、分析レイヤー270と、データ管理・ダッシュボードレイヤー240と、ソリューションレイヤー260と、を備える。また、環境に関する情報の分析部(E1~E5用の分析部270E)と、社会に関する情報の分析部(S1~S4用の分析部270S)と、統治に関する情報の分析部270Gと、により分析レイヤー270を構成してもよい。データ収集レイヤー250は、取得部250ともいう。分析レイヤー270は、分析部270ともいう。データ管理・ダッシュボードレイヤー240は、出力部240や提供部240ともいう。ソリューションレイヤー260は、ソリューション部260ともいう。
【0015】
また、
図5の変形例2に示すように管理サーバ201を設け、管理サーバ201と分析レイヤー270との間、管理サーバ201とデータ管理・ダッシュボードレイヤー240との間で情報を送受信可能に構成することができる。この場合、管理サーバ201を、第二実施形態の管理サーバ200とすることができる。
【0016】
データ収集レイヤー250は、リアルタイムまたは定期的なデータ収集を実行する。収集するデータは、E1、E2、E3、E4、E5、S1、S2、S3、S4、Gの10の項目である。これらの10項目に限定されない。E1、E2、E3、E4、E5は、環境に関する情報である。S1、S2、S3、S4は、社会に関する情報である。Gは、統治に関する情報である。
【0017】
E1は、気候変動のデータである。気候変動のデータは、タイプ(種類)が2種類ある。タイプは、移行リスクのタイプと、物理的リスクのタイプである。物理的リスクのタイプの気候変動のデータの例は、対象拠点の位置情報、拠点属性情報(建物情報など)、財務情報(資産価値など)、温室効果ガスの排出量等である。
【0018】
E2は、汚染のデータである。汚染のデータの例は、有害物質の排出量、移動量、消費量、有害物質の廃棄実績、汚染が確認されている事業所と状況、大気汚染物質の排出量、水への排出物、無機汚染物質の排出量、オゾン層破壊物質の排出量、マイクロプラスチック、生産中に発生または使用される懸念物質の総量、調達される懸念物質の総量、出荷される懸念物質の総量、汚染に関連する影響から生じる重要なリスクと機会と財務的影響、事故や堆積物に関連する運営費や資本支出、インシデント(汚染をもたらした生産の中断など)、地域の生態学的閾値を決定するための目標(TNFD/SBTNベース)、採択した方針のサイトロケーション情報、目標の文脈情報とDNSH基準の欠点への対応等である。
【0019】
E3は、水と海洋資源のデータである。水と海洋資源のデータの例は、取水量、排水量、水ストレス地域の拠点情報、水リサイクル率、COD(生物化学的酸素要求量)、BOD(化学的酸素要求量)、水資源および海洋資源に関する目標(TNFD/SBTNベース)、取水量の削減目標、排水量の削減目標、重大な水リスクを有する地域での総水使用量、流域の水質と水量に関する情報、水のリサイクルおよび再利用の総量、総貯水量および貯水量の変化、重要なリスク/機会の潜在的な財務的影響、関連製品・サービスにさらされるリスク等である。
【0020】
E4は、生物多様性のデータである。生物多様性のデータの例は、事業活動の位置情報、事業セクター情報、財務情報(資産価値など)、TNFD/SDPIベースの目標設定、回避/最小化/回復/オフセット別の目標値、恒久的に保護されている土地の面積、復元された土地の面積、生態系の完全性が改善されたサイトの数、マテリアルなサイトの数および面積、LCAにもとづく土地利用、土地被覆の経年変化(例:森林伐採)、生態系の管理における経時的な変化、景観の空間的構成の変化、生態系の構造的連結性の変化、リスク/機会の財務的影響、リスクに晒される製品・サービス等である。
【0021】
E5は、循環経済のデータである。循環経済のデータの例は、調達品の再生材使用量とその割合、廃棄物総量とその割合、修理可能性、分解可能性、SBTNベースの目標設定、資源利用・循環型経済関連の目標(循環型設計の増加, 循環型材料使用率の向上など)、生態学的閾値と割り当て、持続可能な調達に関連する目標、バリューチェーンに対する目標、再生可能な投入材料の絶対値および割合の重量、再利用またはリサイクルされた製品および材料(バージン以外)の絶対値と割合の両方における重量、生産工程から排出される材料情報(耐久性、再使用可能性、修理可能性、分解可能性、再製造・改修可能性など)、廃棄物の総量と割合(有害/非有害)、重要なリスク/機会による財務的影響、リスクとなる関連製品・サービス等である。
【0022】
S1は、自社の従業員のデータである。自社の従業員のデータの例は、自社HRシステム上のデータ、労組とやり取りの履歴、従業員に関するインシデント等である。
【0023】
S2は、バリューチェーンの従業員のデータである。バリューチェーンの従業員のデータの例は、国連が定めるSAQをベースにアンケート形式で収集(業界毎や会社毎にカスタマイズ)したデータ等である。なお、バリューチェーンは、以降、「VC」と称して説明する。
【0024】
S3は、影響を受けるコミュニティのデータである。S4は、消費者、最終顧客のデータである。Gは、事業活動のデータである。収集するデータの優先度は、移行リスクのE1を最優先とし、物理的リスクのE1、E3、E4、S2、S3、S4、E5、E2、S1、Gの順である。
【0025】
また、収集するデータは、社名や財務等のデータである取引先データ、人事データ、リサイクルデータ、人権データ、財務データ、設計データなどとすることもできる。
【0026】
データ収集レイヤー250は、ERP(Enterprise Resource Planning)と接続可能であり、社内データを簡単に取集することができる。データ収集レイヤー250は、社外データも取集することができる。データ収集レイヤー250は、収集データの色分けが可能である。色分けの例は、データ定義の統一、マテリアリティが高いデータの認識、意識統一、ダブルカウントの把握、消し込み等である。データ収集レイヤー250は、データ連携が可能である。データ連携の例は、チーム内、外部コンサルとの共同編集、APIを通じて外部分析パートナーへの出力、財務会計システム等への繋ぎこみ等である。データ収集レイヤー250は、ステークホルダー管理が可能である。ステークホルダー管理の例は、重要度の高い情報へのアクセス制限、開示ドキュメント作成に向けたスケジュール管理等である。
【0027】
このようなデータ収集レイヤー250は、作業者間(外部コンサル含む)でリアルタイムにデータの同期が可能となる。この他、以下のような効果を奏する。連絡履歴などがテーマごとにトラッキングできる。関係者間でスケジューリングが簡単にできる。ステークホルダーの情報が一覧化できる。収集データの定義が関係者間で統一され、戻しがない。作業マニュアルの整備などもある程度定型がある。多岐にわたるステークホルダーからの情報収集の省力化が可能となる。ステークホルダーのリスト管理が可能となる。アンケート・集計・統合が可能となる。定点観測が可能となる。グループ間でのデータ定義の統一が可能となる。ダブルカウントの消し込みが可能となる。
【0028】
また、データ収集レイヤー250は、以下の順番で実行可能な機能を有している。
(1)ESG情報収集対象となるサプライヤーの登録とツリー化を実行する。対象は、マテリアルな事業や製品毎に行う。これをサプライヤー登録/構造化機能という。
(2)どの開示向けの収集か選択したり、会社/事業情報を入力したりすることができる。これを前提・目的の入力機能という。
(3)ESG領域毎に、収集が必要なデータセット一覧が表示し、担当者をアサインする。これを収集データ項目の一覧と担当者アサイン機能という。
(4)SAQテンプレを表示し、サプライヤー選択すると自動配信する。これをヒアリングフォーム・テンプレ表示/サプライヤー選択機能という。
(5)ActionableなUXでデータ入力を促す。これをサプライヤー入力機能という。
(6)データ項目毎、サプライヤー毎に進捗をトラッキングできる。これを進捗トラッキング機能という。
(7)集計結果の表示/出力ができる。これをデータ集計/出力機能という。
(8)分析レイヤー270、データ管理・ダッシュボードレイヤー240への連携ができる。これを分析/ダッシュボードへの連携機能という。
【0029】
分析レイヤー270は、取集したデータの分析を行う。
(E1)収集するデータがE1であって物理的リスクの場合、気候変動シナリオを基に慢性リスク、急性リスクを分析する。なお、収集するデータがE1であって、タイプが移行リスクの場合は、分析を実行しない。
(E2)収集するデータがE2の場合、定点観測、改善状況の可視化の評価を実行する。
(E3)収集するデータがE3の場合、水ストレス分析、子会社への対応状況ヒアリングを実行する。
(E4)収集するデータがE4の場合、LEAP分析(TNFDフレームワーク)を実行する。
(E5)収集するデータがE5の場合、InFlow・OutFlowにおける循環経済評価を実行する。
(S1)収集するデータがS1の場合、ベンチマーク比較の分析を実行する。
(S2)収集するデータがS2の場合、国連ガイドラインとの適合性評価などを実行する。
(S3)収集するデータがS3の場合、第三者からの認証取得などを実行する。
(S4)収集するデータがS4の場合、OECD行動指針に基づくデューデリジェンスの分析を実行する。
(G)収集するデータがGの場合、内部監査等の評価を実行する。
【0030】
また、分析レイヤー270は、収集したデータの中から優先するデータを特定する。分析レイヤー270は、以下の(1)~(3)の3つの観点を用いてデータの優先順位をつける。なお、観点は、3つに限定されない。
(1)作業付加が高いデータであること。
これは、マテリアリティに関係なく開示要件になっているデータであることや、新しい分野の要件(初めて着手)のデータであることや、課題、作業の頻度が高いデータであることを示す観点である。
(2)緊急性があるデータであること
これは、既に他の枠組みで開示圧力がかかっているデータ(他のEU法/ISSB/TNFD/人権デューデリジェンスなど)であることや、経営課題的に優先度高いデータであることを示す観点である。
(3)情報処理システムとの親和性があるデータであること
これは、バリューチェーンでの情報収集可能なデータであることや、データドリブンの分析が可能なデータであることを示す観点である。
【0031】
優先順位の結果は以下の通りである。
結果1:観点(1)と観点(2)との間で関連するデータは、S1のデータであり、優先度=中のデータである。
結果2:観点(1)と観点(3)との間で関連するデータは、E5のデータであり、優先度=中のデータである。
結果3:観点(2)と観点(3)との間で関連するデータは、E2のデータであり、優先度=中のデータである。
結果4:すべての観点の間で関連するデータは、E1、E3、E4、S2、S3、S4のデータであり、優先度=高のデータである。
【0032】
E1、E3、E4のデータは、自然資本のデータであり、S2、S3、S4のデータは、人的資本のデータである。自然資本のデータと人的資本のデータの種別の数は同じであるが、より詳細な種別の数を比べると、E1のデータが移行リスクのE1データと物理的リスクのE1データの2種類に分類されるため、自然資本のデータの種別数の方が人的資本のデータの種別数よりも多い。このように分析レイヤー270によって、優先するデータ(領域)を特定することができる。
【0033】
人的資本のデータには2つのタイプのデータがある。タイプは、自社のタイプと、VCでのデータ取得のタイプである。自社のタイプは、国別の従業員の内訳、性別ごとの従業員数、従業員数50人以上の国での従業員数、地域別の契約タイプ別従業員情報、従業員の定義とカテゴリ、従業員離職率、非雇用労働者の総数、団体交渉協定の対象となる労働者の割合、団体交渉協定の対象となる自社労働者の定義、労働者評議会や労働組合との関連性、社会的対話に関する情報、トップマネジメントの定義、トップマネジメントの性別、労働者への適切な賃金の支払い、適切な賃金を受け取っていない労働者の特定、適切な賃金を下回っている労働者の割合、最低賃金の算出、適正賃金のベンチマーク、最低賃金に関する指標的参照値、ライフイベントの社会的保護、非社会的保護の国と従業員の種類、社会的保護を有する従業員および非雇用労働者の人数、障害者の割合、性別の内訳、パフォーマンスレビュー割合、経営陣が合意したレビュー回数の割合、総研修時間平均、男女別研修時間平均、従業員区分、業務上の負傷および業務上の病気による死亡者数、記録可能な業務上の事故の件数と割合、記録可能な業務上疾病の症例数、業務上災害、業務上疾病、疾病による死亡のために失われた日数、内部監査または外部認証に関する情報、出産休暇/父親休暇/育児休暇/介護者休暇、賃金格差、最高報酬者と従業員の報酬中央値の比率、男女の賃金格差、業務上の苦情・事件・クレームに関する情報、深刻な人権の影響や事件に関する情報、事件および/または苦情と取られた措置、差別事件、人権問題や事件に関する深刻なケース等である。
【0034】
VCでのデータ取得のタイプは、バリューチェーン従業員への重要な影響と方針、方針の範囲と形式、国連指導原則との整合性、関連する方針との整合性、バリューチェーン労働者への関与、事業者のプロセスの開示、バリューチェーン労働者視点の反映、特定の労働者グループの視点の把握、バリューチェーン労働者への是正プロセス、バリューチェーン労働者へのチャネルの説明、問題の追跡・監視とチャネルの有効性、バリューチェーン労働者の救済に関するアプローチとプロセス、第三者メカニズムの存在、報復に対する保護、バリューチェーン従業員への特定の負の影響への対応、救済の提供と有効性の確保、重大な負の影響の防止と他の事業上の圧力との関係、人権問題や事件の報告、アクションプランとリソースの要約、重要な影響の効果的な管理/追跡/評価等である。
【0035】
次に、E4のデータを用いた分析を例示する。分析レイヤー270は、データ収集レイヤー250で収集した事業活動の位置情報、事業セクター情報、事業の財務情報等の分析に必要なデータポイントをインプットして、分析を実行する。分析は、LEAP分析を例示する。この分析は、生物多様性リスクを検証する上で、TNFDやそれを参照するESRSでも推奨されている分析アプローチである。この分析は、(1)事業の自然との接点、(2)自然へのインパクト・依存度、(3)リスク・機会の評価、(4)目標設定・対応を行う4つのフェーズでの分析である。
【0036】
分析の結果は、定量要件と定性要件に分けて出力する。出力は、データ管理・ダッシュボードレイヤー240によって出力される。
【0037】
定量要件は、マテリアルなサイトの数および面積、TNFD/SDPIベースの目標設定、恒久的に保護されている土地の面積、復元された土地の面積、生態系の完全性が改善されたサイトの数、LCAにもとづく土地利用、土地被覆の経年変化(例:森林伐採)、生態系の管理における経時的な変化、景観の空間的構成の変化、生態系の構造的連結性の変化、リスク/機会の財務的影響、リスクに晒される製品・サービス等が例示できる。
【0038】
定性要件は、戦略とビジネスモデルの調整、影響推進要因と緩和アクション、生物多様性オフセットに関する説明、生物多様性と生態系に関連するビジネスモデルの回復力の評価、重要な影響、リスク、機会を特定するプロセス、検証された生物多様性と生態系のシナリオを開示、原材料の調達制限方針、生態系に由来する製品に関する情報、生物多様性オフセットに関する開示、原材料調達に関する方針等が例示できる。
【0039】
分析は、4つのフェーズでの分析の例を示したが、4つのフェーズを以下のように設定してもよい。
(フェーズ1)サプライチェーン全体を対象に自然との接点を発見し、優先すべき地域を特定する。
(1-1)ビジネスのフットプリント
(1-2)自然との接点
(1-3)優先地域の分析
(1-4)影響の分析
(フェーズ2)自社の企業活動と自然との依存関係や影響を診断する。
(2-1)関連する環境資産と生態系サービスの特定
(2-2)依存関係と影響の特定
(2-3)依存関係の分析
(2-4)影響の分析
(フェーズ3)診断結果を基に、重要なリスクと機会を評価する。
(3-1)リスクの特定と評価
(3-2)既存リスクの軽減と管理
(3-3)追加リスクの軽減と管理
(3-4)重要性の評価
(3-5)機会の特定と評価
(フェーズ4)自然関連リスクと機会に対応する準備を行い、投資家に報告する。
(4-1)戦略とリソース配分
(4-2)パフォーマンス測定
(4-3)報告
(4-4)公表
【0040】
次に、
図6を用いて分析レイヤー270におけるデータ取得とデータ連携について説明する。先ず、分析レイヤー270は、自社・グループ会社との連携するデータを取得し、分析する。分析レイヤー270は、環境データベースからPRTR規制向け有害物質データなどの汚染に関するデータを取得し、分析する。また、分析レイヤー270は、アセットマネージメントシステムやERPから設備情報・位置情報/財務データなどの水・海洋資源/生物多様性に関するデータを取得し、分析する。また、分析レイヤー270は、調達システムやBOM/PLMから再生材・リサイクル材などの循環経済に関するデータを取得し、分析する。また、分析レイヤー270は、人事システム、人権データベースから賃金データ/役員データ・人権データなどの人的資本に関するデータを取得し、分析する。さらに、分析レイヤー270は、3rdパーティデータを取得し、分析する。分析レイヤー270は、人事システム、人権データベースから賃金データ/役員データ・人権データなどの人的資本に関するデータを取得し、分析する。また、分析レイヤー270は、サーキュラーPFからデータを取得し、分析する。また、分析レイヤー270は、サプライヤーのサステナビリティレポートやCDP、ESG格付けデータベースからデータを取得し、分析する。またさらに、分析レイヤー270は、子会社・グループ会社やサプライヤーからデータを取得し、分析する。子会社・グループ会社は、例えば、子会社Aの子会社である子会社AAも対象である。サプライヤーは、例えば、サプライヤーAの下位の階層であるサプライヤーAAも対象である。子会社・グループ会社は、分析レイヤー270からUX/UIを通してデータ取得する。また、子会社・グループ会社は、分析レイヤー270に出力するデータの追加や上書きを行う。
【0041】
次に、
図7を用いて分析レイヤー270におけるオペレーションDXおよびESGデータパイプライン構築について説明する。分析レイヤー270は、投資家、格付け機関、取引先、各国規制などから、開示依頼の情報を受信する。分析レイヤー270は、フロントエンドにおいて、開示事項/要件の読込み、開示先/目的ごとのワークフロー設定、サプライヤー管理・ツリー化を行う。次に、フロントエンドからバックエンドへの流れとなるが、ここでESGデータの格納や紐づけを分析レイヤー270が実行する。バックエンドにおいて分析レイヤー270は、ESGデータテーブルを生成する。ESGデータテーブルは、E1、E3、E4、E5、S1などのデータが格納されたデータテーブルである。また、バックエンドにおいて、分析レイヤー270は、フロントエンドで収集されたデータを、それらテーブルに格納し、開示先/目的とタグ付けし、それらをキーに関連データの抽出を可能とする。つまり、開示先/目的とのマッピングを行う。このように各開示先/目的の要件をデータ項目に落とし込み、各ESG領域におけるテーブル設計が可能となる。次に、バックエンドからフロントエンドへの流れとなるが、ここで抽出したデータをフロントエンドへ出力する。フロントエンドにおいて、分析レイヤー270は、抽出したデータに基づき、アンケート作成・回答支援(過去回答/業界プラクティスの参照)、収集データと開示先/目的との紐づけ、開示先/目的ごとのデータの抽出を実行し、これらのデータを投資家、格付け機関、取引先、各国規制に回答、開示するようデータを出力する。分析レイヤー270のデータ収集先としては、サプライヤー、子会社・事業会社、社内システム、3rdPartyデータの例を示す。
【0042】
ESGデータ収集・開示オペレーションのDX化の流れは、以下のとおりである。
(1)開示先/目的ごとのワークフロー
投資家・開示規制単位でワークフローを設定でき、タスク毎に社内担当者アサインし進捗管理が可能である。
(2)アンケート作成・回答支援
開示先/目的ごとの雛形をベースにアンケートを作成可能である。過去の回答や業界プラクティスを参照でき、回答作業を省力化可能である。
(3)収集したデータと開示先/目的との紐づけ
サプライヤー/子会社だけでなく、社内システムからも収集したデータ項目を開示先/目的と紐付けが可能である。
(4)開示先/目的ごとのデータ抽出
開示先/目的ごとのデータ抽出が可能である。
【0043】
ESGデータパイプラインは、以下のように構築する。
(1)開示先/目的ごとの要件のデータ項目への落とし込み
各開示先/目的の要件をデータ項目に落とし込み、各ESG領域におけるテーブル設計ができている。
(2)開示先/目的とのマッピング
フロントエンドで収集されたデータを、それらテーブルに格納し、開示先/目的とタグ付けし、それらをキーに関連データの抽出を可能とする。
【0044】
データ管理・ダッシュボードレイヤー240は、開示に活用するデータの抽出を行う。また、収集・分析したデータの何をどの開示に使うのかを決定する。また、過去開示に使ったデータや算出過程の保存を行う。データ管理・ダッシュボードレイヤー240は、資料へのアウトプットを行う。このようにすることで、担当者で用意にデータ編集、出力が可能となる。データ管理・ダッシュボードレイヤー240は、経営陣向けのダッシュボードである。このダッシュボードは、KPIを把握することができる。また、ステークホルダー間での共通認識化をすることができる。データ管理・ダッシュボードレイヤー240は、経営管理を行う。経営管理の例は、マテリアルな事象のアラート、定点観測による差分の把握をする。データ管理・ダッシュボードレイヤー240は、各種のレポートを開示する。レポートの種類は、CDP、ISSB、GRI、RE100、温対法、CSRD、CSDD等である。このようにデータ管理・ダッシュボードレイヤー240は、各種レポートを開示することでコンサルティング機能を有する。
【0045】
データ管理・ダッシュボードレイヤー240を備える前は、散らばっているESGデータの統合が面倒であり、統合しても重要な項目がわかりづらく、自社にとって重要なKPIを関係者で共有、トラッキングできていなく、VCの情報まで把握できていない(データはあってもまとめられていない)状態であった。データ管理・ダッシュボードレイヤー240を備えることにより、重要な項目を分かりやすく関係者に共有することが可能となる。また、リアルタイム同期で、差分にはアラートを出力することができる。また、データの見せ方を担当者で簡単にカスタマイズ可能となる。データ管理・ダッシュボードレイヤー240からVC情報が自動で吸い上げ可能である。
【0046】
ソリューションレイヤー260は、ソリューションをバイヤーに提供する。ソリューションレイヤー260は、ソリューションをバイヤー以外の第三者にも提供することができる。第三者は、例えば、サプライヤーである。
【0047】
データ管理・ダッシュボードレイヤー240では、以下を解決することができる。
(1)ESG経営の強化:中長期的な視点でESG経営を強化し持続可能な経営を実現可能である。
(2)ESG格付け強化:EU(SFDR9条ラベル適合)や格付け機関(MSCI/Ecovalis/Moody‘s)が定める格付けを強化し、競争力のある資金調達を展開可能である。
(3)事業リスク管理:(規制対応とは別に)事業のESGリスクを的確に把握可能である。移行リスクに加え、生物多様性、物理的リスク、人的資本リスクの事業インパクトを理解可能である。
(4)多様なコンプライアンス遵守:CSRD/CBAM/CS3D/TNFD/ISSB/CDP/Battery規制などの規制に効率的に対応可能である。
(5)取引先・投資家への情報提供:Ad-hocにくる投資家や主要取引先からのESG関連データ提供依頼に効率的に対応可能である。
【0048】
分析レイヤー270では、以下を解決することができる。
(1)多様なESG分析:専門性の高い分析を多様な領域で実施する必要があるが、コンサルだとコスト高になってしまう問題を解決可能である。
【0049】
データ収集レイヤー250では、以下を解決することができる。
(1)VCでのデータ収集コスト:労働集約的で品質担保の難しいVCのESGデータ収集を効率化しながら、サプライヤーのエンゲージメントを図ることが可能である。
【0050】
データ管理・ダッシュボードレイヤー240は、ESG経営の強化、ESG格付け強化、事業リスク管理、多様なコンプライアンス遵守、取引先/投資家への情報提供等のケースで使用することができる。また、データ管理・ダッシュボードレイヤー240は、ESGマテリアル事項のダッシュボード化、格付けシミュレーション(ex.SFDR、MSCI)、事業単位のESGリスクのモニタリング、サプライヤー毎のESGスコアリング、取引先/投資家/開示要件に応じたデータ抽出と出力、外部システムへのデータフィード(ex.Catena-X)、データ収集レイヤー250・分析レイヤー270との自動連携と差分検知等の機能を有している。分析レイヤー270は、パートナー連携(各分析PFとデータ収集レイヤー250・データ管理・ダッシュボードレイヤー240とのAPI連携)等の機能を有している。各分析PFは自前で構築することもできる。データ収集レイヤー250は、質問票、データ項目の設定(目的/開示ごとにテンプレ用意)、データ入力アシスト・バリデーション・トラッキング・スケジューリング、サプライヤー情報と集計結果の管理等の機能を有している。
【0051】
<システムの概要>
以下、E1のデータである温室効果ガスの排出量を例にソリューションを提供する情報処理システムの例を説明する。本例の情報処理システムは、温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンガスなど)を排出する排出主体のユーザに対して、排出量の削減手段(ソリューションとも呼ばれる。)に関する情報(以下、ソリューション情報という。)を提供する。ソリューションの提供者(プロバイダ)はソリューション情報を登録しておき、ユーザはそのソリューション情報を閲覧することができる。ユーザは、ソリューションに関してプロバイダに連絡することもできる。
【0052】
図3は、本例における管理サーバ200のソフトウェア構成例を示す図である。管理サーバ200は、記憶部230(ソリューション記憶部、ユーザ情報記憶部、排出量情報記憶部)と、データ収集レイヤー250(排出量情報取得部、実績取得部)と、分析レイヤー270(抽出部)と、データ管理・ダッシュボードレイヤー240(提供部)と、ソリューションレイヤー260(課金処理部)と、を備える。データ収集レイヤー250は、取得部250ともいう。分析レイヤー270は、分析部270ともいう。データ管理・ダッシュボードレイヤー240は、出力部240や提供部240ともいう。ソリューションレイヤー260は、ソリューション部260ともいう。
【0053】
<記憶部>
記憶部230を構成するソリューション記憶部は、ソリューション情報を記憶する。ソリューション記憶部は、削減手段を提供するプロバイダを特定するプロバイダ特定情報(プロバイダID)に対応付けてソリューション情報を記憶することができる。ソリューション情報には、削減手段のコストを決定するためのコスト情報と、削減手段を採用した場合に期待される温室効果ガスの削減量を決定するための削減情報とを含めることができる。本例では、ソリューション情報に、ソリューションを特定するための情報(ソリューションID)、プロバイダID、ソリューション名、ソリューション説明、価格、削減量、導入条件が含まれ得る。ソリューション名は、削減手段(ソリューション)の名称である。ソリューション説明は、ソリューションについての説明であり、例えば、テキストデータや画像データ、音声データなどを含めることができる。価格は、ユーザがソリューションを採用する際に係る金額を決定するための情報でよい。価格として、ソリューションの提供単位に係る単価を設定するようにしてもよいし、標準的な導入コストの概算値を設定するようにしてもよい。価格は、価格帯など範囲により特定するようにしてもよい。削減量は、ソリューションの導入により期待される温室効果ガスの削減量を示す情報であり得る。削減量として、ソリューションを導入した場合に削減される温室効果ガスの1社あたりの標準的な量を設定してもよいし、装置を導入した場合の1台当たりの削減量の標準値としてもよいし、各種の活動量に応じて削減量を計算する関数であってもよい。導入条件には、ソリューションを導入する排出主体に対する条件を設定することができる。導入条件には、例えば、ソリューションの対象となる事業や活動の内容や活動量などを指定することができる。また、導入条件には、削減対象となるスコープ及び/又はカテゴリの指定をすることができる。なお、ソリューション記憶部には、環境に関する情報に対するソリューション情報だけではなく、社会に関する情報に対するソリューション情報、統治に関する情報に対するソリューション情報も記憶する。
【0054】
記憶部230を構成するユーザ情報記憶部は、ユーザ(排出主体)に関する情報(以下、ユーザ情報という。)を記憶する。ユーザ情報には、ユーザ(又は排出主体)を特定する情報(ユーザID)、ユーザ(又は排出主体)の名称(ユーザ名)、排出主体の行っている事業に関する情報(事業情報)、当該事業に関して用いている設備に関する情報(設備情報)などを含めることができる。なお、ユーザ情報記憶部には、環境に関する情報に対するユーザ情報だけではなく、社会に関する情報に対するユーザ情報、統治に関する情報に対するユーザ情報も記憶する。
【0055】
記憶部230を構成する排出量情報記憶部は、排出主体による温室効果ガスの排出量に関する情報(以下、排出量情報という。)を記憶する。排出量情報には、排出主体による排出量の集計値を含めることができる。排出量情報には、排出主体の属性を含めることができる。排出主体の属性には、排出主体の事業、従業員数、地域などを含めることができる。また、排出主体の属性には、売上高や仕入高、人件費などの会計情報を含めることもできる。排出量情報には、排出量に係る活動に関係する付加情報を含めることができる。付加情報には、例えば、活動量(実績値、実績値の集計値、予測値など)を含めることができる。また、付加情報には、活動量を推定するための情報を含めることができる。活動量を推定するための情報は、例えば、床面積、屋根面積、生産可能な製品の個数などを含めることができる。本実施形態では、排出量情報には、排出主体を特定する情報(例えば、企業ID)、活動量、付加情報、排出量を含めるものとする。排出量及び活動量は、所定の集計期間(例えば年月)と、GHGプロトコルに係るスコープ及びカテゴリごとの排出量及び活動量の集計値とすることができる。付加情報は、排出主体によって設定項目が異なっていてもよい。
【0056】
<機能部>
データ収集レイヤー250を構成する排出量情報取得部は、排出量情報を取得する。排出量情報取得部は、ユーザ端末100から排出量情報を受信することができる。排出量情報取得部は、他のシステムにアクセスして排出量情報を取得するようにしてもよい。また、管理サーバ200は、例えば、排出主体に係る活動量と排出係数とを取得し、取得した活動量と排出係数とを乗じて排出量を計算する排出量算出部を備えることができ、排出量算出部が計算した排出量及び活動量など排出量の算出に用いた各種の情報を排出量情報として取得することもできる。なお、データ収集レイヤー250は、排出量情報だけではなく、社会に関する情報、統治に関する情報も取得する。
【0057】
分析レイヤー270を構成する抽出部は、排出量情報にマッチするソリューション情報を取得する。抽出部は、排出量及び付加情報とソリューション情報とをマッチさせることができる。抽出部は、抽出部は、排出主体のユーザ情報及び/又は排出量情報がソリューション情報に含まれる導入条件を充足するものを抽出することができる。抽出部は、排出量情報に含まれている、スコープ及びカテゴリ別の排出量のうち、排出量の多い順に所定数のスコープ及びカテゴリについて優先的に抽出することができ、例えば、当該スコープ及びカテゴリに係る排出量及び/又は対応する付加情報が導入条件を満たすソリューション情報を検索することができる。抽出部は、削減情報に基づいて決定される削減量とコスト情報により決定されるコストとに基づいて決定される単位削減量あたりの単位コストを計算し、排出量情報にマッチするソリューション情報のうち、単位コストの順に所定数のソリューション情報を抽出することができる。なお、抽出部は、社会に関する情報にマッチするソリューション情報、統治に関する情報にマッチするソリューション情報も抽出する。
【0058】
データ管理・ダッシュボードレイヤー240を構成する提供部は、抽出したソリューション情報をユーザに提供することができる。
【0059】
データ収集レイヤー250を構成する実績取得部は、排出主体により採用されたソリューションを示す情報及び当該ソリューションにより実現された削減量を含む情報(以下、実績情報という。)を取得する。管理サーバ200は、実績情報を記憶する実績情報記憶部を備えるようにしてもよい。
【0060】
ソリューションレイヤー260を構成する課金処理部は、プロバイダにシステムの利用料金を課す処理(課金)を行う。課金処理部は、実績情報に含まれる削減量に応じて、ソリューションを提供したプロバイダに課金を行うことができる。課金処理部は、実績情報に含まれる削減量に応じて、ソリューションを採用した排出主体に課金を行うようにしてもよい。課金処理部は、例えば、削減量が多い場合に高くなるように課金額を決定するようにしてもよい。課金処理部は、例えば、削減量が多い場合に安くなるように課金額を決定するようにしてもよい。なお、ソリューションレイヤー260は、社会に関する情報のソリューション情報の処理、統治に関する情報のソリューション情報の処理も実行する。なお、
図5の変形例2の場合、管理サーバ200の外部にソリューションレイヤー260を備えることが好適である。
【0061】
<動作>
図8は、管理サーバ200の動作を説明する図である。管理サーバ200は、プロバイダからソリューション情報を取得してソリューション記憶部に登録し(S801)、排出主体から排出量情報を取得して排出量情報記憶部に登録する(S802)。管理サーバ200は、排出量情報のそれぞれについて、排出量にマッチするソリューション情報を抽出し(S803)、抽出したソリューション情報を、排出量情報の提供者である排出主体に提供する(S804)。管理サーバ200は、実績情報を取得し(S805)、実績情報に含まれる削減量に応じた課金を行うことができる(S806)。
【0062】
以上のようにして、本実施形態の情報処理システムによれば、ソリューション情報と、排出主体(排出量情報)とをマッチングすることができる。
【0063】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0064】
例えば、排出量情報に、ソリューション情報に対する条件を設定するようにし、管理サーバ200は、排出量情報にマッチするソリューション情報のうち、排出量情報の条件を満たすものに絞り込んで提供することができる。
【0065】
管理サーバ200は、ソリューション情報の一覧をユーザ端末100に表示させることができる。管理サーバ200は、ソリューション情報の登録順に一覧表示させることができる。
【0066】
管理サーバ200は、ユーザ端末100が閲覧したソリューション情報を管理することができ、閲覧数に応じた優先度でソリューション情報を提供することができる。例えば、管理サーバ200は、閲覧数の順にソートしてソリューション情報を表示させることができる。また、管理サーバ200は、閲覧数の順に所定数のソリューション情報のみをユーザ端末100に送信するようにすることができる。
【0067】
管理サーバ200は、ユーザ端末100にソリューション情報の一部のみを一覧表示させ、ユーザ端末100からソリューション情報の選択(タップやクリック)を受け付けて、ソリューション情報が選択されたことを管理することができる。管理サーバ200は、選択数に応じた優先度でソリューション情報を提供することができる。例えば、管理サーバ200は、選択数の順にソートしてソリューション情報を表示させることができる。また、管理サーバ200は、選択数の順に所定数のソリューション情報のみをユーザ端末100に送信するようにすることができる。
【0068】
管理サーバ200は、ユーザからソリューションについての評価を取得して管理することができる。例えば、ソリューション情報に、ユーザから取得した評価値のリスト及び/又は集計値(例えば平均値や合計値)を設定することができる。管理サーバ200は、評価値の集計値に応じた優先度でソリューション情報を提供することができる。例えば、管理サーバ200は、評価値の順にソートしてソリューション情報を表示させることができる。また、管理サーバ200は、評価値の順に所定数のソリューション情報のみをユーザ端末100に送信するようにすることができる。
【0069】
また、管理サーバ200は、プロバイダから追加料金の支払を受けた場合にソリューション情報を優先的に提供することができる。
【0070】
また、管理サーバ200は、ソリューションの申込を受け付ける申込処理部を備えることができる。管理サーバ200は、ソリューションの申込に対する報償をユーザに提供することができる。
【0071】
また、管理サーバ200は、ソリューションが成約した場合に、成約料金の所定割合をプロバイダに課金することができる。また、管理サーバ200は、成約時にその旨をユーザ及び/又はプロバイダに通知する通知部を備えることができる。
【0072】
<発明の概要>
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明は、たとえば、以下のような構成を備える。
[項目1]
温室効果ガスを排出する排出主体のユーザから前記排出主体による前記温室効果ガスの排出量に関する排出量情報を含む環境に関する情報と、社会に関する情報と、統治に関する情報とを取得する取得部と、前記温室効果ガスの削減手段に関するソリューション情報を少なくとも記憶するソリューション記憶部と、前記排出量情報にマッチする前記ソリューション情報を抽出する抽出部と、抽出した前記ソリューション情報を前記ユーザに提供する提供部と、を備えることを特徴とする情報処理システム。
[項目2]
項目1に記載の情報処理システムであって、前記ソリューション情報には、前記排出主体に対する条件が設定され、前記抽出部は、前記排出主体が前記ソリューション情報に含まれる前記条件を充足するものを抽出すること、を特徴とする情報処理システム。
[項目3]
項目2に記載の情報処理システムであって、前記排出量情報には、前記排出量に関する活動に関係する付加情報が付帯され、前記抽出部は、前記排出量及び前記付加情報と、前記ソリューション情報とをマッチさせること、を特徴とする情報処理システム。
[項目4]
項目1に記載の情報処理システムであって、前記排出量情報には、GHGプロトコルに係るスコープ及びカテゴリごとに集計した前記温室効果ガスの排出量が含まれ、前記抽出部は、前記排出量の多い前記スコープ及び前記カテゴリに対応する前記ソリューション情報を優先して抽出すること、を特徴とする情報処理システム。
[項目5]
項目1に記載の情報処理システムであって、前記ソリューション情報には、前記削減手段のコストを決定するためのコスト情報と、前記削減手段を採用した場合に期待される前記温室効果ガスの削減量を決定するための削減情報とが含まれ、前記抽出部は、前記削減情報に基づいて決定される前記削減量と前記コスト情報により決定される前記コストとに基づいて決定される単位削減量あたりの単位コストを計算し、前記排出量情報にマッチする前記ソリューション情報のうち、前記単位コストの順に所定数の前記ソリューション情報を抽出すること、を備えることを特徴とする情報処理システム。
[項目6]
項目1に記載の情報処理システムであって、前記ソリューション情報には、期待される削減量が含まれ、前記削減量に応じて所定数の前記ソリューション情報を抽出すること、を特徴とする情報処理システム。
[項目7]
項目1に記載の情報処理システムであって、前記排出主体により採用された前記ソリューションを示す情報及び当該ソリューションにより実現された削減量を取得する実績取得部と、前記削減量に応じて前記プロバイダに課金を行う課金処理部と、を備えることを特徴とする情報処理システム。
【0073】
開示事項において情報処理システムの例を示すが、情報処理システムの各処理(ステップ)をコンピュータが実行する情報処理方法およびコンピュータに実行させるためのプログラムとすることもできる。
【符号の説明】
【0074】
100 ユーザ端末
200 管理サーバ
【手続補正書】
【提出日】2024-07-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温室効果ガスの排出量に関する排出量情報を含むESGに関する情報を取得する取得部と、
取得した前記ESGに関する情報からESGリスクを分析する分析部と、
前記ESGに関する情報にマッチするソリューション情報をユーザに提供する提供部と、
を備えることを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理システムであって、
前記分析部は、前記ESGに関する情報から優先するデータを特定すること、
を特徴とする情報処理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の情報処理システムであって、
前記取得部で取得した情報が前記環境に関する情報を構成する気候変動情報の場合、前記分析部は、物理的リスクを分析すること、
を特徴とする情報処理システム。
【請求項4】
温室効果ガスの排出量に関する排出量情報を含むESGに関する情報を取得するステップと、
取得した前記ESGに関する情報からESGリスクを分析するステップと、
サプライヤーおよび/またはバイヤーにソリューション情報を提供するステップと、
をコンピュータが実行することを特徴とする情報処理方法。
【請求項5】
温室効果ガスの排出量に関する排出量情報を含むESGに関する情報を取得するステップと、
取得した前記ESGに関する情報からESGリスクを分析するステップと、
サプライヤーおよび/またはバイヤーにソリューション情報を提供するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温室効果ガスの排出量に関する排出量情報を含むESGに関する情報を取得する取得部と、
複数の観点を用いて、取得した前記ESGに関する情報の中から優先する情報を特定する処理を実行する分析部と、
前記ESGに関する情報にマッチするソリューション情報をユーザに提供する提供部と、
を備えることを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理システムであって、
前記分析部は、マテリアリティに関係なく開示要件になっている情報である第1の観点、開示圧力がかかっている情報である第2の観点、バリューチェーンでの収集可能な情報である第3の観点を用いて、前記ESGに関する情報の中から優先する情報を特定すること、
を特徴とする情報処理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の情報処理システムであって、
前記取得部で取得した情報が環境に関する情報を構成する気候変動情報の場合、前記分析部は、物理的リスクを分析する一方、移行リスクは分析しないこと、
を特徴とする情報処理システム。
【請求項4】
温室効果ガスの排出量に関する排出量情報を含むESGに関する情報を取得するステップと、
複数の観点を用いて、取得した前記ESGに関する情報の中から優先する情報を特定するステップと、
サプライヤーおよび/またはバイヤーにソリューション情報を提供するステップと、
をコンピュータが実行することを特徴とする情報処理方法。
【請求項5】
温室効果ガスの排出量に関する排出量情報を含むESGに関する情報を取得するステップと、
複数の観点を用いて、取得した前記ESGに関する情報の中から優先する情報を特定するステップと、
サプライヤーおよび/またはバイヤーにソリューション情報を提供するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温室効果ガスの排出量に関する排出量情報を含むESGに関する情報を取得する取得部と、
マテリアリティに関係なく開示要件になっている情報である第1の観点、開示圧力がかかっている情報である第2の観点、バリューチェーンでの収集可能な情報である第3の観点を用いて、取得した前記ESGに関する情報の中から優先する情報を特定する処理を実行する分析部と、
前記ESGに関する情報にマッチするソリューション情報をユーザに提供する提供部と、
を備えることを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
温室効果ガスの排出量に関する排出量情報を含むESGに関する情報を取得するステップと、
マテリアリティに関係なく開示要件になっている情報である第1の観点、開示圧力がかかっている情報である第2の観点、バリューチェーンでの収集可能な情報である第3の観点を用いて、取得した前記ESGに関する情報の中から優先する情報を特定するステップと、
サプライヤーおよび/またはバイヤーにソリューション情報を提供するステップと、
をコンピュータが実行することを特徴とする情報処理方法。
【請求項3】
温室効果ガスの排出量に関する排出量情報を含むESGに関する情報を取得するステップと、
マテリアリティに関係なく開示要件になっている情報である第1の観点、開示圧力がかかっている情報である第2の観点、バリューチェーンでの収集可能な情報である第3の観点を用いて、取得した前記ESGに関する情報の中から優先する情報を特定するステップと、
サプライヤーおよび/またはバイヤーにソリューション情報を提供するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。