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  • 特開-農業用ペレット、及び、その利用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029482
(43)【公開日】2025-03-06
(54)【発明の名称】農業用ペレット、及び、その利用
(51)【国際特許分類】
   A01N 63/20 20200101AFI20250227BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20250227BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20250227BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20250227BHJP
   C09K 17/32 20060101ALI20250227BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
A01N63/20
A01P3/00
A01P21/00
A01N25/10
C09K17/32 H
C09K17/32 J
A01G7/00 605Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134186
(22)【出願日】2023-08-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・刊行物名 「水生バイオ(登録商標)ペレット」のパンフレット 頒布日 令和4年10月1日
(71)【出願人】
【識別番号】523316046
【氏名又は名称】株式会社宮澤商店
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 俊二
【テーマコード(参考)】
4H011
4H026
【Fターム(参考)】
4H011AA01
4H011AB03
4H011BB21
4H011BC22
4H011DA03
4H026AA08
4H026AA10
4H026AA15
4H026AB04
(57)【要約】
【課題】好気性の有用微生物を含んだ新規な農業用ペレット、及び、その利用等を提供すること。
【解決手段】本発明の一形態は、好気性の有用微生物と植物繊維とを含む、農業用ペレットである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
好気性の有用微生物と植物繊維とを含む、農業用ペレット。
【請求項2】
植物繊維は木質部を含まない、請求項1に記載の農業用ペレット。
【請求項3】
植物繊維は、少なくとも二種以上の混合物である、請求項1又は2に記載の農業用ペレット。
【請求項4】
植物繊維は、葉、樹皮、ヤシ繊維、及びピート材からなる群より選択される少なくとも二種以上の混合物である、請求項3に記載の農業用ペレット。
【請求項5】
植物由来の接着成分を含む、請求項1又は2に記載の農業用ペレット。
【請求項6】
植物由来の接着成分は、でんぷんである、請求項5に記載の農業用ペレット。
【請求項7】
好気性の有用微生物は、複数の有用微生物からなる有用微生物の菌群である、請求項1又は2に記載の農業用ペレット。
【請求項8】
土壌改良資材、植物成長調節資材、制菌資材、又は食味改良材の少なくとも何れかである、請求項1又は2に記載の農業用ペレット。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の農業用ペレットの製造方法であって、
好気性の有用微生物を含む液剤と植物繊維とを混合する工程、
得られた混合物から、所定の大きさのペレット状の固形物を得る工程、及び、
得られた固形物を乾燥して、農業用ペレットを得る工程、
を含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な農業用ペレット、及び、その利用に関する。
【背景技術】
【0002】
有用微生物を農業分野に用いる取り組みは、古くから行われている。また、近年は、持続可能な農業の名の下、化学農薬や化学肥料等を低減した状態での農業がより一層志向される傾向もあって、有用微生物の農業分野への利用はより一層の注目を集めている(非特許文献1など)。農業分野において、有用微生物は、一般に有用微生物を含んだ液剤として流通し、利用されている。液剤は、濃縮液として保管をすれば保管スペースを小さくできること、潅水と兼ねて施用をすることができること、或いは、水耕栽培への適用も行いやすい等の様々な利点がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】JSTnews September 2018(発行日:平成30年9月3日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、有用微生物を含んだ液剤は、一度、土壌等に施用すると、土壌環境によっては有用微生物が増殖及び定着をし、長期にわたりその効果を発揮する場合もありうる。しかしながら、多くの場合、その効果は一時的であって、比較的短期間のうちに、新たな施用が必要となる場合が多い。
【0005】
すなわち、有用微生物の農業分野への応用に関して、当該有用微生物の効果を、土壌等に施用した後に持続させるという観点では、未だ改善の余地が大きいというのが現状である。
【0006】
本発明の一態様は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、好気性の有用微生物を含んだ新規な農業用ペレット、及び、その利用等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、有用微生物の施用の効果を持続させつつ、当該有用微生物の取扱い性等を改善するという課題について鋭意検討を行った。その結果、好気性の有用微生物を、所定の素材と共にペレット化するという方法を採択することによって課題を解決できることを見出し、本願発明に想到するに至った。
すなわち、上記の課題を解決するために、本発明は、例えば、以下に示す態様に係る発明を提供する。
1)好気性の有用微生物と植物繊維とを含む、農業用ペレット。
2)植物繊維は木質部を含まない、1)に記載の農業用ペレット。
3)植物繊維は、少なくとも二種以上の混合物である、1)又は2)に記載の農業用ペレット。
4)植物繊維は、葉、樹皮、ヤシ繊維、及びピート材からなる群より選択される少なくとも二種以上の混合物である、3)に記載の農業用ペレット。
5)植物由来の接着成分を含む、1)~4)の何れかに記載の農業用ペレット。
6)植物由来の接着成分は、でんぷんである、5)に記載の農業用ペレット。
7)好気性の有用微生物は、複数の有用微生物からなる有用微生物の菌群である、1)~6)の何れかに記載の農業用ペレット。
8)土壌改良資材、植物成長調節資材、制菌資材、又は食味改良材の少なくとも何れかである、1)~7)の何れかに記載の農業用ペレット。
9)上記の1)~8)の何れかに記載の農業用ペレットの製造方法であって、好気性の有用微生物を含む液剤と植物繊維とを混合する工程、得られた混合物から、所定の大きさのペレット状の固形物を得る工程、及び、得られた固形物を乾燥して、農業用ペレットを得る工程、を含む、製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、施用後の効果の持続性に優れた、好気性の有用微生物を含んだ新規な農業用ペレット、及び、その利用等を提供することが出来るという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例に係る結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔1.農業用ペレット〕
(農業用ペレットの概要と効果の一例)
本発明の一実施形態に係る農業用ペレットは、好気性の有用微生物と植物繊維とを含んでなるペレットである。そして、この農業用ペレットは、1)有用微生物の保存が容易になること、2)取扱い性に優れること、及び、3)施用後もより長期間にわたり効果が持続すること、からなる群より選択される少なくとも1つの効果、好ましくは全ての効果を奏する。本発明の一実施形態に係る農業用ペレットは、さらに、好気性の有用微生物の液剤の場合には見出されない植物の活性化作用や制菌作用等を提供するものであってもよいし、好気性の有用微生物の液剤の場合よりも増強された植物の活性化作用や制菌作用等を提供するものであってもよい。
【0011】
(好気性の有用微生物)
農業用ペレットに含まれる好気性の有用微生物としては、例えば、放線菌、乳酸菌、蛍光性シュードモナス属菌、窒素固定細菌、光合成細菌等が挙げられるが、特にこれらの有用微生物に限定されるものではない。これらの有用微生物は、植物活性剤などの農業用の液剤に含まれている、好気性の有用微生物であってもよい。水生バイオ(登録商標)アルファに含まれている、好気性の有用微生物が具体的な一例として挙げられる。水生バイオ(登録商標)アルファには、好気性の光合成細菌、及び、複数種の好気性の窒素固定細菌等が含まれている。水生バイオ(登録商標)アルファは、株式会社サンシンが製造元で、株式会社宮澤商店が販売元となっている植物活性剤であって、何人も入手(購入)が可能である。
【0012】
農業用ペレットに含まれる好気性の有用微生物は、好ましくは、複数の有用微生物からなる有用微生物の菌群であり、一例では、2種以上、3種以上、5種以上、7種以上、又は10種以上の有用微生物からなる有用微生物の菌群である。水生バイオ(登録商標)アルファは、少なくとも3種類の好気性の有用微生物からなる有用微生物の菌群を含んでいる。水生バイオ(登録商標)アルファは、有用微生物の菌群の他に、フルボ酸と、水とを含んでいる。
【0013】
(植物繊維)
農業用ペレットには、植物繊維が含まれている。植物繊維は、繊維同士が互いに絡みあうことによって、農業用ペレットの形状保持のための骨格になる。植物繊維はまた、有用微生物の栄養となりうる。好ましい一実施形態では、植物繊維は非水溶性である。植物繊維が非水溶性であれば、農業用ペレットが吸水した場合に、所定の期間は、膨潤した状態で一定の形状が保持される。これにより、農業用ペレット内に水と空気とが浸入し、有用微生物の休眠状態が打破されると考えられる。すなわち、乾燥した農業用ペレット(施用前等)では有用微生物は休眠状態であるので保存に適しており、一方で、農業用ペレットの施用後は、降雨や潅水によって農業用ペレットが吸水して、水と空気に触れた有用微生物が活性化する。また、好ましい一実施形態では、植物繊維は木質部を含まない。植物繊維に木質部が含まれていれば、リグニンの接着作用によってかなり強固なペレット(燃料用の木質ペレットのようなもの)が出来うる。ペレットの強度が過剰である場合には、ペレットは吸水し辛く、膨潤もし辛いために、ペレット内に水と空気とが浸入しがたくなる虞がある。同様に、ゼオライトなどの無機質の素材や、有機物を炭化処理した素材等は、硬質であって吸水しても膨潤し難いために、本実施形態においては農業用ペレットの担体として好ましくない。
【0014】
農業用ペレットに含まれる植物繊維は、一種類であってもよいが、少なくとも二種以上の混合物であることが好ましい場合がある。植物繊維が少なくとも二種以上の混合物であれば、1)農業用ペレットの形状が時間をかけて段階的に崩壊していく、及び、2)有用微生物の栄養を段階的に供給することができる、等の利点がある。植物繊維は、特に限定されないが例えば、腐葉土等の葉由来の植物繊維、バーク堆肥やバークチップ等の樹皮由来の植物繊維、ヤシ繊維(例えば、ヤシ殻ファイバー、ヤシの実チップ等)、及びピート材(例えば、ピートモス・ピート等)等が挙げられ、これらの群より選択される少なくとも二種以上の混合物であることがより好ましい場合がある。植物繊維は、腐葉土等の葉由来の植物繊維が少なくとも含まれていることが好ましい場合がある。また、植物繊維は、葉由来の植物繊維、樹皮由来の植物繊維、ヤシ繊維、及びピート材の全ての混合物であることが特に好ましい場合がある。
【0015】
(接着成分)
農業用ペレットは、植物繊維同士の絡み合いによっても一定の形状を保持はできるものの、好ましい一実施形態では、植物繊維は木質部を含まず、リグニンの接着作用が利用できない。そのため、農業用ペレットは、好ましくは接着成分を含んでいる。接着成分は植物由来のものであることが好ましく、中でも、でんぷん、ペクチン、セルロース、及びヘミセルロースからなる群より選択される水溶性の接着成分の少なくとも一種であることがより好ましい。接着成分としては、コンニャクとび粉、バレイショでんぷん、トウモロコシでんぷん等のでんぷんがさらに好ましい場合があり、コンニャクとび粉が特に好ましい場合もある。
【0016】
(形状、サイズ、含水率など)
農業用ペレットの形状は特に限定されないが、例えば、円柱状、三角柱状、又は四角柱状等の柱状である。農業用ペレットのサイズは特に限定されないが、例えば、その形状が柱状である場合は、例えば、高さが5mm以上で25mm以下の範囲内であり、かつ最大幅(円柱の場合は直径)が2mm以上で25mm以下の範囲内である。農業用ペレットの高さは、5mm以上で15mm以下の範囲内であることが好ましい場合がある。農業用ペレットの最大幅は2mm以上で10mm以下の範囲内であることが好ましい場合があり、2mm以上で5mm以下の範囲内であることがより好ましい場合がある。
農業用ペレットの含水率は、例えば、30%以下であり、10%以下であり、5%以下であり、1%以下である。含水率が低くなるほど、農業用ペレットの取扱い性は良くなり、かつ保存性も良くなる。
【0017】
(その他)
農業用ペレットは、無機や有機の肥料成分(上記の植物繊維は除く)、及び/又は、農薬成分を含んでいてもよいが、好ましい一実施形態では、無機や有機の肥料成分(上記の植物繊維は除く)、及び、農薬成分は含まれていない。農業用ペレットの好ましい一実施形態では、好気性の有用微生物、植物繊維、及び接着成分のみを実質的に含んでいるか、好気性の有用微生物、植物繊維、接着成分、及びフルボ酸のみを実質的に含んでいる。
【0018】
〔2.農業用ペレットの製造方法〕
上記の〔1.農業用ペレット〕欄に記載をした農業用ペレットは、例えば、以下の工程(1)~(3)を含む、製造方法によって製造される。
・好気性の有用微生物と植物繊維とを混合する工程(1)、
・得られた混合物から、所定の大きさのペレット状の固形物を得る工程(2)、及び、
・得られた固形物を乾燥して、農業用ペレットを得る工程(3)。
【0019】
(工程(1)について)
工程(1)では、好気性の有用微生物と、植物繊維と、必要に応じて用いられる接着成分とを混合して混合物を得る。これらを混合する順番については、特に限定されない。混合する際には水分も添加されるが、例えば、好気性の有用微生物を含む液剤(原液、及び原液の希釈液も含む概念)を原料として利用する場合等は、水分を別途添加することを要しない場合がある。
【0020】
「好気性の有用微生物」と、「植物繊維」と、必要に応じて用いられる「接着成分」との混合比率(重量比)は、ペレット状に加工が出来る限り特に限定されないが、植物繊維の体積(リットル)を100として、好気性の有用微生物の液剤の体積(リットル)は1以上で20以下の範囲内であり、より好ましくは1以上で10以下の範囲内であるか、1以上で5以下の範囲内である。有用微生物の液剤は、その原液の濃度にもよるが、例えば500倍希釈、400倍希釈、300倍希釈、200倍希釈、100倍希釈、50倍希釈、40倍希釈、30倍希釈、20倍希釈、又は10倍希釈程度に希釈されていてもよい。また、植物繊維の体積(リットル)を100として、接着成分の体積(リットル)は1以上で20以下又は15以下の範囲内であり、より好ましくは3以上で15以下の範囲内であり、さらに好ましくは3以上で12以下の範囲内である。この混合比率は、工程(2)におけるペレット状の固形物の押し出しやすさや、工程(3)におけるペレット状の固形物の乾燥しやすさ等に影響を与えうる。
【0021】
工程(1)は、必要に応じて攪拌機等を用いて、好気性の有用微生物と、植物繊維と、必要に応じて用いられる接着成分とがより均一に混合した混合物を得る。工程(1)を行う温度は、例えば室温である。
【0022】
(工程(2)について)
工程(2)では、工程(1)で得られた混合物から、所定の大きさのペレット状の固形物を得る。工程(2)は、例えば、工程(1)で得られた混合物を、ペレット製造機(ペレダイザー)に投入して、所定の大きさのペレット状の固形物として押し出す。工程(2)を行う温度は、例えば室温である。
【0023】
(工程(3)について)
工程(3)では、工程(2)で得られた固形物を乾燥して、農業用ペレットを得る。固形物の乾燥は、有用微生物の活性を損なわないために、例えば、100℃以下で行うことが好ましい場合があり、80℃以下で行うことがより好ましい場合がある(温度の下限は特に限定されないが、例えば室温以上である)。固形物の乾燥は、乾燥機(温風乾燥機など)を用いて行うこともできるが、天日にて自然乾燥を行うことがより好ましい場合がある。
工程(3)を経て、含水率が低減された農業用ペレットが得られる。得られた農業用ペレットの含水率は、例えば、30%以下であり、10%以下であり、5%以下であり、1%以下である。
【0024】
(その他の工程について)
工程(2)と工程(3)との間に、一次発酵工程を設けてもよい。一次発酵工程は、工程(2)で得られたペレット状の固形物を、開口した保存用バッグ等の中に静置し、有用微生物を固形物全体にまわし、なじませる工程である。また、工程(3)により得られた農業用ペレットは、計量し、出荷用に袋詰めされる。
【0025】
〔3.農業用ペレットの使用方法〕
上記の〔1.農業用ペレット〕欄に記載をした農業用ペレットは、例えば、土壌改良資材、植物成長調節資材、制菌資材、又は食味改良材等として利用される。農業用ペレットが、水生バイオ(登録商標)アルファを原料にしている場合は、農業用ペレットも水生バイオ(登録商標)アルファと同種の効果を示す。水生バイオ(登録商標)アルファと同種の効果とは、例えば、植物の発根促進、植物の地上部の樹勢の活性化、食味の向上、収量の向上、線虫害(例えばネコブセンチュウ等)に対する抑制効果、糸状菌(例えば、フザリウム菌、フィトフトラ菌、ホモプシス菌、コレトトリカム菌等)が原因の病害に対する抑制効果、等が挙げられるが特にこれらに限定されるものではない。
【0026】
農業用ペレットを施用するタイミングは、特に限定されないが、例えば、病気発生時、播種前、育苗時、苗の定植前、苗の定植後、及び、植物の生育段階の任意のタイミングが挙げられる。農業用ペレットの施用の方法は、特に限定されないが、例えば、土壌又は土壌代替物の表面に施用する方法や、土壌内又は土壌代替物内に施用する(例えば、苗の定植前や播種前に土壌全体にすきこむ;苗を定植するための植え穴内に施用する;植物の周囲に穴を掘って施用する)方法等が挙げられる。
【0027】
農業用ペレットの施用量は、特に限定されないが、例えば、土壌全体にすきこむ場合は、農地1反あたり、農業用ペレットの施用量が100~200L程度である。植え穴内に施用する場合は、植え穴1つあたり、農業用ペレットの施用量が30~45ml程度である。
【0028】
農業用ペレットの施用対象となる植物は特に限定されないが、トマト、ナス、トウガラシ(ピーマン含む)等のナス科の農作物(野菜);キュウリ、スイカ、メロン等のウリ科の農作物(果菜);イチゴ、バラ、ナシ等のバラ科の農作物(果菜、花木、果実);水菜等のアブラナ科の農作物(野菜);バジル;サツマイモ;シクラメン;カーネーション;アジサイ;等が挙げられる。
【実施例0029】
〔実施例1:農業用ペレットの製造、保存性等〕
本発明の一実施例について説明すれば以下のとおりである。
【0030】
<予備試験:水生バイオ(登録商標)アルファに含まれる有用微生物の菌群>
水生バイオに含まれる菌株を分離する目的で、希釈平板法により、水生バイオの100倍希釈液から菌株の分離を試みた。水生バイオの100倍希釈液を、殺菌0.7%生理食塩水を用いてさらに10、10、10倍まで段階希釈し、得られた各希釈段階の希釈液100μlを、100倍希釈の普通ブイヨン寒天培地に塗布した。なお、水生バイオの各希釈段階につきそれぞれ3枚のプレートを用意した。
【0031】
水生バイオの各希釈段階の希釈液を塗布したプレートを25℃で7日間培養し、コロニー数を計測するとともに、主要なコロニーの形態的特徴を記載した。主要なコロニータイプとして3タイプが確認され、それぞれのタイプから2~3株を分離し、純化した。この菌株の分離の手法は、好気性の菌を分離する手法であるため、水生バイオ(登録商標)アルファには好気性の菌が含まれていることが判った。また、純化した菌株の16S rRNAの塩基配列を、公知の菌の16S rRNAの塩基配列と比較解析をした結果、水生バイオ(登録商標)アルファには、ある種の光合成細菌や複数種の窒素固定細菌が含まれていることがわかった。
【0032】
<1.農業用ペレットの製造>
室温において、水生バイオ(登録商標)アルファの50倍希釈液0.25~1リットルに、腐葉土(屋外の林野にて採取)3~10リットル、バーク堆肥5~15リットル、ヨーロッパピート8~20リットル、ヤシ繊維(ヤシ殻ファイバーとヤシの実チップの混合材)8~20リットル、及びコンニャクとび粉1~4リットルを加えて、攪拌機により均一に攪拌をして、混合物を得た。
【0033】
ついで、得られた混合物を、室温において、ペレット製造機にかけて、所定の大きさ(高さ10~12mm×幅(直径)5~8mmの円柱状)のペレット状の固形物を押し出して得た。得られたペレット状の固形物は全て、開口した保存用バッグ等の中に、室温で約7~10日間静置して、有用微生物を固形物全体にまわし、なじませた。
【0034】
次いで、この固形物を天日にて自然乾燥を行うことによって農業用ペレットを得た。得られた農業用ペレットの含水率は、概ね30%以下であった。
【0035】
<2.農業用ペレットの長期保存性>
上記で得られた農業用ペレットを保存用のビニール袋に詰めて密封をし、室温で保存をした。保存後、約12ヶ月経過した時点で、ビニール袋を開封して、圃場に植えつけイチゴの周囲の土壌表面に対して農業用ペレットを施用した。農業用ペレットを施用したイチゴは、農業用ペレットを施用しないイチゴと比較して、より良好な成長を示した。
【0036】
<3.農業用ペレットの効果の持続性>
上記で得られた農業用ペレットの効果の持続について、土壌表面に施用した場合と、土壌中に施用した場合とで観察をした。施用の効果の有無は、農業用ペレットを施用しない場合をコントロールとし、圃場に植えつけたイチゴの成長を比較することで行った。土壌表面に施用した場合は約2ヶ月効果が持続し、土壌中に施用した場合は約6ヶ月効果が持続した。水生バイオ(登録商標)アルファの1000倍希釈液を施用した場合、その効果は約14日持続するので、ペレット化により効果が顕著に持続するようになったと言える。なお、農業用ペレットの施用と、水生バイオアルファの希釈液の施用とで、単位面積当たりの菌の施用量は略同じとなるように調整している。
【0037】
〔実施例2:熱処理の影響〕
農業用ペレットの作製には、その乾燥工程等において熱処理が伴う場合がある。水生バイオ(登録商標)アルファを用いて作製した農業用ペレットが、熱処理の影響をどの程度受けるのかについて以下に示す実験を行った。
【0038】
実施例1で得られた農業用ペレットを加温機に入れて、60℃又は80℃で10分間の乾燥を行った。乾燥後、現物重10gに対して殺菌水40を加え、30分間往復振とうしたのち、殺菌水を用いて10倍、100倍、1000倍に希釈した。また、熱処理を行わない対照区も設け、同様に希釈した。そして、シャーレの中心に病原菌(イチゴ萎黄病菌)を接種し、その周囲に、各段階に希釈したペレット懸濁を20μl滴下し、25℃で4日間培養し、阻止円の有無、大きさを測定した。シャーレに配置した培地は、10倍希釈したジャガイモ煎汁・ブドウ糖寒天(PDA)培地である。各試験は2連で行い、再現性のため、同じ実験を3回繰り返し、4日後のコロニーの大きさの平均値を図1に示した。図1中の各希釈段階において、左側は対照区の結果を、真ん中は60℃で乾燥した農業用ペレットを用いた結果を、右側は80℃で乾燥した農業用ペレットを用いた結果をそれぞれ示す。
【0039】
〔実施例3:植物繊維の種類が農業用ペレットに与える影響〕
<1.腐葉土の選択が農業用ペレットに与える影響(1)>
1.供試病原菌
1)苗立枯病菌(Pythium aphanidearmatuma MAFF 241938)
2)苗立枯病菌(Rhizoctonia solani MAFF 242987)
3)イチゴ萎黄病菌(Fusarium oxysporum f. sp. fragariae MAFF305557)
4)ウリ科黒点根腐病菌(Monosporascus cannonballus MAFF305550)
5)ホモプシス菌(ウリ科萎ちょう症状 Phomopsis sclerotioides MAFF243275)
6)サツマイモ基腐病菌(Diaporthe destruens MAFF246953)。
【0040】
2.実験系
A社製ペレットおよびB社製ペレットをそれぞれ5g採取し、45mlの殺菌水と混合し、1時間往復振とうすることで、一次希釈液(10倍希釈)を調製した。これをさらに100倍ないし1000倍に希釈した。シャーレの中心に供試病原菌を接種し、その周囲に、各段階に希釈したペレット懸濁を20μl滴下して、供試病原菌に対する抑制効果を評価した。シャーレに配置した培地は、10倍希釈したジャガイモ煎汁・ブドウ糖寒天(PDA)培地である。培養は、25℃で2~4日間行い、供試病原菌の生育度合いから抑制効果の有無を判断した。明確な抑制効果が認められた場合〇と示し、わずかな抑制効果の場合には△と示し、同じ実験を3回繰り返し、再現性を求めた。
【0041】
3.結果
ピシウム菌に対する抗菌活性は、A社製ペレットとB社製ペレットとで明確な相違が見られた。また、黒点根腐病菌、及び基腐病菌に対する抗菌活性は、A社製ペレットとB社製ペレットとで若干の相違が見られた。A社製ペレットとB社製ペレットとは、用いている腐葉土の産地が主な相違であることから、植物繊維(腐葉土)の種類が農業用ペレットの活性に影響を与える可能性が想定される。また、A社製ペレットとB社製ペレットともに、水生バイオ(登録商標)アルファでは抗菌活性が見られにくい苗立枯病菌(Rhizoctonia solani)に対して抗菌活性を示す点も注目すべきところである。
【表1】
【0042】
<2.腐葉土の選択が農業用ペレットに与える影響(2)>
1.供試病原菌
1)イチゴ炭そ病菌(Colletotrichum acutatum)
2)苗立枯病菌(Rhizoctonia solani)
3)イチゴ萎黄病菌(Fusarium oxysporum f. sp. fragariae)
4)ウリ科黒点根腐病菌(Monosporascus cannonballus MAFF305550)
5)ホモプシス菌(ウリ科萎ちょう症状の原因 Phomopsis sclerotioides)
6)イチゴ疫病菌(Phytophthora nicotianae)。
【0043】
2.実験系
C社製ペレット(1)(高さ11mm×幅(直径)6mmの円柱状)、C社製ペレット(2)(高さ11mm×幅(直径)2mmの円柱状)、およびD社製ペレット(高さ11mm×幅(直径)5mmの円柱状)をそれぞれ10g採取し、40mlの殺菌水と混合し、30分間往復振とうすることで、一次希釈液を調製した。この一次希釈液を希釈率1倍とし、順次、殺菌水で10倍、100倍、1000倍に希釈した。シャーレの中心に供試病原菌を接種し、その周囲に、各段階に希釈したペレット懸濁を20μl滴下して、供試病原菌に対する抑制効果を評価した。シャーレに配置した培地は、10倍希釈したジャガイモ煎汁・ブドウ糖寒天(PDA)培地である。培養は、25℃で2~4日間行い、供試病原菌の生育度合いから抑制効果の有無を判断した。なお、C社とD社は、前出したA社とB社とは異なる製造会社である。C社製ペレットとD社製ペレットとは、用いている腐葉土の産地とサイズが主な相違である。
【0044】
3.結果
試験は2回行ったが、イチゴ炭そ病菌、イチゴ萎黄病菌、ホモプシス菌、及びイチゴ疫病菌に対しては、何れのペレットも抗菌作用を示した。一方、ウリ科黒点根腐病菌、及び苗立枯病菌に対しては、D社製ペレットが抗菌作用を示した。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、農業分野に広く利用することができる。
図1