(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029509
(43)【公開日】2025-03-06
(54)【発明の名称】クラミジアトラコマチス及び/又は淋菌の検出用オリゴヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/689 20180101AFI20250227BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20250227BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
C12Q1/689 Z
C12N15/31 ZNA
C12M1/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134233
(22)【出願日】2023-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松葉 悠真
(72)【発明者】
【氏名】道渕 真史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 広道
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA23
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4B063QS03
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4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】クラミジアトラコマチス及び/又は淋菌の新規な検出手段及び方法の提供。
【解決手段】クラミジアトラコマチスのpоrB遺伝子を検出するためのプローブ;当該プローブを含む、クラミジアトラコマチスを検出するための組成物であって、クラミジアトラコマチスの内在性プラスミドを検出するためのプローブと組み合わせて用いられる組成物;並びに淋菌のopa遺伝子を検出するためのプローブを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラミジアトラコマチスのpоrB遺伝子を検出するためのプローブ。
【請求項2】
以下の(a)及び(b)の特徴を有する、請求項1に記載のプローブ。
(a)配列番号9で示される塩基配列又はそれに相補的な塩基配列において連続する少なくとも8塩基以上の塩基配列S1、又は塩基配列S1において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列S2を含むオリゴヌクレオチド。
(b)前記(a)のオリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。
【請求項3】
配列番号27~32のいずれかで示される塩基配列を含む、請求項1に記載のプローブ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のプローブを含む、クラミジアトラコマチスを検出するための組成物であって、クラミジアトラコマチスの内在性プラスミドを検出するためのプローブと組み合わせて用いられる組成物。
【請求項5】
クラミジアトラコマチスの内在性プラスミドを検出するためのプローブが、以下の(c)及び(d)の特徴を有する、請求項4に記載の組成物。
(c)配列番号8で示される塩基配列又はそれに相補的な塩基配列において連続する少なくとも8塩基以上の塩基配列S3、又は塩基配列S3において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列S4を含むオリゴヌクレオチド。
(d)前記(c)のオリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。
【請求項6】
クラミジアトラコマチスの内在性プラスミドを検出するためのプローブが、配列番号12~15、56、及び57のいずれかで示される塩基配列を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
淋菌のopa遺伝子を検出するためのプローブであって、以下の(e)及び(f)の特徴を有するプローブ。
(e)配列番号10又は配列番号11で示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも8塩基以上の塩基配列S5、又は塩基配列S5において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列S6を含み、かつ、配列番号10又は配列番号11で示される塩基配列の37~43番目の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
(f)前記(e)のオリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。
【請求項8】
配列番号40~42のいずれかで示される塩基配列を含む、請求項7に記載のプローブ。
【請求項9】
前記標識が蛍光色素標識である、請求項1~3、7、及び8のいずれかに記載のプローブ。
【請求項10】
前記標識が、グアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素による標識である、請求項1~3、7、及び8のいずれかに記載のプローブ。
【請求項11】
前記標識されている末端塩基がシトシンである、請求項1~3、7、及び8のいずれかに記載のプローブ。
【請求項12】
クラミジアトラコマチスを検出するための組成物であって、
前記組成物が以下の(A-1)に示す中から選択される少なくとも1つの第一プライマーと、以下の(B-1)に示す中から選択される少なくとも1つの第二プライマーとの組み合わせからなるプライマーセットを含み、クラミジアトラコマチスのporB遺伝子を検出するためのプローブと組み合わせて用いられること、及び/又は、
前記組成物が以下の(A-2)に示す中から選択される少なくとも1つの第一プライマーと、以下の(B-2)に示す中から選択される少なくとも1つの第二プライマーとの組み合わせからなるプライマーセットを含み、クラミジアトラコマチスの内在性プラスミドを検出するためのプローブと組み合わせて用いられることを特徴とする組成物。
(A-1)配列番号33~35のいずれかで示される塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を示す塩基配列からなる第一プライマー。
(A-2)配列番号16~18のいずれかで示される塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を示す塩基配列からなる第一プライマー。
(B-1)配列番号36~38のいずれかで示される塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を示す塩基配列からなる第二プライマー。
(B-2)配列番号19~21のいずれかで示される塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を示す塩基配列からなる第二プライマー。
【請求項13】
前記組成物が(A-1)に示す中から選択される少なくとも1つの第一プライマーと、(B-1)に示す中から選択される少なくとも1つの第二プライマーとの組み合わせからなるプライマーセットを含み、クラミジアトラコマチスのporB遺伝子を検出するためのプローブが、配列番号27~32のいずれかで示される塩基配列を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が(A-2)に示す中から選択される少なくとも1つの第一プライマーと、(B-2)に示す中から選択される少なくとも1つの第二プライマーとの組み合わせからなるプライマーセットを含み、クラミジアトラコマチスの内在性プラスミドを検出するためのプローブが、配列番号12~15、56、及び57のいずれかで示される塩基配列を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
淋菌を検出するための組成物であって、
以下の(C-1)に示す中から選択される少なくとも1つの第一プライマーと、以下の(D-1)に示す中から選択される少なくとも1つの第二プライマーとの組み合わせからなるプライマーセットを含み、淋菌のopa遺伝子を検出するためのプローブと組み合わせて用いられる組成物。
(C-1)配列番号43~45のいずれかで示される塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を示す塩基配列からなる第一プライマー。
(D-1)配列番号46~48のいずれかで示される塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を示す塩基配列からなる第二プライマー。
【請求項16】
淋菌のopa遺伝子を検出するためのプローブが、配列番号39~42のいずれかで示される塩基配列を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
クラミジアトラコマチス及び淋菌を検出するためのキットであって、請求項12~14のいずれかに記載の組成物及び請求項15又は16に記載の組成物を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラミジアトラコマチス(Chlamydia trachomatis)(以下CTと略記することがある。)及び/又は淋菌(Neisseria gonorrhoeae)を検出するためのオリゴヌクレオチドに関する。
【背景技術】
【0002】
クラミジアトラコマチスは主に性器クラミジア感染症の原因菌であり、男性では尿道炎と精巣上体炎を、女性では子宮頸管炎と骨盤内炎症性疾患を発症する。これらの疾患は性行為により感染、伝播する。クラミジアは、主に泌尿器生殖器に感染し、その患者数は、すべての性感染症で最も多い(非特許文献1)。淋菌は淋菌感染症の原因菌であり、おもに男性の尿道炎、女性の子宮頸管炎を起こす。1回の性行為による感染伝達率は高く、30%程度と考えられている(非特許文献2)。
【0003】
クラミジアトラコマチスは細胞内寄生性の病原体であり、分離培養には培養細胞が必要とされる。培養法は、淋菌が温度など環境変化に弱いため、検体の保管状況によって感度が著しく低下する(非特許文献2)。培養検査は困難を伴い、一般的な検査室では実施されない。
【0004】
その他の検査法としては抗原抗体反応を利用する方法や核酸増幅法が挙げられる。しかし抗原抗体法については感度が劣ることが指摘されている。
【0005】
現在はクラミジアトラコマチスの検査法としては核酸増幅法が主流になっており、日本国内で体外診断薬として販売されている。代表的なものとしてはPCRを用いたコバス 6800/8800 システム CT/NG(登録商標、ロシュダイアグノスティックス製)、TMA法を用いたアプティマ Combo2 クラミジア/ゴノレア(登録商標、ホロジックジャパン製)がある。
【0006】
上記の核酸増幅法はいずれも感度特異度とも優れた検査法であると言われている。しかし、いずれも検査に数時間以上かかるという問題点がある。
【0007】
迅速にクラミジアトラコマチスを検出できる核酸増幅法、該核酸増幅法に使用するためのオリゴヌクレオチドプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブ、並びに上記核酸増幅法を実施するためのキットは特許文献1で開示されている。
【0008】
クラミジアトラコマチスを高感度に検出できる遺伝子としてはクラミジア細胞内に複数存在している内在性プラスミドが一般的である。一方で、海外ではごく少数ではあるものの非特許文献3に示されるように内在性プラスミドを有していないクラミジアトラコマチスも報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】日本性感染症学会誌 第27巻 第1号 Supplement
【非特許文献2】日本性感染症学会 性感染症診断・治療ガイドライン2020
【非特許文献3】Yeow, T.C., Wong, W.F., Sabet, N.S. et al. Prevalence of plasmid-bearing and plasmid-free Chlamydia trachomatis infection among women who visited obstetrics and gynecology clinics in Malaysia. BMC Microbiol 16, 45 (2016).
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はクラミジアトラコマチス及び/又は淋菌の新規な検出手段及び方法を提供することが1つの課題である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、クラミジアトラコマチス及び/又は淋菌の新規な検出手段及び方法を見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成させるに至った。
【0013】
本発明の代表的な実施形態は次の通りである。
[項1]
クラミジアトラコマチスのpоrB遺伝子を検出するためのプローブ。
[項2]
以下の(a)及び(b)の特徴を有する、項1に記載のプローブ。
(a)配列番号9で示される塩基配列又はそれに相補的な塩基配列において連続する少なくとも8塩基以上の塩基配列S1、又は塩基配列S1において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列S2を含むオリゴヌクレオチド。
(b)前記(a)のオリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。
[項3]
配列番号27~32のいずれかで示される塩基配列を含む、項1又は2に記載のプローブ。
[項4]
項1~3のいずれかに記載のプローブを含む、クラミジアトラコマチスを検出するための組成物であって、クラミジアトラコマチスの内在性プラスミドを検出するためのプローブと組み合わせて用いられる組成物。
[項5]
クラミジアトラコマチスの内在性プラスミドを検出するためのプローブが、以下の(c)及び(d)の特徴を有する、項4に記載の組成物。
(c)配列番号8で示される塩基配列又はそれに相補的な塩基配列において連続する少なくとも8塩基以上の塩基配列S3、又は塩基配列S3において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列S4を含むオリゴヌクレオチド。
(d)前記(c)のオリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。
[項6]
クラミジアトラコマチスの内在性プラスミドを検出するためのプローブが、配列番号12~15、56、及び57のいずれかで示される塩基配列を含む、項4又は5に記載の組成物。
[項7]
淋菌のopa遺伝子を検出するためのプローブであって、以下の(e)及び(f)の特徴を有するプローブ。
(e)配列番号10又は配列番号11で示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも8塩基以上の塩基配列S5、又は塩基配列S5において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列S6を含み、かつ、配列番号10又は配列番号11で示される塩基配列の37~43番目の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
(f)前記(e)のオリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。
[項8]
配列番号40~42のいずれかで示される塩基配列を含む、項7に記載のプローブ。
[項9]
前記標識が蛍光色素標識である、項1~8のいずれかに記載のプローブ。
[項10]
前記標識が、グアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素による標識である、請求項1~9のいずれかに記載のプローブ。
[項11]
前記標識されている末端塩基がシトシンである、項1~10のいずれかに記載のプローブ。
[項12]
クラミジアトラコマチスを検出するための組成物であって、
前記組成物が以下の(A-1)に示す中から選択される少なくとも1つの第一プライマーと、以下の(B-1)に示す中から選択される少なくとも1つの第二プライマーとの組み合わせからなるプライマーセットを含み、クラミジアトラコマチスのporB遺伝子を検出するためのプローブと組み合わせて用いられること、及び/又は、
前記組成物が以下の(A-2)に示す中から選択される少なくとも1つの第一プライマーと、以下の(B-2)に示す中から選択される少なくとも1つの第二プライマーとの組み合わせからなるプライマーセットを含み、クラミジアトラコマチスの内在性プラスミドを検出するためのプローブと組み合わせて用いられることを特徴とする組成物。
(A-1)配列番号33~35のいずれかで示される塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を示す塩基配列からなる第一プライマー。
(A-2)配列番号16~18のいずれかで示される塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を示す塩基配列からなる第一プライマー。
(B-1)配列番号36~38のいずれかで示される塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を示す塩基配列からなる第二プライマー。
(B-2)配列番号19~21のいずれかで示される塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を示す塩基配列からなる第二プライマー。
[項13]
前記組成物が(A-1)に示す中から選択される少なくとも1つの第一プライマーと、(B-1)に示す中から選択される少なくとも1つの第二プライマーとの組み合わせからなるプライマーセットを含み、クラミジアトラコマチスのporB遺伝子を検出するためのプローブが、配列番号27~32のいずれかで示される塩基配列を含む、項12に記載の組成物。
[項14]
前記組成物が(A-2)に示す中から選択される少なくとも1つの第一プライマーと、(B-2)に示す中から選択される少なくとも1つの第二プライマーとの組み合わせからなるプライマーセットを含み、クラミジアトラコマチスの内在性プラスミドを検出するためのプローブが、配列番号12~15、56、及び57のいずれかで示される塩基配列を含む、項12又は13に記載の組成物。
[項15]
淋菌を検出するための組成物であって、
以下の(C-1)に示す中から選択される少なくとも1つの第一プライマーと、以下の(D-1)に示す中から選択される少なくとも1つの第二プライマーとの組み合わせからなるプライマーセットを含み、淋菌のopa遺伝子を検出するためのプローブと組み合わせて用いられる組成物。
(C-1)配列番号43~45のいずれかで示される塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を示す塩基配列からなる第一プライマー。
(D-1)配列番号46~48のいずれかで示される塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を示す塩基配列からなる第二プライマー。
[項16]
淋菌のopa遺伝子を検出するためのプローブが、配列番号39~42のいずれかで示される塩基配列を含む、項15に記載の組成物。
[項17]
クラミジアトラコマチス及び淋菌を検出するためのキットであって、項12~14のいずれかに記載の組成物及び項15又は16に記載の組成物を含むキット。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、クラミジアトラコマチ及び/又は淋菌の新規な検出手段及び方法が提供される。当該検出手段及び方法により、例えば高感度に検出を行うことができる。また、本発明によれば、核酸精製工程を経ておらず核酸増幅反応を阻害する生体由来の夾雑物を含み得るような検体試料からでも、検体試料中に含まれるクラミジアトラコマチス及び/又は淋菌を高感度に検出することが可能である。さらに、本発明によれば、内在性プラスミドを有さないクラミジアトラコマチスに関しても検出することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を示しつつ、本発明についてさらに詳説するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、本明細書中に記載された非特許文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用され、その全体が明細書に組み込まれる。また、本明細書中の「~」は「以上、以下」を意味し、例えば明細書中で「X~Y」と記載されていれば「X以上、Y以下」を示す。本明細書中の「及び/又は」は、一部又は全部を意味する。本明細書中の「含む」は、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を包含する。
【0016】
また、本明細書では、核酸プライマーを単にプライマーという場合があり、核酸プローブ及び標識プローブを単にプローブという場合があり、これらを総称してオリゴヌクレオチドともいう。本発明はクラミジアトラコマチス及び/又は淋菌を検出するためのオリゴヌクレオチドプライマー(プライマー)及びオリゴヌクレオチドプローブ(プローブ)、並びにこれらを用いてクラミジアトラコマチスを検出する方法及び該方法を実施するためのキットを包含する。
【0017】
本明細書では、配列の同一性は、市販の又は電気通信回線(インターネット)を通じて利用可能な解析ツールを用いて算出することができ、例えば、市販のソフトウェアGENETYX(株式会社ゼネティックス社)を用いて、又は全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムBLAST(Basic local alignment search tool)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)においてデフォルト(初期設定)のパラメータを用いて算出することができる。
【0018】
本発明の一実施形態ではクラミジアトラコマチスの内在性プラスミド、クラミジアトラコマチスのporB遺伝子の部分領域及び/又は淋菌のopa遺伝子の部分領域を検出対象としている。クラミジアトラコマチスの内在性プラスミドの部分領域の塩基配列を配列番号1に示す。クラミジアトラコマチスのporB遺伝子の部分領域の塩基配列を配列番号2に示す。淋菌のopa遺伝子の部分領域の塩基配列を配列番号3~7に示す。
【0019】
[1]本発明のオリゴヌクレオチドプローブ
本発明の実施形態の一つは、以下の(1)~(3)のいずれかに記載されるオリゴヌクレオチドプローブである。
【0020】
(1)クラミジアトラコマチスのpоrB遺伝子を検出するためのプローブ。
クラミジアトラコマチスのporB遺伝子を検出するためのプローブは、好ましくは以下の(1-1)又は以下の(1-2)のものであり、より好ましくは以下の(1-2)のものである。
(1-1)以下の(a)及び(b)の特徴を有する、クラミジアトラコマチスのpоrB遺伝子を検出するためのプローブ。
(a)配列番号9で示される塩基配列又はそれに相補的な塩基配列において連続する少なくとも8塩基以上の塩基配列S1、又は塩基配列S1において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列S2を含むオリゴヌクレオチド。
(b)前記(a)のオリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。
(1-2)配列番号27~32のいずれかで示される塩基配列を含む、クラミジアトラコマチスのpоrB遺伝子を検出するためのプローブ。
塩基配列S1は、配列番号9で示される塩基配列又はそれに相補的な塩基配列において連続する10塩基以上、12塩基以上、14塩基以上、16塩基以上、18塩基以上、又は20塩基以上の塩基配列であることが好ましい。また、塩基配列S1は、配列番号9で示される塩基配列又はそれに相補的な塩基配列の全長であってもよいが、例えば50塩基以下、45塩基以下、40塩基以下、35塩基以下、又は30塩基以下であってもよい。
塩基配列S2は、塩基配列S1において1又は2個(例えば1個)の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列であることが好ましい。
【0021】
(2)クラミジアトラコマチスの内在性プラスミドを検出するためのプローブ
クラミジアトラコマチスの内在性プラスミドを検出するためのプローブは、好ましくは以下の(2-1)又は以下の(2-2)のものであり、より好ましくは以下の(2-2)のものである。
(2-1)以下の(c)及び(d)の特徴を有するクラミジアトラコマチスの内在性プラスミドを検出するためのプローブ。
(c)配列番号8で示される塩基配列又はそれに相補的な塩基配列において連続する少なくとも8塩基以上の塩基配列S3、又は塩基配列S3において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列S4を含むオリゴヌクレオチド。
(d)前記(c)のオリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。
(2-2)配列番号12~15、56、及び57のいずれかで示される塩基配列を含む、クラミジアトラコマチスの内在性プラスミドを検出するためのプローブ。
塩基配列S3は、配列番号8で示される塩基配列又はそれに相補的な塩基配列において連続する10塩基以上、15塩基以上、20塩基以上、又は25塩基以上の塩基配列であることが好ましい。また、塩基配列S3は、配列番号8で示される塩基配列又はそれに相補的な塩基配列の全長であってもよいが、例えば、50塩基以下、45塩基以下、40塩基以下、又は35塩基以下であってもよい。
塩基配列S4は、塩基配列S3において1又は2個(例えば1個)の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列であることが好ましい。
【0022】
(3)淋菌のopa遺伝子を検出するためのプローブ
淋菌のopa遺伝子を検出するためのプローブは、好ましくは以下の(3-1)又は以下の(3-2)のものであり、より好ましくは以下の(3-2)のものである。
(3-1)以下の(e)及び(f)の特徴を有する淋菌のopa遺伝子を検出するためのプローブ。
(e)配列番号10又は配列番号11で示される塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも8塩基以上の塩基配列S5、又は塩基配列S5において1~3個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列S6を含み、かつ、配列番号10又は配列番号11で示される塩基配列の37~43番目の塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
(f)前記(e)のオリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端のいずれか一方のみが標識されている。
(3-2)配列番号40~42のいずれかで示される塩基配列を含む、淋菌のopa遺伝子を検出するためのプローブ。
塩基配列S5は、配列番号10又は配列番号11で示される塩基配列又はそれに相補的な塩基配列において連続する10塩基以上、11塩基以上、12塩基以上、13塩基以上、14塩基以上、又は15塩基以上の塩基配列であることが好ましい。また、塩基配列S5は、配列番号10又は配列番号11で示される塩基配列又はそれに相補的な塩基配列の全長であってもよいが、例えば、50塩基以下、45塩基以下、40塩基以下、35塩基以下、30塩基以下、又は25塩基以下であってもよい。
塩基配列S6は、塩基配列S5において1又は2個(例えば1個)の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加した塩基配列であることが好ましい。
【0023】
上記(1)~(3)のオリゴヌクレオチドプローブは核酸が標識されていてもよいし、標識されていなくてもよい。標識される場合、標識される核酸の数に特に制限は無い。好ましくはオリゴヌクレオチドプローブの末端の核酸、好ましくは末端のシトシン塩基が標識されている形態である。より好ましくはオリゴヌクレオチドプローブの末端の核酸のうちどちらか片方のみが標識されている形態である。標識物質にも特に制限はないが、蛍光色素であることがより好ましい。蛍光色素としては特に標的核酸とのハイブリダイゼーション時に消光を生じる蛍光色素が好ましく、例えばグアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素が挙げられる。そのような蛍光色素としては、具体的には、フルオロセイン又はその誘導体(例えばフルオロセインイソチオシアネート(FITC))、BODIPY(商標)シリーズ、ローダミン又はその誘導体(例えば5-カルボキシローダミン6G(GR6G)やテトラメチルローダミン(TAMRA))が例示できる。
【0024】
上記(1)~(3)のオリゴヌクレオチドプローブは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば上記(1)のオリゴヌクレオチドプローブは、感度を向上させるため、上記(2)のオリゴヌクレオチドプローブと組み合わせて用いてもよい。クラミジアトラコマチス及び淋菌の両方を検出するため、上記(1)のオリゴヌクレオチドプローブ及び/又は(2)のオリゴヌクレオチドプローブは、上記(3)のオリゴヌクレオチドプローブと組み合わせて用いてもよい。
【0025】
[2]本発明のオリゴヌクレオチドプライマー
本発明の実施形態の一つは、以下の(4)~(6)に記載されるオリゴヌクレオチドプライマーである。
【0026】
(4)クラミジアトラコマチスのporB遺伝子を検出するためのプライマー
クラミジアトラコマチスのporB遺伝子を検出するためのプライマーは、その検出が可能な限り特に限定されないが、以下の(A-1)と(B-1)とを組み合わせたプライマーセットであることが好ましい。
(A-1)配列番号33~35のいずれかで示される塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を示す塩基配列からなる第一プライマー。
(B-1)配列番号36~38のいずれかで示される塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を示す塩基配列からなる第二プライマー。
第一プライマー(A-1)は、配列番号33~35のいずれかで示される塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を示す限り特に制限されず、95%以上、97%以上、又は99%以上の同一性を示す塩基配列からなるものであってもよい。配列番号33と少なくとも90%以上の同一性を示すものとしては、例えば配列番号34又は配列番号35が挙げられる。第一プライマー(A-1)は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第二プライマー(B-1)は、配列番号36~38のいずれかで示される塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を示す限り特に制限されず、95%以上、97%以上、又は99%以上の同一性を示す塩基配列からなるものであってもよい。配列番号36と少なくとも90%以上の同一性を示すものとしては、例えば配列番号37又は配列番号38が挙げられる。第二プライマー(B-1)は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
(5)クラミジアトラコマチスの内在性プラスミドを検出するためのプライマー
クラミジアトラコマチスの内在性プラスミドを検出するためのプライマーは、その検出が可能な限り特に限定されないが、以下の(A-2)と(B-2)とを組み合わせたプライマーセットであることが好ましい。
(A-2)配列番号16~18のいずれかで示される塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を示す塩基配列からなる第一プライマー。
(B-2)配列番号19~21のいずれかで示される塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を示す塩基配列からなる第二プライマー。
第一プライマー(A-2)は、配列番号16~18のいずれかで示される塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を示す限り特に制限されず、95%以上、97%以上、又は99%以上の同一性を示す塩基配列からなるものであってもよい。配列番号16と少なくとも90%以上の同一性を示すものとしては、例えば配列番号17又は配列番号18が挙げられる。第一プライマー(A-2)は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第二プライマー(B-2)は、配列番号19~21のいずれかで示される塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を示す限り特に制限されず、95%以上、97%以上、又は99%以上の同一性を示す塩基配列からなるものであってもよい。配列番号19と少なくとも90%以上の同一性を示すものとしては、例えば配列番号20又は配列番号21が挙げられる。第二プライマー(B-2)は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
(6)淋菌を検出するためのプライマー
淋菌を検出するためのプライマーは、淋菌の検出が可能な限り特に限定されないが、以下の(C-1)と(D-1)とを組み合わせたプライマーセットであることが好ましい。
(C-1)配列番号43~45のいずれかで示される塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を示す塩基配列からなる第一プライマー。
(D-1)配列番号46~48のいずれかで示される塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を示す塩基配列からなる第二プライマー。
第一プライマー(C-1)は、配列番号43~45のいずれかで示される塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を示す塩基配列からなるものであってもよい。配列番号43と少なくとも90%以上の同一性を示すものとしては、例えば配列番号44又は配列番号45が挙げられる。第一プライマー(C-1)は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第二プライマー(D-1)は、配列番号46~48のいずれかで示される塩基配列と少なくとも90%以上の同一性を示す塩基配列からなるものであってもよい。配列番号46と少なくとも90%以上の同一性を示すものとしては、例えば配列番号47又は配列番号48が挙げられる。第二プライマー(D-1)は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
[3-(1)]本発明のクラミジアトラコマチス及び/又は淋菌の検出方法
本発明のクラミジアトラコマチス又は淋菌の検出方法は、以下の(1)~(3)の工程を含むことが好ましい。
(1)上記で説明したオリゴヌクレオチドプライマーセットのうち少なくとも1セットを用いて試料中に存在し得るクラミジアトラコマチス及び/又は淋菌由来の核酸の増幅を行う工程。
(2)工程(1)によって得られた核酸増幅産物と、上記で説明したオリゴヌクレオチドプローブのうち少なくとも1本とをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる工程。
(3)工程(2)で得られた複合体を検出する工程。
【0030】
上記方法は、以下の(1A)、(1B)、(2A)、及び(3A)に示す工程を含むことがより好ましい。
(1A)クラミジアトラコマチスの内在性プラスミド、クラミジアトラコマチスのporB遺伝子、及び淋菌のopa遺伝子のうち少なくともいずれか一つを増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーセットを用意する工程。
(1B)被検核酸及び工程(1A)のオリゴヌクレオチドプライマーセットを含む反応液によって被検核酸を増幅する工程。
(2A)工程(1B)によって得られた核酸増幅産物と、上記で説明したオリゴヌクレオチドプローブのうち少なくとも1本とをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる工程。
(3A)工程(2A)で得られた複合体を検出する工程。
【0031】
本発明における実施態様の一つとして、クラミジアトラコマチスを検出するためのプライマーセット及びプローブを組み合わせて使用してもよい。また、淋菌を検出するためのプライマーセット及びプローブを組み合わせて使用してもよい。組み合わせは原則任意であるが、好ましくは、以下(I)~(III)のいずれかである。
(I)上記(A-2)の第一プライマーと上記(B-2)第二プライマーとからなる一対のプライマーセット、及び、上記(2)のオリゴヌクレオチドプローブ(好ましくは配列番号8で示される塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも8塩基以上の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドプローブ)の組み合わせ。
(II)上記(A-1)の第一プライマー(A-1)と上記(B-1)の第二プライマーとからなる一対のプライマーセット、及び、上記(1)のオリゴヌレオチドプローブ(好ましくは配列番号9で示される塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも8塩基以上の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドプローブ)の組み合わせ。
(III)上記(C-1)の第一プライマーと上記(D-1)の第二プライマーとからなる一対のプライマーセット、及び、上記(3)のオリゴヌクレオチドプローブ(好ましくは配列番号10もしくは11で示される塩基配列と90%以上の同一性を示す塩基配列又はそれらに相補的な塩基配列において連続する少なくとも8塩基以上の塩基配列を含むオリゴヌクレオチドプローブ)の組み合わせ。
【0032】
また、本発明における実施態様の一つとして、クラミジアトラコマチスを検出するためのプライマーセット及びプローブと淋菌を検出するためのプライマーセット及びプローブとを組み合わせて、クラミジアトラコマチス及び淋菌の両方を検出するために使用してもよい。組み合わせは原則任意であるが、好ましくは上記(I)及び(III)の組合せ、上記(II)及び(III)の組合せ、又は上記(I)~(III)の組み合わせである。
【0033】
[3-(2)]被検核酸の増幅
本発明における被検核酸は、例えば、一本鎖でもよいし、二本鎖でもよい。二本鎖の場合は、例えば、被検核酸とプローブとをハイブリダイズさせてハイブリッド体を形成するために、加熱により前記二本鎖を一本鎖に解離させる工程を含むことが好ましい。
【0034】
前記被検核酸の種類としては、特に制限されないが、例えば、DNAや、トータルRNA、mRNA等のRNA等があげられる。また、前記被検核酸は、例えば、クラミジアトラコマチス及び/又は淋菌を寄生させた細胞培養試料や生体試料等の試料に含まれる核酸が挙げられる。
【0035】
前記生体試料としては、特に制限されないが、例えば、生殖器や咽頭をぬぐったスワブ、あるいは該スワブに付着したぬぐい液、尿、うがい液などが挙げられる。
試料の採取方法、DNAやRNA等の核酸の調製方法等は、制限されず、従来公知の方法を採用できる。
【0036】
被検核酸を鋳型として、上述のオリゴヌクレオチドプライマーセットを用いて、PCR等の核酸増幅法によって、検出目的の塩基部位を含む配列を増幅させることが好ましい。なお、PCR等の条件は、特に制限されず、従来公知の方法により行うことができる。
【0037】
本発明のクラミジアトラコマチス及び/又は淋菌の検出方法における核酸の増幅工程に用いられる具体的な核酸増幅方法としては特に限定されず、適宜公知の方法を用いることができる。例えば、PCR(Polymerase Chain Reaction)法、NASBA(Nucleic acid sequence based amplification)法、TMA(Transcription-mediated amplification)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法等があげられるが、PCR法を用いることが好ましい。なお、これらの各方法において、増幅反応の条件は特に制限されず、従来公知の方法により行うことができる。
【0038】
核酸増幅にPCR法を用いる場合、使用するDNAポリメラーゼは特に制限されないが、好ましくはα型DNAポリメラーゼである。その理由を以下に説明する。
【0039】
本発明プローブが含まれる反応系でクラミジアトラコマチス及び/又は淋菌に含まれるDNAを増幅する場合、核酸増幅工程中に該オリゴヌクレオチドプローブが試料のクラミジアトラコマチス及び/又は淋菌に含まれるDNA遺伝子やその増幅産物と結合しうる。
【0040】
KOD DNA Polymerase(超好熱始原菌Thermococcus kodakaraensis KOD1由来)などα型のDNAポリメラーゼは5’-3’エキソヌクレアーゼ活性は持たず、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を持つ。従って、α型DNAポリメラーゼを用いればプローブの分解を防止することができ、3’-5’エキソヌクレアーゼ活性により核酸増幅工程において高い正確性が発揮される。
【0041】
KOD DNA Polymeraseはα型DNAポリメラーゼでありながらDNA合成活性が高く100塩基/秒以上のDNA合成速度を有し伸長効率が優れている。従って、本発明の実施にはα型DNAポリメラーゼの中でも、KOD DNA Polymerase(東洋紡製、商標)を用いることが好ましい。
【0042】
さらに、α型DNAポリメラーゼを変異させて100塩基/秒以上のデオキシリボ核酸合成速度を達成させた変異型、あるいは、野生型及び/又は変異型の組み合わせにより当該性能を達成させたDNAポリメラーゼ組成物も、本発明の実施に適したDNAポリメラーゼとして用いることができる。
例えば、上記KOD DNA Polymerase以外に100塩基/秒以上のデオキシリボ核酸合成速度を有するDNAポリメラーゼとして、「KOD FX(東洋紡製、登録商標)」、「KOD -Plus-(東洋紡製、商標)」、「KOD Dash(東洋紡製、登録商標)」、「KOD -Multi&Epi-(東洋紡製、商標)」、「KOD One(東洋紡製、登録商標)」、PrimeSTAR HS DNAポリメラーゼ(タカラバイオ製、登録商標)なども利用できる。なかでも、高い正確性とDNA合成活性とをあわせ持つKOD-Plus-が望ましい。
【0043】
[3-(3)]クラミジアトラコマチス及び/又は淋菌由来の核酸増幅産物とプローブとの複合体形成
本発明のクラミジアトラコマチス及び/又は淋菌の検出方法においては、上記で説明した被検核酸の増幅によって得られた増幅産物と、上記で説明したオリゴヌクレオチドプローブのうち少なくとも1本とをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめることが好ましい。
【0044】
核酸増幅産物を含む試料にオリゴヌクレオチドプローブを添加するタイミングは、特に制限されず、例えば、前述の核酸増幅反応前、核酸増幅反応途中及び核酸増幅反応後のいずれの反応系に添加してもよい。中でも、増幅反応と、後述の検出反応とを連続的に行うことができるため、増幅反応前に添加することが好ましい。このように核酸増幅反応の前に前記プローブを添加する場合は、例えば、後述のように、その3’末端に、蛍光色素やリン酸基を付加したりすることが好ましい。
【0045】
[3-(4)]核酸増幅産物とプローブとの複合体の検出
上記で得られた複合体を検出する方法は特に限定されない。例えば、融解曲線分析による方法が挙げられる。
【0046】
融解曲線分析の場合は、例えば、以下のように行う。二本鎖DNAを含む溶液を加熱していくと、260nmにおける吸光度が上昇する。これは、二本鎖DNAにおける両鎖間の水素結合が加熱によってほどけ、一本鎖DNAに解離(DNAの融解)することが原因である。そして、全ての二本鎖DNAが解離して一本鎖DNAになると、その吸光度は、加熱開始時の吸光度(二本鎖DNAのみの吸光度)の約1.5倍程度を示し、これによって融解が完了したと判断できる。
【0047】
本発明において、融解曲線分析を行うための温度変化に伴うシグナル変動の測定は、前述のような原理から、260nmの吸光度測定により行うこともできるが、本発明のオリゴヌクレオチドプローブに標識を付加した場合は該標識のシグナルを測定することが好ましい。このため、本発明のクラミジアトラコマチス及び/又は淋菌の検出方法に用いるオリゴヌクレオチドプローブとしては、標識化プローブを使用することが好ましい。
【0048】
標識化プローブとしては、例えば、単独でシグナルを示し且つハイブリッド形成によりシグナルを示さない標識化プローブ、又は、単独でシグナルを示さず且つハイブリッド形成によりシグナルを示す標識化プローブが挙げられる。前者のプローブであれば、検出対象配列とハイブリッド(二本鎖)を形成している際にはシグナルを示さず、加熱によりプローブが遊離するとシグナルを示す。また、後者のプローブであれば、検出対象配列とハイブリッド(二本鎖)を形成することによってシグナルを示し、加熱によりプローブが遊離するとシグナルが減少(消失)する。したがって、この標識によるシグナルをシグナル特有の条件(吸光度等)で検出することによって、前記260nmの吸光度測定と同様に、融解の進行を把握することができる。
【0049】
標識化プローブの具体例として、例えば、蛍光色素で標識され、単独で蛍光を示し且つハイブリッド形成により蛍光が減少(例えば、消光)するプローブが好ましい。このような現象は、一般に、蛍光消光現象と呼ばれる。この蛍光消光現象を利用したプローブとしては、中でも、一般的にグアニン消光プローブとよばれるものが好ましい。このようなプローブは、いわゆるQProbe(登録商標)として知られている。グアニン消光プローブとは、例えば、オリゴヌクレオチドの3’末端もしくは5’末端の塩基がシトシンとなるように設計し、その末端の塩基シトシンが相補的な塩基グアニンに近づくと発光が弱くなる蛍光色素で前記末端を標識化したプローブである。本発明のプローブにおいては、例えば、蛍光消光現象を示す蛍光色素を、前記オリゴヌクレオチドの3’末端のシトシンに結合させてもよいし、前記オリゴヌクレオチドの5’末端をシトシンに設計し、これに結合させてもよい。
【0050】
前記蛍光色素は特に制限されないが、グアニンとの相互作用により消光する蛍光消光色素として、例えば、4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸(BODIPY-FL)、カルボキシローダミン6G(CR6G)、TAMRA、ローダミン6G、テトラブロモスルホンフルオレセイン(TBSF)、及び2-オキソ-6,8-ジフルオロ-7-ジヒドロキシ-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボン酸(Pacific Blue)からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光消光色素を挙げることができ、本発明にはこれらの蛍光消光色素が好適に使用され得る。プローブの検出条件は、特に制限されず、使用する蛍光色素により適宜決定できるが、例えば、PacificBlueは、検出波長450~480nm、TAMRAは、検出波長585~700nm、BODIPYFLは、検出波長515~555nmで検出できる。このようなプローブを使用すれば、シグナルの変動により、ハイブリダイズと解離とを容易に確認することができる。
【0051】
本発明のクラミジアトラコマチス及び/又は淋菌の検出方法に用いるプローブは、例えば、3’末端にリン酸基が付加されてもよい。後述するように、遺伝子の有無を検出する被検核酸(標的核酸)は、PCR等の核酸増幅法によって調製することができ、この際、本発明のプローブを核酸増幅反応の反応系に共存させることができる。このような場合、プローブの3’末端にリン酸基を付加させておけば、プローブ自体が核酸増幅反応によって伸長することを十分に防止できる。また、3’末端に前述のような標識物質を付加することによっても、同様の効果が得られる。
【0052】
得られた増幅産物の解離、及び、解離により得られた一本鎖核酸と前記標識化プローブとのハイブリダイズは、例えば、前記反応液の温度変化によって行うことができる。
【0053】
前記解離工程における加熱温度は、前記増幅産物が解離できる温度であれば特に制限されないが、例えば、85~98℃である。加熱時間も特に制限されないが、通常、1秒~10分であり、好ましくは1秒~5分である。
【0054】
また、解離した一本鎖核酸と前記標識化プローブとのハイブリダイズは、例えば、前記解離工程の後、前記解離工程における加熱温度を降下させることによって行うことができる。温度条件としては、例えば、35~50℃である。
【0055】
ハイブリダイズ工程の反応系(反応系)における各組成の体積や濃度は、特に制限されない。具体例としては、前記反応系において、前記核酸の濃度は、例えば、0.01~100μmol/Lであり、好ましくは0.1~10μmol/L、前記標識化プローブの濃度は、例えば、前記核酸に対する添加割合を満たす範囲が好ましく、例えば、0.01~100μmol/Lであり、好ましくは0.01~10μmol/Lである。
【0056】
そして、前記反応液の温度を変化させ、前記増幅産物と前記標識化プローブとのハイブリッド形成体の融解状態を示すシグナル値を測定することが好ましい。具体的には、例えば、前記反応液(前記一本鎖核酸と前記標識化プローブとのハイブリッド形成体)を加熱し、温度上昇に伴うシグナル値の変動を測定する。前述のように、末端のC塩基が標識化されたプローブ(グアニン消光プローブ)を使用した場合、一本鎖核酸とハイブリダイズした状態では、蛍光が減少(又は消光)し、解離した状態では、蛍光を発する。したがって、例えば、蛍光が減少(又は消光)しているハイブリッド形成体を徐々に加熱し、温度上昇に伴う蛍光強度の増加を測定すればよい。
【0057】
蛍光強度の変動を測定する際の温度範囲は、特に制限されないが、例えば、開始温度が室温~85℃であり、好ましくは25~70℃であり、終了温度は、例えば、40~105℃である。また、温度の上昇速度は、特に制限されないが、例えば、0.05~20℃/秒であり、好ましくは0.08~5℃/秒である。
【0058】
被検核酸の有無の決定は、例えば、ハイブリッド形成時におけるシグナルの変動を測定することによって行いうる。具体的には、前記プローブを含む反応液の温度を降下させてハイブリッドを形成する際に、前記温度降下に伴うシグナル変動を測定することが好ましい。
【0059】
具体例として、単独でシグナルを示し且つハイブリッド形成によりシグナルを示さない標識化プローブ(例えば、グアニン消光プローブ)を使用した場合、一本鎖核酸と標識化プローブが解離している状態では蛍光を発しているが、温度の降下によりハイブリッドを形成すると、前記蛍光が減少(又は消光)する。したがって、例えば、前記反応液の温度を徐々に降下させて、温度下降に伴う蛍光強度の減少を測定すればよい。他方、単独でシグナルを示さず且つハイブリッド形成によりシグナルを示す標識化プローブを使用した場合、一本鎖核酸と標識化プローブとが解離している状態では蛍光を発していないが、温度の降下によりハイブリッドを形成すると、蛍光を発するようになる。したがって、例えば、前記反応液の温度を徐々に降下させて、温度下降に伴う蛍光強度の増加を測定すればよい。
【0060】
また、本発明においては、目的の塩基部位における遺伝子型の決定のために、前記シグナルの変動を解析してTm(melting temperature)値として決定してもよい。
【0061】
[4]クラミジアトラコマチス及び/又は淋菌を検出するための組成物及びキット
別の実施形態では、上述のクラミジアトラコマチスを検出するためのプローブを含む、クラミジアトラコマチスを検出するための組成物であって、上述のクラミジアトラコマチスの内在性プラスミドを検出するためのプローブと組み合わせて用いられる組成物が提供される。
別の実施形態では、上記(A-1)の第一プライマーと、上記(B-1)の第二プライマーとの組み合わせからなるプライマーセットを含み、上述のクラミジアトラコマチスのporB遺伝子を検出するためのプローブと組み合わせて用いられる、クラミジアトラコマチスのporB遺伝子を検出するための組成物及びキットが提供される。
別の実施形態では、上記(A-2)の第一プライマーと、上記(B-2)の第二プライマーとの組み合わせからなるプライマーセットを含み、上述のクラミジアトラコマチスの内在性プラスミドを検出するためのプローブと組み合わせて用いられる、クラミジアトラコマチスの内在性プラスミドを検出するための組成物及びキットが提供される。
別の実施形態では、上記(C-1)の第一プライマーと、上記(D-1)の第二プライマーとの組み合わせからなるプライマーセットを含み、淋菌のopa遺伝子を検出するためのプローブと組み合わせて用いられる、淋菌のopa遺伝子を検出するための組成物及びキットが提供される。
別の実施形態では、クラミジアトラコマチスのporB遺伝子を検出するための組成物、クラミジアトラコマチスの内在性プラスミドを検出するための組成物、及び/又は、淋菌のopa遺伝子を検出するための組成物を含む、クラミジアトラコマチス及び/又は淋菌を検出するための組成物及びキットが提供される。
上記キットは、構成成分の一部又は全部を同じ容器に封入したもの又は別々の容器に封入したものを、例えば一つの包装体に梱包し、当該キットの使用方法等に関する情報を含む態様で提供することができる。また、上記キットは、陽性コントロール液及び/又は陰性コントロール液を含めることもできる。
【実施例0062】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0063】
[実施例1:クラミジアトラコマチスの内在性プラスミドの検出]
(1-1)方法
クラミジアトラコマチスを高感度に検出できる領域を探索するために、クラミジアトラコマチス不活化菌液を1反応あたり20コピー使用し、配列番号12~15に示される計4個オリゴヌクレオチドプローブを用いてクラミジアトラコマチスの検出を確認した。特許文献1で報告されているクラミジアトラコマチスの内在性プラスミドの領域を検出の比較対象とした。非特異増幅の有無に関しては、陰性試料として精製水を測定に使用した。
【0064】
(1-2)反応液
ジーンキューブテストベーシック(東洋紡製)を使用して以下に示される成分を含む反応液を調製した。オリゴヌクレオチドプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブの組み合わせについては表1に記載した。試薬には、核酸増幅が正常に行われたかを確認するための既知配列のインターナルコントロール(IC)も添加した。
10μM オリゴヌクレオチドプライマー(配列番号17、22、及び23のいずれか一本)0.4μL
100μM オリゴヌクレオチドプライマー(配列番号19、24、及び25のいずれか1本)0.2μL
10μM オリゴヌクレオチドプローブ(配列番号12~15及び26のいずれか1本)0.3μL
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μL
PP Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μL
【0065】
(1-3)反応
GENECUBE(登録商標)を用いて、前記反応液を以下の温度サイクルで反応させ、融解曲線解析により増幅の有無を確認した。
94℃ 30秒
(以上1サイクル)
97℃ 1秒
58℃ 5秒
68℃ 5秒
(以上50サイクル)
94℃ 30秒
39℃ 30秒
39~75℃(0.09℃/秒で温度上昇)
【0066】
(1―4)結果
配列番号12~15に基づき設計したプローブを含む計4個のオリゴヌクレオチドとオリゴヌクレオチドプローブのセットは比較対象と比べて低濃度試料の検出率が高く、検出系として優れていることが分かった。また、陰性試料として精製水を使用して非特異増幅の確認を行ったところ、いずれのプライマーとプローブを用いた場合でも非特異増幅の発生は認められなかった。特許文献1とは異なる領域以外で内在性プラスミド検出系を構築することでクラミジアトラコマチスをより高感度に検出できる可能性を見出した。
【0067】
【0068】
[実施例2:クラミジアトラコマチスの内在性プラスミドの検出]
(2―1)方法
実施例1で見出したクラミジアトラコマチスの内在性プラスミドの領域でより高感度クラミジアトラコマチスを検出できるプライマーセットを探索した。クラミジアトラコマチス不活化菌液を1反応あたり10コピー使用し、配列番号16~21に基づき設計したオリゴヌクレオチドとオリゴヌクレオチドプローブのセットでクラミジアトラコマチスの検出を確認した。比較対象として特許文献1で報告されているクラミジアトラコマチスの内在性プラスミドの領域に対してもプライマーセットの組み合わせにより高感度に検出できないか調査した。非特異増幅の有無に関しては、陰性試料として精製水を測定に使用した。
【0069】
(2-2)反応液
ジーンキューブテストベーシック(東洋紡製)を使用して以下に示される成分を含む反応液を調製した。オリゴヌクレオチドプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブの組み合わせについては表1に記載した。試薬には、核酸増幅が正常に行われたかを確認するための既知配列のインターナルコントロール(IC)も添加した。
10μM オリゴヌクレオチドプライマー(配列番号16~18及び49~51のいずれか一本)0.4μL
100μM オリゴヌクレオチドプライマー(配列番号19、20、52、及び53のいずれか1本)0.2μL
10μM オリゴヌクレオチドプローブ(配列番号15及び54~57のいずれか1本)0.3μL
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μL
PP Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μL
【0070】
(2-3)反応
GENECUBE(登録商標)を用いて、前記反応液を以下の温度サイクルで反応させ、融解曲線解析により増幅の有無を確認した。
94℃ 30秒
(以上1サイクル)
97℃ 1秒
58℃ 5秒
68℃ 5秒
(以上50サイクル)
94℃ 30秒
39℃ 30秒
39~75℃(0.09℃/秒で温度上昇)
【0071】
(2―4)結果
配列番号16~21に基づき設計したオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号15、56、及び57に基づき設計したオリゴヌクレオチドプローブのセットは比較対象と比べて低濃度試料の検出率が高く、検出系として優れていることが分かった。
【0072】
【0073】
[実施例3:クラミジアトラコマチスのporB遺伝子の検出]
(3―1)方法
クラミジアトラコマチスを高感度に検出できる領域を探索するために、クラミジアトラコマチス不活化菌液を1反応あたり20コピー使用し、配列番号33~38に基づき設計したオリゴヌクレオチドプライマーを組み合わせたプライマーセットでクラミジアトラコマチスの検出を確認した。非特異増幅の有無に関しては、陰性試料として精製水を測定に使用した。
【0074】
(3-2)反応液
ジーンキューブテストベーシック(東洋紡製)を使用して以下に示される成分を含む反応液を調製した。オリゴヌクレオチドプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブの組み合わせについては表1に記載した。試薬には、核酸増幅が正常に行われたかを確認するための既知配列のインターナルコントロール(IC)も添加した。
10μM オリゴヌクレオチドプライマー(配列番号33~35のいずれか一本)0.4μL
100μM オリゴヌクレオチドプライマー(配列番号36~38のいずれか1本)0.2μL
10μM オリゴヌクレオチドプローブ(配列番号32)0.3μL
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μL
PP Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μL
【0075】
(3―3)反応
GENECUBE(登録商標)を用いて、前記反応液を以下の温度サイクルで反応させ、融解曲線解析により増幅の有無を確認した。
94℃ 30秒
(以上1サイクル)
97℃ 1秒
58℃ 5秒
68℃ 5秒
(以上50サイクル)
94℃ 30秒
39℃ 30秒
39~75℃(0.09℃/秒で温度上昇)
【0076】
(3―4)結果
配列番号33~38に基づき設計した計6種のオリゴヌクレオチドプライマーの中で低濃度試料の検出感度が優れている組み合わせが分かった。また、陰性試料として精製水を使用して非特異増幅の確認を行ったところ、いずれのプライマーとプローブを用いた場合でも非特異増幅の発生は認められなかった。porB遺伝子検出系を用いることにより、内在性プラスミドを有さないクラミジアトラコマチスに対しても検出できることが示された。
【0077】
【0078】
[実施例4:淋菌のopa遺伝子の検出]
(4―1)方法
淋菌を高感度に検出できる領域を探索するために、淋菌のgDNAを1反応あたり5コピー使用し、配列番号43及び45~47に基づき設計したオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号39~42のオリゴヌクレオチドプローブのセットで淋菌の検出を確認した。非特異増幅の有無に関しては、陰性試料として精製水を測定に使用した。
【0079】
(4-2)反応液
ジーンキューブテストベーシック(東洋紡製)を使用して以下に示される成分を含む反応液を調製した。オリゴヌクレオチドプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブの組み合わせについては表1に記載した。試薬には、核酸増幅が正常に行われたかを確認するための既知配列のインターナルコントロール(IC)も添加した。
10μM オリゴヌクレオチドプライマー(配列番号43及び45のいずれか一本)0.4μL
100μM オリゴヌクレオチドプライマー(配列番号46及び47のいずれか1本)0.2μL
10μM オリゴヌクレオチドプローブ(配列番号39~42のいずれか1本)0.3μL
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μL
PP Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μL
【0080】
(4―3)反応
GENECUBE(登録商標)を用いて、前記反応液を以下の温度サイクルで反応させ、融解曲線解析により増幅の有無を確認した。
94℃ 30秒
(以上1サイクル)
97℃ 1秒
58℃ 5秒
68℃ 5秒
(以上50サイクル)
94℃ 30秒
39℃ 30秒
39~75℃(0.09℃/秒で温度上昇)
【0081】
(4―4)結果
配列番号43及び45~47に基づき設計したオリゴヌクレオチドプライマーと配列番号39~42のオリゴヌクレオチドプローブのセットの中で低濃度試料の検出感度が優れている組み合わせが分かった。また、陰性試料として精製水を使用して非特異増幅の確認を行ったところ、いずれのプライマーとプローブを用いた場合でも非特異増幅の発生は認められなかった。
【0082】
【0083】
[実施例5:1反応系での複数菌種の検出]
(5―1)方法
淋菌とクラミジアトラコマチスを1反応系で高感度に検出できるプライマー・プローブの組み合わせを探索するために、淋菌あるいはクラミジアトラコマチスのgDNAを1反応あたり5コピー使用し、配列番号41~48、14、15、17~19、21、31~34、36、及び38に基づき設計したオリゴヌクレオチドプライマーとオリゴヌクレオチドプローブのセットで淋菌あるいはクラミジアトラコマチスの検出を確認した。非特異増幅の有無に関しては、陰性試料として精製水を測定に使用した。
【0084】
(5-2)反応液
ジーンキューブテストベーシック(東洋紡製)を使用して以下に示される成分を含む反応液を調製した。オリゴヌクレオチドプライマー及びオリゴヌクレオチドプローブの組み合わせについては表1に記載した。試薬には、核酸増幅が正常に行われたかを確認するための既知配列のインターナルコントロール(IC)も添加した。
10μM 淋菌opa遺伝子増幅用オリゴヌクレオチドプライマー(配列番号41及び42のいずれか一本)0.4μL
100μM 淋菌opa遺伝子増幅用オリゴヌクレオチドプライマー(配列番号43~45のいずれか1本)0.2μL
10μM 淋菌opa遺伝子検出用オリゴヌクレオチドプローブ(配列番号46~48のいずれか1本)0.3μL
10μM クラミジアトラコマチス内在性プラスミド増幅用オリゴヌクレオチドプライマー(配列番号14及び15のいずれか一本)0.4μL
100μM クラミジアトラコマチス内在性プラスミド増幅用オリゴヌクレオチドプライマー(配列番号17及び18のいずれか1本)0.2μL
10μM クラミジアトラコマチス内在性プラスミド検出用オリゴヌクレオチドプローブ(配列番号19及び21のいずれか1本)0.3μL
10μM クラミジアトラコマチスpоrB遺伝子増幅用オリゴヌクレオチドプライマー(配列番号31及び32のいずれか一本)0.4μL
100μM クラミジアトラコマチスpоrB遺伝子増幅用オリゴヌクレオチドプライマー(配列番号33及び34のいずれか1本)0.2μL
10μM クラミジアトラコマチスpоrB遺伝子検出用オリゴヌクレオチドプローブ(配列番号36及び38のいずれか1本)0.3μL
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μL
PP Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μL
【0085】
(5―3)反応
GENECUBE(登録商標)を用いて、前記反応液を以下の温度サイクルで反応させ、融解曲線解析により増幅の有無を確認した。
94℃ 30秒
(以上1サイクル)
97℃ 1秒
58℃ 5秒
68℃ 5秒
(以上50サイクル)
94℃ 30秒
39℃ 30秒
39~75℃(0.09℃/秒で温度上昇)
【0086】
(5―4)結果
淋菌opa遺伝子検出系、クラミジアトラコマチス内在性プラスミド検出系、クラミジアトラコマチスpоrB遺伝子検出系のオリゴヌクレオチドの組み合わせの中で低濃度試料の検出感度が優れている組み合わせが分かった。また、陰性試料として精製水を使用して非特異増幅の確認を行ったところ、いずれのプライマーとプローブを用いた場合でも非特異増幅の発生は認められなかった。
【0087】
本発明をクラミジアトラコマチス及び/又は淋菌検査に利用することで、例えば迅速性及び正確性の両方に優れ、なおかつ高感度にクラミジアトラコマチス及び/又は淋菌を検出することができる。また、本発明はプライマーセットやプローブを任意に組み合わせた1反応系で複数菌種を同時に検出することができるため、クラミジアトラコマチス及び/又は淋菌を簡便に検査することが可能になる。