(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002951
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】燃料電池ユニット
(51)【国際特許分類】
H01M 8/2475 20160101AFI20241226BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20241226BHJP
【FI】
H01M8/2475
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103362
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 周治
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA28
5H126BB06
5H126FF10
(57)【要約】
【課題】本開示は、燃料電池セルを積層させた燃料電池スタックのガスケットを透過した水素が燃料電池スタックを収容するケースの内部に滞留することを防止可能な燃料電池ユニットを提供する。
【解決手段】燃料電池ユニット1は、燃料電池スタック2と、その燃料電池スタック2を収容するケース4とを備える。燃料電池ユニット1は、ケース4の内部に収容され、燃料電池スタック2を複数の燃料電池セルの積層方向(X軸方向)の一端から他端まで覆うとともに一端と他端にそれぞれ開口部31を有するインシュレータ3を備える。ケース4は、インシュレータ3の開口部31に連通してインシュレータ3の内部の気体を外部へ排出させる換気部5を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池セルが積層された燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックを収容するケースとを備えた燃料電池ユニットであって、
前記ケースの内部に収容され、前記燃料電池スタックを前記複数の燃料電池セルの積層方向の一端から他端まで覆うとともに前記一端と前記他端にそれぞれ開口部を有するインシュレータを備え、
前記ケースは、前記インシュレータの前記開口部に連通して前記インシュレータの内部の気体を外部へ排出させる換気部を有することを特徴とする燃料電池ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から燃料電池に用いられるインシュレータに関する発明が知られている(下記特許文献1を参照)。特許文献1に記載されたインシュレータは、積層された複数の単セルから成るセルスタックを含む積層体とカバーとの間に配置されている。積層体は、セルスタックに対して複数の単セルの積層方向の外側に配置される端部部材を有する。カバーは、積層方向に沿った積層体の側面に対して積層方向と垂直な方向に離れて配置されている。
【0003】
この従来のインシュレータは、上記端部部材の上記積層方向と垂直な方向の端が、セルスタックの上記積層方向と垂直な方向の端よりもカバーに近く、積層体とカバーとの間に配置された状態において、次のような構成を備える。インシュレータは、上記積層体の側面の少なくとも一部を覆う平面部と、その平面部に配置され、セルスタックを構成する複数の単セルのうちの端部部材に近い単セルに向かって突出している突起部と、を備える。
【0004】
この形態のインシュレータによれば、端部部材の垂直方向の端が、セルスタックの垂直方向の端よりもカバーに近いため、インシュレータ挿入時に障害となり得る。しかしながら、端部部材に近い単セルに向かって突出している突起部を備えるので、燃料電池装置の組付け時においてインシュレータを端部部材とスタックケースとの隙間に挿入する際に、突起部がセルスタックに接する。このため、インシュレータの挿入方向の先端部が端部部材に突き当たることが抑制され、インシュレータの挿入性の低下を抑制できる。それゆえ、燃料電池装置の組付けの作業性が低下することを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のインシュレータは、燃料電池において、積層された複数の単セルを含む積層体と、その積層体の近傍に配置される部材との間を電気的に絶縁するために用いられている。より具体的には、特許文献1のインシュレータは、厚さ0.3mmのシート状の部材であり、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の絶縁性を有する材料により形成されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1のインシュレータを用いた燃料電池装置では、たとえば、セルスタックを構成する単セル間のガスケットを透過した水素が、スタックケース内に滞留するおそれがある。スタックケース内に滞留した水素は、たとえば、スタックケースに設けられたバスバ接続用の開口部から接続先のユニットへ流入し、接続先のユニット内に滞留するおそれがある。
【0008】
本開示は、燃料電池セルを積層させた燃料電池スタックのガスケットを透過した水素が燃料電池スタックを収容するケースの内部に滞留することを防止可能な燃料電池ユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、複数の燃料電池セルが積層された燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックを収容するケースとを備えた燃料電池ユニットであって、前記ケースの内部に収容され、前記燃料電池スタックを前記複数の燃料電池セルの積層方向の一端から他端まで覆うとともに前記一端と前記他端にそれぞれ開口部を有するインシュレータを備え、前記ケースは、前記インシュレータの前記開口部に連通して前記インシュレータの内部の気体を外部へ排出させる換気部を有することを特徴とする燃料電池ユニットである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、燃料電池セルを積層させた燃料電池スタックのガスケットを透過した水素が燃料電池スタックを収容するケースの内部に滞留することを防止可能な燃料電池ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示に係る燃料電池ユニットの実施形態を示す斜視図。
【
図2】本開示に係る燃料電池ユニットの実施形態を示す斜視図。
【
図3】
図1のIII-III線に沿う燃料電池ユニットの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本開示に係る燃料電池ユニットを説明する。
【0013】
図1および
図2は、本開示に係る燃料電池ユニットの実施形態を示す斜視図である。
図3は、
図1のIII-III線に沿う燃料電池ユニット1の断面図である。本実施形態の燃料電池ユニット1は、たとえば、燃料電池車に搭載され、燃料電池車の走行用のモータやその他の機器に電力を供給する。燃料電池ユニット1は、たとえば、燃料電池スタック2と、インシュレータ3と、ケース4とを備えている。
【0014】
燃料電池スタック2は、たとえば、複数の燃料電池セル21を積層させることによって構成されている。各々の燃料電池セル21は、たとえば、固体酸化物形燃料電池であり、水素マニホールドを介して供給される水素と、酸化ガスマニホールドを介して供給される空気中の酸素とを膜電極拡散層接合体(MEGA)で反応させて発電する。積層された各々の燃料電池セル21の間には、たとえば、燃料電池用クーラントが流れる冷媒流路を封止するガスケットが配置されている。
【0015】
ケース4は、インシュレータ3に覆われた燃料電池スタック2を収容する。ケース4は、たとえば、底壁と、底壁の周囲を囲む側壁とを有し、上部が開口されている。ケース4の上部の開口は、たとえば、図示を省略する昇圧コンバータの筐体が接続されて閉鎖される。
図1から
図3の各図には、ケース4の長さ方向に平行なX軸、ケース4の幅方向に平行なY軸、およびケース4の厚さ方向に平行なZ軸からなる三次元直交座標系を示す。なお、燃料電池スタック2を構成する複数の燃料電池セル21の積層方向は、ケース4の長さ方向、すなわちX軸に平行な方向である。
【0016】
インシュレータ3は、ケース4の内部に収容され、燃料電池スタック2を複数の燃料電池セル21の積層方向の一端から他端まで覆う。また、インシュレータ3は、たとえば、複数の燃料電池セル21の積層方向における一端と他端にそれぞれ開口部31を有する筒状に設けられている。インシュレータ3は、たとえば、複数の燃料電池セル21の積層方向における一端と他端を除き、
図3に示すように、燃料電池スタック2の周囲を覆っている。インシュレータ3の素材は、たとえば、電気絶縁性を有する樹脂材料を使用することができる。また、インシュレータ3の素材は、所定の水素ガスバリア性を有することが好ましい。
【0017】
ケース4は、インシュレータ3の開口部31に連通して、インシュレータ3の内部の気体を外部へ排出させる換気部5を有している。換気部5は、たとえば、ケース4の側壁に設けられた開口部と、その開口部を覆う換気カバー51とを有している。換気カバー51は、たとえば、ケース4の側壁の開口部を塞ぐ水素透過膜を有している。水素透過膜には、水を透過させず、水素や空気などの気体を透過させる素材が用いられている。
【0018】
以下、従来の燃料電池装置との対比に基いて、本実施形態の燃料電池ユニット1の作用を説明する。
【0019】
前述のように、特許文献1のインシュレータを用いた従来の燃料電池装置では、セルスタックを構成する単セル間のガスケットを透過した水素が、スタックケース内に滞留するおそれがある。スタックケース内に滞留した水素は、たとえば、スタックケースに設けられたバスバ接続用の開口部から接続先のユニットへ流入し、接続先のユニット内に滞留するおそれがある。
【0020】
これに対し、本実施形態の燃料電池ユニット1は、複数の燃料電池セル21が積層された燃料電池スタック2と、その燃料電池スタック2を収容するケース4とを備えている。また、燃料電池ユニット1は、ケース4の内部に収容され、燃料電池スタック2を複数の燃料電池セル21の積層方向の一端から他端まで覆うとともに、その一端と他端にそれぞれ開口部31を有するインシュレータ3を備えている。また、ケース4は、インシュレータ3の開口部31に連通してインシュレータ3の内部の気体を外部へ排出させる換気部5を有している。
【0021】
このような構成により、燃料電池スタック2の各々の燃料電池セル21間に配置されるガスケットを透過した水素H2は、
図1および
図2に示すように、燃料電池スタック2を覆うインシュレータ3によって燃料電池セル21の積層方向の一端と他端へ導かれる。インシュレータ3の一端と他端に導かれた水素H2は、インシュレータ3の開口部31に連通してインシュレータ3の内部の気体を外部へ排出させる換気部5を介してケース4の外部へ排出される。
【0022】
これにより、ケース4の内部に水素H2が滞留することが防止され、ケース4の内部の水素濃度を低下させることができる。その結果、たとえば、ケース4の上部に接続される昇圧コンバータの筐体の内部へ水素H2が流入して滞留することが防止され、昇圧コンバータの筐体の内部の水素濃度を低下させることができる。
【0023】
以上説明したように、本実施形態によれば、複数の燃料電池セル21を積層させた燃料電池スタック2のガスケットを透過した水素が燃料電池スタック2を収容するケース4の内部に滞留することを防止可能な燃料電池ユニット1を提供することができる。
【0024】
以上、図面を用いて本開示に係る燃料電池ユニットの実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【符号の説明】
【0025】
1 燃料電池ユニット
2 燃料電池スタック
21 燃料電池セル
3 インシュレータ
4 ケース
5 換気部