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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029515
(43)【公開日】2025-03-06
(54)【発明の名称】作業機械の制御システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20250227BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
E02F9/20 M
E02F9/24 B
E02F9/20 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134241
(22)【出願日】2023-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100178582
【弁理士】
【氏名又は名称】行武 孝
(72)【発明者】
【氏名】岡田 共史
(72)【発明者】
【氏名】秋山 将貴
(72)【発明者】
【氏名】山本 透
(72)【発明者】
【氏名】増田 洸一
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003AB02
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA01
2D003BA02
2D003BA03
2D003BA04
2D003BA06
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB04
2D003DB05
2D003DC03
2D003DC07
2D015GA03
2D015GB04
(57)【要約】
【課題】作業現場において複数の作業機械によって効率的に作業を行うことが可能な作業機械の制御システムを提供する。
【解決手段】第1作業機械(1A)および第2作業機械(1B)の各々が作業する作業現場において、少なくとも前記第2作業機械の動作を制御する作業機械の制御システム(100)は、前記第1作業機械と前記第2作業機械とが干渉することを防止するように、前記第1作業機械の動きに応じて前記第2作業機械が協調して動作するための指令信号を生成する制御部(50)を備える。指令信号の生成には、第1特定部位と第2特定部位との間に仮想的に設定されたばねダンパの特性に関する特性情報が用いられる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1作業機械および第2作業機械が作業する作業現場において、少なくとも前記第2作業機械の動作を制御する作業機械の制御システムであって、
前記第1作業機械と前記第2作業機械とにおける機械同士の干渉および作業同士の干渉のうちの少なくとも一方の干渉が発生することを防止するように、前記第1作業機械の動きに応じて前記第2作業機械が協調して動作するための指令信号を生成する制御部を備え、
前記制御部は、少なくとも前記第1作業機械の動きに関する動作情報に基づいて、前記第1作業機械の第1特定部位と前記第2作業機械の第2特定部位との間の距離に応じて変位するように前記第1特定部位と前記第2特定部位との間に仮想的に設定されたばねダンパの特性に関する特性情報と、前記第2作業機械を制御するための制御パラメータとを決定し、決定された前記特性情報と前記制御パラメータとに基づいて前記指令信号を生成する、作業機械の制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記動作情報と、予め設定された前記第2作業機械の動きを停止させるための自動停止情報とに基づいて、前記特性情報と前記制御パラメータとを決定する、請求項1に記載の作業機械の制御システム。
【請求項3】
前記第1作業機械の動きに対応する基準動作情報と、前記特性情報に対応する基準特性情報と、前記制御パラメータに対応する基準制御パラメータとを互いに関連付けて予め記憶するデータベースを更に備え、
前記制御部は、現在の前記第1作業機械の前記動作情報である入力情報を前記データベースに入力し、前記入力情報に対応する前記基準動作情報を特定し、当該特定した基準動作情報に対応する前記基準特性情報および前記基準制御パラメータを用いて前記指令信号を生成する、請求項1または2に記載の作業機械の制御システム。
【請求項4】
前記第1作業機械は搭乗した操作者によって操作され動作するもの、または、遠隔制御によって動作するものであり、前記第2作業機械は自動制御によって動作するものである、請求項1または2に記載の作業機械の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、機体と、前記機体に起伏可能に支持された作業アタッチメントとを備えた作業機械が知られている。例えば、前記作業アタッチメントは、ブームと、アームと、バケットとを含む。特許文献1には、このような作業機械を自動運転機として自動制御する技術が開示されている。
【0003】
このような作業機械の自動運転機を作業現場に適用することによって、生産性を向上することができる。例えば、自動運転機は、予め決められたエリアで動作するような単純作業を行うことができる。この結果、手が空いた操縦者は、自動運転機の動作に並行して他の作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-131004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くの作業現場では、土を運ぶ等の作業時に、複数の作業機械同士が互いに近接した位置関係で動作することがある。仮に、これらの作業機械がいずれも人によって操作される場合は、互いに相手の作業機械の動きを見ながら、自らの作業を止めることなく操作することができる。しかしながら、特許文献1に記載されたような自動運転機は、予め決められた作業計画に沿って動作するため、周辺の作業機械が予期せずに近づいた場合、両者が接触、干渉する可能性が生じてしまう。
【0006】
本発明の目的は、作業現場において複数の作業機械によって効率的に作業を行うことが可能な作業機械の制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の局面によって提供されるのは、第1作業機械および第2作業機械が作業する作業現場において、少なくとも前記第2作業機械の動作を制御する作業機械の制御システムであって、前記第1作業機械と前記第2作業機械とにおける機械同士の干渉および作業同士の干渉のうちの少なくとも一方の干渉が発生することを防止するように、前記第1作業機械の動きに応じて前記第2作業機械が協調して動作するための指令信号を生成する制御部を備え、前記制御部は、少なくとも前記第1作業機械の動きに関する動作情報に基づいて、前記第1作業機械の第1特定部位と前記第2作業機械の第2特定部位との間の距離に応じて変位するように前記第1特定部位と前記第2特定部位との間に仮想的に設定されたばねダンパの特性に関する特性情報と、前記第2作業機械を制御するための制御パラメータとを決定し、決定された前記特性情報と前記制御パラメータとに基づいて前記指令信号を生成する。
【0008】
本構成によれば、協調側の第2作業機械の動作を最適化することで、機械同士が接触すること、又は、作業同士が干渉することを防止しながら効率的な作業を行うことができる。
【0009】
本発明の第2の局面に係る制御システムは、上記の第1の局面に係る制御システムにおいて、前記制御部は、前記動作情報と、予め設定された前記第2作業機械の動きを停止させるための自動停止情報とに基づいて、前記特性情報と前記制御パラメータとを決定するものでもよい。
【0010】
本構成によれば、予め第2作業機械の動きを停止させるための停止情報を考慮して、特性情報および制御パラメータが決定されるため、第1作業機械と第2作業機械との干渉を高い精度で防止することができる。
【0011】
本発明の第3の局面に係る制御システムは、上記の第1又は第2の局面に係る制御システムにおいて、前記第1作業機械の動きに対応する基準動作情報と、前記特性情報に対応する基準特性情報と、前記制御パラメータに対応する基準制御パラメータとを互いに関連付けて予め記憶するデータベースを更に備え、前記制御部は、現在の前記第1作業機械の前記動作情報である入力情報を前記データベースに入力し、前記入力情報に対応する前記基準動作情報を特定し、当該特定した基準動作情報に対応する前記基準特性情報および前記基準制御パラメータを用いて前記指令信号を生成するものでもよい。
【0012】
本構成によれば、データベースに格納された複数のデータセットの中から最適な制御パラメータ、特性情報を抽出することで、第1作業機械と第2作業機械との干渉を高い精度で防止することができる。
【0013】
本発明の第4の局面に係る制御システムは、上記の第1乃至第3の何れか1の局面に係る制御システムにおいて、前記第1作業機械は搭乗した操作者によって操作され動作するもの、または、遠隔制御によって動作するものであり、前記第2作業機械は自動制御によって動作するものであってもよい。
【0014】
本構成によれば、オペレータが遠隔地から第1作業機械を操作する場合であっても、第2作業機械の動きに大きな注意を払う必要がなく、第1作業機械と第2作業機械との干渉を防止しながら、両機の作業を効率的に行うことができる。特に、第1作業機械が遠隔制御の場合、データベースにはオペレータの特性も制御パラメータ等と併せて格納されることで、現在の遠隔操縦オペレータの技量や操作の特徴に合わせた第2作業機械の協調を行うことができる。これにより、第2作業機械が遠隔操縦オペレータの技量や操作の特徴、作業ペースに合わせて動作することができ、オペレータの作業中の快適性を向上させることができる。例えば、オペレータは、自分のペースで作業できるとともに、第2作業機械を気にかけて作業しなくてもよくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、作業現場において複数の作業機械によって効率的に作業を行うことが可能な作業機械の制御システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る作業機械の側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る作業機械の作業現場の様子を示す模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係る第1作業機械および第2作業機械の作業計画を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る制御システムのブロック図である。
図5】本発明の一実施形態に係る制御システムが仮想的に設定するばねダンパを説明する模式図である。
図6】本発明の一実施形態に係る制御システムが実行する処理全体のフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態に係る制御システムが実行する演算処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
図8】本発明の一実施形態に係る制御システムが実行する演算処理の模式図である。
図9】本発明の一実施形態に係る制御システムのデータベースの模式図である。
図10】本発明の一実施形態に係る制御システムが、特性情報と制御パラメータとを算出する様子を示すフローチャートである。
図11】本発明の一実施形態に係る作業機械の旋回動作を模式化した模式図である。
図12】本発明の他の実施形態に係る制御システムが、特性情報と制御パラメータとを算出する様子を示すフローチャートである。
図13】本発明の一実施形態に係る制御システムによって制御された作業機械の動きを説明する模式図である。
図14】本発明の一実施形態に係る制御システムによって制御された作業機械の動きを説明する模式図である。
図15】本発明の一実施形態に係る制御システムによって制御された作業機械の動きを説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明の第1実施形態に係る油圧ショベル1(作業機械)の側面図を示す。油圧ショベル1は、地面G(走行面)上を走行可能な下部走行体10(下部本体)および下部走行体10に旋回可能に支持される上部旋回体12(上部本体)と、上部旋回体12に搭載される可動式の作業アタッチメント20(アタッチメント)とを備える。下部走行体10および上部旋回体12は、油圧ショベル1の機体に相当する。
【0019】
下部走行体10は、地面G上を走行可能である。一例として、下部走行体10は、クローラ式の走行部を含む。
【0020】
上部旋回体12は、前記下部走行体10に支持される旋回フレーム121と、当該旋回フレーム121上に搭載されるキャブ13と、カウンタウエイト15とを有する。キャブ13は、オペレータ(作業者、操作者)が搭乗することを許容するものであり、油圧ショベル1を操作するための各種の装置が配置されている。カウンタウエイト15は、旋回フレーム121の後側部分に配置され、油圧ショベル1のバランスをとる錘として機能する。
【0021】
作業アタッチメント20は、上部旋回体12に対して相対移動可能なように上部旋回体12に装着(支持)され、地面などに対する所定の作業を行う。作業アタッチメント20は、旋回フレーム121の前端部に水平な回転中心軸回りに起伏方向に回動可能に連結されるブーム21と、当該ブーム21の先端部に水平な回転中心軸回りに回動可能に連結されるアーム22と、当該アーム22の先端部に水平な回転中心軸回りに回動可能に連結されるバケット23(先端アタッチメント)とを含む。本実施形態では、ブーム21、アーム22およびバケット23の回転中心軸は互いに平行に設定されている。ブーム21およびアーム22は、油圧ショベル1の起伏体を構成する。また、油圧ショベル1は、ブーム21を起伏(回動)させるように伸縮するブームシリンダ21Sと、アーム22を回動させるように伸縮するアームシリンダ22Sと、バケット23を回動させるように伸縮するバケットシリンダ23Sとを更に有する。これらのシリンダの各々は油圧式シリンダから構成される。
【0022】
バケット23は、複数のツース23H(先端部、爪部)を含む。複数のツース23Hは、図1の紙面と直交する方向(左右方向)に間隔をおいて配置され、バケット23の本体部から突出するように設けられている。油圧ショベル1が地面Gの掘削作業を行う際、バケット23の複数のツース23Hが地面に貫入するように、作業アタッチメント20が動く。
【0023】
キャブ13は、旋回フレーム121の前部に搭載され、油圧ショベル1の操縦を行うための運転室を構成する。すなわち、当該キャブ13内において、オペレータは、下部走行体10の走行、上部旋回体12の旋回、及び作業アタッチメント20の作動のための各操作を行うことができる。なお、後記のように、油圧ショベル1は遠隔操作や自動制御を受ける場合は、必ずしもオペレータがキャブ13に搭乗している必要はない。
【0024】
図2は、本実施形態に係る油圧ショベル1の作業現場の様子を示す模式図である。図3は、本実施形態に係るα機1A(遠隔制御機、第1作業機械)およびβ機1B(自動制御機、第2作業機械)の作業計画を示す図である。図3では、各作業内容とその開始時刻がそれぞれ図示されている。なお、α機1A、β機1Bは、前述の油圧ショベル1に相当し、説明のために識別可能な名称を付している。本実施形態では、図2図3に示すように、作業現場において、α機1Aが地点A1から地点B1に土を運び、β機1Bが地点B2から地点C1に土を運ぶ(以後、A1、B1、B2、C1と称する)。β機1Bは、C1においてトラックの荷台に土を排土する。B1およびB2は近接して設定されており、図2に示すように、一つの土山Bを構成する。このように、本実施形態では、α機1Aおよびβ機1Bが協同してA1の土をトラックの荷台に運ぶ。なお、図2を含む以後の一部の図では、説明を容易とするために、α機1A、β機1Bを平面図、すなわち機体上方から見た図で図示している。一方、土山Bやダンプなどは水平方向から見た側面図で示している。α機1A及びβ機1Bは、平面視でワイパーのように旋回動作を往復して行うことで、上記の作業を行うことができる。具体的には、α機1Aおよびβ機1Bは、互いの作業、動きを妨げることなく、交互に土山Bで作業するように旋回動作を往復して行う。
【0025】
ここで、α機1Aはオペレータが遠隔地から操作する遠隔制御機であり、β機1Bは協調性を有する自動制御機である。すなわち、α機1Aは、オペレータが遠隔地から図3の作業計画に沿って操作し、この操作に応じて図2に示すような作業を実行する。また、前記作業計画には、A1とB1との間を行き来するバケット23のツース23Hの位置情報が含まれており、このツース23Hの位置を実現するための、前記作業計画には、作業アタッチメント20の姿勢の変化(軌跡)に関する情報が含まれていても良い。更に、各作業計画は、油圧ショベル1が2つの地点をn回(nは自然数)往復するように予め設定されてもよい。
【0026】
一方、自動で動作するように設定されたβ機1Bは、予め設定された作業計画に沿って動作可能であるが、本実施形態では、α機1Aとβ機1Bとの干渉を防止するために、β機1Bの作業計画が必要に応じて修正される。すなわち、β機1Bは、α機1Aの動きに応じて協調して動作することができる。この結果、α機1Aとβ機1Bとの干渉を回避しながら、作業現場において効率的に作業を行うことができる。換言すれば、α機1Aを遠隔で操作するオペレータは、β機1Bとの干渉に大きな注意を払うことなく作業を行うことができる。本実施形態では、このようなβ機1Bの協調動作が、制御システム100によって制御される。
【0027】
図4は、本実施形態に係る制御システム100のブロック図である。なお、図4では、β機1Bの一部の構成も図示されている。
【0028】
油圧ショベル1(α機1A、β機1B)は、操作部61と、ショベル制御部62と、駆動部63とを備える。
【0029】
操作部61は、オペレータによって操作される操作レバーなどを含む。すなわち、操作部61は、油圧ショベル1を操作するための操作を受け付ける。当該操作には、下部走行体10の走行、上部旋回体12の旋回、作業アタッチメント20(ブーム21、アーム22、バケット23)の駆動などが含まれる。なお、通常、操作部61はキャブ13内に配置されているが、α機1Aのように遠隔で操作される場合は、操作部61または操作部61と同じ構造を有する操作部が遠隔地に配置されている。また、β機1Bのように自動制御機の場合は、自動制御中、操作部61は機能しない。
【0030】
また、操作部61は、タッチパネル、入力ボタン、スイッチなどの入力部を含む。当該入力部は、各種の情報の入力を受け付ける。一例として、入力部は、油圧ショベル1の自動制御、手動制御、半自動制御(アシスト制御)、遠隔制御などを切り換えるための情報を受け付ける。
【0031】
また、油圧ショベル1のキャブ13内には、不図示の表示装置が配置されている。当該表示装置は、キャブ13内に設けられた液晶ディスプレイであり、油圧ショベル1の作動、制御システム100による処理の進捗状況などに関する各種の情報を表示して、オペレータに報知する。この際、表示装置は、所定の表示指令信号を受け入れ、当該表示指令信号に応じて、オペレータに報知する各種の情報を表示する。当該情報には、作業アタッチメント20の姿勢情報や各油圧ショベル1の位置情報などが含まれる。また、表示装置は、作業現場におけるマップ情報を表示することが可能であり、当該マップ上に、α機1A、β機1Bの位置情報を表示することができる。なお、上記のディスプレイは、一例であり、例えばキャブ13外に配置されてもよい。すなわち、ディスプレイは、各情報をオペレータに通知する他に、現場管理者に通知する態様でもよい。なお、本実施形態では、β機1Bは自動制御機であるため、キャブ13にオペレータが搭乗していない可能性がある。このため、上記の表示装置と同様の他の表示装置が遠隔地や作業現場内の管理事務所などに配置されてもよい。
【0032】
ショベル制御部62は、通常の作業時には、操作部61が受ける操作の内容に応じて、駆動部63に駆動指令信号を入力する。この結果、下部走行体10、上部旋回体12および作業アタッチメント20などの動作が制御される。また、ショベル制御部62は、油圧ショベル1が自動運転モードで作動する場合に、予め設定された設計面に沿ってバケット23のツース23Hが移動するように、駆動部63に駆動指令信号を入力する。当該駆動指令信号は、作業現場においてツース23Hが移動する仮想的な軌跡に基づくものであり、当該軌跡は予めティーチングなどによってα機1Aが有する記憶部に記憶されてもよい。
【0033】
駆動部63は、油圧ショベル1(α機1A、β機1B)の各種構造体を駆動するものであり、操作部61によって操作される下部走行体10、上部旋回体12、作業アタッチメント20などを駆動する。特に、駆動部63は、バケット23が地面を掘削するように作業アタッチメント20を動かすことが可能である。この際、駆動部63は、所定の指令信号(駆動指令信号)を受け入れ当該指令信号に応じて作業アタッチメント20を駆動する。この結果、上部旋回体12に対する作業アタッチメント20の姿勢を変化させることができる。また、駆動部63は、前記指令信号に応じて上部旋回体12を旋回させる。この結果、上部旋回体12は、図2に示すように、2つの地点間を往復移動することができる。なお、駆動部63は、油圧ポンプ、油圧モータ、コントロールバルブなどの油圧回路を含む。
【0034】
一方、制御システム100は、制御装置50と、第1動作検出部64と、第2動作検出部71とを備える。
【0035】
制御装置50は、例えば、作業現場に隣接する管理事務所などに設置されている。制御装置50は、例えば無線通信などを通じてα機1Aおよびβ機1Bとの間でそれぞれ双方向通信を行い、指令信号などの送受信を行うことができる。他の実施形態において、制御装置50は、作業現場から離れた遠隔地に設けられても良い。また、β機1Bが制御装置50を備えるものでもよい。
【0036】
制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成されている。制御装置50は、前記CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、動作計画取得部51、最適演算部52、旋回制御部53および記憶部54の各機能部を備えるように機能する。これらの機能部は、実体を有するものではなく、前記制御プログラムによって実行される機能の単位に相当する。
【0037】
なお、制御装置50のすべてまたは一部は、油圧ショベル1に設けられるものに限定されず、油圧ショベル1がリモート制御される場合には、油圧ショベル1とは異なる位置に制御装置50が配置されても良い。また、前記制御プログラムは遠隔地のサーバ(管理装置)やクラウドなどから制御装置50に送信され実行されるものでもよいし、前記サーバーやクラウド上で前記制御プログラムが実行され、生成された各種の制御信号が制御装置50に送信されるものでもよい。
【0038】
動作計画取得部51は、α機1Aおよびβ機1Bの協同作業の開始に伴って、予め設定され記憶部54に記憶された作業計画に関する情報を取得する。なお、制御装置50が、α機1A、β機1Bとそれぞれ通信を行い、各油圧ショベル1の記憶部に記憶された作業計画に関する情報を動作計画取得部51が取得してもよい。また、本実施形態では、α機1Aは遠隔制御機であるため、当該遠隔地に滞在するオペレータがα機1Aの作業計画に関する情報を把握していればよい。このため、動作計画取得部51は、α機1Aの作業計画を取得することなく、β機1Bの作業計画のみを取得してもよい。
【0039】
最適演算部52は、協同作業においてα機1Aとβ機1Bとが干渉すること、またはその作業同士が干渉することを防止するように、α機1Aの動きに応じてβ機1Bが協調して動作するための指令信号を生成する。ここで、α機1Aとβ機1Bとが干渉するとは、機械同士の干渉(接触)を意味し、作業同士が干渉するとは、一方の作業機械の作業を実現するために他方の作業機械が一時的に待機することなどを意味する。本実施形態では、最適演算部52は、第1動作検出部64が取得したα機1Aの動き(動作速度)に基づいて、両者が干渉すること、あるいはその作業が干渉することを防止するように、β機1Bの動きを修正するための指令信号を生成する。旋回制御部53は、最適演算部52によって修正された指令信号をβ機1Bに入力する。この結果、β機1Bは、予め設定された作業計画に対してその一部が変更されたように動作する。
【0040】
記憶部54は、油圧ショベル1の作業計画に関する情報を記憶している。当該情報は、所定の作業開始時間を基準として、加速度、減速度、最大速度、加速開始時刻、減速開始時刻などの各パラメータの時間推移として準備されている。なお、作業計画に関する情報の格納方法は、これに限定されるものではない。
【0041】
第1動作検出部64(第1位置情報取得部)は、α機1Aの動作に関する情報を検出し、制御装置50に入力する。同様に、第2動作検出部71(第2位置情報取得部)は、β機1Bの動作に関する情報を検出し、制御装置50に入力する。第1動作検出部64および第2動作検出部71の構成は同様であるので、以下では第1動作検出部64の構成について説明する。
【0042】
第1動作検出部64は、第1に、上部旋回体12に対する作業アタッチメント20の姿勢に関する情報を検出し取得する。一例として、第1動作検出部64は、前述のブームシリンダ21S、アームシリンダ22Sおよびバケットシリンダ23Sにそれぞれ装着される3つのセンサを含み、各シリンダのストローク(伸長量、長さ)を検出する。各センサによって検出された各シリンダのストロークは、ブーム21、アーム22およびバケット23の位置や姿勢を演算するために使用される。なお、ブーム21、アーム22およびバケット23の位置や姿勢を演算するために、シリンダストロークセンサに代えて、ブーム21、アーム22およびバケット23の回動角度をそれぞれ検出するアングルセンサが用いられても良い。
【0043】
第2に、第1動作検出部64は、油圧ショベル1の位置情報を取得する。一例として、第1動作検出部64は、予め上部旋回体12に設けられた本体基準点の作業現場における絶対座標に関する情報である本体座標情報を取得することが可能である。第1動作検出部64は、本体基準点を構成するアンテナを有する。アンテナは、例えばキャブ13の上面部に配置されており、GNSS移動局として機能する。一方、上記の本体座標情報を取得するために、GNSS(Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム)基準局が設けられている(不図示)。GNSS基準局は、作業現場に配置された、または、作業現場に最も近い位置に配置された基準局である。なお、GNSSとして、公知のGPS(Global Positioning System)に加え、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、Galileo、準天頂衛星(QZSS:Quasi-Zenith Satellite System)等の衛星測位システムが採用されてもよい。
【0044】
第3に、第1動作検出部64は、地面に対する油圧ショベル1の姿勢を検出することが可能であってもよい。この場合、第1動作検出部64は、上部旋回体12に装着されたIMU(Inertial Measurement Unit)を含む。IMUは、地面Gに対する油圧ショベル1(上部旋回体12)の姿勢に関する情報を検出する。すなわち、IMUは、油圧ショベル1の機体の姿勢、角度(傾き)を検出する。
【0045】
上記のような第1動作検出部64によって、α機1Aのバケット23(第1特定部位)の位置情報を取得することができる。この際、第1動作検出部64は、作業現場における所定の特定位置を原点として、α機1Aのバケット23の位置を3次元座標に基づいて検出することができる。
【0046】
同様の構成によって、第2動作検出部71も、前記特定位置を原点として、β機1Bのバケット23(第2特定部位)の位置を3次元座標に基づいて検出することができる。
【0047】
図5は、本実施形態に係る制御システム100が仮想的に設定するばねダンパを説明する模式図である。図5では、遠隔で制御されるα機1Aと、自動で制御されるβ機1Bとが模式的に図示されている。制御システム100は、α機1Aのバケット23とβ機1Bのバケット23との間の距離に応じて変位するように、各バケット23の間に仮想的にばねダンパを設定する。当該ばねダンパにおける、ダンパの粘性係数がcと定義され、ばねのばね定数がksで定義される(いずれも、ばねダンパの特性に関する特性情報)。2つのバケット23同士が急激に近づいた場合、仮想的なダンパがブレーキを掛けるとともに、ばねの弾性エネルギーが蓄積される。換言すれば、制御システム100は、バケット23同士が急激に近づく場合、粘性係数cおよびばね定数ksを最適な値に設定することで、バケット23同士の干渉を抑止することができる。この際、最適値に設定された上記の特性情報に沿った挙動をβ機1Bのバケット23が示すように、制御システム100がβ機1Bの動作を制御する。
【0048】
図6は、本実施形態に係る制御システム100が実行する処理全体のフローチャートである。例えば、遠隔地に滞在するα機1Aのオペレータが所定のスタートボタンを押圧すると、制御システム100によるα機1A、β機1Bの協同動作処理が開始される。前記スタートボタンは、キャブ13内に配置されるものに限定されず、キャブ13外に配置された端末(PC、タブレット、スマートフォン)や遠隔操作装置に備えられても良い。当該処理では、前記オペレータがα機1Aを自らの操作で遠隔制御する一方、β機1Bが予め設定された作業計画に沿って自動制御される。更に、β機1Bの動作は、α機1Aとの干渉を回避するように、制御システム100によって随時修正される。なお、予め作業現場の作業者によって、α機1Aのバケット23が図2のA1に配置され、β機1Bのバケット23がC1に配置されている。なお、このようなバケット23の初期位置は作業者によって配置されるものに限定されない。
【0049】
前記処理が開始されると、制御システム100の制御装置50の動作計画取得部51が、自動制御側のβ機1Bの作業計画、作業条件を取得する(ステップS1)。この作業条件とは、予め設定され、記憶部54に記憶された自動停止位置に関する情報である(自動停止情報)。一例として、この自動停止位置が、図5の破線Pで示されている。当該情報は、β機1Bのバケット23がα機1Aのバケット23に近づく場合に、その干渉を防止するために、β機1Bの旋回動作を自動停止させる位置である。なお、この位置は、α機1Aのバケット23に対する相対的な位置として設定されている。このように自動停止情報が予め設定されることで、α機1Aのバケット23とβ機1Bのバケット23とが所定の閾値を超えて接近する場合、β機1Bは予め設定された自動停止位置で動作を停止する。そして、α機1Aの排土作業が終了して、α機1Aが土山B(図2)から遠ざかった後に、β機1Bは作業を再開することができる。
【0050】
一方、図6において、ステップS1と並行して、動作計画取得部51は遠隔制御側のα機1Aの旋回データを取得する(ステップS2)。当該旋回データは、遠隔地のオペレータによって操作されるα機1Aの旋回動作に関するデータであり、刻々と変化する旋回角度の情報を含む。前述のとおり、この情報は、第1動作検出部64によって検出される。
【0051】
次に、制御装置50の最適演算部52(図4)が、上記で取得した旋回角度の情報から、現在のα機1Aの旋回速度(角速度)を推定する(ステップS3)。公知の手法により、旋回角度の推移を微分することによって、旋回速度を算出することができる。次に、最適演算部52は、遠隔制御側のα機1Aの旋回速度に基づいて、自動制御側のβ機1Bの旋回速度を決定する(ステップS4)。一例として、最適演算部52は、α機1Aの旋回速度とβ機1Bの旋回速度とが同じになるように、β機1Bの旋回速度を決定する。
【0052】
次に、最適演算部52は、β機1Bの制御パラメータを決定する(ステップS5)。当該制御パラメータは、β機1Bの動きを制御するための各種パラメータを含む。また、最適演算部52は、仮想的なばねダンパのパラメータ(特性情報)も、同様に決定する。
【0053】
次に、最適演算部52によって決定されたパラメータに基づいて、旋回制御部53(図4)がβ機1Bのショベル制御部62に指令信号を入力することで、β機1Bの駆動部63が駆動され、自動制御側のβ機1Bの旋回動作が実行される(ステップS6)。
【0054】
次に、旋回制御部53は、第2動作検出部71の検出結果に基づいて、現在のβ機1Bの位置(旋回角度)を認識する。この結果、予め設定された作業計画に対して、β機1Bの作業が完了した場合(ステップS7でYES)、制御装置50は協調制御処理を終了する。一方、予め設定された作業計画に対して、β機1Bの作業が完了していない場合には(ステップS7でNO)、制御装置50はステップS2に戻って、以後の処理を継続する。
【0055】
図7は、本実施形態に係る制御システム100が実行する演算処理の詳細を更に説明するためのフローチャートである。なお、図7において破線で囲まれた部分の処理は、α機1Aの1回の旋回動作ごとに実行される。
【0056】
図7において、処理G1では、遠隔ショベル、すなわち、α機1Aの旋回速度が推定される。この処理は、図6のステップS3に対応し、このために、処理G1に際して、制御装置50には、α機1Aの1回の旋回動作分の時系列データ(旋回角度の推移)が入力される。処理G1を通じて、α機1Aの旋回速度σが推定されると、これに応じて自動制御側のβ機1Bの旋回速度が決定される(処理G4、ステップS4)。また、この推定された旋回速度σは、後記の処理G5においても使用される。
【0057】
処理G4においてβ機1Bの旋回速度が決定されると、処理G6においてβ機1Bの制御パラメータが決定される。この処理G6は、図6のステップS5に対応する。また、本実施形態では、この制御パラメータは後記のKp、Kdを含む。
【0058】
一方、図7の処理G5では、制御装置50の最適演算部52が仮想的なばねダンパのパラメータを決定する。これに先立って、最適演算部52は、記憶部54からβ機1Bの自動停止位置に関する情報を取得している。ばね定数ks、粘性係数cから構成される特性情報が決定すると、処理G7においてばねダンパによるトルクが算出される。このトルクは、決定された各特性を含むばねダンパが、β機1Bの上部旋回体12にもたらすトルクである。
【0059】
なお、図7に示すように、処理G7のトルク算出のためには、予め処理G2、G3が行われる。処理G2は、第1動作検出部64から取得されるα機1Aの先端アタッチメント(バケット23)の位置情報と、第2動作検出部71から取得されるβ機1Bのバケット23の位置情報とに基づいて、2つの先端アタッチメント間の距離が算出される。なお、図7では図示していないが、α機1Aの実際の旋回角度の情報も用いられる。
【0060】
一方、両先端アタッチメントの位置情報は、処理G3においても使用される。具体的に、2つの先端アタッチメントの相対的な位置関係に基づいて、ばねダンパ力が発生するか否かが、処理G3において判定される。なお、2つの先端アタッチメントが大きく離れている場合でも、ばねダンパ力が生じるパターンが存在する。例えば、図2においてα機がA1に向かって旋回中にA1とB1の中間にあるとき、β機がC1からB2に向かって旋回する場合、α機にペースを合わせるために、ばねダンパ力により増速される。また、B2やC1での掘削排土作業中、B2付近にアタッチメントがあり、まもなく停止する場合などといった作業状況に応じて、ばねダンパが発生するかどうかを決定する。このため、そもそもばねダンパ力が発生しない場合は、処理G7に対してトルクの算出が不要(またはトルクがゼロ)であるという情報が入力される。
【0061】
処理G6において自動制御側のβ機1Bの制御パラメータが決定され、処理G7においてばねダンパによるトルクが算出されると、これらの情報に基づいて、処理G8においてβ機1Bの旋回制御が実行される。この処理は、図6のステップS6に相当する。処理G8には、処理G6において決定された制御パラメータKp、Kdが入力される一方、β機1Bの作業計画(目標旋回角度)の情報と、実際のβ機1Bの旋回角度に関する情報の差分に相当する情報も入力される。
【0062】
処理G8において設定されたβ機1Bの旋回制御のためのパラメータはトルク値に換算されたのち、処理7において算出されたばねダンパ力によるトルク値と合算され、旋回トルク指令値に換算される。この指令値が処理G9においてβ機1Bの機体制御(油圧制御)に用いられ、最終的に処理G10において、β機1Bの旋回動作が実行される。このβ機1Bの旋回動作によって変化する旋回角度の情報は、処理G8にもフィードバックされる。
【0063】
図8は、本実施形態に係る制御システム100が実行する演算処理の模式図である。図9は、制御システム100のデータベースの模式図である。制御システム100の記憶部54(図4)は、図8図9に示すデータベースを含んでいる。データベースには、図9に示すように、σ、Xs、Kp、Ki、Kd、ks、cの各パラメータを含むデータセットを付番の数字と共に複数組、格納している。データベースに格納されたこれらの情報は、本発明における基準動作情報(σ)、基準制御パラメータ(Kp、Ki、Kd)、基準特性情報(ks、c)に相当する。以下に、このデータベースを用いた各パラメータの算出方法について詳述する。なお、以下の説明は、PD制御器を用いる例であるため、この場合の図9のデータベースでは、Ki=0として格納される。
【0064】
第1の処理として、制御装置50の最適演算部52は、α機1Aの旋回速度σ(t)、β機1Bの自動停止位置Xs(t)に関するデータを取得する。これらは、いずれも時間tを変数とする関数である。
【0065】
第2の処理として、最適演算部52は、近傍データセットを算出する。ここで、各データセットの距離をd1、d2、d3・・・とすると、以下の式1によってdiが定義される。そして、最適演算部52は、式1に基づいてdiの小さいものから順にデータベースから近傍データセットをn個選択する。
【0066】
【数1】
【0067】
第3の処理として、最適演算部52は、距離diに応じた重みづけ処理を行う。この際、以下の式2に示すように、重みづけwiが設定される。
【0068】
【数2】
【0069】
第4の処理として、最適演算部52は、公知の局所線形平均法に基づいて、各パラメータの算出を行う。一例として、Kpについて、近傍データセットの数n=3とすると、以下の式3によって、最新のKpであるKp_newが算出される。
【0070】
【数3】
【0071】
上記では、Kpについて示したが、その他のパラメータについても同様に最新の値が算出される。
【0072】
第5の処理として、最適演算部52は、上記で算出された新規データセットをデータベースに格納するとともに、冗長データの削除を実行する。なお、新規データセットは、[σ(t)、Xs(t)、Kp_new、Ki_new、Kd_new、ks_new、c_new]から構成される。ここで、冗長データセットの削除は、新規データセットと非常に類似したデータセットが既に存在する場合にのみ実行されればよい。
【0073】
ここで、最適演算部52による各パラメータの算出は、上記のようにデータベースを用いる手法と、データベースを用いない手法とをそれぞれ採用することができる。
【0074】
図10は、本実施形態に係る制御システム100が、特性情報と制御パラメータとを算出する様子を示すフローチャートである。図10のフローチャートは、各パラメータ別の算出の流れを説明するために、図6図7のフローチャートの一部を簡易化したものである。なお、このフローチャートは、図7の破線部分に相当し、他の部分とは異なるタイミングで処理が実行される。例えば、他の部分の制御は周期0.1secごとに実行される一方、図7の破線部分の制御は、α機1Aの1回分の旋回動作の終了が第1動作検出部64によって検知される度に実行される。図10のように、ステップS11において遠隔制御のα機1Aの旋回データを取得すると、ステップS12においてα機1Aの旋回速度を推定する。更に、ステップS13においてβ機1Bの制御パラメータKp、Kdが算出され、ステップS14において、β機1Bの旋回制御が実行される。
【0075】
一方、ステップS21においてβ機1Bの自動停止位置の情報が取得されると、ステップS22においてばねダンパのばね定数ks、粘性係数cが算出され、ステップS23においてばねダンパによるトルクが算出される。
【0076】
ここで、前述の説明のように、ステップS13、S22においてデータベースを用いた算出手法が採用できる。
【0077】
次に、β機1Bの自動停止位置と遠隔旋回速度σに基づいて、β機1Bの制御パラメータが算出され、ばねダンパの特性情報がデータベースを用いて決定される態様について説明する。図11は、本実施形態に係る油圧ショベル1の旋回動作を模式化した模式図である。図12は、本発明の他の実施形態に係る制御システム100が、特性情報と制御パラメータとを算出する様子を示すフローチャートである。この他の実施形態では、ばねダンパの特性情報(ks、c)の算出にはデータベースを用いるものの、β機1Bの制御パラメータ(Kp、Kd)の算出にはデータベースを用いずに、所定の算出式を用いる点で、先の実施形態と相違する。
【0078】
具体的に、図12のように、ステップS31において遠隔制御のα機1Aの旋回データを取得すると、ステップS32においてα機1Aの旋回速度を推定する。更に、ステップS33においてβ機1Bの制御パラメータKp、Kdが算出され、ステップS34において、β機1Bの旋回制御が実行される。
【0079】
一方、ステップS41においてβ機1Bの自動停止位置の情報が取得されると、先のステップS32で取得されたα機1Aの旋回速度σを用いて、ステップS42においてばねダンパのばね定数ks、粘性係数cがデータベースから算出され、ステップS43においてばねダンパによるトルクが算出される。
【0080】
ここで、ステップS33における制御パラメータの算出方法について、更に詳述する。図11を参照して、α機1Aおよびβ機1Bの動きを回転棒の運動方程式と見做すと、その動きを以下の式4のように表すことができる。
【0081】
【数4】
【0082】
ここで、Iは慣性モーメント(kg・m)であり、ωは角速度(rad/sec)であり、τはトルク(N・m)であり、Dは油圧ショベル1の作業アタッチメント20の動き(油圧や摩擦など)における粘性係数(Pa・sec)であり、θはアーム角度(rad)である。なお、式4の符号の上にドットが付されているものは、微分を意味する。ここで、Mは油圧ショベル1の機体の重量(kg)であり、Lはアームの長さ(m)である。
【0083】
式4を公知の手法でラプラス変換すると、以下の式5のように表すことができる。
【0084】
【数5】
【0085】
なお、sは公知のとおり、ラプラス変換後の変数を意味する。式5は、一次遅れと積分系の要素を含んでおり、公知のPD制御器と見做すことで、その解を求めることができる。そこで、式6に示すような閉ループ伝達関数を考える。
【0086】
【数6】
【0087】
式6の伝達関数を解くにあたって、以下の式7のような参照軌道を定義する。
【0088】
【数7】
【0089】
ここで、α=M×L 、β=3×D、K=3とすると、以下の式8、式9によって、β機1Bが参照軌道に追従して旋回可能な制御パラメータ(ゲインK、K)がそれぞれ示される。
【0090】
【数8】
【0091】
【数9】
【0092】
なお、ばね定数ks、粘性係数cは、以下の手法を用いて算出してもよい。具体的に、β機1Bの自動運転停止位置が、旋回角度120度の位置に設定されているとすると、この120度の位置において制御器の入力とばねによるトルクとが釣り合うように、ばね係数が決定される。上記の制御器の入力とばねによるトルクとの関係が、以下の式10に示される。
【0093】
【数10】
【0094】
式10の末尾のDis_attは、α機1Aとβ機1Bとのバケット23(先端アタッチメント)間の距離に相当する。このため、式10の末尾の等式を解くことで、ばね定数ksを決定することができる。
【0095】
一方、粘性係数cについて、β機1Bの最大加速時の旋回動作でオーバーシュートすることなく、目標旋回角度に収束させることを考える。ここで、図2にある作業の条件において、最大加速時とは、α機1Aが180度、すなわち地点Aに位置し、β機1Bが0度、すなわち地点Cに位置する状態で、β機1Bが地点B2に向かって旋回し始める場合を意味する。この場合、予めシミュレーション計算によって最適なcを試行錯誤的に選定しておく。そして、図9を用いて説明した第1の処理から第5の処理までと同様の方法で粘性係数cのみをデータベースから算出すればよい。
【0096】
次に、上記の各形態における算出方法から得られる、β機1Bの旋回動作が制御されるパターンについて説明する。図13図14図15は、本発明の一実施形態に係る制御システム100によって制御された油圧ショベル1の動きを説明する模式図である。
【0097】
図13の例では、遠隔で制御されるα機1Aが地点B1からA1側に旋回動作を行っていることに対して、自動制御器のβ機1Bが地点B2に向かって矢印D1に示すように遅れて旋回している場合に相当する。この場合、仮想的なばねダンパによってβ機1Bの旋回動作を速めるようなトルクが生成される。この結果、β機1Bの旋回動作が加速され、α機1Aとβ機1Bとの干渉が抑止されながら、β機1Bの作業を効率的に行うことができる。
【0098】
図14の例では、遠隔で制御されるα機1Aが地点A1からB1に向かう旋回動作を行っていることに対して、自動制御器のβ機1Bが地点B2に向かって矢印D2に示すように遅れて旋回している場合に相当する。この場合、仮想的なばねダンパによってβ機1Bの旋回速度を遅くするようなトルクが生成される。この結果、β機1Bの旋回動作が減速され、α機1Aとβ機1Bとの干渉が抑止されながら、α機1Aが地点B1からA1に向かって旋回した後に、β機1Bを地点B2に到達させることができる。
【0099】
図15の例は、遠隔で制御されるα機1Aが地点B1に位置し、地点A1への旋回動作が始まっていない状態で、β機1Bが地点B2に向かって近づいている場合に相当する。すなわち、両者の衝突の可能性がある領域に向かって、β機1Bが旋回している場合に相当する。この場合、仮想的なばねダンパによってβ機1Bの旋回速度を遅くするようなトルクが矢印D3のように生成される。また、β機1Bについて予め設定された自動停止位置Pにおいて、制御器が生成するトルク指令値と、ばねダンパが発生するトルクとが釣り合うように、β機1Bの制御パラメータ、ばねダンパの特性情報が設定される。
【0100】
以上のように、本発明の各実施形態に係る制御システム100では、制御装置50がα機1Aとβ機1Bとが干渉すること、又は、作業同士が干渉することを防止するように、遠隔制御されるα機1Aの動きに応じて自動制御されるβ機1Bが協調して動作するための指令信号を生成する。より詳しくは、制御装置50は、α機1Aの動きに関する動作情報に基づいて、α機1Aのバケット23とβ機1Bのバケット23との間の距離に応じて変位するように両バケット23の間に仮想的に設定されたばねダンパの特性に関する特性情報ksおよびcと、β機1Bを制御するための制御パラメータKp、Kdとを決定し、決定された前記特性情報と前記制御パラメータとに基づいてβ機1Bに対する前記指令信号(駆動指令信号)を生成する。
【0101】
このような構成によれば、協調側のβ機1Bの動作を最適化することで、機械同士が接触することを防止しながら効率的な作業を行うことができる。なお、このように、一方のβ機1Bが他方のα機1Aの動きに合わせて協調的に動作する態様は、α機1A、β機1Bの動作モードが、自動モード、手動モード、半自動モードのいずれであってもよい。手動モード、半自動モードの場合は、制御システムが出力する指令信号(アシスト信号)が油圧ショベル1のショベル制御部62に入力されることで、オペレータの操作をアシストすることが可能になる。また、油圧ショベル1に代表される作業機械は、ブルドーザなどのその他の機械でも良い。
【0102】
上記の構成において、制御装置50は、前記動作情報と、予め設定されたβ機1Bの動きを停止させるための自動停止情報とに基づいて、前記特性情報と前記制御パラメータとを決定するものでもよい。
【0103】
本構成によれば、予めβ機1Bの動きを停止させるための停止情報を考慮して、特性情報および制御パラメータが決定されるため、α機1Aとβ機1Bとの干渉を高い精度で防止することができる。
【0104】
また、本実施形態では、α機1Aの動きに対応する基準動作情報と、前記特性情報に対応する基準特性情報と、前記制御パラメータに対応する基準制御パラメータとを互いに関連付けて予め記憶するデータベースを更に備える。制御装置50は、現在のα機1Aの前記動作情報である入力情報を前記データベースに入力し、前記入力情報に対応する前記基準動作情報を特定し、当該特定した基準動作情報に対応する前記基準特性情報および前記基準制御パラメータを用いて前記指令信号を生成する。なお、各種の基準情報は、予め実験などによって取得され、データベースに格納された情報である。一方、入力情報は、第1動作検出部64などによって検出された現在の動作情報である。基準動作情報は、データベースに格納された情報の中で入力情報に最適な(最も近い)データであり、基準特性情報、基準制御パラメータは、前記基準動作情報に関連付けられた、一のデータセットに含まれる情報である。
【0105】
本構成によれば、データベースに格納された複数のデータセットの中から最適な制御パラメータ、特性情報を抽出することで、α機1Aとβ機1Bとの干渉を高い精度で防止することができる。
【0106】
上記の構成において、α機1Aは搭乗した操作者によって操作され動作するもの、または、遠隔制御によって動作するものであり、β機1Bは自動制御によって動作するものであってもよい。
【0107】
本構成によれば、オペレータがα機1Aに搭乗して操作する場合や、遠隔地からα機1Aを操作する場合であっても、β機1Bの動きに大きな注意を払う必要がなく、α機1Aとβ機1Bとの干渉を防止しながら、両機の作業を効率的に行うことができる。特に、α機1Aが遠隔制御の場合、データベースにはオペレータの特性も制御パラメータ等と併せて格納されることで、現在の遠隔操縦オペレータの技量や操作の特徴に合わせたβ機1Bの協調を行うことができる。これにより、β機1Bが遠隔操縦オペレータの技量や操作の特徴、作業ペースに合わせて動作することができ、オペレータの作業中の快適性を向上させることができる。例えば、オペレータは、自分のペースで作業できるとともに、β機1Bを気にかけて作業しなくてもよくなる。
【0108】
なお、上記で説明した実施形態に係る制御システム100は、以下のような特徴的な技術思想を含むことができる。すなわち、リアルタイムで取得される遠隔側のα機1Aの動作情報を用いて、その動作速度を推定する。更に、遠隔側のα機1Aの動作速度に合わせて、自動側のβ機1Bの動作速度を更新する。その上で、遠隔側のα機1Aと自動側のβ機1Bとの間に仮想的なばねダンパの力が発生するとみなし、その力により自動側のβ機1Bの動作速度を調整する。この結果、遠隔側のα機1Aの動きに合わせた、自動側のβ機1Bの連携動作を実現することができる。
【0109】
このように、遠隔側のα機1Aの動作に合わせた自動側のβ機1Bの連携動作の実現によって、複数の作業機械を有する作業現場の作業生産性を向上することができる。また、遠隔操縦者の作業速度や操縦スキルに合わせた自動側の動作を行うことができる。更に、α機1Aを操作する遠隔操縦者は、自動制御側のβ機1Bの動作を意識する必要なく快適、かつ、安全に自らの作業に集中できる。また、自動制御側のβ機1Bは、遠隔操縦者に合わせた速度の中で効率的に作業を行うことができる。
【0110】
また、本実施形態では、データベースが各種の情報を格納することができるため、遠隔操縦者の動作速度や作業条件(安全を考慮して自動側のβ機1Bが接触回避するための停止位置など)と、その条件で効率的な連携作業が実現可能な自動側のβ機1Bの制御パラメータや仮想的なばねダンパのパラメータを、予め格納しておくことができる。また、推定された遠隔側のα機1Aの動作速度と、指定された停止位置などの作業条件とを入力として、データベースを用いて自動側のβ機1Bの制御パラメータ等を適宜調整することができる。この際、データベースの更新に基づいて、過去に得られたデータを有効に活用することができる。
【0111】
なお、上記では、遠隔制御のα機1Aと自動制御のβ機1Bとを用いて説明したが、α機1Aは遠隔操作を受ける代わりに、実際にオペレータがキャブ13に搭乗して操作しても良いし、β機1Bと同様に自動運転制御されても良い。なお、この場合、α機1A、β機1Bともに自動運転制御となるため、予めいずれの油圧ショベル1の作業が優先されるべきかが設定されておくことが望ましい。
【0112】
以上、本発明に係る作業機械の制御システム100の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0113】
上記の実施形態では、制御システム100が作業現場の一部や油圧ショベル1に搭載された態様にて説明したが、制御システム100の一部が油圧ショベル1から離れた位置に配置されてもよい。この場合、制御システム100のうち油圧ショベル1に搭載された構造と油圧ショベル1から離れた位置に配置される構造とは無線通信などで情報を送受すればよい。
【0114】
上記の実施形態では、各油圧ショベル1の特定部位としてバケット23を用いて説明したが、特定部位は作業アタッチメント20のうちバケット23以外の部位でもよい。また、油圧ショベル1のうち作業アタッチメント20以外の部位が特定部位でもよい。
【符号の説明】
【0115】
1 油圧ショベル(作業機械)
10 下部走行体
100 制御システム
12 上部旋回体
13 キャブ
1A α機(第1作業機械)
1B β機(第2作業機械)
20 作業アタッチメント
21 ブーム
22 アーム
23 バケット
50 制御装置(制御部)
51 動作計画取得部
52 最適演算部
53 旋回制御部
54 記憶部
61 操作部
62 ショベル制御部
63 駆動部
64 第1動作検出部(第1位置情報取得部)
71 第2動作検出部(第2位置情報取得部)
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
図10
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図15