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特開2025-29549体の前部に上半身支持機能を備えた椅子型歩行器
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  • 特開-体の前部に上半身支持機能を備えた椅子型歩行器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029549
(43)【公開日】2025-03-06
(54)【発明の名称】体の前部に上半身支持機能を備えた椅子型歩行器
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/04 20060101AFI20250227BHJP
   A47C 9/00 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
A61H3/04
A47C9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023144854
(22)【出願日】2023-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】523339698
【氏名又は名称】登坂 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】登坂 泰雄
【テーマコード(参考)】
3B095
4C046
【Fターム(参考)】
3B095AC10
3B095CA10
4C046AA24
4C046AA43
4C046BB04
4C046BB07
4C046CC04
4C046DD08
4C046DD27
4C046DD33
4C046DD34
4C046DD35
4C046DD43
4C046FF02
(57)【要約】
【課題】使用者の体の前部に上半身を支える支持部を有し、座部に座りながら安全に自身の足で歩行でき、ベッドや椅子やトイレとの乗り移り移動や作業を安全かつ容易に行うことができる、体の前部に上半身支持機能を備えた椅子型歩行器を提供する。
【解決手段】使用者の臀部を支持する座部と、この座部に着座した使用者の体の前部に上半身を支える支持部を有し、座部に座りながら自身の足による歩行時の足の動きを妨げないように動かせる領域が確保されている。座部の高さはベッド、椅子、トイレなど生活に必要な家具との移動がしやすい高さに調整されており、また通常の車椅子のような背もたれがないため自力での移動がより容易に行える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の体の前部に上半身を支える支持部を有し、該支持部が腹胸部を支える部材および/または手腕部を支える部材および/または両脚の内ももで挟める部材からなる支持部であり、使用者が座部に座りながら自身の足による歩行時の足の動きを妨げないように動かせる可動領域が確保されており、かつ背もたれを有さないことを特徴とする椅子型歩行器。
【請求項2】
椅子型歩行器が接地する脚部の一部または全部に自在キャスターが用いられている特許請求項1の椅子型歩行器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、高齢者、身体障碍者のみならず健常者にとっても、作業中や移動中の安全と身体への負荷を低減できる椅子型歩行器に関するものである。
【技術背景】
【0001】
高齢者や身体障碍者の歩行を介護者の手をできるだけ煩わせずに安全に容易におこなえるよう支援することは、本人にとっても高齢化が進む社会にとっても重要な課題である。特に多くの高齢者がベッドから起き上がって食事や作業、トイレなどに移動する際に、自分の足を使って手すりや杖を使って移動する際にも、ふらついて転倒したりして骨折や打撲が原因で寝たきりになることも多く見受けられる。そのため歩行に関して不安が生じてくると車椅子による介護に移行してしまう。
【0002】
高齢者の椅子といえば、車椅子が多用されるが、車椅子は介護する側の負荷が軽減するように工夫されており、要介護者がまだまだ使える機能や筋力を維持増進するための工夫は少ない。たまにふらつくが歩く筋力がまだまだ残っている高齢者は多く、移動やトイレなどの生活に必要な活動や作業を自力でしたいが、車椅子に乗せられてその機会を損なっているのが実情である。また、車椅子などの背中を背もたれで支える状態を継続していると、常に正しい位置に姿勢を保つよう修正し続けないと骨盤が後傾しすぎる傾向があり、腰痛や背中の痛みを引き起こしてしまう。また健常者でも同様に椅子に継続して座って作業し続けると腰や背中に痛みを引き起こしてしまう。
【先行技術文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4-101660
上記特許文献1(実開平4-101660)には重度障害児が自力移動できる歩行器が開示されているが、背ベルトや手首ベルトで身体を固定して移動するもので、高齢者や身体障碍者や健常者が容易に移動や作業できるように工夫した技術ではない。そのため、本発明とは目的も技術内容も全く異なる。
【0004】
【特許文献2】特開2016-73413
上記特許文献2(特開2016-73413)には、背もたれがなく、胸から腹の部分をささえることで立位を促すリハビリのための車椅子が開示されている。車椅子の移動には、足裏をステップに乗せて、健康な足を使う示唆もされているが、基本は大きな車輪を手で駆動して移動する車椅子であり、立位を目指すという目的も、技術も本発明のものとは全く異なる。
【0005】
【特許文献3】特開2023-17137
上記特許文献3(特開2023-17137)には、前傾立位を促すための椅子が開示されている。重心が後方にあるために歩行が困難な人のリハビリの目的で、前傾姿勢で歩行できるように促す前傾立位椅子が開示されている。安全で容易な移動や作業を目的としたものではなく、あくまでも前傾立位のためのリハビリを目的としているのであり、本発明とは目的も技術も全く異なる。特許文献3では、前傾立位を促すためには股関節は大腿骨が直立に近づくようにする工夫であり、また前傾立位を促すために骨盤も前傾させるように腰から上半身にわたって緊張が促される。一方、本発明の座位においては股関節から大腿骨を直立ではなくより前の方向に安定させて収めることによりリラックスした状態で、骨盤は後傾しすぎることはなく上半身を支持する部材によりリラックスしながらやや後傾することができ、スムーズな歩行および作業などの活動が行われる。特許文献3においては、さらに立位姿勢のため踵荷重を制限するために、床の足蹴り範囲を制限して足を踏み出せる領域を制限する旨の記述があるが、本発明の足の動きを促進して容易な移動を可能とする思想とは全く逆である。
【0006】
【特許文献4】特開平8-154761
上記特許文献4(特開平8-154761)には、腰に負担をかけず背中が楽肩や首が凝らずリラックスして手作業やキーボードが打てる椅子付きリラックスデスクが開示されている。単にリラックスした状態を実現しようとしたものであり、高齢者や障碍者の安全な移動や家具やトイレとの乗り移りのなどの容易さを目的としたものではなく、日常生活の様々な活動の場や機会を提供できるものとはならない。例えばキッチンの中を移動しながらの調理するような仕事では全く使えないものでる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明解決しようとする課題は、使用者の体の前部に上半身を支える支持部を有し、座部に座りながら安全に自身の足で歩行でき、ベッドや椅子やトイレとの乗り移り移動を安全かつ容易に行うことができる、体の前部に上半身支持機能を備えた椅子型歩行器を提供することにある。さらに好ましくは、高齢者、身体障碍者、健常者だれでも、家庭、職場、施設などの生活空間において安全に歩行することができ、かつ狭い空間でも容易に前進、後進、旋回、斜行などができて、デスクワークのみならず日常の様々な作業も快適に行える椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、使用者の体の前部に上半身を支える支持部を有し、座部に座りながら自身の足による歩行時の足の動きを妨げないように動かせる領域が確保されており、かつ背もたれを有さないことを特徴とする椅子型歩行器。
【0009】
請求項1の発明によれば、背もたれを有さない椅子型歩行器の座部にまたがって座り、体の前部にある支持部で上半身を支え、自身の足で床を蹴って歩行移動することができる。使用者の体の前部の上半身を支える支持部が、腹胸部を支える部材および/または手腕部を支える部材および/または両脚の内ももで挟める部材からなる支持部とすることをができる。臀部で荷重をかけて椅子型歩行器を安定化させ、上半身を前部の部材で支えることで体を安定化させて移動や作業を容易に安全に行える、腹胸部を支える部材には好ましくはパッドを用いて接触時の当たりを緩和させてもよい。手腕部として、手のひらで部材を握ることでも支えるでもよいし、前腕部や肘、上腕部などを支える部材であってもよい。これらも必要に応じパッドを用いることが好ましい。両脚の内ももで挟める部材は、椅子型歩行器と全身の一体感に寄与し、また内転筋や姿勢を維持する体幹の深層筋の強化にも有効と思われる。座部の座面の高さは、座位であり、好ましくは生活の中で実際に使用しているベッドや椅子や洋式トイレの便座の高さに合わせて調整することが好ましい。ベッドから本発明の椅子型歩行器に移るときには、ベッドの縁に椅子型歩行器の座部の後部を接して待機させ、ベッドの縁に腰を掛けた状態から臀部を椅子型歩行器の座部にそのまま移動することにより安全に乗り換えができる。通常の車椅子では一旦ベッドから立ち上がり体を回転させてから車椅子に座ることになり、介助が必要になる場合があるが、本発明の椅子歩行器ではずっと容易に乗り換えができる。車椅子使用者が苦労するトイレも、洋式トイレに後ろから接近し、腰を浮かせて便座の上にスライドするだけでトイレに座ることができる。さらに健常者も含めて、長時間座ったまま作業しても腰や背中の緊張からくる痛みや疲れを軽減することができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、椅子型歩行器の脚部の一部または全部に自在キャスターが用いることができる。歩行器の脚部に360度自由に回転する自在キャスターを使用し、特に接地するすべての脚に自在キャスターを用いることで、足の蹴りによる前進後進などの移動に加え、その場での旋回、平行移動や、斜行などの操作が狭い場所でも椅子型歩行器を自在に操作ができる。
【0011】
本発明においては、歩行時の足の動きを妨げないように動かせる領域が、左右の足の歩行領域の間が40cm以内であり、かつ、左右の足ともに、領域の後ろ側は少なくとも座部の荷重中心より後ろ側まであるのが好ましい。左右の歩行領域の間が広くなりいわゆる蟹股で歩くことになると、軽快な歩行の妨げになり、疲れが早く出てしまうことから40cmを超えないことが好ましい。さらに好ましくは30cmを超えないことが好ましい。歩行時以外では、領域の中に足乗せのためのステップなどを設けることができるが、歩行時には簡便に収納して足を動かせる領域を確保できるようにすることが好ましい。足の前後の動かせる領域としては、領域の後ろ側(踵側)は少なくとも座部の荷重中心より後ろ側まであるのが好ましい。座部の荷重中心とは臀部により座部にかかる荷重中心である。より具体的には使用者の臀部の肛門に相当するの位置付近を荷重中心と考えることができる。また軽快な足蹴りを確保するためには歩行時の足の動かせる領域の前側(つま先側)はひざ下の蹴りだしが十分行えるよう、歩行時の足の可動領域を動かせる領域の後ろ側から少なくとも50cm前方まであることが好ましい。より好ましくは70cmあることが好ましい。
【0012】
本発明の椅子型歩行器の脚の配置設計は上記の点から重要である。上記の条件を満たしてかつ転倒などの危険を避けられるよう安全および使いやすさに十分配慮して設計するべきである。足の動きを妨げないようにするには、よくオフィスチェアなどで見かけるような回転式の脚部は好ましくなく、固定式の脚にするのが好ましい。その上で転倒しにくい安定した配置をするには前方の2脚を比較的幅狭く配置し、後方2脚を比較的幅広く配置するのは好ましい一例である。前後の脚部の間隔は、総合的な荷重を支えて安定性を確保できるようにすべきだが、広すぎると回転時に広い場所が必要となるため目的に応じて設計がされることが好ましい。
【0013】
本発明において、使用者の体の前部の上半身を支える支持部および/または座部の高さが調節可能である。使用者の体の前部の上半身を支える支持部の高さは、歩行時や作業時の上半身の態勢の好みや必要性に応じて調整変更することができる。一つの好ましい一例においては、肘および前腕部を支持して快適な態勢をとれるよ調整できる。また別の一例においては作業の際の机の高さに合わせたりすることもできる。床に近い高さで行う作業などには、支持部の高さは低く設定することができる。座部の高さは、歩行姿勢、作業姿勢などを考慮して調整することができるし、また、ベッドや椅子、洋式トイレなどの高さとの適合性から調整することができる。
【0014】
本発明において、使用者の体の前部の上半身を支える支持部および/または座部の角度が調整可能である。使用者の体の特徴に合わせて快適で安全な角度をとれるよう調整できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の椅子型歩行器によれば、高齢者や身体障碍者や健常者などが、座位による歩行や作業が安全かつ容易に行え、またベッド、椅子、洋式トイレなどへの乗り移りが安全かつ容易に行えることにより介護の必要性が低減され自力で生活でききる可能性を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例1の椅子型歩行器に使用者が跨って使用している概略図である。
図2】実施例1の椅子型歩行器の全体図を表している。
図3】本発明の歩行時の足の可動領域を示した図である。
図4】実施例2の椅子型歩行器の全体図を表している。
図5】実施例3の椅子型歩行器の全体像を表している。
図6】実施例4の椅子型歩行器の全体像を表している。
図7】実施例5の椅子型歩行器の全体像を表している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の具体的実施例に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施例1の椅子型歩行器に跨って使用している概略図である。使用者は椅子型歩行器の座部30に自然な座位をとることができ、上半身は使用者前部に設けられている支持部20(21、22、23)により安全に支持されていて、そのまま自分の足を使って安全に移動、作業、生活などの活動を行うことができる。歩行時の足の可動領域50は、歩行時の足の可動領域として確保されている。
【0019】
図2は、本発明の実施例1の椅子型歩行器全体の概略図である。実施例1では本体フレームは木製の材料で製作されている。本体フレーム10の後部に座部30が設けられており、背もたれがないため使用者はスムーズに歩行器に跨って座ることができる。本体の前部には、使用者前部となる位置に上半身支持部20が設けられており、腹胸部を支える支持部21、手腕を支える支持部22、両腿の内側で挟める支持部23からなっている。本体フレーム10には下部には歩行器の脚が設けられ、前脚41、後脚42、自在キャスター43が設けられ、椅子型歩行器本体の移動、旋回をスムーズに行えるようにしている。
【0020】
図3は、本発明の椅子型歩行器を使用して歩行する際の足の可動域を示している。歩行時の足の動きを妨げないように動かせる領域50が、好ましくは左右の足の歩行領域の間が40cm以内であり、より好ましくは30cm以内である。かつ、左右の足ともに、領域50の後ろ側は少なくとも座部の荷重中心より後ろ側まであるのが好ましい。足の前後の動かせる領域としては、領域の後ろ側(踵側)は少なくとも座部の荷重中心より後ろ側まであるのが好ましく、また軽快な足蹴りを確保するためには歩行時の足の動かせる領域の前側(つま先側)はひざ下の蹴りだしが十分行えるよう、歩行時の足の可動領域を動かせる領域の後ろ側から少なくとも50cm以上前方まで、より好ましくは70cm以上あることが好ましい。
【0021】
図4は、本発明の実施例2の椅子型歩行器全体の概略図である。実施例2では歩行器の本体フレーム10、上半身支持部20の骨格、脚40の41、42は金属製の材料で製作されている。金属としては、鉄製、特に軽量で強度が高いクロームモリブデン鋼やアルミ合金などが好ましく用いられる。実施例2の歩行器は上半身支持部は、高さ調整レバー24により高さを自在に調整固定することができる。また、座部は、高さ調整レバー31により高さを自在に調整固定することができる。
【0022】
図5は、本発明の実施例3の椅子型歩行器全体の概略図である。実施例3では、歩行器の本体フレーム10、それと一体になった上半身支持部20の骨格および脚41、42はカーボンファイバー製の材料で作製されている。樹脂やセラミックを用いた3Dプリンターで作製されたフレームも好ましく用いることができる。軽量化は、本発明の目的に対して重要な要因になっているためこのような対策は重要である。実施例3の歩行器の前部には作業台60を設けて、その上でパソコン作業など様々な作業、読書、食事のスペースとして用いることができる。また、本実施例においては、上半身支持部に接続してハンドルを設けており、立ち上がりや別の家具やトイレへの移動をサポートするものとなっている。
【0023】
図6は、本発明の実施例4の椅子型歩行器全体の概略図である。実施例4の歩行器の前部には荷物置きの台が設けられており、台に乗せて買い物かご70などを設置することで物を運搬したりスーパーなどで快適に安全に移動しながら買い物ができる。
【0024】
図7は、本発明の実施例5の椅子型歩行器全体の概略図である。実施例5の歩行器の上半身の支持部20と座部30は連結しており、その全体が本体フレームとヒンジで連結されており、調整レバー80の操作により、その傾斜角度を調整して固定することができる。また、ストッパー付きのブレーキレバーにより、椅子型歩行器を安全に停止させることができる。これらにより、使用者がより快適に作業、歩行、生活ができるものである。
【符号の説明】
【0025】
10 椅子型歩行器フレーム
20 上半身支持部
21 腹胸部を支える支持部
22 手腕を支える支持部
23 両腿の内側で挟める支持部
24 上半身支持部の高さ調整レバー
30 座部
31 座部の高さ調整レバー
40 歩行器の脚
41 歩行器の前脚
42 歩行器の後脚
43 自在キャスター
50 歩行時の足の可動領域
60 作業テーブル(パソコン)
70 荷物かご(買い物かご)
80 上半身支持部・座部の角度調整レバー
90 ブレーキレバー
100 座部の荷重中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7