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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002955
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】還元剤供給装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20241226BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
F01N3/08 B ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103369
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】大野 成弘
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
【Fターム(参考)】
3G091AB05
3G091BA02
3G091CA17
3G091DA02
3G091EA00
3G091EA15
3G091EA17
3G091EA26
3G091EA30
3G091FA04
4D148AA06
4D148AB02
4D148AC03
4D148CC31
4D148CC61
(57)【要約】
【課題】
内燃機関の始動後、排出ガスの浄化を開始するまでの時間をより短くすることが可能な還元剤供給装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】
前記内燃機関(1)の始動後、前記制御装置(100)は前記排気管(11)内の排気温度を考慮することなく前記供給ポンプ(31)の作動を開始し、前記排気温度が第1の所定の温度(Tth1)以上となった場合に前記還元剤噴射弁(25)を開弁し、前記還元剤供給通路(52)内の空気を排出する、還元剤供給装置(20)。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(1)の排気管(11)に設けられた還元触媒(13)の上流に取り付けられた還元剤噴射弁(25)と、
前記還元剤噴射弁(25)に還元剤を圧送する供給ポンプ(31)と、
前記供給ポンプ(31)を前記還元剤噴射弁(25)と接続する還元剤供給通路(52)と、
前記供給ポンプ(31)と前記還元剤噴射弁(25)とを制御する制御装置(100)と、
を備えた、還元剤供給装置(20)であって、
前記内燃機関(1)の始動後、前記制御装置(100)は前記排気管(11)内の排気温度を考慮することなく前記供給ポンプ(31)の作動を開始し、前記排気温度が第1の所定の温度(Tth1)以上となった場合に前記還元剤噴射弁(25)を開弁し、前記還元剤供給通路(52)内の空気を排出する、還元剤供給装置(20)。
【請求項2】
前記制御装置は、前記排気温度が第1の所定の温度(Tth1)より高い第2の所定の温度(Tth2)以上となった場合に、前記還元剤噴射弁(25)を介して還元剤の前記排気管(11)内への供給を開始する、請求項1に記載の還元剤供給装置(20)。
【請求項3】
内燃機関(1)の排気管(11)に設けられた還元触媒(13)の上流に取り付けられた還元剤噴射弁(25)と、前記還元剤噴射弁(25)に還元剤を圧送する供給ポンプ(31)と、前記供給ポンプ(31)を前記還元剤噴射弁(25)と接続する還元剤供給通路(52)と、前記供給ポンプ(31)と前記還元剤噴射弁(25)とを制御する制御装置(100)と、を備えた、還元剤供給装置(20)の制御方法であって、
前記制御方法は、
前記内燃機関(1)の始動後、前記排気管(11)内の排気温度を考慮することなく前記供給ポンプ(31)の作動を開始するステップと、
前記排気温度が第1の所定の温度(Tth1)以上となった場合に前記還元剤噴射弁(25)を開弁し、前記還元剤供給通路(52)内の空気を排出するステップと、
を有する、還元剤供給装置(20)の制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気管に還元剤を供給するための還元剤供給装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排出ガス中には、環境に影響を与えるおそれのある窒素酸化物(以下、「NOx」と称する。)が含まれている。このNOxを浄化するために用いられる排気浄化装置として、排気管に配設された触媒の上流側に尿素水溶液等の還元剤を噴射供給し、触媒中で排出ガス中のNOxを還元反応させる排気浄化装置が知られている。
【0003】
このような排気浄化装置に用いられる還元剤供給装置の一態様として、ポンプ及び還元剤噴射弁を備え、貯蔵タンク内の還元剤をポンプによって圧送するとともに、排気管に固定された還元剤噴射弁を介して還元剤を排気管内に供給する還元剤供給装置がある(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、内燃機関停止後に還元剤である尿素水が還元剤噴射弁内や還元剤供給管内において凍結することを防ぐために、還元剤噴射弁を開弁するとともにポンプを逆回転させることにより還元剤噴射弁及び還元剤供給管内の還元剤をタンク方向に吸い戻す制御が行われること、さらに、その後の内燃機関の再始動時には還元剤噴射弁を開弁させて還元剤噴射弁内の空気を抜きつつ還元剤噴射弁内に還元剤を充填させる制御が行われることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-027364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、内燃機関の排出ガスに対する一つの課題として、内燃機関の始動後、排出ガスの浄化を開始するまでの時間をより短くすることが挙げられる。還元剤供給装置においては、還元剤噴射弁内の空気を抜き還元剤噴射弁内に還元剤を充填させ、すなわち還元剤供給が可能な状態とするまでの時間を短くする必要がある。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、内燃機関の始動後、排出ガスの浄化を開始するまでの時間をより短くすることが可能な還元剤供給装置及びその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る還元剤供給装置は、
内燃機関(1)の排気管(11)に設けられた還元触媒(13)の上流に取り付けられた還元剤噴射弁(25)と、
前記還元剤噴射弁(25)に還元剤を圧送する供給ポンプ(31)と、
前記供給ポンプ(31)を前記還元剤噴射弁(25)と接続する還元剤供給通路(52)と、
前記供給ポンプ(31)と前記還元剤噴射弁(25)とを制御する制御装置(100)と、
を備えた、還元剤供給装置(20)であって、
前記内燃機関(1)の始動後、前記制御装置(100)は前記排気管(11)内の排気温度を考慮することなく前記供給ポンプ(31)の作動を開始し、前記排気温度が第1の所定の温度(Tth1)以上となった場合に前記還元剤噴射弁(25)を開弁し、前記還元剤供給通路(52)内の空気を排出する、還元剤供給装置(20)(20)である。
【0009】
本発明に係る還元剤供給装置の制御方法は、
内燃機関(1)の排気管(11)に設けられた還元触媒(13)の上流に取り付けられた還元剤噴射弁(25)と、前記還元剤噴射弁(25)に還元剤を圧送する供給ポンプ(31)と、前記供給ポンプ(31)を前記還元剤噴射弁(25)と接続する還元剤供給通路(52)と、前記供給ポンプ(31)と前記還元剤噴射弁(25)とを制御する制御装置(100)と、を備えた、還元剤供給装置(20)の制御方法であって、
前記制御方法は、
前記内燃機関(1)の始動後、前記排気管(11)内の排気温度を考慮することなく前記供給ポンプ(31)の作動を開始するステップと、
前記排気温度が第1の所定の温度(Tth1)以上となった場合に前記還元剤噴射弁(25)を開弁し、前記還元剤供給通路(52)内の空気を排出するステップと、
を有する、還元剤供給装置(20)の制御方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、内燃機関の始動後、排出ガスの浄化を開始するまでの時間をより短くすることが可能な還元剤供給装置及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る還元剤供給装置を備えた排気浄化装置の構成例を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る還元剤供給装置が有する制御装置に備えられた構成を機能的なブロックで表した構成例を示している。
図3】還元剤の回収における還元剤供給装置の作動を説明するためのフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係る還元剤供給装置の作動を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面を参照して、本発明の還元剤供給装置及びその制御方法に関する実施形態について具体的に説明する。尚、それぞれの図中、同じ符号を付してあるものについては、特に説明がない限り同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る還元剤供給装置及び還元剤供給装置の制御方法について説明する。
【0014】
<排気浄化装置の全体構成>
図1は、還元剤供給装置20を備える排気浄化装置10の全体構成の一例を説明するための模式図である。この排気浄化装置10は排気中のNOxを浄化するための装置であり、ディーゼルエンジン等の内燃機関1の排気管11に設けられている。排気浄化装置10は、排気管11の途中に介装された還元触媒13と、還元触媒13よりも上流側の排気管11内に還元剤を供給するための還元剤供給装置20とを備えている。
【0015】
還元触媒13は、排気中のNOxの還元反応を促進する機能を有する触媒であり、還元剤から生成される還元成分を吸着するとともに、触媒に流れ込む排気中のNOxを還元成分によって選択的に還元するものとなっている。還元剤供給装置20は、還元剤として尿素水が用いられるものであり、尿素水が排気管11中で分解されることにより還元成分としてのアンモニアが生成されるようになっている。
【0016】
<還元剤供給装置>
図1に示すように、還元剤供給装置20は、還元剤が収容されるタンク21と、還元剤を排気管11内に噴射するための還元剤噴射弁25と、タンク21内の還元剤を還元剤噴射弁25に圧送する供給ポンプ31と、タンク21内に還元剤を回収する回収ポンプ41と、還元剤噴射弁25や各ポンプ31、41と電気的に接続されておりこれらを電子制御する制御装置100とを主な構成要素として備えている。
【0017】
タンク21と供給ポンプ31の加圧室とは第1通路51を介して連通している。第1通路51の途中には、第1フィルタ71と第1逆止弁61とが設けられている。第1逆止弁61は還元剤がタンク21から供給ポンプ31の方向にのみ流れるように機能する。
【0018】
供給ポンプ31の加圧室と還元剤噴射弁25とは第2通路52を介して連通している。第2通路52の途中には、第2逆止弁62と回収ポンプ41への分岐点59とが設けられている。第2逆止弁62は還元剤が供給ポンプ31から分岐点59の方向にのみ流れるように機能する。第2通路52は供給ポンプ31と還元剤噴射弁25とを接続する還元剤供給通路である。
【0019】
第3通路53は第2通路52の途中に設けられた分岐点59から分岐し、回収ポンプ41の加圧室と連通している。第3通路53の途中には、第3逆止弁63が設けられている。第3逆止弁63は還元剤が分岐点59から回収ポンプ41の方向にのみ流れるように機能する。
【0020】
回収ポンプ41の加圧室とタンク21とは第4通路54を介して連通している。第4通路54の途中には、第4逆止弁64と第2フィルタ72とが設けられている。第4逆止弁64は還元剤が回収ポンプ41からタンク21の方向にのみ流れるように機能する。
【0021】
供給ポンプ31は内部に電磁コイルを有していて、この電磁コイルへの通電・非通電(オン・オフ)が繰り返されることにより作動するタイプのポンプである。以下、供給ポンプ31が有する電磁コイルへの通電・非通電を簡略化して供給ポンプ31への通電・非通電という場合がある。供給ポンプ31への通電・非通電は制御装置100により制御される。
【0022】
供給ポンプ31はその加圧室を画成するダイヤフラムを有するダイヤフラムタイプのポンプである。供給ポンプ31が通電されると、供給ポンプ31の加圧室はダイヤフラムによって圧縮され、加圧室内の媒体、例えば還元剤は第2通路52の方向に押し出される。供給ポンプ31が非通電にされると、スプリングによって加圧室が拡大する方向にダイヤフラムが移動し、加圧室内には第1通路51から還元剤等が流入する。尚、供給ポンプ31が通電で維持される場合、供給ポンプ31の加圧室は閉鎖され、第1通路51と第2通路52は液圧的に分離される。
【0023】
回収ポンプ41も内部に電磁コイルを有していて、この電磁コイルへの通電・非通電(オン・オフ)が繰り返されることにより作動するタイプのポンプである。以下、回収ポンプ41が有する電磁コイルへの通電・非通電を簡略化して回収ポンプ41への通電・非通電という場合がある。回収ポンプ41への通電・非通電は制御装置100により制御される。
【0024】
回収ポンプ41はその加圧室を画成するダイヤフラムを有するダイヤフラムタイプのポンプである。回収ポンプ41が通電されると、ダイヤフラムの移動によって回収ポンプ41の加圧室は拡大し、加圧室内には第3通路53から還元剤等が流入する。回収ポンプ41が非通電にされると、スプリングに押されたダイヤフラムによって加圧室は圧縮され、加圧室内の還元剤等は第4通路54の方向に押し出される。尚、回収ポンプ41が非通電で維持される場合、回収ポンプ41の加圧室は閉鎖され、第3通路53と第4通路54は液圧的に分離される。
【0025】
供給ポンプ31および回収ポンプ41が一つのパッケージ内に含まれるサプライモジュール27として構成されていてもよい。この場合、サプライモジュール27は第1通路51、第3通路53、第4通路54および分岐点59もその構成の中に含む。還元剤供給通路である第2通路52は第2A通路52Aと第2B通路52Bからなり、第2A通路52Aがサプライモジュール27内に含まれる。第2B通路52Bは、第2A通路52Aとの接続点57と還元剤噴射弁25を接続する配管として構成される。サプライモジュール27が含む範囲を図1中の一点鎖線で表す。サプライモジュール27はタンク21の下方に接続されるように設計されていてもよい。
【0026】
制御装置100は、タンク21内の還元剤を還元剤噴射弁25に供給する場合には、回収ポンプ41を非通電としたままで、供給ポンプ31への通電・非通電を繰り返す。このことによって、タンク21内の還元剤は供給ポンプ31の加圧室に吸入され、さらに、供給ポンプ31によって還元剤噴射弁25の方向に圧送される。
【0027】
また、制御装置100は、還元剤噴射弁25内の還元剤をタンク21に回収する場合には、供給ポンプ31を非通電としたままで、回収ポンプ41への通電・非通電を繰り返す。このことによって、還元剤噴射弁25内の還元剤は回収ポンプ41の加圧室に吸入され、さらに、回収ポンプ41によってタンク21の方向に圧送される。
【0028】
還元剤噴射弁25はいわゆる電磁式のオン・オフ弁である。還元剤噴射弁25の有する電磁コイルが通電されると還元剤噴射弁25は開弁し、非通電にされると閉弁する。以下、還元剤噴射弁25の有する電磁コイルへの通電・非通電を簡略化して還元剤噴射弁25への通電・非通電という場合がある。内燃機関1の運転中において、必要な還元剤量が排気管11内に供給されるように、還元剤噴射弁25は制御装置100によって開閉制御される。
【0029】
排気管11内の温度を検出する排気温度センサ80が排気管11に取り付けられている。排気温度センサ80で検出される排気温度Tは制御装置100で取得される。排気温度センサ80の信号に基づいて還元触媒13および還元剤噴射弁25の先端部の温度を推定可能な位置に排気温度センサ80は取り付けられている。尚、本実施例において排気温度センサ80は一つであるが、複数の排気温度センサ80が用いられてもよい。例えば、排気温度センサ80Aの信号に基づいて還元触媒13の温度を推定し、別の排気温度センサ80Bの信号に基づいて還元剤噴射弁25の先端部の温度を推定することが可能な位置に排気温度センサ80Aおよび排気温度センサ80Bがそれぞれ取り付けられていてもよい。
【0030】
第2通路52内の圧力を検出する圧力センサ82が第2通路52に取り付けられている。圧力センサ82で検出される圧力Pは制御装置100で取得される。
【0031】
第1フィルタ71は、第1通路51の途中に設けられ、タンク21から供給ポンプ31に移動する還元剤中のゴミ等の異物を捕集するフィルタである。第2フィルタ72は、第4通路54の途中に設けられ、タンク21に戻される還元剤中のゴミ等の異物を捕集するフィルタである。
【0032】
<制御装置>
図2は、制御装置100のうち、本発明の制御に関連する部分を機能的なブロックで表した構成例を示している。この制御装置100は、公知のマイクロコンピュータを中心に構成されたものであり、取得部103と、制御部105と、判断部107とを有している。具体的に、これらの各部はマイクロコンピュータによるプログラムの実行によって実現されるものとなっている。
【0033】
この他、制御装置100には、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等の図示しない記憶素子やタイマカウンタ、さらに各ポンプ31、41、還元剤噴射弁25への通電制御を行うための駆動回路等が備えられている。
【0034】
取得部103は、イグニッションスイッチ(図示せず)からの信号IG、排気温度センサ80で検出される排気温度Tおよび圧力センサ82で検出される圧力Pを取得する。取得部103は、これら以外の装置からの情報を取得するように構成されていてもよい。取得した情報は、制御部105および/または判断部107に送られる。
【0035】
制御部105は、還元剤噴射弁25、供給ポンプ31及び回収ポンプ41を駆動制御する。具体的には、制御部105は、還元剤噴射弁25、供給ポンプ31および回収ポンプ41を通電または非通電とするように制御する。
【0036】
判断部107は制御装置100内で実施される様々な判断を実施する。例えば、判断部はイグニッションスイッチからの信号IG、圧力センサ82で検出された圧力P、排気温度センサ80で検出された排気温度Tおよび時間tについて判断する。判断部107はこれ以外の情報に関して判断をしてもよい。
【0037】
取得部103、制御部105および判断部107の作動については以下でさらに説明する。
【0038】
図3のフローチャートにしたがって、内燃機関1の停止時に実施する還元剤の回収における還元剤供給装置20の作動について説明する。還元剤である尿素水は凍結すると体積が増加する。このため、内燃機関の停止後に環境温度が低下すると、還元剤噴射弁内や還元剤供給管内に残った還元剤が凍結し、還元剤噴射弁や還元剤供給管が破損するおそれがある。還元剤の回収はこれらの不具合を避けるためのものである。
【0039】
ステップS110で、取得部103はイグニッションスイッチから信号IGを取得し、判断部107に送る。判断部107はイグニッションスイッチがオフとなったか否かを判断する。イグニッションスイッチがオフとなった場合にステップS120に進み、オンの場合にはステップS110に戻る。
【0040】
ステップS120で、制御部105は還元剤噴射弁25および供給ポンプ31を非通電とするとともに、回収ポンプ41を通電状態とし、ステップ130に進む。回収ポンプ41を通電状態とすることにより、回収ポンプ41のダイヤフラムは、第3通路53と第4通路54とを連通させる方向に移動する。これにより、システム圧に調製されていた還元剤供給通路内の圧力は下がり始める。システム圧とは、還元剤供給装置が還元剤を排気管11に供給する際の還元剤供給通路内の還元剤の圧力である。
【0041】
ステップS130で、取得部103は圧力センサ82から圧力Pを取得し、判断部107に送る。判断部107は、圧力センサ82で検出される圧力Pが第1の所定圧力Pth1以下か否かを判断する。圧力Pが第1の所定圧力Pth1以下まで下がっている場合にはステップS140に進み、圧力Pが第1の所定圧力Pth1より高い場合にはステップS130に戻る。尚、判断部107は、回収ポンプ41を通電状態とした後の経過時間に基づいて判断してもよい。例えば、実験で圧力Pがシステム圧から第1の所定圧力Pth1となるまでの時間を調べておき、当該時間を経過した際にステップS140に進むようにしてもよい。
【0042】
ステップS140で、制御部105は還元剤噴射弁25および供給ポンプ31を非通電としたままで、回収ポンプ41を通電・非通電で繰り返すように制御し、ステップ150に進む。これにより、還元剤供給通路内の圧力はさらに下がり始める。
【0043】
ステップS150で、取得部103は圧力センサ82から圧力Pを取得し、判断部107に送る。判断部107は、圧力センサ82で検出される圧力Pが第2の所定圧力Pth2以下か否かを判断する。圧力Pが第2の所定圧力Pth2以下まで下がっている場合にはステップS160に進み、圧力Pが第2の所定圧力Pth2より高い場合にはステップS150に戻る。尚、判断部107は、回収ポンプ41における通電・非通電の繰り返し開始後の経過時間に基づいて判断してもよい。例えば、実験で圧力Pが第2の所定圧力Pth2となるまでの時間を調べておき、当該時間を経過した際にステップS160に進むようにしてもよい。ここで、第2の所定圧力Pth2は、例えば、内燃機関停止時の排気管内の圧力より低い圧力である。還元剤供給通路内の圧力をこのような圧力とすることにより、次のステップ160で還元剤噴射弁25を開弁した際に、還元剤噴射弁25の開口部には排気管内の空気(含む排出ガス)が流れ込む。したがって、還元剤噴射弁25を開弁した際に、還元剤噴射弁25の開口部から還元剤が漏れるおそれがない。内燃機関停止時の排気管内の圧力は、大気圧、または大気圧に近い圧力である。
【0044】
ステップS160で、制御部105は還元剤噴射弁25を通電するとともに供給ポンプ31を非通電とし、回収ポンプ41を通電・非通電で繰り返すように制御し、ステップ170に進む。還元剤噴射弁25に対して通電することによって、還元剤噴射弁25は開弁される。回収ポンプ41を通電・非通電で繰り返すことによって、還元剤噴射弁25および還元剤供給管(第2通路52)内の還元剤は回収ポンプ41を介してタンク21の方向へ移動する。この還元剤の移動に伴って還元剤噴射弁25の開口部から空気が流入する。
【0045】
ステップS170で、判断部107は回収ポンプ41による回収開始後の時間が第1の所定時間tp1を経過したか否かを判断する。回収ポンプ41の回収開始後の時間が第1の所定時間tp1を経過した場合にステップS180に進み、回収ポンプ41の回収開始後の時間が第1の所定時間tp1を経過していない場合にはステップS170に戻る。
【0046】
ステップS180で、制御部105は還元剤噴射弁25および供給ポンプ31を非通電とし、回収ポンプ41に対する通電・非通電の繰り返しを停止する。これによって、還元剤の移動およびこれにともなう空気の流入は停止する。第1の所定時間tp1は還元剤と空気の境界が分岐点59よりも還元剤噴射弁25側に位置する所定の回収ポイントまで達する時間として設定されている。回収ポイントからタンク21の方向に向かう還元剤通路(例えば第1~4通路等)には、尿素水が凍結した場合のダンパ(図示しない)が設けられており、これらの部分に尿素水が残留しても低温時に破損等の不具合を避けることができる構造となっている。
【0047】
図4のフローチャートにしたがって、本願発明に係る還元剤供給装置20の作動について説明する。
【0048】
ステップS10で、取得部103はイグニッションスイッチから信号IGを取得し、判断部107に送る。判断部107はイグニッションスイッチがオンとなったか否かを判断する。イグニッションスイッチがオンとなった場合にステップS20に進み、オフの場合にはステップS10に戻る。
【0049】
ステップS20で、制御部105は還元剤噴射弁25および回収ポンプ41を非通電とするとともに、供給ポンプ31を通電・非通電で繰り返すように制御する。この結果、タンク21内の還元剤が供給ポンプ31を介して還元剤噴射弁25の方向へ送られ、還元剤供給通路(第2通路52)の圧力が上昇する。尚、非通電とされた還元剤噴射弁25は閉弁されるとともに、非通電とされた回収ポンプ41の加圧室は閉鎖され、回収ポンプ41によって第3通路53と第4通路54は液圧的に分離される。このように、本願発明においては、イグニッションスイッチのオンまたは内燃機関1の始動が検知されると、その後還元剤供給通路の圧力を上昇させる。本願発明の一つの特徴は、内燃機関1の始動後、排気管11内の排気温度Tを考慮することなく、還元剤供給通路の圧力を上昇させることである。本願発明の好ましい特徴は、内燃機関1の始動後、遅滞なく、かつ、排気管11内の排気温度Tを考慮することなく、還元剤供給通路の圧力を上昇させることである。
【0050】
ステップS30で、取得部103は圧力センサ82から圧力Pを取得し、判断部107に送る。判断部107は圧力センサ82で検出される圧力Pが第3の所定圧力Pth3以上か否かを判断する。圧力Pが第3の所定圧力Pth3以上の場合ステップS40に進み、圧力Pが第3の所定圧力Pth3未満の場合ステップS30に戻る。
【0051】
ステップS40で、制御部105は還元剤噴射弁25および回収ポンプ41を非通電のままとし、供給ポンプ31に対する通電・非通電の繰り返しを止め、通電で維持するように制御する。この結果、還元剤供給通路の圧力の上昇はストップし、圧力Pは第3の所定圧力Pth3近傍の圧力で維持される。ここで、第3の所定圧力Pth3は還元剤供給装置のシステム圧であってもよい。システム圧とは、還元剤供給装置が還元剤を排気管11に供給する際の還元剤供給通路内の還元剤の圧力である。ステップS40の後、ステップS50に進む。
【0052】
ステップS50で、取得部103は排気温度センサ80から排気温度Tを取得し、判断部107に送る。判断部107は排気温度センサ80で検出された排気温度Tが第1の所定温度Tth1以上か否かを判断する。排気温度Tが第1の所定温度Tth1以上の場合にステップS60に進み、排気温度Tが第1の所定温度Tth1未満の場合にステップS50に戻る。
【0053】
ステップS60で、制御部105は還元剤噴射弁25を第2の所定時間tp2だけ開弁し、その後、再度閉弁するよう制御する。ここで第2の所定時間tp2は還元剤供給通路および還元剤噴射弁25内の空気が全部抜けるように、かつ、還元剤が還元剤噴射弁25の開口部から漏れないように設定された時間である。第2の所定時間tp2はたとえば実験等により決定することができる。還元剤噴射弁25の開弁前、還元剤供給通路および還元剤噴射弁25内の空気は、還元剤の移動によって還元剤噴射弁25側に圧縮されている。したがって、第2の所定時間tp2の間還元剤噴射弁25を開弁することにより、当該空気は排気管11中に抜け、還元剤噴射弁25の先端までが還元剤で満たされることになる。ステップS60において、第2の所定時間tp2が経過し還元剤噴射弁25を閉弁した後で、還元剤供給通路内の還元剤の圧力が第3の所定圧力Pth3よりも若干下がっている場合には、供給ポンプ31の作動によって、還元剤供給通路内の還元剤の圧力を第3の所定圧力Pth3(システム圧)まで戻すように制御してもよい。尚、第3の所定圧力Pth3を予めシステム圧よりも高い圧力として設定し、ステップS60において第2の所定時間tp2が経過し還元剤噴射弁25を閉弁した後で、還元剤供給通路内の還元剤の圧力がシステム圧となるようにしてもよい。
【0054】
ステップS60で、還元剤噴射弁25の開口部から空気が抜ける際に、若干の還元剤が排気管11中に漏れる場合がある。還元剤噴射弁25の先端部の温度が低いと漏れた還元剤が還元剤噴射弁25の開口部で結晶化し、還元剤噴射弁25が作動不良となってしまうおそれがある。ステップS50における第1の所定温度Tth1は、漏れた還元剤が還元剤噴射弁25の開口部で結晶化しない温度に到達する際に排気温度センサ80で検出される排気温度である。すなわち排気温度Tが第1の所定温度Tth1以上であれば、漏れた還元剤が還元剤噴射弁25の開口部で結晶化することはない。例えば、還元剤噴射弁25の先端温度と排気温度センサ80で検出される排気温度Tとの相関関係を実験的に調べ、その結果に基づいて第1の所定温度Tth1を定めることができる。ステップS60の後、ステップS70に進む。
【0055】
ステップS70で、取得部103は排気温度センサ80から排気温度Tを取得し、判断部107に送る。判断部107は排気温度センサ80で検出された排気温度Tが第2の所定温度Tth2以上か否かを判断する。排気温度Tが第2の所定温度Tth2以上の場合ステップS80に進み、排気温度Tが第2の所定温度Tth2未満の場合ステップS70に戻る。
【0056】
ステップS80で、制御部105は還元剤の排気管への供給を開始するように制御する。具体的には、制御部105は、供給する還元剤の量が別に計算された目標還元剤量となるように還元剤噴射弁25、供給ポンプ31および回収ポンプ41を制御する。目標還元剤量は、例えば燃焼温度、吸入空気量、燃料供給量等を含む内燃機関1の燃焼条件等に基づいて決定されてもよい。また、これに加えて、還元触媒13に吸収され貯蔵されている還元剤量を考慮して目標還元剤量を決定してもよい。
【0057】
還元触媒13は所定の温度以上にならないと安定した還元作用を発揮することができない。ステップS70における第2の所定温度Tth2は、還元触媒13が安定した還元作用を発揮することができる温度に到達する際に排気温度センサ80で検出される排気温度である。すなわち排気温度Tが第2の所定温度Tth2以上であれば、還元触媒13は安定した還元作用を発揮することができる。例えば、還元触媒13の温度と排気温度センサ80で検出される排気温度Tとの相関関係を実験的に調べ、その結果に基づいて第2の所定温度Tth2を定めることができる。
【0058】
還元触媒13が安定した還元作用を発揮することができる温度は、還元剤噴射弁25の先端部において還元剤の結晶化が起こらない温度よりも高い。したがって、第2の所定温度Tth2は第1の所定温度Tth1よりも高い温度である。
【0059】
このように、本願発明においては、イグニッションスイッチがオンとなりすなわち内燃機関1が始動後、排気管11内の排気温度Tを考慮することなく還元剤供給通路の圧力を上昇させる。そして漏れた還元剤が還元剤噴射弁25の開口部で結晶化しない温度(排気温度センサ80で検出される排気温度Tが第1の所定温度Tth1)となった段階で還元剤供給通路内の空気を排出する。したがって、本願発明によれば、還元触媒13が安定した還元作用を発揮することができる温度(排気温度センサ80で検出される排気温度Tが第2の所定温度Tth2)となった場合、時間を置かず、還元剤の排気管11への供給を開始することができる。還元触媒13が安定した還元作用を発揮することができる温度となった際に、還元剤供給通路の圧力は既にシステム圧となっているからである。
【0060】
ここで、漏れた還元剤が還元剤噴射弁25の開口部で結晶化しない温度(排気温度センサ80で検出される排気温度Tが第1の所定温度Tth1)になった後、還元剤供給通路の空気の排出および還元剤供給通路の圧力上昇を開始することも考えられる。しかしながら、通常、還元剤供給通路内の空気を排出し、還元剤供給通路内の還元剤の圧力をシステム圧まで上昇させるには時間がかかり、還元触媒13が安定した還元作用を発揮することができる温度(排気温度センサ80で検出される排気温度Tが第2の所定温度Tth2)となっても還元剤供給通路の圧力はシステム圧まで達しない。このように、漏れた還元剤が還元剤噴射弁25の開口部で結晶化しない温度になった後、還元剤供給通路の空気の排出および還元剤供給通路の圧力上昇を開始した場合、還元触媒13が安定した還元作用を発揮することができる温度に到達後、還元剤供給通路の圧力がシステム圧まで上昇するのを待たなければ還元剤の排気管11への供給を開始することができない。これに対して、本願発明は、内燃機関1の始動後、排気管11内の排気温度Tを考慮することなく還元剤供給通路の圧力を上昇させ、排気温度Tが第1の所定温度Tth1となった段階で還元剤供給通路内の空気を排出するので、その後、排気温度Tが第2の所定温度Tth2となれば、時間を置かず、還元剤の排気管11への供給を開始することができる。
【0061】
尚、上述の実施例において還元剤供給装置20は供給ポンプ31と回収ポンプ41を個別に有していたが、本願発明の適用はこのタイプの還元剤供給装置に限られるものではない。例えば、本願発明は一つのポンプと流路切換弁とを備えた還元剤供給装置にも適用することができる。ここで、流路切換弁は、ポンプにより圧送される還元剤の流れる方向を切り換える。すなわち、流路切換弁の切替方向を一方にすると、上述の実施例における供給ポンプ31が作動した場合のように、ポンプの作動によってタンク内の還元剤は還元剤噴射弁の方向に圧送される。また、流路切換弁の切替方向をもう一方の方向にすると、上述の実施例における回収ポンプ41が作動した場合のように、ポンプの作動によって還元剤噴射弁の中の還元剤はタンクの方向に圧送される。さらに、本願発明は回転方向を変えることにより還元剤の流れる方向を変えることができるポンプを備えた還元剤供給装置にも適用することができる。このように、本願発明は様々な圧送手段および回収手段を有する還元剤供給装置に適用することができる。
【0062】
本発明によれば、内燃機関の始動後、排出ガスの浄化を開始するまでの時間をより短くすることが可能な還元剤供給装置及びその制御方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 内燃機関、10 排気浄化装置、11 排気管、13 還元触媒、20 還元剤供給装置、21 タンク、25 還元剤噴射弁、27 サプライモジュール、31 供給ポンプ、41 回収ポンプ、51 第1通路、52 第2通路、53 第3通路、54 第4通路、57 接続部、59 分岐点、61 第1逆止弁、62 第2逆止弁、63 第3逆止弁、64 第4逆止弁、71 第1フィルタ、72 第2フィルタ、80 排気温度センサ、82 圧力センサ、100 制御装置、103 取得部、105 制御部、107 判断部
図1
図2
図3
図4