(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029586
(43)【公開日】2025-03-06
(54)【発明の名称】界面活性剤
(51)【国際特許分類】
C09K 23/10 20220101AFI20250227BHJP
C07F 7/08 20060101ALI20250227BHJP
【FI】
C09K23/10
C07F7/08 Q CSP
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024135120
(22)【出願日】2024-08-13
(31)【優先権主張番号】P 2023134175
(32)【優先日】2023-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
(71)【出願人】
【識別番号】391024700
【氏名又は名称】三好化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】鷺坂 将伸
(72)【発明者】
【氏名】込山 ひなた
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 幸夫
【テーマコード(参考)】
4D077
4H049
【Fターム(参考)】
4D077AA09
4D077AB10
4D077AB11
4D077BA03
4D077DC33X
4D077DC59X
4D077DC70X
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ54
4H049VR24
4H049VU28
4H049VW01
(57)【要約】
【課題】フッ化炭素鎖又はポリジメチルシロキサン鎖を有しない界面活性剤であって、常温で利用が可能であって、表面張力低下速度が大きい界面活性剤を提供すること。
【解決手段】
コハク酸ジエステルスルホン酸の一価又は多価金属塩からなる界面活性剤であって、コハク酸ジエステル骨格の全てにおいて、当該骨格におけるエステル基の一方に、直鎖炭化水素基が結合し、他方に、トリメチルシリル基末端を有する炭化水素基が結合しており、前記直鎖炭化水素基及び前記トリメチルシリル基末端を有する炭化水素基に含まれる炭素数の合計が5~15である、界面活性剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コハク酸ジエステルスルホン酸の一価又は多価金属塩からなる界面活性剤であって、
コハク酸ジエステル骨格の全てにおいて、当該骨格におけるエステル基の一方に、直鎖炭化水素基が結合し、他方に、トリメチルシリル基末端を有する炭化水素基が結合しており、
前記直鎖炭化水素基及び前記トリメチルシリル基末端を有する炭化水素基に含まれる炭素数の合計が5~15である、界面活性剤。
【請求項2】
ナトリウム塩、マグネシウム塩、又はカルシウム塩である、請求項1に記載の界面活性剤。
【請求項3】
前記コハク酸ジエステル骨格のそれぞれにおいて、前記直鎖炭化水素基に含まれる炭素数と、前記トリメチルシリル基末端を有する炭化水素基に含まれる炭素数の差が、0~5である、請求項1に記載の界面活性剤。
【請求項4】
下記一般式(100a)、(100b)、(100c)、(100d)、(100e)、(110a)、(110b)、(110c)、(110d)、(110e)、(111a)、(111b)、(111c)、(111d)、又は(111e)のいずれかで表される化合物。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【請求項5】
水の表面張力低下速度の向上方法であって、水に請求項1~3のいずれか一項に記載の界面活性剤を添加することを含む、向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性剤に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤は、分子内に親水部と疎水部を併せ持つ両親媒性分子であり、洗剤、帯電防止剤、化粧品、表面処理剤等の成分として使用されている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
界面活性剤は、水の表面や水/油界面に吸着し、水の表面張力、水/油界面張力を低下させ、乳化や可溶化、起泡、濡れなどに効果を発揮する。界面活性剤の吸着速度が高い場合、乳化や可溶化、起泡、濡れなどで生じる新しい表面/界面の状態を素早く安定化させることが可能になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】吉田時行「新版 界面活性剤」、工学図書株式会社出版、第2版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの知見によれば、界面活性剤の吸着速度、すなわち表面張カ(界面張力)を低下させる速度は、界面活性剤の疎水性を強めること、例えば、疎水鎖を長くすること、又は炭化水素基よりも強い疎水性のフッ化炭素鎖やポリジメチルシロキサン鎖に変えることで達成できる。また、疎水基にメチル分岐を多く導入することで、低表面エネルギー化とともに疎水性を高め、水溶性も維持させるという方法もある。
【0006】
しかし、炭化水素鎖長を長くする場合、又はフッ化炭素鎖やポリジメチルシロキサン鎖を採用する場合においては、疎水性が強いため水への溶解性が失われ、クラフト点(イオン性界面活性剤がミセルを形成し、溶解し出す下限温度)が高くなり、或いは曇点(ノニオン性界面活性剤が析出し出す上限温度)が低くなる。したがって、常温で使用することができない場合がある。
【0007】
フッ化炭素は、通常自然界には存在しないため、分解されにくく、環境負荷が大きい。また、生体蓄積性等の健康への影響も懸念されている。一方、ポリジメチルシロキサン鎖については、水中で加水分解しやすいため、水に溶解させてからは長く効果を持続できず、長期保存が困難になる場合がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、フッ化炭素鎖又はポリジメチルシロキサン鎖を有しない界面活性剤であって、常温での利用が可能で、表面張力低下速度が大きい界面活性剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記[1]~[19]を提供するものである。
[1]コハク酸ジエステルスルホン酸の一価又は多価金属塩からなる界面活性剤(スルホコハク酸塩ジエステルからなる界面活性剤)であって、
コハク酸ジエステル骨格の全てにおいて、当該骨格におけるエステル基の一方に、直鎖炭化水素基が結合し、他方に、トリメチルシリル基末端を有する炭化水素基が結合しており、
上記直鎖炭化水素基及び上記トリメチルシリル基末端を有する炭化水素基に含まれる炭素数の合計が5~15である、界面活性剤。
[2]ナトリウム塩、マグネシウム塩、又はカルシウム塩である、[1]の界面活性剤。
[3]上記コハク酸ジエステル骨格のそれぞれにおいて、上記直鎖炭化水素基に含まれる炭素数と、上記トリメチルシリル基末端を有する炭化水素基に含まれる炭素数の差が、0~5である、[1]又は[2]の界面活性剤。
[4]下記一般式(100a)で表される化合物。
【化1】
[5]下記一般式(100b)で表される化合物。
【化2】
[6]下記一般式(100c)で表される化合物。
【化3】
[7]下記一般式(100d)で表される化合物。
【化4】
[8]下記一般式(100e)で表される化合物。
【化5】
[9]下記一般式(110a)で表される化合物。
【化6】
[10]下記一般式(110b)で表される化合物。
【化7】
[11]下記一般式(110c)で表される化合物。
【化8】
[12]下記一般式(110d)で表される化合物。
【化9】
[13]下記一般式(110e)で表される化合物。
【化10】
[14]下記一般式(111a)で表される化合物。
【化11】
[15]下記一般式(111b)で表される化合物。
【化12】
[16]下記一般式(111c)で表される化合物。
【化13】
[17]下記一般式(111d)で表される化合物。
【化14】
[18]下記一般式(111e)で表される化合物。
【化15】
[19]水の表面張力低下速度の向上方法であって、水に[1]~[3]のいずれかの界面活性剤を添加することを含む、向上方法。なお[4]~[18]に記載の化合物は、[1]に記載の界面活性剤として使用可能である。
【0010】
上記界面活性剤は、トリメチルシリル基を有する炭化水素基と、直鎖炭化水素基とをハイブリッド化させた界面活性剤であり、水の表面張力低下速度(吸着速度)が大きい。
【0011】
通常、吸着速度を高めるためには、界面活性剤の疎水性を高める必要があるが、この方法では水溶性が低下し、利用しにくくなる。しかし、本発明によれば、疎水性を大きく変化させることなく、水溶性の低下も起こさせずに吸着速度を大きく増大させることができる。そして、分子の特徴としては、「トリメチルシリル基」を有する「ハイブリッド疎水鎖構造」であり、相溶性の悪い2つ以上の疎水鎖を分子内に共存させた構造を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フッ化炭素鎖又はポリジメチルシロキサン鎖を有しない界面活性剤であって、常温(例えば25℃)での利用が可能で、表面張力低下速度が大きい界面活性剤を提供することが可能になる。また、この界面活性剤は、比較的安価な原料を用いて製造が可能であるため、工業製品として利用が容易であり有用性が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1~5及び参考例1の界面活性剤を使用した際の、表面張力と、界面活性剤の濃度の関係を示す図である。
【
図2】実施例6~10の界面活性剤を使用した際の、表面張力と、界面活性剤の濃度の関係を示す図である。
【
図3】実施例11~15の界面活性剤を使用した際の、表面張力と、界面活性剤の濃度の関係を示す図である。
【
図4】実施例1~15の、臨界ミセル濃度(CMC)の自然対数値と、界面活性剤の直鎖炭化水素基の炭素数及びトリメチルシリル基末端を有する炭化水素基に含まれる、炭素原子及びケイ素原子の総数(N
C+Si)の関係を示す図である。
【
図5】実施例1~15の、π
CMC/Log(CMC×10
10)の値と、界面活性剤の直鎖炭化水素基の炭素数及びトリメチルシリル基末端を有する炭化水素基に含まれる、炭素原子及びケイ素原子の総数(N
C+Si)の関係を示す図である。
【
図6】実施例1の界面活性剤[SC
5-SiPSS]を使用した際の、表面張力と、表面寿命の関係を示す図である。
【
図7】実施例2の界面活性剤[SC
6-SiPSS]を使用した際の、表面張力と、表面寿命の関係を示す図である。
【
図8】実施例3の界面活性剤[SC
7-SiPSS]を使用した際の、表面張力と、表面寿命の関係を示す図である。
【
図9】実施例4の界面活性剤[SC
8-SiPSS]を使用した際の、表面張力と、表面寿命の関係を示す図である。
【
図10】実施例5の界面活性剤[SC
9-SiPSS]を使用した際の、表面張力と、表面寿命の関係を示す図である。
【
図11】実施例6の界面活性剤[Mg(SC
5-SiPSS)
2]を使用した際の、表面張力と、表面寿命の関係を示す図である。
【
図12】実施例7の界面活性剤[Mg(SC
6-SiPSS)
2]を使用した際の、表面張力と、表面寿命の関係を示す図である。
【
図13】実施例8の界面活性剤[Mg(SC
7-SiPSS)
2]を使用した際の、表面張力と、表面寿命の関係を示す図である。
【
図14】実施例9の界面活性剤[Mg(SC
8-SiPSS)
2]を使用した際の、表面張力と、表面寿命の関係を示す図である。
【
図15】実施例10の界面活性剤[Mg(SC
9-SiPSS)
2]を使用した際の、表面張力と、表面寿命の関係を示す図である。
【
図16】実施例11の界面活性剤[Ca(SC
5-SiPSS)
2]を使用した際の、表面張力と、表面寿命の関係を示す図である。
【
図17】実施例12の界面活性剤[Ca(SC
6-SiPSS)
2]を使用した際の、表面張力と、表面寿命の関係を示す図である。
【
図18】実施例13の界面活性剤[Ca(SC
7-SiPSS)
2]を使用した際の、表面張力と、表面寿命の関係を示す図である。
【
図19】実施例14の界面活性剤[Ca(SC
8-SiPSS)
2]を使用した際の、表面張力と、表面寿命の関係を示す図である。
【
図20】実施例15の界面活性剤[Ca(SC
9-SiPSS)
2]を使用した際の、表面張力と、表面寿命の関係を示す図である。
【
図21】実施例1~5及び参考例1の界面活性剤を使用した際の、特性時間τと、界面活性剤の濃度の関係を示す図である。
【
図22】実施例1~5及び参考例1の界面活性剤を使用した際の、特性時間τと、界面活性剤の濃度を界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)基準で補正した換算濃度の関係を示す図である。
【
図23】実施例1~5及び参考例1の界面活性剤を使用した際の、表面張力低下速度R
1/2と、界面活性剤の濃度の関係を示す図である。
【
図24】実施例1~5及び参考例1の界面活性剤を使用した際の、表面張力低下速度R
1/2と、界面活性剤の濃度を界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)基準で補正した換算濃度の関係を示す図である。
【
図25】実施例6~10の界面活性剤を使用した際の、特性時間τと、界面活性剤の濃度の関係を示す図である。
【
図26】実施例6~10の界面活性剤を使用した際の、特性時間τと、界面活性剤の濃度を界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)基準で補正した換算濃度の関係を示す図である。
【
図27】実施例6~10の界面活性剤を使用した際の、表面張力低下速度R
1/2と、界面活性剤の濃度の関係を示す図である。
【
図28】実施例6~10の界面活性剤を使用した際の、表面張力低下速度R
1/2と、界面活性剤の濃度を界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)基準で補正した換算濃度の関係を示す図である。
【
図29】実施例11~15の界面活性剤を使用した際の、特性時間τと、界面活性剤の濃度の関係を示す図である。
【
図30】実施例11~15の界面活性剤を使用した際の、特性時間τと、界面活性剤の濃度を界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)基準で補正した換算濃度の関係を示す図である。
【
図31】実施例11~15の界面活性剤を使用した際の、表面張力低下速度R
1/2と、界面活性剤の濃度の関係を示す図である。
【
図32】実施例11~15の界面活性剤を使用した際の、表面張力低下速度R
1/2と、界面活性剤の濃度を界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)基準で補正した換算濃度の関係を示す図である。
【
図33】疎水性固体表面における液滴の湿潤挙動を高速流体挙動可視システムで撮影した写真である。
【
図34】実施例1~5の界面活性剤を含有する水溶液及び純水が、疎水性固体表面に衝突した後の広がり径D
t/D
0の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態に係る界面活性剤は、コハク酸ジエステルスルホン酸の一価又は多価金属塩であって、コハク酸ジエステル骨格の全てにおいて、当該骨格における一方のエステル基に直鎖炭化水素基が結合しており、他方のエステル基にトリメチルシリル基末端を有する炭化水素基が結合しており、上記直鎖炭化水素基(以下「第一の炭化水素基」と呼ぶ場合がある。)及び上記トリメチルシリル基末端を有する炭化水素基(以下「第二の炭化水素基」と呼ぶ場合がある。)に含まれる炭素数の合計が5~15である化合物からなる。
【0015】
上記界面活性剤は、フッ化炭素鎖又はポリジメチルシロキサン鎖を有しない界面活性剤であって、常温での利用が可能で、表面張力低下速度が大きいという特徴を有する。ここで、表面張力低下速度が大きいとは、例えば、界面活性剤の濃度が0.1mM~2.0mMにおいて、表面張力低下速度が30mN・m-1s-1以上となる濃度が存在することを意味する。表面張力低下速度が30mN・m-1s-1以上となる濃度が存在する界面活性剤の濃度は、0.5mM~2.0mM、0.7mM~2.0mM、0.7mM~1.5mM、0.8mM~1.2mM、又は1.0mMであってもよい。
【0016】
実施形態に係る界面活性剤は、上記濃度範囲において、表面張力低下速度が50mN・m-1s-1以上となる濃度が存在する界面活性剤、表面張力低下速度が70mN・m-1s-1以上となる濃度が存在する界面活性剤、又は表面張力低下速度が100mN・m-1s-1以上となる濃度が存在する界面活性剤であってもよい。
【0017】
実施形態に係る界面活性剤は、界面活性剤のCMCに対する界面活性剤の濃度の比の値が0.1~10において、表面張力低下速度が30mN・m-1s-1以上となる濃度が存在する界面活性剤であってもよい。界面活性剤は、界面活性剤のCMCに対する界面活性剤の濃度の比の値が0.1~1において、表面張力低下速度が30mN・m-1s-1以上となる濃度が存在する界面活性剤であることが好ましい。
【0018】
実施形態に係る界面活性剤は、例えば、以下の一般式(1)で表すことができる。
【化16】
【0019】
上記一般式(1)の界面活性剤は、以下の一般式(1’)で表すこともできる。
【化17】
【0020】
上記一般式(1)及び(1’)において、Mはq価の金属原子であり、qは1~4の整数である。qは、1~3、1~2であってもよい。上記一般式(1)及び(1’)で表される界面活性剤は、q個のコハク酸ジエステル骨格を備え、それぞれのコハク酸ジエステル骨格が有する、第一の炭化水素基及び第二の炭化水素基に含まれる炭素数の合計が5~15である。それぞれのコハク酸ジエステル骨格が有する、第一の炭化水素基及び第二の炭化水素基に含まれる炭素数の合計は、6~15、7~15、8~15、9~15、10~15、又は11~15であってもよいが、このうち、第一の炭化水素基及び第二の炭化水素基に含まれる炭素数の合計が11~15であることが好ましい。このような炭素数にするにすることで、より速い表面張力低下速度を得ることができる。
【0021】
特に、それぞれのコハク酸ジエステル骨格が有する、第一の炭化水素基及び第二の炭化水素基に含まれる炭素数の合計が11~13にすることで、界面活性剤がミセルを形成する前に速い表面張力低下速度を得ることができ、それぞれのコハク酸ジエステル骨格が有する、第一の炭化水素基及び第二の炭化水素基に含まれる炭素数の合計が13~15にすることで、特に速い表面張力低下速度を得ることができる。
【0022】
一般式(1)において、mは1~11の整数であり、nは1~10の整数であり、第一の炭化水素基及び第二の炭化水素基に含まれる炭素数の合計が5~15である限り、m及びnはどのような組み合わせであってもよく、mは2~6、2~5、2~4、3~6、3~5、3~4であってもよく、nは2~10、3~10、4~10、5~9、5~7、7~9であってもよい。
【0023】
それぞれのコハク酸ジエステル骨格が有する、第一の炭化水素基及び第二の炭化水素基に含まれる炭素数の合計が5~15であるとき、(m,n)の組としては、(1,1)、(2,1)、(3,1)、(4,1)、(5,1)、(6,1)、(7,1)、(8,1)、(9,1)、(10,1)、(11,1)、(1,2)、(2,2)、(3,2)、(4,2)、(5,2)、(6,2)、(7,2)、(8,2)、(9,2)、(10,2)、(1,3)、(2,3)、(3,3)、(4,3)、(5,3)、(6,3)、(7,3)、(8,3)、(9,3)、(1,4)、(2,4)、(3,4)、(4,4)、(5,4)、(6,4)、(7,4)、(8,4)、(1,5)、(2,5)、(3,5)、(4,5)、(5,5)、(6,5)、(7,5)、(1,6)、(2,6)、(3,6)、(4,6)、(5,6)、(6,6)、(1,7)、(2,7)、(3,7)、(4,7)、(5,7)、(1,8)、(2,8)、(3,8)、(4,8)、(1,9)、(2,9)、(3,9)、(1,10)、(2,10)、及び(1,11)が挙げられる。
【0024】
それぞれのコハク酸ジエステル骨格が有する、第一の炭化水素基及び第二の炭化水素基に含まれる炭素数の差が0~5であることが好ましい。このとき、mは1~7の整数であり、nは1~9の整数となる。このような構成にすることで、1分子中の2つの疎水基の長さが近くなり、疎水基として配向しやすくなるため、表面張力を低下させる速度に優れるようになる。
【0025】
それぞれのコハク酸ジエステル骨格が有する、第一の炭化水素基及び第二の炭化水素基に含まれる炭素数の差が0~5であることを満たす(m,n)の組は、(1,1)、(2,1)、(3,1)、(1,2)、(2,2)、(3,2)、(4,2)、(1,3)、(2,3)、(3,3)、(4,3)、(5,3)、(1,4)、(2,4)、(3,4)、(4,4)、(5,4)、(6,4)、(1,5)、(2,5)、(3,5)、(4,5)、(5,5)、(6,5)、(7,5)、(1,6)、(2,6)、(3,6)、(4,6)、(5,6)、(6,6)、(1,7)、(2,7)、(3,7)、(4,7)、(5,7)、(1,8)、(2,8)、(3,8)、(4,8)、(1,9)、(2,9)、(3,9)、及び(2,10)が挙げられる。
【0026】
一般式(1)において、qが1であるとき、Mはアルカリ金属であり、qが2であるとき、Mはアルカリ土類金属である。
【0027】
Mがアルカリ金属である場合、Mとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムが挙げられ、ナトリウムが代表的である。Mがアルカリ土類金属である場合、Mとしては、マグネシウム、カルシウム、バリウムが挙げられ、マグネシウム、カルシウムが代表的である。
【0028】
一般式(1)で表される化合物の一態様として、qが1であり、Mがアルカリ金属である、以下の一般式(10)で表される化合物が挙げられる。なお、m及びnは好適例を含め、上記と同義である。
【化18】
【0029】
一般式(10)で表される化合物には、-SO
3-の結合位置によって以下の2種類の異性体が考えられるが、一般式(10)で表される化合物は、いずれの異性体であっても、異性体の混合物であってもよい。
【化19】
【0030】
一般式(1)で表される化合物の一態様として、qが2であり、Mがアルカリ土類金属である、以下の一般式(11)で表される化合物が挙げられる。なお、m及びnは好適例を含め、上記と同義である。
【化20】
【0031】
一般式(11)で表される化合物には、-SO
3-の結合位置によって以下の3種類の異性体が考えられるが、一般式(11)で表される化合物は、いずれの異性体であっても、異性体の混合物であってもよい。
【化21】
【0032】
一般式(10)で表される化合物の好適な態様として、例えば、mが3、nが5、Mがナトリウムである以下の式(100a)で表される化合物が挙げられる。なお、式(100a)で表される化合物には、-SO
3-の結合位置によって以下の2種類の異性体が考えられるが、式(100a)で表される化合物は、いずれの異性体であっても、異性体の混合物であってもよい。
【化22】
【化23】
【0033】
一般式(10)で表される化合物の好適な態様として、例えば、mが3、nが6、Mがナトリウムである以下の式(100b)で表される化合物が挙げられる。なお、式(100b)で表される化合物には、-SO
3-の結合位置によって以下の2種類の異性体が考えられるが、式(100b)で表される化合物は、いずれの異性体であっても、異性体の混合物であってもよい。
【化24】
【化25】
【0034】
一般式(10)で表される化合物の好適な態様として、例えば、mが3、nが7、Mがナトリウムである以下の式(100c)で表される化合物が挙げられる。なお、式(100c)で表される化合物には、-SO
3-の結合位置によって以下の2種類の異性体が考えられるが、式(100c)で表される化合物は、いずれの異性体であっても、異性体の混合物であってもよい。
【化26】
【化27】
【0035】
一般式(10)で表される化合物の好適な態様として、例えば、mが3、nが8、Mがナトリウムである以下の式(100d)で表される化合物が挙げられる。なお、式(100d)で表される化合物には、-SO
3-の結合位置によって以下の2種類の異性体が考えられるが、式(100d)で表される化合物は、いずれの異性体であっても、異性体の混合物であってもよい。
【化28】
【化29】
【0036】
一般式(10)で表される化合物の好適な態様として、例えば、mが3、nが9、Mがナトリウムである以下の式(100e)で表される化合物が挙げられる。なお、式(100e)で表される化合物には、-SO
3-の結合位置によって以下の2種類の異性体が考えられるが、式(100e)で表される化合物は、いずれの異性体であっても、異性体の混合物であってもよい。
【化30】
【化31】
【0037】
一般式(11)で表される化合物の好適な態様として、例えば、mが3、nが5、Mがマグネシウムである以下の式(110a)で表される化合物が挙げられる。なお、以下に述べる一般式(11)で表される化合物の好適な態様の全てにおける、異性体の取り扱いについては、上述のとおりである。
【化32】
【0038】
一般式(11)で表される化合物の好適な態様として、例えば、mが3、nが6、Mがマグネシウムである以下の式(110b)で表される化合物が挙げられる。
【化33】
【0039】
一般式(11)で表される化合物の好適な態様として、例えば、mが3、nが7、Mがマグネシウムである以下の式(110c)で表される化合物が挙げられる。
【化34】
【0040】
一般式(11)で表される化合物の好適な態様として、例えば、mが3、nが8、Mがマグネシウムである以下の式(110d)で表される化合物が挙げられる。
【化35】
【0041】
一般式(11)で表される化合物の好適な態様として、例えば、mが3、nが9、Mがマグネシウムである以下の式(110e)で表される化合物が挙げられる。
【化36】
【0042】
一般式(11)で表される化合物の好適な態様として、例えば、mが3、nが5、Mがカルシウムである以下の式(111a)で表される化合物が挙げられる。
【化37】
【0043】
一般式(11)で表される化合物の好適な態様として、例えば、mが3、nが6、Mがカルシウムである以下の式(111b)で表される化合物が挙げられる。
【化38】
【0044】
一般式(11)で表される化合物の好適な態様として、例えば、mが3、nが7、Mがカルシウムである以下の式(111c)で表される化合物が挙げられる。
【化39】
【0045】
一般式(11)で表される化合物の好適な態様として、例えば、mが3、nが8、Mがカルシウムである以下の式(111d)で表される化合物が挙げられる。
【化40】
【0046】
一般式(11)で表される化合物の好適な態様として、例えば、mが3、nが9、Mがカルシウムである以下の式(111e)で表される化合物が挙げられる。
【化41】
【0047】
一般式(1)で表される化合物のうち、qが1、Mがアルカリ金属である一般式(10)で表される化合物は、例えば、以下の反応スキームで合成できる。
【化42】
【0048】
一般式(1)で表される化合物のうち、Mがマグネシウム又はカルシウムであり、qが2である化合物は、上記生成物にそれぞれ飽和Mg(NO3)2又は飽和Ca(NO3)2溶液を加えて反応させればよい。
【0049】
本発明の化合物は他の界面活性剤(非フッ素系界面活性剤等)と共に使用してもよく、溶媒として、水、エタノール、イソプロパノール、メタノール、アセトン、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、クロロホルム、飽和および不飽和炭化水素油、超臨界二酸化炭素、イオン液体等を含んでいてもよい。また、他の添加物(例えば、有機微粒子、無機微粒子、ポリマー、ハイドロトロープ、染料、高級アルコールなど助溶媒、助界面活性剤)の添加も可能である。一般式(1)で表される化合物からなる界面活性剤の用途としては、消火剤、レベリング剤、原油増進回収用薬剤、農薬、医薬品、化粧品、洗浄剤、撥水処理剤、親水処理剤、乳化剤、分散剤、起泡剤等が挙げられる。
【0050】
本発明の水の表面張力低下速度の向上方法は、本発明の界面活性剤を添加することを含む。本発明の界面活性剤を添加することにより、本発明の界面活性剤の存在により、フッ化炭素鎖又はポリジメチルシロキサン鎖を有しない界面活性剤でありながら、常温での利用が可能であり、水の表面張力低下速度が向上する。
【実施例0051】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
化合物は、実施例1~15、及び参考例1に記載の方法で合成した。なお、合成及び測定用の試料としては以下のものを用いた。
[合成及び測定用の試料]
・1-pentanol C5H12O=88.15,(富士フィルム和光純薬(株)製、純度98.0%以上)
・1-hexanol C6H14O=102.17,(富士フィルム和光純薬(株)製、純度97.0%以上)
・1-heptanol C7H16O=116.20,(富士フィルム和光純薬(株)製、純度98.0%以上)
・1-octanol C8H18O=130.23,(東京化成工業(株)製、純度99.0%以上)
・1-nonanol C9H20O=144.26,(富士フィルム和光純薬(株)製、純度95.0%以上)
・3-(trimethylsilyl)propan-1-olC6H16OSi=132.28SIGMA-ALDRICH(株)、純度97.0%
・Maleic anhydrideC4H2O3=98.06富士フィルム和光純薬工業(株)、純度99.0%
・4-DimethylaminopyridineC7H10N2=122.17関東化学(株)、純度99.0%
・1-(3-Dimethylaminopropyl)-3-ethylcarbodiimidehydrochloride C8H17N3・HCl=191.71渡辺化学工業(株)、純度98.0%
・Sodium bisulfiteNaHSO3=104.06 富士フィルム和光純薬工業(株)、純度64.0~67% [Sodiumbisulfite(NaHSO3)とSodium metabisulfite(Na2S2O5)の混合物]
・p-toluenesulfonicacid monohydrate C7H8O3S・H2O=190.22 富士フィルム和光純薬工業(株)、純度99.0%
・Magnesiumnitrate Mg(NO3)2=148.30 富士フィルム和光純薬(株)
・Calcium nitrate Ca(NO3)2=164.088 富士フィルム和光純薬(株)
【0053】
合成した化合物は、シリカゲル(63-210μm)(KANTOCHEMICAL Co. INK.)を用いて、カラムクロマトグラフィーによって精製した。その後、核磁気共鳴(NMR)スペクトル、赤外(IR)スペクトルにより構造を確認し、有機微量分析により純度を確認した。測定は、以下に示す条件で行った。
【0054】
[測定条件]
NMRスペクトルはJEOL(日本電子株式会社)製の商品名「JMN-GX400」、又は同社製の商品名「JMN-ECZ400」を用いて測定した。ケミカルシフトは百万分率(ppm)で表している。内部標準物質には、tetramethylsilane(TMS)を用いた。結合定数(J)は、ヘルツで示しており、略号s、d、t、q及びm、は、それぞれ、一重線(singlet)、二重線(doublet)、三重線(triplet)、四重線(quartet)、及び多重線(multiplet)を表す。IRスペクトルはBIO-RAD製の商品名「FTS-30」を用いて測定した。純度確認は有機微量元素分析(EA1110、CE Instrumental (株)アコム)により行った。
【0055】
[界面活性剤SC
n-SiPSSの合成]
界面活性剤SC
n-SiPSS(n=5~9)は、それぞれ以下のスキームにしたがって合成した。以下、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、及び実施例5の界面活性剤の合成操作をそれぞれ詳細に示す。
【化43】
【0056】
(実施例1)SC5-SiPSSの合成
SC5-SiPSSは、以下の3つのステップを含む方法で合成した。
【0057】
[ステップ1]1-pentylhydrogen maleate(SC5M)の合成
1-pentanol(3.09g,35.0mmol)とmaleic anhydride(4.90g,50.0mmol)をヘキサン30mLに加え、90℃で24時間攪拌・還流した。反応後、分液漏斗を用いてジエチルエーテルとpHを2に調整したNaCl飽和水溶液により、反応溶液から未反応のmaleic anhydrideを抽出した。有機層に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水し、その後ろ過・減圧濃縮をした。得られた溶液を、展開溶媒がヘキサン:酢酸エチル=2:1のカラムクロマトグラフィーで精製し、無色透明液体SC5M(4.37g、収率67.1%)を得た。
【0058】
SC5M
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS)δH/ppm:6.45(dd,2H,-CH=CH-,J=13.2Hz,J=12.6Hz),4.32(t,2H,-O-CH
2
-,J=6.9Hz),1.78-1.72(m,2H,-O-CH2-CH
2
-),1.40-1.37(m,4H,-O-CH2-CH2-(CH
2
)2-CH3),0.96-0.90(m,3H,-O-(CH2)4-CH
3
)
元素分析(C9H14O4)
C/56.83%,H/7.11%(理論値 C/58.05%,H/7.58%)
【0059】
[ステップ2]1-(3-(trimethylsilyl)-1-propyl)-4-(1-pentyl)maleate (SC5-SiPM)の合成
合成したSC5M(3.00g,16.1mmol)と3-(trimethylsilyl)propanol(2.65g,20.0mmol)とp-toluenesulfonicacid(1.31g,7.36mmol)をトルエン100mLに溶解させ、ディーンスターク装置を用いて120℃で24時間攪拌した。NaCl飽和水溶液により、反応溶液から未反応のp-toluenesulfonic acidを抽出した有機層に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水し、その後ろ過・減圧濃縮をした。得られた溶液を、展開溶媒がヘキサン:酢酸エチル=4:1のカラムクロマトグラフィーで精製し、無色透明液体のSC5-SiPM(3.33g、収率68.8%)を得た。
【0060】
SC5-SiPM
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS)δH/ppm:6.87(s,2H,-CH=CH-),4.23-4.16(m,4H,-O-CH
2
-CH2-CH2-Si(CH3)3,-O-CH
2
-(CH2)3-CH3),1.72-1.66(m,4H,-O-CH2-CH
2
-CH2-Si(CH3)3,-O-CH2-CH
2
-(CH2)2-CH3),1.40-1.37(m,4H,-O-CH2-CH2-(CH
2
)2-CH3),0.95-0.93(m,3H,-O-(CH2)4-CH
3
),0.55-0.52(m,2H,-O-CH2-CH2-CH
2
-Si(CH3)3),0.00(s,9H,-Si(CH
3
)3)
【0061】
[ステップ3]Sodium1-(3-(trimethylsilyl)-1-propyl)-4-(1-pentyl)sulfosuccinate(SC5-SiPSS)の合成
合成したSC5-SiPM(2.85g,9.32mmol)をエタノール100mLに溶解させ、NaHSO3/水(9.70g/100mL)と混合し、110℃で16時間攪拌・還流した。反応溶液を減圧濃縮し、真空乾燥を行った後にヘキサンを用いてろ過することで、未反応のNaHSO3を除去した。ろ液を濃縮して得られた化合物から、展開溶媒がヘキサン:酢酸エチル=1:1のカラムクロマトグラフィーを用いて未反応の中間生成物を除去し、その後展開溶媒をメタノールに変えて精製し、白色固体のSC5-SiPSS(1.84g、収率85.8%)を得た。
【0062】
SC5-SiPSS
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS)δH/ppm:4.34(m,1H,-CH2-CH(SO3Na)-),4.17-4.13(m,2H,-O-CH
2
-CH2-CH2-Si(CH3)3),4.05-4.01(m,2H,-O-CH
2
-(CH2)3-CH3),3.23-3.13(m,2H,-CH(SO3Na)-CH
2
-),1.61-1.60(m,4H,-O-CH2-CH
2
-CH2-Si(CH3)3,-O-CH2-CH
2
-(CH2)2-CH3),1.33-1.32(m,4H,-O-CH2-CH2-(CH
2
)2-CH3),0.93-0.89(m,3H,-O-(CH2)4-CH
3
),0.49-0.45(m,2H,-O-CH2-CH2-CH
2
-Si(CH3)3),0.00(s,9H,-Si(CH
3
)3)
IR(KBr)νmax/cm-1:2954(-CH3),2873(-CH2),1734(C=O,-COO-),1247(O=S=O),1051(O=S=O)
元素分析(C15H29NaO7SSi)
C/43.30%,H/6.96%,S/7.88%(理論値 C/44.53%,H/7.23%,S/7.93%)
【0063】
(実施例2)SC6-SiPSSの合成
SC6-SiPSSは、以下の3つのステップを含む方法で合成した。
【0064】
[ステップ1]1-hexylhydrogen maleate(SC6M)の合成
1-hexanol(3.72g,36.4mmol)とmaleic anhydride(5.14g,52.4mmol)をヘキサン30mLに加え、90℃で24時間攪拌・還流した。反応後、分液漏斗を用いてジエチルエーテルとpHを2に調整したNaCl飽和水溶液により、反応溶液から未反応のmaleic anhydrideを抽出した。有機層に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水し、その後ろ過・減圧濃縮をした。得られた溶液を、展開溶媒がヘキサン:酢酸エチル=2:1のカラムクロマトグラフィーで精製し、無色透明液体のSC6M(5.09g、収率69.9%)を得た。
【0065】
SC6M
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS)δH/ppm:6.44(dd,2H,-CH=CH-,J=12.6Hz,J=13.2Hz),4.30(t,2H,-O-CH
2
-,J=6.9Hz)1.76-1.71(m,2H,-O-CH2-CH
2
-),1.43-1.32(m,6H,-O-CH2-CH2-(CH
2
)3-CH3),0.93-0.90(m,3H,-O-(CH2)5-CH
3
)
元素分析(C10H16O4)
C/58.33%,H/7.30%(理論値 C/59.98%,H/8.05%)
【0066】
[ステップ2]1-(3-(trimethylsilyl)-1-propyl)-4-(1-hexyl)maleate(SC6-SiPM)の合成
合成したSC6M(3.82g,19.8mmol)と3-(trimethylsilyl)propanol(2.65g,20.0mmol)とp-toluenesulfonicacid(1.81g,9.5mmol)をトルエン100mLに溶解させ、ディーンスターク装置を用いて120℃で24時間攪拌した。NaCl飽和水溶液により、反応溶液から未反応のp-toluenesulfonic acidを抽出した。有機層に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水し、その後ろ過・減圧濃縮をした。得られた溶液を、展開溶媒がヘキサン:酢酸エチル=4:1のカラムクロマトグラフィーで精製し、無色透明液体のSC6-SiPM(2.18g、収率36.5%)を得た。
【0067】
SC6-SiPM
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS)δH/ppm:6.87(s,2H,-CH=CH-),4.22-4.16(m,4H,-O-CH
2
-CH2-CH2-Si(CH3)3,-O-CH
2
-(CH2)4-CH3),1.71-1.65(m,4H,-O-CH2-CH
2
-CH2-Si(CH3)3,-O-CH2-CH
2
-(CH2)3-CH3),1.38-1.32(m,6H,-O-CH2-CH2-(CH
2
)3-CH3),0.92-0.89(m,3H,-O-(CH2)5-CH
3
),0.55-0.51(m,2H,-O-CH2-CH2-CH
2
-Si(CH3)3),0.00(s,9H,-Si(CH
3
)3)
元素分析(C16H30O4Si)
C/60.89%,H/9.65%(理論値 C/61.10%,H/9.62%)
【0068】
[ステップ3]Sodium1-(3-(trimethylsilyl)-1-propyl)-4-(1-hexyl)sulfosuccinate(SC6-SiPSS)の合成
合成したSC6-SiPM(2.18g,6.9mmol)をエタノール100mLに溶解させ、NaHSO3/水(7.20g/100mL)と混合し、110℃で16時間攪拌・還流した。反応溶液を減圧濃縮し、真空乾燥を行った後にヘキサンを用いてろ過することで、未反応のNaHSO3を除去した。ろ液を濃縮して得られた化合物から、展開溶媒がヘキサン:酢酸エチル=1:1のカラムクロマトグラフィーを用いて未反応の中間生成物を除去し、その後展開溶媒をメタノールに変えて精製し、白色固体のSC6-SiPSS(2.66g、収率91.9%)を得た。
【0069】
SC6-SiPSS
1HNMR (500MHz,CDCl3,TMS)δH/ppm:4.33(m,1H,-CH2-CH(SO3Na)-),4.19-4.13(m,2H,-O-CH
2
-CH2-CH2-Si(CH3)3),4.06-4.01(m,2H,-O-CH
2
-(CH2)4-CH3),3.23-3.12(m,2H,-CH(SO3Na)-CH
2
-),1.61-1.60(m,4H,-O-CH2-CH
2
-CH2-Si(CH3)3,-O-CH2-CH
2
-(CH2)3-CH3),1.33-1.32(m,6H,-O-CH2-CH2-(CH
2
)3-CH3),0.90-0.89(m,3H,-O-(CH2)5-CH
3
),0.49-0.47(m,2H,-O-CH2-CH2-CH
2
-Si(CH3)3),0.00(s,9H,-Si(CH
3
)3)
IR(KBr)νmax/cm-1:2954(-CH3),2859(-CH2),1736(C=O,-COO-),1248(O=S=O),1054(O=S=O)
元素分析(C16H31NaO7SSi)
C/45.92%,H/6.97%,S/7.53%(理論値 C/45.91%,H/7.47%,S/7.66%)
【0070】
(実施例3)SC7-SiPSSの合成
SC7-SiPSSは、以下の3つのステップを含む方法で合成した。
【0071】
[ステップ1]1-heptylhydrogen maleate(SC7M)の合成
1-heptanol(6.04g,52.0mmol)とmaleic anhydride(5.10g,52.0mmol)をヘキサン30mLに加え、90℃で24時間攪拌、還流した。反応後、分液漏斗を用いてジエチルエーテルとpHを2に調整したNaCl飽和水溶液により、反応溶液から未反応のmaleic anhydrideを抽出した。有機層に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水し、その後ろ過・減圧濃縮をした。得られた溶液を、展開溶媒がヘキサン:酢酸エチル=2:1のカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体SC7M(8.18g、収率73.4%)を得た。
【0072】
SC7M
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS)δH/ppm:6.45(dd,2H,-CH=CH-,J=12.6Hz,J=12.6Hz),4.30(t,2H,-O-CH
2
-,J=6.9Hz),1.76-1.71(m,2H,-O-CH2-CH
2
-),1.38-1.31(m,8H,-O-CH2-CH2-(CH
2
)4-CH3),0.92-0.89(m,3H,-O-(CH2)6-CH
3
)
元素分析(C11H18O4)
C/61.61%,H/8.36%(理論値 C/61.66%,H/8.47%)
【0073】
[ステップ2]1-(3-(trimethylsilyl)-1-propyl)-4-(1-heptyl)maleate(SC7-SiPM)の合成
合成したSC7M(3.07g,14.3mmol)と3-(trimethylsilyl)propanol(1.90g,14.3mmol)とp-toluenesulfonicacid(1.31g,6.9mmol)をトルエン100mLに溶解させ、ディーンスターク装置を用いて120℃で24時間攪拌した。NaCl飽和水溶液により、反応溶液から未反応のp-toluenesulfonic acidを抽出した。有機層に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水し、その後ろ過、減圧濃縮をした。得られた溶液を、展開溶媒がヘキサン:酢酸エチル=4:1のカラムクロマトグラフィーで精製し、無色透明液体のSC7-SiPM(3.24g、収率68.9%)を得た。
【0074】
SC7-SiPM
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS)δH/ppm:6.87(s,2H,-CH=CH-),4.22-4.15(m,4H,-O-CH
2
-CH2-CH2-Si(CH3)3,-O-CH
2
-(CH2)5-CH3),1.71-1.65(m,4H,-O-CH2-CH
2
-CH2-Si(CH3)3,-O-CH2-CH
2
-(CH2)4-CH3),1.38-1.28(m,8H,-O-CH2-CH2-(CH
2
)4-CH3),0.91-0.88(m,3H,-O-(CH2)6-CH
3
),0.55-0.51(m,2H,-O-CH2-CH2-CH
2
-Si(CH3)3),0.00(s,9H,-Si(CH
3
)3)
元素分析(C17H32O4Si)
C/62.96%,H/9.14%(理論値 C/62.15%,H/9.82%)
【0075】
[ステップ3]Sodium1-(3-(trimethylsilyl)-1-propyl)-4-(1-heptyl)sulfosuccinate(SC7-SiPSS)の合成
合成したSC7-SiPM(3.24g,9.87mmol)をエタノール100mLに溶解させ、NaHSO3/水(10.27g/100mL)と混合し、110℃で20時間攪拌、還流した。反応溶液を減圧濃縮し、真空乾燥を行った後にヘキサンを用いてろ過することで、未反応のNaHSO3を除去した。ろ液を濃縮して得られた化合物から、展開溶媒がヘキサン:酢酸エチル=1:1のカラムクロマトグラフィーを用いて未反応の中間生成物を除去し、その後展開溶媒をメタノールに変えて精製し、白色固体のSC7-SiPSS(1.84g、収率43.2%)を得た。
【0076】
SC7-SiPSS
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS)δH/ppm:4.32(m,1H,-CH2-CH(SO3Na)-),4.15-4.11(m,2H,-O-CH
2
-CH2-CH2-Si(CH3)3),4.00-4.05(m,2H,-O-CH
2
-(CH2)5-CH3),3.22-3.11(m,2H,-CH(SO3Na)-CH
2
-),1.59-1.61(m,4H,-O-CH2-CH
2
-CH2-Si(CH3)3,-O-CH2-CH
2
-(CH2)4-CH3),1.29-1.28(m,8H,-O-CH2-CH2-(CH
2
)4-CH3),0.91-0.87(m,3H,-O-(CH2)6-CH
3
),0.48-0.45(m,2H,-O-CH2-CH2-CH
2
-Si(CH3)3),0.00(s,9H,-Si(CH
3
)3)
IR(KBr)νmax/cm-1:2954(-CH3),2929,2857(-CH2),1735(C=O,-COO-),1247(O=S=O),1052(O=S=O)
元素分析(C17H33NaO7SSi)
C/45.34%,H/7.48%,S/7.23%(理論値 C/47.20%,H/7.69%,S/7.41%)
【0077】
(実施例4)SC8-SiPSSの合成
SC8-SiPSSは、以下の3つのステップを含む方法で合成した。
【0078】
[ステップ1]1-octylhydrogen maleate(SC8M)の合成
1-octanol(5.10g,52.0mmol)とmaleic anhydride(6.80g,52.0mmol)をヘキサン30mLに加え、90℃で24時間攪拌・還流した。反応後、分液漏斗を用いてジエチルエーテルとpHを2に調整したNaCl飽和水溶液により、反応溶液から未反応のmaleic anhydrideを抽出した。有機層に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水し、その後ろ過・減圧濃縮をした。得られた溶液を、展開溶媒がヘキサン:酢酸エチル=2:1のカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体SC8M(9.60g、収率80.2%)を得た。
【0079】
SC8M
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS)δH/ppm:6.45(dd,2H,-CH=CH-,J=13.6Hz,J=13.6Hz),4.31(t,2H,-O-CH
2
-,J=6.6Hz),1.77-1.71(m,2H,-O-CH2-CH
2
-),1.39-1.29(m,10H,-O-CH2-CH2-(CH
2
)5-CH3),0.92-0.89(m,3H,-O-(CH2)7-CH
3
)
【0080】
[ステップ2]1-(3-(trimethylsilyl)-1-propyl)-4-(1-octyl)maleate(SC8-SiPM)の合成
合成したSC8M(3.14g,13.6mmol)と3-(trimethylsilyl)propanol(1.85g,14.0mmol)とp-toluenesulfonicacid(1.30g,6.9mmol)をトルエン100mLに溶解させ、ディーンスターク装置を用いて120℃で24時間攪拌した。NaCl飽和水溶液により、反応溶液から未反応のp-toluenesulfonic acidを抽出した。有機層に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水し、その後ろ過・減圧濃縮をした。得られた溶液を、展開溶媒がヘキサン:酢酸エチル=4:1のカラムクロマトグラフィーで精製し、無色透明液体のSC8-SiPM(1.10g、収率23.6%)を得た。
【0081】
SC8-SiPM
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS)δH/ppm:6.87(s,2H,-CH=CH-),4.22-4.15(m,4H,-O-CH
2
-CH2-CH2-Si(CH3)3,-O-CH
2
-(CH2)6-CH3),1.70-1.65(m,4H,-O-CH2-CH
2
-CH2-Si(CH3)3,-O-CH2-CH
2
-(CH2)5-CH3),1.36-1.30(m,10H,-O-CH2-CH2-(CH
2
)5-CH3),0.91-0.88(m,3H,-O-(CH2)7-CH
3
),0.54-0.51(m,2H,-O-CH2-CH2-CH
2
-Si(CH3)3),0.00(s,9H,-Si(CH
3
)3)
【0082】
[ステップ3]Sodium 1-(3-(trimethylsilyl)-1-propyl)-4-(1-octyl)sulfosuccinate(SC8-SiPSS)の合成
合成したSC8-SiPM(1.10g,3.22mmol)をエタノール100mLに溶解させ、NaHSO3/水(3.10g/100mL)と混合し、110℃で24時間攪拌・還流した。反応溶液を減圧濃縮し、真空乾燥を行った後にヘキサンを用いてろ過することで、未反応のNaHSO3を除去した。ろ液を濃縮して得られた化合物から、展開溶媒がヘキサン:酢酸エチル=1:1のカラムクロマトグラフィーを用いて未反応の中間生成物を除去し、その後展開溶媒をメタノールに変えて精製し、白色固体のSC8-SiPSS(0.50g、収率34.7%)を得た。
【0083】
SC8-SiPSS
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS)δH/ppm:4.33(m,1H,-CH2-CH(SO3Na)-),4.15-4.11(m,2H,-O-CH
2
-CH2-CH2-Si(CH3)3),4.05-4.00(m,2H,-O-CH
2
-(CH2)6-CH3),3.20-3.11(m,2H,-CH(SO3Na)-CH
2
-),1.61-1.60(m,4H,-O-CH2-CH
2
-CH2-Si(CH3)3,-O-CH2-CH
2
-(CH2)5-CH3),1.29-1.28(m,10H,-O-CH2-CH2-(CH
2
)5-CH3),0.91-0.88(m,3H,-O-(CH2)7-CH
3
),0.48-0.45(m,2H,-O-CH2-CH2-CH
2
-Si(CH3)3),0.00(s,9H,-Si(CH
3
)3)
IR(KBr)νmax/cm-1:2925(-CH3),2856(-CH2),1733(C=O,-COO-),1245(O=S=O),1052(O=S=O)
元素分析(C18H35NaO7SSi)
C/46.14%,H/7.89%,S/7.32%(理論値 C/48.41%,H/7.90%,S/7.18%)
【0084】
(実施例5)SC9-SiPSSの合成
SC9-SiPSSは、以下の3つのステップを含む方法で合成した。
【0085】
[ステップ1]1-nonylhydrogen maleate(SC9M)の合成
1-nonanol(5.95g,41.2mmol)とmaleic anhydride(4.05g,41.2mmol)をヘキサン30mLに加え、90℃で24時間攪拌・還流した。反応後、分液漏斗を用いてジエチルエーテルとpHを2に調整したNaCl飽和水溶液により、反応溶液から未反応のmaleic anhydrideを抽出した。有機層に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水し、その後ろ過、減圧濃縮をした。得られた溶液を、展開溶媒がヘキサン:酢酸エチル=2:1のカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体SC9M(6.68g、収率67.0%)を得た。
【0086】
SC9M
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS)δH/ppm:6.45(dd,2H,-CH=CH-,J=12.6Hz,J=13.6Hz),4.31(t,2H,-O-CH
2
-,J=6.6Hz),1.77-1.71(m,2H,-O-CH2-CH
2
-),1.39-1.29(m,12H,-O-CH2-CH2-(CH
2
)6-CH3),0.91-0.88(m,3H,-O-(CH2)8-CH
3
)
【0087】
[ステップ2]1-(3-(trimethylsilyl)-1-propyl)-4-(1-nonyl)maleate(SC9-SiPM)の合成
合成したSC9M(3.00g,12.4mmol)と3-(trimethylsilyl)propanol(1.64g,12.4mmol)とp-toluenesulfonicacid(1.17g,6.2mmol)をトルエン100mLに溶解させ、ディーンスターク装置を用いて120℃で24時間攪拌した。NaCl飽和水溶液により、反応溶液から未反応のp-toluenesulfonic acidを抽出した。有機層に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水し、その後ろ過、減圧濃縮をした。得られた溶液を、展開溶媒がヘキサン:酢酸エチル=4:1のカラムクロマトグラフィーで精製し、無色透明液体のSC9-SiPM(2.52g、収率57.0%)を得た。
【0088】
SC9-SiPM
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS)δH/ppm:6.88(s,2H,-CH=CH-),4.22-4.16(m,4H,-O-CH
2
-CH2-CH2-Si(CH3)3,-O-CH
2
-(CH2)7-CH3),1.72-1.66(m,4H,-O-CH2-CH
2
-CH2-Si(CH3)3,-O-CH2-CH
2
-(CH2)6-CH3),1.39-1.29(m,12H,-O-CH2-CH2-(CH
2
)6-CH3),0.91-0.89(m,3H,-O-(CH2)8-CH
3
),0.55-0.52(m,2H,-O-CH2-CH2-CH
2
-Si(CH3)3),0.00(s,9H,-Si(CH
3
)3)
元素分析(C19H37NaO7SSi)
C/47.00%,H/8.08%,S/7.08%(理論値 C/49.54%,H/8.10%,S/6.96%)
【0089】
[ステップ3]Sodium1-(3-(trimethylsilyl)-1-propyl)-4-(1-octyl)sulfosuccinate(SC9-SiPSS)の合成
合成したSC9-SiPM(2.52g,7.06mmol)をエタノール100mLに溶解させ、NaHSO3/水(7.35g/100mL)と混合し、110℃で24時間攪拌、還流した。反応溶液を減圧濃縮し、真空乾燥を行った後にヘキサンを用いてろ過することで、未反応のNaHSO3を除去した。ろ液を濃縮して得られた化合物から、展開溶媒がヘキサン:酢酸エチル=1:1のカラムクロマトグラフィーを用いて未反応の中間生成物を除去し、その後展開溶媒をメタノールに変えて精製し、白色固体のSC9-SiPSS(2.17g、収率66.8%)を得た。
【0090】
SC9-SiPSS
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS)δH/ppm:4.33(m,1H,-CH2-CH(SO3Na)-),4.19-4.13(m,2H,-O-CH
2
-CH2-CH2-Si(CH3)3),4.05-3.99(m,2H,-O-CH
2
-(CH2)7-CH3),3.23-3.12(m,2H,-CH(SO3Na)-CH
2
-),1.62-1.60(m,4H,-O-CH2-CH
2
-CH2-Si(CH3)3,-O-CH2-CH
2
-(CH2)6-CH3),1.30-1.28(m,12H,-O-CH2-CH2-(CH
2
)6-CH3),0.91-0.88(m,3H,-O-(CH2)8-CH
3
),0.49-0.45(m,2H,-O-CH2-CH2-CH
2
-Si(CH3)3),0.00(s,9H,-Si(CH
3
)3)
IR(KBr)νmax/cm-1:2923(-CH3),2854(-CH2),1734(C=O,-COO-),1246(O=S=O),1053(O=S=O)
【0091】
(参考例1)BC
4P-SiPSSの合成
BC
4P-SiPSSは、以下の反応スキームに従い、3つのステップを含む方法で合成した。
【化44】
【0092】
[ステップ1]3-(trimethylsilyl)-1-propylhydrogenmaleate(SiPM)の合成
3-(trimethylsilyl)propan-1-ol(5.05g,38.18mmol)とmaleic anhydride(5.02g,75.57mmol)を90℃で24時間攪拌、還流した。反応後、分液ロートを用いて反応溶液からpHを1に調整した飽和NaCl水溶液とジエチルエーテルで未反応のmaleic anhydrideを抽出した。有機層に無水硫酸ナトリウムを加え、脱水した後にろ過、濃縮した。その後、HPLCを用いて精製し、無色透明液体のSiPM(3-(trimethylsilyl)-1-propylhydrogenmaleate)(3.18g、収率36.1%)を得た。
【0093】
SiPM
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS):δH/ppm:6.41(dd,2H,-CH=CH-,J=39.5Hz,J=12.6Hz),4.23(t,2H,-O-CH
2
-,J=7.2Hz),1.72-1.66(m,2H,-O-CH2-CH
2
-),0.52-0.49(m,2H,-CH
2
-C(CH3)3),0.00(s,9H,-Si(CH
3
)3)
IR(KBr)νmax/cm-1:3192(-OH),2954(C-H),1734(C=O,-COO-),1631(C=C)
【0094】
[ステップ2]1-(3-(trimethylsilyl)-1-propyl)-4-(4,4-dimethylpent-1-yl)fumarate(BC4P-SiPF)の合成
次に、合成した3-(trimethylsilyl)-1-propylhydrogenmaleate (3.18g,13.80mmol)、4,4-dimethylpentan-1-ol(1.61g,13.86mmol)、4-Dimethylaminopyridine(DMAP)(1.69g,13.83mmol)、及び1-(3-Dimethylaminopropyl)-3-ethylcarbodiimidehydrochloride(EDC)(3.34g,17.42mmol)を室温で24時間攪拌した。反応溶液を濃縮後に50℃で24時間真空乾燥させ、トルエンを用いたろ過により、析出した固体を除去した。ろ液を濃縮した後に、展開溶媒にトルエンを用いてカラムクロマトグラフィーによって精製し、無色透明液体のBC4P-SiPF(1-(3-(trimethylsilyl)-1-propyl)-4-(4,4-dimethylpent-1-yl)fumarate)(4.53g、収率42.2%)を得た。
【0095】
BC4P-SiPF
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS):δH/ppm:6.85(s,2H,-CH=CH-),4.17(t,2H,-O-CH
2
-CH2-CH2-Si(CH3)3,J=6.9Hz),4.15(t,2H,-O-CH
2
-CH2-CH2-C(CH3)3,J=6.9Hz),1.68-1.63(m,4H,-O-CH2-CH
2
-),1.25-1.22(m,2H,-CH
2
-C(CH3)3),0.89(s,9H,-C(CH
3
)3),0.53-0.49(m,2H,-CH
2
-Si(CH3)3),0.00(s,9H,-Si(CH
3
)3)
IR(KBr)νmax/cm-1:2955(C-H),1724(C=O,-COO-),1646(C=C)
【0096】
[ステップ3]Sodium1-(3-(trimethylsilyl)-1-propyl)-4-(4,4-dimethylpent-1-yl)sulfosuccinate(BC4P-SiPSS)の合成
次に、合成した1-(3-(trimethylsilyl)-1-propyl)-4-(4,4-dimethylpent-1-yl)fumarate(3.04g,4.89mmol)を、1,4-ジオキサン(75mL)、2-プロパノール(75mL)に溶解させ、NaHSO3/水(7.59g,49.1mmol/75mL)を加えた後、110℃で24時間攪拌、還流した。反応溶液を濃縮後に50℃で24時間真空乾燥させ、ジクロロメタンを用いたろ過により未反応のNaHSO3を除去した。ろ液を濃縮した後に、トルエンを展開溶媒に用いたカラムクロマトグラフィーによって未反応の中間生成物を除去し、その後メタノールを展開溶媒に用いて白色固体を得た。得られた化合物を濃縮し、真空オーブン中で24時間乾燥させ、白色固体のSodium1-(3-(trimethylsilyl)-1-propyl)-4-(4,4-dimethylpent-1-yl)sulfosuccinate(0.97g、収率38.5%)を得た。
【0097】
BC4P-SiPSS
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS):δH/ppm:4.36-4.33(m,1H,-CH2-CH(SO3Na)-),4.18-4.13(m,2H,-O-CH
2
-CH2-CH2-Si(CH3)3),4.05-4.00(m,2H,-O-CH
2
-CH2-CH2-C(CH3)3),3.24-3.12(m,2H,-CH(SO3Na)-CH
2
-),1.65-1.55(m,4H,-O-CH2-CH
2
-),1.22-1.17(m,2H,-CH
2
-C(CH3)3),0.89(s,9H,-C(CH
3
)3),0.50-0.45(m,2H,-CH
2
-Si(CH3)3),0.00(s,9H,-Si(CH
3
)3)
IR(KBr)νmax/cm-1:2952(C-H),1736(C=O,-COO-),1248(O=S=O),1055(O=S=O)
【0098】
[界面活性剤Mg(SC
n-SiPSS)
2の合成]
界面活性剤Mg(SC
n-SiPSS)
2(n=5~9)は、それぞれ以下のスキームにしたがって合成した。以下、実施例6、実施例7、実施例8、実施例9、及び実施例10の界面活性剤の合成操作をそれぞれ詳細に示す。
【化45】
【0099】
(実施例6)Mg(SC5-SiPSS)2の合成
実施例1に記載の方法でSC5-SiPSSを合成した。SC5-SiPSS(0.7300g,1.80mmol)を最小量のエタノール(5mL)に溶解させ、飽和Mg(NO3)2溶液5mLに加えて24時間攪拌した。その後、分液漏斗を用いてトルエン中に目的物を抽出し、水層を除去後、飽和MgCl2溶液を添加して、未反応のSC5-SiPSSを水層に抽出して除去した。有機層に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水し、その後ろ過・減圧濃縮をして、白色固体のMagnesium1-(3-(trimethylsilyl)-1-propyl)-4-(1-pentyl)sulfosuccinate(Mg(SC5-SiPSS)2)(0.6195g、収率87.2%)を得た。
【0100】
Mg(SC5-SiPSS)2
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS)δH/ppm:4.34(m,1H,-CH2-CH(SO3Mg)-),4.17-4.13(m,2H,-O-CH
2
-CH2-CH2-Si(CH3)3),4.05-4.01(m,2H,-O-CH
2
-(CH2)3-CH3),3.23-3.13(m,2H,-CH(SO3Mg)-CH
2
-),1.61-1.60(m,4H,-O-CH2-CH
2
-CH2-Si(CH3)3,-O-CH2-CH
2
-(CH2)2-CH3),1.33-1.32(m,4H,-O-CH2-CH2-(CH
2
)2-CH3),0.93-0.89(m,3H,-O-(CH2)4-CH
3
),0.49-0.45(m,2H,-O-CH2-CH2-CH
2
-Si(CH3)3),0.00(s,9H,-Si(CH
3
)3)
元素分析(C30H58O14S2Si2Mg)
C/45.54%,H/7.28%,S/8.00%(理論値 C/45.76%,H/7.43%,S/8.15%)
【0101】
(実施例7)Mg(SC6-SiPSS)2の合成
実施例2に記載の方法でSC6-SiPSSを合成した。SC6-SiPSS(0.7522g,1.80mmol)を最小量のエタノール(5mL)に溶解させ、飽和Mg(NO3)2溶液5mLに加えて24時間攪拌した。その後、分液漏斗を用いてトルエン中に目的物を抽出し、水層を除去後、飽和MgCl2溶液を添加して、未反応のSC6-SiPSSを水層に抽出して除去した。有機層に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水し、その後ろ過・減圧濃縮をして、白色固体のMagnesium 1-(3-(trimethylsilyl)-1-propyl)-4-(1-hexyl) sulfosuccinate(Mg(SC6-SiPSS)2)(0.5217g、収率71.2%)を得た。
【0102】
Mg(SC6-SiPSS)2
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS)δH/ppm:4.33(m,1H,-CH2-CH(SO3Mg)-),4.19-4.13(m,2H,-O-CH
2
-CH2-CH2-Si(CH3)3),4.06-4.01(m,2H,-O-CH
2
-(CH2)4-CH3),3.23-3.12(m,2H,-CH(SO3Mg)-CH
2
-),1.61-1.60(m,4H,-O-CH2-CH
2
-CH2-Si(CH3)3,-O-CH2-CH
2
-(CH2)3-CH3),1.33-1.32(m,6H,-O-CH2-CH2-(CH
2
)3-CH3),0.90-0.89(m,3H,-O-(CH2)5-CH
3
),0.49-0.47(m,2H,-O-CH2-CH2-CH
2
-Si(CH3)3),0.00(s,9H,-Si(CH
3
)3)
元素分析(C32H62O14S2Si2Mg)
C/45.92%,H/7.56%,S/6.40%(理論値 C/47.13%,H/7.66%,S/7.86%)
【0103】
(実施例8)Mg(SC7-SiPSS)2の合成
実施例3に記載の方法でSC7-SiPSSを合成した。SC7-SiPSS(2.0230g,4.68mmol)を最小量のエタノール(5mL)に溶解させ、飽和Mg(NO3)2溶液5mLに加えて24時間攪拌した。その後、分液漏斗を用いてトルエン中に目的物を抽出し、水層を除去後、飽和MgCl2溶液を添加して、未反応のSC7-SiPSSを水層に抽出して除去した。有機層に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水し、その後ろ過・減圧濃縮をして、白色固体のMagnesium 1-(3-(trimethylsilyl)-1-propyl)-4-(1-heptyl)sulfosuccinate(Mg(SC7-SiPSS)2)(1.2369g、収率62.7%)を得た。
【0104】
Mg(SC7-SiPSS)2
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS)δH/ppm:4.32(m,1H,-CH2-CH(SO3Mg)-),4.15-4.11(m,2H,-O-CH
2
-CH2-CH2-Si(CH3)3),4.00-4.05(m,2H,-O-CH
2
-(CH2)5-CH3),3.22-3.11(m,2H,-CH(SO3Mg)-CH
2
-),1.59-1.61(m,4H,-O-CH2-CH
2
-CH2-Si(CH3)3,-O-CH2-CH
2
-(CH2)4-CH3),1.29-1.28(m,8H,-O-CH2-CH2-(CH
2
)4-CH3),0.91-0.87(m,3H,-O-(CH2)6-CH
3
),0.48-0.45(m,2H,-O-CH2-CH2-CH
2
-Si(CH3)3),0.00(s,9H,-Si(CH
3
)3)
IR(KBr)νmax/cm-1:2954(-CH3),2857(-CH2),1737(C=O,-COO-),1467(O=S=O),1062(O=S=O)
元素分析(C34H66O14S2Si2Mg)
C/45.92%,H/7.56%,S/6.40%(理論値 C/48.41%,H/7.88%,S/7.60%)
【0105】
(実施例9)Mg(SC8-SiPSS)2の合成
実施例4に記載の方法で得たSC8-SiPSSを合成した。SC8-SiPSS(0.6669g,1.49mmol)を最小量のエタノール(5mL)に溶解させ、飽和Mg(NO3)2溶液5mLに加えて24時間攪拌した。その後、分液漏斗を用いてトルエン中に目的物を抽出し、水層を除去後、飽和MgCl2溶液を添加して、未反応のSC8-SiPSSを水層に抽出して除去した。有機層に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水し、その後ろ過・減圧濃縮をして、白色固体のMagnesium 1-(3-(trimethylsilyl)-1-propyl)-4-(1-octyl)sulfosuccinate(Mg(SC8-SiPSS)2)(0.4265g、収率65.5%)を得た。
【0106】
Mg(SC8-SiPSS)2
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS)δH/ppm:4.33(m,1H,-CH2-CH(SO3Mg)-),4.15-4.11(m,2H,-O-CH
2
-CH2-CH2-Si(CH3)3),4.05-4.00(m,2H,-O-CH
2
-(CH2)6-CH3),3.20-3.11(m,2H,-CH(SO3Mg)-CH
2
-),1.61-1.60(m,4H,-O-CH2-CH
2
-CH2-Si(CH3)3,-O-CH2-CH
2
-(CH2)5-CH3),1.29-1.28(m,10H,-O-CH2-CH2-(CH
2
)5-CH3),0.91-0.88(m,3H,-O-(CH2)8-CH
3
),0.48-0.45(m,2H,-O-CH2-CH2-CH
2
-Si(CH3)3),0.00(s,9H,-Si(CH
3
)3)
IR(KBr)νmax/cm-1:2925(-CH3),2856(-CH2),1733(C=O,COO-),1467(O=S=O),1332(O=S=O)
元素分析(C36H70O14S2Si2Mg)
C/46.75%,H/8.47%,S/6.20%(理論値 C/49.61%,H/8.10%,S/7.35%)
【0107】
(実施例10)Mg(SC9-SiPSS)2の合成
実施例5に記載の方法でSC9-SiPSSを合成した。SC9-SiPSS(0.4982g,1.08mmol)を最小量のエタノール(5mL)に溶解させ、飽和Mg(NO3)2溶液5mLに加えて24時間攪拌した。その後、分液漏斗を用いてトルエン中に目的物を抽出し、水層を除去後、飽和MgCl2溶液を添加して、未反応のSC9-SiPSSを水層に抽出して除去した。有機層に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水し、その後ろ過・減圧濃縮をして、白色固体のMagnesium 1-(3-(trimethylsilyl)-1-propyl)-4-(1-nonyl)sulfosuccinate(Mg(SC9-SiPSS)2)(0.3244g、収率66.7%)を得た。
【0108】
Mg(SC9-SiPSS)2
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS)δH/ppm:4.33(m,1H,-CH2-CH(SO3Mg)-),4.19-4.13(m,2H,-O-CH
2
-CH2-CH2-Si(CH3)3),4.05-3.99(m,2H,-O-CH
2
-(CH2)7-CH3),3.23-3.12(m,2H,-CH(SO3Mg)-CH
2
-),1.62-1.60(m,4H,-O-CH2-CH
2
-CH2-Si(CH3)3,-O-CH2-CH
2
-(CH2)6-CH3),1.30-1.28(m,12H,-O-CH2-CH2-(CH
2
)6-CH3),0.91-0.88(m,3H,-O-(CH2)8-CH
3
),0.49-0.45(m,2H,-O-CH2-CH2-CH
2
-Si(CH3)3),0.00(s,9H,-Si(CH
3
)3)
IR(KBr)νmax/cm-1:2925(-CH3),2866(-CH2),1737(C=O,COO-),1467(O=S=O),1332(O=S=O)
元素分析(C38H74O14S2Si2Mg)
C/50.86%,H/8.41%,S/5.94%(理論値 C/50.74%,H/8.29%,S/7.13%)
【0109】
[界面活性剤Ca(SC
n-SiPSS)
2の合成]
界面活性剤Ca(SC
n-SiPSS)
2(n=5~9)は、それぞれ以下のスキームにしたがって合成した。以下、実施例11、実施例12、実施例13、実施例14、及び実施例15の界面活性剤の合成操作をそれぞれ詳細に示す。
【化46】
【0110】
(実施例11)Ca(SC5-SiPSS)2の合成
実施例1に記載の方法でSC5-SiPSSを合成した。SC5-SiPSS(0.8301g,2.05mmol)を最小量のエタノール(5mL)に溶解させ、飽和Ca(NO3)2溶液5mLに加えて24時間攪拌した。その後、分液漏斗を用いてトルエン中に目的物を抽出し、水層を除去後、飽和CaCl2溶液を添加して、未反応のSC5-SiPSSを水層に抽出して除去した。有機層に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水し、その後ろ過・減圧濃縮をして、白色固体のCalcium 1-(3-(trimethylsilyl)-1-propyl)-4-(1-pentyl)sulfosuccinate(Ca(SC5-SiPSS)2)(0.2041g、収率24.8%)を得た。
【0111】
Ca(SC5-SiPSS)2
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS)δH/ppm:4.40m,1H,-CH2-CH(SO3Ca)-),4.17-4.13(m,2H,-O-CH
2
-CH2-CH2-Si(CH3)3),4.05-4.01(m,2H,-O-CH
2
-(CH2)3-CH3),3.23-3.13(m,2H,-CH(SO3Ca)-CH
2
-),1.61-1.60(m,4H,-O-CH2-CH
2
-CH2-Si(CH3)3,-O-CH2-CH
2
-(CH2)2-CH3),1.33-1.32(m,4H,-O-CH2-CH2-(CH
2
)2-CH3),0.93-0.89(m,3H,-O-(CH2)4-CH
3
),0.49-0.45(m,2H,-O-CH2-CH2-CH
2
-Si(CH3)3),0.00(s,9H,-Si(CH
3
)3)
元素分析(C30H58O14S2Si2Ca)
C/45.92%,H/7.56%,S/6.40%(理論値 C/44.86%,H/7.28%,S/7.98%)
【0112】
(実施例12)Ca(SC6-SiPSS)2の合成
実施例2に記載の方法でSC6-SiPSSを合成した。SC6-SiPSS(0.7046g,1.68mmol)を最小量のエタノール(5mL)に溶解させ、飽和Ca(NO3)2溶液5mLに加えて24時間攪拌した。その後、分液漏斗を用いてトルエン中に目的物を抽出し、水層を除去後、飽和CaCl2溶液を添加して、未反応のSC6-SiPSSを水層に抽出して除去した。有機層に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水し、その後ろ過・減圧濃縮をして、白色固体のCalcium 1-(3-(trimethylsilyl)-1-propyl)-4-(1-hexyl)sulfosuccinate(Ca(SC6-SiPSS)2)(0.3450g、収率49.3%)を得た。
【0113】
Ca(SC6-SiPSS)2
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS)δH/ppm:4.33(m,1H,-CH2-CH(SO3Ca)-),4.19-4.13(m,2H,-O-CH
2
-CH2-CH2-Si(CH3)3),4.06-4.01(m,2H,-O-CH
2
-(CH2)4-CH3),3.23-3.12(m,2H,-CH(SO3Ca)-CH
2
-),1.61-1.60(m,4H,-O-CH2-CH
2
-CH2-Si(CH3)3,-O-CH2-CH
2
-(CH2)3-CH3),1.33-1.32(m,6H,-O-CH2-CH2-(CH
2
)3-CH3),0.90-0.89(m,3H,-O-(CH2)5-CH
3
),0.49-0.47(m,2H,-O-CH2-CH2-CH
2
-Si(CH3)3),0.00(s,9H,-Si(CH
3
)3)
元素分析(C32H62O14S2Si2Ca)
C/45.33%,H/7.34%,S/7.02%(理論値 C/46.24%,H/7.51%,S/7.72%)
【0114】
(実施例13)Ca(SC7-SiPSS)2の合成
実施例3に記載の方法でSC7-SiPSSを合成した。SC7-SiPSS(0.7128g,1.65mmol)を最小量のエタノール(5mL)に溶解させ、飽和Ca(NO3)2溶液5mLに加えて24時間攪拌した。その後、分液漏斗を用いてトルエン中に目的物を抽出し、水層を除去後、飽和CaCl2溶液を添加して、未反応のSC7-SiPSSを水層に抽出して除去した。有機層に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水し、その後ろ過・減圧濃縮をして、白色固体のCalcium 1-(3-(trimethylsilyl)-1-propyl)-4-(1-heptyl) sulfosuccinate(Ca(SC7-SiPSS)2)(0.3240g、収率45.8%)を得た。
【0115】
Ca(SC7-SiPSS)2
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS)δH/ppm:4.34(m,1H,-CH2-CH(SO3Ca)-),4.16-4.12(m,2H,-O-CH
2
-CH2-CH2-Si(CH3)3),4.00-4.05(m,2H,-O-CH
2
-(CH2)5-CH3),3.22-3.11(m,2H,-CH(SO3Ca)-CH
2
-),1.59-1.61(m,4H,-O-CH2-CH
2
-CH2-Si(CH3)3,-O-CH2-CH
2
-(CH2)4-CH3),1.29-1.28(m,8H,-O-CH2-CH2-(CH
2
)4-CH3),0.91-0.87(m,3H,-O-(CH2)6-CH
3
),0.48-0.45(m,2H,-O-CH2-CH2-CH
2
-Si(CH3)3),0.00(s,9H,-Si(CH
3
)3)
元素分析(C34H66O14S2Si2Ca)
C/45.92%,H/7.56%,S/6.80%(理論値 C/47.52%,H/7.74%,S/7.46%)
【0116】
(実施例14)Ca(SC8-SiPSS)2の合成
実施例4に記載の方法でSC8-SiPSSを合成した。SC8-SiPSS(0.7711g,1.73mmol)を最小量のエタノール(5mL)に溶解させ、飽和Ca(NO3)2溶液5mLに加えて24時間攪拌した。その後、分液漏斗を用いてトルエン中に目的物を抽出し、水層を除去後、飽和CaCl2溶液を添加して、未反応のSC8-SiPSSを水層に抽出して除去した。有機層に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水し、その後ろ過・減圧濃縮をして、白色固体のCalcium 1-(3-(trimethylsilyl)-1-propyl)-4-(1-octyl)sulfosuccinate(Ca(SC8-SiPSS)2)(0.4884g、収率63.8%)を得た。
【0117】
Ca(SC8-SiPSS)2
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS)δH/ppm:4.33(m,1H,-CH2-CH(SO3Ca)-),4.15-4.11(m,2H,-O-CH
2
-CH2-CH2-Si(CH3)3),4.05-4.00(m,2H,-O-CH
2
-(CH2)6-CH3),3.20-3.11(m,2H,-CH(SO3Ca)-CH
2
-),1.61-1.60(m,4H,-O-CH2-CH
2
-CH2-Si(CH3)3,-O-CH2-CH
2
-(CH2)5-CH3),1.29-1.28(m,10H,-O-CH2-CH2-(CH
2
)5-CH3),0.91-0.88(m,3H,-O-(CH2)7-CH
3
),0.48-0.45(m,2H,-O-CH2-CH2-CH
2
-Si(CH3)3),0.00(s,9H,-Si(CH
3
)3)
元素分析(C36H70O14S2Si2Ca)
C/47.83%,H/7.530%,S/6.45%(理論値 C/48.73%,H/7.95%,S/7.23%)
【0118】
(実施例15)Ca(SC9-SiPSS)2の合成
実施例5に記載の方法でSC9-SiPSSを合成した。SC9-SiPSS(1.2218g,2.65mmol)を最小量のエタノール(5mL)に溶解させ、飽和Ca(NO3)2溶液5mLに加えて24時間攪拌した。その後、分液漏斗を用いてトルエン中に目的物を抽出し、水層を除去後、飽和CaCl2溶液を添加して、未反応のSC9-SiPSSを水層に抽出して除去した。有機層に無水硫酸マグネシウムを添加して脱水し、その後ろ過・減圧濃縮をして、白色固体のCalcium 1-(3-(trimethylsilyl)-1-propyl)-4-(1-nonyl)sulfosuccinate(Ca(SC9-SiPSS)2)(0.6576g、収率54.2%)を得た。
【0119】
Ca(SC9-SiPSS)2
1HNMR(500MHz,CDCl3,TMS)δH/ppm:4.36(m,1H,-CH2-CH(SO3Ca)-),4.19-4.13(m,2H,-O-CH
2
-CH2-CH2-Si(CH3)3),4.05-3.99(m,2H,-O-CH
2
-(CH2)7-CH3),3.23-3.12(m,2H,-CH(SO3Ca)-CH
2
-),1.62-1.60(m,4H,-O-CH2-CH
2
-CH2-Si(CH3)3,-O-CH2-CH
2
-(CH2)6-CH3),1.30-1.28(m,12H,-O-CH2-CH2-(CH
2
)6-CH3),0.91-0.88(m,3H,-O-(CH2)8-CH
3
),0.49-0.45(m,2H,-O-CH2-CH2-CH
2
-Si(CH3)3),0.00(s,9H,-Si(CH
3
)3)
元素分析(C38H74O14S2Si2Ca)
C/50.86%,H/8.41%,S/5.94%(理論値 C/49.86%,H/8.15%,S/7.01%)
【0120】
[界面活性剤の常温(25℃)での使用可能性]
実施例1~15において、最終生成物(界面活性剤)は、白色個体として得られたが、これを25℃の水中に溶解することで、常温での使用可能性を評価した。具体的には、実施例1~15で得られた化合物のCMCの2倍となる量を、25℃の蒸留水に添加して攪拌したところ、蒸留水に溶解し不溶分は観察されなかった。よって、実施例1~15の界面活性剤は常温で使用可能であることが分かった。
【0121】
[界面活性剤の表面張力低下能力の評価]
実施例1の界面活性剤[SC
5-SiPSS]、実施例2の界面活性剤[SC
6-SiPSS]、実施例3の界面活性剤[SC
7-SiPSS]、実施例4の界面活性剤[SC
8-SiPSS]、実施例5の界面活性剤[SC
9-SiPSS]、実施例6の界面活性剤[Mg(SC
5-SiPSS)
2]、実施例7の界面活性剤[Mg(SC
6-SiPSS)
2]、実施例8の界面活性剤[Mg(SC
7-SiPSS)
2]、実施例9の界面活性剤[Mg(SC
8-SiPSS)
2]、実施例10の界面活性剤[Mg(SC
9-SiPSS)
2]、実施例11の界面活性剤[Ca(SC
5-SiPSS)
2]、実施例12の界面活性剤[Ca(SC
6-SiPSS)
2]、実施例13の界面活性剤[Ca(SC
7-SiPSS)
2]、実施例14の界面活性剤[Ca(SC
8-SiPSS)
2]、実施例15の界面活性剤[Ca(SC
9-SiPSS)
2]、参考例1の界面活性剤[BC
4P-SiPSS]の水溶液の表面張力を25℃条件において、Whilhelmy法により測定した。
図1は、実施例1~5及び参考例1の界面活性剤が各種濃度であるときの表面張力を示す図である。
図2は、実施例6~10の界面活性剤が各種濃度であるときの表面張力を示す図である。
図3は、実施例11~15の界面活性剤が各種濃度であるときの表面張力を示す図である。
【0122】
実施例1~5及び参考例1の界面活性剤の、ミセル形成濃度(CMC)、CMCにおける表面張力値(γ
CMC)、CMCにおける分子占有面積(A
min)を表1に示す。なお、A
minは、Gibbsの吸着式と
図1の傾きから算出した。表1のCMCからわかるように、界面活性剤の直鎖炭化水素基の炭素数が増加すると疎水性が強まりCMCが急激に低下すること、そして最低到達表面張力がわずかに低下することが確認された。また、参考例1のBC
4-SiPSSの物性と比較すると、疎水基部の炭素数と同程度なるSC
7-SiPSSやSC
6-SiPSSがもっとも近いCMCとγ
CMCを示した。
【0123】
【0124】
実施例6~10及び実施例11~15の界面活性剤のミセル形成濃度(CMC)、CMCにおける表面張力値(γ
CMC)、CMCにおける分子占有面積(A
min)を表2に示す。なお、A
minは、Gibbsの吸着式と
図2及び3の傾きからそれぞれ算出した。表2のCMCから分かるように、対イオンがマグネシウム又はカルシウムである界面活性剤であっても、界面活性剤の直鎖炭化水素基の炭素数が増加するとCMCが急激に低下すること、そして最低到達表面張力がわずかに低下することが確認された。
【0125】
【0126】
対イオンがナトリウムである実施例1~5の界面活性剤と、対イオンがマグネシウム又はカルシウムである実施例6~15の界面活性剤を比較すると、対イオンがマグネシウム又はカルシウムである界面活性剤のCMCは、対イオンがナトリウムである界面活性剤のCMCよりも小さい値を示した。また、対イオンがマグネシウム又はカルシウムである界面活性剤の分子占有面積Aminは、対イオンがナトリウムである界面活性剤の分子占有面積の2倍よりも小さい値を示した。これは、対イオンがマグネシウム又はカルシウムである界面活性剤は、1分子内に2つのコハク酸ジエステルスルホン酸骨格を有しており、対イオンがマグネシウム又はカルシウムである界面活性剤は、コハク酸ジエステルスルホン酸骨格あたりの分子占有面積Aminが、対イオンがナトリウムである界面活性剤の分子占有面積よりも小さい値となる。これにより、対イオンをマグネシウム又はカルシウムのような二価カチオンへ交換することにより、界面活性剤分子の密なパッキングが可能となり、疎水性密度が増大し、単一の分子であっても表面張力低下効果を示すことが確認された。
【0127】
実施例1~15の各界面活性剤の、直鎖炭化水素基及びトリメチルシリル基末端を有する炭化水素基に含まれる、炭素原子及びケイ素原子の総数(NC+Si)と、臨界ミセル濃度(CMC)の関係を評価した。
【0128】
図4は、実施例1~5[SC
n-SiPSS]、実施例6~10[Mg(SC
n-SiPSS)
2]、及び実施例11~15[Ca(SC
n-SiPSS)
2]の界面活性剤の、臨界ミセル濃度(CMC)の自然対数値と、直鎖炭化水素基及びトリメチルシリル基末端を有する炭化水素基に含まれる、炭素原子及びケイ素原子の総数(N
C+Si)の関係を示すグラフである。
図4の結果から、N
C+Siの値が12~14(直鎖炭化水素基の炭素原子数が5~7)と、N
C+Siの値が14~16(直鎖炭化水素基の炭素原子数が7~9)とで、傾きの異なる2つの直線関係が得られた。ここで、一般に、界面活性剤のCMCは、下記のKlevensの式(1)に従う。
Log(CMC)=A-B・N
C+Si (1)
式(1)中、Aは界面活性剤の親水基の性質及び熱力学的寄与に依存する定数であり、Bは界面活性剤に含まれるメチレン基に依存する定数である。
図4のグラフから、実施例1~5、実施例6~10、及び実施例11~15の界面活性剤の、それぞれ2つの直線関係における、定数A及びBを求めた。
【0129】
表3に示すとおり、いずれの界面活性剤においても、直鎖炭化水素基の炭素数が7~9である界面活性の方が、直鎖炭化水素基の炭素数が5~7である界面活性剤よりも、定数Bが高い値を示した。
【0130】
【0131】
[界面活性剤の表面張力低下効率の評価]
実施例1~15の界面活性剤の表面張力低下効率を、πCMC/Log(CMC×1010)として算出した。πCMCは界面活性剤の濃度がCMCにおける表面圧(πCMC=γwater-γCMC、γwater:水の表面張力、γCMC:界面活性剤の濃度がCMCであるときの表面張力)であり、πCMC/Log(CMC×1010)は、界面活性剤の濃度が十分に小さい(10-10mol/L)時の表面圧を純水の表面張力と仮定したときの、界面活性剤の濃度が10-10mol/LからCMCまで変化する際の、表面圧の平均変化率を意味する。すなわち、πCMC/Log(CMC×1010)の値が大きいほど、表面張力低下効率がよいことを意味する。表4に、実施例1~15の界面活性剤のπCMC/Log(CMC×1010)を示した。
【0132】
【0133】
表4に示すとおり、界面活性剤の直鎖炭化水素基に含まれる炭素原子数の増加に伴い、πCMC/Log(CMC×1010)の値が増大した。また、直鎖炭化水素基に含まれる炭素原子数が同じ界面活性剤を対比すると、対イオンがナトリウムである界面活性剤よりも、対イオンがマグネシウム又はカルシウムである界面活性剤の方が、より大きいπCMC/Log(CMC×1010)の値を示した。
【0134】
図5は、実施例1~5[SC
n-SiPSS]、実施例6~10[Mg(SC
n-SiPSS)
2]、及び実施例11~15[Ca(SC
n-SiPSS)
2]の界面活性剤の、π
CMC/Log(CMC×10
10)の値と、直鎖炭化水素基及びトリメチルシリル基末端を有する炭化水素基に含まれる、炭素原子及びケイ素原子の総数(N
C+Si)の関係を示すグラフである。
図5によると、炭素原子及びケイ素原子の総数(N
C+Si)が14(直鎖炭化水素基の炭素数が7)を境に、表面張力低下効率がより大きく増大する傾向が示された。また、炭素原子及びケイ素原子の総数(N
C+Si)がいずれの値であっても、対イオンをナトリウムである界面活性剤よりも、対イオンがマグネシウム又はカルシウムである界面活性剤の方が、より大きいπ
CMC/Log(CMC×10
10)の値を示した。
【0135】
[界面活性剤の表面張力低下速度の評価]
実施例1の界面活性剤[SC5-SiPSS]、実施例2の界面活性剤[SC6-SiPSS]、実施例3の界面活性剤[SC7-SiPSS]、実施例4の界面活性剤[SC8-SiPSS]、実施例5の界面活性剤[SC9-SiPSS]、実施例6の界面活性剤[Mg(SC5-SiPSS)2]、実施例7の界面活性剤[Mg(SC6-SiPSS)2]、実施例8の界面活性剤[Mg(SC7-SiPSS)2]、実施例9の界面活性剤[Mg(SC8-SiPSS)2]、実施例10の界面活性剤[Mg(SC9-SiPSS)2]、実施例11の界面活性剤[Ca(SC5-SiPSS)2]、実施例12の界面活性剤[Ca(SC6-SiPSS)2]、実施例13の界面活性剤[Ca(SC7-SiPSS)2]、実施例14の界面活性剤[Ca(SC8-SiPSS)2]、実施例15の界面活性剤[Ca(SC9-SiPSS)2]、及び参考例の界面活性剤[BC4P-SiPSS]について、様々な濃度で調製した水溶液の最大泡圧法による動的表面張力の測定を25℃で行った。測定は、独国KRUSS社製のハンディ動的表面張力計BP50を用いて行った。
【0136】
図6、7、8、9、及び10は、それぞれ、各濃度における、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、及び実施例5の界面活性剤の表面張力と、表面寿命の関係を示す図である。横軸は表面寿命を示し、縦軸は表面張力を示す。
図11、12、13、14、及び15は、それぞれ、各濃度における、実施例6、実施例7、実施例8、実施例9、及び実施例10の界面活性剤の表面張力と、表面寿命の関係を示す図である。横軸は表面寿命を示し、縦軸は表面張力を示す。
図16、17、18、19、及び20は、それぞれ、各濃度における、実施例11、実施例12、実施例13、実施例14、及び実施例15の界面活性剤の表面張力と、表面寿命の関係を示す図である。横軸は表面寿命を示し、縦軸は表面張力を示す。
【0137】
最大泡圧法による動的表面張力測定は、液体中(水中に)に挿入したキャピラリに気体を導入し、気泡を発生させたときの最大圧力を測定することで表面張力を求める方法である。液中のキャピラリから気泡を生じさせると、細管内の圧力は徐々に変化し、気泡の曲率半径とキャピラリの半径が等しくなったときに圧力が最大となり、連続して気体を導入すると気泡自体のサイズは大きくなる一方で圧力は低下するようになる。気体の導入を連続して行うと、圧力は周期的に変化するようになり、圧力の最小値から圧力の最大値までの時間(気液界面が形成され始めてから圧力が最大になるまでの時間)を表面寿命という(表面形成時間、気泡の寿命、ライフタイム等とも呼ばれる)。界面活性剤の濃度を一定にして、気体の導入速度を変化させることで、様々な表面寿命における表面張力を求めることができる。また、濃度を変化させてこれを繰り返すことで、表面張力と表面寿命の関係が界面活性剤の濃度毎に得られ、これを表示したのが
図6~20となる。なお、表面張力は表面寿命が大きくなるに従って平衡値に達するようになる。
【0138】
図6、7、8、9、及び10に示されるように、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、及び実施例5の全ての界面活性剤において、濃度が高いほど、表面張力が平衡値に達するのが速くなることが判明した。
図11、12、13、14及び15に示されるように、実施例6、実施例7、実施例8、実施例9、及び実施例10の全ての界面活性剤において、濃度が高いほど、表面張力が平衡値に達するのが速くなることが判明した。
図16、17、18、19、及び20に示されるように、実施例11、実施例12、実施例13、実施例14、及び実施例15の全ての界面活性剤において、濃度が高いほど、表面張力が平衡値に達するのが速くなることが判明した。
【0139】
得られた動的表面張力の値から、各界面活性剤の各濃度において、以下の式を用いて半減値γτを求めた。
γτ=(γ0+γ∞)/2
ここで、γ0は初期(表面寿命=15ms)の表面張力値、γ∞は平衡表面張力値(静的表面張力)であり、γτは表面張力値の総減少量の半分まで減少したときの表面張力値である。τ(特性時間)は、表面張力値がγτとなる表面寿命として求めた。なお、測定開始時の15msの時点で動的表面張力値が下がりきっている系に関しては、γ0を水の表面張力値(72mN/m)として算出した。
【0140】
図21は、実施例1~5及び参考例の界面活性剤の特性時間τと、界面活性剤の濃度の関係を示す図である。
図21中の横軸は、界面活性剤の濃度を、縦軸は特性時間τを示す。
図22は、実施例1~5及び参考例の界面活性剤の特性時間τと、界面活性剤の濃度を臨界ミセル濃度(CMC)で補正したときの値の関係を表す図である。
図22中の横軸は、界面活性剤の濃度をCMCで補正した換算濃度を、縦軸は特性時間τを示す。
【0141】
図21の結果から、実施例1~5の界面活性剤は、臨界ミセル濃度(CMC)に大きな違いがあるにも関わらず、直鎖炭化水素鎖の炭素数が7以上である界面活性剤では、特性時間τに大きな差はなく、いずれも非常に短い特性時間、すなわち非常に速い吸着挙動を示した。
【0142】
一方で、
図22のとおり、界面活性剤の濃度を、各界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)基準とした換算濃度で表しなおし、疎水性増大やミセル形成の影響を除外すると、特性時間τは直鎖炭化水素鎖長が短い方が小さくなり、直鎖炭化水素鎖の炭素数が5~7のとき、ミセル形成前の条件(換算濃度の値が1より小さい領域)でも非常に短い特性時間、すなわち非常に速い吸着挙動を示した。
【0143】
図25は、実施例6~10の界面活性剤の特性時間τと、界面活性剤の濃度の関係を示す図である。
図25中の横軸は、界面活性剤の濃度を、縦軸は特性時間τを示す。
図26は、実施例6~10の界面活性剤の特性時間τと、界面活性剤の濃度を臨界ミセル濃度(CMC)で補正したときの値の関係を表す図である。
図26中の横軸は、界面活性剤の濃度をCMCで補正した換算濃度を、縦軸は特性時間τを示す。
【0144】
図29は、実施例11~15の界面活性剤の特性時間τと、界面活性剤の濃度の関係を示す図である。
図29中の横軸は、界面活性剤の濃度を、縦軸は特性時間τを示す。
図30は、実施例11~15の界面活性剤の特性時間τと、界面活性剤の濃度を臨界ミセル濃度(CMC)で補正したときの値の関係を表す図である。
図30中の横軸は、界面活性剤の濃度をCMCで補正した換算濃度を、縦軸は特性時間τを示す。
【0145】
図25及び29の結果から、対イオンがマグネシウム又はカルシウムである界面活性剤も、界面活性剤の濃度が高くなるにつれて、特性時間が短くなることが示された。
【0146】
図21、25及び29の結果を対比すると、対イオンがマグネシウム又はカルシウムである界面活性剤の特性時間τは、特に界面活性剤の濃度が0.1mM付近では、対イオンがナトリウムである界面活性剤の特性時間よりも小さい値となり、吸着速度が増大していることが確認された。
【0147】
一方で、界面活性剤濃度を各界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)基準とした換算濃度で表しなおし、疎水性増大やミセル形成の影響を除外すると、
図22、26、及び30の結果から、臨界ミセル濃度を基準とした場合、対イオンの種類による特性時間の差は小さく、吸着速度は対イオンの価数に影響を受けないことが示された。
【0148】
次に、得られた特性時間τから、表面張力低下速度R
1/2を以下の式を用いて求めた。
R
1/2=(γ
0―γ
∞)/(2τ)
図23は、実施例1~5及び参考例の界面活性剤の表面張力低下速度R
1/2と、界面活性剤の濃度の関係を示す図である。
図23中の横軸は、界面活性剤の濃度を、縦軸は表面張力低下速度R
1/2を示す。
図24は、実施例1~5及び参考例の界面活性剤の表面張力低下速度R
1/2と、界面活性剤の濃度を臨界ミセル濃度(CMC)で補正したときの値の関係を表す図である。
図24中の横軸は、界面活性剤の濃度をCMCで補正した換算濃度を、縦軸は表面張力低下速度R
1/2を示す。
【0149】
図23の結果から、各界面活性剤の表面張力低下速度R
1/2を、同じ濃度で比較した場合、直鎖炭化水素鎖の炭素鎖数が7以上である実施例3、実施例4、及び実施例5の界面活性剤において、大きなR
1/2、すなわち非常に速い表面張力低下速度が得られた。一方で、
図24のとおり、界面活性剤の濃度を、各界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)基準とした換算濃度で表しなおし、疎水性増大やミセル形成の影響を除外すると、界面活性剤の直鎖炭化水素鎖の炭素数が短い、実施例1、実施例2、及び実施例3の界面活性剤において、R
1/2は大きくなり、ミセル形成前の条件(換算濃度の値が1よりも小さい領域)でも非常に速い表面張力低下速度が得られることが確認された。
【0150】
図27は、実施例6~10の界面活性剤の表面張力低下速度R
1/2と、界面活性剤の濃度の関係を示す図である。
図2中の横軸は、界面活性剤の濃度を、縦軸は表面張力低下速度R
1/2を示す。
図28は、実施例6~10の界面活性剤の表面張力低下速度R
1/2と、界面活性剤の濃度を臨界ミセル濃度(CMC)で補正したときの値の関係を表す図である。
図28中の横軸は、界面活性剤の濃度をCMCで補正した換算濃度を、縦軸は表面張力低下速度R
1/2を示す。
【0151】
図31は、実施例11~15の界面活性剤の表面張力低下速度R
1/2と、界面活性剤の濃度の関係を示す図である。
図31中の横軸は、界面活性剤の濃度を、縦軸は表面張力低下速度R
1/2を示す。
図32は、実施例11~15の界面活性剤の表面張力低下速度R
1/2と、界面活性剤の濃度を臨界ミセル濃度(CMC)で補正したときの値の関係を表す図である。
図32中の横軸は、界面活性剤の濃度をCMCで補正した換算濃度を、縦軸は表面張力低下速度R
1/2を示す。
【0152】
図27及び31の結果から、対イオンがマグネシウム又はカルシウムである界面活性剤であっても、表面張力低下速度直鎖炭化水素鎖の炭素鎖数が7以上である実施例8、実施例9、実施例10、実施例13、実施例14、及び実施例15の界面活性剤において、大きなR
1/2、すなわち非常に速い表面張力低下速度が得られた。一方で、
図28及び32のとおり、各界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)基準とした換算濃度で表しなおし、疎水性増大やミセル形成の影響を除外すると、界面活性剤の直鎖炭化水素鎖の炭素数が短い、実施例6、実施例7、実施例8、実施例11、実施例12、及び実施例13の界面活性剤において、R
1/2は大きくなり、ミセル形成前の条件(換算濃度の値が1よりも小さい領域)でも非常に速い表面張力低下速度が得られることが確認された。
【0153】
以上のことから、直鎖炭化水素鎖の炭素数が、6以下である場合にはミセル形成前の段階で早い吸着速度と表面張力低下速度が現れ、8以上である場合には実濃度において特に早い吸着速度と表面張力低下速度に優れ、直鎖炭化水素鎖の炭素数が7である場合には、ミセル形成前の段階で早い吸着速度と表面張力低下速度が現れ、且つ、実濃度においても早い吸着速度と表面張力に優れることが示された。
【0154】
さらに、界面活性剤の対イオンの価数に着目すると、対イオンがNaである界面活性剤と比較して、対イオンがマグネシウム又はカルシウムである界面活性剤の方が、界面活性剤の濃度が同一である場合に非常に大きなR1/2、すなわち非常に速い表面張力低下速度が得られることが示された。
【0155】
特性時間τが小さいことは、平衡表面張力値に到達するまでの時間が短いことに繋がり、消火剤、レベリング剤、農薬、医薬品、化粧品、原油増進回収、洗浄剤のような用途において有用性を発揮する。
【0156】
[界面活性剤を含有する水溶液の疎水性固体表面への液滴湿潤挙動の観察]
高速流体挙動可視化システム(Photron社製、FASTCAM SA-Z)を用いて、疎水性表面に滴下した25℃における、実施例1~5の界面活性剤を含有する水溶液の疎水性固体表面における液滴の湿潤挙動を観察した。
【0157】
図33は、疎水性固体表面における液滴の湿潤挙動を高速流体挙動可視システムで撮影した写真である。疎水性固体表面における液滴の湿潤挙動の観察では、疎水性固体表面(テフロン(登録商標)プレート)から高さ30cmの位置から、先端の径が18Gのニードルから水溶液を滴下した。滴下した水溶液は、疎水性固体に衝突する前は、半径D
0を有する球状の液滴として疎水性固体表面まで落下する。その後、液滴は、時刻t=0(ms)において疎水性固体表面に衝突し、衝突後に疎水性固体表面上に濡れ広がる。液滴が疎水性固体表面と衝突した位置を原点として、衝突後t(ms)後における濡れ広がった液滴の外周と原点との距離をD
tとして、広がり径D
t/D
0を算出して評価した。
【0158】
図34は、実施例1~5の界面活性剤を含有する水溶液及び純水が、疎水性固体表面に衝突した後の広がり径D
t/D
0の経時変化を示す図である。
図34の結果から、純水では、液滴が疎水性固体の表面に衝突後5msで濡れ広がった後に、衝突後10msには濡れ広がった純水が収縮することが示された。一方で、実施例1、2、3、及び4の界面活性剤を含有する水溶液は、疎水性固体表面に衝突後、水溶液は濡れ広がったが、濡れ広がった後の水溶液の収縮は起こらなかった。
【0159】
さらに、
図34のプロットから実施例1~5の界面活性剤を含有する水溶液及び純水の疎水性固体表面における濡れ広がり速度S(/s)を算出した。濡れ広がり速度Sは、液滴が疎水性固体表面に衝突後、0~0.25msにおける広がり径D
t/D
0の傾きとして算出し、濡れ広がり速度Sの値が大きいほど、液滴が疎水性表面へ湿潤する速度が速いことを示す。表5に示すとおり、実施例1、2、3、4、及び5の界面活性剤を含有する水溶液は、純水よりも大きな濡れ広がり速度Sを示し、疎水性表面へ湿潤する速度が速いことが示された。特に実施例1、2、及び3の界面活性剤は特に大きな濡れ広がり速度を示した。さらに、実施例3の界面活性剤は、最も大きな濡れ広がり速度Sを示したことに加え、実施例3と同程度の濡れ広がり速度を示した実施例2の界面活性剤よりもCMCが約1/2であり、界面活性剤がより低濃度でも疎水性表面へ高い速度で湿潤することが示された。
【0160】