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▶ 株式会社今仙電機製作所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029645
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/08 20060101AFI20250228BHJP
【FI】
B60N2/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134380
(22)【出願日】2023-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 健介
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BB02
3B087BC04
3B087BC05
3B087BC07
(57)【要約】
【課題】ロック体によるロック強度を確保しつつ、ロック体の衝突によって生じる衝突音を抑制したシートスライド装置を提供する。
【解決手段】シートスライド装置100は、ロック体30と、レバーブラケット50と、を備える。ロック体30は、プレート部31を有している。レバーブラケット50は、プレート部31よりも前方でロック体30と接触する接触部511と、接触部511よりも後方でロック体30と係合する係合部55と、を有する。プレート部31がロック解除位置からロック位置に戻るときに、ロック体30はレバーブラケット50と一体となって移動する。
【選択図】図6B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシートの前後位置を調節するためのシートスライド装置であって、
車体に固定可能なロアレールと、
前記シートに固定可能なアッパーレールと、
前記ロアレールと前記アッパーレールとをロックするロック部を有し、前記ロック部が、前記ロアレールと前記アッパーレールとが相対移動できないようにロックするロック位置と、前記ロアレールと前記アッパーレールとが相対移動可能になるロック解除位置との間で移動可能であるロック体と、
搭乗者によって操作されるレバーと、
前記レバーの操作に伴って回転するレバーブラケットであって、前記レバーがロック解除操作されたときに、前記ロック体を押圧して、前記ロック部を前記ロック位置から前記ロック解除位置に移動させるレバーブラケットと、
を備え、
前記レバーブラケットは、
前記ロック部よりも前方で前記ロック体と接触すると共に前記レバーブラケットの回転中心となる接触部と、
前記接触部よりも後方で前記ロック体と係合する係合部と、
を備え、
前記ロック部が前記ロック解除位置から前記ロック位置に戻るときに、前記ロック体は前記レバーブラケットと一体となって移動する、
シートスライド装置。
【請求項2】
前記係合部は、前記ロック体の一部に下方から接触している、
請求項1に記載のシートスライド装置。
【請求項3】
前記ロック体は、突起部を有し、
前記係合部は、前記突起部に下方から接触する突出部である、
請求項1または2に記載のシートスライド装置。
【請求項4】
前記レバーブラケットは、開口部を有し、
前記ロック体の一部は、前記開口部内に配置されており、
前記係合部は、前記開口部内に配置された前記ロック体の一部に下方から接触している、
請求項1または2に記載のシートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のシートの前後位置を調節するためのシートスライド装置が知られている。このようなシートスライド装置は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
シートの前後位置を調節する際には、まず、搭乗者がレバーの操作部を持ち上げ、ロック体をロック解除位置に移動させる。ロック体がロック解除位置に移動すると、ロアレールとアッパーレールとは前後方向に摺動可能になり、シートの前後位置の調節が可能になる。
【0004】
シートの前後位置を調節した後、搭乗者がレバーから手を離すと、ロック体がロック位置に戻り、再度、ロアレールとアッパーレールとをロックする。ロック体がロック位置に戻る際の移動速度が大きいと、ロック体がロアレールおよび/またはアッパーレールと衝突し、衝突音が発生することがある。衝突音が大きい場合、搭乗者が不快感を覚えることがある。
【0005】
従来のシートスライド装置の中には、ロック体の移動速度を低下させるためのダンパを備えているものもある。ここで、図9Aから図9Cを参照して、従来のダンパDについて簡単に説明する。従来のダンパDは、弾性変形可能な一つの板状部材から成り、アッパーレールに取り付けられている。ダンパDは、ロック体Lに接触しており、ロック体Lを下方に付勢している。ロック体Lがロック解除位置(図9B)からロック位置(図9C)に戻る際に、ロック体Lは、ダンパDの付勢力に抗して移動することになる。したがって、ダンパDによって、ロック体Lの移動速度を低下させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-037307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の通り、ダンパは、ロック体を下方に付勢しているため、ダンパによって、ロック体のロック解除位置からロック位置への移動が阻害され(以降、「ロックイン阻害性」と表記することがある。)、ロック体がロック位置まで戻らないおそれがある。仮にロック体がロック位置まで戻らないと、適切なロック強度を確保できない。
【0008】
本発明は、ロック体によるロック強度を確保しつつ、ロック体の衝突によって生じる衝突音を抑制したシートスライド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下に掲げる態様の発明を提供する。
(項1)
車両のシートの前後位置を調節するためのシートスライド装置であって、
車体に固定可能なロアレールと、
前記シートに固定可能なアッパーレールと、
前記ロアレールと前記アッパーレールとをロックするロック部を有し、前記ロック部が、前記ロアレールと前記アッパーレールとが相対移動できないようにロックするロック位置と、前記ロアレールと前記アッパーレールとが相対移動可能になるロック解除位置との間で移動可能であるロック体と、
搭乗者によって操作されるレバーと、
前記レバーの操作に伴って回転するレバーブラケットであって、前記レバーがロック解除操作されたときに、前記ロック体を押圧して、前記ロック部を前記ロック位置から前記ロック解除位置に移動させるレバーブラケットと、
を備え、
前記レバーブラケットは、
前記ロック部よりも前方で前記ロック体と接触すると共に前記レバーブラケットの回転中心となる接触部と、
前記接触部よりも後方で前記ロック体と係合する係合部と、
を備え、
前記ロック部が前記ロック解除位置から前記ロック位置に戻るときに、前記ロック体は前記レバーブラケットと一体となって移動する、
シートスライド装置。
【0010】
(項2)
前記係合部は、前記ロック体の一部に下方から接触している、
項1に記載のシートスライド装置。
【0011】
(項3)
前記ロック体は、突起部を有し、
前記係合部は、前記突起部に下方から接触する突出部である、
項1または2に記載のシートスライド装置。
【0012】
(項4)
前記レバーブラケットは、開口部を有し、
前記ロック体の一部は、前記開口部内に配置されており、
前記係合部は、前記開口部内に配置された前記ロック体の一部に下方から接触している、
項1または2に記載のシートスライド装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシートスライド装置では、レバーブラケットはロック体と係合しているため、ロック部がロック解除位置からロック位置に戻る際に、ロック体はレバーブラケットと一体となって移動する。レバーブラケットの自重によりロック部の移動速度を減速させることができるため、ロック部による衝突音の大きさを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】シートおよびシートスライド装置の概略側面図である。
図2】シートスライド装置の分解斜視図である。
図3図2のIII-III線断面斜視図である。
図4A】ロック体の斜視図である。
図4B図4Aとは別の方向から見たロック体の斜視図である。
図4C】ロック体の側面図である。
図5A】レバーブラケットの斜視図である。
図5B】レバーブラケットの正面図である。
図6A】組立後のシートスライド装置の内部の斜視図である。
図6B図6AのVIB部分の拡大図である。
図7A】プレート部がロック位置にあるとき(すなわち、レバーの非操作時)のシートスライド装置の断面図である。
図7B】プレート部がロック解除位置にあるとき(すなわち、レバーのロック解除操作時)のシートスライド装置の断面図である。
図8A】変形例に係るレバーブラケットの斜視図である。
図8B】変形例に係るレバーブラケットとロック体との係合状態を示す斜視図である。
図9A】従来のダンパを示す斜視図である。
図9B】従来のダンパの動作機構を示す断面図である。
図9C】従来のダンパの動作機構を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照しつつ、本発明のシートスライド装置100について説明する。以下では、「車両上下方向」、「車両前後方向」、「車両左右方向(車幅方向)」をそれぞれ単に「上下方向」、「前後方向」、「左右方向」と表記する。
【0016】
<1.シートスライド装置の概要>
シートスライド装置100は、車両のシートSの前後位置を調節するための装置である。図1に示すように、シートスライド装置100は、主に、ロアレール10と、アッパーレール20と、ロック体30と、レバー40と、レバーブラケット50と、を備える。ロアレール10、アッパーレール20、ロック体30、およびレバーブラケット50は、一つのシートSに対し、左右一対(すなわち、インナ側とアウタ側に)設けられている。図1および図2では、左右一対の各構成要素のうちの一方のみを示している。
【0017】
ロアレール10は、取付ブラケットBを介して車両のフロアに固定されている。アッパーレール20は、シートSに固定されると共に、ロアレール10に組み付けられている。搭乗者がレバー40を操作していないとき、アッパーレール20は、ロック体30によってロアレール10とロックされており、ロアレール10に対して前後方向に移動できないようになっている。
【0018】
搭乗者がレバー40を持ち上げると、レバー40の動作がレバーブラケット50によってロック体30に伝達される。そして、ロック体30によるロックが解除され、アッパーレール20およびシートSは、ロアレール10に対して前後方向に移動可能になる。こうして、搭乗者はシートSの前後位置を調節できる。
【0019】
以下、各構成要素について詳述する。
【0020】
<1-1.ロアレールおよびアッパーレール>
主に図2を参照して、ロアレール10について説明する。ロアレール10は、前後方向に延びる長尺な部材から成る。ロアレール10は、底壁11と、2つの側壁12と、2つの上壁13と、2つのフランジ部14と、を備える。ロアレール10は、例えば金属製であり、プレス加工によって一体成形される。
【0021】
底壁11は、前後方向に延びる略平板状である。各側壁12は、底壁11の左右両端から上方に延びている。各上壁13は、側壁12の上端から相手側の側壁12に向けて延びている。各フランジ部14は、上壁13の端部から下方に、側壁12と略平行に延びている。
【0022】
各フランジ部14には、複数の切欠き14aが前後方向に間隔をあけて形成されている。複数の切欠き14aを設けることによって、各フランジ部14の下端には複数のロック歯14bが形成されている。ロック体30によってロアレール10とアッパーレール20とがロックされているとき、ロック歯14bは、ロック体30の貫通穴31a(図4A参照)内に配置される。
【0023】
次に、主に図2および図3を参照して、アッパーレール20について説明する。
【0024】
アッパーレール20は、前後方向に延びる長尺な部材から成る。アッパーレール20は、上壁21と、2つの側壁22と、2つの底壁23と、2つのフランジ部24と、を備える。アッパーレール20は、例えば金属製であり、プレス加工によって一体成形される。
【0025】
上壁21は、前後方向に延びる略平板状である。各側壁22は、上壁21の左右両端から下方に延びている。各底壁23は、側壁22から離れるように、斜め上方に向けて延びている。各フランジ部24は、側壁22に近づくように底壁23から斜め上方に向けて延びている。
【0026】
図3に示すように、各側壁22には、複数の切欠き22aが、前後方向に間隔をあけて設けられている。複数の切欠き22aを設けることにより、各側壁22には、複数のロック歯22bが形成されている。ロック体30によってロアレール10とアッパーレール20とがロックされているとき、ロック歯22bは、ロック体30の貫通穴31a(図4A参照)内に配置される。
【0027】
アッパーレール20の2つの側壁22は両方とも、ロアレール10の一対のフランジ部14間に配置される。また、アッパーレール20の各フランジ部24は、ロアレール10の側壁12とフランジ部14との間に配置される。
【0028】
ロアレール10の底壁11と側壁12との間のコーナ部と、アッパーレール20の底壁23との間には、図2に示すボール等の転動部材60が配置されている。また、ロアレール10の側壁12の上端と、アッパーレール20のフランジ部24の上端との間にも、転動部材60が配置されている。この転動部材60により、ロアレール10とアッパーレール20とは、前後方向に円滑にスライドできるようになっている。
【0029】
<1-2.ロック体>
主に図4Aから図4Cを参照して、ロック体30について説明する。ロック体30は、ロアレール10とアッパーレール20との前後方向への移動をロックする。ロック体30は、バネ鋼などの弾性変形可能な一枚の板材を、例えばプレス加工することにより製造される。
【0030】
図4Aから図4Cに示すように、ロック体30は、プレート部31(ロック部の一例)と、2つの第1延出部32と、被押圧部33と、立上部34と、2つの突起部35と、第2延出部36と、屈曲部37と、装着部38と、垂下部39と、を備える。
【0031】
図4Aおよび図4Bに示すように、プレート部31は、複数の貫通穴31aを有する。プレート部31のうち、前後方向において複数の貫通穴31aに隣接する部分は、ロック歯31bとして機能する。ロアレール10のロック歯14bおよびアッパーレール20のロック歯22bが、貫通穴31a内に挿入され、ロック体30のロック歯31bが、ロアレール10の切欠き14aおよびアッパーレール20の切欠き22a内に挿入されているとき、ロック体30によってロアレール10とアッパーレール20とがロックされた状態となり、ロアレール10とアッパーレール20とは前後にスライド不能になる。
【0032】
2つの第1延出部32は、左右方向に間隔をあけて設けられている。2つの第1延出部32は、プレート部31の前端から前方に延びている。2つの第1延出部32の前方部分は、前方に傾斜しながら立ち上がる傾斜部32aである。2つの傾斜部32aの前端は互いに繋がっていると共に、装着部38と繋がっている。図4Bに示すように、2つの傾斜部32aの間には、開口部32bが設けられている。開口部32b内には、レバーブラケット50が挿入される(図6A参照)。
【0033】
被押圧部33は、レバーブラケット50の押圧部54(図5A参照)によって押される部分である。被押圧部33は、プレート部31よりも前方で、かつ、2つの第1延出部32の間に設けられている。
【0034】
立上部34は、被押圧部33の後端から上方に立ち上がっている。2つの突起部35は、立上部34の左右方向両端から、互いに反対方向に突出している。また、2つの突起部35は、立上部34の下端よりも上方に設けられている。
【0035】
第2延出部36は、レバーブラケット50の重さを支える部分である。第2延出部36は、被押圧部33の前端から前方に延びている。また、第2延出部36は、2つの第1延出部32の左右方向の間に設けられている。屈曲部37は、第2延出部36の前方部分を上方に凸となるように屈曲した部分である。屈曲部37の一部は、レバーブラケット50の上壁51の開口部51a内に挿入されている(図6A参照)。
【0036】
装着部38は、ロック体30をアッパーレール20に固定するための部分である。ロック体30は、例えば、リベットによって、アッパーレール20に固定されている。
【0037】
垂下部39は、装着部38の前端から下方に延びている。垂下部39は、開口部39aを有している。図6Aに示すように、開口部39aには、レバーブラケット50が挿入されている。
【0038】
<1-3.レバーおよびレバーブラケット>
主に図2図5Aから図6Bを参照して、レバー40およびレバーブラケット50について説明する。
【0039】
レバー40は、ロック体30によるロックを解除する際に、搭乗者によって操作される部材である。図2に示すように、レバー40は、操作部41と、左右一対のアーム部42と、を備える(図2では、レバー40の左側部分は省略している)。レバー40は、例えば、一本のパイプをプレス加工することにより一体成形される。各アーム部42の下面には、切欠き42aが設けられている。
【0040】
レバーブラケット50は、レバー40に加えられた力を、ロック体30に伝達する部材である。図5Aに示すように、レバーブラケット50は、前後方向に延びる長尺な部材から成る。
【0041】
図5Aおよび図5Bに示すように、レバーブラケット50は、上壁51と、2つの側壁52と、複数の受け部53と、2つの押圧部54と、2つの係合部55と、を備える。
【0042】
図6Aおよび図6Bに示すように、レバーブラケット50は、ロック体30の開口部39a内および開口部32b(図4B参照)を通り、被押圧部33上まで延びている。
【0043】
図5Aに示すように、上壁51は、開口部51aを有する。図6Aに示すように、開口部51a内には、ロック体30の屈曲部37が挿入されている。ロック体30の第2延出部36はレバーブラケット50の重さを受け止めると共に、第2延出部36の弾性力によりレバーブラケット50を上方に付勢している。これにより、上壁51の一部は、開口部32bの上端縁32c(図4B参照)に接触している。後述するように、レバー40をロック解除操作した際に、レバーブラケット50は、上壁51のうち上端縁32cと接触する部分(接触部511。図7A参照)を中心として回転する。
【0044】
図5Aおよび図5Bに示すように、各側壁52は、上壁51の左右方向両端から下方に延びている。図5Aに示すように、各側壁52には、開口部52aが設けられている。レバー40の切欠き42aおよび側壁52の開口部52aにはそれぞれ、弾性部材70(図2および図6A参照)が係合されている。弾性部材70は、例えば、線材を折り曲げることによって構成されたバネである。弾性部材70は、レバー40とレバーブラケット50との間で延びている。弾性部材70は、レバー40を下方から支持している。
【0045】
各押圧部54は、ロック体30の被押圧部33を下方に押すための部分である。2つの押圧部54は、2つの側壁52にそれぞれ設けられている。図6Bに示すように、各押圧部54は、被押圧部33上に配置されている。
【0046】
図6Aに示すように、上壁51と2つの側壁52とによって囲まれる空間内には、アーム部42の一部が挿入されている。各受け部53は、アーム部42を下方から支持する部分である。図5Aおよび図5Bに示すように、受け部53は、各側壁52の下端から相手側の側壁52に向けて延びている。アーム部42は、受け部53上に載置されている。
【0047】
図5Aに示すように、2つの係合部55は、2つの側壁52それぞれの後端から後方に突出している。図6Bに示すように、2つの係合部55はそれぞれ、ロック体30の2つの突起部35に下方から接触している。
【0048】
<2.ロック解除操作およびロック操作>
図2図6B図7Aおよび図7Bを参照して、ロック解除操作およびロック操作について説明する。
【0049】
プレート部31がロック位置にある状態(図6Bおよび図7A参照)から、搭乗者がレバー40の操作部41(図2参照)を持ち上げると、アーム部42によってレバーブラケット50の前方部分が持ち上げられる。レバーブラケット50は、上端縁32cと接触する接触部511を中心として回転する。すなわち、図7Bに示すように、レバーブラケット50のうち接触部511よりも前方部分が上方に移動し、接触部511よりも後方部分が下方に移動するように、レバーブラケット50は回転する。
【0050】
図7Bに示すように、レバーブラケット50の回転により、押圧部54は、ロック体30の被押圧部33を下方に押圧する。被押圧部33が押圧部54によって押圧されることにより、主に第1延出部32および第2延出部36が弾性変形し、プレート部31が下方に移動する。プレート部31が下方に移動することにより、ロック歯31bが、ロアレール10の切欠き14a内およびアッパーレール20の切欠き22a内から離脱する。こうして、プレート部31がロック解除位置に移動し、ロアレール10とアッパーレール20とのロックが解除される。ロック解除されることにより、アッパーレール20はロアレール10に対して前後方向にスライド可能になるため、搭乗者は、シートSの前後位置を調節することができる。
【0051】
シートSの前後位置を調節した後、搭乗者がレバー40の操作部41から手を離すと、レバー40およびレバーブラケット50の自重ならびにロック体30の復元力により、レバー40およびレバーブラケット50は逆回転する。プレート部31は、ロック体30の復元力により、ロック位置まで戻る。プレート部31がロック位置に戻る過程で、ロック体30は、レバーブラケット50を押し上げながら移動する。また、レバーブラケット50の係合部55はロック体30の突起部35に下方から接触しているため、レバーブラケット50がロック体30から離れることなく、レバーブラケット50とロック体30とが一体となって移動する。
【0052】
<3.効果>
レバーブラケット50の係合部55がロック体30と係合していることにより、プレート部31がロック解除位置からロック位置に戻る際に、ロック体30はレバーブラケット50と一体となって移動する。レバー40およびレバーブラケット50の自重により、プレート部31がロック位置に戻る際の速度を低下させることができる。その結果、衝突音の大きさを抑制できる。レバーブラケット50は、従来技術のダンパと異なり、プレート部31をロック解除方向に付勢しているわけではないため、従来技術のダンパと比較してロックイン阻害性が小さい。
【0053】
また、レバーブラケット50の係合部55は、ピンやバネなどの結合部材を用いてロック体30に係合されているわけではないため、簡単な構造によりレバーブラケット50とロック体30との係合を実現できる。
【0054】
<4.変形例>
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。以下に、本発明の変形例を説明する。以下で説明する変形例は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、単独でまたは適宜組み合わせて、上記実施形態に適用できる。
【0055】
(4-1)図8Aに示すように、レバーブラケット50は、ロック体30の一部が内部に配置される開口部52bを有していてもよい。開口部52bは、2つの側壁52それぞれの後端部に設けられている。各側壁52に開口部52bを設けることにより、各側壁52には、開口部52bを挟んで上側に押圧部54が設けられ、下側に、係合部55の代わりに係合部56が設けられる。図8Bに示すように、開口部52b内には、ロック体30の被押圧部33が挿入されている。係合部56は、被押圧部33の下面に接触している。図8Bに示すレバーブラケット50およびロック体30の構造であっても、プレート部31がロック解除位置からロック位置に戻る際に、ロック体30がレバーブラケット50と一体となって移動することになる。したがって、レバー40およびレバーブラケット50の自重によりプレート部31がロック位置に戻る際の速度を低下させることができるため、衝突音の大きさを抑制できる。
【0056】
(4-2)係合部55および係合部56はレバーブラケット50の後端以外の部分に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
100 シートスライド装置
10 ロアレール
20 アッパーレール
30 ロック体
31 プレート部(ロック部)
35 突起部
40 レバー
50 レバーブラケット
511 接触部
52b 開口部
55 係合部
56 係合部
S シート
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C