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特開2025-29765再生粗骨材における二酸化炭素固定量の推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029765
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】再生粗骨材における二酸化炭素固定量の推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/38 20060101AFI20250228BHJP
   C04B 18/167 20230101ALI20250228BHJP
【FI】
G01N33/38
C04B18/167
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134573
(22)【出願日】2023-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107272
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 敬二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109140
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 研一
(72)【発明者】
【氏名】李 暁赫
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 祐一
(57)【要約】
【課題】保管期間中に再生粗骨材が固定した二酸化炭素量を短時間で推定することができる再生粗骨材における二酸化炭素固定量の推定方法を提供する。
【解決手段】この方法は、製造後で保管前の再生粗骨材から混入モルタルの試料を得てpHを測定し、製造後で保管前または保管中の再生粗骨材から採取した試料を用いて破砕試験を実施して得た破砕値に基づいて再生粗骨材に含まれる混入モルタルのモルタル混入率を推定し、保管後で出荷の際の再生粗骨材から混入モルタルの試料を得てpHを測定し、これらのpHの測定結果から保管期間中における混入モルタルのpHの低下量を算出し、保管期間中における混入モルタルのCO固定率をpHの低下量に基づいて推定し、推定したモルタル混入率とCO固定率とに基づいて保管期間中において再生粗骨材が固定したCO量を推定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生粗骨材をコンクリート塊から製造し出荷するまでの保管期間中に前記再生粗骨材が固定する二酸化炭素量を推定する方法であって、
前記製造後でかつ保管前の再生粗骨材から混入モルタルの試料を得てpHを測定する第1ステップと、
前記製造後でかつ保管前または保管中の再生粗骨材から採取した試料を用いて破砕試験を実施し、前記再生粗骨材の破砕値を得る第2ステップと、
前記破砕値に基づいて前記再生粗骨材に含まれる混入モルタルのモルタル混入率を推定する第3ステップと、
前記保管後でかつ出荷の際の再生粗骨材から混入モルタルの試料を得てpHを測定する第4ステップと、
前記第1ステップおよび前記第4ステップのpHの測定結果から前記保管期間中における混入モルタルのpHの低下量を算出する第5ステップと、
前記保管期間中における混入モルタルのCO固定率を前記pHの低下量に基づいて推定する第6ステップと、
前記第3ステップにおける前記モルタル混入率と、前記第6ステップにおける前記CO固定率とに基づいて前記保管期間中において前記再生粗骨材が固定したCO量を推定する第7ステップと、を含む再生粗骨材における二酸化炭素固定量の推定方法。
【請求項2】
前記第3ステップにおける前記混入モルタルのモルタル混入率を、予め得た破砕値とモルタル混入率との関係から前記第2ステップで得た前記破砕値に基づいて推定する請求項1に記載の再生粗骨材における二酸化炭素固定量の推定方法。
【請求項3】
前記第6ステップにおける前記混入モルタルのCO固定率を、予め得た混入モルタルのpHの低下量と混入モルタルのCO固定率との関係を示す次の式(2)から前記第5ステップで得た前記混入モルタルのpHの低下量に基づいて算出する請求項1または2に記載の再生粗骨材における二酸化炭素固定量の推定方法。
MCO=a×ΔpH +b (2)
ただし、MCO:前記保管期間中における混入モルタルのCO固定率(%)
ΔpH:前記保管期間中における混入モルタルのpHの低下量
a,b:係数
【請求項4】
前記第7ステップにおいて前記保管期間中に前記再生粗骨材が固定したCO量を次の式(3)により算出する請求項1または2に記載の再生粗骨材における二酸化炭素固定量の推定方法。
ただし、RGCO:前記保管期間中に再生粗骨材が1トン(t)当たり固定したCO量(kg-CO/t)
RG:前記再生粗骨材の質量(t)
M:モルタル混入率(%)
MCO:前記保管期間中における混入モルタルのCO固定率(%)
【請求項5】
前記保管期間中において前記再生粗骨材が1トン(t)当たり固定したCO量を、±1kg-CO/tの範囲内で推定する請求項1または2に記載の再生粗骨材における二酸化炭素固定量の推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生粗骨材における二酸化炭素固定量の推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生粗骨材は、建築物や構造物などの解体時に発生した解体ガラなどのコンクリート塊から製造され、元々のコンクリート(原コンクリート)に使用されていた骨材(原骨材)とセメントペーストで構成されている。このセメントペースト部分は、製造過程中に粉砕されることで空気との接触面積が増えるため、保管期間中に空気中の二酸化炭素(CO)を吸収して固定している。以上のことから、再生粗骨材はCOのストック先として活用することができる。
【0003】
保管期間中に再生粗骨材が固定したCOの量を求める試験方法は規格化されていないが、一般には再生粗骨材の製造時(保管前)および出荷時(保管後)に試料を採取し、それぞれ示差熱重量分析(TG-DTA)により測定したCO固定量の差(出荷時-製造時)で求める方法が用いられている(非特許文献1)。TG-DTAとは、試料を加熱した際に起こる質量変化(TG)と発熱や吸熱などの熱的挙動(DTA)を同時に連続的に測定し、試料に含まれる物質を定量する方法である。再生粗骨材中のCO固定量はTG-DTAにより測定した炭酸カルシウム(CaCO)量から次の式(1)により求められている(非特許文献1)。
CO=CaCO×MCO/MCaCO (1)
ここに、MCO:COの分子量、MCaCO:CaCOの分子量
【0004】
特許文献1は、再生骨材のモルタル混入率を測定しなくても、二酸化炭素を吸着させることによる品質改善効果が期待できる再生骨材か否かを容易に判定できる方法の提供を目的とし(段落[0006])、再生骨材の二酸化炭素吸着による品質改善効果を判定する方法を開示し([0008][0015])、再生骨材の破砕値と二酸化炭素吸着量割合が、二酸化炭素を吸着させることによる品質改善効果が期待できる再生骨材か否かを判定するための指標として有効である旨を開示する[0007]。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-189617号公報
【特許文献2】特開2014-237559号公報
【特許文献3】特開2020-15659号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「コンクリートの供用および再資源化による二酸化炭素の固定に関する全国調査」コンクリート工学、Vol.49、No.8、p.9-16、2011.8)
【非特許文献2】「再生粗骨材中の混入モルタル量の品質管理方法および評価基準の検討」コンクリート工学年次論文集、Vol.35、No.1、2013、p.1453-1458)
【非特許文献3】「CO2ガスの強制吸着による低エネルギー型再生粗骨材製造方法の検討」コンクリート工学年次論文集、Vol.36、No.1、2014、p.1732-1737
【非特許文献4】「ドリル削孔粉末から得られたpH分布を利用した劣化因子浸透深さ推定方法に関する検討」コンクリート工学年次論文集、Vol.37、No.1、2015、p.1711-1716
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
再生粗骨材を使用することによるCOの固定効果を評価するためには、そのCO固定量を求める必要がある。保管期間中に再生粗骨材が固定したCOの量を従来の方法で求めるには、TG-DTAにより測定する必要がある。しかし、TG-DTAによる測定は、専用の分析機器が必要なことから、試験機関に依頼することになる。この場合、試料の送付から測定結果を得るまでには、数日必要となる。このため、この方法を、再生骨材や再生骨材コンクリートを製造する工場で日常的な管理やタイムリーなCO固定量の確認に使用することは難しい。
【0008】
また、従来の方法により、原骨材を含む再生粗骨材を用いて測定することができるが、サンプリング誤差が大きく、正確なCO量を算出するために、サンプリングと測定の頻度を増やす必要がある。一方、再生粗骨材に混入しているセメントペーストを用いて分析することも考えられるが、再生粗骨材中のセメントペースト量を求める必要がある。一般には、塩酸に再生粗骨材を浸漬してセメントペーストを溶解し、溶解前後の質量差から求められている。しかし、セメントペーストを溶解するためには、1日~数日掛かってしまうことや、その間に塩酸を入れ替える必要があり、時間・手間が掛かることから、日常の管理に用いることは難しい。また、原骨材が石灰石の場合には用いることができないといった課題もある。
【0009】
特許文献1は、再生骨材の品質改善に期待できるか否かの判断に使用する指標として、破砕値と二酸化炭素吸着量割合を挙げているが、保管期間中における再生骨材のCO固定量を推定するものではない。また、特許文献2は、実施例でモルタルのCO含有量を、クーロメータ(商品名/日本アンス社製)を用いて無機の炭素量から測定するが、従来方法による測定である。また、特許文献3は、二酸化炭素をセメント質硬化体に固定化する方法を開示するが、固定化された二酸化炭素量の測定について開示するものではない。
【0010】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、保管期間中に再生粗骨材が固定した二酸化炭素(CO)量を短時間で推定することができる再生粗骨材における二酸化炭素固定量の推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための再生粗骨材における二酸化炭素固定量の推定方法は、再生粗骨材をコンクリート塊から製造し出荷するまでの保管期間中に前記再生粗骨材が固定する二酸化炭素量を推定する方法であって、
前記製造後でかつ保管前の再生粗骨材から混入モルタルの試料を得てpHを測定する第1ステップと、前記製造後でかつ保管前または保管中の再生粗骨材から採取した試料を用いて破砕試験を実施し、前記再生粗骨材の破砕値を得る第2ステップと、前記破砕値に基づいて前記再生粗骨材に含まれる混入モルタルのモルタル混入率を推定する第3ステップと、前記保管後でかつ出荷の際の再生粗骨材から混入モルタルの試料を得てpHを測定する第4ステップと、 前記第1ステップおよび前記第4ステップのpHの測定結果から前記保管期間中における混入モルタルのpHの低下量を算出する第5ステップと、前記保管期間中における混入モルタルのCO固定率を前記pHの低下量に基づいて推定する第6ステップと、前記第3ステップにおける前記モルタル混入率と、前記第6ステップにおける前記CO固定率とに基づいて前記保管期間中において前記再生粗骨材が固定したCO量を推定する第7ステップと、を含むものである。
【0012】
この再生粗骨材における二酸化炭素固定量の推定方法によれば、再生粗骨材がその製造から出荷までの保管期間中に固定するCOの量を、再生粗骨材の破砕値および保管前後の再生粗骨材に含まれる混入モルタルのpHの測定結果を利用することで、従来のTG-DTAによる方法よりも短時間で推定することができる。
【0013】
上記再生粗骨材における二酸化炭素固定量の推定方法において、前記第3ステップにおける前記混入モルタルのモルタル混入率を、予め得た破砕値とモルタル混入率との関係から前記第2ステップで得た前記破砕値に基づいて推定することができる。
【0014】
また、前記第6ステップにおける前記混入モルタルのCO固定率を、予め得た混入モルタルのpHの低下量と混入モルタルのCO固定率との関係を示す次の式(2)から前記第5ステップで得た前記混入モルタルのpHの低下量に基づいて算出することができる。
MCO=a×ΔpH +b (2)
ただし、MCO:前記保管期間中における混入モルタルのCO固定率(%)
ΔpH:前記保管期間中における混入モルタルのpHの低下量
a,b:係数
【0015】
また、前記第7ステップにおいて前記保管期間中に前記再生粗骨材が固定したCO量を次の式(3)により算出することができる。
ただし、RGCO:前記保管期間中に再生粗骨材が1トン(t)当たり固定したCO量(kg-CO/t)
RG:前記再生粗骨材の質量(t)
M:モルタル混入率(%)
MCO:前記保管期間中における混入モルタルのCO固定率(%)
【0016】
また、前記保管期間中において前記再生粗骨材が1トン(t)当たり固定したCO量を、±1kg-CO/tの範囲内で推定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、保管期間中に再生粗骨材が固定した二酸化炭素(CO)量を短時間で推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態による再生粗骨材における二酸化炭素固定量の推定方法の各ステップを説明するためのフローチャートである。
図2】非特許文献2,3に示されている再生粗骨材MとLの2.5mm破砕値とモルタル混入率との関係を示すグラフである。
図3】本実験で得られた混入モルタルのpHの低下量と保管期間中におけるCO固定率(実測値)との関係を示すグラフである。
図4】混入モルタルのCO固定率の実測値と推定値との関係を示すグラフである。
図5】保管期間中における再生粗骨材のCO固定量の実測値と推定値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。図1は本実施形態による再生粗骨材における二酸化炭素固定量の推定方法の各ステップを説明するためのフローチャートである。
【0020】
本実施形態において再生粗骨材は、建築物や構造物などとしての供用、建築物や構造物などの解体、図1のように、この解体時に発生した解体ガラなどのコンクリート塊を工場においてクラッシャーなどの破砕機により破砕し分級する等による製造(S01)、保管(S02)、その後の出荷(S03)という過程を経る。本実施形態で対象とする再生粗骨材のCO固定の時期的範囲は、供用期間や解体時のCO固定時期を含まず、図1の製造(S01)から出荷(S03)までの保管(S02)の期間(保管期間)である。
【0021】
本実施形態による再生粗骨材における二酸化炭素固定量の推定方法の各ステップは、図1のようにして行われる。すなわち、まず、製造後で保管前の再生粗骨材から混入モルタル(モルタル塊)を得て溶媒に溶かして抽出する。すなわち、再生粗骨材から混入モルタルの試料を採取し、その試料をすりつぶした粉末試料から懸濁液を作製し(S11)、pH試験によりpHを測定する(S12)。
【0022】
一方、製造後で保管前または保管中の再生粗骨材から試料を採取して破砕試験を実施し(S13)、載荷荷重200kNにおける再生粗骨材の破砕値を得る(S14)。
【0023】
次に、予め得ている破砕値と混入モルタルの量との関係から、ステップS14で得た破砕値に基づいて再生粗骨材に含まれる混入モルタルの量(モルタル混入率)を推定する(S15)。なお、ステップS11の試料採取と、ステップS13の試料採取との実施順序は、この順に限定されず、両者ともに製造後で保管前であれば、同時並行的に実施してもよく、また、ステップS13の試料採取を先に実施してから、ステップS11の試料採取を実施してもよい。
【0024】
次に、保管後で出荷の際の再生粗骨材から混入モルタル(モルタル塊)を得て溶媒に溶かして抽出する。すなわち、再生粗骨材から混入モルタルの試料を得て、その試料をすりつぶした粉末試料から懸濁液を作製し(S16)、pH試験によりpHを測定する(S17)。
【0025】
次に、ステップS12とステップS17のpHの測定結果から保管期間中(保管前後)における混入モルタルのpHの低下量を算出する(S18)。
【0026】
次に、保管期間中における混入モルタルのCO固定率をステップS18で得た混入モルタルのpHの低下量に基づいて推定する(S19)。たとえば、予め得た混入モルタルのpHの低下量と混入モルタルのCO固定率との関係を示す次の式(2)からステップS18で得た混入モルタルのpHの低下量に基づいて算出する(S19)。
【0027】
MCO=a×ΔpH +b (2)
ただし、MCO:保管期間中における混入モルタルのCO固定率(%)
ΔpH:保管期間中における混入モルタルのpHの低下量
a,b:係数
【0028】
ステップS15で推定したモルタル混入率と、ステップS19で推定したCO固定率とに基づいて保管期間中に再生粗骨材が固定したCO量を推定する(S20)。たとえば、保管期間中に再生粗骨材が固定したCO量を次の式(3)により算出する。
【0029】
【数1】
【0030】
ただし、RGCO:再生粗骨材が1トン(t)当たり固定したCO量(kg-CO/t)
RG:再生粗骨材の質量(t)
M:モルタル混入率(%)
MCO:保管期間中における混入モルタルのCO固定率(%)
【0031】
本実施形態の再生粗骨材における二酸化炭素固定量の推定方法によれば、従来のセメントペースト量を求めることの代替として、混入モルタル(再生骨材に含まれるモルタル)量を破砕値から推定し(S13~S15)、保管期間中に混入モルタルが固定したCOの量を、再生粗骨材に含まれるモルタル塊の保管前後のpHの差(低下量)を利用して推定し(S18,S19)、これらの推定結果を利用して保管期間中に再生粗骨材が固定したCO量を推定する(S20)ことにより、従来のTG-DTAによる方法よりも短時間で推定することができる。すなわち、再生粗骨材の破砕試験(S13)および保管前後の再生粗骨材に含まれる混入モルタルのpH試験(S12,S17)を行うだけで、再生粗骨材が保管期間中に固定するCO量を従来よりも簡単かつ短時間に推定できる。
【0032】
次に、図1のステップS13、S14における破砕値の測定方法について説明する。この破砕値の測定方法は、JIS A 5023:2018 附属書Cに準ずるものである。
【0033】
(1)製造された保管前の再生粗骨材から得た試料を計量容器に詰めた後、質量を計量する。
(2)試料を試験容器に移し、詰めた後に、鋼製プランジャを試験容器の試料上に平らに入れる。
(3)試験容器を載荷装置に据え、毎分40kNの割合で載荷する。
(4)載荷荷重が200kNに達した後、荷重を零に戻す。
(5)試験容器内の試料を2.5mmふるいでふるい、ふるいを通過するものの質量を計量する。
(6)全試料に対して2.5mmふるいを通過した試料の質量分率を算出する。
(7)上記操作を3回行い、3回の試験の平均値を破砕値とする。
【0034】
なお、JIS A 5023:2018 附属書Cでは(4)の載荷荷重が100kNと規定されているが、載荷荷重200kNにおける再生粗骨材の破砕値とモルタル混入率の関係が良好である(非特許文献2,3参照)ため、載荷荷重を200kNとした。
【0035】
次に、図1のステップS11、S12およびステップS16,S17における混入モルタルのpHの測定方法について説明する(非特許文献4参照)。
【0036】
(1)再生粗骨材から混入モルタルの試料を取り出し、150μmふるいを通過するようにすりつぶし、粉末試料を得る。
(2)粉末試料を容器に入れ、固形分濃度10%の懸濁液を作製する。
(3)懸濁液にガラス電極pHメータの測定部を入れ、外気が容器中に入らないように容器の開口部を密閉する。
(4)懸濁液をマグネチックスターラー(回転速度:200~300rpm)で24時間撹拌する。
(5)懸濁液のpHを撹拌開始から5分置きに、撹拌終了まで連続で測定する。
(6)24時間で測定したpHの最大値を混入モルタルのpHとする。
【0037】
[検証実験]
(実験条件)
異なる種類の再生粗骨材や保管方法における本実施形態の推定方法の有効性を検証することを目的として、次の表1に示す要因と水準で実験を実施した。本実験に使用した再生粗骨材の種類と保管方法の組合せを次の表2に示す。なお、再生粗骨材L、Mは再生粗骨材の種類を指し、JIS規格で適用範囲が規定されている。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
(実験結果)
モルタル混入率(実測値)
製造後保管前の各再生粗骨材のモルタル混入率(実測値)は、塩酸に再生粗骨材を浸漬して、溶解前後の質量差から求め、その結果を次の表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
混入モルタルのCO 固定率(実測値)
保管期間中における混入モルタルのCO固定率(実測値)は、保管前後の混入モルタルのCO量をTG-DTAの測定結果から次の式(4)によりそれぞれ算出し、保管前後の差から求め、その結果を次の表4に示す。
混入モルタルのCO固定率(実測値)=保管後のCO固定率-保管前のCO固定率 (4)
【0043】
【表4】
【0044】
再生粗骨材のCO 固定量(実測値)
保管期間中における再生粗骨材のCO固定量(実測値)は、モルタル混入率と混入モルタルのCO固定率それぞれの実測値を上述の式(3)に代入して算出し、次の表5に示す。
【0045】
【表5】
【0046】
混入モルタルのpH低下量の測定結果
各試料のpHの測定結果および保管前後のpHの低下量を次の表6に示す。
【0047】
【表6】
【0048】
次に、本実施形態の推定方法による推定結果について実測値と比較して検証する。
【0049】
モルタル混入率の推定
モルタル混入率(推定値)は、図2のように、非特許文献2,3に示されている再生粗骨材MとLの破砕値(2.5mmふるいによる破砕試験)とモルタル混入率との関係を直線回帰して得られた次の式(5)に破砕値を代入して求めた。モルタル混入率の推定値、表3の実測値、および、推定値と実測値との差を次の表7に示す。
【0050】
M=3.94×CV-9.5 (5)
ここに、Mm:モルタル混入率(%)
CV:破砕値(%)
【0051】
【表7】
【0052】
保管期間における混入モルタルのCO 固定率の推定
混入モルタルのCO固定率(推定値)は、図3のように、本実験で得られた混入モルタルのpHの低下量と保管期間中におけるCO固定率(実測値)との関係を直線回帰して得られた次の式(6)に混入モルタルのpHの低下量を代入して求めた。保管期間における混入モルタルのCO固定率の推定値、表4の実測値、および、推定値と実測値との差を次の表8に示す。図4に混入モルタルのCO固定率の実測値と推定値との関係を示す。
【0053】
MCO=0.9557×ΔpH (6)
ここに、MCO:保管期間における混入モルタルのCO固定率(推定値)(%)
ΔpH:保管前後の混入モルタルのpHの低下量
【0054】
【表8】
【0055】
保管期間における再生粗骨材のCO 固定量の推定
再生粗骨材のCO固定量(推定値)は、上述のモルタル混入率の推定値および混入モルタルのCO固定率の推定値を上述の式(3)に代入して求めた。保管期間における再生粗骨材のCO固定量の推定値、実測値、推定値と実測値との差、および、誤差率を次の表9に示す。図5に保管期間中における再生粗骨材のCO固定量の実測値と推定値との関係を示す。
【0056】
【表9】
【0057】
以上のように、本実施形態による保管期間中の再生粗骨材MとLのCO固定量の推定方法の有効性について検証実験の結果から以下のことが確認できた。
(1)保管期間中における混入モルタルのCO固定率は、pHの低下量を利用して推定することが可能である。
(2)保管期間中における再生粗骨材のCO固定量は、破砕値により推定したモルタル混入率と、混入モルタルのpHの低下量により推定したCO固定率と、を利用して推定することが可能である。
(3)図5のように、保管期間中における再生粗骨材1トン(t)のCO固定量の推定値と実測値との差が概ね±1kg-CO/t以内である。
【0058】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。
【0059】
図1のステップS11では、製造後で保管前の再生粗骨材から試料を採取したが、保管前とは、保管の開始前のみならず、保管開始直後も含む。また、図1のステップS16では、保管後で出荷の際の再生粗骨材から試料を得たが、保管後で出荷の際とは、出荷時のみならず、保管直後および出荷準備期間も含む。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、保管期間中に再生粗骨材が固定した二酸化炭素量を従来よりも短時間で簡単に推定できるので、たとえば、再生粗骨材や再生粗骨材コンクリートを製造する工場において再生粗骨材が保管期間中に固定するCO量を日常の管理項目の一つとして利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5