(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029769
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】アクチュエータ遠隔調整システム、アクチュエータ遠隔調整方法、アクチュエータ遠隔調整プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 11/36 20060101AFI20250228BHJP
【FI】
G05B11/36 501Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134579
(22)【出願日】2023-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】柳川 敦志
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 まりの
【テーマコード(参考)】
5H004
【Fターム(参考)】
5H004GA30
5H004GB15
5H004HA07
5H004HB07
5H004JB22
5H004KB02
5H004KB04
5H004KB06
5H004MA15
(57)【要約】
【課題】アクチュエータが設置されている現場で適切な調整者が確保できない場合でも、遠隔から安全にアクチュエータを調整できるアクチュエータ遠隔調整システム等を提供する。
【解決手段】アクチュエータ遠隔調整システム200は、アクチュエータシステム220におけるエアアクチュエータ120、130を、遠隔調整装置210によって遠隔から調整する際に、アクチュエータシステム220と遠隔調整装置210の間の通信状態を監視する通信状態監視部233と、通信状態に異常が見られた場合、エアアクチュエータ120、130によるステージ110の駆動を抑制する駆動抑制部234と、を備える。アクチュエータシステム220は、エアアクチュエータ120、130および遠隔調整装置210と通信可能な調整仲介装置230と、を備え、通信状態監視部233および駆動抑制部234は、調整仲介装置230に設けられる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータシステムにおけるアクチュエータを、前記アクチュエータシステムと通信可能な遠隔調整装置によって遠隔から調整する際に、前記アクチュエータシステムと前記遠隔調整装置の間の通信状態を監視する通信状態監視部と、
前記通信状態に異常が見られた場合、前記アクチュエータによる被駆動物の駆動を抑制する駆動抑制部と、
を備えるアクチュエータ遠隔調整システム。
【請求項2】
前記通信状態監視部および前記駆動抑制部は、前記アクチュエータシステムに設けられる、請求項1に記載のアクチュエータ遠隔調整システム。
【請求項3】
前記アクチュエータシステムは、前記アクチュエータと、前記アクチュエータおよび前記遠隔調整装置と通信可能な調整仲介装置と、を備え、
前記通信状態監視部および前記駆動抑制部は、前記調整仲介装置に設けられる、
請求項2に記載のアクチュエータ遠隔調整システム。
【請求項4】
前記通信状態監視部は、前記遠隔調整装置による調整内容が、所定時間内に前記アクチュエータに反映されない場合、前記通信状態に異常が見られたと判定する、請求項1から3のいずれかに記載のアクチュエータ遠隔調整システム。
【請求項5】
前記通信状態監視部は、前記アクチュエータシステムおよび前記遠隔調整装置の間の通信が所定時間に亘って行われなかった場合、前記通信状態に異常が見られたと判定する、請求項1から3のいずれかに記載のアクチュエータ遠隔調整システム。
【請求項6】
前記アクチュエータの調整中の前記被駆動物の駆動状態を、前記アクチュエータシステムから前記遠隔調整装置に送信する駆動状態送信部を備える、請求項1から3のいずれかに記載のアクチュエータ遠隔調整システム。
【請求項7】
前記駆動状態送信部による前記駆動状態の送信および/または前記遠隔調整装置による前記駆動状態の受信が正常に行われない場合、前記通信状態監視部は、前記通信状態に異常が見られたと判定する、請求項6に記載のアクチュエータ遠隔調整システム。
【請求項8】
前記遠隔調整装置は、前記アクチュエータにおいて前記被駆動物の駆動制御を担う制御部における制御ゲインを遠隔から調整する、請求項1から3のいずれかに記載のアクチュエータ遠隔調整システム。
【請求項9】
前記アクチュエータシステムおよび前記遠隔調整装置の間の通信は、プライベートネットワーク上で行われる、請求項1から3のいずれかに記載のアクチュエータ遠隔調整システム。
【請求項10】
前記駆動抑制部は、前記通信状態に異常が見られた場合、前記アクチュエータによる前記被駆動物の駆動を停止する、請求項1から3のいずれかに記載のアクチュエータ遠隔調整システム。
【請求項11】
前記アクチュエータは、被処理物が載置される前記被駆動物としてのステージを駆動する、請求項1から3のいずれかに記載のアクチュエータ遠隔調整システム。
【請求項12】
前記アクチュエータは、作動流体によって前記被駆動物を駆動する流体アクチュエータである、請求項1から3のいずれかに記載のアクチュエータ遠隔調整システム。
【請求項13】
アクチュエータシステムにおけるアクチュエータを、前記アクチュエータシステムと通信可能な遠隔調整装置によって遠隔から調整する際に、前記アクチュエータシステムと前記遠隔調整装置の間の通信状態を監視することと、
前記通信状態に異常が見られた場合、前記アクチュエータによる被駆動物の駆動を抑制することと、
を実行するアクチュエータ遠隔調整方法。
【請求項14】
アクチュエータシステムにおけるアクチュエータを、前記アクチュエータシステムと通信可能な遠隔調整装置によって遠隔から調整する際に、前記アクチュエータシステムと前記遠隔調整装置の間の通信状態を監視することと、
前記通信状態に異常が見られた場合、前記アクチュエータによる被駆動物の駆動を抑制することと、
をコンピュータに実行させるアクチュエータ遠隔調整プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はアクチュエータ遠隔調整システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アクチュエータとして、半導体の製造に使用される露光装置等におけるステージ装置が開示されている。このステージ装置は、被駆動物としてのステージの目標位置と現在位置の偏差に基づくPID制御(駆動制御)を担う補償演算器を備える。補償演算器における各制御ゲインは、モデル同定器によって同定されるステージの特性に基づいて、自動的に演算される。
【0003】
このように、特許文献1では、アクチュエータとしてのステージ装置においてステージの駆動制御を担う制御部(補償演算器)における制御ゲインが自動的に調整または設定される。一方、このようなアクチュエータの調整は、調整者が現場(すなわち、アクチュエータが設置されている場所)または現地においてマニュアルで実施することも多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アクチュエータのマニュアル調整の成否や精度は、調整者のスキルに依存する。昨今、このような調整スキルの高い熟練技能者は世界的に減少傾向にあるため、現地で適切な調整者を確保できない可能性がある。
【0006】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、アクチュエータが設置されている現場で適切な調整者が確保できない場合でも、遠隔から安全にアクチュエータを調整できるアクチュエータ遠隔調整システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のある態様のアクチュエータ遠隔調整システムは、アクチュエータシステムにおけるアクチュエータを、アクチュエータシステムと通信可能な遠隔調整装置によって遠隔から調整する際に、アクチュエータシステムと遠隔調整装置の間の通信状態を監視する通信状態監視部と、通信状態に異常が見られた場合、アクチュエータによる被駆動物の駆動を抑制する駆動抑制部と、を備える。
【0008】
本態様によれば、アクチュエータシステムと遠隔調整装置の間の通信状態に異常が見られた場合、アクチュエータによる被駆動物の駆動が抑制される。このため、アクチュエータの設置現場にない遠隔調整装置から遠隔で調整作業を実施する場合であっても、被駆動物の暴走等を適切に抑制して十分な安全性を確保できる。
【0009】
本開示の別の態様は、アクチュエータ遠隔調整方法である。この方法は、アクチュエータシステムにおけるアクチュエータを、アクチュエータシステムと通信可能な遠隔調整装置によって遠隔から調整する際に、アクチュエータシステムと遠隔調整装置の間の通信状態を監視することと、通信状態に異常が見られた場合、アクチュエータによる被駆動物の駆動を抑制することと、を実行する。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本開示に包含される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、アクチュエータが設置されている現場で適切な調整者が確保できない場合でも、遠隔から安全にアクチュエータを調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】エアアクチュエータの制御部の構成例を模式的に示すブロック図である。
【
図4】アクチュエータ遠隔調整システムの模式的な機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、図面を参照しながら、本開示を実施するための形態(以下では、実施形態とも表される)について詳細に記述する。記述および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する記述を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、記述の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本開示の範囲を何ら限定するものではない。実施形態において提示される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。実施形態は、便宜的に、それを実現する機能毎および/または機能群毎の構成要素に分解されて提示される。但し、実施形態における一つの構成要素が、実際には別体としての複数の構成要素の組合せによって実現されてもよいし、実施形態における複数の構成要素が、実際には一体としての一つの構成要素によって実現されてもよい。
【0014】
本開示に係るアクチュエータ遠隔調整システムは、任意の原理(例えば、磁気や電気)に基づく任意のタイプのアクチュエータの遠隔調整に適用できる。例えば、アクチュエータは、リニアモータでもよいし、ロボットの関節等に設けられるモータでもよい。本実施形態では、空気等の作動流体によって被駆動物を駆動する流体アクチュエータまたはエアアクチュエータについて例示的に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る流体アクチュエータが適用されるエアステージ100の斜視図である。エアステージ100は、定盤102と、除振台104と、除振装置106と、ステージ110と、一つのX軸エアアクチュエータ120と、二つのY軸エアアクチュエータ130A、130B(以下では、Y軸エアアクチュエータ130と総称される)を備える。定盤102は、除振台104によって支持される。エアステージ100は、上軸としてのX軸エアアクチュエータ120と、下軸としての二つのY軸エアアクチュエータ130A、130Bによって上面視でH字状に形成される。除振装置106は、エアステージ100が配置されている床等から定盤102への振動の伝播を抑制する。
【0016】
X軸エアアクチュエータ120およびY軸エアアクチュエータ130は、空気を作動流体として被駆動物であるステージ110をX軸およびY軸に沿って駆動する流体アクチュエータである。ステージ110には、半導体ウェハ等の不図示の被処理物が載置される。X軸エアアクチュエータ120は、ガイド122(スクエアシャフト)と、スライダ124と、サーボバルブ126(不図示)と、配管128(不図示)を有する。同様に、Y軸エアアクチュエータ130は、ガイド132と、スライダ134と、サーボバルブ136と、配管138を有する。ステージ110は、スライダ124に設けられる。ガイド122の両端は、Y軸エアアクチュエータ130のスライダ134によって支持される。
【0017】
スライダ124、134は、被駆動物としてのステージ110をX軸、Y軸に沿って駆動する駆動部を構成する。また、サーボバルブ126、136は、後述される制御部が演算した空気の作動量である吸排気量に基づく空気をスライダ124、134に供給する作動流体供給部を構成する。配管128、138は、駆動部と作動流体供給部の間で空気を流通させる。位置センサ140は、ステージ110のX軸方向の位置を検出し、位置センサ142は、ステージ110のY軸方向の位置を検出する。
【0018】
図2は、エアアクチュエータの断面図である。X軸エアアクチュエータ120は、ガイド122と、スライダ124と、サーボバルブ126(スプールバルブ)と、配管128を備える。ガイド122の外周面とスライダ124の内周面の間には、加圧空気が供給されて静圧軸受が形成される。加圧空気によってガイド122から浮上したスライダ124は、ガイド122と非接触で滑らかにX軸方向に移動可能である。スライダ124には、内部空間であるサーボチャンバ150が設けられる。サーボチャンバ150は、ガイド122と一体的に形成された受圧プレート123によって、正側チャンバ室152と負側チャンバ室154に区画される。
【0019】
スライダ124は、サーボバルブ126によって駆動される。サーボバルブ126は、スプールの位置によってコントロールポートの吸排気量を制御する。各軸のエアアクチュエータ120、130は、正側と負側に配置された一対のサーボバルブ126P、126Nを備える。正側のサーボバルブ126Pのコントロールポートは、正側配管128Pを介して正側チャンバ室152と連通する。負側のサーボバルブ126Nのコントロールポートは、負側配管128Nを介して負側チャンバ室154と連通する。サーボバルブ126P、126Nのスプール位置に応じて正側チャンバ室152と負側チャンバ室154の間に生じる差圧によって、ガイド122(受圧プレート123)に対するスライダ124の位置が制御される。以上では主にX軸エアアクチュエータ120について説明したが、Y軸エアアクチュエータ130もX軸エアアクチュエータ120と同様に構成されうる。
【0020】
図3は、エアアクチュエータ120、130の制御部300の構成例を模式的に示すブロック図である。制御部300は、エアアクチュエータ120、130において被駆動物としてのステージ110の駆動制御を担う。制御部300は、フィードバック制御を行うFB制御部310とフィードフォワード制御を行うFF制御部360を備える。制御部300の出力部302が出力する演算結果uはサーボバルブ126、136の吸排気量を定めるバルブ指令であり、それにより生じる差圧によってステージ110の位置が制御される。位置センサ140、142によって検出されるステージ110の位置Pos
fbは、FB制御部310におけるフィードバック制御に利用される。
【0021】
FF制御部360は、制御部300の入力部301から出力部302に向かって、三対の微分器364、366、368と比例補償器370、372、374を備える。第1段の微分器364は入力部301に入力される駆動指令としての位置指令Posrefを微分して速度に変換し、第1段の比例補償器370は比例ゲインKffvを乗算し、FB制御部310が演算する位置補償量と合わせてステージ110の速度指令を演算する。第2段の微分器366は微分器364からの速度を微分して加速度に変換し、第2段の比例補償器372は比例ゲインKffaを乗算し、FB制御部310が演算する速度補償量と合わせてステージ110の加速度指令を演算する。第3段の微分器368は微分器366からの加速度を微分し、第3段の比例補償器374は比例ゲインKffjを乗算し、FB制御部310が演算する加速度補償量と合わせて暫定演算結果u′を演算する。
【0022】
FB制御部310は、PDD2(Proportional-Differential-2nd Derivative)補償器として構成される。具体的には、FB制御部310は、ステージ110の位置をメジャーループ(アウターループ)で制御し、ステージ110の速度および加速度をマイナーループ(インナーループ)で制御する。二つのマイナーループのうち、外側の速度ループはミッドループとも表され、内側の加速度ループは単にインナーループとも表される。ステージ110の測定位置Posfbを微分器330で微分することでステージ110の測定速度が得られ、それを更に微分器332で微分することでステージ110の測定加速度が得られる。
【0023】
FB制御部310は、入力部301から出力部302に向かって、直列に四つの減算器312、314、316、352を備える。減算器312は、制御部300の入力部301に入力される位置指令Posrefと、ステージ110の測定位置Posfbの差分である位置偏差を演算する位置偏差演算部である。減算器314は、後述の演算に基づいて得られる速度指令と、微分器330が出力するステージ110の測定速度の差分である速度偏差を演算する速度偏差演算部である。減算器316は、後述の演算に基づいて得られる加速度指令と、微分器332が出力するステージ110の測定加速度の差分である加速度偏差を演算する加速度偏差演算部である。減算器352は、後述の演算に基づいて得られる暫定演算結果u′から外乱を除去する外乱除去部である。
【0024】
位置偏差を演算する減算器312と速度偏差を演算する減算器314の間には、ステージ110の位置を補償する位置補償要素として位置比例補償器320が設けられる。位置比例補償器320は位置偏差に比例ゲインKpを乗算し、FF制御部360の比例補償器370からの入力と合わせてステージ110の速度指令を演算する速度指令演算部を構成する。
【0025】
速度偏差を演算する減算器314と加速度偏差を演算する減算器316の間には、ステージ110の速度を補償する速度補償要素として、速度比例補償器322が設けられる。速度比例補償器322は速度偏差に比例ゲインKvを乗算し、FF制御部360の比例補償器372からの入力と合わせてステージ110の加速度指令を演算する加速度指令演算部を構成する。
【0026】
加速度偏差を演算する減算器316と外乱を除去する減算器352の間には、ステージ110の加速度を補償する加速度補償要素として、加速度比例補償器324が設けられる。加速度比例補償器324は加速度偏差に比例ゲインKaを乗算し、FF制御部360の比例補償器374からの入力と合わせて暫定演算結果u′を求める暫定演算部を構成する。
【0027】
FB制御部310は、上記の構成に加えて、ノッチフィルタ340と、外乱オブザーバ350を備える。
【0028】
ノッチフィルタ340は、ノッチ周波数ωnoを中心とする狭い阻止帯域を有するバンドストップフィルタであり、減算器352の前後に設けられる二つのフィルタ要素340A、340Bによって構成される。例えば、ノッチ周波数ωnoは、配管共振の除去を目的として、配管共振の周波数ω0と近い値に設定される。
【0029】
外乱推定器としての外乱オブザーバ350(DOB: Disturbance Observer)は、暫定演算結果u′とステージ110の測定速度および測定加速度に基づいて、ステージ110の位置に対する外乱を推定する状態観測器である。外乱オブザーバ350に供給される測定量は速度および加速度に限らず、位置も含むステージ110の駆動量の任意の組合せでよい。
【0030】
以上のように、アクチュエータとしてのエアアクチュエータ120、130において、被駆動物としてのステージ110の駆動制御を担う制御部300では、各種の制御ゲインが設定される。具体的には、比例補償器370における比例ゲインKffv、比例補償器372における比例ゲインKffa、比例補償器374における比例ゲインKffj、位置比例補償器320における比例ゲインKp、速度比例補償器322における比例ゲインKv、加速度比例補償器324における比例ゲインKa等の各種の制御ゲインが、典型的には、エアアクチュエータ120、130を実際に半導体の製造等に使用する前に、適切に調整または設定されるべきである。
【0031】
このような制御ゲインの調整または設定や、その他のアクチュエータの事前調整は、調整者が現場(すなわち、エアアクチュエータ120、130を含むエアステージ100が設置されている場所)または現地においてマニュアルで実施することが多い。しかし、昨今、十分な調整スキルを有する熟練技能者が世界的に減少傾向にあるため、現地で適切な調整者を確保できない場合がある。
【0032】
このような場合、典型的には、アクチュエータの製造や販売を行う企業の技術者を現地に派遣して、現地の調整者による調整作業を支援または指導させたり、現地の人間の代わりに調整作業を実施させたりすることも行われている。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大や、それに伴う労働環境の変化によって、技術者の現地派遣が現実的でない場合も想定される。
【0033】
そこで、本実施形態では、アクチュエータが設置されている現場で適切な調整者が確保できない場合や、調整スキルの高い熟練技能者を現地に派遣できない場合でも、遠隔から安全にアクチュエータを調整できるアクチュエータ遠隔調整システムが提案される。
【0034】
以下の例では、アクチュエータが設置されている現場に調整者や作業者がおらず(すなわち、現場は実質的に無人)、遠隔の熟練調整者が遠隔調整装置を通じて、実質的に単独でアクチュエータの遠隔調整作業を実施する。しかし、本開示は、アクチュエータが設置されている現場に調整者がおり、遠隔の熟練調整者が遠隔調整装置を通じて現地調整者と連携しながら、共同でアクチュエータの遠隔調整作業を実施する場合にも適用可能である。また、本開示は、遠隔の熟練調整者が遠隔調整装置を通じて、アクチュエータが設置されている現場にいる調整者の指導や監督を遠隔から行うが、調整作業自体は現地調整者によって実質的に単独で実施される場合にも適用可能である。
【0035】
図4は、本実施形態に係るアクチュエータ遠隔調整システム200の模式的な機能ブロック図である。アクチュエータ遠隔調整システム200は、遠隔調整装置210と、アクチュエータシステム220と、を備える。遠隔調整装置210は、調整入力部211と、通信部212と、通信状態監視部233と、駆動抑制部234と、を備えてもよい。アクチュエータシステム220は、前述のエアアクチュエータ120、130のコントローラ(以下では、便宜的に、エアアクチュエータコントローラ120、130とも表される)と、調整仲介装置230と、を備えてもよい。調整仲介装置230は、通信部232と、通信状態監視部233と、駆動抑制部234と、駆動情報収集部235と、を備えてもよい。
【0036】
アクチュエータ遠隔調整システム200が以下で説明する作用および/または効果の少なくとも一部を実現できる限り、これらの機能ブロックの一部は省略されてもよい。これらの機能ブロックは、コンピュータの中央演算処理装置、メモリ、入力装置、出力装置、コンピュータに接続される周辺機器等のハードウェア資源と、それらを用いて実行されるソフトウェアの協働によって実現されてもよい。コンピュータの種類や設置場所は問わず、上記の各機能ブロックは、単一のコンピュータのハードウェア資源で実現してもよいし、複数のコンピュータに分散したハードウェア資源を組み合わせて実現してもよい。後述するように、通信状態監視部233および駆動抑制部234は、アクチュエータシステム220側、例えば、調整仲介装置230やエアアクチュエータコントローラ120、130に設けられるのが好ましいが、
図4において点線で示されるように、通信状態監視部233および駆動抑制部234の一部または全部の機能は、遠隔調整装置210側に設けられてもよい。
【0037】
遠隔調整装置210は、アクチュエータシステム220と通信可能であり、当該アクチュエータシステム220におけるエアアクチュエータ120、130を、遠隔から調整する装置である。すなわち、遠隔調整装置210は、アクチュエータシステム220またはエアアクチュエータ120、130が設置されている場所(現場)と異なる場所(遠隔地)に設置されている。遠隔調整装置210は、アクチュエータシステム220と通信しながら、エアアクチュエータ120、130の調整作業(例えば、制御部300における制御ゲインの調整作業または設定作業)を遠隔から実施する。遠隔調整装置210は、自律的または自動的に(すなわち、実質的に無人で)エアアクチュエータ120、130の遠隔調整作業を実施可能なものでもよいが、以下の例では、遠隔調整者(人間)が遠隔調整装置210を操作して、エアアクチュエータ120、130の遠隔調整作業をマニュアルで実施するものとする。
【0038】
エアアクチュエータ120、130の遠隔調整主体である遠隔調整者は、遠隔調整装置210における調整入力部211を通じて、エアアクチュエータ120、130の調整のための各種の情報を入力する。例えば、制御部300における制御ゲインの調整作業においては、遠隔調整者が各種の制御ゲイン(例えば、前述のKffv、Kffa、Kffj、Kp、Kv、Kaの少なくともいずれか)の具体的な値や調整量を指定してもよい。また、調整された制御ゲインの適否を遠隔調整者または遠隔調整装置210が判断するために、当該制御ゲインを実際に使用してエアアクチュエータコントローラ120、130にステージ110を試しに駆動(以下では、調整駆動とも表される)させる調整駆動指令が、調整入力部211に入力された情報と共に遠隔調整装置210からアクチュエータシステム220に送信されてもよい。
【0039】
通信部212は、アクチュエータシステム220との間で、一方向通信または好ましくは双方向通信を行う。例えば、通信部212は、調整入力部211に入力された調整情報や、それに伴うエアアクチュエータ120、130の調整駆動指令を、アクチュエータシステム220に対して送信する。また、通信部212は、アクチュエータシステム220から各種のフィードバック(例えば、制御ゲインの調整値が制御部300に反映された旨の報告や、当該調整値に基づく調整駆動の結果の報告)を受信してもよい。この場合、遠隔調整者は、アクチュエータシステム220からのフィードバックを、遠隔調整装置210の不図示のモニタ(表示装置)等で確認しながら、更なる遠隔調整作業を効率的に実施できる。
【0040】
遠隔調整装置210に設けられてもよい通信状態監視部233および駆動抑制部234については、アクチュエータシステム220(調整仲介装置230)に関して後述する。
【0041】
調整仲介装置230は、遠隔調整装置210によるエアアクチュエータ120、130の遠隔調整作業を、エアアクチュエータコントローラ120、130との間で仲介する装置である。調整仲介装置230は、典型的には、エアアクチュエータ120、130が設置されている現場で利用可能である。例えば、調整仲介装置230は、エアアクチュエータ120、130の調整作業の際または常に、エアアクチュエータコントローラ120、130に接続される調整ツールがインストールされたコンピュータである。なお、調整仲介装置230の一部または全部の機能は、エアアクチュエータコントローラ120、130またはエアステージ100に設けられてもよい。例えば、調整仲介装置230の全部の機能がエアステージ100に設けられる場合、当該エアステージ100が単独でアクチュエータシステム220を構成する(調整仲介装置230は、独立した装置としては存在しない)。この場合、遠隔調整装置210(通信部212)は、遠隔調整対象としてのエアステージ100またはエアアクチュエータ120、130自体と、直接的に通信しながら遠隔調整作業を実施する。
【0042】
調整仲介装置230は、エアアクチュエータ120、130が設置されている現場で、現地調整者がエアアクチュエータ120、130の調整作業を実施するために使用するものでもよい。この場合、十分に高い調整スキルを有する現地調整者であれば、例えば、調整ツールがインストールされたコンピュータである調整仲介装置230を操作して、エアアクチュエータ120、130の現地調整作業を、遠隔調整者や遠隔調整装置210からの支援を受けずに単独で実施できる。一方、現地調整者の調整スキルが高くない場合や現地調整者がいない場合は、遠隔調整者が遠隔調整装置210を通じてエアアクチュエータ120、130の調整作業に遠隔から関与する。
【0043】
調整仲介装置230は、遠隔調整対象としてのエアアクチュエータ120、130および遠隔調整主体としての遠隔調整装置210と通信可能である。具体的には、調整仲介装置230における通信部232は、エアアクチュエータコントローラ120、130における不図示の通信部との間で、一方向通信または好ましくは双方向通信を行う。また、調整仲介装置230における通信部232は、遠隔調整装置210における通信部212との間で、一方向通信または好ましくは双方向通信を行う。
【0044】
ここで、遠隔調整装置210における通信部212と調整仲介装置230における通信部232の間の通信の態様または形態は任意であり、例えば、全部が有線通信として実現されてもよいが、少なくとも一部が無線通信として実現されるのが好ましい。例えば、遠隔調整装置210(通信部212)がインターネット等(または、そこに仮想的に構成される後述の「VPN」)に接続するためのアクセス部分、および、調整仲介装置230(通信部232)がインターネット等に接続するためのアクセス部分を、無線LAN等による無線接続とすることで、遠隔調整装置210および調整仲介装置230の携帯性または可搬性を阻害しない(例えば、有線接続の場合のケーブルのように持ち運びを妨げない)。
【0045】
同様に、調整仲介装置230における通信部232とエアアクチュエータコントローラ120、130における不図示の通信部の間の通信の態様または形態は任意であり、例えば、無線通信として実現されてもよいが、有線通信として実現されるのが好ましい。前述のように、調整仲介装置230が、エアアクチュエータ120、130が設置されている現場に設けられる場合、両者の間を有線LAN等によって有線接続することで、優れたセキュリティ、速度、安定性、品質等を実現できる。
【0046】
例えば、調整仲介装置230における通信部232は、遠隔調整装置210における通信部212から、調整入力部211に入力された調整情報や、それに伴うエアアクチュエータ120、130の調整駆動指令を受信する。そして、通信部232は、通信部212から受信した調整情報や調整駆動指令を、エアアクチュエータコントローラ120、130に対して送信または転送する。この結果、エアアクチュエータコントローラ120、130の制御部300における制御ゲイン等が、調整入力部211に入力された調整情報に基づいて遠隔から調整される。また、エアアクチュエータコントローラ120、130は、受信した調整駆動指令に応じて、調整後の制御ゲイン等に基づいて被駆動物としてのステージ110の調整駆動を行う。なお、調整仲介装置230における通信部232は、ステージ110の調整駆動の開始前に、または、ステージ110の調整駆動と並行して、受信した調整情報に基づく制御ゲイン等の調整が完了した旨を、遠隔調整装置210における通信部212に対して報告してもよい。
【0047】
この調整駆動中(または、その前または後)のステージ110の駆動状態に関する各種の駆動情報は、駆動情報収集部235によって収集されてもよい。ここで、ステージ110の駆動情報は、ステージ110自体の位置、速度、加速度等の物理駆動量でもよいし、ステージ110の駆動に直接的または間接的に関与する任意の物理量(例えば、制御部300による制御状態を表す任意のパラメータ、サーボバルブ126、136の状態を表す任意のパラメータ、配管128、138やサーボチャンバ150等における空気の圧力や温度、エアステージ100が設置されている場所の温度や湿度)でもよい。このように調整駆動に関して収集された駆動情報は、当該調整駆動の成否(すなわち、調整後の制御ゲイン等の適否)を表す。
【0048】
駆動情報収集部235は、このような調整駆動の結果や、収集した駆動情報の少なくとも一部を、調整仲介装置230における通信部232を通じて、遠隔調整装置210における通信部212に対して送信してもよい。この場合の駆動情報収集部235および通信部232は、エアアクチュエータ120、130の調整中のステージ110の駆動状態を、アクチュエータシステム220から遠隔調整装置210に送信する駆動状態送信部を構成する。前述のように、調整仲介装置230における通信部232(アクチュエータシステム220)から各種のフィードバックを通信部212で受信した遠隔調整装置210または遠隔調整者は、これらのフィードバックを確認しながら更なる遠隔調整作業を効率的に実施できる。
【0049】
以上のような遠隔調整装置210(通信部212)およびアクチュエータシステム220(調整仲介装置230における通信部232)の間の通信は、プライベートネットワーク上で行われるのが好ましい。ここで、プライベートネットワークは、インターネット等のパブリックネットワーク内に仮想的に構成される、いわゆるバーチャルプライベートネットワーク(VPN: Virtual Private Network)でもよい。VPN等のプライベートネットワークは、パブリックネットワークと比べて高いセキュリティを確保できるため、エアアクチュエータ120、130等の高いセキュリティが要求される産業用途のアクチュエータの遠隔調整作業に好適である。
【0050】
一方、VPN等のプライベートネットワークでは、パブリックネットワークと比べて、通信の速度、安定性、品質等が劣る場合もある。このため、次に説明する通信状態監視部233によって、通信部212および通信部232の間の通信状態を監視することが重要である。
【0051】
通信状態監視部233は、アクチュエータシステム220におけるエアアクチュエータ120、130を、アクチュエータシステム220と通信可能な遠隔調整装置210によって遠隔から調整する際に、アクチュエータシステム220と遠隔調整装置210の間の通信状態を監視する。図示の例では、通信状態監視部233は、調整仲介装置230における通信部232と遠隔調整装置210における通信部212の間のVPN接続における通信状態を監視する。ここで、アクチュエータシステム220および/または遠隔調整装置210における通信状態監視部233によって監視される通信状態は、以下の具体例で挙げるものでもよいし、通信の速度、安定性、品質等を直接的または間接的に表す任意のパラメータでもよい。
【0052】
通信状態監視部233は、監視対象であるアクチュエータシステム220と遠隔調整装置210の間の通信状態における異常を検出する。駆動抑制部234は、通信状態に異常が見られた場合(すなわち、通信状態監視部233によって通信状態における異常が検出された場合)、エアアクチュエータコントローラ120、130によるステージ110の駆動を抑制する。好ましくは、駆動抑制部234は、通信状態に異常が見られた場合、エアアクチュエータコントローラ120、130によるステージ110の駆動を停止する。
【0053】
前述のように、遠隔調整装置210による遠隔調整作業においては、調整中の制御ゲイン等に基づく調整駆動が行われる。例えば、現場に調整者や作業者がいない場合(すなわち、現場が実質的に無人の場合)、万が一ステージ110が調整駆動中に暴走した場合、通信状態が不安定なままでは遠隔調整装置210を通じたステージ110の制御が難しくなる可能性がある。そこで、アクチュエータシステム220と遠隔調整装置210の間の通信状態に異常(または、その兆候)が見られた場合、駆動抑制部234は、即時にステージ110の駆動を抑制または停止することで、安全性を最優先に確保する。
【0054】
以上のように、駆動抑制部234の動作のトリガーとなる通信状態における異常は、以下の具体例で挙げるものでもよいし、通信の速度、安定性、品質等に関するパラメータが所定の基準値を下回ったことでもよい。また、駆動抑制部234は、通信状態監視部233によって検出される通信状態における異常の兆候に加えて、駆動情報収集部235によって収集されるステージ110の駆動情報も考慮して、ステージ110の駆動の抑制または停止の可否を判断してもよい。
【0055】
例えば、通信状態に異常の僅かな兆候が見られる場合であっても、ステージ110の駆動状態に関するリスクが低い場合(例えば、ステージ110の位置が可動範囲の端から離れている場合、ステージ110の速度や加速度が小さい場合、ステージ110に異常な振動が見られない場合)は、安全性に関するリスクが低いと判断できることもある。このような場合は、駆動抑制部234がステージ110の駆動を停止せずに、調整駆動を続行してもよい。
【0056】
逆に、通信状態に見られる異常の兆候が僅かな場合であっても、ステージ110の駆動状態に関するリスクが高い場合(例えば、ステージ110の位置が可動範囲の端に近い場合、ステージ110の速度や加速度が大きい場合、ステージ110に異常な振動が見られる場合)は、安全性に関するリスクが高いと判断できることもある。このような場合は、駆動抑制部234がステージ110の調整駆動を即時に停止するのが好ましい。
【0057】
以上のように、駆動抑制部234の動作可否は、通信状態監視部233によって検出される通信状態における異常の兆候と、駆動情報収集部235によって収集されるステージ110の駆動情報と、の総合的な考慮に基づいて判断されるのが好ましい。なお、エアアクチュエータコントローラ120、130には、実稼働時(すなわち、非調整時)にステージ110の暴走等が検出されると、ステージ110を緊急停止する安全機能が設けられることが一般的である。これに対して、駆動抑制部234の動作可否の判断における駆動状態(駆動情報)についての基準は低くする(駆動抑制部234が動作しやすくする)のが好ましい。すなわち、実稼働時では安全機能が発動しないような駆動状態でも、遠隔調整時には駆動抑制部234の動作を許容するのが好ましい。これは、実稼働時には、実質的に駆動状態のみが安全上のリスク要因になるのに対し、遠隔調整時には、駆動状態に加えて通信状態も安全上のリスク要因になるためである。このように、遠隔調整時には、駆動状態について保守的な(低い)基準を設定することで、通信状態と相まった総合的な安全上のリスクを効果的に低減できる。
【0058】
以上のように、遠隔調整時における安全性の確保(ステージ110の暴走等の抑制)を主目的とする通信状態監視部233および駆動抑制部234は、不安定になりうる通信状態(監視対象そのもの)の影響を受けないように、アクチュエータシステム220側(例えば、調整仲介装置230)に設けられるのが好ましい。但し、通信状態監視部233および駆動抑制部234の少なくとも一部は、遠隔調整装置210側に設けられてもよい。
【0059】
以上で概念的に説明したものに加えてまたは代えて、駆動抑制部234の動作のトリガーとなる通信状態における異常としては、以下のものが例示される。
【0060】
第1の具体例として、通信状態監視部233は、アクチュエータシステム220(通信部232)および遠隔調整装置210(通信部212)の間の通信が所定時間に亘って行われなかった場合、通信状態に異常が見られたと判定してもよい。例えば、アクチュエータシステム220(通信部232)および遠隔調整装置210(通信部212)の間の通信が所定時間に亘って遮断された場合に、通信状態監視部233は通信状態に異常が見られたと判定し、駆動抑制部234はステージ110の駆動を抑制または停止する。
【0061】
第2の具体例として、通信状態監視部233は、遠隔調整装置210による調整内容が、所定時間内にエアアクチュエータコントローラ120、130に反映されない場合、通信状態に異常が見られたと判定してもよい。例えば、制御ゲイン等の変更後に、駆動情報収集部235によって収集された駆動情報に基づいて、制御部300による制御状態が不安定(例えば、発振状態)になったことが検出されたにも関わらず、所定時間内に制御ゲイン等が更新されない(新たな制御ゲイン等が設定されない)場合、通信状態の異常によって、制御部300による制御状態が不安定になったことが遠隔調整装置210における通信部212に伝わっていないか、遠隔調整装置210が新たに指定した制御ゲイン等が調整仲介装置230における通信部232に届いていない可能性が高い。そこで、駆動抑制部234は、安全のためにステージ110の駆動を抑制または停止する。
【0062】
第3の具体例として、駆動情報収集部235によって収集された駆動情報の通信部232による送信および/または通信部212による受信が正常に行われない場合、通信状態監視部233は、通信状態に異常が見られたと判定してもよい。例えば、通信部232が駆動情報を通信部212に対して送信したにも関わらず、所定時間内に通信部212から然るべき受信確認が通信部232に届かない場合は、両通信部212、232の間の通信状態に異常がある可能性が高いため、駆動抑制部234はステージ110の駆動を抑制または停止する。
【0063】
以上、本開示を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本開示の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0064】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0065】
100 エアステージ、110 ステージ、120 X軸エアアクチュエータ、130 Y軸エアアクチュエータ、200 アクチュエータ遠隔調整システム、210 遠隔調整装置、211 調整入力部、212 通信部、220 アクチュエータシステム、230 調整仲介装置、232 通信部、233 通信状態監視部、234 駆動抑制部、235 駆動情報収集部、300 制御部。