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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029774
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】搬送システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20250228BHJP
   B65G 1/137 20060101ALI20250228BHJP
   B65G 1/00 20060101ALI20250228BHJP
   B65G 1/10 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
G05D1/02 K
B65G1/137 A
B65G1/00 501C
B65G1/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134589
(22)【出願日】2023-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】萩原 高行
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 久
【テーマコード(参考)】
3F022
3F522
5H301
【Fターム(参考)】
3F022AA15
3F022FF21
3F022JJ11
3F022PP04
3F522AA02
3F522BB25
3F522BB35
3F522CC01
3F522DD05
3F522DD29
3F522DD37
3F522EE15
3F522FF12
3F522FF37
5H301AA01
5H301BB05
5H301BB10
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301FF05
5H301FF11
5H301FF15
5H301GG09
5H301QQ04
(57)【要約】
【課題】
床面に対し格子状に2次元コードなどの床マーカを貼付け、走行台車がその床マーカをカメラで読み取り自身の位置と姿勢を認識する倉庫システムにおいて、カメラの撮像画像の劣化を点検し、床マーカの誤読により作業が停止する前にカメラの保守を促すこと。
【解決手段】
走行エリアを走行する駆動装置と、走行エリアの床面に設けられる床マーカを撮像するカメラと、を有する搬送装置と、搬送装置を制御する制御装置と、を備える搬送システムであって、床マーカには、床マーカの位置に対応する情報が含まれ、搬送装置は、床マーカの位置に移動したとき、床マーカをカメラで撮像して床マーカの位置に対応する情報を取得し、走行エリアの床面には、検査パタンが設けられ、搬送装置は、カメラを検査するために、検査パタンの位置に移動したとき、検査パタンをカメラで撮像して検査パタンの画像を取得する搬送システム。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行エリアを走行する駆動装置と、前記走行エリアの床面に設けられる床マーカを撮像するカメラと、を有する搬送装置と、前記搬送装置を制御する制御装置と、を備える搬送システムであって、
前記床マーカには、前記床マーカの位置に対応する情報が含まれており、
前記搬送装置は、前記床マーカの位置に移動したとき、前記床マーカを前記カメラで撮像して前記床マーカの位置に対応する情報を取得し、
前記走行エリアの床面には、検査パタンが設けられており、
前記搬送装置は、前記カメラを検査するために、前記検査パタンの位置に移動したとき、前記検査パタンを前記カメラで撮像して前記検査パタンの画像を取得する
搬送システム。
【請求項2】
前記搬送装置は、前記検査パタンの画像に基づいて、前記カメラの検査を実行する
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記搬送装置は、前記検査パタンの画像を前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、受信した前記検査パタンの画像に基づいて、前記カメラの検査を実行する
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記検査パタンは、前記搬送装置が前記床マーカを前記カメラで撮像するときに、撮像可能な範囲に位置し、
前記搬送装置は、前記床マーカと前記検査パタンを含む画像を取得可能である
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項5】
前記検査パタンは、前記床マーカとは異なる位置にあり、
前記搬送装置は、前記床マーカの位置から前記検査パタンの位置に移動して、前記カメラで前記検査パタンを撮像する
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項6】
前記検査パタンの少なくとも一部は、1又は複数の間隔で平行に並んだ複数の線で構成され、
前記検査パタンは、前記床マーカの位置に対応する情報を構成する部分と異なる
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項7】
前記検査パタンは、前記床マーカの少なくとも一部であり、前記床マーカの位置に対応する情報の構成要素である
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項8】
前記検査パタンは、1又は複数の間隔で平行に並んだ複数の線状のブロックが含まれ、
前記複数の線状のブロックは、前記床マーカの位置に対応する情報の構成要素である
請求項7に記載の搬送システム。
【請求項9】
前記搬送装置は、前記検査パタンの位置に停止中に、前記検査パタンを撮像する
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項10】
前記搬送装置は、走行中に前記検査パタンの位置を通過するときに、前記検査パタンを撮像する
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項11】
前記走行エリアの床面には、複数の検査パタンが設けられており、
前記複数の検査パタンで、前記搬送装置の前記カメラの検査を実行し、
前記制御装置は、前記複数の検査パタンでの検査の結果を用いて、前記搬送装置の前記カメラの状態を判定する
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項12】
複数の搬送装置を備え、
前記複数の搬送装置が、当該搬送装置のカメラの検査を前記検査パタンで実行し、
前記制御装置は、前記複数の搬送装置の検査の結果を用いて、前記検査パタンの状態を判定する
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項13】
前記搬送装置が、被搬送物を積載している場合と被搬送物を積載していない場合の其々で、前記搬送装置のカメラの検査を実行する
請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の搬送システム。
【請求項14】
前記搬送装置が搬送可能な被搬送物が保管されるエリアと前記搬送装置が前記被搬送物を搬送するときに走行する走行エリアとで構成されるスペースに隣接するスペースの所定の場所の床に、前記検査パタンが配置される
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項15】
前記搬送装置は蓄電池を有し、
前記搬送装置が走行する走行エリアに、前記蓄電池を充電する充電器が設置され、
前記検査パタンは前記充電器の設置位置に配置される
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項16】
前記検査パタンは、前記搬送装置が搬送する被搬送物の入庫または出庫のために設けられた所定の位置、または前記搬送装置が搬送する被搬送物を移載するために設けられた所定の位置、または前記搬送装置を保守するために設けられた所定の位置、または前記搬送装置が待機するために設けられた所定の位置に配置される
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項17】
前記制御装置は、走行台車情報データベースを有し、
前記制御装置は、前記カメラの検査を実行した後に、前記走行台車情報データベースに前記検査の実行結果である前記カメラの画質の劣化に関する情報を記録し、出力する
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項18】
搬送装置は、前記床マーカの位置で、旋回により移動方向を変えることが可能であり、
搬送装置は、前記検査パタンについて、旋回により、前記搬送装置の方向を変えながら前記カメラの検査を実行する
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項19】
前記検査パタンに対する、前記搬送装置の方向を変えて、前記搬送装置の前記カメラの検査を実行する
請求項1に記載の搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動経路に沿って移動するロボットに関し、床面に対し格子状に2次元コードなどの床面マーカを貼付し、その床面マーカを読み取ることで自身の位置と姿勢を認識する方法がある。例えば、特許文献1に記載の技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2015/052825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
床マーカ(床面マーカ)を読み取るセンサとして、床面方向に向けて取り付けられたカメラが実装された走行台車(搬送装置)がある。走行台車を長期稼働すると、経年変化により床マーカを撮像するカメラの位置がずれたり、レンズの焦点調整に狂いが生じたり、レンズへの埃の付着等により、取得画像の画質が劣化することがある。取得画像の画質の劣化が進むにつれて、床マーカ読込異常の発生率が上がり、非常停止が頻発して稼働率が低下する。とくに、走行台車が多数稼動している倉庫では、1台が故障して通路を封鎖すると、そこを通過しようとする他のすべての走行台車も停止してしまうため、稼働率が大幅に悪化してしまう。
【0005】
床マーカ撮像画像の画質の劣化を事前に検知できれば、例えば走行台車の撮像画像の画質劣化の情報を設備管理者に提示することで、走行台車が床カメラの画質の劣化により床マーカを誤読し非常停止する前に、カメラの保守を促すことができる。そこで、搬送装置における撮像画像の劣化を検査可能な技術を提供することに課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、下記の搬送システムが提供される。この搬送システムは、走行エリアを走行する駆動装置と、走行エリアの床面に設けられる床マーカを撮像するカメラと、を有する搬送装置と、搬送装置を制御する制御装置と、を備える。床マーカには、床マーカの位置に対応する情報が含まれており、搬送装置は、床マーカの位置に移動したとき、床マーカをカメラで撮像して床マーカの位置に対応する情報を取得する。走行エリアの床面には、検査パタンが設けられており、搬送装置は、カメラを検査するために、検査パタンの位置に移動したとき、検査パタンをカメラで撮像して検査パタンの画像を取得する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、例えば、走行台車の床マーカ撮像画像の画質の劣化度を設備管理者が把握できるようになり、床マーカ読込異常が発生する前にカメラを保守する機会が与えられ、稼働率の大幅な低下を防止できる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】床マーカ撮像画像画質点検方法の一例を示すフローチャートである。
図2】検査に用いる床マーカの一例を示す図である。
図3】検査パタンの撮像画像の一例を示す図である。
図4】システムの構成の一例を表すブロック図である。
図5】検査パタンの一例を示す図である。
図6】撮像画像の画質の劣化度に応じた処理の一例を示すフローチャートである。
図7】走行台車状態管理データの一例を示す図である。
図8】撮像画像のエリア別に画質を検査する、検査パタンの一例を示す図である。
図9】棚搬送の倉庫システムの一例を示す斜視図である。
図10】位置情報を示すパタンと検査パタンを兼用した床マーカの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。実施形態は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
各種情報の例として、「テーブル」、「リスト」、「キュー」等の表現にて説明することがあるが、各種情報はこれら以外のデータ構造で表現されてもよい。例えば、「XXテーブル」、「XXリスト」、「XXキュー」等の各種情報は、「XX情報」としてもよい。識別情報について説明する際に、「識別情報」、「識別子」、「名」、「ID」、「番号」等の表現を用いるが、これらについてはお互いに置換が可能である。
同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
実施形態において、プログラムを実行して行う処理について説明する場合がある。ここで、計算機は、プロセッサ(例えばCPU、GPU)によりプログラムを実行し、記憶資源(例えばメモリ)やインターフェースデバイス(例えば通信ポート)等を用いながら、プログラムで定められた処理を行う。そのため、プログラムを実行して行う処理の主体を、プロセッサとしてもよい。同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機、ノードであってもよい。プログラムを実行して行う処理の主体は、演算部であれば良く、特定の処理を行う専用回路を含んでいてもよい。ここで、専用回路とは、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等である。
プログラムは、プログラムソースから計算機にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバまたは計算機が読み取り可能な記憶メディアであってもよい。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバはプロセッサと配布対象のプログラムを記憶する記憶資源を含み、プログラム配布サーバのプロセッサが配布対象のプログラムを他の計算機に配布してもよい。また、実施形態において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0010】
実施形態では、搬送システムの一例を説明する。詳細には、無人走行台車を用いた搬送システム、特に床のマーカをカメラで撮像して自己位置推定する走行台車の保守の技術に関する。
【0011】
走行台車(搬送装置)は倉庫制御装置(制御装置)の指示により、搬送のために動作し走行する。後述するとおり、もともと走行台車が一定時間停止する場所、例えば充電ステーション(充電器が置いてあり走行台車の蓄電池を充電する場所)、ピッキングステーション(走行台車が搬送する棚に納められる商品の出庫や入庫をする作業場所)、あるいはパレット等の荷の移載場所に、検査用のパタンが貼付けられており、走行台車が停止中に、カメラの点検が実行される。なお、走行台車が走行する場所に検査用のパタンが貼り付けられており、走行台車の走行中に、カメラの点検が実行されてもよい。
【0012】
図1は、走行台車の床マーカの撮像画像画質点検方法の一例のフローチャートを示す。走行台車が床マーカ上に位置すると、カメラの撮像画像に床マーカが映る。処理が開始し(S1001)、走行台車は、床マーカの情報を取得する(S1002)。床マーカは、例えば二次元コードにより、位置情報を表現している。
【0013】
例えば、所定の位置のマーカに検査パタンが追加され、走行台車は、検査パタンの有無に応じて処理を行う(S1003)。例えば、走行台車の制御装置が撮像画像の画像処理を行い、床マーカ上の検査パタンを認識する。このように、画像処理で検査パタンの特徴を抽出して検査パタンを認識しても良いし、あらかじめ検査パタンの位置を地図データに登録しておき、床マーカより取得した位置情報の属性を地図データから取得することにより検査パタンの有無を認識しても良い。
【0014】
床マーカ上の検査パタンを認識すると(S1003-YES)、点検動作開始処理が実行される(S1004)。具体的には、走行台車の制御装置は、倉庫制御装置に点検動作開始の報告を出し、台車の位置決め動作を実行する。位置決め動作は、通常の搬送運転と同様に、撮像画像の中央に床マーカが映る位置に、走行台車を位置決めして停止させる動作である。よって、元々一定時間停止する充電ステーション等の場所であれば、点検のための動作が追加されることは無く、搬送効率に影響は無い。
【0015】
そして、走行台車が停止中にカメラで床マーカを撮像し、画質の点検が実行される(S1005)。後述する通り、撮像画像の検査パタンを抽出して、画質の劣化度が判定される。点検結果の画質劣化度は、倉庫制御装置やステーション端末がアクセス可能な、走行台車の情報を格納するデータベース(DB)に記録される(S1006)。走行台車は、倉庫制御装置に点検動作の終了の報告を上げ、台車の点検動作中の状態を解除して、倉庫制御装置の指令に応じて通常の移動ができる状態にする(S1007)。
【0016】
以上により、走行台車の床マーカの撮像画像画質点検の一連の動作を終了し(S1008)、通常の搬送作業の動作に復帰する。もともと走行台車が一定時間停止する場所で点検動作をすることで、見た目上は始終通常の搬送動作をしているのと同じである。
【0017】
停止中に検査パタンを撮像することで、走行による影響を除き、高精度な検査が可能である。例えば、充電中や待機中のタイミングで実行でき、走行中、搬送中の負荷増加を避けることができる。ただし、走行台車が通過する場所で点検動作を行ってもよい。この場合、走行台車は、走行中に床マーカ情報を取得し、走行台車の停止が省略され(すなわち、走行台車が走行したままで)、上記と同様の点検処理が行われる。
【0018】
なお、画質の劣化度の判定は、走行台車の制御装置が行い、走行台車の制御装置が、その結果である画質劣化度を外部に送信してもよい。倉庫制御装置が検査パタンの情報を取得し、画質の劣化度の判定を行ってもよい。
【0019】
図2は、検査に用いる床マーカの一例を示す。中心部は、検査用ではない一般の床マーカと同様の位置情報を表すマーカ2001、例えば二次元コードを配置する。位置情報のマーカ2001(二次元コード)に被らないように、その部分の上下左右に縞模様の検査パタン(2002a~2002d)を配置する。上下に配置した縞模様の向きは縦向き、左右に配置した縞模様の向きは横向きにして、カメラの2方向の画質が点検可能になる。
【0020】
以上のように、床マーカは、一例として、通常の位置を表すマーカ2001と、縞模様の検査パタン(2002a~2002d)で構成される。自己位置特定のための床マーカの撮像とともに、検査パタンの撮像を行えるため、走行処理や撮像処理が効率的である。図2の例では、縞模様の検査パタンを上下左右に配置しているが、上下のいずれか一方と、左右のいずれか一方のみ、2カ所の配置にしても良い。走行台車が図2の床マーカに対して上下方向に走行する場合もあるし、横方向に走行する場合もある。いずれの方向に対しても、2カ所以上に配置した検査パタンにより、横向きの縞模様と、縦向きの縞模様の、2方向の縞模様に対して、撮像画像の劣化を検査できる。このようにして、二次元コードを認識するために、2方向の画質の劣化を評価する。なお、2方向の画質を点検するために、斜めの向きの縞模様を配置しても良い。
【0021】
画像処理では、例えば、二次元コードの領域の4隅のエッジ(2003a~2003d)が抽出され、その周囲に配置された決められた領域が検査パタンとして抽出される。
【0022】
図3を用いて、画質点検の原理を説明する。図3は、図2における符号A1の部分を示している。撮像画像全体の画像処理より抽出した検査パタンの領域で、2値化処理が行われる。検査パタンの縞模様に相当するエッジが抽出され、黒と黒の領域の間に仮想直線を求める計算処理が行われる。この仮想直線が、1ピクセル以上の白のピクセルで連続して繋がっていれば、劣化が無いと判定する。逆に、黒と黒のエッジの隙間がつぶれ、仮想直線が途中で切れている場合は画質の劣化が進行していると判定する。後述する通り、位置情報を表す二次元コードを認識するために必要な解像度を基準に試験パタンの縞模様の間隔を与えれば、二次元コードの誤読が生じるほどの画質の劣化を判定できる。
【0023】
図4に倉庫システムの構成の一例を表すブロック図を示す。搬送システムの一例である倉庫システムは、作業情報に基づき走行台車を制御する倉庫制御装置100、商品や部品を搬送する走行台車203、走行台車から商品や部品を受け取ったり受け渡したりする場所にあるステーション端末210、これらの間で情報通信するためのネットワーク150で構成される。
【0024】
倉庫制御装置100、走行台車203、ステーション端末210は、走行台車情報のデータベース(DB)を持って情報共有するか、外部の走行台車情報のデータベース(DB)にアクセス可能にする。よって、走行台車が実行した床カメラの点検結果の情報は、倉庫制御装置100、ステーション端末210で確認ができる。走行台車情報に床カメラの劣化の情報が登録されると、倉庫制御装置100が所定の時間間隔で自動的に走行台車情報をチェックして、床カメラの画質が劣化している走行台車203を確認することができる。また、ステーション端末210を操作し走行台車情報を出力装置に表示させることで、作業者は任意の時間に走行台車情報をチェックして床カメラの画質が劣化している走行台車203を確認することができる。よって、該当の走行台車203を保守エリアに誘導して床カメラの保守をすることができる。これにより、該当の走行台車203が床マーカの誤認識で異常停止し、倉庫システムの稼働が停止することを事前に防止することができる。
【0025】
次に、具体的なハードウェア構成について説明する。倉庫制御装置100は、演算装置101と、メモリ102と、入力装置103と、出力装置104と、記憶装置195aと、通信インタフェース131と、を備える。演算装置101は、所定の処理を実行する主体であり、プロセッサを用いて構成することができる。メモリ102は、主記憶装置であり、演算装置101がデータ処理を実行する際に、適宜のデータを格納する。メモリ102は、一例として、RAM(Random Access Memory)を用いて構成される。入力装置103は、作業者等が操作に用いる装置である。出力装置104は、作業者等に適宜の情報を出力する装置である。記憶装置195aは、補助記憶装置であり、適宜のデータを格納する。記憶装置195aは、例えば、作業情報196、走行台車情報300を格納する。記憶装置195aは、一例として、HDD(Hard Disk Drive)を用いて構成される。通信インタフェース131は、ネットワーク150を介した通信に用いられる構成である。
【0026】
走行台車203は、制御装置161と、記憶装置195bと、通信インタフェース151と、センサ170と、駆動装置175と、を備える。また、走行台車203は、充電可能な蓄電池を備える。制御装置161は、走行台車の制御に用いられる。制御装置161は、例えば、駆動装置175を制御することで、走行制御162をする。また、制御装置161は、画像処理制御163をする。制御装置161は、一例として、プロセッサとメモリを用いて構成することができる。記憶装置195bは、補助記憶装置であり、適宜のデータを格納する。記憶装置195bは、例えば、作業情報196、走行台車情報300を格納する。記憶装置195bは、一例として、HDD(Hard Disk Drive)を用いて構成される。通信インタフェース151は、ネットワーク150を介した通信に用いられる構成である。
【0027】
センサ170は、一例として、障害物センサ171、床カメラ172、棚カメラ173を含む。障害物センサ171は、障害物の検知に用いられるセンサであり、例えば、測距センサである。床カメラ172は、床面を撮像する。棚カメラ173は、例えば、搬送する棚202を撮像する。
【0028】
ステーション端末210は、入力装置192と、出力装置193と、制御装置194と、記憶装置195cと、通信インタフェース191と、を備える。入力装置192は、作業者等が操作に用いる装置である。出力装置193は、作業者等に適宜の情報を出力する装置である。制御装置194は、ステーション端末の制御に用いられ、一例として、プロセッサとメモリを用いて構成することができる。記憶装置195cは、補助記憶装置であり、適宜のデータを格納する。記憶装置195cは、例えば、作業情報196、走行台車情報300を格納する。記憶装置195cは、一例として、HDD(Hard Disk Drive)を用いて構成される。通信インタフェース191は、ネットワーク150を介した通信に用いられる構成である。
【0029】
図5を用いて、検査パタンの縞模様の間隔について、より詳細な説明をする。検査パタンの縞模様の間隔rは、二次元コードのブロックの間隔rよりも、狭くすることで、二次元コードの認識に必要な画像処理の解像度で点検が可能になる。ここで、r、r、r、...rは、等間隔でも良いが、その場合は床カメラの点検結果は合格または不合格の2種類となる。不合格の場合、走行台車の床マーカの誤読による停止で倉庫システムを停止するリスクが高いため、早急に対処することが望ましい。
【0030】
一方、r、r、r、...rの間隔を段階的に狭くすると、劣化度を段階的に評価することが可能となる。例えば、劣化が無いものをA、劣化が進行中のものをB,劣化がひどく誤読の可能性があるものをCと分類して、走行台車情報に記録することができる。劣化度がCになる前に保守をすれば良いため、倉庫システムの稼働時間外などに計画的な保守が可能になる。
【0031】
図6は、画質点検処理の一例を示したフローチャートである。画質点検処理が実行され(S1601)、走行台車状態管理データ(走行台車情報のデータベースである走行台車情報データベース)に画質劣化度が記録される(S1602)。
【0032】
そして、劣化判定が行われる(S1603)。例えば、図5の検査パタンを用いる場合では、劣化度をA~Cに分類し、Aの範囲は良好として1点、Bの範囲はやや劣化しているとして2点、Cの範囲は誤読の可能性があるほど劣化が進行しているとして3点を与えるとする。このとき、例えば、判定値3とすれば、該当の走行台車が床のコードを誤読して非常停止し、倉庫システムの稼働が停止する前に保守対応処理を実行することができる(S1603-YES、S1604)。保守対応処理とは、例えば、倉庫制御システムが該当の走行台車に指示を出し、他の走行台車の走行に影響が無い保守エリア等に移動することである。
【0033】
以上は、最も劣化が進んだ場合の処理について述べたが、劣化がやや進んでいるBの範囲の場合に、カメラの画質劣化のアラームをステーション端末等に表示させることも可能である。なお、画質点検処理では、倉庫制御装置100の演算装置101、走行台車203の制御装置161、あるいは、ステーション端末210の制御装置194が、処理主体となり得る。
【0034】
図7は、走行台車状態に登録されているデータをステーション端末の出力装置に表示した例を示す。走行台車情報(走行台車状態管理データ500)は、装置ID501が割り当てられた走行台車毎に、例えば稼働状態502、作業ID503、現在位置504、作業ステーションID505、棚ID506、異常コード(異常CD507)、カメラ画質508、等を一覧で示した情報である。
【0035】
稼働状態502は、走行台車の稼働状態を示し、現在作業中か、未作業で待機中か、充電中か、異常が発生して停止中か、を示す。作業ID503は、割り当てられた作業の識別番号を示し、倉庫制御システムが管理する作業情報に問い合わせ照合できる番号を示す。現在位置504は、走行台車が現在走行または停止している位置の、マップ上の番号を示す。作業ステーションID505は、作業中に割り当てられている作業ステーションの場所を示す。棚IDは、走行台車が搬送している棚を識別するID番号を示す。異常CD506は、走行台車が異常中の場合に、異常の内容を表すコード番号を示す。カメラ画質507は、先に説明した床カメラ撮像画像の劣化度を示す。このように、作業者がステーション端末を操作して、出力装置に走行台車情報を表示させることにより、床カメラの状態を確認することができる。なお、図7の表示の態様は一例であり、適宜に変更してもよい。例えば、カメラ画質508は、点数表示であってもよい。
【0036】
図8は、床マーカの撮像範囲全体に検査パタンを配置した例である。走行台車が図の下から上に向かって走行する場合、床マーカは撮像画像の上から下に向かって移動する。検査パタンのエリアを定義し、撮像画像の中心部の重要なエリアの劣化と、撮像画像の端の方のあまり重要ではないエリアの劣化に区別することができる。
【0037】
そこで、例えば、画質の劣化度aとエリアに割り当てた重み係数mの積、a×mで評価する。劣化度aは、劣化の無いAの場合に0、劣化が進行中のBの場合に1、劣化がひどく誤読の可能性があるCの場合に2の数値を割り当てる。重み係数mは、停止位置で二次元コードを読む最も重要なエリアに3、走行中に二次元コードが通過する比較的重要なエリアに2、通常は二次元コードが映らないあまり重要ではないエリアに1の数値を割り当てる。例えば、エリア(F-5、F-6)では、重み係数mが1である。このようにすれば、重要なエリアの画質の劣化でa×mの評価値が大きくなり、撮像画像の中心部の重要なエリアを優先した保守を計画することが可能となる。一例として、エリア(F-5、F-6)に劣化が見られた場合には保守を計画しないで、中心部に劣化が見られた状態で保守を計画することができる。
【0038】
図9により、棚搬送の倉庫システムを例に、検査パタンの配置の例を説明する。倉庫システムでは、保管スペース901に、複数の棚が縦横方向に格子状に配置されている。棚は、所定数(例えば2×6個又は1×6個)の棚からなる「島」を形成する。
【0039】
保管スペース901内には、複数の走行台車が配置される。走行台車は、棚の下に入り込んで棚を持ち上げて走行し棚を搬送する。保管スペース901の周辺の所定の箇所には、走行台車を充電するための複数の充電ステーション902が配置される。この例では、充電ステーション902には、充電器903が設けられている。
【0040】
保管スペース901の外縁部の所定の位置には、複数の作業ステーション904が配置される。作業ステーション904では、作業員が商品の入庫作業及び出庫作業を行う。作業ステーション904には、ステーション端末210が設けられている。また、保管スペース901に隣接する保守スペース905には、故障した走行台車を退避することができる。
【0041】
保管スペース901の床面は、格子状に二次元コードによる床マーカを貼付け、走行台車はその床マーカを読み取ることで自身の位置と姿勢を認識する。倉庫システムは、もともと走行台車が一定時間停止する位置で床カメラの撮像画像画質点検を行うことを特徴としている。図9の例では、まず、充電ステーション902の位置に検査パタンPを配置する。充電には一定時間を要することから、充電で走行台車が停止している間に、その場所に配置した検査パタンPで床カメラ撮像画像の画質点検を行う。
【0042】
同様に、作業ステーション904で作業中に、走行台車は一定時間停止する。そこで、作業ステーション904の前に検査パタンPを配置することで、作業中に走行台車が停止している間に、床カメラ撮像画像の画質点検を行うことができる。
【0043】
さらに、保守スペース905にも検査パタンPを配置する。保守スペース905は、走行台車を保守するためのスペースであり、走行台車の床カメラ撮像画像の画質が劣化した際にも、このスペースに走行台車を移動させる。床カメラの調整をした後に、その場所に配置した検査パタンPを使って、撮像画像の画質をチェックすることができる。
【0044】
なお、図9で示した検査パタンの配置は一例である。走行台車の走行中に検査を行ってもよい。従って、保管スペース901における走行台車の走行経路に検査パタンPが配置されてもよい。そして、走行台車は、検査パタンの位置を通過するときに、検査パタンを撮像し、画質点検が行われてもよい。
【0045】
図10は、位置情報の二次元コードと検査パタンの縞模様を兼用した床マーカの例を示す。すなわち、この床マーカには、位置情報パタンP1と検査パタンP2が含まれており、検査パタンP2が床マーカの一部になっている。この例では、画質の点検を実行した後に、縞模様で印刷された領域を黒く塗りつぶす画像処理をすることで、通常の二次元コードに対して行う処理を実行する。撮像画像の中央以外の部分の画質を点検する際は、走行台車の車体204の位置を所定の位置だけずらし、検査パタンP2の縞模様を使って撮像画像の所定のエリアの画質の点検を実施する。
【0046】
画質の劣化に応じて保守を適切に行うことで、非常停止による稼働率の低下を防止することができ、経済的な観点で貢献することができる。
【0047】
以上、実施形態について説明されたが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、例えば、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をしてもよい。
【0048】
倉庫システムにおいて、位置情報を示す二次元コードの位置に検査パタンが配置されることに限定されず、検査パタンは、二次元コードとは異なる位置で、二次元コードと独立的に配置されてもよい。この場合、例えば、倉庫制御装置が走行台車に指令を出力し、走行台車を検査パタンの位置に移動させ、検査を実行させてもよい。
【0049】
1又は複数の間隔で平行に並んだ複数の線に基づいて、検査パタンの縞模様が構成されてもよい。検査パタンは、複数の線状のブロックを含む構成とすることができる。
【0050】
複数の検査結果に基づいて劣化を判断してもよい。すなわち、例えば、第1の検査パタンの検査結果、第2の検査パタンの検査結果がともに劣化を判定する結果であれば、劣化していることを示す判断結果が出力され、保守対応が実行されてもよい。複数の検査パタンで検査を実行することで、特定の検査パタンに異常がある場合等、カメラ以外の要因で検査が異常になるケースを除くことができる。
【0051】
また、倉庫制御装置は、床上の検査パタンの状態の判定を行ってもよい。倉庫制御装置は、同じ検査パタンに対する複数の走行台車の検査結果を取得し、例えば、劣化判断された検査結果が所定数以上ある場合、検査パタン自体の状態が不良であることを判断してもよい。その結果として、特定の検査パタンに異常がある場合、検査パタンの異常を特定できる。そして、検査パタンが不良である旨が、端末ステーションの出力装置等を介して作業者等に適宜に通知され、作業者等は、検査パタンの修復等の対応を行うことができる。
【0052】
走行台車が被搬送物(例えば、棚)を積載している状態、および、走行台車が被搬送物を積載していない状態それぞれで、検査パタンを用いた検査を行ってもよい。すなわち、被搬送物の積載(重さ)により、カメラが床面に接近することで、二次元コードの撮像エリアの位置が異なる場合があり得る。従って、被搬送物の積載有無によってカメラと床の近さが異なるという観点から、それぞれの状態で検査を行ってカメラ画像の品質を確認することで、より良好な保守対応を行うことができる。
【0053】
検査パタンは、例えば、走行台車が搬送する被搬送物の入庫または出庫のために設けられた所定の位置、または、走行台車が搬送する被搬送物を移載するために設けられた所定の位置、または、走行台車を保守するために設けられた所定の位置、または、走行台車が待機するために設けられた所定の位置に配置することができる。
【0054】
走行台車は、二次元コードの位置で、旋回により移動方向を変えることが可能であり、方向を変えながら、旋回位置の検査パタンでカメラの検査を実行してもよい。これにより、旋回時のカメラの状態を検査可能である。
【0055】
また、検査パタンに対する、走行台車の方向を変えて、走行台車のカメラの検査を実行してもよい。これにより、検査パタンの向きに対して、例えば平行方向または面内垂直方向等、其々の方向におけるカメラの精度を検査可能である。例えば、検査パタンに対して、様々な方向から走行台車を侵入させて、走行台車のカメラの検査を行ってもよい。
【0056】
作業者等への通知は、表示による態様に限定されず、音声などにより行われてもよい。例えば、カメラが不良である旨の音声による通知が行われてもよい。
【符号の説明】
【0057】
100 倉庫制御装置
203 走行台車
210 ステーション端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10