(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029800
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】穿孔作業方法、あと施工アンカーの施工方法及び穿孔工具
(51)【国際特許分類】
B28D 1/14 20060101AFI20250228BHJP
B23B 51/04 20060101ALI20250228BHJP
B24D 7/18 20060101ALI20250228BHJP
B24D 3/00 20060101ALI20250228BHJP
B24D 3/06 20060101ALI20250228BHJP
B23B 35/00 20060101ALI20250228BHJP
B28D 7/02 20060101ALN20250228BHJP
【FI】
B28D1/14
B23B51/04 T
B24D7/18 A
B24D3/00 320B
B24D3/06 A
B23B35/00
B28D7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134629
(22)【出願日】2023-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000137845
【氏名又は名称】株式会社ミヤナガ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 典英
(72)【発明者】
【氏名】大貫 智史
【テーマコード(参考)】
3C036
3C037
3C063
3C069
【Fターム(参考)】
3C036AA14
3C037AA05
3C037BB16
3C037CC08
3C037FF09
3C063AA02
3C063AB05
3C063BA03
3C063BA22
3C063BB02
3C063BC02
3C063EE21
3C063FF03
3C069AA04
3C069BA09
3C069BB01
3C069BB02
3C069BB03
3C069BC01
3C069CA01
3C069CA07
3C069CA12
3C069DA06
3C069EA02
(57)【要約】
【課題】 低騒音で径寸法のばらつきが小さい穴を穿孔することができる穿孔作業方法、あと施工アンカーの施工方法及び穿孔工具を提供する。
【解決手段】 穿孔作業方法は、穿孔対象100に第1径寸法φ1の穴101を穿孔する穿孔作業方法であって、第1径寸法φ1より小さい第2径寸法φ2の研削刃24を有する研削ドリルビット21を回転させて、穿孔対象100に穴101を形成する穿孔ステップS3と、第1径寸法φ1の切削刃34を有する切削ドリルビット31を回転させて、穴101の内周面を切削し拡径する拡径ステップS5と、を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿孔対象に第1径寸法の穴を穿孔する穿孔作業方法であって、
前記第1径寸法より小さい第2径寸法の研削刃を有する研削ドリルビットを回転させて、前記穿孔対象に穴を形成する穿孔ステップと、
前記第1径寸法の切削刃を有する切削ドリルビットを回転させて、前記穴の内周面を切削し拡径する拡径ステップと、
を含む、穿孔作業方法。
【請求項2】
前記穿孔ステップの前に、前記研削ドリルビット、前記切削ドリルビット、及び、共用軸を準備する準備ステップを更に含み、
前記研削ドリルビットは、前記研削刃を含む先端部と、取付部を含む基端部とを有し、
前記切削ドリルビットは、前記切削刃を含む先端部と、取付部を含む基端部とを有し、
前記共用軸は、前記研削ドリルビットの前記取付部又は前記切削ドリルビットの前記取付部が選択的に取り付けられる被取付部を含む先端部と、ドリル駆動装置に取り付けられるシャンク部を含む基端部とを有し、
前記穿孔ステップでは、前記研削ドリルビットの前記取付部を前記共用軸の前記被取付部に取り付けた状態で前記共用軸を前記ドリル駆動装置で回転駆動することで、前記研削ドリルビットを回転させ、
前記方法は、前記穿孔ステップの後かつ前記拡径ステップの前に、前記共用軸から前記研削ドリルビットを取り外し、前記切削ドリルビットの前記取付部を前記共用軸の前記被取付部に取り付けることで前記切削ドリルビットを前記共用軸に取り付ける付替ステップを更に含み、
前記拡径ステップでは、前記切削ドリルビットの前記取付部を前記共用軸の前記被取付部に取り付けた状態で前記共用軸を前記ドリル駆動装置で回転駆動することで、前記切削ドリルビットを回転させる、請求項1に記載の穿孔作業方法。
【請求項3】
前記穿孔対象がコンクリート、石材又はタイルである、請求項1又は2に記載の穿孔作業方法。
【請求項4】
前記研削刃は、メタルボンドダイヤモンド砥石を含み、
前記切削刃は、超硬合金を含む、請求項1又は2に記載の穿孔作業方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の穿孔作業方法の実施後に、
前記穴に金属系あと施工アンカー又は接着系あと施工アンカーを挿入して固定するアンカー設置ステップを含む、あと施工アンカーの施工方法。
【請求項6】
第1径寸法の切削刃を有する先端部と、取付部を含む基端部とを有する切削ドリルビットと、
前記第1径寸法より小さい第2径寸法の研削刃を有する先端部と、取付部を含む基端部とを有する研削ドリルビットと、
前記研削ドリルビットの前記取付部又は前記切削ドリルビットの前記取付部が選択的に取り付けられる被取付部を含む先端部と、ドリル駆動装置に取り付けられるシャンク部を含む基端部とを有する共用軸とを備える、穿孔工具。
【請求項7】
前記研削刃は、メタルボンドダイヤモンド砥石を含み、
前記切削刃は、超硬合金を含む、請求項6に記載の穿孔工具。
【請求項8】
前記研削ドリルビットの前記取付部及び前記切削ドリルビットの前記取付部は、雄ねじ又は雌ねじの一方が形成され、
前記共用軸の前記被取付部は、前記雄ねじ又は前記雌ねじの他方が形成され、
前記雄ねじと前記雌ねじとの噛み合いにより、前記共用軸に前記研削ドリルビット又は前記切削ドリルビットが選択的に取り付けられる、請求項6又は7に記載の穿孔工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、穿孔作業方法、あと施工アンカーの施工方法及び穿孔工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、超硬合金を含む切削刃を有する穿孔工具を用いてコンクリート等の壁面に穿孔する方法が知られている。例えば、特許文献1には、打撃切削を伴う穿孔に用いることができるドリルビットが開示されている。当該ドリルビットは、超硬合金製の切刃チップが固着され、精度の高い定径孔の穿孔を行うことができる。したがって、コンクリートや石材等に穿孔したドリル孔は、アンカーボルトの植設等に使用して植設後のアンカーボルトの引き抜き強度に影響を与えることがないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に係るドリルビットを用いた穿孔は、打撃切削によるものであるが故に作業時に打撃音を含む大きな騒音が発生するという問題があり、稼働中の病院の改装工事など、静粛性が求められる環境下での使用に課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明のある態様に係る穿孔作業方法は、穿孔対象に第1径寸法の穴を穿孔する穿孔作業方法であって、前記第1径寸法より小さい第2径寸法の研削刃を有する研削ドリルビットを回転させて、前記穿孔対象に穴を形成する穿孔ステップと、前記第1径寸法の切削刃を有する切削ドリルビットを回転させて、前記穴の内周面を切削し拡径する拡径ステップと、を含む。
【0006】
この構成によれば、低騒音で径寸法のばらつきが小さい穴を穿孔することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、低騒音で径寸法のばらつきが小さい穴を穿孔することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係る穿孔システムの全体構成例を示す概略図である。
【
図2】
図1の穿孔システムの穿孔工具の構成例を示す図であり、共用軸に研削ドリルビットを取り付けた状態を示す図である。
【
図3】
図1の穿孔システムの穿孔工具の研削ドリルビットの構成例を示す図であり、先端側から見た図である。
【
図4】
図1の穿孔システムの穿孔工具の構成例を示す図であり、共用軸に切削ドリルビットを取り付けた状態を示す図である。
【
図5】
図1の穿孔システムの穿孔工具の切削ドリルビットの構成例を示す図であり、先端側から見た図である。
【
図6】実施の形態に係る穿孔システムを用いた穿孔作業方法及びあと施工アンカー施工方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態に係る穿孔システムを用いた穿孔作業方法及びあと施工アンカー施工方法における穿孔ステップの一例を示す図である。
【
図8】実施の形態に係る穿孔システムを用いた穿孔作業方法及びあと施工アンカー施工方法における拡径ステップの一例を示す図である。
【
図9】実施の形態に係る穿孔システムを用いたあと施工アンカー施工方法におけるアンカー設置ステップの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、全ての図を通じて、同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0010】
図1は、実施の形態に係る穿孔システム1の全体構成例を示す概略図である。本実施の形態において、穿孔システム1は、ドリル駆動装置3に取り付けられた穿孔工具20で穿孔対象100に所定深さの穴101を形成する穿孔システム1である。この穴101は、あと施工アンカー110(
図9参照)を挿入して固定するための穴である。また、穿孔対象100は、例えば、コンクリート、石材又はタイルである。
【0011】
穿孔システム1は、ドリル駆動装置3と、穿孔工具20と、遮蔽部50と、液体供給流路60と、液体回収流路70とを備える。
【0012】
ドリル駆動装置3は、例えば電動ドリルドライバーであり、モータを含む駆動装置本体4と、作業者が駆動装置本体4の操作を行う操作部5と、穿孔工具20の基端部を把持し、駆動装置本体4の駆動力により回転軸Rを中心に回転する把持機構6とを含む。把持機構6は、例えば、周知のドリルチャックであり、筒状に形成され、内部に嵌め込まれた穿孔工具20を把持する。
【0013】
図2は、液体供給機構10を除く穿孔工具20の構成例を示す図であり、共用軸41に研削ドリルビット21を取り付けた状態を示す図である。
図2は、半断面図で示している。
図3は、研削ドリルビット21の構成例を示す図であり、研削ドリルビット21を先端側から見た図である。
図4は、液体供給機構10を除く穿孔工具20の構成例を示す図であり、共用軸41に切削ドリルビット31を取り付けた状態を示す図である。
図4は、一部破断図で示している。
図5は、切削ドリルビット31の構成例を示す図であり、切削ドリルビット31を先端側から見た図である。
【0014】
穿孔工具20は、穿孔対象100を研削及び切削するための工具である。
図1に示すように、穿孔工具20は、液体供給機構10と、研削ドリルビット21と、切削ドリルビット31と、共用軸41と、液体供給機構10と、を含む。
【0015】
図1に示すように、液体供給機構10は、穿孔工具20の研削ドリルビット21に水Lを供給するための機構である。液体供給機構10によって、穿孔工具20の研削ドリルビット21に水Lが供給されることで、研削作業時における研削ドリルビット21と穿孔対象100との間の摩擦を緩和することができ、更に発熱を抑制することができる。これによって、研削ドリルビット21の長寿命化を図ることができる。液体供給機構10は、シャンク部15を含む基端部13と、把持機構14を含む先端部12とを含む。シャンク部15は、ドリル駆動装置3の把持機構6に把持される。把持機構14は、筒状に形成され、内部に嵌め込まれた共用軸41のシャンク部45を把持する。また、液体供給機構10には、液体供給流路60を成す管が接続され、水Lが供給される。液体供給機構10に供給された水Lは、液体供給機構10の内部の流路を通って、把持機構14から流出する。
【0016】
共用軸41は、組立状態において回転軸R上に延びる筒状体であり、ドリル駆動装置3と穿孔対象100に当接する研削ドリルビット21及び切削ドリルビット31とを接続する中空の回転軸である。共用軸41は、シャンク部45を含む基端部43と、被取付部44を含む先端部42と、回転軸R上に延びる貫通孔46とを含む。シャンク部45は、液体供給機構10の把持機構14に把持される。これによって、共用軸41は、ドリル駆動装置3に取り付けられる。シャンク部45と把持機構14との接続部分は、水密構造となっている。そして、把持機構14から流出した水Lは、貫通孔46に流入し、貫通孔46を通って、共用軸41の基端部43から先端部42に向かって流れる。被取付部44は、研削ドリルビット21の取付部25又は切削ドリルビット31の取付部35が選択的に取り付けられる部分である。本実施の形態において、被取付部44には、雌ねじが形成されている。したがって、把持機構6が回転軸Rを中心に回転することにより、液体供給機構10のシャンク部15及び把持機構14、共用軸41、共用軸41に取り付けられている研削ドリルビット21又は切削ドリルビット31が回転軸Rを中心に回転する。
【0017】
研削ドリルビット21は、組み立て状態において回転軸R上に延びる略短円筒状の筒状体である。研削ドリルビット21は、穿孔対象100を、砥石で削り取って穿孔する先端工具である。研削ドリルビット21は、取付部25を含む基端部23と、1以上の研削刃24を含む先端部22と、回転軸R上に延び、研削ドリルビット21を貫通する貫通孔26とを含む。取付部25は、筒状体であり、共用軸41の被取付部44の雌ねじと噛み合う雄ねじが形成されている。1以上の研削刃24は、回転軸R周りに回転させたときの軌跡が環状を成し、且つ当該軌跡の径寸法が、第2径寸法φ2を成すように取付部25の前面に取り付けられている。当該第2径寸法φ2が研削ドリルビット21の刃先径を成す。各研削刃24は、取付部25にロウ付け又は溶接で固着されている。本実施の形態において、研削刃24は、4つ設けられ、回転軸Rを中心とする周方向に間隔をあけて並んで配置されている。しかし、これに限られるものではない。例えば、研削刃24は、先端側から見てC字状の柱状体であってもよい。研削刃24は、研削材であるダイヤモンド砥粒を結合材であるメタルボンドで結合させたメタルボンドダイヤモンド砥石を含む。また、共用軸41の貫通孔46を通った水Lは、研削ドリルビット21の貫通孔26を通って、研削ドリルビット21の先端から吐出される。
【0018】
切削ドリルビット31は、組立状態において回転軸R上に延びる略短円柱状の柱状体である。切削ドリルビット31は、穿孔対象100を、刃で削り取って穿孔する先端工具である。切削ドリルビット31は、取付部35を含む基端部33と、切削刃34を含む先端部32とを含む。取付部35は、柱状体であり、共用軸41の被取付部44の雌ねじと噛み合う雄ねじが形成されている。切削刃34は、回転軸R周りに回転させたときの軌跡の径寸法が、第1径寸法φ1を成すように取付部35の先端部に取り付けられている。当該第1径寸法φ1が切削ドリルビット31の刃先径を成す。切削ドリルビット31は、例えば、超硬合金を含む板状のブロック体であり、第1径寸法φ1の幅を有し、先端側の部分は尖端形状に形成されている。切削刃34の側端は取付部35から径方向に突出し、切削刃34の先端は取付部35から先端方向に突出している。これによって、取付部35が穿孔対象100に接触して摩耗することを防止している。
【0019】
このように、雄ねじと雌ねじとの噛み合いにより、共用軸41に研削ドリルビット21又は切削ドリルビット31が選択的に取り付けられる。これによって、研削ドリルビット21と切削ドリルビット31との付け替えを速やかに行うことができる。
【0020】
遮蔽部50は、穿孔対象100の穴101を覆うカバーであり、横倒しの椀状に形成され、前面が大きく開口する形状に形成されている。この前面が穿孔対象100に宛てがわれることにより、穿孔作業時において、穴101を覆い、粉塵の飛散を抑制することができる。また、遮蔽部50の背面には、研削ドリルビット21又は切削ドリルビット31が取り付けられた共用軸41が挿通される挿通孔51が形成されている。更に、遮蔽部50の下部には、液体回収流路70を成す管が接続され、液体回収流路70は、遮蔽部50の内部空間に通じている。これによって、穴101を穿孔した粉塵が水Lに混ざった懸濁液Sは、液体回収流路70を通って回収される。
【0021】
(穿孔作業の一例)
図6は、穿孔システム1を用いた穿孔作業方法及びあと施工アンカー施工方法の一例を示すフローチャートである。
図7は、穿孔ステップの一例を示す図であり、
図8は拡径ステップの一例を示す図である。
図9は、アンカー設置ステップの一例を示す図である。
【0022】
図6~9に基づいて、穿孔システム1を用いた穿孔対象100に第1径寸法φ1の穴101を穿孔する穿孔作業方法及びあと施工アンカー施工方法について説明する。
【0023】
まず、作業者は、研削ドリルビット21、切削ドリルビット31、及び、共用軸41を準備する(準備ステップS1)。研削ドリルビット21の研削刃24の刃先径は、第1径寸法φ1より小さい第2径寸法φ2とする。また、切削ドリルビット31の切削刃34の刃先径は、第1径寸法φ1とする。具体的には、例えば、第1径寸法φ1が18mmである場合、第2径寸法φ2は、17mmとしてもよい。
【0024】
次に、作業者は、研削ドリルビット21の取付部25の雄ねじを共用軸41の被取付部44の雌ねじに取り付ける(取付ステップS2)。
【0025】
次に、
図7に示すように、作業者は、共用軸41をドリル駆動装置3で回転駆動することで、研削ドリルビット21を回転させ、穿孔対象100に向けて付勢し、研削ドリルビット21に先端面を穿孔対象100に押し当てる。これによって、研削ドリルビット21のメタルボンドダイヤモンド砥石が穿孔対象100を研削する。これによって、穿孔対象100に第2径寸法φ2の穴101を形成することができる(穿孔ステップS3)。この研削ドリルビット21を用いた穿孔作業は、液体供給流路60から液体供給機構10に水Lを供給しながら実施する。液体供給機構10に供給された水Lは、液体供給機構10の内部空間、共用軸41の貫通孔46、研削ドリルビット21の貫通孔26の順にこれらを通って、穿孔工具20の先端から吐出される。吐出された水Lは、研削ドリルビット21と穿孔対象100との間の摩擦を緩和し、更に発熱を抑制する機能を果たす。このとき水Lには、穴101を穿孔した粉塵が水Lに混ざり、懸濁液Sとなる。懸濁液Sは、遮蔽部50から液体回収流路70に排出され、回収される。
【0026】
この研削ドリルビット21を用いた穿孔作業は、振動ドリルドライバーやハンマドリルドライバーを用いた打撃を伴う穿孔作業と比較すると、打撃音が生じないため、静粛性に優れた穿孔作業を実施することができる。そのため、稼働中の病院の改装工事など、静粛性が求められる環境下での使用に適したものとすることができる。なお、研削材であるダイヤモンド砥粒が結合材であるメタルボンド中に散らされている研削刃24の特性上、切削刃34により形成された穴101よりも、研削刃24により形成された穴101は、径寸法のばらつきがやや大きな穴となる。
【0027】
そして、所望の深さの穴101が形成されると、作業者は、穿孔ステップS3を終了し、一旦、共用軸41を穿孔対象100から引抜く。そして、作業者は、共用軸41から研削ドリルビット21を取り外し、切削ドリルビット31の取付部35を共用軸41の被取付部44に取り付けることで切削ドリルビット31を共用軸41に取り付ける(付替ステップS4)。このように、研削刃24を切削刃34に付け替えて、速やかに拡径ステップを実施することができ、作業時間を短縮することができる。また、研削刃24を回転させる機材と切削刃34を回転させる機材とを共用することができ、穿孔作業に要する機材を少なくすることができる。
【0028】
次に、
図8に示すように、作業者は、切削ドリルビット31の取付部35を共用軸41の被取付部44に取り付けた状態で共用軸41をドリル駆動装置3で回転駆動することで、切削ドリルビット31を回転させ、穿孔対象100に向けて付勢し、穴101に切削ドリルビット31を挿し込む。これによって、切削ドリルビット31の切削刃34の側端部が穴101の内周面を切削し拡径する(拡径ステップS5)。これによって、穴101の径を第2径寸法φ2から第1径寸法φ1に拡径することができる。
【0029】
ところで、切削ドリルビット31を用いて、コンクリート、石材又はタイルに穿孔する場合、作業能率の極端な低下を防ぐために、振動ドリルドライバーやハンマドリルドライバーを用いた打撃的な打撃力を回転トルクの両作用を同時に与えての穿孔作業を行う必要がある。しかし、本実施の形態における、切削ドリルビット31を用いた作業は、穴101を穿孔する作業ではなく、穴101の内周面を切削し拡径する作業であるので、打撃力を伴うことなく、回転トルクの作用による静粛性に優れた穿孔作業により作業を能率的に実施することができる。また、切削ドリルビット31を用いた穿孔作業により、径寸法のばらつきが小さい穴101を穿孔することができる。
【0030】
次に、
図9に示すように、作業者は、穴101に金属系あと施工アンカー110又は接着系あと施工アンカー110を挿入して固定する(アンカー設置ステップS6)。上記の通り、穴101は、上記拡径ステップにより径寸法のばらつきが小さい穴101とすることができるので、金属系あと施工アンカー又は接着系あと施工アンカーの施工に適合した所定の公差内に収まる定径の穴101に形成することができ、金属系あと施工アンカー及び接着系あと施工アンカーの引き抜き強度の低下を抑制することができる。
【0031】
以上に説明したように、本実施の形態に係る穿孔作業方法は、穿孔対象100に第1径寸法φ1の穴101を穿孔する穿孔作業方法であって、第1径寸法φ1より小さい第2径寸法φ2の研削刃24を有する研削ドリルビット21を回転させて、穿孔対象100に穴101を形成する穿孔ステップS3と、第1径寸法φ1の切削刃34を有する切削ドリルビット31を回転させて、穴101の内周面を切削し拡径する拡径ステップS5と、を含む。これにより、低騒音で径寸法のばらつきが小さい穴を穿孔することができる。
【0032】
(変形例)
上記実施の形態においては、研削ドリルビット21の取付部25及び切削ドリルビット31の取付部35に雄ねじが形成され、共用軸41の被取付部44に雌ねじが形成されているがこれに限られるものではない。これに代えて、研削ドリルビット21の取付部25及び切削ドリルビット31の取付部35に雌ねじが形成され、共用軸41の被取付部44に雄ねじが形成されていてもよい。
【0033】
(実施形態の列挙)
実施形態1: 穿孔対象に第1径寸法の穴を穿孔する穿孔作業方法であって、
前記第1径寸法より小さい第2径寸法の研削刃を有する研削ドリルビットを回転させて、前記穿孔対象に穴を形成する穿孔ステップと、
前記第1径寸法の切削刃を有する切削ドリルビットを回転させて、前記穴の内周面を切削し拡径する拡径ステップと、を含む、穿孔作業方法。
【0034】
この構成によれば、低騒音で径寸法のばらつきが小さい穴を穿孔することができる。
【0035】
実施形態2: 前記穿孔ステップの前に、前記研削ドリルビット、前記切削ドリルビット、及び、共用軸を準備する準備ステップを更に含み、
前記研削ドリルビットは、前記研削刃を含む先端部と、取付部を含む基端部とを有し、
前記切削ドリルビットは、前記切削刃を含む先端部と、取付部を含む基端部とを有し、
前記共用軸は、前記研削ドリルビットの前記取付部又は前記切削ドリルビットの前記取付部が選択的に取り付けられる被取付部を含む先端部と、ドリル駆動装置に取り付けられるシャンク部を含む基端部とを有し、
前記穿孔ステップでは、前記研削ドリルビットの前記取付部を前記共用軸の前記被取付部に取り付けた状態で前記共用軸を前記ドリル駆動装置で回転駆動することで、前記研削ドリルビットを回転させ、
前記方法は、前記穿孔ステップの後かつ前記拡径ステップの前に、前記共用軸から前記研削ドリルビットを取り外し、前記切削ドリルビットの前記取付部を前記共用軸の前記被取付部に取り付けることで前記切削ドリルビットを前記共用軸に取り付ける付替ステップを更に含み、
前記拡径ステップでは、前記切削ドリルビットの前記取付部を前記共用軸の前記被取付部に取り付けた状態で前記共用軸を前記ドリル駆動装置で回転駆動することで、前記切削ドリルビットを回転させる、実施形態1に記載の穿孔作業方法。
【0036】
この構成によれば、研削刃を切削刃に付け替えて、速やかに拡径ステップを実施することができ、作業時間を短縮することができる。また、研削刃を回転させる機材と切削刃を回転させる機材とを共用することができ、穿孔作業に要する機材を少なくすることができる。
【0037】
実施形態3: 前記穿孔対象がコンクリート、石材又はタイルである、実施形態1又は2に記載の穿孔作業方法。
【0038】
この構成によれば、コンクリート、石材又はタイルに対し、低騒音で径寸法のばらつきの小さい穴を穿孔することができる。
【0039】
実施形態4: 前記研削刃は、メタルボンドダイヤモンド砥石を含み、
前記切削刃は、超硬合金を含む、実施形態1又は2に記載の穿孔作業方法。
【0040】
この構成によれば、より適切に低騒音で径寸法のばらつきが小さい穴を穿孔することができる。
【0041】
実施形態5: 実施形態1又は2に記載の穿孔作業方法の実施後に、
前記穴に金属系あと施工アンカー又は接着系あと施工アンカーを挿入して固定するアンカー設置ステップを含む、あと施工アンカーの施工方法。
【0042】
この構成によれば、金属系あと施工アンカー又は接着系あと施工アンカーを低騒音で適切に施工することができる。
【0043】
実施形態6: 第1径寸法の切削刃を有する先端部と、取付部を含む基端部とを有する切削ドリルビットと、
前記第1径寸法より小さい第2径寸法の研削刃を有する先端部と、取付部を含む基端部とを有する研削ドリルビットと、
前記研削ドリルビットの前記取付部又は前記切削ドリルビットの前記取付部が選択的に取り付けられる被取付部を含む先端部と、ドリル駆動装置に取り付けられるシャンク部を含む基端部とを有する共用軸とを備える、穿孔工具。
【0044】
この構成によれば、低騒音で実施できる研削作業を行ったのち、径寸法のばらつきが小さな切削作業に速やかに切り替えて径出し作業を実施することができる。
【0045】
実施形態7: 前記研削刃は、メタルボンドダイヤモンド砥石を含み、
前記切削刃は、超硬合金を含む、実施形態6に記載の穿孔工具。
【0046】
この構成によれば、より適切に低騒音で径寸法のばらつきが小さい穴を穿孔することができる。
【0047】
実施形態8: 前記研削ドリルビットの前記取付部及び前記切削ドリルビットの前記取付部は、雄ねじ又は雌ねじの一方が形成され、
前記共用軸の前記被取付部は、前記雄ねじ又は前記雌ねじの他方が形成され、
前記雄ねじと前記雌ねじとの噛み合いにより、前記共用軸に前記研削ドリルビット又は前記切削ドリルビットが選択的に取り付けられる、実施形態6又は7に記載の穿孔工具。
【0048】
この構成によれば、ドリルビットの付け替えを速やかに行うことができる。
【0049】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。したがって、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【符号の説明】
【0050】
1 穿孔システム
1 第1径寸法φ
3 ドリル駆動装置
20 穿孔工具
21 研削ドリルビット
22 先端部
23 基端部
24 研削刃
25 取付部
26 貫通孔
31 切削ドリルビット
32 先端部
33 基端部
34 切削刃
35 取付部
41 共用軸
42 先端部
43 基端部
44 被取付部
45 シャンク部
100 穿孔対象
101 穴
110 あと施工アンカー