(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029861
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】振動板、および電気音響変換器
(51)【国際特許分類】
H04R 7/12 20060101AFI20250228BHJP
H04R 7/02 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
H04R7/12 K
H04R7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134730
(22)【出願日】2023-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】久世 光一
(72)【発明者】
【氏名】森本 博幸
【テーマコード(参考)】
5D016
【Fターム(参考)】
5D016AA09
5D016CA02
5D016EA03
5D016EA10
5D016EC02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】異なる断面形状の部分が周方向に並べて配置される振動板へのダストキャップの取り付けを容易にする振動板及び振動板を備えた電気音響変換器を提供する。
【解決手段】電気音響変換器に備えられる振動板100は、振動方向に沿う所定の基準軸の周りを囲むネック部117と、ネック部117の外側において基準軸の周りに並び、基準軸を含む面による断面形状が相互に異なる第一部分111と、第二部分112と、第三部分113と、を少なくとも備え、第一部分111の断面形状は、第一曲率半径の円弧であり、第二部分112の断面形状は、第一曲率半径とは異なる第二曲率半径の円弧であり、第三部分113の断面形状は、楕円の一部であり、ネック部117は、基準軸を含むいずれの面による断面形状も同一の曲線である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気音響変換器に備えられる振動板であって、
前記振動板は、
振動方向に沿う所定の基準軸の周りを囲むネック部と、
前記ネック部の外側において前記基準軸の周りに並び、前記基準軸を含む面による断面形状が相互に異なる第一部分と、第二部分と、第三部分と、を少なくとも備え、
前記第一部分の断面形状は、
第一曲率半径の円弧であり、
前記第二部分の断面形状は、
前記第一曲率半径とは異なる第二曲率半径の円弧であり、
前記第三部分の断面形状は、
楕円の一部であり、
前記ネック部は、
前記基準軸を含むいずれの面による断面形状も同一の曲線である
振動板。
【請求項2】
前記ネック部の断面形状は、円弧である
請求項1に記載の振動板。
【請求項3】
前記ネック部の曲率半径は、前記第一曲率半径、および前記第二曲率半径の10分の1以下である
請求項2に記載の振動板。
【請求項4】
前記振動板は、
前記第一部分、前記第二部分、および前記第三部分と周方向において並ぶ第四部分とを備え、
前記第四部分の断面形状は、
楕円の一部である
請求項1または2に記載の振動板。
【請求項5】
前記振動板は、
前記第一部分と前記第三部分との間、および前記第二部分と前記第三部分との間の少なくとも一方を滑らかに接続する接続部を備える
請求項1または2に記載の振動板。
【請求項6】
前記振動板は、
化学繊維、およびパルプの少なくとも一方を含む材料を抄紙することにより形成される請求項1または2に記載の振動板。
【請求項7】
前記振動板は、
射出成形された樹脂により形成される
請求項1または2に記載の振動板。
【請求項8】
前記振動板は、
シート、フィルム状の材料をプレス成形することにより形成される
請求項1または2に記載の振動板。
【請求項9】
請求項1または2に記載の振動板と、
磁気回路と、
前記磁気回路、および前記振動板を保持するフレームと、
前記振動板に連結され前記磁気回路が有する磁気ギャップに配置されるボイスコイルと、
を備える電気音響変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、振動板、および振動板を備えた電気音響変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平面視円形のコーン型の振動板は、円形振動板に近い共振モードを持ち、中高域の音圧周波数特性にピークディップが生じる。特許文献1-5には、周方向に並ぶ複数の扇形の部分であって相互に異なる断面形状を有する扇形の部分を備えた振動板により共振を分散させてピークディップを抑制する技術がそれぞれ記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63-181095号公報
【特許文献2】実開昭63-200993号公報
【特許文献3】実開平1-029991号公報
【特許文献4】実開平1-029992号公報
【特許文献5】特開2000-354289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、振動板の中央部分は、周方向において断面形状が相互に異なる部分が集まる部分であるため、ダストキャップなど他の部材との取り合いに改善を要する。
【0005】
本開示は、従来の振動板を改善したものであって、他の部材との取り合いを適切に確保できる形状の振動板、および当該振動板を備えた電気音響変換器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の1つである振動板は、電気音響変換器に備えられる振動板であって、前記振動板は、振動方向に沿う所定の基準軸の周りを囲むネック部と、前記ネック部の外側において前記基準軸の周りに並び、前記基準軸を含む面による断面形状が相互に異なる第一部分と、第二部分と、第三部分と、を少なくとも備え、前記第一部分の断面形状は、第一曲率半径の円弧であり、前記第二部分の断面形状は、前記第一曲率半径とは異なる第二曲率半径の円弧であり、前記第三部分の断面形状は、楕円の一部であり、前記ネック部は、前記基準軸を含むいずれの面による断面形状も同一の曲線である。
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の1つである電気音響変換器は、振動板と、磁気回路と、前記磁気回路、および前記振動板を保持するフレームと、前記振動板に連結され前記磁気回路が有する磁気ギャップに配置されるボイスコイルと、を備える電気音響変換器であって、前記振動板は、振動方向に沿う所定の基準軸の周りを囲むネック部と、前記ネック部の外側において前記基準軸の周りに並び、前記基準軸を含む面による断面形状が相互に異なる第一部分と、第二部分と、第三部分と、を少なくとも備え、前記第一部分の断面形状は、第一曲率半径の円弧であり、前記第二部分の断面形状は、前記第一曲率半径とは異なる第二曲率半径の円弧であり、前記第三部分の断面形状は、楕円の一部であり、前記ネック部は、前記基準軸を含むいずれの面による断面形状も同一の曲線である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、効果的な共振分散を確保し、ピークディップを抑えて平坦な音圧周波数特性を実現でき、振動板の中央部における他部材との取り合いを確保する振動板、および電気音響変換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】エッジが取り付けられた状態の振動板を正面から示す平面図である。
【
図2】
図1中のA-A線で切断した振動板、およびエッジを示す断面図である。
【
図3】
図1中のB-B線で切断した振動板、およびエッジを示す断面図である。
【
図4】振動板を備えた電気音響変換器の一つであるスピーカー装置の断面図である。
【
図5】従来形状の振動板を備えたスピーカー装置と本実施の形態の振動板を備えたスピーカー装置との音圧周波数特性の違いを示す図である。
【
図6】振動板を備えたスピーカー装置が取り付けられた移動体の一つである自動車の断面図である。
【
図7】振動板を備えたスピーカー装置が取り付けられた電子機器の1つであるミニコンポシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る振動板、および電気音響変換器の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本開示を説明するために一例を挙示するものであり、本開示を限定する主旨ではない。例えば、以下の実施の形態において示される形状、構造、材料、構成要素、相対的位置関係、接続状態、数値、数式、方法における各段階の内容、各段階の順序などは、一例であり、以下に記載されていない内容を含む場合がある。また、平行、直交などの幾何学的な表現を用いる場合があるが、これらの表現は、数学的な厳密さを示すものではなく、実質的に許容される誤差、ずれなどが含まれる。また、同時、同一などの表現も、実質的に許容される範囲を含んでいる。
【0011】
また、図面は、本開示を説明するために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状、位置関係、および比率とは異なる。また、図中に示す場合があるX軸、Y軸、Z軸は、図の説明のために任意に設定した直交座標を示している。つまりZ軸は、鉛直方向に沿う軸とは限らず、X軸、Y軸は、水平面内に存在するとは限らない。
【0012】
また、以下では複数の発明を一つの実施の形態として包括的に説明する場合がある。また、以下に記載する内容の一部は、本開示に関する任意の構成要素として説明している。
【0013】
図1は、エッジ110が取り付けられた状態の振動板100を正面から示す平面図である。
図2は、
図1中のA-A線で切断した振動板100、およびエッジ110を示す断面図である。
図3は、
図1中のB-B線で切断した振動板100、およびエッジ110を示す断面図である。
【0014】
振動板100は、スピーカー装置、マイクロフォンなどの電気音響変換器に備えられる部材であって、自身が震動することによって空気を震わせて音を発生させる、または空気の振動に基づき自身が振動する部材である。振動板100は、第一部分111と、第二部分112と、第三部分113と、ネック部117を少なくとも備え、本実施の形態の場合、第四部分114も備えている。
【0015】
第一部分111、第二部分112、第三部分113、および第四部分114は、振動方向(図中Z軸方向)に沿う所定の基準軸300(
図2、
図3参照)の周りに並んでいる。第一部分111、第二部分112、および第三部分113は、基準軸300を含む面(例えば
図1中のA-A線断面、B-B線断面)による断面形状が相互に異なる部分である。第三部分113、および第四部分114は、基準軸300を含む面による断面形状が同じである。
【0016】
本実施の形態の場合、平面視、つまり基準軸300の方向から見た状態の振動板100の形状は、円形であり、第一部分111、第二部分112、第三部分113、および第四部分114の平面視における形状は、扇形で同一である。平面視における振動板100の直径は約100mmである。また、第一部分111、第二部分112、第三部分113、および第四部分114の平面視における面積も同一である。なお、第一部分111、第二部分112、第三部分113、および第四部分114のそれぞれの境界には接続部115(詳細は後述)が設けられているため、第一部分111、第二部分112、第三部分113、および第四部分114の平面視における形状は、完全な扇形ではない。
【0017】
第一部分111と第二部分112との間には第三部分113と第四部分114とが配置されている。第一部分111と第二部分112とは隣り合っていない。第三部分113と第四部分114は隣り合っていない。
【0018】
図2に示すように、第一部分111の基準軸300を含む断面の形状は、第一曲率半径R1の単一の円弧である。基準軸300を含むいずれの断面で第一部分111を切断しても断面形状は、相互に同一である。つまり、第一部分111は、基準軸300周りの回転体の一部である。
【0019】
第二部分112の基準軸300を含む断面の形状は、第二曲率半径R2の単一の円弧である。基準軸300を含むいずれの断面で第二部分112を切断しても断面形状は、相互に同一である。つまり、第二部分112は、基準軸300周りの回転体の一部である。本実施の形態の場合、第一曲率半径R1>第二曲率半径R2となっている。本実施の形態の場合、第一曲率半径R1>=第二曲率半径R2×1.5となっており、具体的には第一曲率半径R1=300mm、第二曲率半径R2=200mmである。
【0020】
図3に示すように、第三部分113、および第四部分114の断面形状は、楕円の一部である。本実施の形態の場合、第三部分113、および第四部分114の断面形状は、長軸、および短軸で楕円を切断した場合の4分の1の部分、または4分の1の部分のさらに一部である。基準軸300を含むいずれの断面で第三部分113、および第四部分114を切断しても断面形状は、相互に同一である。つまり、第三部分113、および第四部分114は、基準軸300周りの回転体の一部である。
【0021】
ネック部117は、第一部分111、第二部分112、および第三部分113の基準軸300側の端縁とそれぞれ接続される振動板100の部分である。本実施の形態の場合、ネック部117は、第四部分114、および接続部115の基準軸300側の端縁とそれぞれ接続されている。ネック部117は、ダストキャップ160(
図4参照)が取り付けられる部分である。ネック部117は、基準軸300を含むいずれの面による断面形状も同一の曲線である。ネック部117は、基準軸300を中心軸とする回転体である。
【0022】
本実施の形態の場合、ネック部117の基準軸300を含む面の断面形状は円弧であり、第一部分111、第二部分112、第三部分113、第四部分114、および接続部115と滑らかに接続されている。ネック部117の曲率半径は、第一曲率半径R1、および第二曲率半径R2の大きい方の曲率半径の10分の1以下である。本実施の形態の場合、第一曲率半径R1、および第二曲率半径R2の小さい方の曲率半径の10分の1以下である。具体的にネック部117の曲率半径は、20mm以下である。
【0023】
接続部115は、断面形状が異なる振動板100の隣り合う部分を接続する部分であり、振動板100の一部を構成している。本実施の形態の場合、接続部115は、第一部分111と第三部分113との間、第三部分113と第二部分112との間、第二部分112と第四部分114との間、および第四部分114と第一部分111との間を滑らかに接続している。
【0024】
本実施の形態の場合、接続部115の第一部分111と第三部分113との境界線、接続部115の第三部分113と第二部分112との境界線、接続部115の第二部分112と第四部分114との境界線、および接続部115の第四部分114と第一部分111との境界線は、平面視において平行に配置されている。
【0025】
振動板100は、第一部分111、第二部分112、第三部分113、第四部分114、接続部115、およびネック部117が一体に形成されてなるものである。平面視において振動板100のネック部117の中心には、ボイスコイル131(
図4参照)と接続される貫通孔116が設けられている。貫通孔116は、ネック部117に取り付けられるダストキャップ160により覆われる。
【0026】
平面視における振動板100の外周縁部118は、第二部分112、第三部分113、第四部分114、および接続部115と一体に接続されている。外周縁部118は、エッジ110と接続される部分である。外周縁部118のエッジ110と接続される面は、円錐台形状である。第三部分113(第四部分114も同様)に対応する外周縁部118の厚さは、第一部分111に対応する外周縁部118の厚さより厚い。各部分に対応する外周縁部118の厚さの違いは、エッジ110から遠ざかる方向に突出する厚さの違いに基づく。エッジ110に接続される外周縁部118の面を円錐台形状とすることによりエッジ110との強固な接続を確保し、外周縁部118の凹凸形状により各部分の断面形状の違いを吸収している。
【0027】
振動板100を構成する材料は、限定されるものではない。例えば、振動板100は、ポリエステル繊維などの化学繊維、およびパルプの少なくとも一方を抄紙することにより形成されてもよく、強化材が混練された樹脂を射出成形することにより形成されても構わない。また、振動板100は、シート、またはフィルム状の材料をプレス成形することにより形成されてもかまわない。
【0028】
図4は、振動板100を備えた電気音響変換器の一つであるスピーカー装置120の断面図である。
図4に示すように、スピーカー装置120は、振動板100と、磁気回路124と、磁気回路124、および振動板100を保持するフレームと、振動板100に連結され磁気回路124が有する磁気ギャップに配置されるボイスコイル131と、を備えている。
【0029】
本実施の形態の場合、スピーカー装置120が備える磁気回路124は、着磁されたマグネット121を上部プレート122およびヨーク123により挟み込んで形成される内磁型の磁気回路124である。
【0030】
磁気回路124のヨーク123は、フレーム126に結合されている。フレーム126の周縁部127には、振動板100の外周縁部118とフレーム126とを接続する環状のエッジ110が接着されている。振動板100の中心部は、ボイスコイル体129の一端と結合される。ボイスコイル体129の他端は、磁気回路124の磁気ギャップ125にはまり込むように配置されている。なお本実施の形態の場合、ボイスコイル体129として、ボイスコイル131とボイスコイル131が巻き付けられるボビン132とを備えたものを例示したが、ボビン132を備えないボイスコイル体129でもかまわない。
【0031】
なお、内磁型の磁気回路124を有するスピーカー装置120について説明したが、これに限定されず、外磁型の磁気回路124を有するスピーカー装置120に振動板100を適用してもよい。
【0032】
図5は、従来形状の振動板100を備えたスピーカー装置と本実施の形態の振動板100を備えたスピーカー装置120との音圧周波数特性の違いを示す図である。
図5に示すように、従来の振動板100を備えたスピーカー装置による音圧周波数特性には、例えば3kHz、4kHz近傍に顕著なピークディップが存在する。一方、実施の形態に係る振動板100を備えたスピーカー装置120によれば、効果的に共振分散を実現してピークディップを抑え、特に3kHz、4kHz近傍において平坦な音響特性を得ることができる。
【0033】
本実施の形態に係るスピーカー装置120によれば、振動板100の共振を効果的に分散させて、中高域の音圧周波数特性が平坦なスピーカーを得ることができる。また、スピーカーの高域限界周波数を拡張することができ、高忠実再生が可能で明瞭度の高い音質を実現することができる。
【0034】
なお、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本開示の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本開示の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本開示に含まれる。
【0035】
例えば、第三部分113の断面形状と第四部分114の断面形状が同じ場合を実施の形態として説明したが、第三部分113の断面形状と第四部分114の断面形状は、異なっていても構わない。つまり第四部分114は、楕円の一部で無くとも良く、任意の形状を採用することができる。
【0036】
また、振動板100とフレームとの間に介在配置される環状のエッジ110は、振動板100の外周縁部の形状に沿った、つまり振動板100の各部分の断面形状の違いに従った形状の振動板100接続部を備えても構わない。
【0037】
また、ネック部117の断面形状を円弧として説明したが、ネック部117の断面形状は、楕円の一部、双曲線の一部などいかなる曲線でもかまわない。
【0038】
また、平面視において振動板100を、平面上90°間隔で四等分した場合を説明したが、各部分は等分でなくともよい。また、振動板100を断面形状が異なる三つの部分としてもよく、5以上の部分にしても構わない。
【0039】
また、振動板100を備えた電気音響変換器は、移動体に備えられてもよい。
図6は、振動板100を備えたスピーカー装置120が取り付けられた移動体の一つである自動車140の断面図である。自動車140は、振動板100を備えたスピーカー装置120をリアトレイの他、フロントパネル、ピラー、ドアなどに備えている。スピーカー装置120は、カーナビゲーションやカーオーディオの一部として使用される。自動車140は、駆動手段141を備え、スピーカー装置120を収容する筐体として機能する車体142とともにスピーカー装置120を移動させる。
【0040】
また、振動板100を備えたスピーカー装置120は、
図7に示すような電子機器に備えられても構わない。
図7は、振動板100を備えたスピーカー装置120の別利用例を示す図である。振動板100を備えたスピーカー装置120を備える電子機器の一つとしてオーディオ用のミニコンポシステム150を例示し説明する。
【0041】
ミニコンポシステム150は、二つのエンクロジャー151にスピーカー装置120がそれぞれ二つ組込まれている。また、ミニコンポシステム150は、スピーカー装置120に入力する電気信号の増幅回路を含むアンプ152と、アンプ152に入力されるソースを出力するチューナー153や、CDプレーヤー154を備えている。オーディオ用のミニコンポシステムであるミニコンポシステム150は、チューナー153やCDプレーヤー154から入力される音楽信号などをアンプ152により増幅し、増幅された信号に基づきスピーカー装置120から音が放出される。なお、電子機器としては、ミニコンポシステム150の他、自動車用のオーディオシステムや持ち運び可能なポータブルオーディオ機器、液晶テレビや有機ELディスプレイテレビ等の映像機器、携帯電話等の情報通信機器、コンピュータ関連機器等を例示することができる。
【0042】
本開示の第一態様の振動板100は、電気音響変換器に備えられる振動板100であって、振動板100は、振動方向に沿う所定の基準軸300の周りを囲むネック部117と、ネック部117の外側において基準軸300の周りに並び、基準軸300を含む面による断面形状が相互に異なる第一部分111と、第二部分112と、第三部分113と、を少なくとも備え、第一部分111の断面形状は、第一曲率半径の円弧であり、第二部分112の断面形状は、第一曲率半径とは異なる第二曲率半径の円弧であり、第三部分113の断面形状は、楕円の一部であり、ネック部117は、基準軸300を含むいずれの面による断面形状も同一の曲線である。
【0043】
第一態様の振動板100によれば、効果的な共振分散を確保し、ピークディップを抑えて平坦な音圧周波数特性を実現でき、ネック部117によって、振動板100の中央部におけるダストキャップ160などの他部材を容易に取り付けることができる。
【0044】
第二態様の振動板100は、第一態様を含み、ネック部117の断面形状は、円弧である。
【0045】
第二態様の振動板100によれば、第一部分111から第四部分114までなど他の部分との接続が滑らかになり、音圧周波数特性の低下を抑制することができる。
【0046】
第三態様の振動板は、第二態様を含み、ネック部117の曲率半径は、第一曲率半径、および第二曲率半径の10分の1以下である。
【0047】
これによれば、ダストキャップ160、ボイスコイル体129とネック部117とを容易に接続することができる。
【0048】
第四態様の振動板100は、第一態様から第四態様までのいずれかを含み、第一部分111、第二部分112、および第三部分113と周方向において並ぶ第四部分とを備え、第四部分の断面形状は、楕円の一部である。
【0049】
第五態様の振動板100は、第一態様から第四態様までのいずれかを含み、第一部分111と第三部分113との間、および第二部分112と第三部分113との間の少なくとも一方を滑らかに接続する接続部を備える。
【0050】
第六態様の振動板100は、第一態様から第五態様までのいずれかを含み、化学繊維、およびパルプの少なくとも一方を含む材料を抄紙することにより形成される。
【0051】
第七態様の振動板100は、第一態様から第五態様までのいずれかを含み、射出成形された樹脂により形成される。
【0052】
第八態様の振動板100は、第一態様から第五態様までのいずれかを含み、シート、フィルム状の材料をプレス成形することにより形成される。
【0053】
第九態様の電気音響変換器は、第一態様から第八態様までのいずれかの振動板100と、磁気回路124と、磁気回路124、および振動板100を保持するフレーム126と、振動板100に連結され磁気回路124が有する磁気ギャップ125に配置されるボイスコイル131と、を備える。
【0054】
第九態様の電気音響変換器によれば、効果的な共振分散を確保し、ピークディップを抑えて平坦な音圧周波数特性を実現でき、ネック部117によって、振動板100の中央部におけるダストキャップ160などの他部材を容易に取り付けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本開示にかかる振動板、および電気音響変換器によれば映像音響機器や情報通信機器等の電子機器、自動車等の移動体などに適用できる。
【符号の説明】
【0056】
100 振動板
110 エッジ
111 第一部分
112 第二部分
113 第三部分
114 第四部分
115 接続部
116 貫通孔
117 ネック部
118 外周縁部
120 スピーカー装置
121 マグネット
122 上部プレート
123 ヨーク
124 磁気回路
125 磁気ギャップ
126 フレーム
127 周縁部
129 ボイスコイル体
131 ボイスコイル
132 ボビン
140 自動車
141 駆動手段
142 車体
150 ミニコンポシステム
151 エンクロジャー
152 アンプ
153 チューナー
154 プレーヤー
160 ダストキャップ
300 基準軸