(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029898
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 19/21 20100101AFI20250228BHJP
G01S 19/23 20100101ALI20250228BHJP
G01C 21/28 20060101ALI20250228BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20250228BHJP
G08G 1/133 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
G01S19/21
G01S19/23
G01C21/28
G08G1/09 H
G08G1/133
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134782
(22)【出願日】2023-08-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/(研究開発課題名)超多数・多種移動体による人流・物流のためのダイナミックセキュアネットワークの研究」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】文 鄭
(72)【発明者】
【氏名】佐古 和恵
(72)【発明者】
【氏名】甲藤 二郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓朗
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
5J062
【Fターム(参考)】
2F129AA03
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2F129AA14
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2F129HH21
5H181AA01
5H181AA05
5H181AA25
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5H181BB04
5H181BB20
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5H181CC14
5H181FF05
5J062AA11
5J062BB01
5J062BB02
5J062BB03
5J062CC07
5J062CC18
5J062EE04
5J062FF01
5J062FF02
5J062FF05
(57)【要約】
【課題】測位衛星が送信する信号の偽装検知技術を改善する。
【解決手段】絶対座標取得部130は、航法衛星が送信する信号として定められたフォーマットに基づく測位信号を受信して移動体の位置を示す自己位置座標を取得する。近距離無線通信部11は、他の移動体から、当該他の移動体の位置を示す他者位置座標を受信する。距離算出部131は、自己位置座標と他者位置座標との距離を算出する。距離取得部132は、移動体と他の移動体との間の距離を取得する。判定部133は、距離算出部131が算出した距離である算出距離と、距離取得部132が取得した距離である取得距離とに基づいて、自己位置座標を算出するために用いられた測位信号と他者位置座標を算出するために用いられた測位信号との少なくともいずれか一方の偽装の可能性の有無を判定する。通知部134は、偽装の可能性があると判定された場合に通知する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載される情報処理装置であって、
航法衛星が送信する信号として定められたフォーマットに基づく測位信号を受信して前記移動体の位置を示す絶対座標である自己位置座標を取得する絶対座標取得部と、
前記移動体とは異なる他の移動体から、近距離無線通信を介して当該他の移動体の位置を示す絶対座標である他者位置座標を受信する近距離無線通信部と、
前記自己位置座標と前記他者位置座標との間の距離を算出する距離算出部と、
前記移動体と前記他の移動体との間の距離を取得する距離取得部と、
前記距離算出部が算出した距離である算出距離と、前記距離取得部が取得した距離である取得距離と、に基づいて、前記自己位置座標を算出するために用いられた測位信号と前記他者位置座標を算出するために用いられた測位信号との少なくともいずれか一方の偽装の可能性の有無を判定する判定部と、
偽装の可能性があると判定された場合に通知する通知部と、を備える、
情報処理装置。
【請求項2】
前記距離取得部は、前記近距離無線通信部が前記他の移動体から受信した信号の信号強度に基づいて前記取得距離を取得する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記距離取得部は、前記移動体が備える測距センサによって計測された前記移動体と前記他の移動体との距離を前記取得距離として取得する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記算出距離と前記取得距離との差の絶対値に対する前記取得距離の比があらかじめ定めた閾値を超えた場合に、前記自己位置座標を算出するために用いられた測位信号と前記他者位置座標を算出するために用いられた測位信号との少なくともいずれか一方が偽装された可能性があると判定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記算出距離に対する前記取得距離の比がある所定の閾値以下である場合、前記自己位置座標を算出するために用いられた測位信号と前記他者位置座標を算出するために用いられた測位信号とのいずれもが偽装された疑いがあると判定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
移動体に搭載される情報処理装置であって、
航法衛星が送信する信号として定められたフォーマットに基づく測位信号を受信して前記移動体の位置を示す絶対座標である自己位置座標の時系列データを取得する絶対座標取得部と、
前記移動体とは異なる他の移動体から近距離無線通信を介して周期的に受信した時系列データであって、当該他の移動体の位置を示す絶対座標である他者位置座標の時系列データを受信する近距離無線通信部と、
前記移動体の加速度を測定する加速度センサが取得した前記移動体の加速度の時系列データを取得する加速度取得部と、
自己位置座標の時系列データ、他者位置座標の時系列データ、及び移動体の加速度の時系列データを入力したときに、自己位置座標を算出するために用いられた測位信号と他者位置座標を算出するために用いられた測位信号との少なくともいずれか一方が偽装されているか否かの判定結果を出力するように機械学習された学習モデルを記憶する記憶部と、
前記絶対座標取得部が取得した自己位置座標の時系列データ、前記近距離無線通信部が受信した他者位置座標の時系列データ、及び前記加速度取得部が取得した移動体の加速度の時系列データを前記学習モデルに入力することにより、前記判定結果を取得するモデル適用部と、
前記判定結果を通知する通知部と、を備える、
情報処理装置。
【請求項7】
前記自己位置座標の時系列データと前記他者位置座標の時系列データとに基づいて、前記自己位置座標と前記他者位置座標との間の距離の時系列データを算出する距離算出部をさらに備え、
前記学習モデルは、距離の時系列データをさらに入力するように学習されており、
前記モデル適用部は、前記絶対座標取得部が取得した自己位置座標の時系列データ、前記近距離無線通信部が受信した他者位置座標の時系列データ、距離の時系列データ、前記距離算出部が算出した距離の時系列データ、及び前記加速度取得部が取得した移動体の加速度の時系列データを前記学習モデルに入力することにより、前記判定結果を取得する、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
移動体に搭載される情報処理装置のプロセッサが、
航法衛星が送信する信号として定められたフォーマットに基づく測位信号を受信するステップと、
前記測位信号に基づいて前記移動体の位置を示す絶対座標である自己位置座標を取得するステップと、
前記移動体とは異なる他の移動体から、近距離無線通信を介して当該他の移動体の位置を示す絶対座標である他者位置座標を受信するステップと、
前記自己位置座標と前記他者位置座標との間の距離を算出するステップと、
前記移動体と前記他の移動体との間の距離を取得するステップと、
前記距離を算出するステップにおいて算出された距離である算出距離と、前記距離を取得するステップにおいて取得された距離である取得距離と、に基づいて、前記自己位置座標を算出するために用いられた測位信号と前記他者位置座標を算出するために用いられた測位信号との少なくともいずれか一方の偽装の可能性の有無を判定するステップと、
偽装の可能性があると判定された場合に通知するステップと、を実行する、
情報処理方法。
【請求項9】
移動体に搭載されるコンピュータに、
航法衛星が送信する信号として定められたフォーマットに基づく測位信号を受信する機能と、
前記測位信号に基づいて前記移動体の位置を示す絶対座標である自己位置座標を取得する機能と、
前記移動体とは異なる他の移動体から、近距離無線通信を介して当該他の移動体の位置を示す絶対座標である他者位置座標を受信する機能と、
前記自己位置座標と前記他者位置座標との間の距離を算出する機能と、
前記移動体と前記他の移動体との間の距離を取得する機能と、
前記距離を算出するステップにおいて算出された距離である算出距離と、前記距離を取得するステップにおいて取得された距離である取得距離と、に基づいて、前記自己位置座標を算出するために用いられた測位信号と前記他者位置座標を算出するために用いられた測位信号との少なくともいずれか一方の偽装の可能性の有無を判定する機能と、
偽装の可能性があると判定された場合に通知する機能と、を実行させる、
プログラム。
【請求項10】
移動体に搭載されるコンピュータに、
航法衛星が送信する信号として定められたフォーマットに基づく測位信号を受信する機能と、
前記測位信号に基づいて前記移動体の位置を示す絶対座標である自己位置座標の時系列データを取得する機能と、
前記移動体とは異なる他の移動体から近距離無線通信を介して周期的に受信した時系列データであって、当該他の移動体の位置を示す絶対座標である他者位置座標の時系列データを受信する機能と、
前記移動体の加速度を測定する加速度センサが取得した前記移動体の加速度の時系列データを取得する機能と、
自己位置座標の時系列データ、他者位置座標の時系列データ、及び移動体の加速度の時系列データを入力したときに、自己位置座標を算出するために用いられた測位信号と他者位置座標を算出するために用いられた測位信号との少なくともいずれか一方が偽装されているか否かの判定結果を出力するように機械学習された学習モデルを記憶部から取得する機能と、
取得した前記自己位置座標の時系列データ、受信した前記他者位置座標の時系列データ、及び取得した前記移動体の加速度の時系列データを前記学習モデルに入力することにより、前記判定結果を取得する機能と、
前記判定結果を通知する機能と、を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関し、特に、測位衛星すなわちGNSS(Global Navigation Satellite System)からの測位信号を用いて得られる測位情報を利用した移動体の位置把握技術において、測位信号が偽装されているか否かを判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星の一種である測位衛星が送信する信号を偽装(スプーフィング;Spoofing)し、不正な測位情報を混入させる測位信号のスプーフィングがかねてより問題になっており、その対策としてこの測位信号がスプーフィングされているか否かを判定する技術が検討されてきた。特許文献1には、人工衛星から受信した測位信号に基づいて自車両の位置を算出し、自車両の周辺に位置する周辺車両との間で通信を行って周辺車両の位置を含む周辺車両情報を取得し、この周辺車両情報に含まれる周辺車両の位置と、自車両の位置とを比較し、これらの差が所定の閾値よりも大きい場合に、自車両の位置が、偽装された測位信号に基づくものである旨の判定を行う偽装判定技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1で開示された技術では、自車両の位置との比較対象である周辺車両の位置も、測位信号に基づいて算出される。このため、特許文献1で開示された技術では、周辺車両の位置が偽装された測位信号の影響を受けている可能性を排除できず、比較対象としての信頼性が必ずしも担保されていない。このように、航法衛星が送信する信号の偽装を検知する技術には改善の余地があると考えられる。
【0005】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、測位衛星が送信する信号の偽装検知技術を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、移動体に搭載される情報処理装置である。この装置は、航法衛星が送信する信号として定められたフォーマットに基づく測位信号を受信して前記移動体の位置を示す絶対座標である自己位置座標を取得する絶対座標取得部と、前記移動体とは異なる他の移動体から、近距離無線通信を介して当該他の移動体の位置を示す絶対座標である他者位置座標を受信する近距離無線通信部と、前記自己位置座標と前記他者位置座標との間の距離を算出する距離算出部と、前記移動体と前記他の移動体との間の距離を取得する距離取得部と、前記距離算出部が算出した距離である算出距離と、前記距離取得部が取得した距離である取得距離と、に基づいて、前記自己位置座標を算出するために用いられた測位信号と前記他者位置座標を算出するために用いられた測位信号との少なくともいずれか一方の偽装の可能性の有無を判定する判定部と、偽装の可能性があると判定された場合に通知する通知部と、を備える。
【0007】
前記距離取得部は、前記近距離無線通信部が前記他の移動体から受信した信号の信号強度に基づいて前記取得距離を取得してもよい。
【0008】
前記距離取得部は、前記移動体が備える測距センサによって計測された前記移動体と前記他の移動体との距離を前記取得距離として取得してもよい。
【0009】
前記判定部は、前記算出距離と前記取得距離との差の絶対値に対する前記取得距離の比があらかじめ定めた閾値を超えた場合に、前記自己位置座標を算出するために用いられた測位信号と前記他者位置座標を算出するために用いられた測位信号との少なくともいずれか一方が偽装された可能性があると判定してもよい。
【0010】
前記判定部は、前記算出距離に対する前記取得距離の比がある所定の閾値以下である場合、前記自己位置座標を算出するために用いられた測位信号と前記他者位置座標を算出するために用いられた測位信号とのいずれもが偽装された疑いがあると判定してもよい。
【0011】
本発明の第2の態様も、移動体に搭載される情報処理装置である。この装置は、航法衛星が送信する信号として定められたフォーマットに基づく測位信号を受信して前記移動体の位置を示す絶対座標である自己位置座標の時系列データを取得する絶対座標取得部と、前記移動体とは異なる他の移動体から近距離無線通信を介して周期的に受信した時系列データであって、当該他の移動体の位置を示す絶対座標である他者位置座標の時系列データを受信する近距離無線通信部と、前記移動体の加速度を測定する加速度センサが取得した前記移動体の加速度の時系列データを取得する加速度取得部と、自己位置座標の時系列データ、他者位置座標の時系列データ、及び移動体の加速度の時系列データを入力したときに、自己位置座標を算出するために用いられた測位信号と他者位置座標を算出するために用いられた測位信号との少なくともいずれか一方が偽装されているか否かの判定結果を出力するように機械学習された学習モデルを記憶する記憶部と、前記絶対座標取得部が取得した自己位置座標の時系列データ、前記近距離無線通信部が受信した他者位置座標の時系列データ、及び前記加速度取得部が取得した移動体の加速度の時系列データを前記学習モデルに入力することにより、前記判定結果を取得するモデル適用部と、前記判定結果を通知する通知部と、を備える。
【0012】
前記情報処理装置は、前記自己位置座標の時系列データと前記他者位置座標の時系列データとに基づいて、前記自己位置座標と前記他者位置座標との間の距離の時系列データを算出する距離算出部をさらに備えてもよく、前記学習モデルは、距離の時系列データをさらに入力するように学習されていてもよく、前記モデル適用部は、前記絶対座標取得部が取得した自己位置座標の時系列データ、前記近距離無線通信部が受信した他者位置座標の時系列データ、距離の時系列データ、前記距離算出部が算出した距離の時系列データ、及び前記加速度取得部が取得した移動体の加速度の時系列データを前記学習モデルに入力することにより、前記判定結果を取得してもよい。
【0013】
本発明の第3の態様は、情報処理方法である。この方法において、移動体に搭載される情報処理装置のプロセッサが、航法衛星が送信する信号として定められたフォーマットに基づく測位信号を受信するステップと、前記測位信号に基づいて前記移動体の位置を示す絶対座標である自己位置座標を取得するステップと、前記移動体とは異なる他の移動体から、近距離無線通信を介して当該他の移動体の位置を示す絶対座標である他者位置座標を受信するステップと、前記自己位置座標と前記他者位置座標との間の距離を算出するステップと、前記移動体と前記他の移動体との間の距離を取得するステップと、前記距離を算出するステップにおいて算出された距離である算出距離と、前記距離を取得するステップにおいて取得された距離である取得距離と、に基づいて、前記自己位置座標を算出するために用いられた測位信号と前記他者位置座標を算出するために用いられた測位信号との少なくともいずれか一方の偽装の可能性の有無を判定するステップと、偽装の可能性があると判定された場合に通知するステップと、を実行する。
【0014】
本発明の第4の態様は、プログラムである。このプログラムは、移動体に搭載されるコンピュータに、航法衛星が送信する信号として定められたフォーマットに基づく測位信号を受信する機能と、前記測位信号に基づいて前記移動体の位置を示す絶対座標である自己位置座標を取得する機能と、前記移動体とは異なる他の移動体から、近距離無線通信を介して当該他の移動体の位置を示す絶対座標である他者位置座標を受信する機能と、前記自己位置座標と前記他者位置座標との間の距離を算出する機能と、前記移動体と前記他の移動体との間の距離を取得する機能と、前記距離を算出するステップにおいて算出された距離である算出距離と、前記距離を取得するステップにおいて取得された距離である取得距離と、に基づいて、前記自己位置座標を算出するために用いられた測位信号と前記他者位置座標を算出するために用いられた測位信号との少なくともいずれか一方の偽装の可能性の有無を判定する機能と、偽装の可能性があると判定された場合に通知する機能と、を実行させる。
【0015】
本発明の第5の態様も、プログラムである。このプログラムは、移動体に搭載されるコンピュータに、航法衛星が送信する信号として定められたフォーマットに基づく測位信号を受信する機能と、前記測位信号に基づいて前記移動体の位置を示す絶対座標である自己位置座標の時系列データを取得する機能と、前記移動体とは異なる他の移動体から近距離無線通信を介して周期的に受信した時系列データであって、当該他の移動体の位置を示す絶対座標である他者位置座標の時系列データを受信する機能と、前記移動体の加速度を測定する加速度センサが取得した前記移動体の加速度の時系列データを取得する機能と、自己位置座標の時系列データ、他者位置座標の時系列データ、及び移動体の加速度の時系列データを入力したときに、自己位置座標を算出するために用いられた測位信号と他者位置座標を算出するために用いられた測位信号との少なくともいずれか一方が偽装されているか否かの判定結果を出力するように機械学習された学習モデルを記憶部から取得する機能と、取得した前記自己位置座標の時系列データ、受信した前記他者位置座標の時系列データ、及び取得した前記移動体の加速度の時系列データを前記学習モデルに入力することにより、前記判定結果を取得する機能と、前記判定結果を通知する機能と、を実行させる。
【0016】
これらのプログラムを提供するため、あるいはプログラムの一部をアップデートするために、このプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供されてもよく、また、このプログラムが通信回線で伝送されてもよい。
【0017】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、データ構造、記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、測位衛星が送信する信号の偽装検知技術を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施の形態に係る情報処理装置が実行する処理の流れの概要を説明するための図である。
【
図2】実施の形態に係る情報処理装置の機能構成を模式的に示す図である。
【
図3】送信機と受信機との間の距離と、受信機が受信した信号の強度である受信信号強度との関係をグラフ形式で示す模式図である。
【
図4】算出距離と取得距離との差の絶対値に対する取得距離の比の値の時間変化を模式的に示す図である。
【
図5】実施の形態に係る情報処理装置が実行する情報処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図6】第1の変形例に係る情報処理装置の機能構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施の形態の概要>
図1(a)-(b)は、実施の形態に係る情報処理装置1が実行する処理の流れの概要を説明するための図である。以下、
図1(a)-(b)を参照して実施の形態の概要を述べる。
【0021】
情報処理装置1は、航法衛星Sが送信する信号である測位信号を受信して位置情報を取得可能な移動体Mに搭載するためのコンピュータである。情報処理装置1は移動体Mに搭載され、搭載された移動体Mが受信した測位信号が改ざんされた信号である可能性の有無を検知するように構成されている。ここで、移動体Mは、複数の回転翼を持つ飛行体(いわゆるドローン)、自動車や自動二輪車等の車両、水上を自動で航行する水上ドローン等である。
図1(a)は、移動体Mが飛行体である場合の例を示している。煩雑となることを避けるため
図1(a)において航法衛星Sを一基のみ記載しているが、一般に移動体Mは複数の異なる航法衛星Sから測位信号を受信する。
【0022】
以下、本明細書では移動体Mが飛行体であることを前提とするが、移動体Mは航法衛星Sが送信する信号である測位信号を受信して位置情報を取得可能な移動体であれば飛行体以外であってもよい。また、測位信号は、航法衛星Sから直接受信する信号のみならず、それを補うためのディフェレンシャルGPS(Differential Global Positioning System)の信号や、RTK(Real Time Kinematic)で用いられる信号も含まれる。
【0023】
図1(a)に示すように、情報処理装置1は、情報処理装置1を搭載する移動体Mである第1移動体M1に加えて、第1移動体M1の近傍をおおむね一定の距離を保って移動する第2移動体M2が存在することを前提としている。以下、本明細書において、第1移動体M1と第2移動体M2とを特に区別しない場合は単に移動体Mと記載する。
【0024】
情報処理装置1は、第1移動体M1と第2移動体M2とがそれぞれ航法衛星Sから受信した測位信号に基づいて取得した位置座標から、第1移動体M1と第2移動体M2との間の距離を算出する。以下、本明細書において、第1移動体M1と第2移動体M2とのそれぞれの位置座標から計算によって求めた距離を「算出距離L1」と記載する。
図1に示す例においては、第1移動体M1の位置座標は(X1,Y1,Z1)であり、第2移動体M2の位置座標は(X2,Y2,Z2)で示されている。算出距離L1は測位信号に基づいて算出された距離であるため、測位信号が偽装された場合には、第1移動体M1と第2移動体M2との間の真の距離との乖離が大きくなると考えられる。なお、航法衛星Sから受信した測位信号に基づいて取得した位置座標は一般に緯度、経度、及び高度によって表される。
図1に示す例は、算出距離L1の算出の便宜のため、緯度、経度、及び高度似よって定まる地点を、あらかじめ定められた所定の位置を原点とする三次元の絶対座標系における座標に変換した場合の座標を表している。緯度、経度、及び高度及び所定の位置を原点とする三次元の絶対座標系における座標は一対一に対応するため、情報処理装置1は使用する座標系を任意に変更することができる。
【0025】
情報処理装置1は、第1移動体M1と第2移動体M2との距離を推定する手法であって、航法衛星Sから受信する測位信号に依存しない別の手法によっても、第1移動体M1と第2移動体M2との距離を取得する。以下、本明細書において、情報処理装置1が航法衛星Sから受信する測位信号に依存しない別の手法によって取得した距離を「取得距離L2」と記載する。
図1(a)に示す例では、第1移動体M1に搭載されている情報処理装置1は、既知の近距離無線通信技術を用いて第2移動体M2からその位置座標を取得する。情報処理装置1は、上述した別の手法の一例として、第2移動体M2の位置座標を送信した信号の受信信号強度(Received Signal Strength Indicator;RSSI)から、第1移動体M1と第2移動体M2との距離である取得距離L2を推定する。
【0026】
図1(a)に示す例において、偽装信号発生装置Dはソフトウェア無線機(Software Defined Radio;SDR)により実装されており、複数の航法衛星Sが送信する信号を模擬して出力する。具体的には、偽装信号発生装置Dは、航法衛星Sが送信する信号として定められたフォーマットに基づく測位信号を生成し、航法衛星Sになりすまして測位信号を送信する。
【0027】
図1(b)は、横軸を時刻、縦軸を距離として、取得距離L1(実線で示す)と第2距離L2(破線で示す)との時間変化をグラフ形式で示す模式図である。第1移動体M1と第2移動体M2とはそれぞれ空中を飛行するため、両者の距離が一定間隔(距離L0)となるように制御したとしても多少の変動が生じる。また、取得距離L2はRSSIに基づく推定値であるため、取得距離L2には推定誤差が乗る。結果として、
図1(b)に示すように取得距離L2は時間の変化とともに揺らぎが生じるものの、おおむね距離L0の近傍を推移する。
【0028】
これに対し、実線で示される算出距離L1は、時間経過に伴って値が不連続となっている。具体的には、
図1(b)では、時刻T1に至るまでは取得距離L2と同様に算出距離L1も距離L0の近傍を推移しているが、時刻T1から時刻T2にかけて、算出距離L1の値が急激に増加している。これは、時刻T1から時刻T2にかけて、第1移動体M1と第2移動体M2とのいずれか一方のみが、偽装信号発生装置Dが送信する偽装信号を受信することによって位置座標が偽装されたためである。
【0029】
時刻T2から時刻T3に至るまでは、第1移動体M1と第2移動体M2とのいずれも偽装信号発生装置Dが送信する偽装信号の影響を受けていないため、算出距離L1は再び距離L0の近傍を推移している。その後、時刻T3から時刻T4にかけて、第1移動体M1と第2移動体M2とのいずれもが同一の偽装信号発生装置Dが送信する偽装信号の影響を同時に受ける。第1移動体M1と第2移動体M2とのいずれもが同一の偽装信号に基づいて位置座標を算出すると、その位置座標は同一又は類似する座標となる。このため、
図1(b)に示すように、時刻T3から時刻T4にかけて算出距離L1はL0と比較して非常に小さな値となっている。
【0030】
このように、情報処理装置1は、第1移動体M1と第2移動体M2との間の距離を、測位信号に基づく位置座標から算出した算出距離L1と、測位信号に依存しないRSSIに基づいて推定した取得距離L2とを用いることにより、第1移動体M1と第2移動体M2との少なくともいずれか一方が受信した測位信号が偽装されている可能性を判定することができる。ドローンをはじめとして近年移動体が近距離無線通信モジュールを搭載している頻度は高く、また搭載していないとしても近距離無線通信モジュール自体は安価かつ電力消費も大きくない。このため、情報処理装置1は、測位信号の偽装の判定を低コストで実現することができる。
【0031】
<実施の形態に係る情報処理装置1の機能構成>
図2は、実施の形態に係る情報処理装置1の機能構成を模式的に示す図である。情報処理装置1は移動体Mに搭載されており、記憶部10と近距離無線通信部11と測位信号受信部12と制御部13を備えている。
図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、
図2に図示しないデータの流れがあってもよい。
図2において、各機能ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、
図2に示す機能ブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。機能ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0032】
記憶部10は、情報処理装置1を実現するコンピュータのBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)や情報処理装置1の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、OS(Operating System)やアプリケーションプログラム、当該アプリケーションプログラムの実行時に参照される種々の情報を格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置である。
【0033】
近距離無線通信部11は、情報処理装置1が外部の装置と通信するための通信インターフェースであり、Bluetooh(登録商標)モジュールやWi-Fi(登録商標)モジュール、UWB(Ultra-Wide Band)モジュール等の既知の通信モジュールで実現されている。測位信号受信部12は、情報処理装置1が航法衛星Sから測位信号を受信するためのモジュールであり、例えば既知のGPSモジュールで実現されている。
【0034】
制御部13は、情報処理装置1のCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部10に記憶されたプログラムを実行することによって絶対座標取得部130、距離算出部131、距離取得部132、判定部133、及び通知部134として機能する。
【0035】
絶対座標取得部130は、航法衛星Sが送信する信号として定められたフォーマットに基づく測位信号を受信して移動体Mの位置を示す絶対座標である自己位置座標(緯度、経度、高度等の位置情報)を取得する。近距離無線通信部11は、情報処理装置1を搭載する移動体Mとは異なる他の移動体Mから、近距離無線通信を介して他の移動体Mの位置を示す絶対座標である他者位置座標を受信する。
【0036】
距離算出部131は、第1移動体M1の位置座標である自己位置座標と、第2移動体M2の位置座標である他者位置座標との間の距離である算出距離L1を算出する。距離取得部132は、第1移動体M1と第2移動体M2との間の距離を取得する。具体的には、距離取得部132は、近距離無線通信部11が第2移動体M2から受信した信号の信号強度に基づいて取得距離L2を取得する。
【0037】
図3は、送信機と受信機との間の距離と、受信機が受信した信号の強度である受信信号強度(RSSI)との関係をグラフ形式で示す模式図である。
図3は、第1移動体M1が備える受信機と、第2移動体M2が備える送信機とをあらかじめ複数の異なる距離に配置し、受信機における受信信号強度を計測することで作成されている。情報処理装置1は、
図3に示す受信信号強度と距離との関係を示すデータをあらかじめ記憶部10に記憶している。距離取得部132は、記憶部10に記憶されているデータを参照することにより、近距離無線通信部11が受信した信号の受信信号強度から取得距離L2を取得する。
【0038】
図2の説明に戻る。判定部133は、距離算出部131が算出した距離である算出距離L1と、距離取得部132が取得した距離である取得距離L2とに基づいて、自己位置座標を算出するために用いられた測位信号と他者位置座標を算出するために用いられた測位信号との少なくともいずれか一方の偽装の可能性の有無を判定する。判定部133により判定処理の詳細は後述するが、
図1(b)を参照して概要を説明したとおり、判定部133は、算出距離L1と取得距離L2との乖離を検知することにより、測位信号の偽装の可能性の有無を判定することができる。
【0039】
通知部134は、判定部133による判定の結果を通知する。特に、通知部134は、判定部133によって測位信号の偽装の可能性があると判定された場合に通知してもよい。移動体Mがドローン等のように自律して動作するものである場合には、通知部134は、その動作を管理する者の端末に偽装の可能性があることを示すメッセージを通知する。また、移動体Mが例えば自動車のようにユーザが乗り込んで操作するものである場合には、通知部134は、移動体Mに備えられたスピーカ等の音声出力部(不図示)に偽装の可能性があることを示す音声を流してもよい。
【0040】
このように、実施の形態に係る情報処理装置1は、航法衛星Sが送信する信号の偽装検知の新たな技術を提供することができる。
【0041】
ここで、第1移動体M1が既知の測距センサを備えている場合には、距離取得部132は、受信信号強度を用いた距離の推定に替えて、第1移動体M1が備える測距センサによって計測された第1移動体M1と第2移動体M2との距離を取得距離L2として取得してもよい。測距センサによる距離計測も受信信号強度による距離推定と同様に測位信号に依存しない距離取得手法であり、かつ測距センサによる距離計測は受信信号強度による距離推定よりも距離の精度を高めうる点で有利である。測距センサは、LiDAR(Light Detection And Ranging)、ステレオカメラ、レーダーなど周辺の移動体までの距離が計測できるものであれば種類は問わない。
【0042】
続いて、判定部133による測位信号の偽装の可能性の有無の判定処理について説明する。
【0043】
判定部133は、算出距離L1と取得距離L2との差の絶対値に対する取得距離L2の比の値Vがあらかじめ定めた閾値Thを超えた場合に、第1移動体M1の位置座標である自己位置座標を算出するために用いられた測位信号と、第2移動体M2の位置座標である他者位置座標を算出するために用いられた測位信号との少なくともいずれか一方が偽装された可能性があると判定する。具体的には、判定部133は、以下の式(1)で示す値Vを算出し、閾値Thとの比較を実行する。
【0044】
【0045】
図4は、算出距離L1と取得距離L2との差の絶対値に対する取得距離L2の比の値Vの時間変化を模式的に示す図である。
図4において時刻T1に至るまでは、第1移動体M1と第2移動体M2とのいずれも偽装信号の影響を受けていないため、算出距離L1と取得距離L2とはほぼ等しくなる。したがって、算出距離L1と取得距離L2の差の絶対値に対する取得距離L2の比である値Vは、V≒0となる。
図4においても、時刻T1に至るまではVの値は0の近傍となっている。
【0046】
時刻T1から時刻T2までの間、第1移動体M1と第2移動体M2とのいずれか一方が偽装信号の影響を受けたため、算出距離L1は取得距離L2に対して著しく大きくなり、算出距離L1>>取得距離L2となった。このため、算出距離L1と取得距離L2の差の絶対値に対する取得距離L2の比である値VはV≒算出距離L1/取得距離L2>>1となる。
図4においても、時刻T1と時刻T2の間において、Vの値は1よりも大きくなっている。
【0047】
時刻T3から時刻T4に至るまでの間は、第1移動体M1と第2移動体M2とのいずれも同じ偽装信号の影響を受けている。このため、第1移動体M1と第2移動体M2と位置座標が同一又は近似するため、算出距離L1≒0となる。このとき、算出距離L1と取得距離L2との差の絶対値に対する取得距離L2の比である値Vは、V≒|-L2|/L2=1となる。
図4においても、時刻T3と時刻T4との間において、Vの値は1となっている。
【0048】
以上より、実施の形態に係る判定部133は、閾値Thを0.5に設定し、値Vが0.5以上となる場合には、第1移動体M1の位置座標を算出するために用いられた測位信号と、第2移動体M2の位置座標を算出するために用いられた測位信号との少なくともいずれか一方が偽装された可能性があると判定する。なお、閾値Thの値は記憶部10に記憶されており、情報処理装置1のユーザはいつでもその値を変更することができる。
【0049】
上述したように、第1移動体M1と第2移動体M2とのいずれか一方が偽装信号の影響を受けている場合と、第1移動体M1と第2移動体M2とのいずれも同じ偽装信号の影響を受けている場合とでは、値Vの値が異なる。すなわち、判定部133は、値Vの大きさによって、第1移動体M1と第2移動体M2とのいずれか一方のみが偽装信号の影響を受けているのか、又は第1移動体M1と第2移動体M2とのいずれもが偽装信号の影響を受けているのかを判定することができる。
【0050】
第1移動体M1と第2移動体M2とのいずれも偽装信号の影響を受けていない場合、算出距離L1と取得距離L2とはほぼ等しくなる。また、上述したように、第1移動体M1と第2移動体M2とのいずれも同じ偽装信号の影響を受けている場合、算出距離L1はほぼ0となる。したがって、算出距離L1を取得距離L2で除算した値V2は、第1移動体M1と第2移動体M2とのいずれも同じ偽装信号の影響を受けている可能性があるか否かを判定する基準となり得る。
【0051】
そこで、判定部133は、算出距離L1に対する取得距離L2の比の値V2がある所定の閾値Th2以下である場合、自己位置座標を算出するために用いられた測位信号と他者位置座標を算出するために用いられた測位信号とのいずれもが偽装された疑いがあると判定する。所定の閾値Th2は0と1との間の値であればよく、例えば0.5である。所定の閾値Th2も記憶部10に記憶されており、情報処理装置1のユーザはいつでもその値を変更することができる。
【0052】
<情報処理装置1が実行する情報処理方法の処理フロー>
図5は、実施の形態に係る情報処理装置1が実行する情報処理の流れを説明するためのフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、例えば情報処理装置1が起動したときに開始する。
【0053】
第1移動体M1の測位信号受信部12は、航法衛星Sが送信する信号として定められたフォーマットに基づく測位信号を受信する(S2)。絶対座標取得部130は、第1移動体M1の位置を示す絶対座標である自己位置座標を取得する(S4)。
【0054】
近距離無線通信部11は、第1移動体M1とは異なる他の移動体である第2移動体M2から、第2移動体M2の位置を示す絶対座標である他者位置座標を近距離無線通信を介して受信して取得する(S6)。距離算出部131は、自己位置座標と他者位置座標との間の距離である算出距離L1を算出する(S8)。
【0055】
距離取得部132は、第1移動体M1と第2移動体M2との間の距離であって、測位信号に依存しない手法で取得した距離である取得距離L2を取得する(S10)。判定部133は、算出距離L1と取得距離L2とに基づいて、自己位置座標を算出するために用いられた測位信号と他者位置座標を算出するために用いられた測位信号との少なくともいずれか一方の偽装の可能性の有無を判定する(S12)。
【0056】
通知部134は、判定部133による判定の結果を通知する(S14)。通知部134が判定部133による判定の結果を通知すると、本フローチャートにおける処理は終了する。
【0057】
<実施の形態に係る情報処理装置1が奏する効果>
以上説明したように、実施の形態に係る情報処理装置1によれば、測位衛星が送信する信号の偽装検知技術を改善することができる。
【0058】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果をあわせ持つ。以下そのような変形例を説明する。
【0059】
<第1の変形例>
上記では、情報処理装置1が、算出距離L1と取得距離L2とを用いて式(1)に基づく値Vを計算することにより、測位信号の偽装の可能性を判定する場合について説明した。これは、情報処理装置1が特定の時刻毎に独立に偽装判定を実行していると捉えることもできる。これに替えて、第1の変形例に係る情報処理装置1は、自己位置座標と他者位置座標との時系列データと、第1移動体M1の加速度の時系列データとを参照し、それらの変動を解析することで偽装判定を実行する。
【0060】
具体的には、第1の変形例に係る情報処理装置1は、測位信号の偽装の可能性を判定するための機械学習モデルを利用して偽装判定を実行する。さらに具体的には、第1の変形例に係る情報処理装置1は、自己位置座標の時系列データ、他者位置座標の時系列データ、及び移動体の加速度の時系列データを入力したときに、自己位置座標を算出するために用いられた測位信号と他者位置座標を算出するために用いられた測位信号との少なくともいずれか一方が偽装されているか否かの判定結果を出力するように機械学習された学習モデルを有しており、その機械学習モデルを利用して偽装判定を実行する。
【0061】
以下、第1の変形例に係る情報処理装置1について説明するが、上述した実施の形態に係る情報処理装置1と共通する箇所については適宜省略又は簡略化して説明する。また、以下では、上述した実施の形態に係る情報処理装置1と区別する場合を除いて、第1の変形例に係る情報処理装置1を単に情報処理装置1と記載する。
【0062】
図6は、第1の変形例に係る情報処理装置1の機能構成を模式的に示す図である。情報処理装置1は第1移動体M1に搭載されており、記憶部10と近距離無線通信部11と測位信号受信部12と制御部13と加速度センサ14を備えている。
図6において、矢印は主なデータの流れを示しており、
図6に図示しないデータの流れがあってもよい。
図6において、各機能ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、
図6に示す機能ブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。機能ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0063】
記憶部10は、情報処理装置1を実現するコンピュータのBIOS等を格納するROMや情報処理装置1の作業領域となるRAM、OSやアプリケーションプログラム、当該アプリケーションプログラムの実行時に参照される機械学習モデル等、種々の情報を格納するHDDやSSD等の大容量記憶装置である。
【0064】
近距離無線通信部11は、情報処理装置1が外部の装置と通信するための通信インターフェースであり、BluetoohモジュールやWi-Fiモジュール、UWBモジュール等の既知の通信モジュールで実現されている。測位信号受信部12は、情報処理装置1が航法衛星Sから測位信号を受信するためのモジュールであり、例えば既知のGPSモジュールで実現されている。
【0065】
制御部13は、情報処理装置1のCPUやGPU等のプロセッサであり、記憶部10に記憶されたプログラムを実行することによって絶対座標取得部130、距離算出部131、通知部134、加速度取得部135、及びモデル適用部136として機能する。加速度センサ14は、第1移動体M1の加速度を測定する。
【0066】
絶対座標取得部130は、航法衛星Sが送信する信号として定められたフォーマットに基づく測位信号を周期的受信して第1移動体M1の位置を示す絶対座標である自己位置座標の時系列データを取得する。
【0067】
近距離無線通信部11は、第1移動体M1とは異なる他の移動体である第2移動体M2から第2移動体M2の位置を示す絶対座標である他者位置座標の時系列データを、近距離無線通信を介して周期的に受信する。加速度取得部135は、加速度センサ14が取得した第1移動体M1の加速度の時系列データを取得する。
【0068】
記憶部10は、自己位置座標の時系列データ、他者位置座標の時系列データ、及び移動体の加速度の時系列データを入力したときに、自己位置座標を算出するために用いられた測位信号と他者位置座標を算出するために用いられた測位信号との少なくともいずれか一方が偽装されているか否かの判定結果を出力するように機械学習された学習モデルを記憶している。既知の手法であるため詳細は省略するが、記憶部10が記憶している学習モデルは、例えばLSTM(Long short-term memory)ネットワークを利用して生成されている。
【0069】
モデル適用部136は、記憶部10から学習モデルを読み出して取得する。モデル適用部136は、絶対座標取得130部が取得した自己位置座標の時系列データ、近距離無線通信部11が受信した他者位置座標の時系列データ、及び加速度取得部135が取得した第1移動体M1の加速度の時系列データを学習モデルに入力することにより、判定結果を取得する。通知部134は、モデル適用部136が取得した判定結果を通知する。
【0070】
図1(b)及び
図4を参照して説明したように、測位信号に依存する算出距離L1は、第1移動体M1と第2移動体M2との少なくともいずれか一方が偽装信号発生装置Dの影響を受けた場合、不連続な値を持つことになる。これは、自己位置座標データ又は他者位置座標データの値が、偽装信号発生装置Dの影響を受けた場合とそうでない場合とで不連続な値となるからである。第1の変形例に係る情報処理装置1が採用する機械学習モデルは、偽装信号発生装置Dの影響を受けた場合とそうでない場合との自己位置座標データ及び他者位置座標データの時系列データを教師データとして学習しており、偽装信号発生装置Dの影響を検知するように構成されている。
【0071】
また、第1の変形例に係る情報処理装置1が採用する機械学習モデルは、第1移動体M1の加速度の時系列データも学習データに含んでいる。例えば、第1移動体M1が急激に加速ないし減速した場合には、算出距離L1が不連続に変化するように観測されることも起こりうる。反対に、第1移動体M1が急激に加速ないし減速していないにもかかわらず算出距離L1が急激に変化した場合は、第2移動体M2の急激な加減速の可能性も残るものの、第1移動体M1と第2移動体M2との少なくとも一方が偽装信号の影響下にある蓋然性が高まる。第1の変形例に係る情報処理装置1は、これらの情報を機械学習した学習モデルを用いることにより、測位衛星が送信する信号の偽装検知技術の精度を改善することができる。
【0072】
ここで、第1の変形例に係る情報処理装置1も実施の形態に係る情報処理装置1と同様に、算出距離L1を直接的に参照してもよい。この場合、距離算出部131が、自己位置座標の時系列データと他者位置座標の時系列データとに基づいて、自己位置座標と他者位置座標との間の距離である算出距離L1の時系列データを算出すればよい。また、学習モデルは、算出距離L1の時系列データをさらに入力するように学習すればよい。
【0073】
モデル適用部136は、自己位置座標の時系列データ、他者位置座標の時系列データ、距離の時系列データ、算出距離L1の時系列データ、及び第1移動体M1の加速度の時系列データを学習モデルに入力することにより、判定結果を取得する。算出距離L1を直接的に利用することにより、第1の変形例に係る情報処理装置1は、測位衛星が送信する信号の偽装検知技術の精度を改善することが期待できる。
【0074】
<第2の変形例>
上記の実施の形態に係る情報処理装置1では、式(1)に示す計算式を用いて算出距離L1と取得距離L2とに関する値Vを計算する場合について説明した。しかしながら、値Vの算出手法は式(1)に限らない。第2の変形例に係る情報処理装置1は、式(1)に示す計算式に替えて、以下の式(2)に示す計算式を用いて値Vを計算する。
【0075】
【0076】
ここで、判定部133は、以下の式(3)に示す条件によって測位信号の偽装の可能性の有無を判定する。
【0077】
【0078】
式(3)において、Th3及びTh4は、判定部133が測位信号の偽装判定を実行する際に参照される偽装判定用閾値である。いま、第1移動体M1と第2移動体M2とのいずれもが偽装信号発生装置Dの影響を受け、測位信号が偽装されたとする。この場合、自己位置座標と他者位置座標が同一又は近似するため、算出距離L1は移動距離L2と比較して小さな値となる。したがって、式(2)に示す値Vは0に近くなる。これに対し、第1移動体M1と第2移動体M2とのいずれも偽装信号発生装置Dの影響を受けていない場合、算出距離L1と取得距離L2との値は近い値となる。この結果、式(2)に示す値Vは1に近くなる。さらに、第1移動体M1と第2移動体M2とのいずれか一方のみが偽装信号発生装置Dの影響を受け、測位信号が偽装されたとする。この場合、自己位置座標と他者位置座標が大きく乖離し、結果として算出距離L1は大きな値となる。したがって、式(2)に示す値Vも1をはるかに超えた大きな値となる。
【0079】
以上の考察から、例えば、Th3=0.5、Th4=1.5とすることにより、判定部133は、第1移動体M1と第2移動体M2とのいずれか又は両方が偽装信号の影響を受けている可能性の有無を判定することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 情報処理装置
10 記憶部
11 近距離無線通信部
12 測位信号受信部
13 制御部
130 絶対座標取得部
131 距離算出部
132 距離取得部
133 判定部
134 通知部
135 加速度取得部
136 モデル適用部
14 加速度センサ
D 偽装信号発生装置
M 移動体
S 航法衛星