(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029906
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】ダンパーヒンジ、ダンパーヒンジを備えるレンジフード、及び整流板の回動の制動方法
(51)【国際特許分類】
F16F 7/02 20060101AFI20250228BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20250228BHJP
F24F 13/14 20060101ALI20250228BHJP
F16F 15/12 20060101ALI20250228BHJP
F16F 15/129 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
F16F7/02
F24F7/06 101A
F24F13/14 D
F16F15/12 R
F16F15/129 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134792
(22)【出願日】2023-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000108661
【氏名又は名称】タカラスタンダード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀田 雄史
【テーマコード(参考)】
3J066
3L058
3L081
【Fターム(参考)】
3J066AA24
3J066BA01
3J066BD05
3J066CA03
3J066CB06
3L058BK02
3L081AA01
3L081FB01
3L081FC01
(57)【要約】
【課題】本発明によれば、円滑な回動位置の調整が可能なダンパーヒンジ、及びそれを備えるレンジフード、並びに整流板の回動の制動方法が提供される。
【解決手段】ダンパーヒンジは、軸部を有する軸体と、上記軸部が回動可能に嵌合する軸受孔を有する軸受体と、を備え、上記軸体は、上記軸部の径外方向に突出するディスク部と、上記軸部の径外方向に突出し、且つ上記ディスク部の側面と対向する面に、上記軸部の回動方向に対して傾くテーパー面を有するテーパー部と、上記ディスク部及び上記テーパー部の間に形成される第一凹部と、を有し、上記テーパー面は、上記軸部の第一回動方向に向け、上記ディスク部の側面及び上記テーパー面との間隔が広がるように、上記テーパー部に形成されており、上記軸受体は、上記第一凹部に配置される第一弾性部を有し、上記テーパー面は、上記軸部の上記第一回動方向への回動により、上記第一弾性部を、上記ディスク部の側面に押し付ける。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部を有する軸体と、
前記軸部が回動可能に嵌合する軸受孔を有する軸受体と、
を備え、
前記軸体は、
前記軸部の径外方向に突出するディスク部と、
前記軸部の径外方向に突出し、且つ前記ディスク部の側面と対向する面に、前記軸部の回動方向に対して傾くテーパー面を有するテーパー部と、
前記ディスク部及び前記テーパー部の間に形成される第一凹部と、
を有し、
前記テーパー面は、前記軸部の第一回動方向に向け、前記ディスク部の側面及び前記テーパー面との間隔が広がるように、前記テーパー部に形成されており、
前記軸受体は、前記第一凹部に配置される第一弾性部を有し、
前記テーパー面は、前記軸部の第一回動方向への回動により、前記第一弾性部を、前記ディスク部の側面に押し付ける、
ダンパーヒンジ。
【請求項2】
前記軸体は、少なくとも、
前記ディスク部の両側に配置される、2つの前記テーパー部と、
前記ディスク部及び前記テーパー部の間に形成される、2つの第一凹部と、
を有する、請求項1に記載のダンパーヒンジ。
【請求項3】
前記軸受体は、前記第一凹部の、前記テーパー面と前記第一弾性部との間に配置される、プレート部を有し、
前記プレート部は、前記第一弾性部より、テーパー面に接触した際の摩擦抵抗が小さく、
前記テーパー面は、前記プレート部を介して、前記第一弾性部を、前記ディスク部の側面に押し付ける、
請求項2に記載のダンパーヒンジ。
【請求項4】
前記第一凹部は、前記軸部の前記第一回動方向への回動により、前記第一弾性部が接触する第一制動面を有し、
前記第一制動面は、前記第一弾性部が、前記第一制動面に接触することで、前記軸部の前記第一回動方向へのさらなる回動を制動する、
請求項3に記載のダンパーヒンジ。
【請求項5】
前記第一制動面は、前記軸部の前記第一回動方向への回動により、前記プレート部に接触しない位置に配置される、請求項4に記載のダンパーヒンジ。
【請求項6】
前記軸体は、第二凹部を有し、
前記軸受体は、前記第二凹部に配置される第二弾性部を有し、
前記第二凹部は、前記軸部の前記第一回動方向と反対の第二回動方向への回動により、前記第二弾性部が接触する第二制動面を有し、
前記第二制動面は、前記第二弾性部が、前記第二制動面に接触することで、前記軸部の前記第二回動方向へのさらなる回動を制動する、
請求項5に記載のダンパーヒンジ。
【請求項7】
前記第二凹部は、前記軸部の前記第一回動方向への回動により、前記第二弾性部が接触する第三制動面を有し、
前記第三制動面は、前記第二弾性部が、前記第三制動面に接触することで、前記軸部の前記第一回動方向へのさらなる回動を制動する、
請求項6に記載のダンパーヒンジ。
【請求項8】
前記第一制動面は、前記第二弾性部が前記第三制動面に接触している状態において、前記第一弾性部が、前記第一制動面に押し付けられて弾性変形する位置に配置される、請求項7に記載のダンパーヒンジ。
【請求項9】
整流板を上下方向に回動可能に支持するヒンジとして、請求項1~8のいずれか1項に記載のダンパーヒンジを備えるレンジフード。
【請求項10】
整流板を上下方向に回動可能に支持するダンパーヒンジを備えるレンジフードにおける、前記整流板の回動の制動方法であって、
前記ダンパーヒンジは、
前記整流板が固定される軸体と、
前記軸体が回動可能に嵌合し、前記軸体の回動を制動する弾性部を有する軸受体と、
を備え、
前記整流板の上側から下側への回動において、
前記整流板の回動が、前記軸体及び前記弾性部の摩擦抵抗により制動される、第一ステップと、
前記整流板の回動が、前記軸体及び前記弾性部の摩擦抵抗及び接触規制により制動される、第二ステップと、
を有する制動方法。
【請求項11】
前記整流板の回動が、前記軸体及び前記弾性部の摩擦抵抗及び接触規制、並びに、前記弾性部の弾性変形により制動される、第三ステップを有する、請求項10に記載の制動方法。
【請求項12】
前記弾性部は、第一弾性部及び第二弾性部を含み、
前記整流板の回動が、前記軸体及び前記第一弾性部の摩擦抵抗により制動される、前記第一ステップと、
前記整流板の回動が、前記軸体及び前記第一弾性部の摩擦抵抗及び接触規制により制動される、前記第二ステップと、
前記整流板の回動が、前記軸体及び前記第一弾性部の摩擦抵抗及び接触規制、並びに、前記第一弾性部の弾性変形により制動される、前記第三ステップと、
前記整流板の回動が、前記軸体及び前記第一弾性部の摩擦抵抗及び接触規制、前記第一弾性部の弾性変形、並びに、前記軸体及び前記第二弾性部の接触規制により制動される、前記第四ステップと、
を有する、請求項11に記載の制動方法。
【請求項13】
前記整流板の回動が、前記軸体及び前記第一弾性部の摩擦抵抗及び接触規制、前記第一弾性部の弾性変形、前記軸体及び前記第二弾性部の接触規制、並びに前記第二弾性部の弾性変形により制動される、前記第五ステップを有する、請求項12に記載の制動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパーヒンジ、ダンパーヒンジを備えるレンジフード、及び整流板の回動の制動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レンジフードはシロッコファンやターボファンなどの気流発生器を内蔵し、室内の空気をフード下面に設けられた開口部より取り込んで排気する。吸い込み口にはフィルタが取り付けられ、吸い込んだ空気から調理に伴って発生する油煙等を捕集する。
【0003】
上記開口部に吸い込まれる空気の上流側に、吸い込み口の面積を狭くするように整流板が配置されるレンジフードがある。整流板は、吸い込み口の面積を狭くすることで吸い込み力を大きくし、吸い込む効率を向上させるために設けられる。
【0004】
整流板を上下方向に回動可能に支持するヒンジと、フード下面に整流板を着脱可能に支持する支持部とを備えるレンジフードが知られている。支持部が整流板をフード下面に支持している閉状態において、支持部による支持が解消されると、整流板は、ヒンジにより、自重で下向きに回動する。整流板が、フード下面に対してヒンジで釣支された開状態となることで、レンジフードの清掃やフィルタの交換を効率的に行うことができる。
【0005】
整流板を支持するヒンジとして、オイルの粘性抵抗を利用するダンパーヒンジを採用することが知られている。また、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3には、整流板の開閉機構として、一方向クラッチを含むダンパを有するヒンジ機構を備えるレンジフードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-007245号公報
【特許文献2】特開2011-012750号公報
【特許文献3】特開2011-007403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
整流板を支持するヒンジとして、一般的なオイルの粘性抵抗を利用するダンパーヒンジを採用した場合、整流板を所定の開状態の位置に調整することができない。また、整流板の閉状態から開状態への回動初期から、整流板の下方向への回動が制限される。そのため、作業者が、整流板を開状態にする負荷が大きく、整流板を素早く開状態にすることができなかった。
【0008】
特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に記載のダンパを有するヒンジ機構を備えるレンジフードは、作業者が、手動で整流板の開状態の位置を調整することが可能である。しかし、一方向クラッチにより、整流板の閉状態から開状態への回動初期から、整流板の下方向への回動が制限されるため、整流板を素早く所定の開状態の位置に調整することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るダンパーヒンジは、軸部を有する軸体と、上記軸部が回動可能に嵌合する軸受孔を有する軸受体と、を備え、上記軸体は、上記軸部の径外方向に突出するディスク部と、上記軸部の径外方向に突出し、且つ上記ディスク部の側面と対向する面に、上記軸部の回動方向に対して傾くテーパー面を有するテーパー部と、上記ディスク部及び上記テーパー部の間に形成される第一凹部と、を有し、上記テーパー面は、上記軸部の第一回動方向に向け、上記ディスク部の側面及び上記テーパー面との間隔が広がるように、上記テーパー部に形成されており、上記軸受体は、上記第一凹部に配置される第一弾性部を有し、上記テーパー面は、上記軸部の上記第一回動方向への回動により、上記第一弾性部を、上記ディスク部の側面に押し付ける。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、円滑な回動位置の調整が可能なダンパーヒンジ、及びそれを備えるレンジフードが提供される。また、本発明によれば、整流板の円滑な回動位置の調整、及びレンジフードの背面が接する壁への衝突の抑制が可能な、整流板の回動の制動方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】整流板が閉状態の、レンジフードの下方向からの斜視図である。
【
図3】整流板が開状態の、レンジフードの下方向からの斜視図である。
【
図4】整流板を係止した状態の、着脱機構の斜視図である。
【
図5】ダンパーヒンジの内部構造を示す斜視図である。
【
図6】軸部の回動による、軸体及び軸受体の状態の変化を説明するための斜視図である。
【
図7】
図6における、軸体及び軸受体の状態の変化を説明するための平面図である。
【
図8】第一弾性部と第一制動面との接触ブレーキ発生後の、軸部の第一回動方向への回動による、軸体及び軸受体の状態の変化を説明するための斜視図である。
【
図9】
図8における、軸体及び軸受体の状態の変化を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本発明の実施形態の概要]
以下、本発明の実施形態の概要を列記して説明する。
【0013】
(1)本実施形態に係るダンパーヒンジは、
軸部を有する軸体と、
上記軸部が回動可能に嵌合する軸受孔を有する軸受体と、
を備え、
上記軸体は、
上記軸部の径外方向に突出するディスク部と、
上記軸部の径外方向に突出し、且つ上記ディスク部の側面と対向する面に、上記軸部の回動方向に対して傾くテーパー面を有するテーパー部と、
上記ディスク部及び上記テーパー部の間に形成される第一凹部と、
を有し、
上記テーパー面は、上記軸部の第一回動方向に向け、上記ディスク部の側面及び上記テーパー面との間隔が広がるように、上記テーパー部に形成されており、
上記軸受体は、上記第一凹部に配置される第一弾性部を有し、
上記テーパー面は、上記軸部の上記第一回動方向への回動により、上記第一弾性部を、上記ディスク部の側面に押し付ける。
【0014】
上記の構成によれば、上記軸部の上記第一回動方向への回動が、上記テーパー部の上記テーパー面による、上記第一弾性部の上記ディスク部の側面への押し付けにより生じる、摩擦抵抗により制動される(以下、「摩擦ブレーキ」と称する場合がある)。また、本実施形態に係るダンパーヒンジは、摩擦ブレーキにより、上記軸部の回動位置の調整が可能となる。
【0015】
上記の構成によれば、上記テーパー部が、上記第一弾性部を上記ディスク部の側面への押し付ける力(以下、単に「押力」と称する場合がある)は、上記軸部の上記第一回動方向への回動が進むにつれ大きくなる。すなわち、押圧は、上記軸部の上記第一回動方向への回動初期は小さく、回動後期は大きくなる。言い換えれば、摩擦ブレーキの制動力は、回動初期は小さく、回動後期は大きくなる。よって、本実施形態に係るダンパーヒンジは、回動初期における、上記軸部の素早い回動が可能となる。
【0016】
また、上記の構成によれば、粘性オイルのシール機構やクラッチ機構の組立が不要となり、ダンパーヒンジの組立が容易となる。
【0017】
(2)本実施形態に係るダンパーヒンジは、
上記軸体が、少なくとも、
上記ディスク部の両側に配置される、2つの上記テーパー部と、
上記ディスク部及び上記テーパー部の間に形成される、2つの第一凹部と、
を有するように構成されても良い。
【0018】
上記の構成によれば、上記軸部の上記第一回動方向への回動が、上記ディスク部の両側面で生じる摩擦ブレーキにより制動される。これにより、上記軸部の回動に対する制動力が向上する。
【0019】
(3)本実施形態に係るダンパーヒンジは、
上記軸受体は、上記第一凹部の、上記テーパー面と上記第一弾性部との間に配置される、プレート部を有し、
上記プレート部が、上記第一弾性部より、テーパー面に接触した際の摩擦抵抗が小さく、
上記テーパー面が、上記プレート部を介して、上記第一弾性部を、上記ディスク部の側面に押し付けるように構成されても良い。
【0020】
上記の構成によれば、上記テーパー部が、摩擦抵抗が小さい上記プレート部を介して、上記第一弾性部を、上記ディスク部の側面に押し付ける。これにより、軸部の第一回動方向への回動が、摩擦ブレーキにより効率的に制動される。
【0021】
(4)本実施形態に係るダンパーヒンジは、
上記第一凹部が、上記軸部の上記第一回動方向への回動により、上記第一弾性部が接触する第一制動面を有し、
上記第一制動面は、上記第一弾性部が、上記第一制動面に接触することで、上記軸部の上記第一回動方向へのさらなる回動を制動するように構成されても良い。
【0022】
上記の構成によれば、上記軸部の上記第一回動方向へのさらなる回動が、上記第一弾性部の上記第一制動面への接触により制動される。これにより、上記軸部の上記第一回動方向への回動範囲を規制することができる。
【0023】
(5)本実施形態に係るダンパーヒンジは、前記第一制動面が、前記軸部の前記第一回動方向への回動により、前記プレート部に接触しない位置に配置されるように構成されても良い。
【0024】
上記の構成によれば、前記プレート部の前記第一制動面への衝突による、前記プレート部の破損や変形が抑制される。
【0025】
(6)本実施形態に係るダンパーヒンジは、
上記軸体が、第二凹部を有し、
上記軸受体が、上記第二凹部に配置される第二弾性部を有し、
上記第二凹部が、上記軸部の上記第一回動方向と反対の第二回動方向への回動により、上記第二弾性部が接触する第二制動面を有し、
上記第二制動面は、上記第二弾性部が、上記第二制動面に接触することで、上記軸部の上記第二回動方向へのさらなる回動を制動するように構成されても良い。
【0026】
上記の構成によれば、上記軸部の上記第二回動方向へのさらなる回動が、上記第二弾性部の上記第二制動面への接触により制動される。これにより、上記軸部の上記第二回動方向への回動範囲を規制することができる。
【0027】
(7)本実施形態に係るダンパーヒンジは、
上記第二凹部が、上記軸部の上記第一回動方向への回動により、上記第二弾性部が接触する第三制動面を有し、
上記第三制動面は、上記第二弾性部が、上記第三制動面に接触することで、上記軸部の上記第一回動方向へのさらなる回動を制動するように構成されても良い。
【0028】
上記の構成によれば、上記軸部の上記第一回動方向へのさらなる回動が、上記第二弾性部の上記第三制動面への接触により制動される。これにより、上記軸部の上記第一回動方向への回動範囲をより規制することができる。
【0029】
(8)本実施形態に係るダンパーヒンジは、上記第一制動面が、上記第二弾性部が上記第三制動面に接触している状態において、上記第一弾性部が、上記第一制動面に押し付けられて弾性変形する位置に配置されるように構成されても良い。
【0030】
上記の構成によれば、上記第一弾性部の上記第一制動面への接触後の、上記軸部の上記第一回動方向へのさらなる回動を、上記第一弾性部の弾性変形により制動することができる。
【0031】
(9)本実施形態に係るレンジフードは、整流板を上下方向に回動可能に支持するヒンジとして、上述の本実施形態に係るダンパーヒンジを備える。
【0032】
上記の構成によれば、上記整流板の円滑な回動位置の調整、及び上記整流板の上記レンジフードの背面が接する壁への衝突抑制が、可能である。
【0033】
(10)本実施形態に係る制動方法は、
整流板を上下方向に回動可能に支持するダンパーヒンジを備えるレンジフードにおける、上記整流板の回動の制動方法であって、
上記ダンパーヒンジは、
上記整流板が固定される軸体と、
上記軸体が回動可能に嵌合し、上記軸体の回動を制動する弾性部を有する軸受体と、
を備え、
上記整流板の上側から下側への回動において、
上記整流板の回動が、上記軸体及び上記弾性部の摩擦抵抗により制動される、第一ステップと、
上記整流板の回動が、上記軸体及び上記弾性部の摩擦抵抗及び接触規制により制動される、第二ステップと、
を有する。
【0034】
上記の制動方法によれば、上記整流板の回動が、第一ステップの摩擦ブレーキ、及び第二ステップの摩擦ブレーキと接触規制による制動(以下、「接触ブレーキ」と称する場合がある)の、2つのステップで制動される。これにより、上記整流板の上記レンジフードの背面が接する壁への衝突が抑制される。また、上記整流板が、上記レンジフードの背面が接する壁に到達するまで、上記ダンパーヒンジの上記軸体が回動しても、上記ダンパーヒンジが破損することなく、上記整流板を所定の回動位置に復帰させることができる。
【0035】
上記の制動方法によれば、上記整流板の第一回動方向への回動に対する制動力が、第一ステップから第二ステップへの移行により、大きくなる。すなわち、上記整流板は、回動初期の第一ステップでは、素早い回動が可能となる。これにより、上記整流板の円滑な回動位置の調整が可能となる。
【0036】
(11)本実施形態に係る制動方法は、前記整流板の回動が、前記軸体及び前記弾性部の摩擦抵抗及び接触規制、並びに、前記弾性部の弾性変形により制動される、第三ステップを有するようにしても良い。
【0037】
上記の制動方法によれば、上記整流板の第一回動方向への回動が、3つのステップで制動される。上記第三ステップでは、上記整流板の回動が、摩擦ブレーキと接触ブレーキに加え、弾性部の弾性変形による制動(以下、「弾性ブレーキ」と称する場合がある)で制動される。これにより、上記整流板の上記レンジフードの背面が接する壁への衝突が、より抑制される。
【0038】
(12)本実施形態に係る制動方法は、
上記弾性部は、第一弾性部及び第二弾性部を含み、
上記整流板の回動が、上記軸体及び上記第一弾性部の摩擦抵抗により制動される、上記第一ステップと、
上記整流板の回動が、上記軸体及び上記第一弾性部の摩擦抵抗及び接触規制により制動される、上記第二ステップと、
上記整流板の回動が、上記軸体及び上記第一弾性部の摩擦抵抗及び接触規制、並びに、上記第一弾性部の弾性変形により制動される、上記第三ステップと、
上記整流板の回動が、上記軸体及び上記第一弾性部の摩擦抵抗及び接触規制、上記第一弾性部の弾性変形、並びに、上記軸体及び上記第二弾性部の接触規制により制動される、上記第四ステップと、
を有するようにしても良い。
【0039】
上記の制動方法によれば、上記整流板の第一回動方向への回動が、4つのステップで制動される。これにより、上記整流板の上記レンジフードの背面が接する壁への衝突が、さらに抑制される。
【0040】
(13)本実施形態に係る制動方法は、上記整流板の回動が、上記軸体及び上記第一弾性部の摩擦抵抗及び接触規制、上記第一弾性部の弾性変形、上記軸体及び上記第二弾性部の接触規制、並びに上記第二弾性部の弾性変形により制動される、上記第五ステップを有するようにしても良い。
【0041】
上記の制動方法によれば、上記整流板の第一回動方向への回動が、5つのステップで制動される。これにより、上記整流板の上記レンジフードの背面が接する壁への衝突が、顕著に抑制される。
【0042】
<本発明の実施形態の詳細>
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0043】
[レンジフード]
図1はレンジフード1の一部切欠側面図である。
図1における2つの両矢印は、それぞれレンジフード1の高さ方向、及び奥行方向を示す。
図2は、整流板10が閉状態の、レンジフード1の下方向からの斜視図である。
図3は、整流板10が開状態の、レンジフード1の下方向からの斜視図である。
図2及び
図3における3つの両矢印は、それぞれレンジフード1の高さ方向、幅方向及び奥行方向を示す。
【0044】
レンジフード1は、気流発生器であるファン4を内蔵した送風ボックス3と、その下部に取り付けられた、下面が開放された扁平箱型のフード2と、を有する。フード2は、下面を形成する下面パネル5を有する。下面パネル5は、送風ボックス3に空気を取り込むための開口部5aを有する。開口部5aには、フィルタ6が備えられる。
【0045】
下面パネル5の下側には、下面パネル5から離間した状態で開口部5aを覆うように整流板10が支持される。整流板10は、開口部5aから吸い込まれる空気の流れを整流する。レンジフード1の整流板10は、後縁部10a、前縁部10b、右縁部10c、及び左縁部10dを有する四角板状である。
【0046】
レンジフード1では、ファン4によって発生した気流によって、レンジフード1の設置された室内の空気が上昇して下面パネル5及び整流板10に当たり、下面パネル5と整流板10との隙間から開口部5aに吸い込まれる。その際に、空気はフィルタ6を通過することで、空気に含まれる油分や埃等がフィルタ6によって回収される。開口部5aから吸い込まれた室内の空気は、フード2の図示しない開口を通過して送風ボックス3に取り込まれ、ファン4を通過して機外へ排気される。
【0047】
フード2は、レンジフード1の設置時に水平または略水平となる扁平箱型である。フード2の背面と送風ボックス3の背面とは同一面または概ね同一面であり、レンジフード1は、背面を室内の壁面に接して設置可能である(壁付け型)。以降の説明では、レンジフード1が背面によって壁付け施工されているものとするが、レンジフード1は側面によって壁付け施工されていてもよい(横壁付け型)。また、レンジフード1は壁面に接することなく、天井に接して設置されてもよい(天井付け型)。
【0048】
下面パネル5の開口部5aの周囲は、レンジフード1の設置時に水平または略水平となる面形状である。下面パネル5は、例えば、鉄、コバルト、及びニッケル等の磁性体素材を含む。下面パネル5は、ホーロー製が好ましい。
【0049】
着脱機構7は、整流板10を、フード2の下面パネル5に対し、着脱可能に係止するように構成されている。着脱機構7は、整流板10の後縁部10aを基端として、整流板10を上下方向に回動可能に支持するダンパーヒンジ100を有している。整流板10は、後縁部10aよりも前縁部10b側の、右縁部10c及び左縁部10dの近傍に2つの磁着部11を有している。磁着部11は、下面パネル5の被磁着部5bに磁着する。
【0050】
整流板10が閉状態のとき、磁着部11は被磁着部5bに磁着している。閉状態の整流板10は、
図1において実線で表された位置P1にある。閉状態において、整流板10は、磁着部11及び着脱機構7により、下面パネル5の開口部5a周囲の面と概ね平行に、下面パネル5に支持される。また、閉状態において、ダンパーヒンジ100は、整流板10の下面パネル5側へのさらなる回動を、接触ブレーキにより制動するように構成されている。
【0051】
磁着部11の被磁着部5bに対する磁着が解消されると、整流板10は、ダンパーヒンジ100により、
図1の二点鎖線の矢印で示される第一回動方向に回動し、開状態となる。ダンパーヒンジ100は、整流板10の第一回動方向への回動を、摩擦ブレーキ、接触ブレーキ、及び弾性ブレーキから選択される少なくとも一つの制動手段により、制動するように構成されている。
【0052】
位置P2では、整流板10の第一回動方向への回動は、摩擦ブレーキにより制動されている。位置P3では、整流板10の第一回動方向への回動は、摩擦ブレーキ及び接触ブレーキにより制動されている。位置P4では、整流板10の第一回動方向への回動は、摩擦ブレーキ、接触ブレーキ、及び弾性ブレーキにより制動されている。つまり、ダンパーヒンジ100は、整流板10の第一回動方向への回動が進むにつれ、整流板10の第一回動方向への回動に対する制動力が大きくなるように構成されている。言い換えれば、ダンパーヒンジ100は、整流板10の第一回動方向への回動初期において、整流板10の素早い回動が可能となるように構成されている。
【0053】
また、整流板10の回動位置は、ダンパーヒンジ100の摩擦ブレーキにより、手動による調整が可能である。例えば、整流板10は、位置P2の回動位置で、ダンパーヒンジ100の摩擦ブレーキにより、静止させることができる。これにより、着脱機構7による整流板10の着脱作業において、作業者は、整流板10を、着脱作業が行いやすい回動位置に静止させることができる。そのため、整流板10の着脱作業の作業性が向上する。
【0054】
上述のように、ダンパーヒンジ100は、整流板10の第一回動方向の回動初期における素早い回動、及び整流板10の摩擦ブレーキによる回動位置の調整が可能である。そのため、整流板10を回動可能に支持するダンパーヒンジ100を備えるレンジフード1は、整流板10の円滑な回動位置の調整が可能となる。
【0055】
[着脱機構]
図4は、整流板10を係止した状態の、着脱機構7の斜視図である。
図4における2つの両矢印は、それぞれ、軸部111の回動方向、及びアーム9bの回動方向を示す。軸部111の回動方向を示す両矢印における、第一回動方向は、整流板10がレンジフード1の下側に回動する方向を示す。第二回動方向は、整流板10がレンジフード1の上側に回動する方向を示す。
【0056】
着脱機構7は、1つの固定ハンガー8、及び1つのヒンジユニット9を有する。固定ハンガー8は、整流板10の後縁部10aの略中央に固定される。ヒンジユニット9は、開口部5aより後側にある下面パネル5の後内壁部に固定される。着脱機構7では、1つの固定ハンガー8と、一つのヒンジユニット9とで、フード2に対する整流板10の着脱が可能となる。そのため、レンジフード1では、整流板10の着脱作業における、煩雑な整流板10の取付位置の調整が不要となり、着脱作業の作業性が向上する。
【0057】
ヒンジユニット9は、ジョイント部9a、及びダンパーヒンジ100を有する。ダンパーヒンジ100は、ジョイント部9aの長手方向の両端に配置されている。ダンパーヒンジ100が、下面パネル5の後側の内壁部に固定されることで、ヒンジユニット9が、下面パネル5の後側の内壁部に固定される。ダンパーヒンジ100は、ジョイント部9aの両端を回動可能に支持する。
【0058】
固定ハンガー8は、挿入部8a、及び固定部8bを有する。固定部8bは、挿入部8aの長手方向の両端に配置されている。固定部8bは、挿入部8aが、整流板10の後縁部10aの略中央に位置するように、整流板10に固定される。挿入部8aは、ジョイント部9aのアーム9b及び嵌合凸部9cを挿入するための、挿入孔を有する。
【0059】
ジョイント部9aは、2つのアーム9b、及び嵌合凸部9cを有する。2つのアーム9bにより、ジョイント部9aと挿入部8aとの係止状態が制御される。より具体的には、ジョイント部9aが、挿入部8aに挿入されている状態において、アーム9bを、
図4に示されるロック方向に回動させることで、固定ハンガー8が、ヒンジユニット9に係止される。これにより、整流板10が、レンジフード1に取付けられる。固定ハンガー8が、ヒンジユニット9に係止されている状態において、アーム9bを、
図4に示されるアンロック方向に回動させることで、ヒンジユニット9による、固定ハンガー8の係止が解除される。これにより、整流板10が、レンジフード1から、取外し可能となる。
【0060】
ダンパーヒンジ100は、軸体110、及び軸受体120を有する。
図4に示されるダンパーヒンジ100では、軸体110の軸部111、及び軸受体120のハウジング124が示されている。ジョイント部9aは、軸体110と接続している。軸受体120のハウジング124は、軸受孔BHを有している。軸体110の軸部111は、軸受孔BHに回動可能に嵌合する。
【0061】
固定ハンガー8が、ヒンジユニット9に係止されている状態において、整流板10は、固定ハンガー8及びヒンジユニット9を介し、ダンパーヒンジ100により、第一回動方向、及び第二回動方向に回動する。上述のように、第一回動方向は、整流板10が開状態となる回動方向であり、第二回動方向は、整流板10が閉状態となる回動方向である。すなわち、第一回動方向は、
図1において、整流板10が、位置P1側から位置P4側へ向かって下側に回動する方向である。第二回動方向は、
図1において、整流板10が、位置P4側から位置P1側へ向かって上側に回動する方向である。
【0062】
[ダンパーヒンジ]
図5は、ダンパーヒンジ100の内部構造を示す斜視図である。
図5において、SCは、軸部111の中心線を示す。中心線SCは、軸体110の中心線でもある。
図5における両矢印は、ダンパーヒンジ100の幅方向を示す。
【0063】
上述のように、ダンパーヒンジ100は、軸体110、及び軸受体120を有する。
図5に示されるように、ダンパーヒンジ100は、粘性オイルのシール機構やクラッチ機構が存在しないシンプルな構成となっている。よって、ダンパーヒンジ100は、従来のダンパーヒンジに比べ、組立が容易である。ダンパーヒンジ100では、軸体110が、ジョイント部9aと一体となって接続されるように構成されている。なお、
図5では、ダンパーヒンジ100の内部構造を示すため、軸受体120のハウジング124が省略されている。
【0064】
軸体110は、軸部111、ディスク部112、テーパー部113、第一凹部114、及び第二凹部115を有している。軸体110は、ジョイント部9aと接続している。ディスク部112及びテーパー部113は、軸部111の径外方向に突出するように構成されている。軸体110では、第二凹部115は、ダンパーヒンジ100の幅方向において、テーパー部113に対応する位置に形成されている。
【0065】
ダンパーヒンジ100では、軸体110が、2つのテーパー部113、2つの第一凹部114、及び2つの第二凹部115を有する構成となっている。より具体的には、軸体110は、中心線SCを基準として、軸部111から、軸部111、一方のテーパー部113(一方の第二凹部115)、一方の第一凹部114、ディスク部112、他方の第一凹部114、及び他方のテーパー部113(他方の第二凹部115)が順に配置される構成となっている。すなわち、2つの第一凹部114は、いずれもディスク部112及びテーパー部113の間に形成されている。
【0066】
軸受体120は、第一弾性部121、第二弾性部材122、プレート部123、及びハウジング124を有している。第一弾性部121及びプレート部123は、第一凹部114に配置されている。第一弾性部121は、ダンパーヒンジ100の幅方向において、第一凹部114のディスク部112側に配置されている。プレート部123は、ダンパーヒンジ100の幅方向において、第一凹部114のテーパー部113側に配置されている。第二弾性部材122は、第二凹部115に配置されている。
【0067】
プレート部123は、軸部111の回動により、テーパー部113が有する後述のテーパー面113aから、ディスク部112側へ押し付けられる押力を受ける。これにより、第一弾性部121は、プレート部123から、ディスク部112側へ押し付けられる押力を受ける。その結果、第一弾性部121が、ディスク部112の側面112aに接触する。この接触により、第一弾性部121と側面112aとの間に摩擦抵抗が生じ、軸部111の回動が、摩擦ブレーキにより制動される。
【0068】
プレート部123は、第一弾性部121より、テーパー部113と接触した際の摩擦抵抗が小さい材料で構成されている。軸受体120では、第一弾性部121及び第二弾性部材122は、ゴム製である。プレート部123は、金属製、又はプラスチック製である。
【0069】
第一凹部114は、第一制動面114aを有している。第一制動面114aは、ダンパーヒンジ100の幅方向において、第一凹部114のディスク部112側に配置されている。ダンパーヒンジ100の幅方向における、第一制動面114aのテーパー部113側には、接触回避領域CAAが設けられている。第一制動面114aは、
図1において整流板10が位置P3に存在する際、第一弾性部121の底面121aが、第一制動面114aに接触するように配置されている。これにより、整流板10の位置P3から位置P4への回動が、接触ブレーキにより制動される。
【0070】
第一弾性部121の底面121aが、第一制動面114aに接触している状態において、プレート部123は、接触回避領域CAAの存在により、第一制動面114aへの接触が回避される。すなわち、第一制動面114aは、整流板10の下側への回動により、プレート部123に接触しない位置に配置されている。これにより、プレート部123の第一制動面114aへの衝突を防ぐことができる。その結果、プレート部123の破損や変形が抑制される。
【0071】
第二凹部115は、第二制動面115a及び第三制動面115bを有している。第二制動面115aは、
図1において整流板10が位置P1に存在する際、第二弾性部122の底面122aが、第二制動面115aに接触する位置に配置されている。これにより、整流板10の位置P1から上側への回動が、接触ブレーキにより制動される。また、整流板10が、位置P1からさらに上側への回動した場合、第二弾性部122が弾性変形する。この第二弾性部122の弾性変形により、整流板10の位置P1からさらに上側への回動が、弾性ブレーキにより制動される。これにより、磁着部11の下面パネル5への衝突が軽減される。その結果、磁着部11及び下面パネル5の破損や変形が抑制される。
【0072】
第三制動面115bは、
図1において整流板10が位置P4よりレンジフード1の背面が接する壁側に回動した際、第二弾性部122の底面122aが、第三制動面115bに接触するように配置されている。これにより、整流板10の位置P4からレンジフード1の背面が接する壁への回動が、接触ブレーキにより制動される。また、底面122aと第三制動面115bの接触後に、整流板10が、レンジフード1の背面が接する壁側にさらに回動した場合、第二弾性部122が弾性変形する。この第二弾性部122の弾性変形により、整流板10のレンジフード1の背面が接する壁側への回動が、弾性ブレーキにより制動される。これにより、整流板10のレンジフード1の背面が接する壁への衝突が抑制される。
【0073】
[位置P1から位置P3までの軸体及び軸受体の状態変化]
図6は、軸部111の回動による、軸体110及び軸受体120の状態の変化を説明するための斜視図である。
図7は、
図6における、軸体110及び軸受体120の状態の変化を説明するための平面図である。
【0074】
図6(a)及び
図7(a)は、
図1において整流板10が位置P1に存在する際の、軸体110及び軸受体120の状態を示す。
図6(a)及び
図7(a)における両矢印は、軸部111の回動方向を示す。
図6(b)及び
図7(b)は、
図1において整流板10が位置P3に存在する際の、軸体110及び軸受体120の状態を示す。
図6(b)及び
図7(b)における両矢印は、軸部111の回動方向を示す。
図7(b)における矢印は、第一弾性部121に加わる押力を示している。
【0075】
図6(a)に示されるように、整流板10が位置P1に存在する際、第二弾性部122の底面122aが、第二制動面115aに接触する状態となっている。これにより、軸部111の第二回動方向へのさらなる回動が、底面122aと第二制動面115aとの接触による、接触ブレーキにより制動される。一方、第一弾性部121の底面121aは、第一制動面114aに接触しない状態となっている。また、第二弾性部122の底面122aは、第三制動面115bに接触しない状態となっている。
【0076】
図7(a)に示されるように、テーパー部113は、テーパー面113aを有している。プレート部123は、第一弾性部121のテーパー面113a側の側面121bを覆うように構成されている。すなわち、プレート部123は、第一弾性部121の側面121bが、テーパー面113aと、直接的に接触しないように配置されている。テーパー面113aは、軸部111の第一回動方向に向け、ディスク部112の側面112a、及びテーパー面113aとの間隔が広がるように、テーパー部113に形成されている。言い換えれば、テーパー面113aは、軸部111の第二回動方向に向け、ディスク部112の側面112a、及びテーパー面113aとの間隔が狭まるように、テーパー部113に形成されている。第一弾性部121では、側面121bが、テーパー面113aに沿うように形成されている。
【0077】
図7(a)に示されるように、整流板10が位置P1に存在する際、プレート部123は、テーパー面113aに接触しない状態となっている。すなわち、第一弾性部121は、テーパー部113から、押圧を受けていない状態となっている。そのため、整流板10が位置P1に存在する際、軸部111の第一回動方向への回動に対する、第一弾性部121とディスク部112との接触による、接触摩擦ブレーキによる制動力は、小さい又は発生しない状態となっている。
【0078】
図6(b)に示されるように、整流板10が位置P3に存在する際、第一弾性部121の底面121aが、第一制動面114aに接触する状態となっている。これにより、軸部111の第一回動方向へのさらなる回動が、底面121aと第一制動面114aとの接触による、接触ブレーキにより制動される。一方、整流板10が位置P3に存在する際、第二弾性部122の底面122aは、第二制動面115a及び第三制動面115bのいずれにも接触しない状態となっている。
【0079】
図7(b)に示されるように、整流板10が位置P3に存在する際、テーパー部113のテーパー面113aが、プレート部123に接触する状態となっている。すなわち、テーパー面113aが、プレート部123を介して、第一弾性部121を、ディスク部112の側面112aに押し付ける状態となっている。これにより、第一弾性部121のディスク部112側の側面121cが、ディスク部112の側面112aに接触する。その結果、側面121cと側面112aとの間で摩擦が生じ、軸部111の第一回動方向への回動が、摩擦ブレーキにより制動される。
【0080】
上述のように、プレート部123は、第一弾性部121より、テーパー部113と接触した際の摩擦抵抗が小さい材料で構成されている。そのため、プレート部123は、テーパー面113aをスムーズに摺動し、テーパー面113aからの押力を第一弾性部121に効率的に伝えることができる。これにより、軸部111の第一回動方向への回動が、摩擦ブレーキにより効率的に制動される。
【0081】
上述のように、テーパー部113のテーパー面113aは、側面112a及びテーパー面113aとの間隔が、軸部111の第一回動方向に向け広がり、軸部111の第二回動方向に向け狭まるように、テーパー部113に形成されている。そのため、軸部111の第一回動方向への回動が進むにつれ、第一弾性部121に加わる押圧が大きくなる。よって、軸部111の第一回動方向への回動が進むにつれ、側面121cと側面112aとの接触による摩擦ブレーキの制動力が大きくなる。逆に言えば、回動初期における、摩擦ブレーキの制動力は小さくなる。これにより、整流板10のレンジフード1の背面が接する壁への衝突が抑制されると共に、回動初期における、整流板10の素早い回動が可能となる。
【0082】
[位置P3から位置P4までの軸体及び軸受体の状態変化]
【0083】
レンジフード1は、通常の整流板10の回動範囲が、
図1における位置P1から位置P3までとなるように構成されている。上述のように、位置P1では、軸部111の第二回動方向へのさらなる回動が、第二弾性部122と第二制動面115aによる接触ブレーキにより制動される。位置P2では、軸部111の第一回動方向への回動が、第一弾性部121のディスク部112への押圧による摩擦ブレーキにより制動される。位置P3では、軸部111の第一回動方向へのさらなる回動が、第一弾性部121のディスク部112への押圧による摩擦ブレーキ、及び第一弾性部121と第一制動面114aによる接触ブレーキにより制動される。
【0084】
整流板10が勢いよく第一回動方向へ回動した際、整流板10が位置P3から、さらに位置P4に向かって回動する場合がある。この場合、整流板10が、レンジフード1の背面が接する壁が接する壁へ衝突する恐れがある。そのため、レンジフード1のダンパーヒンジ100は、整流板10の位置P3から位置P4へ向かう回動に対し、強い制動力を発揮するよう構成されている。
【0085】
図8は、第一弾性部121と第一制動面114aとの接触ブレーキ発生後の、軸部111の第一回動方向への回動による、軸体110及び軸受体120の状態の変化を説明するための斜視図である。
図9は、
図8における、軸体110及び軸受体120の状態の変化を説明するための側面図である。
【0086】
図8(a)及び
図9(a)は、
図1において整流板10が位置P3に存在する際の、軸体110及び軸受体120の状態を示す。
図8(a)及び
図9(a)における両矢印は、軸部111の回動方向を示す。
図8(b)及び
図9(b)は、
図1において整流板10が位置P4に存在する際の、軸体110及び軸受体120の状態を示す。
図8(b)及び
図9(b)における両矢印は、軸部111の回動方向を示す。
【0087】
図8(a)に示される軸体110及び軸受体120の状態の斜視図は、
図6(b)に示される軸体110及び軸受体120の状態の斜視図と同じである。
図8(a)における軸体110及び軸受体120の状態の説明は、上述の
図6(b)の説明と同じため省略する。
【0088】
図9(a)は、整流板10が位置P3に存在する際の、第二弾性部122の底面122aと、第二凹部115の第二制動面115a及び第三制動面115bとの位置関係を示している。
図9(a)に示されるように、整流板10が位置P3に存在する際、第二弾性部122の底面122aは、第二制動面115a及び第三制動面115bのいずれにも接触しない状態となっている。すなわち、整流板10が位置P3に存在する際、第二弾性部122の底面122aと、第二制動面115a又は第三制動面115bとの接触による、接触ブレーキは生じていない。なお、
図6(b)に示されるように、整流板10が位置P3に存在する際、第一弾性部121の底面121aと、第一凹部114の第一制動面114aとが接触する状態となっている。
【0089】
図8(b)に示されるように、整流板10が位置P4に存在する際、第一弾性部121の底面121aが、第一制動面114aに押し付けられ、弾性変形した状態となる。これにより、軸部111の第一回動方向へのさらなる回動が、第一弾性部121の弾性変形による弾性ブレーキにより制動される。すなわち、整流板10の位置P3からの第一回動方向へのさらなる回動は、第一弾性部121の弾性変形による、弾性ブレーキにより制動される。なお、整流板10が位置P4に存在する際、プレート部123は、接触回避領域CAAに位置するため、第一制動面114aへの接触が回避されている。これにより、プレート部123の破損や変形が抑制される。
【0090】
図8(b)及び
図9(b)に示されるように、整流板10が位置P4に存在する際、第二弾性部122の底面122aが、第三制動面115bに接触する。これにより、軸部111の第二回動方向へのさらなる回動が、第二弾性部122の底面122aと、第二凹部115の第三制動面115bとの接触による、接触ブレーキにより制動される。すなわち、整流板10の位置P4からの第一回動方向へのさらなる回動は、第二弾性部122と第三制動面115bとの接触による、接触ブレーキにより制動される。これにより、整流板10のレンジフード1の背面が接する壁への衝突が、抑制される。
【0091】
整流板10が、位置P4からさらに第一回動方向へ回動した場合、第二弾性部122の底面122aが、第二凹部115の第三制動面115bに押し付けられ、第二弾性部122が弾性変形する。この第二弾性部122の弾性変形により、軸部111の第一回動方向へのさらなる回動が、弾性ブレーキにより制動される。これにより、整流板10のレンジフード1の背面が接する壁への衝突が、より抑制される。
【0092】
[整流板の第一回動方向への回動の制動方法]
上述のように、ダンパーヒンジ100における、軸部111の第一回動方向への回動に対する制動手段には、以下の5つが存在する。
【0093】
第一制動手段:第一弾性部121とテーパー部113による摩擦ブレーキ
第二制動手段:第一弾性部121と第一制動面114aによる接触ブレーキ
第三制動手段:第一弾性部121の弾性変形による弾性ブレーキ
第四制動手段:第二弾性部122と第三制動面115bによる接触ブレーキ
第五制動手段:第二弾性部122の弾性変形による弾性ブレーキ
【0094】
レンジフード1のダンパーヒンジ100による、
図1に示される位置P1から位置P4における整流板10の回動位置と、整流板10の第一回動方向への回動に対する制動手段及び各制動ステップとの関係を表1に示す。
【0095】
【表1】
※位置P1では、整流板10の第二回動方向への回動が、第二弾性部122と第二制動面115aによる接触ブレーキにより制動されている。
【0096】
表1に示されるように、ダンパーヒンジ100は、整流板10の第一回動方向への回動が進むにつれ、整流板10の第一回動方向への回動に対する制動手段が増えるように構成されている。すなわち、整流板10の第一回動方向への回動は、ダンパーヒンジ100により、以下の5つのステップを含む制動方法で制動されている。
【0097】
第一ステップ:第一制動手段による摩擦ブレーキ
第二ステップ:第一制動手段による摩擦ブレーキ、及び第二制動手段による接触ブレーキ
第三ステップ:第一制動手段による摩擦ブレーキ、第二制動手段による接触ブレーキ、及び第三制動手段による弾性ブレーキ
第四ステップ:第一制動手段による摩擦ブレーキ、第二制動手段による接触ブレーキ、第三制動手段による弾性ブレーキ、及び第四制動手段による接触ブレーキ
第五ステップ:第一制動手段による摩擦ブレーキ、第二制動手段による接触ブレーキ、第三制動手段による弾性ブレーキ、第四制動手段による接触ブレーキ、及び第五制動手段による弾性ブレーキ
【0098】
ダンパーヒンジ100による、整流板10の第一回動方向への回動の制動方法は、整流板10の第一回動方向への回動が進むにつれ、制動手段が増える。また、第一制動手段による摩擦ブレーキ、第三制動手段による弾性ブレーキ、及び第五制動手段による弾性ブレーキは、整流板10の第一回動方向への回動が進むにつれ、制動力が大きくなる。すなわち、ダンパーヒンジ100による、整流板10の第一回動方向への回動の制動方法は、第一ステップから第五ステップへの移行により、整流板10の第一回動方向への回動に対する制動力が大きくなる。これにより、整流板10のレンジフード1の背面が接する壁への衝突が、抑制される。
【0099】
上述のように、ダンパーヒンジ100による、整流板10の第一回動方向への回動の制動方法は、整流板10の第一回動方向への回動が進むにつれ、制動力が大きくなる。逆に言えば、ダンパーヒンジ100による、整流板10の第一回動方向への回動の制動方法は、整流板10の第一回動方向への回動初期における制動力が小さい。そのため、整流板10を、素早く所定の開状態の位置に調整することが可能となる。
【0100】
[変形例]
本実施形態に係るレンジフード1では、磁着部11により、整流板10を下面パネル5に支持する構成を示したが、本発明はこれに限定されない。磁着部11に代え、開状態の整流板を閉状態に支持する公知の機構を適用することができる。上記の公知の機構としては、例えば、ラッチ機構やネジ留機構等が挙げられる。
【0101】
本実施形態に係るレンジフード1では、着脱機構7により整流板10を着脱可能に係止する構成を示したが、本発明はこれに限定されない。整流板の着脱機構として、公知の機構を適用することができる。上記の公知の機構としては、例えば、整流板の後縁部の、右側を係止する第一着脱機構と、左側を係止する第二着脱機構を備える機構が挙げられる。
【0102】
本実施形態に係るダンパーヒンジ100では、軸体110が、2つのテーパー部113、2つの第一凹部114、及び2つの第二凹部115を有する構成となっているが、本発明はこれに限定されない。例えば、軸体110が、1つのテーパー部113、及び1つの第一凹部114、及び1つの第二凹部115を有する構成とすることもできる。軸部111の回動の制動性の観点から、軸体110は、テーパー部113、第一凹部114、及び第二凹部115を、それぞれ複数有する方が好ましい。
【0103】
本実施形態に係るダンパーヒンジ100では、第二凹部115が、テーパー部113に対応する位置に形成されている構成となっているが、本発明はこれに限定されない。例えば、第二凹部115が、ディスク部112に対応する位置に形成されている構成とすることもできる。
【0104】
本実施形態に係るダンパーヒンジ100では、軸受体120が、第一弾性部121の側面121bを覆うプレート部123を有する構成となっているが、本発明はこれに限定されない。例えば、軸受体120が、プレート部123を有さない構成とすることもできる。第一弾性部121による摩擦ブレーキの効率性の観点から、軸受体120は、プレート部123を有する方が好ましい。
【0105】
本実施形態に係るダンパーヒンジ100では、軸受体120が、第一弾性部121及び第二弾性部122を構成となっているが、本発明はこれに限定されない。例えば、軸受体120は、第二弾性部122を有さない構成とすることもできる。軸部111の回動の制動性の観点から、軸受体120は、第一弾性部121及び第二弾性部122を有することが好ましい。
【0106】
本実施形態に係るダンパーヒンジ100による軸部111の第一回動方向への回動に対する制動手段は、第一制動手段から第五制動手段までの5つの制動手段を含んでいるが、本発明はこれに限定されない。上記制動手段は、少なくとも第一制動手段を含んでいれば良い。軸部111の回動の制動性の観点から、上記制動手段は、少なくとも第一制動手段及び第二制動手段を含むことが好ましい。
【0107】
[補記]
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的ではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及びその範囲内でのすべての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上説明された、円滑な回動位置の調整が可能なダンパーヒンジは、レンジフードの整流板に限らず、洋式トイレの便蓋や便座、及び電化製品及びキャビネットなどの蓋体など、種々の開閉体のダンパーヒンジとして適用されうる。
【0109】
以上説明された、整流板の円滑な回動位置の調整、及びレンジフードの背面が接する壁への衝突の抑制が可能な整流板の回動の制動方法は、整流板を備える種々のレンジフードに適用されうる。
【符号の説明】
【0110】
1 レンジフード
2 フード
3 送風ボックス
4 ファン
5 下面パネル
5a 開口部
5b 被磁着部
6 フィルタ
7 着脱機構
8 固定ハンガー
8a 挿入部
8b 固定部
9 ヒンジユニット
9a ジョイント部
9b アーム
9c 嵌合凸部
10 整流板
10a 後縁部
10b 前縁部
10c 右縁部
10d 左縁部
11 磁着部
100 ダンパーヒンジ
110 軸体
111 軸部
112 ディスク部
112a ディスク部の側面
113 テーパー部
113a テーパー面
114 第一凹部
114a 第一制動面
115 第二凹部
115a 第二制動面
115b 第三制動面
120 軸受体
121 第一弾性部
121a 第一弾性部の底面
121b 第一弾性部のプレート部側の側面
121c 第一弾性部のディスク部側の側面
122 第二弾性部材
122a 第二弾性部材の底面
123 プレート部
124 ハウジング
BH 軸受孔
CAA 接触回避領域
SC 軸部の中心線