(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029919
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】情報提示システム、情報提示方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20250228BHJP
【FI】
G08G1/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134814
(22)【出願日】2023-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】松瀬 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】岳山 基之
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB05
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL20
(57)【要約】
【課題】車両の乗員が抱くネガティブ感情を抑制しやすくすること。
【解決手段】情報提示システム100は、検知部1と、処理部2と、を備える。検知部1は、車両の乗員のネガティブ感情の発生を検知する。処理部2は、検知部1が乗員のネガティブ感情の発生を検知した場合に、ネガティブ感情に応じた認知的変化における再評価を促進するメッセージを乗員に提示する処理を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員のネガティブ感情の発生を検知する検知部と、
前記検知部が前記乗員の前記ネガティブ感情の発生を検知した場合に、前記ネガティブ感情に応じた認知的変化における再評価を促進するメッセージを前記乗員に提示する処理を実行する処理部と、を備える、
情報提示システム。
【請求項2】
前記メッセージは、前記再評価の細分類の一種である肯定的再評価を促進するメッセージ、計画への再焦点化を促進するメッセージ、大局的視点を促進するメッセージ、および肯定的再焦点化を促進するメッセージのうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の情報提示システム。
【請求項3】
前記検知部は、前記乗員の生体情報を取得し、取得した前記生体情報に基づいて前記乗員の前記ネガティブ感情の発生を検知する、
請求項1又は2に記載の情報提示システム。
【請求項4】
前記検知部は、前記車両の置かれる状況に関する状況情報を更に取得し、取得した前記状況情報に基づいて前記乗員の前記ネガティブ感情の発生の可能性及び前記ネガティブ感情の発生の要因を更に検知する、
請求項3に記載の情報提示システム。
【請求項5】
前記検知部は、前記乗員のネガティブ感情の発生を検知した場合、当該ネガティブ感情を抱いているか否かを前記乗員に対して確認する処理を更に実行する、
請求項1又は2に記載の情報提示システム。
【請求項6】
前記検知部は、前記乗員のネガティブ感情の発生の可能性を検知した場合、当該ネガティブ感情を抱いているか否かを前記乗員に対して確認する処理を更に実行する、
請求項4に記載の情報提示システム。
【請求項7】
前記処理部は、前記車両の走行中において前記検知部が前記乗員の前記ネガティブ感情の発生を検知した場合に、前記メッセージを前記乗員に提示する処理を実行する、
請求項1又は2に記載の情報提示システム。
【請求項8】
前記処理部は、前記ネガティブ感情が怒り及び苛立ちのうちのいずれかである場合、前記乗員の前記ネガティブ感情の沈静化を促進する処理を実行した後に、前記メッセージを前記乗員に提示する処理を実行する、
請求項7に記載の情報提示システム。
【請求項9】
前記処理部は、前記乗員のセルフモニタリングの結果及び前記車両の置かれる状況に関する状況情報のうちの少なくとも一方に基づいて前記ネガティブ感情の発生原因を特定し、特定した前記発生原因に基づいて前記乗員に提示する前記メッセージを決定する、
請求項7に記載の情報提示システム。
【請求項10】
前記処理部は、前記乗員の気晴らしを促進する処理を更に実行する、
請求項7に記載の情報提示システム。
【請求項11】
前記処理部は、前記車両の走行中に前記検知部が検知した前記乗員の前記ネガティブ感情の発生に関するデータを蓄積した履歴データに基づいて、前記乗員の前記ネガティブ感情の発生に関する特性を示す特性情報を算出し、
前記車両の運転が終了した場合に、算出した前記特性情報に基づいて決定した前記メッセージを前記乗員に提示する処理を実行する、
請求項1又は2に記載の情報提示システム。
【請求項12】
前記処理部は、算出した前記特性情報の履歴に基づいて過去特性情報を算出し、前記特性情報を算出した場合に、当該特性情報及び前記過去特性情報に基づいて前記乗員に提示する前記メッセージを決定する、
請求項11に記載の情報提示システム。
【請求項13】
前記処理部は、前記車両が置かれる将来の状況に関する将来状況情報を取得し、取得した前記将来状況情報及び前記過去特性情報に基づいて、前記乗員に前記ネガティブ感情が発生する可能性があることを検知した場合に、前記メッセージを前記乗員に提示する処理を実行する、
請求項12に記載の情報提示システム。
【請求項14】
車両の乗員のネガティブ感情の発生を検知し、
前記乗員の前記ネガティブ感情の発生を検知した場合に、前記ネガティブ感情に応じた認知的変化における再評価)を促進するメッセージを前記乗員に提示する処理を実行する、
情報提示方法。
【請求項15】
1以上のプロセッサに、
請求項14に記載の前記情報提示方法を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば車両の乗員に対して情報を提示する情報提示システム、情報提示方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両ユーザ支援システムが開示されている。このシステムでは、車両への乗車の前におけるユーザの音声を取得し、取得した音声に基づいて精神状態を推定する。そして、推定した精神状態が、基準値よりもイライラした状態である場合には、車両に乗車したユーザに、イライラを解消するナビゲーションを提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、車両の乗員が抱くネガティブ感情を抑制しやすい情報提示システム等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る情報提示システムは、検知部と、処理部と、を備える。前記検知部は、車両の乗員のネガティブ感情の発生を検知する。前記処理部は、前記検知部が前記乗員の前記ネガティブ感情の発生を検知した場合に、前記ネガティブ感情に応じた認知的変化における再評価を促進するメッセージを前記乗員に提示する処理を実行する。
【0006】
本開示の一態様に係る情報提示方法では、車両の乗員のネガティブ感情の発生を検知し、前記乗員の前記ネガティブ感情の発生を検知した場合に、前記ネガティブ感情に応じた認知的変化における再評価を促進するメッセージを前記乗員に提示する処理を実行する。
【0007】
本開示の一態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、前記情報提示方法を実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の情報提示システム等では、車両の乗員が抱くネガティブ感情を抑制しやすい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る情報提示システムの概要を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る情報提示システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る情報提示システムにおいて、メッセージを乗員に提示する処理の具体例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る情報提示システムにおいて、乗員に提示するメッセージの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態2に係る情報提示システムの概要を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、実施の形態2に係る情報提示システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施の形態2に係る情報提示システムにおいて、乗員に提示するメッセージの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施の形態3に係る情報提示システムの概要を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、実施の形態3に係る情報提示システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施の形態3に係る情報提示システムにおいて、乗員に提示するメッセージの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の一態様に係る情報提示システムは、検知部と、処理部と、を備える。前記検知部は、車両の乗員のネガティブ感情の発生を検知する。前記処理部は、前記検知部が前記乗員の前記ネガティブ感情の発生を検知した場合に、前記ネガティブ感情に応じた認知的変化における再評価を促進するメッセージを前記乗員に提示する処理を実行する。
【0011】
これによれば、乗員にメッセージを提示することにより、乗員がネガティブ感情を別の観点から捉えなおしやすくなるので、車両の乗員が抱くネガティブ感情を抑制しやすい、という利点がある。
【0012】
本開示の他の態様に係る情報提示システムでは、前記メッセージは、前記再評価の細分類の一種である肯定的再評価を促進するメッセージ、計画への再焦点化を促進するメッセージ、大局的視点を促進するメッセージ、および肯定的再焦点化を促進するメッセージのうちの少なくとも1つを含む。
【0013】
これによれば、乗員にメッセージを提示することにより、乗員がネガティブ感情を別の観点から捉えなおしやすくなるので、車両の乗員が抱くネガティブ感情、特に乗員が抱く不安を抑制しやすい、という利点がある。
【0014】
本開示の他の態様に係る情報提示システムでは、前記検知部は、前記乗員の生体情報を取得し、取得した前記生体情報に基づいて前記乗員の前記ネガティブ感情の発生を検知する。
【0015】
これによれば、乗員の抱く感情に応じて変動し得る生体情報に基づいて乗員のネガティブ感情の発生を検知するので、精度よく乗員のネガティブ感情の発生を検知しやすくなる、という利点がある。
【0016】
本開示の他の態様に係る情報提示システムでは、前記検知部は、前記車両の置かれる状況に関する状況情報を取得し、取得した前記状況情報に基づいて前記乗員の前記ネガティブ感情の発生の可能性及び前記ネガティブ感情の発生の要因を更に検知する。
【0017】
これによれば、乗員の生体情報に基づいた検知の場合よりも高い信頼性で乗員のネガティブな感情の発生を検知できるようになる、という利点がある。
【0018】
本開示の他の態様に係る情報提示システムでは、前記検知部は、前記乗員のネガティブ感情の発生を検知した場合、当該ネガティブ感情を抱いているか否かを前記乗員に対して確認する処理を更に実行する。
【0019】
これによれば、乗員が実際にネガティブ感情を抱いているかを確認することができるので、乗員に対して情報提示を行えると共に、例えば確認結果をフィードバックすることで乗員のネガティブ感情の発生の検知精度の向上に役立てることができる。
【0020】
本開示の他の態様に係る情報提示システムでは、前記検知部は、前記乗員のネガティブ感情の発生の可能性を検知した場合、当該ネガティブ感情を抱いているか否かを前記乗員に対して確認する処理を更に実行する。
【0021】
これによれば、乗員が実際にネガティブ感情を抱いているかを確認することができるので、乗員に対して情報提示を行えると共に、例えば確認結果をフィードバックすることで乗員のネガティブ感情の発生の検知精度の向上に役立てることができる。
【0022】
本開示の他の態様に係る情報提示システムでは、本開示の他の態様に係る情報提示システムでは、前記処理部は、前記車両の走行中において前記検知部が前記乗員の前記ネガティブ感情の発生を検知した場合に、前記メッセージを前記乗員に提示する処理を実行する。
【0023】
これによれば、車両の走行中において乗員がネガティブ感情を抱くことによる車両の運転への影響を低減することができるので、車両の運転を支援しやすくなる、という利点がある。
【0024】
本開示の他の態様に係る情報提示システムでは、前記処理部は、前記ネガティブ感情が怒り及び苛立ちのうちのいずれかである場合、前記乗員の前記ネガティブ感情の沈静化を促進する処理を実行した後に、前記メッセージを前記乗員に提示する処理を実行する。
【0025】
これによれば、認知的変化における再評価の効果が比較的小さくなりがちなネガティブ感情の沈静化を図った後にメッセージを乗員に提示するので、メッセージの提示による乗員の抱くネガティブ感情の抑制の効果を高めやすい、という利点がある。
【0026】
本開示の他の態様に係る情報提示システムでは、前記処理部は、前記乗員のセルフモニタリングの結果及び前記車両の置かれる状況に関する状況情報のうちの少なくとも一方に基づいて前記ネガティブ感情の発生原因を特定する。前記処理部は、特定した前記発生原因に基づいて前記乗員に提示する前記メッセージを決定する。
【0027】
これによれば、ネガティブ感情の発生原因に応じて適切なメッセージを決定することができるので、メッセージの提示による乗員の抱くネガティブ感情の抑制の効果を高めやすい、という利点がある。
【0028】
本開示の他の態様に係る情報提示システムでは、前記処理部は、前記乗員の気晴らしを促進する処理を更に実行する。
【0029】
これによれば、ネガティブ感情の発生原因から乗員の注意をそらしやすくなるので、メッセージの提示による乗員の抱くネガティブ感情の抑制の効果を高めやすい、という利点がある。
【0030】
本開示の他の態様に係る情報提示システムでは、前記処理部は、前記車両の走行中に前記検知部が検知した前記乗員の前記ネガティブ感情の発生に関するデータを蓄積した履歴データに基づいて、前記乗員の前記ネガティブ感情の発生に関する特性を示す特性情報を算出する。前記処理部は、前記車両の運転が終了した場合に、算出した前記特性情報に基づいて決定した前記メッセージを前記乗員に提示する処理を実行する。
【0031】
これによれば、車両の運転が終了した際に、乗員の特性に応じたメッセージが乗員に提示されるので、乗員のネガティブ感情の発生を抑制するための心理的なスキルの向上が期待できる、という利点がある。
【0032】
本開示の他の態様に係る情報提示システムでは、前記処理部は、算出した前記特性情報の履歴に基づいて過去特性情報を算出する。前記処理部は、前記特性情報を算出した場合に、当該特性情報及び前記過去特性情報に基づいて前記乗員に提示する前記メッセージを決定する。
【0033】
これによれば、乗員の過去の特性に更に基づいてメッセージを決定するので、乗員のネガティブ感情の発生を抑制するための心理的なスキルの向上がより期待できる、という利点がある。
【0034】
本開示の他の態様に係る情報提示システムでは、前記処理部は、前記車両が置かれる将来の状況に関する将来状況情報を取得する。前記処理部は、取得した前記将来状況情報及び前記過去特性情報に基づいて、前記乗員に前記ネガティブ感情が発生する可能性があることを検知した場合に、前記メッセージを前記乗員に提示する処理を実行する。
【0035】
これによれば、乗員がネガティブ感情を抱く前にメッセージを乗員に提示するので、乗員のネガティブ感情の発生を未然に防ぎやすい、という利点がある。
【0036】
本開示の一態様に係る情報提示方法では、車両の乗員のネガティブ感情の発生を検知し、前記乗員の前記ネガティブ感情の発生を検知した場合に、前記ネガティブ感情に応じた認知的変化における再評価を促進するメッセージを前記乗員に提示する処理を実行する。
【0037】
これによれば、乗員にメッセージを提示することにより、乗員がネガティブ感情を別の観点から捉えなおしやすくなるので、車両の乗員が抱くネガティブ感情を抑制しやすい、という利点がある。
【0038】
本開示の一態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、前記情報提示方法を実行させる。
【0039】
これによれば、乗員にメッセージを提示することにより、乗員がネガティブ感情を別の観点から捉えなおしやすくなるので、車両の乗員が抱くネガティブ感情を抑制しやすい、という利点がある。
【0040】
以下、実施の形態1~3について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0041】
なお、以下で説明する実施の形態1~3は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態1~3で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の設置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態1~3における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0042】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
【0043】
(実施の形態1)
<構成>
図1は、実施の形態1に係る情報提示システム100の概要を示すブロック図である。情報提示システム100は、例えば車両等の移動体に用いられ、車両の運転を支援するためのシステムである。実施の形態1では、情報提示システム100は、車載機器により実現されているが、車両の外部から持ち込まれる外部機器により実現されてもよい。また、実施の形態1では、情報提示システム100が対象とする乗員は、車両の運転席に着座する運転手であるが、助手席又は後部座席に着座する運転手以外の乗員であってもよい。
【0044】
情報提示システム100は、
図1に示すように、検知部1と、処理部2と、記憶部3と、マイクロホン4と、スピーカ5と、を備えている。なお、記憶部3、マイクロホン4、及びスピーカ5は、情報提示システム100の構成要素に含まれていなくてもよい。
【0045】
検知部1は、例えばECU(Electronic Control Unit)により実現され、車両の乗員のネガティブ感情の発生を検知する。実施の形態1では、検知部1が検知し得るネガティブ感情は、怒り、苛立ち(イライラ)、又は不安のいずれかである。なお、検知部1は、複数のネガティブ感情の発生を検知する場合もある。また、検知部1は、発生するネガティブ感情の種類のみならず、発生するネガティブ感情の強度、又はネガティブ感情の発生する確率を検知する場合もある。
【0046】
検知部1は、直接感情推定部11と、間接感情推定部12と、感情発生確認部13と、を有している。実施の形態1では、検知部1は、例えば内蔵メモリに予め記憶されているプログラムを実行することにより、直接感情推定部11、間接感情推定部12、及び感情発生確認部13の各々の機能を発揮する。
【0047】
直接感情推定部11は、乗員から直接的に得られる情報に基づいて乗員のネガティブ感情の発生を直接的に推定する。具体的には、直接感情推定部11は、乗員の生体情報を取得し、取得した生体情報に基づいて乗員のネガティブ感情の発生を検知する。ここで、生体情報は、例えば乗員の顔の表情、乗員の発する音声、又は乗員の心拍等を含み得る。
【0048】
例えば、乗員の顔の表情を示す情報は、車両に搭載されたカメラで乗員の顔画像を撮像することで取得することが可能である。そして、直接感情推定部11は、撮像した顔画像に対して適宜の画像解析アルゴリズムを実行することにより、乗員に怒り、苛立ち、又は不安のいずれかのネガティブ感情が発生しているか否かを推定する。一例として、顔画像が乗員の眉の間に縦皺がある表情を示していれば、直接感情推定部11は、乗員に怒り又は苛立ちのネガティブ感情が発生していると推定する。(参考:表情分析入門P. Ekman, W.V.Friesen, 工藤力編訳, 原著:UNMASKING THE FACE:1975年)
【0049】
また、例えば、乗員の発する音声を示す情報は、マイクロホン4で乗員の発する音声を収音することで取得することが可能である。そして、直接感情推定部11は、収音した乗員の発する音声に対して適宜の音声認識アルゴリズムを実行することにより、乗員に怒り、苛立ち、又は不安のいずれかのネガティブ感情が発生しているか否かを推定する。一例として、乗員の発する音声に愚痴等の言葉が含まれていれば、直接感情推定部11は、乗員に怒り又は苛立ちのネガティブ感情が発生していると推定する。また、直接感情推定部11は、音声信号を分析することによりネガティブ感情の発生を推定してもよい。
【0050】
また、例えば、乗員の心拍を示す情報は、例えばスマートウォッチ又はスマートグラス等、乗員の手首、腕、又は頭等に装着されて心拍数を計測する機能を有するウェアラブルデバイスから取得することが可能である。そして、直接感情推定部11は、取得した乗員の心拍を示す情報に対して適宜の分析アルゴリズムを実行することにより、乗員に怒り、苛立ち、又は不安のいずれかのネガティブ感情が発生しているか否かを推定する。一例として、乗員の心拍数が予め設定した閾値を上回っていれば、直接感情推定部11は、乗員に怒りのネガティブ感情が発生していると推定する。(参考:Dzedzickis, Human Emotion Recognition: Review of Sensors ana Methods, 2020)
【0051】
なお、直接感情推定部11は、上述の3種類の生体情報のうちの1種類の生体情報のみに基づいて乗員のネガティブ感情の発生を検知してもよいし、2種類以上の生体情報に基づいて乗員のネガティブ感情の発生を検知してもよい。
【0052】
間接感情推定部12は、乗員から間接的に得られる情報に基づいて乗員のネガティブ感情の発生の可能性及びネガティブ感情の発生の要因を間接的に推定する。具体的には、間接感情推定部12は、車両の置かれる状況に関する状況情報を取得し、取得した状況情報に基づいて乗員のネガティブ感情の発生の可能性及びネガティブ感情の発生の要因を検知する。ここで、状況情報は、例えば周囲の明るさ(昼間、又は夜間等)、天気(晴天、曇天、又は雨天等)、又は交通状況(初めて走行する道路、初めての目的地、狭路、合流地点、又は渋滞等)等を含み得る。また、状況情報は、例えば周囲の車両に関する周囲情報等を含み得る。周囲情報は、例えば車両の駐車時における周囲の車両を示す情報、車両の車線変更時における周囲の車両を示す情報、又は周囲の車両による煽り運転を示す情報(車間距離を詰める、又はクラクションを鳴らす等)等を含み得る。
【0053】
例えば、周囲の明るさを示す情報は、車両に搭載された照度センサから取得することが可能である。そして、間接感情推定部12は、取得した周囲の明るさを示す情報に対してて適宜の分析アルゴリズムを実行することにより、乗員に怒り、苛立ち、又は不安のいずれかのネガティブ感情が発生しやすい状況か否かを推定する。一例として、周囲の明るさを示す情報が夜間を示していれば、間接感情推定部12は、乗員に不安のネガティブ感情が発生している可能性があると推定し、その要因は夜間とする。
【0054】
また、例えば、天気を示す情報は、気象情報を提供するサービス事業者が運用するサーバ等から取得することが可能である。そして、間接感情推定部12は、取得した天気を示す情報に対して適宜の分析アルゴリズムを実行することにより、乗員に怒り、苛立ち、又は不安のいずれかのネガティブ感情が発生しやすい状況か否かを推定する。一例として、天気を示す情報が雨天を示していれば、間接感情推定部12は、乗員に不安のネガティブ感情が発生している可能性があると推定し、その要因は雨天とする。
【0055】
また、例えば、交通状況を示す情報は、車両に搭載された、又は乗員が所持するスマートフォン等の携帯端末に搭載されたナビゲーションシステムから取得することが可能である。そして、間接感情推定部12は、取得した交通状況を示す情報に対して適宜の分析アルゴリズムを実行することにより、乗員に怒り、苛立ち、又は不安のいずれかのネガティブ感情が発生しやすい状況か否かを推定する。一例として、交通状況を示す情報が渋滞を示していれば、間接感情推定部12は、乗員に苛立ちのネガティブ感情が発生している可能性があると推定し、その要因は渋滞とする。
【0056】
また、例えば、周囲情報は、車両に搭載された距離センサ、ジャイロセンサ、又はマイクロホン4等から取得することが可能である。そして、間接感情推定部12は、取得した周囲情報に対して適宜の分析アルゴリズムを実行することにより、乗員に怒り、苛立ち、又は不安のいずれかのネガティブ感情が発生しやすい状況か否かを推定する。一例として、周囲情報が車両の車線変更時における周囲の車両を示していれば、間接感情推定部12は、乗員に不安のネガティブ感情が発生している可能性があると推定し、その要因は車線変更とする。
【0057】
感情発生確認部13は、検知部1で乗員のネガティブ感情の発生又はネガティブ感情の発生の可能性を検知した場合に、ネガティブ感情を抱いているか否かを乗員に対して確認する処理を実行する。具体的には、感情発生確認部13は、例えば「現在、怒り(又は苛立ち、不安)の感情を抱いていますか?」と乗員に対して質問するメッセージをスピーカ5から音声として出力させる。そして、感情発生確認部13は、質問に対して乗員の発する音声をマイクロホン4で収音し、収音した音声に対して適宜の音声認識アルゴリズムを実行することにより、当該音声が肯定を意味する音声であるか、否定を意味する音声であるかを認識する。当該音声が肯定を意味する音声であれば、感情発生確認部13は、乗員のネガティブ感情が発生したと判定する。一方、当該音声が否定を意味する音声であれば、感情発生確認部13は、乗員のネガティブ感情が発生していないと判定する。また、ネガティブ感情を抱いているか否かを乗員に対して確認する処理は、「はい」、「いいえ」に相当する確認ボタンを乗員に押下させることで実行してもよい。
【0058】
処理部2は、例えばECUにより実現され、車両の乗員の運転を支援するための種々の処理を実行する。実施の形態1では、処理部2は、特定部21と、提示部22と、沈静化促進部23と、気晴らし促進部24と、を有している。実施の形態1では、処理部2は、例えば内蔵メモリに予め記憶されているプログラムを実行することにより、特定部21、提示部22、沈静化促進部23、及び気晴らし促進部24の各々の機能を発揮する。
【0059】
特定部21は、乗員のセルフモニタリングの結果及び状況情報のうちの少なくとも一方に基づいてネガティブ感情の発生原因を特定する。ここで、セルフモニタリングとは、乗員に対して現在の状況、考え、行動、又は自己の感情を口頭で説明させることをいう。セルフモニタリングは、後述する沈静化促進部23が乗員に対して実行を促す場合がある。
【0060】
例えば、特定部21は、セルフモニタリングの結果に含まれる現在の状況が周囲の車両からの煽り運転を受けていることを示していれば、ネガティブ感情の発生原因が周囲の車両による煽り運転であると特定する。また、例えば、特定部21は、状況情報が初めて走行する道路を示していれば、特定部21は、ネガティブ感情の発生原因が初めて走行する道路であると特定する。
【0061】
提示部22は、検知部1が乗員のネガティブ感情の発生を検知した場合に、ネガティブ感情に応じた「認知的変化(再評価)」(以下、「認知的変化における再評価」ともいう)を促進するメッセージを乗員に提示する処理を実行する。ここで、「認知的変化(再評価)」とは、感情を制御する方法として知られている状況選択、状況修正、注意配分、認知的変化、及び反応調整のうちの認知的変化に属する方法であって、状況によって喚起される感情を変化させるために、その状況又は自己の能力に対する評価を変えることをいう。なお、上述の感情を制御する方法については、例えば「感情制御ハンドブック, 12章他, 2022年」、「J.J. Gross, Antecedent- and response-focused emotion regulation: Divergent consequences for experience, expression, and physiology. Journal of Personality and Social Psychology, 1998年」を参照されたい。
【0062】
状況選択は、感情の喚起が予測される状況(環境又は刺激)において、それに関与するかどうかを選択することをいう。例えば、乗員が渋滞により苛立ちのネガティブ感情を抱く可能性がある場合、事前に渋滞予測情報を参照して渋滞を回避するという状況選択を行うことで、ネガティブ感情の抑制を図ることが知られている。
【0063】
状況修正は、喚起される感情の影響を変化させるために、状況(環境又は刺激)を修正することをいう。例えば、乗員が周囲の車両に割り込まれて怒りのネガティブ感情を抱いている場合、即座に当該車両との車間距離を空けるという状況修正を行うことで、ネガティブ感情の抑制を図ることが知られている。
【0064】
注意配分は、感情を変化させるために、状況若しくは自己に対して注意を向ける、状況若しくは自己に対する注意を背けることをいう。例えば、乗員が運転初心者であって不安のネガティブ感情を抱いている場合、乗員の好みの音楽を聴く、又は乗員の好みの香りを嗅ぐことで気分を紛らわせるという注意配分を行うことで、ネガティブ感情の抑制を図ることが知られている。
【0065】
反応調整は、感情が喚起された後に感情反応を直接的に調整することをいう。例えば、例えば、乗員が運転初心者であって不安のネガティブ感情を抱いている場合、深呼吸して落ち着かせるという反応調整を行うことで、ネガティブ感情の抑制を図ることが知られている。
【0066】
上述の状況選択、状況修正、注意配分、及び反応調整とは異なり、提示部22は、乗員に対して「認知的変化(再評価)」を促進するメッセージを提示することにより、乗員にネガティブ感情を別の観点から捉えなおすことを促し、乗員のネガティブ感情の抑制を図っている。「認知的変化(再評価)」は、他とは異なり、その場の感情に対する対策だけでなく、ネガティブ感情自体を抱きにくくするという心理的スキル向上の効果があると言われている。また、再評価はさらに細分類されており、その内、肯定的再評価、計画への再焦点化、大局的視点、肯定的再焦点化の4種が有効と言われている。(参考:メタ分析による認知的感情制御尺度と抑うつ・不安の関連の検討, 2016年)
【0067】
実施の形態1では、提示部22が提示するメッセージは、「認知的変化(再評価)」の細分類の一種である肯定的再評価を促進するメッセージ、計画への再焦点化を促進するメッセージ、大局的視点を促進するメッセージ、および肯定的再焦点化を促進するメッセージのうちの少なくとも1つを含んでいる。肯定的再評価は、個人の成長の観点から現在の状況をポジティブに考えることをいう。計画への再焦点化は、どのように対処すると現在の状況を変えられるかを考えることをいう。大局的視点は、現在の状況の重大さを軽視する、又は現在の状況が他のネガティブな状況よりは良いと考えることをいう。肯定的再焦点化は、現在の状況とは関係のないポジティブなことを考えることをいう。なお、提示部22が提示するメッセージの具体例については、後述する<動作>にて説明する。
【0068】
ここで、特定部21にてネガティブ感情の発生原因を特定している場合、提示部22は、特定した発生原因に基づいて乗員に提示するメッセージを決定する。具体的には、提示部22は、複数のメッセージの候補の中から、ネガティブ感情の発生原因に紐づいた候補を選択してメッセージを決定する。例えば、ネガティブ感情の発生原因が渋滞であれば、提示部22は、複数のメッセージの候補の中から渋滞について言及している候補を選択してメッセージを決定する。
【0069】
実施の形態1では、提示部22は、記憶部3に記憶されている複数のメッセージの候補から提示するメッセージを読み出し、読み出したメッセージをスピーカ5から音声として出力させることで、メッセージを乗員に提示する。音声は、機械音声であってもよいし、人が発した音声を録音した音声であってもよい。
【0070】
なお、提示部22は、例えばネガティブ感情及びネガティブ感情の発生原因を入力として「認知的変化(再評価)」を促進するメッセージを出力するように予め機械学習されたメッセージ生成モデルを用いて、提示するメッセージを生成してもよい。この場合、記憶部3に複数のメッセージの候補を記憶させなくてもよい。
【0071】
沈静化促進部23は、検知部1で検知された乗員のネガティブ感情が怒り及び苛立ちのうちのいずれかである場合に、乗員のネガティブ感情の沈静化を促進する処理(以下、「沈静化促進処理」ともいう)を実行する。具体的には、沈静化促進部23は、例えば乗員に対して深呼吸又はセルフトークの実行を促すメッセージをスピーカ5から音声として出力させる。ここで、セルフトークは、自己を落ち着かせるための独り言、又は自己暗示の言葉を発することをいう。また、沈静化促進部23は、例えば乗員に対してセルフモニタリングの実行を促すメッセージをスピーカ5から音声として出力させる。
【0072】
また、例えば、沈静化促進部23は、スピーカ5を制御して音楽を再生させたり、車両に搭載されたアロマディフューザーを制御して香りを発生させたりしてもよい。また、例えば、沈静化促進部23は、車両に搭載された照明装置を制御して照明環境を変更させたり、車両に搭載された空調機器を制御して車内温度を変更させたりしてもよい。
【0073】
気晴らし促進部24は、提示部22が乗員にメッセージを提示した際に、乗員の気晴らしを促進する処理(以下、「気晴らし促進処理」ともいう)を更に実行する。具体的には、気晴らし促進部24は、スピーカ5から乗員の嗜好にあった音楽を再生させたり、車両に搭載されたアロマディフューザーから乗員の嗜好にあった香りを発生させたりする。なお、乗員の嗜好にあった音楽を示す情報、又は乗員の嗜好にあった香りを示す情報は、例えば記憶部3に予め記憶される。
【0074】
気晴らし促進部24は、気晴らし促進処理を実行する前に、例えば当該処理を実行してもよいか否かを乗員に対して質問するメッセージをスピーカ5から音声として出力させてもよい。この場合、気晴らし促進部24は、乗員から肯定を示す回答が得られれば、当該処理を実行する。一方、気晴らし促進部24は、乗員から否定を示す回答が得られれば、当該処理を実行しない。
【0075】
記憶部3は、例えば半導体メモリであって、情報提示システム100に用いられる情報を記憶するための専用又は汎用のメモリである。記憶部3には、例えば提示部22で乗員に対して提示され得る複数のメッセージの候補等が記憶されている。
【0076】
<動作>
以下、実施の形態1に係る情報提示システム100の動作について、
図2を参照して説明する。
図2は、実施の形態1に係る情報提示システム100の動作例を示すフローチャートである。以下に示す動作は、車両の走行中(車両の一時停止を含む)において実行される。
【0077】
まず、検知部1の直接感情推定部11は、ネガティブ感情の発生を直接的に推定する(S101)。また、検知部1の間接感情推定部12は、ネガティブ感情の発生を間接的に推定する(S102)。なお、ステップS101,S102は、この順とは異なる順で実行されてもよいし、並行して実行されてもよい。
【0078】
直接感情推定部11及び間接感情推定部12のいずれでもネガティブ感情の発生及びネガティブ感情の発生の可能性が推定されない間、つまりネガティブ感情の発生が検知されない間は(S103:No)、ステップS101,S102が繰り返される。一方、直接感情推定部11でネガティブ感情の発生が推定され、間接感情推定部12でも乗員のネガティブ感情の発生の可能性を推定した場合、つまりネガティブ感情の発生を検知した場合(S103:Yes)、感情発生確認部13は、ネガティブ感情の発生を乗員に確認する処理を実行する(S104)。なお、情報提示システム100は間接感情推定部12を備えていなくてもよく、その場合は、直接感情推定部11での感情の発生が推定されれば、感情発生確認部13の処理を実行する。
【0079】
そして、処理部2の提示部22は、ネガティブ感情に応じた「認知的変化(再評価)」を促進するメッセージを乗員に提示する処理を実行する(S105)。なお、ステップS104において、乗員からネガティブ感情の発生を否定する回答を得た場合、ステップS105を実行せずに、ステップS101,S102へ戻ってもよい。
【0080】
図3は、実施の形態1に係る情報提示システム100において、メッセージを乗員に提示する処理の具体例を示すフローチャートである。
図3の(a)は、検知部1が乗員の怒り又は苛立ちを示すネガティブ感情の発生を検知した場合の例を示し、
図3の(b)は、検知部1が乗員の不安を示すネガティブ感情の発生を検知した場合の例を示している。
【0081】
図3の(a)に示すように、検知部1が乗員の怒り又は苛立ちを示すネガティブ感情の発生を検知した場合、まず、処理部2の沈静化促進部23は、沈静化促進処理を実行する(S201)。次に、処理部2の特定部21は、ネガティブ感情の発生原因を特定する(S202)。なお、ステップS201,S202は、この順とは異なる順で実行されてもよいし、並行して実行されてもよい。
【0082】
次に、処理部2は、特定部21が特定した発生原因に基づいて、「認知的変化(再評価)」を促進するメッセージ(例えば、大局的視点に関するメッセージ等)を決定する(S203)。そして、処理部2の提示部22は、ステップS203で決定したメッセージを乗員に提示する処理を実行する(S204)。また、処理部2の気晴らし促進部24は、気晴らし促進処理を実行する(S205)。ステップS205は、ステップS204の実行後に実行されてもよいし、ステップS204と同時に実行されてもよい。
【0083】
図3の(b)に示すように、検知部1が乗員の不安を示すネガティブ感情の発生を検知した場合、まず、処理部2の特定部21は、ネガティブ感情の発生原因を特定する(S301)。次に、処理部2は、特定部21が特定した発生原因に基づいて、「認知的変化(再評価)」を促進するメッセージ(例えば、計画への再焦点化に関するメッセージ、又は大局的視点に関するメッセージ等)を決定する(S302)。
【0084】
なお、メッセージには、乗員の不安を解消するための情報提供又はアドバイスが含まれてもよい。これにより、乗員に計画への再焦点化を促し、乗員の自己効力感を向上させることで不安の抑制が期待できる。ここで、自己効力感は、現在の状況に対して適切に対処できるという予期又は確信を覚える等、自己の可能性を認知することをいう。
【0085】
そして、処理部2の提示部22は、ステップS302で決定したメッセージを乗員に提示する処理を実行する(S303)。また、処理部2の気晴らし促進部24は、気晴らし促進処理を実行する(S304)。ステップS304は、ステップS303の実行後に実行されてもよいし、ステップS303と同時に実行されてもよい。
【0086】
図4は、実施の形態1に係る情報提示システム100において、乗員に提示するメッセージの一例を示す図である。提示部22は、検知部1が検知した乗員のネガティブ感情に応じて、乗員に提示するメッセージを決定する。例えば、検知部1が乗員の怒りを示すネガティブ感情の発生を検知した場合、提示部22は、
図4に示す「怒り」の行であって「認知的変化(再評価)」の「肯定的再評価」、「計画への再焦点化」、「大局的視点」、及び「肯定的再焦点化」の4つの列のいずれかにあるメッセージを決定する。
【0087】
図4において、「注意配分」の列にあるメッセージは、気晴らし促進部24が気晴らし促進処理を実行する前に乗員に対して提示されるメッセージの一例である。また、
図4において、「共感」の列にあるメッセージは、乗員のネガティブ感情に共感を示すメッセージの一例である。例えば、提示部22は、「認知的変化(再評価)」を促進するメッセージを提示する際に、併せて検知部1で検知した乗員のネガティブ感情に応じて、「共感」の列にあるメッセージを更に提示してもよい。
【0088】
<利点>
以下、実施の形態1に係る情報提示システム100の利点について説明する。上述のように、実施の形態1に係る情報提示システム100は、車両の乗員のネガティブ感情の発生を検知した場合に、ネガティブ感情に応じた「認知的変化(再評価)」を促進するメッセージを乗員に提示する処理を実行する。このため、実施の形態1に係る情報提示システム100では、乗員にメッセージを提示することにより、乗員がネガティブ感情を別の観点から捉えなおしやすくなるので、車両の乗員が抱くネガティブ感情を抑制しやすい、という利点がある。
【0089】
ここで、乗員の居眠り運転又は脇見運転に対しては、乗員に対して警報を発することが有効な手法として知られている。しかしながら、乗員のネガティブ感情が発生した際に、乗員に対して警報又は注意喚起のメッセージを発しても、ネガティブ感情を抑制することができず、かえって逆効果となり得る。これに対して、実施の形態1に係る情報提示システム100では、ネガティブ感情の抑制に特に有効と考えられる「認知的変化(再評価)」を促進するメッセージを乗員に提示するので、乗員が抱くネガティブ感情を抑制しやすい、という利点がある。
【0090】
(実施の形態2)
<構成>
図5は、実施の形態2に係る情報提示システム100Aの概要を示すブロック図である。実施の形態2に係る情報提示システム100Aは、処理部2が特性情報算出部25を更に有している点で、実施の形態1に係る情報提示システム100と相違する。また、実施の形態2に係る情報提示システム100Aでは、記憶部3が履歴データベース(以下、「履歴DB」という)31を有している点で、実施の形態1に係る情報提示システム100と相違する。以下、実施の形態1と共通する点については、適宜説明を省略する。
【0091】
特性情報算出部25は、車両の走行中に検知部1が検知した乗員のネガティブ感情の発生に関するデータを蓄積した履歴データに基づいて、乗員のネガティブ感情の発生に関する特性を示す特性情報を算出する。履歴データは、記憶部3の履歴DB31に保存される。
【0092】
ここで、乗員のネガティブ感情の発生に関するデータは、例えばネガティブ感情の発生時間、ネガティブ感情の継続時間、又はネガティブ感情の発生時に乗員の置かれた状況等を含み得る。乗員の置かれた状況は、例えば乗員にとって初めて走行する道路であるか否か、乗員にとって初めての目的地であるか否か、車両の速度、他の車両との車間距離、時間帯、天気、又は交通状況等を含み得る。
【0093】
特性情報算出部25は、履歴データに対して適宜の分析アルゴリズムを実行することにより、特性情報を算出する。ここで、特性情報は、例えば、一定走行距離又は走行時間に対するネガティブ感情の発生頻度、ネガティブ感情の発生した時間の累積時間、ネガティブ感情の強度の累積、又はネガティブ感情の発生時の車両の状況の傾向(雨天時、渋滞時など)等を含み得る。また、特性情報は、乗員にとって初めて走行する道路であるか否かとネガティブ感情との相関、又は乗員にとって初めての目的地であるか否かとネガティブ感情との相関等を含み得る。
【0094】
<動作>
以下、実施の形態2に係る情報提示システム100Aの動作について、
図6を参照して説明する。
図6は、実施の形態2に係る情報提示システム100Aの動作例を示すフローチャートである。なお、実施の形態2に係る情報提示システム100Aは、車両の走行中においては、実施の形態1に係る情報提示システム100と同様の動作を実行するが、ここでは説明を省略する。
【0095】
まず、車両が走行中である場合(S401:No)、処理部2は、検知部1が検知した乗員のネガティブ感情の発生に関するデータを履歴DB31に蓄積する(S402)。その後、車両の走行が終了すると(S401:Yes)、処理部2の特性情報算出部25は、履歴DB31に保存された履歴データに基づいて特性情報を算出し(S403)、算出した特性情報を記憶部3に保存する(S404)。なお、ステップS403,S404は、車両の走行中において実行されてもよい。
【0096】
次に、処理部2は、算出した特性情報に基づいて、「認知的変化(再評価)」を促進するメッセージ(例えば、肯定的再評価に関するメッセージ、又は大局的視点に関するメッセージ等)を決定する(S405)。そして、処理部2の提示部22は、ステップS405で決定したメッセージを乗員に提示する処理を実行する(S406)。
【0097】
図7は、実施の形態2に係る情報提示システム100Aにおいて、乗員に提示するメッセージの一例を示す図である。提示部22は、特性情報に応じて乗員に提示するメッセージを決定する。例えば、乗員が不安のネガティブ感情を抱きやすい傾向にあることを特性情報が示す場合、提示部22は、
図7に示す「不安傾向」の行であって「認知的変化(再評価)」の「肯定的再評価」、「計画への再焦点化」、「大局的視点」、及び「肯定的再焦点化」の4つの列のいずれかにあるメッセージを決定する。
【0098】
図7において、「共感」の列にあるメッセージは、乗員のネガティブ感情に共感を示すメッセージの一例である。例えば、提示部22は、「認知的変化(再評価)」を促進するメッセージを提示する際に、併せて特性情報に応じて、「共感」の列にあるメッセージを更に提示してもよい。
【0099】
<利点>
以下、実施の形態2に係る情報提示システム100Aの利点について説明する。上述のように、実施の形態2に係る情報提示システム100Aでは、車両の走行中に蓄積した履歴データに基づいて特性情報を算出する。そして、実施の形態2に係る情報提示システム100Aでは、車両の走行が終了すると(つまり、車両の運転が終了した場合に)、算出した特性情報に基づいて決定したメッセージを乗員に提示する処理を実行する。
【0100】
このため、実施の形態2に係る情報提示システム100Aは、車両の運転が終了した際に、乗員の特性に応じたメッセージが乗員に提示されるので、乗員のネガティブ感情の発生を抑制するための心理的なスキルの向上が期待できる、という利点がある。例えば、乗員が車両の運転中において不安のネガティブ感情を抱きやすい傾向にある場合、乗員が車両の運転の終了時に上記メッセージを受け取ることで、次回以降の車両の運転時において乗員が不安のネガティブ感情を抱きにくくなる効果が期待できる。
【0101】
ここで、実施の形態2では、処理部2の特性情報算出部25は、算出した特性情報の履歴に基づいて過去特性情報を算出してもよい。そして、処理部2の提示部22は、特性情報を算出した場合に、当該特性情報及び過去特性情報に基づいて、乗員に提示するメッセージを決定してもよい。
【0102】
例えば、特性情報算出部25は、過去の複数回(例えば、10回)の特性情報、又は一定期間(例えば、1カ月)の特性情報の履歴に基づいて、一定走行距離に対するネガティブ感情(例えば、苛立ち)の発生した累積時間の平均値を過去特性情報として算出する。そして、提示部22は、算出した過去特性情報と今回取得した特性情報とを比較することで、例えば今回の走行時では過去の走行時よりも苛立ちの感情の発生した累積時間が長い場合、その旨及び次回の運転に向けてのアドバイスを含むメッセージを決定してもよい。
【0103】
なお、特性情報の履歴及び過去特性情報は、乗員ごとに記憶部3に保存される。具体的には、特性情報の履歴及び過去特性情報は、乗員の識別子と紐づけられて記憶部3に保存される。そして、処理部2は、特性情報の履歴及び過去特性情報を記憶部3から読み出す場合は、例えば乗員が車両に搭乗する際に実行される認証処理により取得した乗員の識別子を参照すればよい。
【0104】
(実施の形態3)
<構成>
図8は、実施の形態3に係る情報提示システム100Bの概要を示すブロック図である。実施の形態3に係る情報提示システム100Bは、処理部2が発生可能性検知部26を更に有している点で、実施の形態2に係る情報提示システム100Aと相違する。以下、実施の形態2と共通する点については、適宜説明を省略する。
【0105】
発生可能性検知部26は、車両が置かれる将来の状況に関する将来状況情報を取得し、取得した将来状況情報及び過去特性情報に基づいて、乗員にネガティブ感情が発生する可能性があることを検知する。ここで、将来状況情報は、将来(例えば、現時点から数時間後等)の周囲の明るさ、天気、又は交通状況等を含み得る。
【0106】
例えば、発生可能性検知部26は、将来状況情報が将来の走行経路上での渋滞の発生を示しており、かつ、過去特性情報が渋滞発生時において乗員がネガティブ感情を抱きやすい傾向を示す場合、乗員にネガティブ感情が発生する可能性があることを検知する。また、例えば、発生可能性検知部26は、将来状況情報が夜間での走行を示しており、かつ、過去特性情報が夜間の走行時において乗員がネガティブ感情を抱きやすい傾向を示す場合、乗員にネガティブ感情が発生する可能性があることを検知する。
【0107】
また、例えば、発生可能性検知部26は、将来状況情報が走行中に雨天となることを示しており、かつ、過去特性情報が雨天での走行時において乗員がネガティブ感情を抱きやすい傾向を示す場合、乗員にネガティブ感情が発生する可能性があることを検知する。また、例えば、発生可能性検知部26は、将来状況情報が走行予定の道路が初めて走行する道路であること又は初めての目的地であることを示しており、かつ、過去特性情報が初めて走行する道路又は初めての目的地に対して乗員がネガティブ感情を抱きやすい傾向を示す場合、乗員にネガティブ感情が発生する可能性があることを検知する。
【0108】
<動作>
以下、実施の形態3に係る情報提示システム100Bの動作について、
図9を参照して説明する。
図9は、実施の形態3に係る情報提示システム100Bの動作例を示すフローチャートである。なお、実施の形態3に係る情報提示システム100Bは、車両の走行中においては実施の形態1に係る情報提示システム100と同様の動作を実行し、車両の走行の終了時においては実施の形態2に係る情報提示システム100Aと同様の動作を実行するが、ここでは説明を省略する。また、以下に示す動作は、車両の走行を開始する前、又は車両の走行中において実行される。
【0109】
まず、処理部2の発生可能性検知部26は、将来状況情報を取得する(S501)。また、処理部2の発生可能性検知部26は、記憶部3から過去特性情報を読み出すことにより、過去特性情報を取得する(S502)。なお、ステップS501,S502は、この順とは異なる順で実行されてもよいし、並行して実行されてもよい。
【0110】
次に、処理部2の発生可能性検知部26が将来状況情報及び過去特性情報に基づいて、乗員にネガティブ感情が発生する可能性があることを検知した場合(S503:Yes)、処理部2の提示部22は、「認知的変化(再評価)」を促進するメッセージを乗員に提示する処理を実行する(S504)。一方、発生可能性検知部26が乗員にネガティブ感情が発生する可能性があることを検知しなかった場合(S503:No)、提示部22はメッセージを乗員に提示しない。
【0111】
図10は、実施の形態3に係る情報提示システム100Bにおいて、乗員に提示するメッセージの一例を示す図である。提示部22は、過去特性情報に応じて乗員に提示するメッセージを決定する。例えば、乗員が不安のネガティブ感情を抱きやすい傾向にあることを過去特性情報が示す場合、提示部22は、
図10に示す「不安傾向」の行であって「認知的変化(再評価)」の「肯定的再評価」、「計画への再焦点化」、「大局的視点」、及び「肯定的再焦点化」の4つの列のいずれかにあるメッセージを決定する。
【0112】
図10において、「注意配分」の列にあるメッセージは、気晴らし促進部24が気晴らし促進処理を実行する前に乗員に対して提示されるメッセージの一例である。例えば、気晴らし促進部24は、提示部22が「認知的変化(再評価)」を促進するメッセージを提示する際に、「注意配分」の列にあるメッセージを提示してもよい。
【0113】
<利点>
以下、実施の形態3に係る情報提示システム100Bの利点について説明する。上述のように、実施の形態3に係る情報提示システム100Bでは、将来状況情報を取得し、取得した将来状況情報及び過去特性情報に基づいて、乗員にネガティブ感情が発生する可能性があることを検知した場合に、メッセージを乗員に提示する処理を実行する。
【0114】
このため、実施の形態3に係る情報提示システム100Bは、乗員がネガティブ感情を抱く前にメッセージを乗員に提示するので、乗員のネガティブ感情の発生を未然に防ぎやすい、という利点がある。
【0115】
(変形例)
以上、本開示に係る情報提示システムについて、上記各実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思い付く各種変形を各実施の形態に施したものも、本開示の範囲内に含まれてもよい。
【0116】
上記各実施の形態において、処理部2の提示部22は、メッセージをスピーカ5から音声として出力させることでメッセージを乗員に提示しているが、これに限られない。例えば、提示部22は、車両に搭載されたHUD(Head-Up Display)にメッセージを表示させることでメッセージを乗員に提示してもよい。また、提示部22は、スピーカ5からの音声の出力、及びHUDへの表示の両方によりメッセージを乗員に提示してもよい。
【0117】
上記各実施の形態において、処理部2の提示部22は、乗員に応じてスピーカ5から出力する音声の種類を変更してもよい。例えば、提示部22は、乗員に応じて男性の音声、女性の音声、子供の音声、乗員の好みの俳優の音声、又は乗員の好みのキャラクターの音声をスピーカ5から出力させることでメッセージを乗員に提示してもよい。また、例えば、提示部22は、乗員に応じて関西弁等の方言で音声をスピーカ5から出力させることでメッセージを乗員に提示してもよい。
【0118】
上記各実施の形態において、検知部1は、乗員の申告に基づいて乗員のネガティブ感情の発生を検知してもよい。具体的には、検知部1は、感情発生確認部13により乗員に対してネガティブ感情が発生しているか否かを質問し、肯定的な回答を得た場合に乗員のネガティブ感情が発生したと判定してもよい。この場合、直接感情推定部11、及び間接感情推定部12は不要である。
【0119】
上記各実施の形態において、処理部2は、沈静化促進部23を有していなくてもよい。つまり、処理部2の提示部22は、沈静化促進処理を実行することなく、メッセージを乗員に提示する処理を実行してもよい。
【0120】
上記各実施の形態において、処理部2は、気晴らし促進部24を有していなくてもよい。つまり、処理部2の提示部22は、気晴らし促進処理を実行することなく、メッセージを乗員に提示する処理を実行してもよい。
【0121】
上記各実施の形態において、情報提示システム100,100A,100Bは、例えばカーナビゲーションシステム、ディスプレイ、及びオーディオを用いた車載情報通信システムであるIVI(In-Vehicle Infotainment)システムにより実現されてもよい。
【0122】
また、上記各実施の形態では、情報提示システム100,100A,100Bは車載機器により実現されているが、これに限られない。例えば、情報提示システム100,100A,100Bは、車両とは別のサーバ装置に搭載されており、サーバ装置と車両との間で無線通信を行うことにより、乗員にメッセージを提示する構成であってもよい。また、情報提示システム100,100A,100Bは、その一部が車両に、残りがサーバ装置に搭載されるといった複合的な構成であってもよい。
【0123】
また、上記各実施の形態に係る情報提示システム100,100A,100Bに含まれる各部は、典型的に集積回路であるLSI(Large-Scale Integration)として実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。
【0124】
また、集積回路化はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0125】
なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)又はプロセッサ等のプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0126】
また、上記で用いた数字は、全て本開示を具体的に説明するために例示するものであり、本開示の各実施の形態は例示された数字に制限されない。
【0127】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0128】
また、フローチャートにおける各ステップが実行される順序は、本開示を具体的に説明するために例示するためであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が、他のステップと同時(並列)に実行されてもよい。
【0129】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【0130】
(まとめ)
以上述べたように、第1の態様に係る情報提示システム100,100A,100Bは、検知部1と、処理部2と、を備える。検知部1は、車両の乗員のネガティブ感情の発生を検知する。処理部2は、検知部1が乗員のネガティブ感情の発生を検知した場合に、ネガティブ感情に応じた認知的変化における再評価を促進するメッセージを乗員に提示する処理を実行する。
【0131】
これによれば、乗員にメッセージを提示することにより、乗員がネガティブ感情を別の観点から捉えなおしやすくなるので、車両の乗員が抱くネガティブ感情を抑制しやすい、という利点がある。
【0132】
第2の態様に係る情報提示システム100,100A,100Bでは、第1の態様において、メッセージは、再評価の細分類の一種である肯定的再評価を促進するメッセージ、計画への再焦点化を促進するメッセージ、大局的視点を促進するメッセージ、および肯定的再焦点化を促進するメッセージのうちの少なくとも1つを含む。
【0133】
これによれば、乗員にメッセージを提示することにより、乗員がネガティブ感情を別の観点から捉えなおしやすくなるので、車両の乗員が抱くネガティブ感情、特に乗員が抱く不安を抑制しやすい、という利点がある。
【0134】
第3の態様に係る情報提示システム100,100A,100Bでは、第1又は第2の態様において、検知部1は、乗員の生体情報を取得し、取得した生体情報に基づいて乗員のネガティブ感情の発生を検知する。
【0135】
これによれば、乗員の抱く感情に応じて変動し得る生体情報に基づいて乗員のネガティブ感情の発生を検知するので、精度よく乗員のネガティブ感情の発生を検知しやすくなる、という利点がある。
【0136】
第4の態様に係る情報提示システム100,100A,100Bでは、第3の態様において、検知部1は、車両の置かれる状況に関する状況情報を更に取得し、取得した状況情報に基づいて乗員のネガティブ感情の発生の可能性及びネガティブ感情の発生の要因を更に検知する。
【0137】
これによれば、乗員の生体情報に基づいた検知の場合よりも高い信頼性で乗員のネガティブな感情の発生を検知できるようになる、という利点がある。
【0138】
第5の態様に係る情報提示システム100,100A,100Bでは、第1~第3のいずれか1つの態様において、検知部1は、乗員のネガティブ感情の発生を検知した場合、当該ネガティブ感情を抱いているか否かを乗員に対して確認する処理を更に実行する。
【0139】
これによれば、乗員が実際にネガティブ感情を抱いているかを確認することができるので、乗員に対して情報提示を行えると共に、例えば確認結果をフィードバックすることで乗員のネガティブ感情の発生の検知精度の向上に役立てることができる。
【0140】
第6の態様に係る情報提示システム100,100A,100Bでは、第4の態様において、検知部1は、乗員のネガティブ感情の発生の可能性を検知した場合、当該ネガティブ感情を抱いているか否かを乗員に対して確認する処理を更に実行する。
【0141】
これによれば、乗員が実際にネガティブ感情を抱いているかを確認することができるので、乗員に対して情報提示を行えると共に、例えば確認結果をフィードバックすることで乗員のネガティブ感情の発生の検知精度の向上に役立てることができる。
【0142】
第7の態様に係る情報提示システム100,100A,100Bでは、第1~第6のいずれか1つの態様において、処理部2は、車両の走行中において検知部1が乗員のネガティブ感情の発生を検知した場合に、メッセージを乗員に提示する処理を実行する。
【0143】
これによれば、車両の走行中において乗員がネガティブ感情を抱くことによる車両の運転への影響を低減することができるので、車両の運転を支援しやすくなる、という利点がある。
【0144】
第8の態様に係る情報提示システム100,100A,100Bでは、第7の態様において、処理部2は、ネガティブ感情が怒り及び苛立ちのうちのいずれかである場合、乗員のネガティブ感情の沈静化を促進する処理を実行した後に、メッセージを乗員に提示する処理を実行する。
【0145】
これによれば、例えば強い怒り又は苛立ち等の認知的変化における再評価の効果が比較的小さくなりがちなネガティブ感情の沈静化を図った後にメッセージを乗員に提示するので、メッセージの提示による乗員の抱くネガティブ感情の抑制の効果を高めやすい、という利点がある。
【0146】
第9の態様に係る情報提示システム100,100A,100Bでは、第7又は第8の態様において、処理部2は、乗員のセルフモニタリングの結果及び車両の置かれる状況に関する状況情報のうちの少なくとも一方に基づいてネガティブ感情の発生原因を特定する。処理部2は、特定した発生原因に基づいて乗員に提示するメッセージを決定する。
【0147】
これによれば、ネガティブ感情の発生原因に応じて適切なメッセージを決定することができるので、メッセージの提示による乗員の抱くネガティブ感情の抑制の効果を高めやすい、という利点がある。
【0148】
第10の態様に係る情報提示システム100,100A,100Bでは、第7~第9のいずれか1つの態様において、処理部2は、乗員の気晴らしを促進する処理を更に実行する。
【0149】
これによれば、ネガティブ感情の発生原因から乗員の注意をそらしやすくなるので、メッセージの提示による乗員の抱くネガティブ感情の抑制の効果を高めやすい、という利点がある。
【0150】
第11の態様に係る情報提示システム100Aでは、第1~第10のいずれか1つの態様において、処理部2は、車両の走行中に検知部1が検知した乗員のネガティブ感情の発生に関するデータを蓄積した履歴データに基づいて、乗員のネガティブ感情の発生に関する特性を示す特性情報を算出する。処理部2は、車両の運転が終了した場合に、算出した特性情報に基づいて決定したメッセージを乗員に提示する処理を実行する。
【0151】
これによれば、車両の運転が終了した際に、乗員の特性に応じたメッセージが乗員に提示されるので、乗員のネガティブ感情の発生を抑制するための心理的なスキルの向上が期待できる、という利点がある。
【0152】
第12の態様に係る情報提示システム100Aでは、第11の態様において、処理部2は、算出した特性情報の履歴に基づいて過去特性情報を算出する。処理部2は、特性情報を算出した場合に、当該特性情報及び過去特性情報に基づいて乗員に提示するメッセージを決定する。
【0153】
これによれば、乗員の過去の特性に更に基づいてメッセージを決定するので、乗員のネガティブ感情の発生を抑制するための心理的なスキルの向上がより期待できる、という利点がある。
【0154】
第13の態様に係る情報提示システム100Bでは、第1~第12のいずれか1つの態様において、処理部2は、車両が置かれる将来の状況に関する将来状況情報を取得する。処理部2は、取得した将来状況情報及び過去特性情報に基づいて、乗員にネガティブ感情が発生する可能性があることを検知した場合に、メッセージを乗員に提示する処理を実行する。
【0155】
これによれば、乗員がネガティブ感情を抱く前にメッセージを乗員に提示するので、乗員のネガティブ感情の発生を未然に防ぎやすい、という利点がある。
【0156】
第14の態様に係る情報提示方法では、車両の乗員のネガティブ感情の発生を検知し、乗員のネガティブ感情の発生を検知した場合に、ネガティブ感情に応じた認知的変化における再評価を促進するメッセージを乗員に提示する処理を実行する。
【0157】
これによれば、乗員にメッセージを提示することにより、乗員がネガティブ感情を別の観点から捉えなおしやすくなるので、車両の乗員が抱くネガティブ感情を抑制しやすい、という利点がある。
【0158】
第15の態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、第13の態様に係る情報提示方法を実行させる。
【0159】
これによれば、乗員にメッセージを提示することにより、乗員がネガティブ感情を別の観点から捉えなおしやすくなるので、車両の乗員が抱くネガティブ感情を抑制しやすい、という利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本開示は、例えば車両等の移動体において、車両の運転を支援するためのシステムに利用可能である。
【符号の説明】
【0161】
100,100A,100B 情報提示システム
1 検知部
11 直接感情推定部
12 間接感情推定部
13 感情発生確認部
2 処理部
21 特定部
22 提示部
23 沈静化促進部
24 気晴らし促進部
25 特性情報算出部
26 発生可能性検知部
3 記憶部
31 履歴データベース
4 マイクロホン
5 スピーカ