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特開2025-29928ダストキャップ、振動板、および電気音響変換器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025029928
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】ダストキャップ、振動板、および電気音響変換器
(51)【国際特許分類】
   H04R 9/02 20060101AFI20250228BHJP
   H04R 7/02 20060101ALI20250228BHJP
   H04R 7/12 20060101ALN20250228BHJP
【FI】
H04R9/02 A
H04R7/02 Z
H04R7/12 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134824
(22)【出願日】2023-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】久世 光一
(72)【発明者】
【氏名】森本 博幸
【テーマコード(参考)】
5D012
5D016
【Fターム(参考)】
5D012BA09
5D012BB01
5D012BB02
5D012FA02
5D012GA01
5D016AA09
5D016BA02
(57)【要約】
【課題】共振周波数を分散させて、高域再生帯域を拡張する。
【解決手段】ダストキャップ160は、電気音響変換器が備える振動板100の中央部に配置されるダストキャップ160であって、振動方向に沿う所定の基準軸300を含む第一面によるダストキャップ160の第一断面形状と、基準軸300を含み第一面と交差する第二面によるダストキャップ160の第二断面形状が異なる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気音響変換器が備える振動板の中央部に配置されるダストキャップであって、
振動方向に沿う所定の基準軸を含む第一面による前記ダストキャップの第一断面形状と、前記基準軸を含み前記第一面と交差する第二面による前記ダストキャップの第二断面形状が異なる
ダストキャップ。
【請求項2】
前記第一断面形状は、三角形のいずれか2辺である
請求項1に記載のダストキャップ。
【請求項3】
前記第一断面形状は、二等辺三角形の二つの斜辺である
請求項2に記載のダストキャップ。
【請求項4】
前記第一断面形状から前記第二断面形状に至るまで形状が連続的に変化する
請求項1または2に記載のダストキャップ。
【請求項5】
前記基準軸と直交する直交面による直交断面形状は、曲線である
請求項1または2に記載のダストキャップ。
【請求項6】
前記ダストキャップは、
化学繊維、およびパルプの少なくとも一方を含む材料を抄紙することにより形成される請求項1または2に記載のダストキャップ。
【請求項7】
前記ダストキャップは、
射出成形された樹脂により形成される
請求項1または2に記載のダストキャップ。
【請求項8】
前記ダストキャップは、
シート、フィルム状の材料をプレス成形することにより形成される
請求項1または2に記載のダストキャップ。
【請求項9】
電気音響変換器に備えられる振動板であって、
前記振動板は、
振動方向に沿う所定の基準軸の周りを囲むネック部と、
前記ネック部の外側において前記基準軸の周りに並び、前記基準軸を含む面による断面形状が相互に異なる第一部分と、第二部分と、第三部分と、を少なくとも備え、
前記第一部分の断面形状は、
第一曲率半径の円弧であり、
前記第二部分の断面形状は、
前記第一曲率半径とは異なる第二曲率半径の円弧であり、
前記第三部分の断面形状は、
楕円の一部であり、
前記ネック部は、
前記基準軸を含むいずれの面による断面形状も同一の曲線であり、
請求項1または2に記載のダストキャップが中央部に配置される
振動板。
【請求項10】
請求項1または2に記載のダストキャップと、
振動板と、
磁気回路と、
前記磁気回路、および前記振動板を保持するフレームと、
前記振動板に連結され前記磁気回路が有する磁気ギャップに配置されるボイスコイルと、を備える電気音響変換器。
【請求項11】
前記振動板は、
振動方向に沿う所定の基準軸の周りに並び、前記基準軸を含む面による断面形状が相互に異なる第一部分と、第二部分と、第三部分と、を少なくとも備え、
前記第一部分の断面形状は、
第一曲率半径の円弧であり、
前記第二部分の断面形状は、
前記第一曲率半径とは異なる第二曲率半径の円弧であり、
前記第三部分の断面形状は、
楕円の一部である、
請求項10に記載の電気音響変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ダストキャップ、ダストキャップが配置される振動板、およびダストキャップが配置された振動板を備えた電気音響変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばコーン型の振動板の中央部分には、ドーム型のダストキャップが配置される場合がある。このような回転体であって、振動板の中心を通り振動板の振動方向に沿って延在する基準軸を含む面における断面形状が周方向に一様なダストキャップでは、単一共振となって、再生帯域が狭くなる。そこで、特許文献1-3には、基準軸を含む面における断面形状が周方向に一様ではないダストキャップが記載されている。このようなダストキャップを採用することにより単一共振を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/188370号
【特許文献2】特開平3-038998号公報
【特許文献3】特開2001-224095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ダストキャップの形状については改善を要する。
【0005】
本開示は、形状を改善ダストキャップ、形状が改善されたダストキャップが配置される振動板、および当該振動板を備えた電気音響変換器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つであるダストキャップは、電気音響変換器が備える振動板の中央部に配置されるダストキャップであって、振動方向に沿う所定の基準軸を含む第一面による前記ダストキャップの第一断面形状と、前記基準軸を含み前記第一面と交差する第二面による前記ダストキャップの第二断面形状が異なる。
【0007】
本開示の1つである振動板は、電気音響変換器に備えられる振動板であって、前記振動板は、振動方向に沿う所定の基準軸の周りを囲むネック部と、前記ネック部の外側において前記基準軸の周りに並び、前記基準軸を含む面による断面形状が相互に異なる第一部分と、第二部分と、第三部分と、を少なくとも備え、前記第一部分の断面形状は、第一曲率半径の円弧であり、前記第二部分の断面形状は、前記第一曲率半径とは異なる第二曲率半径の円弧であり、前記第三部分の断面形状は、楕円の一部であり、前記ネック部は、前記基準軸を含むいずれの面による断面形状も同一の曲線であり、前記基準軸を含む第一面によるダストキャップの第一断面形状と、前記基準軸を含み前記第一面と交差する第二面による前記ダストキャップの第二断面形状が異なるダストキャップが中央部に配置される。
【0008】
本開示の1つである電気音響変換器は、振動方向に沿う所定の基準軸を含む第一面によるダストキャップの第一断面形状と、前記基準軸を含み前記第一面と交差する第二面による前記ダストキャップの第二断面形状が異なるダストキャップと、振動板と、磁気回路と、前記磁気回路、および前記振動板を保持するフレームと、前記振動板に連結され前記磁気回路が有する磁気ギャップに配置されるボイスコイルと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ダストキャップによる単一共振を回避して、広い再生帯域が実現できる。また、比較的単純な形状とすることで指向特性の乱れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】エッジが取り付けられた状態の振動板を正面から示す平面図である。
図2図1中のA-A線で切断した振動板、およびエッジを示す断面図である。
図3図1中のB-B線で切断した振動板、およびエッジを示す断面図である。
図4】ダストキャップを正面から示す平面図である。
図5図4中のC-C線で切断したダストキャップを示す断面図である。
図6図4中のD-D線で切断したダストキャップを示す断面図である。
図7】振動板を備えた電気音響変換器の一つであるスピーカー装置の断面図である。
図8】従来形状の振動板を備えたスピーカー装置と本実施の形態のダストキャップが配置された振動板を備えたスピーカー装置との音圧周波数特性の違いを示す図である。
図9】振動板を備えたスピーカー装置が取り付けられた移動体の一つである自動車の断面図である。
図10】振動板を備えたスピーカー装置が取り付けられた電子機器の1つであるミニコンポシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係るダストキャップ、振動板、および電気音響変換器の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本開示を説明するために一例を挙示するものであり、本開示を限定する主旨ではない。例えば、以下の実施の形態において示される形状、構造、材料、構成要素、相対的位置関係、接続状態、数値、数式、方法における各段階の内容、各段階の順序などは、一例であり、以下に記載されていない内容を含む場合がある。また、平行、直交などの幾何学的な表現を用いる場合があるが、これらの表現は、数学的な厳密さを示すものではなく、実質的に許容される誤差、ずれなどが含まれる。また、同時、同一などの表現も、実質的に許容される範囲を含んでいる。
【0012】
また、図面は、本開示を説明するために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状、位置関係、および比率とは異なる。また、図中に示す場合があるX軸、Y軸、Z軸は、図の説明のために任意に設定した直交座標を示している。つまりZ軸は、鉛直方向に沿う軸とは限らず、X軸、Y軸は、水平面内に存在するとは限らない。
【0013】
また、以下では複数の発明を一つの実施の形態として包括的に説明する場合がある。また、以下に記載する内容の一部は、本開示に関する任意の構成要素として説明している。
【0014】
図1は、エッジ110が取り付けられた状態の振動板100を正面から示す平面図である。図2は、図1中のA-A線で切断した振動板100、およびエッジ110を示す断面図である。図3は、図1中のB-B線で切断した振動板100、およびエッジ110を示す断面図である。
【0015】
振動板100は、スピーカー装置、マイクロフォンなどの電気音響変換器に備えられる部材であって、自身が震動することによって空気を震わせて音を発生させる、または空気の振動に基づき自身が振動する部材である。振動板100は、第一部分111と、第二部分112と、第三部分113と、ネック部117を少なくとも備え、本実施の形態の場合、第四部分114も備えている。
【0016】
第一部分111、第二部分112、第三部分113、および第四部分114は、振動方向(図中Z軸方向)に沿う所定の基準軸300(図2図3参照)の周りに並んでいる。第一部分111、第二部分112、および第三部分113は、基準軸300を含む面(例えば図1中のA-A線断面、B-B線断面)による断面形状が相互に異なる部分である。第三部分113、および第四部分114は、基準軸300を含む面による断面形状が同じである。
【0017】
本実施の形態の場合、平面視、つまり基準軸300の方向から見た状態の振動板100の形状は、円形であり、第一部分111、第二部分112、第三部分113、および第四部分114の平面視における形状は、扇形で同一である。平面視における振動板100の直径は約100mmである。また、第一部分111、第二部分112、第三部分113、および第四部分114の平面視における面積も同一である。なお、第一部分111、第二部分112、第三部分113、および第四部分114のそれぞれの境界には接続部115(詳細は後述)が設けられているため、第一部分111、第二部分112、第三部分113、および第四部分114の平面視における形状は、完全な扇形ではない。
【0018】
第一部分111と第二部分112との間には第三部分113と第四部分114とが配置されている。第一部分111と第二部分112とは隣り合っていない。第三部分113と第四部分114は隣り合っていない。
【0019】
図2に示すように、第一部分111の基準軸300を含む断面の形状は、第一曲率半径R1の単一の円弧である。基準軸300を含むいずれの断面で第一部分111を切断しても断面形状は、相互に同一である。つまり、第一部分111は、基準軸300周りの回転体の一部である。
【0020】
第二部分112の基準軸300を含む断面の形状は、第二曲率半径R2の単一の円弧である。基準軸300を含むいずれの断面で第二部分112を切断しても断面形状は、相互に同一である。つまり、第二部分112は、基準軸300周りの回転体の一部である。本実施の形態の場合、第一曲率半径R1>第二曲率半径R2となっている。本実施の形態の場合、第一曲率半径R1>=第二曲率半径R2×1.5となっており、具体的には第一曲率半径R1=300mm、第二曲率半径R2=200mmである。
【0021】
図3に示すように、第三部分113、および第四部分114の断面形状は、楕円の一部である。本実施の形態の場合、第三部分113、および第四部分114の断面形状は、長軸、および短軸で楕円を切断した場合の4分の1の部分、または4分の1の部分のさらに一部である。基準軸300を含むいずれの断面で第三部分113、および第四部分114を切断しても断面形状は、相互に同一である。つまり、第三部分113、および第四部分114は、基準軸300周りの回転体の一部である。
【0022】
ネック部117は、第一部分111、第二部分112、および第三部分113の基準軸300側の端縁とそれぞれ接続される振動板100の部分である。本実施の形態の場合、ネック部117は、第四部分114、および接続部115の基準軸300側の端縁とそれぞれ接続されている。ネック部117は、ダストキャップ160(図7参照)が取り付けられる部分である。ネック部117は、基準軸300を含むいずれの面による断面形状も同一の曲線である。ネック部117は、基準軸300を中心軸とする回転体である。
【0023】
本実施の形態の場合、ネック部117の基準軸300を含む面の断面形状は円弧であり、第一部分111、第二部分112、第三部分113、第四部分114、および接続部115と滑らかに接続されている。ネック部117の曲率半径は、第一曲率半径R1、および第二曲率半径R2の大きい方の曲率半径の10分の1以下である。本実施の形態の場合、第一曲率半径R1、および第二曲率半径R2の小さい方の曲率半径の10分の1以下である。具体的にネック部117の曲率半径は、20mm以下である。
【0024】
接続部115は、断面形状が異なる振動板100の隣り合う部分を接続する部分であり、振動板100の一部を構成している。本実施の形態の場合、接続部115は、第一部分111と第三部分113との間、第三部分113と第二部分112との間、第二部分112と第四部分114との間、および第四部分114と第一部分111との間を滑らかに接続している。
【0025】
本実施の形態の場合、接続部115の第一部分111と第三部分113との境界線、接続部115の第三部分113と第二部分112との境界線、接続部115の第二部分112と第四部分114との境界線、および接続部115の第四部分114と第一部分111との境界線は、平面視において平行に配置されている。
【0026】
振動板100は、第一部分111、第二部分112、第三部分113、第四部分114、接続部115、およびネック部117が一体に形成されてなるものである。平面視において振動板100のネック部117の中心には、ボイスコイル131(図7参照)と接続される貫通孔116が設けられている。貫通孔116は、ネック部117に取り付けられるダストキャップ160により覆われる。
【0027】
平面視における振動板100の外周縁部118は、第二部分112、第三部分113、第四部分114、および接続部115と一体に接続されている。外周縁部118は、エッジ110と接続される部分である。外周縁部118のエッジ110と接続される面は、円錐台形状である。第三部分113(第四部分114も同様)に対応する外周縁部118の厚さは、第一部分111に対応する外周縁部118の厚さより厚い。各部分に対応する外周縁部118の厚さの違いは、エッジ110から遠ざかる方向に突出する厚さの違いに基づく。エッジ110に接続される外周縁部118の面を円錐台形状とすることによりエッジ110との強固な接続を確保し、外周縁部118の凹凸形状により各部分の断面形状の違いを吸収している。
【0028】
振動板100を構成する材料は、限定されるものではない。例えば、振動板100は、ポリエステル繊維などの化学繊維、およびパルプの少なくとも一方を抄紙することにより形成されてもよく、強化材が混練された樹脂を射出成形することにより形成されても構わない。また、振動板100は、シート、またはフィルム状の材料をプレス成形することにより形成されてもかまわない。
【0029】
図4は、ダストキャップ160を正面から示す平面図である。図5は、図4中のC-C線で切断したダストキャップ160を示す断面図である。図6は、図4中のD-D線で切断したダストキャップ160を示す断面図である。
【0030】
ダストキャップ160は、振動板100の中央部の前方(図中Z+側)に配置され、振動板100に設けられた貫通孔116を覆う膜状の部材である。本実施の形態の場合、平面視、つまり基準軸300の方向から見た状態のダストキャップ160の形状は、円形であり、前方に向かって膨出している。ダストキャップ160の頂点は、基準軸300の上にあり、基準軸300を含む面において面対称な形状となっている。ダストキャップ160を面対称な形状とすることにより指向周波数特性の不均一性を回避することが可能となる。
【0031】
ダストキャップ160は、振動板100に直接的、または間接的に接続される。本実施の形態の場合、ダストキャップ160は、接着剤等を用いてネック部117の前側面に直接的に接続されている。なお、ダストキャップ160は、振動板100に接続されるボビン132(詳細は後述)等に接続されることにより間接的に振動板100に接続されてもかまわない。
【0032】
ダストキャップ160は、振動方向(図中Z軸方向)に沿う所定の基準軸300を含む第一面によるダストキャップ160の第一断面形状と、基準軸300を含み第一面と交差する第二面によるダストキャップ160の第二断面形状が異なる。本実施の形態の場合、第一断面は、図中のYZ平面であり、第一断面形状は、三角形のいずれか2辺である。また、第一断面形状は、二等辺三角形の二つの斜辺である。第二断面は、第一断面と直行する図中のXZ平面であり、第二弾面形状は、曲線である。曲線は、限定されるものではないが、円弧、楕円の一部、双曲線、放物線などを例示することができる。ダストキャップ160は、第一断面形状から第二断面形状に至るまで形状が基準軸300を中心とする周方向に連続的に変化する。ダストキャップ160を基準軸300と直交する直交面(図中XY平面)による直交断面形状は、曲線であり、振動板100と接続する部分は円形である。
【0033】
ダストキャップ160を構成する材料は、限定されるものではない。また、振動板100と同じ材料でも異なる材料でもかまわない。例えばダストキャップ160は、ポリエステル繊維などの化学繊維、およびパルプの少なくとも一方を抄紙することにより形成されてもよく、強化材が混練された樹脂を射出成形することにより形成されても構わない。また、振動板100は、シート、またはフィルム状の材料をプレス成形することにより形成されてもかまわない。
【0034】
図7は、振動板100を備えた電気音響変換器の一つであるスピーカー装置120の断面図である。図7に示すように、スピーカー装置120は、振動板100と、磁気回路124と、磁気回路124、および振動板100を保持するフレームと、振動板100に連結され磁気回路124が有する磁気ギャップに配置されるボイスコイル131と、を備えている。
【0035】
本実施の形態の場合、スピーカー装置120が備える磁気回路124は、着磁されたマグネット121を上部プレート122およびヨーク123により挟み込んで形成される内磁型の磁気回路124である。
【0036】
磁気回路124のヨーク123は、フレーム126に結合されている。フレーム126の周縁部127には、振動板100の外周縁部118とフレーム126とを接続する環状のエッジ110が接着されている。振動板100の中心部は、ボイスコイル体129の一端と結合される。ボイスコイル体129の他端は、磁気回路124の磁気ギャップ125にはまり込むように配置されている。なお本実施の形態の場合、ボイスコイル体129として、ボイスコイル131とボイスコイル131が巻き付けられるボビン132とを備えたものを例示したが、ボビン132を備えないボイスコイル体129でもかまわない。
【0037】
なお、内磁型の磁気回路124を有するスピーカー装置120について説明したが、これに限定されず、外磁型の磁気回路124を有するスピーカー装置120に振動板100を適用してもよい。
【0038】
図8は、従来形状の振動板100を備えたスピーカー装置と本実施の形態のダストキャップ160が配置された振動板100を備えたスピーカー装置120との音圧周波数特性の違いを示す図である。図8に示すように、従来の振動板100を備えたスピーカー装置による音圧周波数特性には、例えば3kHz、4kHz近傍に顕著なピークディップが存在する。一方、実施の形態に係る振動板100を備えたスピーカー装置120によれば、効果的に共振分散を実現してピークディップを抑え、特に3kHz、4kHz近傍において平坦な音響特性を得ることができる。
【0039】
本実施の形態に係るスピーカー装置120によれば、振動板100の共振を効果的に分散させて、中高域の音圧周波数特性が平坦なスピーカーを得ることができる。また、スピーカーの高域限界周波数を拡張することができ、高忠実再生が可能で明瞭度の高い音質を実現することができる。
【0040】
なお、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本開示の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本開示の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本開示に含まれる。
【0041】
例えば、第一断面形状は、二本の直線で構成され、第二面形状は、曲線で構成されるダストキャップ160を説明したが、第一断面形状、および第二面形状は、傾きの異なる直線で構成されてもかまわない。また、第一断面形状、および第二面形状は、形状の異なる曲線で構成されてもかまわない。
【0042】
また、振動板100の第三部分113の断面形状と第四部分114の断面形状が同じ場合を実施の形態として説明したが、第三部分113の断面形状と第四部分114の断面形状は、異なっていても構わない。つまり第四部分114は、楕円の一部で無くとも良く、任意の形状を採用することができる。
【0043】
また、振動板100とフレームとの間に介在配置される環状のエッジ110は、振動板100の外周縁部の形状に沿った、つまり振動板100の各部分の断面形状の違いに従った形状の振動板100接続部を備えても構わない。
【0044】
また、ネック部117の断面形状を円弧として説明したが、ネック部117の断面形状は、楕円の一部、双曲線の一部などいかなる曲線でもかまわない。
【0045】
また、平面視において振動板100を、平面上90°間隔で四等分した場合を説明したが、各部分は等分でなくともよい。また、振動板100を断面形状が異なる三つの部分としてもよく、5以上の部分にしても構わない。
【0046】
また、ダストキャップ160が配置された振動板100を備えた電気音響変換器は、移動体に備えられてもよい。図9は、振動板100を備えたスピーカー装置120が取り付けられた移動体の一つである自動車140の断面図である。自動車140は、振動板100を備えたスピーカー装置120をリアトレイの他、フロントパネル、ピラー、ドアなどに備えている。スピーカー装置120は、カーナビゲーションやカーオーディオの一部として使用される。自動車140は、駆動手段141を備え、スピーカー装置120を収容する筐体として機能する車体142とともにスピーカー装置120を移動させる。
【0047】
また、ダストキャップ160が配置された振動板100を備えたスピーカー装置120は、図10に示すような電子機器に備えられても構わない。図10は、振動板100を備えたスピーカー装置120の別利用例を示す図である。振動板100を備えたスピーカー装置120を備える電子機器の一つとしてオーディオ用のミニコンポシステム150を例示し説明する。
【0048】
ミニコンポシステム150は、二つのエンクロジャー151にスピーカー装置120がそれぞれ二つ組込まれている。また、ミニコンポシステム150は、スピーカー装置120に入力する電気信号の増幅回路を含むアンプ152と、アンプ152に入力されるソースを出力するチューナー153や、CDプレーヤー154を備えている。オーディオ用のミニコンポシステムであるミニコンポシステム150は、チューナー153やCDプレーヤー154から入力される音楽信号などをアンプ152により増幅し、増幅された信号に基づきスピーカー装置120から音が放出される。なお、電子機器としては、ミニコンポシステム150の他、自動車用のオーディオシステムや持ち運び可能なポータブルオーディオ機器、液晶テレビや有機ELディスプレイテレビ等の映像機器、携帯電話等の情報通信機器、コンピュータ関連機器等を例示することができる。
【0049】
本開示の第一態様のダストキャップ160は、電気音響変換器が備える振動板100の中央部に配置されるダストキャップ160であって、振動方向に沿う所定の基準軸300を含む第一面によるダストキャップ160の第一断面形状と、基準軸300を含み第一面と交差する第二面によるダストキャップ160の第二断面形状が異なる。
【0050】
第一態様のダストキャップ160によれば、共振周波数を分散させることができ、高域再生帯域を拡張すること可能となる。
【0051】
第二態様のダストキャップ160は、第一態様を含み、第一断面形状は、三角形のいずれか2辺である。
【0052】
本開示の第三態様のダストキャップ160は、第二態様を含み、第一断面形状は、二等辺三角形の二つの斜辺である。
【0053】
第二態様、第三態様によれば、ダストキャップ160を容易に製造することが可能となる。
【0054】
第四態様のダストキャップ160は、第一態様から第三態様までのいずれかを含み、第一断面形状から第二断面形状に至るまで形状が連続的に変化する。
【0055】
第五態様のダストキャップ160は、第一態様から第四態様までのいずれかを含み、基準軸300と直交する直交面による直交断面形状は、曲線である。
【0056】
第四態様、第五態様によれば、ダストキャップ160に形状的に特異な部分が発生することを抑制し、音質を向上させることが可能となる。
【0057】
第六態様のダストキャップ160は、第一態様から第五態様までのいずれかを含み、化学繊維、およびパルプの少なくとも一方を含む材料を抄紙することにより形成される。
【0058】
第七態様のダストキャップ160は、第一態様から第五態様までのいずれかを含み、射出成形された樹脂により形成される。
【0059】
第八態様のダストキャップ160は、第一態様から第五態様までのいずれかを含み、シート、フィルム状の材料をプレス成形することにより形成される。
【0060】
第九態様の振動板100は、電気音響変換器に備えられる振動板100であって、振動板100は、振動方向に沿う所定の基準軸300の周りを囲むネック部117と、ネック部117の外側において基準軸300の周りに並び、基準軸300を含む面による断面形状が相互に異なる第一部分111と、第二部分112と、第三部分113と、を少なくとも備え、第一部分111の断面形状は、第一曲率半径の円弧であり、第二部分112の断面形状は、第一曲率半径とは異なる第二曲率半径の円弧であり、第三部分113の断面形状は、楕円の一部であり、ネック部117は、基準軸300を含むいずれの面による断面形状も同一の曲線であり、第一態様から第八態様までのいずれかのダストキャップ160が中央部に配置される。
【0061】
第十態様の電気音響変換器は、第一態様から第八態様までのいずれかのダストキャップ160と、振動板100と、磁気回路124と、磁気回路124、および振動板100を保持するフレーム126と、振動板100に連結され磁気回路124が有する磁気ギャップ125に配置されるボイスコイル131と、を備える。
【0062】
第十一態様の電気音響変換器は、第十態様を含み、振動板100は、振動方向に沿う所定の基準軸300の周りに並び、基準軸300を含む面による断面形状が相互に異なる第一部分111と、第二部分112と、第三部分113と、を少なくとも備え、第一部分111の断面形状は、第一曲率半径の円弧であり、第二部分112の断面形状は、第一曲率半径とは異なる第二曲率半径の円弧であり、第三部分113の断面形状は、楕円の一部である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示にかかるダストキャップ、振動板、および電気音響変換器によれば映像音響機器や情報通信機器等の電子機器、自動車等の移動体などに適用できる。
【符号の説明】
【0064】
100 振動板
110 エッジ
111 第一部分
112 第二部分
113 第三部分
114 第四部分
115 接続部
116 貫通孔
117 ネック部
118 外周縁部
120 スピーカー装置
121 マグネット
122 上部プレート
123 ヨーク
124 磁気回路
125 磁気ギャップ
126 フレーム
127 周縁部
129 ボイスコイル体
131 ボイスコイル
132 ボビン
140 自動車
141 駆動手段
142 車体
150 ミニコンポシステム
151 エンクロジャー
152 アンプ
153 チューナー
154 プレーヤー
160 ダストキャップ
300 基準軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10