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  • 特開-温熱マットレス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003001
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】温熱マットレス
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/00 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
A47C27/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103425
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】523201557
【氏名又は名称】田中 利奈
(74)【代理人】
【識別番号】100101823
【弁理士】
【氏名又は名称】大前 要
(74)【代理人】
【識別番号】100181412
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 康浩
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 利奈
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AB02
3B096AC14
(57)【要約】
【課題】衛生的に長期間使用可能で且つ加熱機能を備えた温熱マットレスを提供する。
【解決手段】発泡性材料からなり略直方体状のマットレス本体と、ヒーターと、を備える温熱マットレスにおいて、前記温熱マットレスの表面を覆うように設けられた、プラスチック製の抗菌抗ウイルス性被覆層をさらに備え、前記ヒーターは、前記温熱マットレスの最も面積が大きい表面の1つの近傍であって、前記マットレス本体と前記抗菌抗ウイルス性被覆層との間に設けられている、温熱マットレス。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性材料からなり略直方体状のマットレス本体と、ヒーターと、を備える温熱マットレスにおいて、
前記温熱マットレスの表面を覆うように設けられた、プラスチック製の抗菌抗ウイルス性被覆層をさらに備え、
前記ヒーターは、前記温熱マットレスの最も面積が大きい表面の1つの近傍であって、前記マットレス本体と前記抗菌抗ウイルス性被覆層との間に設けられている、温熱マットレス。
【請求項2】
前記マットレス本体の前記ヒーターが配される側の表面には、前記ヒーターを設置するための凹部が形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の温熱マットレス。
【請求項3】
前記ヒーターは、ヒーター線であり、
前記マットレス本体の前記ヒーターが配される側の表面には、前記ヒーター線を設置するための凹溝が形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の温熱マットレス。
【請求項4】
前記マットレス本体と同じ物質を用いた発泡性材料からなり、前記凹部の反対側または前記凹溝の反対側から前記ヒーターを覆うヒーター被覆層をさらに備え、
前記ヒーター被覆層には、表面側への熱伝導を促進する貫通孔が形成されている、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の温熱マットレス。
【請求項5】
前記マットレス本体を構成する発泡性材料に、ラジウムが含まれる、
ことを特徴とする請求項1に記載の温熱マットレス。
【請求項6】
前記抗菌抗ウイルス性被覆層と、前記マットレス本体を接着する接着剤を含んだ接着剤層をさらに備え、
前記接着剤層は、ラジウムを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の温熱マットレス。
【請求項7】
前記ヒーター被覆層を構成する発泡性材料に、ラジウムが含まれている、
ことを特徴とする請求項4に記載の温熱マットレス。
【請求項8】
前記マットレス本体の前記ヒーターが配される側の表面には、体圧分散用の多数の凸部が形成されており、
前記ヒーターは凸部以外の部分に設置されている、請求項1に記載の温熱マットレス。
【請求項9】
前記ヒーターと接する前記抗菌抗ウイルス性被覆層の表面には、微細な凹凸が形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の温熱マットレス。
【請求項10】
前記抗菌抗ウイルス性被覆層は、プラスチックフィルムにより形成されており、
前記微細な凹凸は、前記プラスチックフィルムのたわみにより形成されている、
ことを特徴とする請求項9に記載の温熱マットレス。
【請求項11】
前記プラスチックフィルムは、ポリカーボネート系ポリウレタンフィルムである、
ことを特徴とする請求項10に記載の温熱マットレス。
【請求項12】
前記マットレス本体は、天然ゴムの発泡体からなる、
ことを特徴とする請求項1,2,3,5、6,8,9,10又は11に記載の温熱マットレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体を加温するためのヒーターを有する温熱マットレスに関する。
【背景技術】
【0002】
ベッドなどに使用するマットレスは、病院や介護施設などでも広く使用されている。
【0003】
たとえば、人工透析を行う間、患者はベッドマットレスの上で過ごすことになる。人工透析では、患者の体内から血液が抜かれ、処理後の血液が体内に戻されるが、透析低血圧症を防止するために体内に戻される血液温度を体温より低くした場合には、冷えた血液によって体が芯から冷えてしまうという問題があった。このため、電気毛布を使用して外部から体を温めることが行われている。
【0004】
加温機能を有するベッドマットレスとしては、次のようなものが提案されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-23967
【特許文献2】特表2013-520223
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで介護や医療の現場では、不特定の患者が使用する物品は、使用の都度の消毒や洗濯が必要になるが、この作業は大変な重労働となる。したがってこのような現場では、消毒や洗濯を行わなくとも衛生的に使用可能な物品に対する要望が高まっている。
【0007】
本発明は、以上に鑑みなされたものであり、シーツやカバーを用いなくとも衛生的に使用可能で、しかもヒーターを有する温熱マットレスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、発泡性材料からなり略直方体状のマットレス本体と、ヒーターと、を備える温熱マットレスにおいて、前記温熱マットレスの表面を覆うように設けられた、プラスチック製の抗菌抗ウイルス性被覆層をさらに備え、前記ヒーターは、前記温熱マットレスの最も面積が大きい表面の1つの近傍であって、前記マットレス本体と前記抗菌抗ウイルス性被覆層との間に設けられている、温熱マットレスである。
【0009】
上記本発明では、温熱マットレスの表面には、プラスチック製の抗菌抗ウイルス性被覆層が覆うように設けられている。このため、温熱マットレス表面が細菌やウイルスによって汚染することがなく、洗濯が必要なカバー等を用いなくとも清潔に使用できる。
【0010】
また、汗、唾液、吐しゃ物、血等による汚れは、プラスチック製の抗菌抗ウイルス性被覆層によってマットレス本体内に浸透することが抑制される。このため、ふき取り等の簡単な処理によって簡単に温熱マットレスを清潔に保つことができる。
【0011】
さらに、直接温熱マットレスの表面(抗菌抗ウイルス性被覆層)を高圧水やスチームなどを用いて洗浄することもでき、これによりさらに衛生的で清潔に使用することができる。
【0012】
この抗菌抗ウイルス性被覆層は、原則的に温熱マットレスの全ての表面を覆うように設けられているものであるが、ヒーターに対する電源配線やコントローラなどの電気系部材が温熱マットレスに取り付けられる場合、これら電気系部材の表面は覆わないものとする。また、電気系部材の表面に配される部材の材料もまた、抗菌抗ウイルス性を有することが好ましい。
【0013】
また、マットレス本体は発泡性材料からなるため、適度な弾性が得られ快適に使用できる。また、発泡性材料は表面の空隙が小さく、マットレス本体の表面に被覆層を直接設けることが容易である。
【0014】
さらに、最も面積が大きい表面の近傍であって、マットレス本体と抗菌抗ウイルス性被覆層との間に、ヒーターが設けられている。したがって、この面上に人が乗って使用することにより、ヒーターの熱を無駄なく使用者に伝えることができる。
【0015】
マットレス本体は略直方体状であるため、マットレス本体には最も面積が大きい側面が2以上存在することになるが、ヒーターは1つの側面の近傍だけに形成されているものとし、他の側面には形成しないものとする。
【0016】
ここで略直方体状とは、空隙(空孔)を無視した発泡性材料の形状が、直方体又は直方体の角の少なくとも1つが面取り、角落とし等されたような形状を意味する。
【0017】
また、本発明でいう抗菌抗ウイルス性とは、抗菌製品技術協議会(SIAA)基準の抗菌性と抗ウイルス性と有するものを意味する。SIAA基準の防かび性をさらに有するものとすることが好ましい。
【0018】
また、プラスチックに抗菌性、抗ウイルス性を付与する方法は特に限定されず、たとえば市販の抗菌抗ウイルス加工がなされたプラスチックフィルムや塗膜材料を使用できる。
【0019】
また、プラスチックからなる被覆層は、内部への水分の浸透を阻止する防水性を備えていることが必須であり、長期使用時の損耗が小さく、アルコールや塩素系殺菌剤を用いたふき取りなどの薬品に対する耐久性、高温での殺菌処理に対する耐久性などを有することがより好ましい。
【0020】
また、被覆層は、プラスチックフィルムをマットレス本体表面に接着剤や熱溶着などによって貼り付けてもよく、マットレス本体表面上にプラスチック塗膜として形成してもよい。接着剤を使用する場合、接着剤層が既に形成されたプラスチックフィルムをマットレス本体表面上に貼り付けることが好ましい。
【0021】
プラスチックフィルムを用いる場合、1つのフィルムがマットレス本体の複数の表面を覆うように構成されていてもよく、1つのフィルムがマットレス本体の1つの表面を覆うように構成されていてもよい。フィルムを複数枚用いる場合には、その継ぎ目から水分が浸入しないようにする。このような方法としては特に限定されないが、一部を重ね合わせてフィルムを貼り合わせたり、コーキングや塗膜などにより隙間を充填したりすることができる。
【0022】
また、ヒーターとしては特に限定されることはなく、表面温度を体温付近の温度(約36~40℃)に調節する温度調整機構を備えるものを適宜使用することができる。なかでも、電気毛布などに使用されるヒーター線(コードヒーター)は、これらの機能を有する低額なヒーターであるとともに、マットレス上に乗った時の使用者の不快感を招きにくいため好ましい。このヒーター線は、シリコーンゴムなどによって絶縁防水被覆されているものであることが好ましい。
【0023】
また、ヒーターは、温熱マットレスの1つの面の全体に設けてもよく、1つの面の一部分に設けてもよい。たとえば、通常人体が乗る部分だけにヒーターを設ける、頭部が乗る部分にはヒーターを設けない、などとしてもよい。
【0024】
また、マットレス外部からヒーターへ供給する電気配線の態様は特に限定されず、温熱マットレスに水分が侵入しない方法及び材料を用いればよい。
【0025】
このヒーターは、マットレス本体の表面に設けた凹部に設置する構成とすることができる。また、ヒーター線は、マットレス本体の表面に設けた凹溝に設置する構成とすることができる。このような凹部ないし凹溝にヒーターを設置することにより、ヒーターの不要な移動を制限できるとともに、クッション性の低いヒーターによる不快感を低減することができる。
【0026】
また、この凹部ないし凹溝上にヒーター被覆層を設けることにより、クッション性の低いヒーターによる不快感をさらに低減することができる。このヒーター被覆層は、クッション性の大きな違いがない様に、マットレス本体と同じ物質を用いた発泡性材料からなるものとすることが好ましい。同じ物質を用いた発泡性材料とは、使用する物質が同じであることを意味するが、発泡倍率が同じである必要はない。ヒーター被覆層とマットレス本体とは、接着剤により接着されていてもよく、接着されていなくてもよい。
【0027】
また、ヒーター被覆層には、表面側への熱伝導を促進する貫通孔が形成されていることが好ましい。この貫通孔は、別途ドリルなどを用いて形成してもよいが、発泡を行う際に、空孔が連続するように発泡させることにより形成してもよい。貫通孔を形成すると、使用者の寝返りなどによる圧力分布の変動によって空気が貫通孔を移動し、これとともに熱が移動することになる。
【0028】
ところで、ラジウムはホルミシス効果によって免疫力、自然治癒力、抗酸化作用などを高めるので、これを温熱マットレスに含ませることにより、使用者の回復力などを高めることができる。ラジウムを温熱マットレスに含ませる方法としては、ラジウムを含ませた(練りこんだ)材料を用いて発泡性材料を作成する方法や、マットレス本体と抗菌抗ウイルス性被覆層とを接着する接着剤層にラジウムを含ませる方法などを採用できる。
【0029】
ラジウムの含ませ方は特に限定されることはなく、ラジウムを含んだ鉱石を粉末状や粒状にして、温熱マットレスに含ませることができる。その粒径は特に限定されることはなく、たとえば1μm~5mm程度と広範なサイズのものを使用できる。接着剤層に含ませる場合には、1μm~1mm程度とすることが好ましい。
【0030】
また、ラジウム量についても特に限定されることはなく、目的とする効果やコスト等を勘案して適宜設定すればよい。
【0031】
また、マットレス本体のヒーターが配される表面には、体圧分散用の多数の凸部が形成されている構成とすることができる。このようにすることで、人体の体圧が適度に分散されるとともに、温熱マットレスとの間に通気性が確保され、使用時に不快を生じることがない。マットレス本体の多数の凸部の形状は、その表面に設けられた抗菌抗ウイルス性被覆層の形状(温熱マットレスの外観)にも反映されて多数の凸状部が形成される。
【0032】
また、マットレス本体のヒーターが配される表面に形成された抗菌抗ウイルス性被覆層には、微細な凹凸が形成されている構成とすることができる。このようにすることで表面の肌触りが良くなり、シーツを用いなくとも快適に使用ができる。
【0033】
なお、マットレス本体に設けられた多数の凸部と、抗菌抗ウイルス性被覆層に設けられた微細な凹凸の双方を備える構成としてもよい。この場合、多数の凸部と微細な凹凸は、同じ面に形成されている構成とすることが好ましい。
【0034】
また、微細な凹凸の形状としては特に限定されない。例えば、ランダムな粗面、規則的な粗面、これらを組み合わせた構成などを採用できる。凸や凹の形状も特に限定されず、直線や曲線などの線状、点状、不定形状などとすることができる。
【0035】
また、微細な凹凸の形成方法としては特に限定されない。例えば、溝や穴を掘る、サンドブラストなどにより表面に凹凸を形成したマットレス本体表面上にプラスチック塗膜を形成する方法、凹凸を形成したマットレス本体表面上に、加熱によって可塑性を高めたプラスチックフィルムを貼り付ける方法、微細な凹凸が既に設けられたプラスチックフィルムをマットレス本体表面に貼り付ける方法などを採用できる。また、発泡性材料からなるマットレス本体は引張って伸ばした状態、プラスチックフィルムは引張らず伸びていない状態で両者を貼り合わせ、マットレス本体の収縮により、プラスチックフィルムをたわませて凹凸を形成する方法を採用すると、簡便に凹凸を形成できるので好ましい。この際の引張りは、1方向であってもよく2方向であってもよいが、1方向のほうが加工しやすいため好ましい。また、引張り方向は、温熱マットレスの長手方向と平行であることが好ましい。
【0036】
また、引張り量は、面積換算で2~10%であることが好ましく、3~8%であることがより好ましく、4~6%であることがさらに好ましい。引張り方向が1方向の場合、引張り方向に略垂直な皴状の凹凸が形成され、引張り方向が2方向の場合、ランダムな方向の凹凸が形成される。
【0037】
このようにして微細な凹凸が形成された面は、その実面積と見かけ面積との比(実面積/見かけ面積)が、1.02~1.10となる。またたわみは、発泡性材料が吸収するように作用して、マットレス本体側に凸の(表面側からは凹んだ)形状の皴となる。
【0038】
また、微細な凹凸が形成された面のISO25178に準拠した最大高さSzは、0.5~20mmであることが好ましく、0.8~18mmであることがより好ましく、1~15mmであることがさらに好ましい。ISO25178に準拠した平均高さSaは0.3~15mmであることが好ましく、0.5~10mmであることがより好ましく、0.6~8mmであることがさらに好ましい。
【0039】
また、マットレス本体に形成する多数の凸部は、公知の体圧分散用の多数の凸部を採用すればよく、凸部の形状、大きさ、密度、配列などは特に限定されない。多数の凸部の形成方法も、公知の加工方法を採用すればよく、たとえば多数の凸部が形成されている型内部で発泡させる、切削などにより余分な部分を取り去る、などの方法が採用できる。例えば、回転楕円体の半分の形状の凸部が多数整列形成された形状、頂点が丸められたり面取りされたりした円錐状、楕円錘状や多角錐状の凸部が多数整列形成された形状などとすることができる。
【0040】
多数の凸部は、サイズの等しい凸部が規則的に配置されたものであってもよく、サイズの異なる凸部がランダムに配置されたものであってもよく、場所(対応する体の部位)によってサイズや配置が異なるようになっているものでもよい。
【0041】
また、一つの凸部の高さはそれぞれ、5~60mmであることが好ましく、12~55mmであることがより好ましく、20~50mmであることがさらに好ましい。
【0042】
また、一つの凸部の大きさは、凸部の高さの50~1000%であることが好ましく、70~800%であることがより好ましく、80~600%であることがさらに好ましい。なお凸部の大きさは、凸部の外周を囲う輪郭線の直径の長さを意味する。
【0043】
また、ヒーターは、凸部以外の部分に配されるが、ヒーターの位置が固定されずに動きやすい場合には、ヒーター設置用の凹部や凹溝を設ける構成とすることが好ましい。この場合、ヒーター被覆層は設けてもよく、設けなくてもよい。
【0044】
プラスチックの材料としては、適度な柔軟性を有し、フィルム形成や塗膜形成が可能な材料で、防水性を有していれば特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタンなどの材料からなるフィルムを適宜選択して使用できる。中でも、耐摩耗性や耐薬品性にも優れる材料を用いることが好ましく、たとえばポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンなどを用いることが好ましく、ポリオール成分としてポリカーボネートジ(ポリ)オールを用いたポリウレタン(ポリカーボネート系ポリウレタン)がさらに好ましい。
【0045】
被覆層には、抗菌抗ウイルス加工用の薬剤成分が含まれているほかに、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤、顔料、抗カビ剤、耐光剤、可塑化剤、粘着付与剤、分散剤、消泡剤、硬化触媒、硬化剤、レベリング剤、撥水剤、カップリング剤、フィラー、加硫剤、加硫促進剤などの公知の添加剤が1種または複数種、合目的的に含まれていてもよい。
【0046】
また、被覆層の厚みは、厚すぎるとコスト高になり、薄すぎると摩耗によって消耗しやすい。このため、15~100μmとすることが好ましく、17~80μmとすることがより好ましく、20~50μmとすることがさらに好ましい。
【0047】
マットレス本体としては、公知の発泡性材料を用いることができ、たとえば発泡ポリウレタン(ウレタンフォーム)、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレンテレフタレートなどの発泡プラスチックや、天然ゴムの発泡体などを使用できる。中でも天然ゴムの発泡体を用いると、適度な圧縮反発性が得られるとともに、植物性製品であるために環境にやさしいという利点がある。
【0048】
また、マットレス本体の厚みは特に限定されず、その用途に合わせて適宜選択すればよい。また、発泡性材料の発泡倍率(発泡後体積/発泡前体積)は、使用する材料や使用用途で求められる弾性などに応じて適宜設定すればよい。
【発明の効果】
【0049】
本発明によると、カバー等を使用することなく衛生的に使用可能な温熱マットレスを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】実施の形態1にかかる温熱マットレスの外観を示す図である。
図2図2(a)は図1のA部分の拡大図であり、図2(b)は図2(a)のB-B’線矢視切断部端面図である。
図3図3は温熱マットレスのヒーター線の配置例を模式的に示す図である。
図4】実施の形態2にかかる温熱マットレスのマットレス本体の構造を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
(実施の形態1)
以下本発明を、図面を参照して説明する。図1は本発明にかかる温熱マットレスの外観を示す図であり、図2(a)は図1のA部分の拡大図であり、図2(b)は図2(a)のB-B’線矢視切断部端面図であり、図3は温熱マットレスのヒーター線の配置例を模式的に示す図である。
【0052】
図1,2に示すように、本発明にかかる温熱マットレス100は、発泡ポリウレタン(ウレタンフォーム)からなるマットレス本体10と、マットレス本体10の表面に接して形成された、プラスチック製の抗菌抗ウイルス性被覆層20と、を備えている。
【0053】
図2に示すように、マットレス本体10の最も面積が大きい表面には、凹溝40が形成され、この凹溝40内部にヒーター線(コードヒーター)30が配されている。また、このヒーター線30上には、凹溝40を埋めるようにヒーター被覆層50が形成されている。そして、抗菌抗ウイルス性被覆層20は、マットレス本体10およびヒーター被覆層50を覆うように形成されている。すなわち、マットレス本体10、ヒーター線30、ヒーター被覆層50、抗菌抗ウイルス性被覆層20の順で積層されている。
【0054】
図3に示すように、ヒーター線30は、マットレス本体10上に均等に配されており、コントローラ70及び電源プラグ80に接続されて、電源を得て駆動可能となっている。このコントローラ70や電源プラグ80は、公知のものを用いればよい。また、コントローラは、温熱マットレスの側面に配される構成であってもよい。なお、図3では説明の便宜上、ヒーター被覆層50や凹溝40を省略して描いている。
【0055】
また、ヒーター線が設けられているマットレス本体10の面上の抗菌抗ウイルス性被覆層20には、マットレス本体10側に凹んだ皴状の微細な多数の凸状部21が多数形成されている。
【0056】
ここで、温熱マットレス100の全ての表面に、プラスチック製の抗菌抗ウイルス性被覆層20が形成されているため、温熱マットレス100の表面がウイルスによって汚染することがなく、清潔に使用できる。
【0057】
また、汗、唾液、吐しゃ物等による汚れは、プラスチック製の抗菌抗ウイルス性被覆層20によってマットレス本体10内部に浸透することが確実に防止されるので、表面のふき取り等の処理によって簡単に衛生状態を保つことができる。
【0058】
さらに、抗菌抗ウイルス性被覆層20の人体が触れる側の面の近傍には、ヒーター線30が備えられているため、人体が適度に温められて、低温透析の際にも体が冷えすぎることがない。さらに抗菌抗ウイルス性被覆層20の人体が触れる側の面には、微細な凹凸が形成されているため、人体と温熱マットレスとの間に通気性が確保され、使用時に不快を生じることがない。
【0059】
ここで、被覆層を構成するプラスチックに抗菌抗ウイルス性を付与する方法は特に限定されず、市販の抗菌抗ウイルス加工がなされたプラスチックを使用すればよい。
【0060】
また、被覆層を構成するプラスチックは、内部への水の浸透を阻止する防水性を備えていることが必須であり、長期使用時の損耗が小さく、アルコールや次亜塩素酸水などの消毒洗浄用の薬品に対する耐性を有することが好ましい。
【0061】
また、本実施の形態では、微細な凹凸の形成方法としては、マットレス本体は長手方向に引張って伸ばした状態、プラスチックフィルムは引張らず伸びていない状態で両者を貼り合わせ、マットレス本体の収縮により、プラスチックフィルムをたわませる方法を採用した。また、プラスチックフィルムには、接着剤層が形成されているものを用い、この接着剤層にラジウム鉱石の粉末を振りかけてから使用した。
【0062】
(実施の形態2)
図4は実施の形態2にかかる温熱マットレスのマットレス本体の構造を模式的に示す図である。
【0063】
図4に示すように、本発明にかかる温熱マットレスのマットレス本体10は、天然ゴムの発泡体からなる。このマットレス本体10は、図4に示すように、体圧分散用の多数の凸部11が縦方向及び横方向に整列配置されている。同図では便宜上、横3列縦5列分の凸部が存在するマットレス本体10の一部分を示しているが、実際にはマットレス本体10の幅と長さに応じて適切な数の凸部11が配置される。
【0064】
また、図4に図示していないが、実施の形態1と同様に、マットレス本体は抗菌抗ウイルス性被覆層に覆われており、マットレス本体の多数の凸部の間の谷間には、ヒーター線が配されている。この表面に形成された抗菌抗ウイルス性被覆層は、この多数の凸部に追随するように多数の凸状部となる。
【0065】
本実施の形態においても、上記実施の形態1と同様に、高い衛生性と温熱効果とが確保されている。
【0066】
さらに、体圧分散用の多数の凸部11が形成されているため、上に乗って使用するときには体圧が適度に分散されるとともに、人体と温熱マットレスとの間に通気性が確保され、使用時に不快を生じることがない。
【0067】
ここで多数の凸部の形状や形成方法などは特に限定されることはなく、公知の形状、製法を採用できる。
【0068】
また、凸部の間の領域にヒーター線を配置することで、凹溝を設けなくとも使用者に対する不快感を低減できる。
【0069】
この実施の形態では、天然ゴムの発泡体を得る際に、ゴム材料にラジウム鉱石の粒子を混ぜ込んだ後に発泡処理を行った。
【0070】
(実施例1)
市販の天然ゴムの発泡体からなるマットレス本体(1800×900×80mm)を作製した。この時、最も面積が大きい表面の一つには、幅10mm、深さ10mmの凹溝を約10cmの間隔で形成した。この凹溝の上に、直径が約2.5mmのヒーター線を配置し、この上から天然ゴムの発泡体からなるヒーター被覆層(幅10mm、厚み7.5mm)を載置した。こののち、全ての表面を抗菌抗ウイルス剤加工が施され、一方面に接着剤層が形成された、市販のポリカーボネート系ポリウレタンフィルム(ポリウレタン層の厚み40μm)を貼り付けた。このとき、ヒーター線が配置された面に貼り付ける際には、天然ゴムの発泡体を長手方向に5%伸ばした状態(面積が5%伸びた状態)とし、反対側面よりも5%長手方向長さが長いフィルム(長さが1890mmサイズのもの)を貼り付けた。
【0071】
引っ張り力を外した後には、当該フィルムには長手方向に略垂直な方向に延びる皴状の凹凸が多数形成された。これらの作業により、ポリウレタンフィルムによる抗菌抗ウイルス性被覆層が、天然ゴムの発泡体からなるマットレス本体に形成された、実施例1にかかる温熱マットレスが得られた。この皴状の凹凸は、最も深い部分で1.5mmであり、間隔は最小で2mm、最大で10mmであった。
【0072】
(実施例2)
最も面積が大きい側面のうちの1つに多数の凸部が形成された型内(1800×900×80mm)で、ウレタンフォームを形成して、マットレス本体を作製した。この多数の凸部は、頂点が平面となった四角錐状の多数の凸部が規則的に整列形成されており、凸部の高さが40mm、幅30mm、奥行30mmである。このマットレス本体の凸部形成面上に、ヒーター線をその凸部と凸部の間の隙間部分(谷間部分)に沿わせるように配置した。このマットレス本体の全ての表面に、接着剤層が形成されたポリカーボネート系ポリウレタンフィルム(実施例1と同じもの)を貼り付けて、実施例2にかかる温熱マットレスを作製した。
【0073】
このとき、多数の凸部が形成された面に貼り付ける際には、この上に接着剤層が接するようにポリカーボネート系ポリウレタンフィルムを乗せ、接着剤層と反対側に設けられた離型層の上からアイロンで80~100℃になるように加熱した後、当該離型層を剥離し、凹部に対してはポリウレタンフィルムを手でマットレス本体側に押さえて圧着させることで、多数の凸部に上にたわみがない様にポリウレタンフィルムを貼り付けた。これにより、このポリウレタンフィルムは、この多数の凸部に追随するような多数の凸状部を有する形状となった。
【0074】
これら実施例1,2にかかる温熱マットレスの凹凸のある抗菌抗ウイルス性被覆層の表面を、70%エチルアルコール溶液を含ませたウエットティッシュで100回、その後市販の塩素系殺菌剤(次亜塩素酸ナトリウム含有、有効塩素濃度200ppm)を含んだ雑巾で100回ふき取りを行った。ふき取り前後の被覆層表面を目視で観察したところ、被覆層に損耗は認められず、高い薬品耐久性があることが確認された。
【0075】
また、実施例1,2にかかるヒーターを駆動したところ、凹凸のある抗菌抗ウイルス性被覆層の温度を約37度に維持できた。
【0076】
本発明にかかる温熱マットレスは、医療や介護の現場で使用するのに好適である他、家庭内でも好適に使用できる。
【0077】
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、温熱マットレスは、カバー無しでも十分に衛生的に使用可能というものであって、この上にカバー等をつけて使用することを排除しているものではない。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係る温熱マットレスは、カバー等を用いることなく高い衛生性を保つことができ、その産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0079】
100 温熱マットレス
10 マットレス本体
11 多数の凸部
20 抗菌抗ウイルス性被覆層
21 微細な凹凸
30 ヒーター線
40 凹溝
50 ヒーター被覆層
70 コントローラ
80 電源プラグ
図1
図2
図3
図4