(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025030036
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F15B 15/12 20060101AFI20250228BHJP
【FI】
F15B15/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134990
(22)【出願日】2023-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】部矢 明
(72)【発明者】
【氏名】大竹 陸郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 剛志
(72)【発明者】
【氏名】仲田 佳弘
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA29
3H081BB01
3H081CC23
3H081CC29
3H081DD04
3H081DD32
3H081EE20
3H081EE28
3H081HH04
(57)【要約】
【課題】流体を作動媒体として回転運動を生成するアクチュエータの有用性を向上させる技術を提供する。
【解決手段】アクチュエータ100は、筐体110と、筐体110に収納される可動子120と、筐体110と可動子120との間に形成される空間160を周方向に並ぶ複数の圧力室162に区画する、可動子120の回転運動に対して受動的に運動可能な少なくとも1つの可動隔壁130と、を備える。複数の圧力室162の圧力を調整することによって可動子120を多自由度回転させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に収納される可動子と、
前記可動子の回転運動に対して受動的に運動可能な少なくとも1つの可動隔壁と、
を備え、
前記少なくとも1つの可動隔壁は、前記筐体と前記可動子との間に形成される空間を周方向に並ぶ複数の圧力室に区画し、
前記複数の圧力室の圧力を調整することによって前記可動子を多自由度回転させるアクチュエータ。
【請求項2】
前記筐体は、内壁が凹球面状の凹部を有し、
前記可動子は、円板状であり、前記凹部に収容され、
前記少なくとも1つの可動隔壁はそれぞれ、前記凹部の前記内壁に接する円弧状の外周面を有する請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの可動隔壁を前記可動子に向けて付勢する付勢部材を備える請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記少なくとも1つの可動隔壁の前記可動子と接触する端面は、前記可動子が当該可動隔壁に対して傾動可能に構成される請求項3に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記可動子は、前記凹部の前記内壁の中心に配置された球面軸受によって回転中心が拘束される請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記複数の圧力室の圧力を調整する圧力コントローラを備える請求項1から5のいずれかに記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
流体を作動媒体として回転運動を生成するアクチュエータが知られている。この種のアクチュエータは、一般に、高出力が得られる。特許文献1は、この種のアクチュエータの一種であるベーンポンプおよびベーンモータを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の種のアクチュエータは、ロボットや工作機械などの種々の装置への搭載が進む中で、さらなる有用性の向上が求められている。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みてなされ、そのある態様の例示的な目的の1つは、流体を作動媒体として回転運動を生成するアクチュエータの有用性を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のアクチュエータは、筐体と、筐体に収納される可動子と、可動子の回転運動に対して受動的に運動可能な少なくとも1つの可動隔壁と、を備える。少なくとも1つの可動隔壁は、筐体と可動子との間に形成される空間を周方向に並ぶ複数の圧力室に区画し、複数の圧力室の圧力を調整することによって可動子を多自由度回転させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、流体を作動媒体として回転運動を生成するアクチュエータの有用性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係るアクチュエータを示す斜視図である。
【
図2】
図1のアクチュエータ本体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、実施の形態に至った経緯を説明する。流体を作動媒体として回転を生成する例えばベーンポンプやベーンモータなどの従来のアクチュエータは、1自由度の回転運動のみを生成する。したがって、当該アクチュエータが組み込まれる装置が多自由度の回転を必要とする場合、必要とされる自由度と同数のアクチュエータが必要になる。これは、アクチュエータが組み込まれる装置の小型化、軽量化の足かせとなる。本実施の形態は、このような知見に基づいてなされたものである。
【0010】
図1、2を参照する。
図1、2では、アクチュエータ本体102の構造を説明するために、筐体本体112および可動子120は透明に描かれているが、透明である必要はなく、半透明や不透明であってもよい。
図2では、第1隔離部材114_1および支持軸116の表示を省略している。実施の形態に係る流体圧回転アクチュエータ(以下、単に「アクチュエータ」という)100は、多自由度の回転運動を生成可能なアクチュエータであり、ロボットや工作機械をはじめとする様々な装置に利用できる。以下では、アクチュエータ100の作動流体は空気であるものとする。つまりアクチュエータ100は空圧アクチュエータであるものとする。ただし、実施の形態の技術思想は、矛盾しないかぎりにおいて、作動流体が空気以外の気体である気体圧アクチュエータや、作動流体が液体である液体圧アクチュエータにも適用できる。
【0011】
アクチュエータ100は、アクチュエータ本体102と、圧力コントローラ104と、を備える。アクチュエータ本体102は、筐体110と、可動子120と、3つの可動隔壁130_1~130_3(以下、特に区別しない場合やまとめていう場合は「可動隔壁130」という)と、ロッド150と、を備える。
【0012】
説明の便宜上、水平なある方向をX軸と、X軸に直交する水平な方向をY軸、両者に直交する鉛直方向をZ軸とするXYZ直交座表系を考える。Z軸方向を上下方向ということがある。
図1~2の状態において、第1可動隔壁130_1の端面130cの延在方向はX軸方向と一致し、可動子120はXY平面に平行であり、ロッド150の延在方向はZ軸方向と一致する。このような方向の表記はアクチュエータ本体102の姿勢を制限するものではなく、アクチュエータ本体102は任意の姿勢で使用されうる。
【0013】
筐体110は、筐体本体112と、3つの隔離部材114_1~114_3(以下、特に区別しない場合やまとめていう場合は「隔離部材114」という)と、を備える。
【0014】
筐体本体112は、内壁が凹球面状の凹部112aを有する部材である。アクチュエータ本体102が装置に組み込まれる場合、筐体本体112が装置に支持される。筐体本体112の凹部112aは、可動子120を収容する。なお、凹部112aの内壁は、可動子120が摺動する部分および3つの可動隔壁130が摺動する部分のみが凹球面状であってもよい。
【0015】
筐体本体112の外観形状は、略球状である。つまり、筐体本体112は、一部分に円形状の穴112bが設けられた球殻(すなわち中空の球体)である。ただし、筐体本体112の外観形状は特に限定されない。例えば筐体本体112の外観形状は、立方体やその他の形状であってもよい。穴112bは、円形状以外であってもよく、例えば多角形状であってもよい。穴112bの大きさは、ロッド150に干渉しなければ、特に限定されない。
【0016】
筐体本体112の材料は特に限定されない。例えば筐体本体112は、金属または樹脂によって形成されてもよい。筐体本体112は、複数の部材を接合したものであってもよい。例えば筐体本体112は、2つの略半球殻の部材を接合したものであってもよい。この場合、接合部にOリングなどのシール部材を配置して、接合部からの作動流体の漏れを抑止してもよい。
【0017】
3つの隔離部材114は、凹部112aの底面に設けられる。3つの隔離部材114は、筐体本体112とは別体として形成された上で筐体本体112に固定されてもよいし、筐体本体112と一体に成形されてもよい。3つの隔離部材114は、本実施の形態では、互いに同一の形状を有する。3つの隔離部材114の材料は特に限定されない。例えば3つの隔離部材114は、金属または樹脂によって形成されてもよい。
【0018】
第1隔離部材114_1は、第1可動隔壁130_1と第2可動隔壁130_2との隙間を塞ぐ部材である。第2隔離部材114_2は、第2可動隔壁130_2と第3可動隔壁130_3との隙間を塞ぐ部材である。第3隔離部材114_3は、第3可動隔壁130_3と第1可動隔壁130_1との隙間を塞ぐ部材である。
【0019】
可動子120は、筐体本体112の凹部112aに収容される。可動子120は円板状の部材である。可動子120は、その中心が凹部112aの凹球面の中心に位置するように凹部112aに配置され、当該中心に配置された球面軸受118によって傾動可能に支持される。つまり、可動子120は、球面軸受118によって回転中心が拘束される。
【0020】
可動子120の材料は特に限定されない。例えば可動子120は、金属または樹脂によって形成されてもよい。
【0021】
可動子120は、凹部112aの凹球面の内径と同一の外径を有する。したがって、可動子120の外周面120aは、全周にわたって凹部112aの内壁と接している。可動子120の外周面120aにはゴムなどの弾性部材が貼り付けられてもよい。この場合、可動子120と筐体本体112との間からの作動流体の漏れが抑止される。
【0022】
球面軸受118は、外輪118aと図示しない内輪とが球面接触する滑り軸受である。外輪118aは、可動子120に固定される。内輪は、支持軸116ひいては筐体本体112に対して固定される。
【0023】
ロッド150は、可動子120の回転運動を外部に出力する部材である。ロッド150は、一端が球面軸受118を介して可動子120に固定され、円板状の可動子120に対して垂直に延在し、他端は筐体本体112の外に突出する。
【0024】
3つの可動隔壁130は、可動子120と筐体本体112との間の空間160に収容される。第1可動隔壁130_1、第2可動隔壁130_2、第3可動隔壁130_3は、空間160においてこの順に周方向に並ぶ。3つの可動隔壁130は、空間160を、周方向に並ぶ3つの圧力室162に区画する。3つの可動隔壁130は、本実施の形態では、周方向に等間隔に、すなわち120°間隔に配置される。
【0025】
詳しくは、筐体本体112、第1隔離部材114_1、可動子120、第1可動隔壁130_1および第2可動隔壁130_2により、第1圧力室162_1が画成される。筐体本体112、第2隔離部材114_2、可動子120、第2可動隔壁130_2および第3可動隔壁130_3により、第2圧力室162_2が画成される。筐体本体112、第3隔離部材114_3、可動子120、第3可動隔壁130_3および第1可動隔壁130_1により、第3圧力室162_3が画成される。
【0026】
3つの可動隔壁130は、その限りでないが、中心が凹部112aの凹球面の中心と一致する扇形の中心部を切り欠いた板状部材である。可動隔壁130の外周面130aは、円弧状であり、筐体本体112の凹部112aの内壁に摺接する。可動隔壁130の外周面130aには、ゴムや磁性体などのシール部材が貼り付けられてもよい。あるいは、可動隔壁130の外周面130aが摺接する筐体本体112の凹部112aの内壁の部分に、ゴムなどのシール部材が貼り付けられてもよい。これらの場合、可動隔壁130の外周面130aと筐体本体112の凹部112aの内壁との間からの作動流体の漏れを抑止できる。
【0027】
可動隔壁130の内周面130bは、円弧状であり、例えば球面軸受118に摺接する。可動隔壁130の内周面130bには、ゴムなどのシール部材が貼り付けられてもよい。あるいは、可動隔壁130の内周面130bが摺接する球面軸受118の外周面の部分に、ゴムなどのシール部材が貼り付けられてもよい。これらの場合、可動隔壁130内周面130bと球面軸受118との間からの作動流体の漏れを抑止できる。
【0028】
外周面130aおよび内周面130bに接続する2つの端面130c,130dは直線状に形成される。ただし、端面130dは、直線状でなくてもよい。
【0029】
圧力コントローラ104は、3つの圧力室162における作動流体の圧力を独立に制御する。例えば、圧力コントローラ104は、ポンプやコンプレッサと、圧力制御弁とを備えてもよい。作動流体は、空気などの気体であってもよいし、
【0030】
図1~3を参照する。アクチュエータ本体102は、3つの付勢部材140(
図3では2つの付勢部材140のみが表示されている)をさらに備える。可動隔壁130は、対応する付勢部材140によって可動子120に向けて付勢される。これにより、可動隔壁130は、2つの端面130c,130dのうちの一方の端面130cが可動子120の下面120bに接触する。また、可動隔壁130は付勢部材140によって可動子120に向けて付勢されているため、可動子120がX軸まわりおよび/またはY軸まわりに回転(傾動)すると、それに伴って可動隔壁130は、その扇形における角度方向(
図1、2の矢印方向)に移動する。すなわち可動隔壁130は、可動子120のX軸まわりおよび/またはY軸まわりの運動に対して受動的に運動可能である。可動隔壁130は、特に、付勢部材140によって可動子120に向けて付勢されていることにより、可動子120がX軸まわりおよび/またはY軸まわりに回転したときにも、端面130cが可動子120の下面120bに接触した状態を維持する。これにより、可動隔壁130と可動子120との間からの作動流体の漏れを抑止できる。
【0031】
付勢部材140は、機械的バネ、空圧バネおよび磁気バネなどの弾性部材であってもよい。つまり、可動隔壁130は弾性部材によって弾性支持されてもよい。なお、
図3の例では、付勢部材140はコイルバネ(すなわち機械的バネ)であり、一端が支持軸116に固定され、他端は可動隔壁130の端面130dに固定される。
【0032】
可動隔壁130は上述のように可動子120の回転(傾動)に伴って移動するが、可動隔壁130が移動した場合にも隔離部材114によって可動隔壁130同士の隙間が塞がれた状態が維持されるように、隔離部材114と可動隔壁130とはオーバーラップしている。別の言い方をすると、第1可動隔壁130_1は、第1隔離部材114_1と第3隔離部材114_3との隙間(図示せず)を移動し、第1可動隔壁130_1の端面130dは常にその隙間に位置する。第2可動隔壁130_2は、第2隔離部材114_2と第3隔離部材114_3との隙間170を移動し、第2可動隔壁130_2の端面130dは常にその隙間170に位置する。第3可動隔壁130_3は、第3隔離部材114_3と第1隔離部材114_1との隙間172を移動し、第3可動隔壁130_3の端面130dは常にその隙間172に位置する。
【0033】
可動隔壁130の端面130cは、可動子120が可動隔壁130に対して傾動可能に構成される。詳しくは端面130cは、凸形状を有し、可動子120の下面120bと線接触する。例えば端面130cは、逆U字状の断面形状を有してもよいし、逆V字状の断面形状を有してもよい。端面130cが凸形状を有することにより、可動子120は可動隔壁130に対して傾動できる。
【0034】
可動隔壁130の端面130cは、ゴムなどの弾性部材で構成されてもよい。例えば、可動隔壁130の本体に端面130cを構成する弾性部材が貼り付けられてもよい。端面130cが弾性部材で構成される場合、端面130cの形状によらずに、可動子120は可動隔壁130に対して傾動できる。
【0035】
以上がアクチュエータ100の基本構成である。続いて、アクチュエータ100の動作原理を説明する。
【0036】
例えば第1圧力室162_1を加圧するとともに第2圧力室162_2および第3圧力室162_3を減圧すると、3つの圧力室162の圧力差により、可動子120はY軸まわりに回転する。一方、第1圧力室162_1を減圧するとともに第2圧力室162_2および第3圧力室162_3を加圧すると、可動子120はY軸まわりに反対向きに回転する。
【0037】
また例えば第2圧力室162_2を加圧するとともに第3圧力室162_3を減圧すると、3つの圧力室162の圧力差により、可動子120はX軸まわりに回転する。一方、第3圧力室162_3を加圧するとともに第2圧力室162_2を減圧すると、3つの圧力室162の圧力差により、可動子120はX軸まわりに反対向きに回転する。
【0038】
また、詳細な説明は省略するが、3つの圧力室162の圧力を調整することにより、可動子120は、X軸およびY軸まわりに回転する。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態によれば、可動子120をX軸まわりおよび/またはY軸まわりに回転させることができる、すなわち可動子120を多自由度に回転させることができるアクチュエータ100を実現できる。この場合、ロボットや工作機械などの装置に搭載されるアクチュエータ100の数を少なくできる。
【0040】
また、本実施の形態によれば、3つの可動隔壁130は周方向に等間隔に配置される。この場合、目標とする回転力を可動子120に与えるための圧力の計算が比較的容易になる。
【0041】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、その各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0042】
(変形例1)
実施の形態および上述の変形例では、3つの可動隔壁130によって、可動子120と筐体本体112との間の空間160を3つの圧力室162に区画する場合について説明したが、可動隔壁130の数および圧力室162の数は、これには限定されない。
【0043】
圧力室162の数は4つ以上であってもよい。この場合、アクチュエータ100は、典型的には、n(n≧4)個の可動隔壁130を備え、n個の可動隔壁130によって可動子120と筐体本体112との間の空間160を周方向に並ぶn個の圧力室162に区画する。また、アクチュエータ100は、n個の付勢部材140を備え、n個の可動隔壁130は、それぞれ、対応する付勢部材140によって可動子120に向けて付勢される。アクチュエータ100は、圧力コントローラ104によってn個の圧力室162の圧力を調整することで、実施の形態と同様に、可動子120をX軸まわりおよび/またはY軸まわりに回転させることができる。
【0044】
また、圧力室162の数は2つであってもよい。この場合、2つの圧力室162の圧力を調整することによって、可動子120は或る軸まわりに回転できる。さらに可動子120は、ロッド150を介して外力を受けた場合に、当該軸に直交する軸まわりの回転も許容される。
【0045】
(変形例2)
実施の形態および上述の変形例では、可動隔壁130の数と圧力室162の数が同数である場合について説明したが、これには限定されない。例えばアクチュエータ100は、n-1(n≧2)個の可動隔壁130を備え、n-1個の可動隔壁130によって可動子120と筐体本体112との間の空間160をn個の圧力室162に区画してもよい。つまり、或る1つの可動隔壁130が、中心角が180度の略扇形に形成され、2つ分の可動隔壁130の役割を果たしてもよい。
【0046】
(本開示の各態様)本開示のある態様のアクチュエータは、筐体と、前記筐体に収納される可動子と、前記可動子の回転運動に対して受動的に運動可能な少なくとも1つの可動隔壁と、を備え、前記少なくとも1つの可動隔壁は、前記筐体と前記可動子との間に形成される空間を周方向に並ぶ複数の圧力室に区画し、前記複数の圧力室の圧力を調整することによって前記可動子を多自由度回転させる。この場合、ロボットや工作機械などの装置に搭載されるアクチュエータの数を少なくできる。
【0047】
ある態様では、前記筐体は、内壁が凹球面状の凹部を有し、前記可動子は、円板状であり、前記凹部に収容され、前記少なくとも1つの隔壁はそれぞれ、前記凹部の前記内壁に接する円弧状の外周面をしてもよい。
【0048】
ある態様では、前記少なくとも1つの可動隔壁を前記可動子に向けて付勢する付勢部材を備えてもよい。この場合、可動隔壁と可動子との間からの作動流体の漏れを抑止できる。
【0049】
ある態様では、前記少なくとも1つの可動隔壁の前記可動子と接触する端面は、前記可動子が当該可動隔壁に対して傾動可能に構成されてもよい。
【0050】
ある態様では、前記可動子は、前記凹部の前記内壁の中心に配置された球面軸受によって回転中心が拘束されてもよい。
【0051】
ある態様では、前記複数の圧力室の圧力を調整する圧力コントローラを備える。
【符号の説明】
【0052】
100 アクチュエータ、 102 アクチュエータ本体、 110 筐体、 112 筐体本体、 112a 凹部、 120 可動子、 130 可動隔壁、 160 空間、 162 圧力室。