(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025030148
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】エレベータ
(51)【国際特許分類】
B66B 13/16 20060101AFI20250228BHJP
B66B 5/00 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
B66B13/16 Z
B66B5/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023135181
(22)【出願日】2023-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】片山 知
(72)【発明者】
【氏名】玉置 亜由美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功一
(72)【発明者】
【氏名】物部 愛
(72)【発明者】
【氏名】水戸 陵人
【テーマコード(参考)】
3F304
3F307
【Fターム(参考)】
3F304BA02
3F304BA22
3F307BA02
3F307CA02
(57)【要約】
【課題】保守作業を行う際の作業性の低下を抑制できるエレベータを提供する。
【解決手段】スライドによりエレベータ乗場と昇降路との間を開閉する乗場ドア42の戸閉を阻止するために一時的に用いられる戸閉阻止具Aであり、前記乗場ドア42とは別に設けられた戸閉阻止具Aを保持する保持具7を備え、前記保持具7は、前記乗場ドア42の前記昇降路側に設けられている、エレベータ。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドによりエレベータ乗場と昇降路との間を開閉する乗場ドアの戸閉を阻止するために一時的に用いられる戸閉阻止具であり、前記乗場ドアとは別に設けられた戸閉阻止具を保持する保持具を備え、
前記保持具は、前記乗場ドアの前記昇降路側に設けられている、エレベータ。
【請求項2】
前記保持具は、前記乗場ドアの戸閉側に配置されている、請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
前記戸閉阻止具は、圧縮可能な弾性部材で構成され、
前記保持具は、圧縮した状態の前記戸閉阻止具を保持する、請求項1に記載のエレベータ。
【請求項4】
前記戸閉阻止具と前記保持具とが連結部材により連結されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗場ドアの戸閉を阻止する戸閉阻止具を保持する保持具を備えるエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
前記乗場ドアは、乗場出入口に設けられ、何の外力も作用しないときには前記乗場出入口を戸閉するように構成されている。そのため、例えば保守作業のために、前記乗場ドアを戸開状態で維持したい場合には、例えば、特許文献1に記載の戸閉阻止装置が用いられていた。この戸閉阻止装置は、エレベータの出入口の下縁部に配設された第1敷居の第1案内溝の溝幅と同等以下の厚さ寸法を有する下端側部と、前記下端側部から一体的に延設され、かつ、その延設部分の最大厚さ寸法を前記第1案内溝の溝幅よりも大きく設定してなる上端側部とからなる。また、前記下端側部及び上端側部の縦断面形状は、下端側部から上端側部の間の厚さが上端側部に向かって拡大する傾斜形状とすることによって、台形状としてある。さらに、前記下端側部及び前記上端側部の長手方向の寸法は、前記戸閉阻止装置を前記第1敷居の前記第1案内溝に対して着脱させる際、前記下端側部を前記第1案内溝から引き抜いたりあるいは前記下端側部を前記第1案内溝に圧入したりするのに十分な掴み代が得られるように設定されている。加えて、前記下端側部及び前記上端側部が前記第1案内溝に圧入嵌合している際に、戸閉阻止可能な十分な摩擦力を発生させることのできる圧接面積が得られる長さとなるように設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エレベータの保守作業を行う場合には、作業者は作業現場に前記戸閉阻止装置を持っていく必要がある。しかし、前記戸閉阻止装置を忘れた場合には、前記作業者は、手持ちの道具を使うなどして、前記乗場ドアの戸開状態を維持する方法を模索する必要があった。したがって、保守作業を行う際の作業性の低下を招いていた。
【0005】
よって、本発明は、保守作業を行う際の作業性の低下を抑制できるエレベータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、スライドによりエレベータ乗場と昇降路との間を開閉する乗場ドアの戸閉を阻止するために一時的に用いられる戸閉阻止具であり、前記乗場ドアとは別に設けられた戸閉阻止具を保持する保持具を備え、前記保持具は、前記乗場ドアの前記昇降路側に設けられている、エレベータである。
【0007】
前記構成によれば、仮に作業者が作業現場に前記戸閉阻止具を持ってくることを忘れた場合であっても、前記保持具に保持されている前記戸閉阻止具を用いて前記乗場ドアの戸閉を阻止することができ、また、前記保持具が前記乗場ドアの前記昇降路側に設けられていることにより、前記戸閉阻止具を前記エレベータの利用者の見えない場所に配置できる。
【0008】
また、本発明では、前記保持具は、前記乗場ドアの戸閉側に配置されていてもよい。
【0009】
前記構成によれば、前記保持具が前記乗場ドアの戸閉側に配置されているため、前記作業者は、前記保持具に保持された前記戸閉阻止具を取りやすい。
【0010】
また、本発明では、前記戸閉阻止具は、圧縮可能な弾性部材で構成され、前記保持具は、圧縮した状態の前記戸閉阻止具を保持していてもよい。
【0011】
前記構成によれば、前記保持具は、圧縮した状態の前記戸閉阻止具を保持するため、例えば前記乗場ドアに伝わった振動等で、前記戸閉阻止具が前記保持部から前記昇降路内に落ちることを防止できる。
【0012】
また、本発明では、前記戸閉阻止具と前記保持具とが連結部材により連結されていてもよい。
【0013】
前記構成によれば、前記戸閉阻止具と前記保持具とが前記連結部材により連結しているため、例えば前記戸閉阻止具が前記保持具から前記昇降路内に落ちることを防止できる。
【発明の効果】
【0014】
以上、本発明によれば、前記作業者は、前記保持具に支持されている前記戸閉阻止具を用いて前記乗場ドアの戸閉を阻止することができるため、保守作業を行う際の作業性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るエレベータの全体概要を示す図である。
【
図2】
図2は、同実施形態における乗場ドアを昇降路側から見た図及び要部拡大図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III位置の断面図及び要部拡大図である。
【
図4】
図4は、乗場ドアを開いた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るエレベータ1について説明する。
【0017】
以下の説明において、乗場ドア42やかごドア31が開閉する方向を「開閉方向X」と、かご側出入口3aや乗場側出入口40を介して、人や物が乗りかご3とエレベータ乗場4とを行き来する方向を「出入り方向Y」と、乗りかご3が昇降路2を昇降する方向を「昇降方向Z」とする。また、開閉方向Xと出入り方向Yと昇降方向Zとは直交する。なお、乗りかご3は上下に昇降するため、昇降方向Zは上下方向と一致している。さらに、開閉方向Xのうち、乗場ドア42やかごドア31が閉じる側を「戸閉側」とし、反対側を「戸開側」とする。
【0018】
本実施形態のエレベータ1では、戸閉阻止具Aを保持する保持具7と、連結部材8が備わっている点が重要である。説明の都合上、保持具7と連結部材8を説明する前に、エレベータ1の基本構成について説明する。
【0019】
図1に示すように、エレベータ1は、昇降方向Zに延びるように建物内の壁で規定される昇降路2と、昇降路2内を昇降する乗りかご3と、建物の所定の階に設けられるエレベータ乗場4とを備える。なお、エレベータ乗場4は、昇降方向Zに複数設けられている。
【0020】
乗りかご3は、前面に開口であるかご側出入口3aが形成された箱状のかご本体30と、かご側出入口3aを開閉するかごドア31とを備える。かごドア31は、かご本体30に設けられているドア駆動機構3b(具体的には、モーター)の駆動力によって開閉駆動するように構成されている。よって、かごドア31は、乗りかご3が昇降路2を昇降する状態でかご側出入口3aを閉じ、乗りかご3がエレベータ乗場4に到着した状態でかご側出入口3aを開閉するように構成されている。なお、本実施形態のかごドア31は、いわゆるセンターオープン方式(両開き式)のドアである。
【0021】
図1に示すように、エレベータ乗場4には、エレベータ乗場4と昇降路2とを仕切る壁に設けられる乗場側出入口40と、昇降路2側の端部に設けられる乗場側敷居41と、乗場側出入口40を開閉する乗場ドア42とが設けられている。なお、乗場側出入口40は、かご側出入口3aに対応した大きさの開口である。
【0022】
乗場側敷居41は、乗場ドア42を開閉方向Xに案内するためのものである。
図2に示すように、乗場側敷居41は、乗場側出入口40の下端において開閉方向Xに延びる。なお、乗場側敷居41は、開閉方向Xにおいて乗場側出入口40よりも長い。乗場側敷居41には、開閉方向Xに延びるように案内溝410が形成されている。この案内溝410は、乗場側敷居41の開閉方向Xの全域に亘るように形成されている。
【0023】
乗場ドア42は、乗場側出入口40を開閉するためのものである。
図2に示すように、乗場ドア42は、エレベータ乗場4と昇降路2とを仕切るドア本体420と、ドア本体420を開閉方向Xに駆動するドア駆動部421を備える。なお、本実施形態の乗場ドア42は、同様に構成される二つのドア本体420,420を備えるセンターオープン式のドアである。
【0024】
ドア本体420は、板状部材によって構成されている。ドア本体420は、乗場側出入口40の出入り方向Yに直交する面方向に広がるドアパネル420aと、ドアパネル420aの戸閉側及び戸開側の端縁それぞれに設けられる戸閉側折り返し部420b及び戸開側折り返し部420cとを備える。本実施形態のドアパネル420aは、昇降方向Zに長尺な矩形状である。また、
図3に示すように、戸閉側折り返し部420b及び戸開側折り返し部420c(
図3にて採番しない)それぞれは、ドアパネル420aの端縁からドアパネル420aの裏面側に延びる第一部位420dと、第一部位420dから反対側の折り返し部420b,420cに向かって延びる第二部位420eとを備える。
【0025】
図2に示すように、ドア駆動部421は、乗場側出入口40の上方位置(具体的には、昇降路2内の壁)において開閉方向Xに延びるドアレール421aと、ドアパネル420aを吊り下げた状態でドアレール421aに沿って開閉方向Xに往復動可能なドアハンガー421bとを備える。ドアハンガー421bは、ドアレール421aに取り付けられている。本実施形態では、二つのドアハンガー421b,421bを備える。また、二つのドアハンガー421b,421bは、戸開側及び戸閉側に連動するように構成されている。よって、例えば一方のドアハンガー421bが戸閉側に動くと、他方のドアハンガー421bも戸閉側に動く。さらに、ドアハンガー421bは、何の外力も作用しないときに自動的に戸閉側へ動くように構成されている。
【0026】
図2では、ドアパネル420aの裏面を昇降路2側に配置した状態で、ドア本体420の上側がドアハンガー421bに吊り下げられている。また、ドア本体420の下側が案内溝410内に嵌り込んでいる。このようにして、乗場ドア42が乗場側敷居41に配置されている。よって、ドアハンガー421bを動かすことにより、ドア本体420はスライドによって乗場側出入口40を開閉できる。
【0027】
乗場ドア42には、戸閉状態の乗場ドア42をロック(施錠)する錠装置5と、錠装置5によるロックを解錠可能な解錠装置6とが設けられている。本実施形態では、錠装置5及び解錠装置6が、片方(
図2の右側)の乗場ドア42に設けられている。
【0028】
錠装置5は、ドアレール421aに設けられる第一係合部材50と、ドアハンガー421bに設けられる第二係合部材51とを有する。第一係合部材50は、二つのドアハンガー421b,421bの間に配置されている。この第一係合部材50は、昇降方向Zに延びる係合片500を有する。
【0029】
図2に示すように、第二係合部材51は、出入り方向Y周りで回動することによって第一係合部材50に係合する係合位置と、第一係合部材50との係合を解除する解除位置との間で変位可能に構成されている。具体的に、第二係合部材51は、戸閉側に設けられるフック510と、下側に延びるように設けられる軸部511とを備える。そして、
図2では、フック510が戸閉側から係合片500に当接することにより、第二係合部材51が第一係合部材50に係合している。よって、第一係合部材50と第二係合部材51との係合により、乗場ドア42が戸閉状態でロックされている。
【0030】
解錠装置6は、ドア本体420に設けられている。本実施形態の解錠装置6は、ドアパネル420aを貫通する鍵穴6である。
図2に示すように、この鍵穴6は、ドアパネル420aの昇降方向Zの中央よりも上側、具体的には、軸部511の下側に配置されている。また、鍵穴6は、ドアパネル420aの開閉方向Xの中央と戸閉側折り返し部420bの第二部位420eとの間に配置されている。よって、鍵穴6は、乗場ドア42の戸閉側に配置されている。この鍵穴6には、作業者が所有している鍵(採番しない)が挿入される。この鍵は、鍵穴に挿通可能な長さを有する軸状部材である。また、鍵は、挿入方向の先端が自重によって曲がるように構成されている。よって、
図2に示すように、鍵穴6に対して鍵を挿入し、自重で先端が曲がった後、鍵を回動させると、鍵の先端が軸部511に当接し、第二係合部材51が動く。このようにして、第一係合部材50と第二係合部材51との係合状態が解除され、乗場ドア42のロックが解除される。
【0031】
以上が、本実施形態のエレベータ1の基本構成に関する説明である。説明の便宜上、保持具7と連結部材8について説明する前に、保持具7と連結部材8に関連する戸閉阻止具Aについて説明する。その後、保持具7と連結部材8について説明を行う。
【0032】
上述の通り、ドアハンガー421bは、何の外力も作用しないときに自動的に戸閉側へ動くように構成されている。そのため、何の外力も作用しないときには、乗場ドア42は、乗場側出入口40を戸閉している。一方、エレベータ1をメンテナンスする際には、乗場ドア42を戸開した状態で維持する必要がある。そのため、乗場ドア42が戸閉側に動くことによって生じる戸閉を阻止する戸閉阻止具Aが利用される。この戸閉阻止具Aは、乗場ドア42とは別体で構成されている。また、戸閉阻止具Aは、乗場ドア42の戸閉を阻止する際に一時的に用いられるものである。
【0033】
図4に示すように、本実施形態の戸閉阻止具Aは、案内溝410内に嵌まった状態で戸閉側から乗場ドア42(具体的には、戸閉側折り返し部420bの第一部位420d)に当接することにより、乗場ドア42の戸閉を阻止する。戸閉阻止具Aは、圧縮可能な弾性部材(具体的には、短尺のゴムホース)により構成されている。具体的に、戸閉阻止具Aは、縮径するように圧縮可能である。圧縮した状態の戸閉阻止具Aの外径は、案内溝410の幅よりも短い。そのため、戸閉阻止具Aは、圧縮した状態で案内溝410内に配置可能に構成される。
【0034】
保持具7は、戸閉阻止具Aを保持するためのものである。保持具7は、乗場ドア42に設けられている。なお、本実施形態では、保持具7が各階の乗場ドア42に設けられている。
図2,3に示すように、保持具7は、戸閉阻止具Aを下側から支持可能に構成される支持部70と、戸閉阻止具Aを収容可能な収容部71とを備える。
【0035】
支持部70は、出入り方向Yと開閉方向Xに広がる部材である。本実施形態の支持部70は、板状部材(具体的には、開閉方向Xの長さが出入り方向Yの長さよりも長い長方形の板状部材)で構成されている。また、支持部70は、ドアパネル420aの裏面に設けられている。よって、保持具7は、乗場ドア42の昇降路2側に設けられている。さらに、本実施形態の支持部70は、開閉方向Xの長さが戸閉阻止具Aの長さよりも長い。そのため、本実施形態の支持部70は、戸閉阻止具Aの長さ全域を支持可能に構成されている。一方、本実施形態の支持部70は、出入り方向Yの長さが戸閉阻止具Aの外径よりも短い。
【0036】
収容部71は、支持部70の上側を開閉方向X及び出入り方向Yで囲む部材である。
図3に示すように、本実施形態の収容部71は、戸閉側、戸開側及び昇降路2側から囲む三方枠状に構成されている。
図2に示すように、収容部71は、支持部70よりも上方に配置されている。そのため、本実施形態の保持具7は、上側が開口する箱状に構成されている。収容部71は、ドアパネル420aと出入り方向Yで対向する出入り壁部710と、一対の開閉壁部711,711とを備える。
【0037】
出入り壁部710は、開閉方向Xと昇降方向Zに広がる部材である。出入り壁部710は、支持部70の昇降路2側の端縁から上側に設けられている。
図2,3に示すように、本実施形態の出入り壁部710は、開閉方向Xの長さが支持部70の開閉方向Xと略同一である。よって、保持具7は、開閉方向Xの長さが戸閉阻止具Aの長さよりも長い。また、本実施形態の出入り壁部710は、昇降方向Zの長さが戸閉阻止具Aの外径よりも長い。
【0038】
図2,3に示すように、一対の開閉壁部711,711は、出入り方向Yと昇降方向Zに広がる部材である。一対の開閉壁部711,711は、支持部70の戸開側及び戸閉側の端縁から上側に設けられ、開閉方向Xで対向している。一対の開閉壁部711,711は、出入り方向Yで出入り壁部710及びドアパネル420aに連設している。また、本実施形態の一対の開閉壁部711,711は、昇降方向Zの長さが出入り壁部710と同じである。よって、本実施形態の収容部71は、昇降方向Zの長さが戸閉阻止具Aの外径よりも長い。さらに、本実施形態の一対の開閉壁部711,711は、出入り方向Yの長さが支持部70の出入り方向Yの長さと同一である。
【0039】
図2に示すように、本実施形態の保持具7は、開閉方向Xにおいて、戸閉側折り返し部420bと戸開側折り返し部420c(具体的には、それぞれの第二部位420e)の間に配置されている。具体的に、保持具7は、ドアパネル420aの開閉方向Xの中央と戸閉側折り返し部420bの第二部位420eとの間に配置されている。よって、保持具7は、乗場ドア42の戸閉側に配置されている。また、保持具7は、解錠装置6である鍵穴6に挿通された状態で回動する鍵の回動軌跡から離れた位置に配置されている。具体的に、本実施形態の保持具7は、ドアパネル420aの昇降方向Zの中央よりも下側に配置されている。
【0040】
さらに、
図3に示すように、本実施形態の保持具7は、出入り方向Yにおいて戸閉側折り返し部420bよりも短い。そのため、保持具7は、出入り方向Y(換言すると、乗場ドア42の厚みの方向)で第二部位420eとドアパネル420aとの間に配置されている。
【0041】
図3に示すように、保持具7は、戸閉阻止具Aを保持している。ここで、本実施形態では、一対の開閉壁部711,711は、出入り方向Yの長さが戸閉阻止具Aの外径よりも短い。よって、本実施形態では、長さを開閉方向Xに沿わせ、且つ外径を圧縮した状態の戸閉阻止具Aをドアパネル420aと出入り壁部710で保持することにより、収容部71に戸閉阻止具Aを収容している。したがって、本実施形態の保持具7は、外径を圧縮した状態の戸閉阻止具Aを保持している。
【0042】
図2に示すように、本実施形態では、保持具7で戸閉阻止具Aを保持した状態では、戸閉阻止具Aの一部が収容部71よりも上側に配置されている。なお、この状態では、戸閉阻止具Aが支持部70から上側に離間している。
【0043】
連結部材8は、戸閉阻止具Aと保持具7とを連結している。
図2,3に示すように、本実施形態の連結部材8は、紐状部材に構成されている。連結部材8は、一端が戸閉阻止具Aに固定され、他端が保持具7(本実施形態では、戸閉側の開閉壁部711)に結び付けられて固定されている。連結部材8は、保持具7に保持される戸閉阻止具Aを、戸閉側折り返し部420bよりも戸閉側に移動可能な長さに設定されている。よって、戸閉阻止具Aを戸閉側折り返し部420bよりも戸閉側の案内溝410内に配置できる。
【0044】
以上のように構成されたエレベータ1では、以下のようにして戸閉の阻止が行われる。なお、戸閉の阻止は、例えばエレベータ1を点検するための保守作業の前に行われる。
【0045】
まず、
図2に示すように、作業者が鍵を鍵穴6に挿入した後、鍵の先端が軸部511に当接するように鍵を回動させる。これにより、軸部511が出入り方向Yまわりで鍵の先端に押され、第二係合部材51が出入り方向Yまわりで回動する。よって、第一係合部材50と第二係合部材51との係合を解除し、乗場ドア42のロックを解除する。続いて、作業者は、ドア本体420を戸開側に動かして、乗場ドア42を戸開する。
【0046】
次に、作業者は、乗場ドア42を戸開した状態で、ドアパネル420aの裏面側に手を回して、戸閉阻止具Aを保持具7から取り出す。なお、戸閉阻止具Aは、保持具7から取り出されることにより、圧縮した状態から元の状態に戻る。それから、
図4に示すように、作業者は、戸閉阻止具Aの外径を再び圧縮させながら案内溝410内に配置する。よって、自動的に戸閉側に動く乗場ドア42(具体的には、戸閉側折り返し部420bの第一部位420d)が戸閉阻止具Aに当接する。このとき、戸閉阻止具Aと案内溝410内の摩擦によって、乗場ドア42の戸閉が阻止される。
【0047】
以上、本実施形態によれば、保持具7が乗場ドア42の昇降路2側に設けられているため、エレベータ1の利用者からは見えない場所で、戸閉阻止具Aを保持できる。具体的に、本実施形態では、ドアパネル420aと出入り壁部710により、外径を圧縮した状態の戸閉阻止具Aを保持しながら、収容部71に戸閉阻止具Aを収容している。よって、例えば、戸閉阻止具Aが乗場ドア42から伝わった振動により収容部71から昇降路2内に落ちることを防止できる。
【0048】
また、本実施形態の保持具7は、開閉方向Xの長さが戸閉阻止具Aの長さよりも長い。そのため、戸閉阻止具Aの長さを開閉方向Xに沿わせた状態で、保持具7で戸閉阻止具Aを保持できる。
【0049】
また、本実施形態では、保持具7で戸閉阻止具Aを保持した状態では、戸閉阻止具Aの一部が収容部71よりも上側に配置されている。そのため、戸閉阻止具Aを保持具7から取り出しやすい。
【0050】
また、本実施形態では、保持具7は、戸閉阻止具Aを下側から支持可能に構成される支持部70を備える。そのため、例えば、ドアパネル420aと出入り壁部710で保持される戸閉阻止具Aが下側に動いても、支持部70によって戸閉阻止具Aを支持できる。よって、戸閉阻止具Aが昇降路2内に落下することを防止できる。
【0051】
また、本実施形態では、戸閉阻止具Aが保持具7によって保持されている。そのため、作業者は、戸閉阻止具Aを忘れた場合でも、保持具7によって保持されている戸閉阻止具Aを用いて乗場ドア42の戸閉の阻止を行うことができる。更に、作業者は、保守作業に際して戸閉阻止具Aを作業現場に持参する必要がなくなり、作業時の負担を減らすことができる。加えて、本実施形態では、保持具7が各階の乗場ドア42に設けられている。そのため、どの階で保守作業を行う際でも、作業者の作業負担を減らすことができる。
【0052】
また、本実施形態では、保持具7は、ドアパネル420aの開閉方向Xの中央と戸閉側折り返し部420bの第二部位420eとの間に配置されている。そのため、保持具7は、乗場ドア42の戸閉側に配置されている。よって、作業者と保持具7との距離を近づけることができ、作業者がドアパネル420aの裏面側に手を回した際には、保持具7から戸閉阻止具Aを取り出しやすい。
【0053】
また、本実施形態では、保持具7は、ドアパネル420aの昇降方向Zの中央よりも下側に配置されている。そのため、保持具7と案内溝410との距離を近づけることができ、戸閉阻止具Aを移動させる距離を短くできる。よって、戸閉阻止具Aの移動に伴う、作業者の負担を減らすことができる。
【0054】
また、本実施形態では、保持具7は、出入り方向Yにおいて戸閉折り返し部420b及び戸開側折り返し部420cよりも短い。そのため、保持具7が乗場ドア42の開閉を妨げることを防止できる。また、保持具7が乗りかご3に干渉することも防止できる。
【0055】
また、本実施形態の保持具7は、上側が開口する箱状に構成されている。また、保持具7は、乗場ドア42の昇降路2側に設けられている。よって、作業者がドアパネル420aの裏面側に手を回して保持具7に触れることで、戸閉阻止具Aの保持位置を把握できる。
【0056】
また、本実施形態では、連結部材8が戸閉阻止具Aと保持具7とを連結している。そのため、戸閉阻止具Aが昇降路2内に落下することを防止できる。また、本実施形態の連結部材8は、他端が戸閉側の開閉壁部711に連結している。そのため、連結部材8に手が届きやすい。よって、仮に、戸閉阻止具Aが昇降路2内に落下したとしても、連結部材8を手で掴むことにより、戸閉阻止具Aを昇降路2内から取り出すことができる。
【0057】
また、本実施形態の収容部71は、昇降方向Zの長さが戸閉阻止具Aの外径よりも長い。そのため、戸閉阻止具Aの全域を収容部71内に収容することもできる。よって、戸閉阻止具Aの全域を収容部71内に収容することで、より一層安定して、保持具7で戸閉阻止具Aを保持できる。
【0058】
また、本実施形態では、解錠装置6である鍵穴6がドアパネル420aの昇降方向Zの中央よりも上側に配置され、保持具7が解錠装置6である鍵穴6に挿通された状態で回動する鍵の回動軌跡から離れた位置に配置されている。そのため、保持具7が解錠装置6によるロックの解錠に干渉することを防止できる。ここで、本実施形態の保持具7は、ドアパネル420aの昇降方向Zの中央よりも下側に配置されている。そのため、作業者が戸閉阻止具Aを保持具7から取り出す際に、解錠装置6が取り出しの邪魔になることも防止できる。
【0059】
また、本実施形態では、鍵穴6と保持具7とが、ドアパネル420aの開閉方向Xの中央と戸閉側折り返し部420bの第二部位420eとの間に配置されている。そのため、戸閉の阻止を行うにあたり、作業者は、ドアパネル420aの開閉方向Xの中央よりも戸閉側で作業を行えばよいため、作業者の作業負担を減らすことができる。
【0060】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0061】
上記実施形態では、乗場ドア42は、センターオープン式のドアであった。しかし、これに限らず、乗場ドア42が片開式のドアであってもよい。
【0062】
上記実施形態では、支持部70は、開閉方向Xの長さが出入り方向Yの長さよりも長い板状部材であった。しかし、これに限らず、例えば、支持部70は、開閉方向Xの長さが出入り方向Yの長さと同じであってもよい。また、支持部70は、長方形状以外の形状、例えば、三角形状や半円形状であってもよい。この場合、収容部71の形状は、支持部70の形状に合わせて変更してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、収容部71は、昇降方向Zの長さが戸閉阻止具Aの外径よりも長かった。しかし、これに限らず、収容部71の昇降方向Zの長さを戸閉阻止具Aの外径よりも短くしてもよい。これにより、例えば、支持部70で戸閉阻止具Aを支持しながら、戸閉阻止具Aの一部を収容部71よりも上側に配置できる。よって、支持部70によって戸閉阻止具Aを支持することもできるし、戸閉阻止具Aを収容部71から取り出しやすくもできる。
【0064】
また、上記実施形態では、支持部70及び一対の開閉壁部711,711は、出入り方向Yの長さが戸閉阻止具Aの外径よりも短かった。しかし、これに限らず、支持部70及び一対の開閉壁部711,711は、出入り方向Yの長さが戸閉阻止具Aの外径より長くてもよい。これにより、支持部70及び収容部71の出入り方向Yに余裕を持たせることができるため、戸閉阻止具Aの出し入れをより行いやすくできる。
【0065】
また、上記実施形態では、保持具7は、ドアパネル420aの昇降方向Zの中央よりも下側に配置されていた。しかし、これに限らず、例えば、保持具7は、ドアパネル420aの昇降方向Zの中央や該中央よりも上側に配置してもよい。これにより、作業者はしゃがむことなく保持具7から戸閉阻止具Aを取り出せるため、取り出しやすい。
【0066】
ここで、保持具7がドアパネル420aの昇降方向Zの中央よりも上側に配置される場合には、解錠装置6と保持具7との位置を近づけることができるため、戸閉の阻止に際して、作業者は大きく姿勢を変えることなく、解錠装置6によるロックの解錠と、保持具7からの戸閉阻止具Aの取出しを行うことができる。
【0067】
また、上記実施形態では、保持具7が戸閉阻止具Aのみを保持する場合を説明したが、これに限らず、例えば、保持具7が戸閉阻止具A以外のものも保持するように構成されていてもよい。例えば、保守作業の際に必要な工具を収容部71に収容し、支持部70で支持してもよい。これにより、より一層、作業者の作業時の負担を減らすことができる。
【0068】
また、上記実施形態では、保持具7が支持部70と収容部71を備える場合について説明したが、これに限らず、例えば、保持具7が支持部70のみを備えていてもよい。この場合、支持部70が戸閉阻止具Aを支持することにより、保持具7が戸閉阻止具Aを保持できる。なお、この場合、連結部材8は一端が支持部70に連結されることが考えられる。また、保持具7が収容部71のみを備えていてもよい。これにより、ドアパネル420aと収容部71により、戸閉阻止具Aを出入り方向Yに圧縮した状態で収容することで、保持具7は、戸閉阻止具Aを保持できる。
【0069】
また、例えば、保持具7が上側が開口する容器で構成され、接着固定されることでドアパネル420aの裏面に設けられていてもよい。
【0070】
また、保持具7は、戸閉阻止具Aを引掛けにより保持してもよい。この場合、例えば、戸閉阻止具Aがフック状に構成され、支持部70がU字状部材で構成される。そして、戸閉阻止具Aを支持部70に引掛けることにより、保持具7が戸閉阻止具Aを保持するように構成されていてもよい。
【0071】
また、例えば、戸閉阻止具Aに磁石を設け、磁力でドアパネル420aの裏面に貼り付けることで保持してもよい。この場合、保持具7は、ドアパネル420aにおける磁性体からなる領域である。さらに、この場合、ドアパネル420aの裏面に磁性を有する部材を取り付け、それを保持具7としてもよい。
【0072】
上記実施形態では、連結部材8が戸閉阻止具Aと保持具7とを連結していた。しかし、連結部材8を備えず、戸閉阻止具Aと保持具7とを連結していなくてもよい。これにより、作業者は、案内溝410に対する戸閉阻止具Aの配置を柔軟に設定できる。また、連結部材8が、例えば戸閉阻止具Aとドアパネル420aとを連結していてもよい。即ち、連結部材8は、戸閉阻止具Aが乗場ドア42や保持具7から離れないように、戸閉阻止具Aと乗場ドア42の周囲とを連結していればよい。
【符号の説明】
【0073】
1:エレベータ、2:昇降路、3:乗りかご、30:かご本体、31:かごドア、3a:かご側出入口、3b:ドア駆動機構、4:エレベータ乗場、40:乗場側出入口、41:乗場側敷居、410:案内溝、42:乗場ドア、420:ドア本体、420a:ドアパネル、420b:戸閉側折り返し部、420c:戸開側折り返し部、420d:第一部位、420e:第二部位、421:ドア駆動部、421a:ドアレール、421b:ドアハンガー、5:錠装置、50:第一係合部材、500:係合片、51:第二係合部材、510:フック、6:解錠装置、7:保持具、70:支持部、71:収容部、710:出入り壁部、711:開閉壁部、8:連結部材、A:戸閉阻止具、X:開閉方向、Y:出入り方向、Z:昇降方向
【手続補正書】
【提出日】2024-12-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドによりエレベータ乗場と昇降路との間を開閉する乗場ドアの戸閉を阻止するために一時的に用いられる戸閉阻止具であり、前記乗場ドアとは別に設けられて前記乗場ドアの戸閉を阻止していない状態の戸閉阻止具を保持する保持具を備え、
前記保持具は、前記乗場ドアの前記昇降路側に設けられている、エレベータ。
【請求項2】
前記保持具は、前記乗場ドアの戸閉側に配置されている、請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
スライドによりエレベータ乗場と昇降路との間を開閉する乗場ドアの戸閉を阻止するために一時的に用いられる戸閉阻止具であり、前記乗場ドアとは別に設けられた戸閉阻止具を保持する保持具を備え、
前記戸閉阻止具は、圧縮可能な弾性部材で構成され、
前記保持具は、前記乗場ドアの前記昇降路側に設けられ、圧縮した状態の前記戸閉阻止具を保持する、エレベータ。
【請求項4】
前記戸閉阻止具と前記保持具とが連結部材により連結されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のエレベータ。