(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003015
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】リハビリ支援システム、リハビリ支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/30 20180101AFI20241226BHJP
【FI】
G16H20/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103452
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】岩田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】目標までの遅れや進捗状況を直観的に確認・認識することができるリハビリ支援システム、リハビリ支援方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】リハビリ支援システムは、リハビリ患者90における所定の身体動作の機能を回復させるための複数の達成段階を有し長期の期間をかけて達成する長期目標及び複数の達成段階を有し長期より短い短期の期間をかけて達成する短期目標を取得する目標取得部11bと、各練習日に練習した練習項目を練習実績として取得する練習実績取得部11dと、練習実績によって達成した達成段階を取得する達成段階取得部11eと、達成した達成段階に基づいて、長期目標を達成する長期目標達成予定日及び短期目標を達成する短期目標達成予定日を含む目標達成予定日を予測する予測部12と、練習実績、達成段階、及び、目標達成予定日を重畳して表示装置に表示させる表示部14と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リハビリ患者における所定の身体動作の機能を回復させるための複数の達成段階を有し長期の期間をかけて達成する長期目標及び複数の前記達成段階を有し長期より短い短期の期間をかけて達成する短期目標を取得する目標取得部と、
各練習日に練習した練習項目を練習実績として取得する練習実績取得部と、
前記練習実績によって達成した前記達成段階を取得する達成段階取得部と、
達成した前記達成段階に基づいて、前記長期目標を達成する長期目標達成予定日及び前記短期目標を達成する短期目標達成予定日を含む目標達成予定日を予測する予測部と、
前記練習実績、前記達成段階、及び、前記目標達成予定日を重畳して表示装置に表示させる表示部と、
を備えたリハビリ支援システム。
【請求項2】
前記練習実績、前記達成段階、及び、前記目標達成予定日を記憶する記憶部をさらに備えた、
請求項1に記載のリハビリ支援システム。
【請求項3】
前記記憶部は、他のリハビリ患者における前記練習実績、前記達成段階、前記短期目標を達成した短期目標達成日及び前記長期目標を達成した長期目標達成日を含む目標達成日を記憶し、
前記予測部は、前記他のリハビリ患者における前記練習実績、前記達成段階及び前記目標達成日に基づいて、前記目標達成予定日を予測する、
請求項2に記載のリハビリ支援システム。
【請求項4】
前記練習項目を取得する練習項目取得部をさらに備え、
前記練習項目取得部は、前記他のリハビリ患者における前記練習実績、前記達成段階及び前記目標達成日、並びに、前記予測部が予測した前記目標達成予定日に基づいて、前記練習項目を取得する、
請求項3に記載のリハビリ支援システム。
【請求項5】
前記記憶部は、前記リハビリ患者が前記身体動作の前記機能を回復させる前記練習項目を練習した際に、前記リハビリ患者を補助した補助者を、前記練習実績に対応付けて記憶する、
請求項2に記載のリハビリ支援システム。
【請求項6】
前記補助者は、理学療法士、作業療法士、言語療法士、医師及び看護師の少なくともいずれかの属性を含み、
前記記憶部は、各属性を、前記練習実績に対応付けて記憶する、
請求項5に記載のリハビリ支援システム。
【請求項7】
前記表示部は、特定の前記補助者に対応付けられた前記練習実績を抽出して前記表示装置に表示させる、
請求項5または6に記載のリハビリ支援システム。
【請求項8】
前記予測部は、各補助者に対応付けられた前記練習実績に基づいて、各目標達成予定日を予測する、
請求項5または6に記載のリハビリ支援システム。
【請求項9】
前記記憶部は、前記リハビリ患者が前記身体動作の前記機能を回復させる前記練習項目を練習する際に、1人で行った個別練習、または、複数で行った集団練習を、前記練習実績に対応付けて記憶する、
請求項2または3に記載のリハビリ支援システム。
【請求項10】
リハビリ患者における所定の身体動作の機能を回復させるための複数の達成段階を有し長期の期間をかけて達成する長期目標及び複数の前記達成段階を有し長期より短い短期の期間をかけて達成する短期目標を取得し、
各練習日に練習した練習項目を練習実績として取得し、
前記練習実績によって達成した前記達成段階を取得し、
達成した前記達成段階に基づいて、前記長期目標を達成する長期目標達成予定日及び前記短期目標を達成する短期目標達成予定日を含む目標達成予定日を予測し、
前記練習実績、前記達成段階、及び、前記目標達成予定日を重畳して表示装置に表示させる、
リハビリ支援方法。
【請求項11】
前記練習実績、前記達成段階、及び、前記目標達成予定日を記憶部に記憶させる、
請求項10に記載のリハビリ支援方法。
【請求項12】
他のリハビリ患者における前記練習実績、前記達成段階、前記短期目標を達成した短期目標達成日及び前記長期目標を達成した長期目標達成日を含む目標達成日を記憶させ、
前記目標達成予定日を予測する際において、前記他のリハビリ患者における前記練習実績、前記達成段階及び前記目標達成日に基づいて、前記目標達成予定日を予測する、
請求項11に記載のリハビリ支援方法。
【請求項13】
前記練習項目を取得し、
前記練習項目を取得する際において、前記他のリハビリ患者における前記練習実績、前記達成段階及び前記目標達成日、並びに、予測した前記目標達成予定日に基づいて、前記練習項目を取得する、
請求項12に記載のリハビリ支援方法。
【請求項14】
前記練習実績、前記達成段階、及び、前記目標達成予定日を記憶させる際において、前記リハビリ患者が前記身体動作の前記機能を回復させる前記練習項目を練習した際の前記リハビリ患者を補助した補助者を、前記練習実績に対応付けて記憶させる、
請求項11に記載のリハビリ支援方法。
【請求項15】
前記補助者は、理学療法士、作業療法士、言語療法士、医師及び看護師の少なくともいずれかの属性を含み、
前記練習実績、前記達成段階、及び、前記目標達成予定日を記憶させる際において、各属性を、前記練習実績に対応付けて記憶させる、
請求項14に記載のリハビリ支援方法。
【請求項16】
前記練習実績、前記達成段階、及び、前記目標達成予定日を重畳して前記表示装置に表示させる際において、特定の前記補助者に対応付けられた前記練習実績を抽出して前記表示装置に表示させる、
請求項14または15に記載のリハビリ支援方法。
【請求項17】
前記目標達成予定日を予測する際において、各補助者に対応付けられた前記練習実績に基づいて、各目標達成予定日を予測する、
請求項14または15に記載のリハビリ支援方法。
【請求項18】
前記練習実績、前記達成段階、及び、前記目標達成予定日を記憶させる際において、前記リハビリ患者が前記身体動作の前記機能を回復させる前記練習項目を練習する際に、1人で行った個別練習、または、複数で行った集団練習を、前記練習実績に対応付けて記憶させる、
請求項11または12に記載のリハビリ支援方法。
【請求項19】
リハビリ患者における所定の身体動作の機能を回復させるための複数の達成段階を有し長期の期間をかけて達成する長期目標及び複数の前記達成段階を有し長期より短い短期の期間をかけて達成する短期目標を取得し、
各練習日に練習した練習項目を練習実績として取得し、
前記練習実績によって達成した前記達成段階を取得し、
達成した前記達成段階に基づいて、前記長期目標を達成する長期目標達成予定日及び前記短期目標を達成する短期目標達成予定日を含む目標達成予定日を予測し、
前記練習実績、前記達成段階、及び、前記目標達成予定日を重畳して表示装置に表示させる、
ことをコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リハビリ支援システム、リハビリ支援方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、リハビリテーション(単にリハビリともいう)等の訓練において、訓練の進捗・成果を可視化して提示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リハビリ等の訓練においては、訓練開始から退院まで長期にわたり得るため、その間モチベーションを維持することが難しい場合がある。このような長期にわたる視点で、訓練者や医療関係者がより正確な目標把握や指導のために必要な情報を把握し、これによって高いモチベーションで訓練を継続できるシステムが必要である。しかしながら、目標を意識する仕組みや目標に対する進捗を確認できる仕組みを備えた関連技術は、現状見当たらない。機械学習等により訓練実績のデータを抽出しても、モチベーションにかかわる仕組みを構築することは困難である。
【0005】
本開示の目的は、このような課題を解決するためになされたものであり、目標までの遅れや進捗状況を直観的に確認・認識することができるリハビリ支援システム、リハビリ支援方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るリハビリ支援システムは、リハビリ患者における所定の身体動作の機能を回復させるための複数の達成段階を有し長期の期間をかけて達成する長期目標及び複数の前記達成段階を有し長期より短い短期の期間をかけて達成する短期目標を取得する目標取得部と、各練習日に練習した練習項目を練習実績として取得する練習実績取得部と、前記練習実績によって達成した前記達成段階を取得する達成段階取得部と、達成した前記達成段階に基づいて、前記長期目標を達成する長期目標達成予定日及び前記短期目標を達成する短期目標達成予定日を含む目標達成予定日を予測する予測部と、前記練習実績、前記達成段階、及び、前記目標達成予定日を重畳して表示装置に表示させる表示部と、を備える。
【0007】
上記リハビリ支援システムにおいて、前記練習実績、前記達成段階、及び、前記目標達成予定日を記憶する記憶部をさらに備えてもよい。
【0008】
上記リハビリ支援システムにおいて、前記記憶部は、他のリハビリ患者における前記練習実績、前記達成段階、前記短期目標を達成した短期目標達成日及び前記長期目標を達成した長期目標達成日を含む目標達成日を記憶し、前記予測部は、前記他のリハビリ患者における前記練習実績、前記達成段階及び前記目標達成日に基づいて、前記目標達成予定日を予測してもよい。
【0009】
上記リハビリ支援システムにおいて、前記練習項目を取得する練習項目取得部をさらに備え、前記練習項目取得部は、前記他のリハビリ患者における前記練習実績、前記達成段階及び前記目標達成日、並びに、前記予測部が予測した前記目標予定日に基づいて、前記練習項目を取得してもよい。
【0010】
上記リハビリ支援システムにおいて、前記記憶部は、前記リハビリ患者が前記身体動作の前記機能を回復させる前記練習項目を練習した際に、前記リハビリ患者を補助した補助者を、前記練習実績に対応付けて記憶してもよい。
【0011】
上記リハビリ支援システムにおいて、前記補助者は、理学療法士、作業療法士、言語療法士、医師及び看護師の少なくともいずれかの属性を含み、前記記憶部は、各属性を、前記練習実績に対応付けて記憶してもよい。
【0012】
上記リハビリ支援システムにおいて、前記表示部は、特定の前記補助者に対応付けられた前記練習実績を抽出して前記表示装置に表示させてもよい。
【0013】
上記リハビリ支援システムにおいて、前記予測部は、各補助者に対応付けられた前記練習実績に基づいて、各目標達成予定日を予測してもよい。
【0014】
上記リハビリ支援システムにおいて、前記記憶部は、前記リハビリ患者が前記身体動作の前記機能を回復させる前記練習項目を練習する際に、1人で行った個別練習、または、複数で行った集団練習を、前記練習実績に対応付けて記憶してもよい。
【0015】
本開示の一態様に係るリハビリ支援方法は、リハビリ患者における所定の身体動作の機能を回復させるための複数の達成段階を有し長期の期間をかけて達成する長期目標及び複数の前記達成段階を有し長期より短い短期の期間をかけて達成する短期目標を取得し、各練習日に練習した練習項目を練習実績として取得し、前記練習実績によって達成した前記達成段階を取得し、達成した前記達成段階に基づいて、前記長期目標を達成する長期目標達成予定日及び前記短期目標を達成する短期目標達成予定日を含む目標達成予定日を予測し、前記練習実績、前記達成段階、及び、前記目標達成予定日を重畳して表示装置に表示させる。
【0016】
上記リハビリ支援方法において、前記練習実績、前記達成段階、及び、前記目標達成予定日を記憶部に記憶させてもよい。
【0017】
上記リハビリ支援方法において、他のリハビリ患者における前記練習実績、前記達成段階、前記短期目標を達成した短期目標達成日及び前記長期目標を達成した長期目標達成日を含む目標達成日を記憶させ、前記目標達成予定日を予測する際において、前記他のリハビリ患者における前記練習実績、前記達成段階及び前記目標達成日に基づいて、前記目標達成予定日を予測してもよい。
【0018】
上記リハビリ支援方法において、前記練習項目を取得し、前記練習項目を取得する際において、前記他のリハビリ患者における前記練習実績、前記達成段階及び前記目標達成日、並びに、予測した前記目標予定日に基づいて、前記練習項目を取得してもよい。
【0019】
上記リハビリ支援方法において、前記練習実績、前記達成段階、及び、前記目標達成予定日を記憶させる際において、前記リハビリ患者が前記身体動作の前記機能を回復させる前記練習項目を練習した際の前記リハビリ患者を補助した補助者を、前記練習実績に対応付けて記憶させてもよい。
【0020】
上記リハビリ支援方法において、前記補助者は、理学療法士、作業療法士、言語療法士、医師及び看護師の少なくともいずれかの属性を含み、前記練習実績、前記達成段階、及び、前記目標達成予定日を記憶させる際において、各属性を、前記練習実績に対応付けて記憶させてもよい。
【0021】
上記リハビリ支援方法において、前記練習実績、前記達成段階、及び、前記目標達成予定日を重畳して前記表示装置に表示させる際において、特定の前記補助者に対応付けられた前記練習実績を抽出して前記表示装置に表示させてもよい。
【0022】
上記リハビリ支援方法において、前記目標達成予定日を予測する際において、各補助者に対応付けられた前記練習実績に基づいて、各目標達成予定日を予測してもよい。
【0023】
上記リハビリ支援方法において、前記練習実績、前記達成段階、及び、前記目標達成予定日を記憶させる際において、前記リハビリ患者が前記身体動作の前記機能を回復させる前記練習項目を練習する際に、1人で行った個別練習、または、複数で行った集団練習を、前記練習実績に対応付けて記憶させてもよい。
【0024】
本開示の一態様に係るプログラムは、リハビリ患者における所定の身体動作の機能を回復させるための複数の達成段階を有し長期の期間をかけて達成する長期目標及び複数の前記達成段階を有し長期より短い短期の期間をかけて達成する短期目標を取得し、各練習日に練習した練習項目を練習実績として取得し、前記練習実績によって達成した前記達成段階を取得し、達成した前記達成段階に基づいて、前記長期目標を達成する長期目標達成予定日及び前記短期目標を達成する短期目標達成予定日を含む目標達成予定日を予測し、前記練習実績、前記達成段階、及び、前記目標達成予定日を重畳して表示装置に表示させることをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、目標までの遅れや進捗状況を直観的に確認・認識することができるリハビリ支援システム、リハビリ支援方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態1に係る支援システムを例示した構成図である。
【
図2】実施形態1に係るリハビリ支援装置を例示したブロック図である。
【
図3】実施形態1に係るリハビリ患者情報を例示した図である。
【
図4】実施形態1に係るリハビリ患者の回復度を評価するための評価項目を例示した図である。
【
図5】実施形態1に係るリハビリ患者に設定された目標を表示する表示画面を例示した図である。
【
図6】実施形態1に係る対象患者の練習実績及びFIMを例示したグラフであり、横軸は、日数を示し、2つの縦軸は、練習時間及びFIMを示す。
【
図7】実施形態1に係る過去患者の練習実績及びFIMを例示したグラフであり、横軸は、日数を示し、2つの縦軸は、練習時間及びFIMを示す。
【
図8】実施形態1に係る過去患者及び対象患者の練習実績及びFIMを例示したグラフであり、横軸は、日数を示し、2つの縦軸は、練習時間及びFIMを示す。
【
図9】実施形態1に係る表示部が練習実績を表示する表示画面を例示した図である。
【
図10】実施形態1に係る表示部が短期目標、長期目標、練習実績及び達成段階を表示させた表示画面を例示した図である。
【
図11】実施形態1に係る表示部が短期目標、長期目標、練習実績、達成段階及び目標達成予定日を表示させた表示画面を例示した図である。
【
図12】実施形態1に係るリハビリ支援方法を例示したフローチャート図である。
【
図13】実施形態1に係るリハビリ支援装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本実施形態の具体的構成について図面を参照して説明する。以下の説明は、本開示の好適な実施形態を示すものであって、本開示の範囲が以下の実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0028】
(実施形態1)
本実施形態にかかるリハビリ支援システムは、訓練者の身体動作の機能回復を目的とした訓練を訓練者が行うための支援を行う。訓練は、1又は複数の種類の訓練項目を含む。訓練項目を練習項目とも呼ぶ。ここで、訓練者は、例えば、脳血管障害による脳卒中や脊髄損傷等の疾患によって身体の一部に麻痺を患う者である。なお、訓練者は、身体動作の機能回復を行う者であれば、疾患によって身体の一部に麻痺を患う者に限らない。訓練者をリハビリ患者とも呼ぶ。上記疾患により、リハビリ患者の身体動作機能は、低下している。本実施形態において、身体動作とは、例えば、日常生活活動(ADL、Activities of Daily Living)に含まれる動作であって、食事、トイレ、着替え、歩行などの動作を含む。
【0029】
リハビリ患者は、低下した身体動作の機能を回復させるために、1又は複数の種類の練習項目を含む訓練を行う。具体的には、例えば、食事という身体動作の機能を回復させる場合には、リハビリ患者は、摂食動作の練習項目や嚥下動作の練習項目等を行う。また、例えば、トイレ動作の機能を回復させる場合には、リハビリ患者は、ベッド、車椅子及び便座にそれぞれ移乗するための移乗動作の練習項目、トイレでの排泄動作の練習項目等を行う。また、例えば、歩行動作の機能を回復させる場合には、リハビリ患者は、座位姿勢を維持する練習項目、立位姿勢を維持する練習項目、平地歩行の練習項目、坂道歩行の練習項目等を行う。練習項目は、上述のような身体動作を能動的に行うものの他に、補助者から関節や筋肉の刺激を受けるマッサージ等の受動的なものも含む。なお、上述の練習項目を含む訓練は、リハビリテーション、リハビリ訓練またはリハビリとも呼ぶ。
【0030】
リハビリ支援システムを利用して行う訓練は、療法士による介助を要する場合がある。療法士とは、リハビリ患者を介助するために専門的な知識を有する者である。本実施形態において、療法士は、理学療法士、作業療法士および言語療法士を含む。療法士は、それぞれが有する専門知識に応じて、リハビリ患者の訓練を介助する。
【0031】
理学療法士は、PT(Pysical Therapist)とも呼ぶ。理学療法士は、身体に障害のある者に対して、主に、基本的動作能力の回復を図るために、理学療法の業務を行う者である。理学療法とは、病気、怪我及び障害等によって身体動作の機能が低下した状態にある者に対し、身体動作の機能の維持または改善を目的として行われる治療法である。理学療法士は、運動、温熱および電気等を利用することにより理学療法を行う。
【0032】
作業療法士は、OT(Occupational Therapist)とも呼ぶ。作業療法士とは、身体または精神に障害のある者に対して、主に、応用的動作能力または社会的適応能力の回復を図るために、作業療法の業務を行う者である。なお、ここで、作業とは、入浴、着替え、トイレなどの日常的な生活行為を含む。
【0033】
言語療法士は、言語聴覚士またはST(Speech Therapist)とも呼ぶ。言語療法士とは、音声機能、言語機能または聴覚に障害のある者について、その機能の維持向上を図るために、言語の練習項目その他の練習項目、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行う者である。さらに、言語療法士は、医師や歯科医師の指示のもと、摂食や嚥下の練習項目等も行う。
【0034】
以下では、リハビリ患者のリハビリ訓練を補助するPT、OT、ST等の者を補助者とも呼ぶ。補助者は、医師、看護師等を含んでいてもよい。補助者は、リハビリ患者が身体動作の機能を回復させる練習項目を練習する際にリハビリ患者を補助する。
【0035】
以下では、まず、本実施形態に係るリハビリ支援システムを含む<支援システム>を説明する。その後、<訓練装置>、<端末>、<リハビリ支援装置>を説明する。そして、リハビリ支援装置の各構成である<患者情報取得部>、<目標取得部>、<練習項目取得部>、<練習実績取得部>、<達成段階取得部>、<予測部>、<記憶部>、<表示部>を説明し、その後、<リハビリ支援方法>を説明する。
【0036】
<支援システム>
図1は、実施形態1に係る支援システムを例示した構成図である。支援システム1は、リハビリ支援装置10、訓練装置21及び22、端末31、データベースDBを備えている。なお、
図1では、支援システム1は、2つの訓練装置21及び22を備えているが、1つの訓練装置21のみを備えてもよいし、3つ以上の訓練装置20を備えてもよい。訓練装置21及び22を総称して訓練装置20と呼ぶ。また、支援システム1は、訓練装置20を必要としない場合には、訓練装置20を備えていなくてもよい。複数のリハビリ患者90が支援システム1を利用してもよい。
【0037】
<訓練装置>
訓練装置20は、例えば、歩行機能を改善する歩行練習を行うための訓練機器である。これにより、リハビリ患者90は、歩行機能を改善するリハビリ訓練を行う。歩行練習を行うための訓練機器は、例えば、ウェルウォークWW-1000やWW-2000等である。もちろん、リハビリ訓練は、歩行練習に限定されるものではなく、摂食動作や排泄動作の訓練であってもよい。よって、訓練装置20は、摂食動作や排泄動作を行うための訓練機器でもよい。訓練装置20は、モータ等の駆動機器や、センサ等を有してもよい。訓練装置20は、病院などのリハビリ施設に設置されている。もちろん、訓練装置20は、リハビリ患者90の自宅に設置されている機器であってもよい。
【0038】
<端末>
端末31は、補助者80及びリハビリ患者90の少なくともいずれか(補助者80等と呼ぶ。)がデータを入力可能なデバイスである。また、端末31は、リハビリ支援装置10が出力するデータを出力可能なデバイスである。例えば、端末31は、タブレットコンピュータ、スマートフォン、パーソナルコンピュータ等である。端末31は、キーボード、マウス、タッチパネル、マイク等の入力装置によってデータを入力する。端末31は、ディスプレイ、プリンタ等の表示装置を含む出力装置によってデータを出力する。補助者80等は、端末31を用いて、リハビリ患者90やそのリハビリ訓練に関するデータを入力及び出力することができる。端末31は、訓練装置20に付属したデバイスであってもよいし、リハビリ支援装置10に付属したデバイスであってもよい。支援システム1は、複数の端末31を有してもよい。
【0039】
<リハビリ支援装置>
リハビリ支援装置10は、データの入出力が可能な装置である。リハビリ支援装置10は、リハビリ支援装置10単体でリハビリ支援システムと呼ばれてもよいし、訓練装置20、端末31、データベースDBの少なくともいずれかと組み合わされてリハビリ支援システムと呼ばれてもよい。リハビリ支援装置10は、リハビリ訓練を支援するリハビリ支援システムとなる。リハビリ支援装置10は、メモリ、プロセッサ及び表示装置等を有するコンピュータによって実現されてもよい。
【0040】
リハビリ支援装置10は、訓練装置20、端末31及びデータベースDBからデータを取得してもよい。また、リハビリ支援装置10は、訓練装置20、端末31及びデータベースDBにデータを出力してもよい。訓練装置20、端末31、データベースDB及びリハビリ支援装置10のそれぞれは、ネットワークNを介して通信可能に接続されてもよい。ここで、ネットワークNは、インターネット、イントラネット、携帯電話網、LAN(Local Area Network)等の通信回線網である。
【0041】
リハビリ支援装置10によるデータの取得及び出力は、ネットワークNを介したものに限られない。例えば、少なくとも一部のデータは、USBメモリなどを介して取得及び出力されてもよい。データの取得及び出力は、WiFi(登録商標)等の無線通信回線によるものでもよく、有線通信回線によるものでもよい。リハビリ支援装置10は、無線又は有線の少なくともいずれかの通信回線を介して、訓練装置20、端末31及びデータベースDBとの間でデータの取得及び出力を行ってもよい。リハビリ支援装置10は、無線又は有線のデータ入出力のためのインターフェースを有している。リハビリ支援装置10によるデータの取得は、補助者80等が必要なデータを選択して、リハビリ支援装置10に書き込むようにしてもよいし、自動で行われてもよい。
【0042】
図2は、実施形態1に係るリハビリ支援装置10を例示したブロック図である。
図2に示すように、リハビリ支援装置10は、取得部11、予測部12、記憶部13、表示部14を備えている。取得部11は、患者情報取得部11a、目標取得部11b、練習項目取得部11c、練習実績取得部11d、達成段階取得部11eを有してもよい。
【0043】
リハビリ支援装置10は、端末31と同様に、入力装置及び表示装置を備えたタブレットコンピュータ、スマートフォン、パーソナルコンピュータ等であってもよい。リハビリ支援装置10は、端末31の一部機能を用いてもよい。また、リハビリ支援装置10は、物理的に単一な装置に限られるものではない。例えば、記憶部13は、本体装置と別体として設けられたデータベースDBとしてもよい。
【0044】
<患者情報取得部>
患者情報取得部11aは、リハビリ患者90に関するリハビリ患者情報を取得する。患者情報取得部11aは、記憶部13及びデータベースDBの少なくともいずれか(記憶部13等と呼ぶ。)からリハビリ患者情報を取得してもよい。リハビリ患者情報は、リハビリ患者90の属性等を含んでもよい。患者情報取得部11aは、他のリハビリ患者90(過去のリハビリ患者90を含む)のリハビリ患者情報を取得してもよい。
【0045】
図3は、実施形態1に係るリハビリ患者情報を例示した図である。
図3に示すように、リハビリ患者情報は、患者ID、氏名、年齢、性別、診断名、障害側、発症日、退院日、練習実績、目標達成日等を含んでいる。なお、障害側は麻痺がある患脚を示すデータであり、左脚(L)又は右脚(R)で示される。なお、図中の患者ID1000003に示すように、退院していないリハビリ患者90、つまり、入院中のリハビリ患者90は、退院日が空欄となっている。換言すると、退院日に日付が入力されているか否かで、リハビリ患者90が入院中か退院後かを識別することができる。
【0046】
リハビリ患者情報は、例えば、補助者80等が端末31から各項目を入力することにより、記憶部13等に記憶されてもよい。また、リハビリ患者情報は、補助者80等が端末31から患者IDや氏名を入力することにより、確認できるようにしてもよい。また、リハビリ支援装置10が、複数の病院や施設からデータを取得する場合には、リハビリ訓練を行った病院や施設を示す施設IDを付していてもよい。
【0047】
もちろん、
図3に示す項目は、リハビリ患者情報の一例であり、一部の項目は、省略してもよい。さらには、
図3に示されていない項目が追加されていてもよい。具体的には、リハビリ患者情報は、後述する練習項目、練習実績、達成段階、短期目標、長期目標、短期目標達成予定日、長期目標達成予定日、短期目標達成日及び長期目標達成日を含んでもよい。また、リハビリ患者情報は、高次脳機能、現在のFIM(Functional Independence Measure)、現在の補装具、現在の補助具、及び、懸垂装置のデータが患者IDに対応付けされてもよい。FIMは、機能的自立度評価表とも呼び、ADLを評価する評価方法の一つを定めたものである。FIMは、介助量に応じて1点~7点の7段階の評価を含んでもよい。
【0048】
また、リハビリ患者情報は、体格(身長、体重等)、Br.stage(Brunnstrom Recovery Stage)、SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)、初期歩行FIM、最新の歩行FIM等を含んでもよい。初期歩行FIMは、発症時やリハビリ訓練開始前の歩行FIMである。なお、リハビリ患者情報は、リハビリ患者90の回復度を評価するための評価項目等、リハビリ患者90の身体能力を示す様々なデータを含んでもよい。
【0049】
Br.stageは、片麻痺の回復過程について、観察からその回復段階を6段階に分けたデータである。Br.stageは、歩行訓練装置に関係する主な項目である下肢項目を含むことができる。SIASは、脳卒中の機能障害を総合的に評価する指標である。SIASは、股屈曲テスト(Hip-Flex)、膝伸展テスト(Knee-Ext)、足パット・テスト(Foot-Pat)を含んでもよい。また、SIASは、下肢触覚(Touch L/E)、下肢位置覚(Position L/E)、腹筋力(Abdominal)、及び、垂直性テスト(Verticality)を含んでもよい。
【0050】
図4は、実施形態1に係るリハビリ患者90の回復度を評価するための評価項目を例示した図である。
図4に示すように、評価項目は、歩行訓練を対象とした場合には、歩行FIM、補装具及び補助具の3つの項目を含んでもよい。各評価項目に対して、回復度を示す評価指標が設定されている。各評価項目は、各評価指標を取得した取得日及び評価指標の経過(図ではFIMの経過)が対応付けられてもよい。記憶部13等は、リハビリ患者90毎に回復度を示す評価指標を記憶してもよい。
【0051】
例えば、歩行FIMが回復度を示す汎用の指標となる。また、歩行FIMは、アクチュエータを用いない場合におけるリハビリ患者90の動作能力(つまり、歩行能力)を示す指標となる。補助者80なし、かつ装具(補助具)なしで50m以上歩行できた場合、最高点の7点となり、一人の補助者80がどんなに介助しても15m未満しか歩行できない場合、最低点の1点となる。また、最小介助(介助量が25%以下)で50m移動することができる場合、4点、中程度介助(介助量25%以上)で50m移動できる場合、3点となる。したがって、回復が進むにつれて、リハビリ患者90の歩行FIMが徐々に高くなっていく。
【0052】
歩行FIMの評価指標は、1~7の整数で入力されるため、7つに区分されている。なお、未入力の場合を含めて、歩行FIMの評価指標は、8つに区分されていてもよい。
【0053】
補装具は、リハビリ患者90の身体機能を補完し、又は、代替し、かつ、長期間にわたり継続して使用されるものである。リハビリ患者90は、補装具を装着して歩行する。補装具は、以下の9つの評価指標に区分されている。すなわち、補装具はなし、その他、簡易型AFO(Ankle Foot Orthoses)、PAFO椅子あり、PAFO椅子なし、RAPS(Remodeled Adjustable Posterior Strut)-AFO、M(Molded)-AFO、KAFO(Knee Ankle Foot Orthoses)、未入力に分類されている。つまり、回復度に応じて、補装具の評価項目が、9つの評価指標に区分されている。
【0054】
補助具は、リハビリ患者90の歩行を補助する器具である。リハビリ患者90は、杖などの補助具を持って歩行する。評価項目は、以下の9つの評価指標に区分されている。すなわち、なし、その他、一本杖、四点杖(小)、四点杖(大)、四脚杖、歩行器、平行棒、未入力の9つに区分されている。
【0055】
リハビリ患者90は、適切な補装具及び補助具を用いて、歩行することができる。また、補助者80は、リハビリ患者90の歩行機能に応じて、適切な補装具及び補助具をリハビリ患者90に推奨することができる。リハビリ患者90の回復度に応じて、使用される補装具及び補助具が変わっていく。換言すると、補装具及び補助具は、リハビリ患者90の回復度を評価するための評価指標となる。
【0056】
リハビリ患者情報は、全評価項目の評価指標を含んでもよい。もちろん、リハビリ患者情報は、一部の評価項目については、未入力とされてもよい。評価指標は、取得された取得日と対応付けられてもよい。また、評価指標は、発症日及びリハビリ開始日からの日数と対応付けられていてもよい。
【0057】
<目標取得部>
目標取得部11bは、リハビリ患者90が練習項目を練習する上で、リハビリ患者90が達成する目標を取得する。目標は、長期の期間をかけて達成する長期目標及び短期の期間をかけて達成する短期目標を含む。短期の期間は、長期の期間より短い期間である。長期目標及び短期目標は、複数の達成段階を有するものでもよい。リハビリ患者90は、複数の達成段階を経て短期目標及び長期目標を達成する。このように、目標取得部11bは、リハビリ患者90における所定の身体動作の機能を回復させるための複数の達成段階を有し長期の期間をかけて達成する長期目標及び複数の達成段階を有し長期より短い短期の期間をかけて達成する短期目標を取得する。
【0058】
図5は、実施形態1に係るリハビリ患者に設定された目標を表示する表示画面を例示した図である。
図5に示すように、例えば、リハビリ支援装置10の表示部14は、リハビリ患者90の目標を設定するために、過去のリハビリ患者90のリハビリ患者情報を表示装置に表示させてもよい。
【0059】
表示画面は、第1表示領域510、第2表示領域520、患者情報表示領域530、検索条件表示領域540を有している。患者情報表示領域530は、目標の設定が行われるリハビリ患者90(ここでは、対象患者91と呼ぶ。)に関する患者情報が表示されている。例えば、患者情報表示領域530は、対象患者91の年齢、性別、診断名、障害側などを表示するウィンドウである。
【0060】
検索条件表示領域540には、対象患者91に類似する過去のリハビリ患者90を検索するための検索条件が表示されている。過去のリハビリ患者90を過去患者92と呼ぶ。つまり、検索条件表示領域540は、補助者80等が検索条件を入力するためのウィンドウである。検索条件表示領域540には、検索条件を入力するためのプルダウンメニュが表示されている。
【0061】
図5では、検索条件として、年齢(40代)、疾患(脳卒中)、歩行FIM(3)、補装具(KAFO)、補助具(四脚杖)等が設定されている。検索条件のデータは、対象患者91の患者情報に応じて入力される。また、検索条件のデータは、対象患者91のリハビリ患者情報から自動入力されてもよく、補助者80等が手動で入力してもよい。
【0062】
さらに、検索条件として、発症時からの経過日数(2週時)が設定されている。例えば、リハビリ開始から2週間目における各リハビリ患者のデータを参照して、類似するリハビリ患者を抽出することができる。検索ボタンである状態分布更新分布ボタンをクリックすることで、リハビリ支援装置10が記憶部13等を参照して、検索条件に一致するリハビリ患者90を抽出する。これにより、過去患者92の中から対象患者91と類似する過去患者92が抽出される。対象患者91に応じた検索条件に応じて、過去患者92をフィルタリングすることができる。これにより、前提条件が類似する過去患者92を母集団として設定することができる。
【0063】
第1表示領域510は、対象患者91の位置づけが分かる表示を行う。さらに、第1表示領域510の表示は、リハビリ訓練の進捗情報に応じて、更新される。例えば、第1表示領域510は、長期目標として、退院時の目標を設定するために、検索条件が一致した過去患者92が、退院時にどのような状態になっていたかを示す情報を表示する。
【0064】
表示部14は、類似する過去患者92の退院時の状態に応じて、複数の過去患者92をグループ分けして表示画面に表示している。つまり、複数の過去患者92が複数のグループに分類される。そして、第1表示領域510は、各グループに属する過去患者92の人数分布を示している。ここでは、検索条件に一致した過去患者92の人数情報を2次元マトリクス状に表示している。
【0065】
2次元マトリクスは、評価項目の評価指標に応じて生成される。具体的には、2次元マトリクスの横軸は、退院時の歩行FIMであり、縦軸は、退院時の補装具となっている。ここで、第1表示領域510の2次元マトリクスの生成に使用された評価項目を優先評価項目とする。つまり、歩行FIM及び補装具が優先評価項目となる。優先評価項目以外の評価項目を非優先評価項目とする。非優先項目は、補助具となる。優先評価項目か非優先評価項目かであるかは、予め設定されてもよい。つまり、リハビリ訓練の回復を示す評価項目として重要視される評価項目が優先評価項目となる。回復に対する寄与率が高い評価項目が優先評価項目となる。
【0066】
歩行FIMは、未入力を含めて8つに区分され、補装具は、9つに区分されている。過去患者92が72(=8×9)のグループに区分されているため、
図5では、第1表示領域510に72個の表示枠511が示されている。表示枠511は、四角形のマスとなっている。
【0067】
各表示枠511は、各グループに属する過去患者92の人数を示す人数情報を表示される。ここでは、人数がアイコンの数や大きさ等によって示される。例えば、1つのアイコンが100人を示している。100人未満の端数は、アイコンの大きさ等で示されている。なお、アイコンがない表示枠511は、類似する過去患者92がいないグループとなる。もちろん、人数情報は、アイコンの数や大きさに限られるものではない。表示色や濃淡などで人数情報を示してもよい。表示部14は、人数に応じたカラーバーを設定し、人数の増減におうじて表示色を変えてもよい。あるいは、表示部14は、人数に応じてグレースケールの濃淡を変えてもよい。また、表示部14は、人数情報として、人数を示す数字を表示枠511内に表示しても良い。
【0068】
さらに、表示枠511は、退院までの日数に応じた日数情報を表示されてもよい。つまり、各グループに属する複数の過去患者92が退院までに要した日数の平均値や中央値が日数情報となる。目標取得部11bは、各リハビリ患者90の入退院日により、日数情報を求めることができる。目標取得部11bは、記憶部13等を参照して、人数情報や日数情報を算出する。なお、退院したか否かは。
図3に示した退院日のデータの有無に応じて判定可能である。そして、退院日の直近の取得日の評価指標が退院時の評価指標となる。
【0069】
このように、表示部14は、72のグループにおいて、対象患者91の位置付けを示す情報を表示している。さらに、表示部14は、リハビリの進捗に応じて、情報を更新表示する。補助者80等は、類似する過去患者92が退院時にどの程度まで回復したかを容易に把握することができる。さらに、補助者80等は、類似する過去患者92が何日程度で退院することができたかを把握することができる。よって、補助者80は、対象患者91に対して適切な訓練計画を策定することができる。補助者80は、過去患者92の回復過程を参照して、リハビリ訓練の目標を設定することができる。対象患者91は、リハビリ訓練に対して、高いモチベーションを維持することができる。
【0070】
補助者80又は対象患者91は、目標となるグループを選択することができる。人数が最も多いグループや比較的多いグループの表示枠511を補助者80がクリックすると、そのグループが選択グループとして設定される。あるいは、対象患者91が回復したいレベルに応じたグループを選択グループとして指定してもよい。補助者80は、選択グループに属する過去患者92の過去のリハビリの履歴などを参照して、対象患者91のリハビリ計画を策定することができる。補助者80は、類似する過去患者92との比較に基づく目標の設定を行うことができる。
【0071】
さらに、第2表示領域520には、選択グループに属する過去患者92の人数分布が表示されている。ここでは、非優先評価項目である補助具の評価指標に基づいて、表示部14は、選択グループの過去患者92をサブグループにグループ分けして表示させている。
【0072】
具体的には、補助具では、評価指標が9つに区分されている。よって、第2表示領域520には、9つの表示枠521が1列に示されている。各表示枠521は、サブグループに属する過去患者92の人数情報とその日数情報が表示されている。表示枠521に表示される人数情報と日数情報は、表示枠511の情報と同じであるため、説明を省略する。
【0073】
さらに、補助者80等は、目標となるサブグループを選択することができる。人数が最も多いサブグループや比較的多いサブグループの表示枠521を補助者80がクリックすると、そのサブグループが選択サブグループとして設定される。
【0074】
このように、目標取得部11bは、対象患者91に類似したグループから、目標を取得してもよい。目標は、対象患者91に類似したグループに属する過去患者92のFIM及び評価指標を含んでもよいし、FIM及び評価指標のいずれかを含んでもよい。例えば、目標取得部11bは、対象患者91の長期目標として、退院時のFIMを設定する。目標取得部11bは、過去患者92の退院時のFIMと同様のFIMを、対象患者91の長期目標として取得する。長期目標のFIM(例えば、7)は、複数の達成段階(1~7)を有しており、達成するのに長期の期間を有する。また、目標取得部11bは、対象患者91の短期目標として、所定の日数後のFIMを設定する。目標取得部11bは、過去患者92の所定の日数後のFIMと同様のFIMを、対象患者91の短期目標として取得する。短期目標のFIM(例えば、3)は、複数の達成段階(1~3)を有しており、達成するのに所定の期間を有する。
【0075】
目標取得部11bは、対象患者91の長期目標及び短期目標として、補装具及び補助具等の評価項目を取得してもよい。目標取得部11bは、補助者80等の入力により、長期目標及び短期目標を取得してもよい。目標取得部11bは、選択したグループから、自動的に、長期目標及び短期目標を取得してもよい。
【0076】
<練習項目取得部>
練習項目取得部11cは、長期目標及び短期目標を含む目標を達成するための練習項目を取得する。練習項目取得部11cは、対象患者91に類似する過去患者92の練習項目を参照して、練習項目を取得してもよい。
【0077】
図6は、実施形態1に係る対象患者91の練習実績及びFIMを例示したグラフであり、横軸は、日数を示し、2つの縦軸は、練習時間及びFIMを示す。
図6に示すように、練習項目取得部11cは、対象患者91の練習実績及びFIMを含むリハビリ患者情報を取得する。
図6の例では、対象患者91の発症日は、8月31日である。対象患者91は、9月1日に入院し、すぐに、リハビリを開始している。
図6では、9月1日から9月8日までに記録された練習項目及び評価項目の練習時間、並びに、FIMが示されている。
【0078】
練習項目取得部11cは、対象患者91と類似する他のリハビリ患者90(例えば、過去患者92)に関する練習実績及びFIMを取得する。例えば、対象患者91と同じ病状(例えば、脳梗塞)の1人以上の過去患者92の過去の練習実績及びFIMを、記憶部30等から取得する。
【0079】
図7は、実施形態1に係る過去患者92の練習実績及びFIMを例示したグラフであり、横軸は、日数を示し、2つの縦軸は、練習時間及びFIMを示す。
図7に示すように、練習項目取得部11cは、対象患者91の練習実績及びFIMと類似する過去患者92の練習実績及びFIMを取得する。具体的には、
図6に示す対象患者91のFIMの傾きを含む推移と、過去患者92のFIMの傾きを含む推移との差が、閾値より小さいものを、類似データとして抽出してもよい。
図7に示すように、過去患者92は、6月2日に脳梗塞を発症し、6月3日に入院し、その後、リハビリを開始している。また、過去患者92は、6月17には健常者と同じレベル(FIMは7を示す)まで回復し、6月18日に退院している。
【0080】
練習項目取得部11cは、過去患者92の練習実績及びFIMの基準時と、対象患者91の練習実績及びFIMの基準時とを整合させて、対象患者91の練習項目を取得する。例えば、過去患者92の実績データの発症日(6月2日)と、対象患者91のデータの発症日(8月31)を整合させて、対象患者91の練習項目を、過去患者92の練習実績から取得する。具体的には、練習項目取得部11cは、練習実績及びFIMの入力記録のない9月9日以降の対象患者91の練習項目を、過去患者92の6月13日以降の練習実績から取得する。練習項目取得部11cは、取得した練習実績及びFIMを、入力記録のない9月9日以降の練習項目にはめ込む。練習項目取得部11cは、練習計画から、退院予定日として、9月16日を取得することができる。
【0081】
図8は、実施形態1に係る過去患者92及び対象患者91の練習実績及びFIMを例示したグラフであり、横軸は、日数を示し、2つの縦軸は、練習時間及びFIMを示す。
図8に示すように、表示部14は、対象患者91の練習項目(
図7の下図)を、過去患者92の練習項目(
図7の上図)と比較可能に表示装置に表示させる。表示部14は、練習項目の終了予定日又は退院予定日(
図7の下図では、9月16日)を示す。また、
図8では、表示部14は、対象患者91の練習項目を空欄としているが、対象患者91が退院までの必要な練習項目及び練習時間等を具体的に表示させてもよい。あるいは、表示部14は、練習項目とともに、短期目標又は長期目標を表示させてもよい。表示部14は、このような比較可能なグラフではなく、単に、練習項目の終了予定日又は退院予定日、対象患者91が退院までに必要な練習項目及び練習時間などを単に示すだけであってもよい。
【0082】
<練習実績取得部>
練習実績取得部11dは、リハビリの各練習日に練習した練習項目を練習実績として取得する。練習項目は、例えば、歩行練習(例えば、平地歩行、階段など)、可動域練習、筋力練習を含む。また、練習項目は、食事練習及びトイレ練習等を含んでもよい。練習項目は、訓練装置21及び22を用いるものでもよいし、訓練装置21及び22を用いないものでもよい。練習実績取得部11dは、補助者80等の入力により、練習項目を練習実績として取得してもよい。
【0083】
練習実績は、担当した補助者80の名前又はIDと対応付けられていてもよい。補助者80は、理学療法士、作業療法士、言語療法士、医師及び看護師の少なくともいずれかの属性を含む。練習実績は、このような属性に対応付けられてもよい。また、練習実績は、リハビリ患者90が1人で練習する個別練習や、複数人の患者が集まって練習する集団練習に対応付けられてもよい。なお、個別練習の場合は、補助者80は、リハビリ患者90から練習項目ごとの時間を聴いて、練習実績等のデータをリハビリ支援装置10に入力してもよい。また、練習実績取得部11dは、練習項目ごとの練習実績を、リハビリ患者90に取り付けたセンサ(例えば、ウェアラブルデバイス)から練習項目ごとに取得してもよい。
【0084】
図9は、実施形態1に係る表示部14が練習実績を表示する表示画面を例示した図である。
図9に示すように、表示部14は、表示画面に練習実績を表示してもよい。表示画面には、第1表示領域610、第2表示領域620、第3表示領域630、第4表示領域640、第5表示領域650及び第6表示領域660が表示されている。
【0085】
第1表示領域610は、訓練装置21であるWelWalk―2000からの第1の情報が表示されている。第2表示領域620は、トレッドミルの歩行練習を行う訓練装置22からの第2の情報が表示される。第3表示領域630は、屋内歩行練習を行う訓練装置20からの第3の情報が表示される。第4表示領域640は、応用歩行練習を行う訓練装置20からの第4の情報が表示される。
【0086】
第1表示領域610、第2表示領域620、第3表示領域630及び第4表示領域640には、それぞれ詳細表示ボタン611、621、631、641が含まれている。詳細表示ボタン611、621、631、641をクリックすることで、それぞれの情報が詳細に表示される。なお、
図9では、第1表示領域610の第1の情報が詳細に表示されている。補助者80が詳細表示ボタン611をクリックすると、第1表示領域610が広くなり、詳細表示ボタン611をもう一度クリックすると、第1表示領域610が折り畳まれて小さくなる。
【0087】
表示部14は、表示画面に第1の情報と第2の情報とを並べて表示させてもよい。第1の情報と第2の情報とはグラフやレーダチャートに独立して表示されていてもよい。つまり、第1の情報と第2の情報とは表示画面の異なる領域(表示ウィンドウ)に表示されていてもよい。あるいは、第1の情報と第2の情報とは、同一のグラフやレーダチャートに表示されていてもよい。第1の情報と第2の情報とは、表示画面の共通の領域(表示ウィンドウ)に重畳して表示されていてもよい。さらに、第1の情報と第2の情報とを並べて表示する態様は、上記の表示態様に限定されるものではない。例えば、表示部14は、第1の情報と第2の情報とを同時に表示画面に表示させてもよい。表示部14は、第1の情報と第2の情報とを同じグラフなどに同時に表示画面に表示させてもよい。表示部14は、第1の情報と第2の情報とを異なるグラフなどに同時に表示画面に表示させてもよい。さらには、第1の情報と第2の情報とを異なる形式のグラフで表示させても良い。
【0088】
第1表示領域610について、詳細に説明する。訓練装置21での訓練の達成度合いが複数の項目で評価されている。そして、複数の項目に関するデータが円状又は多角形状のレーダチャート612で示されている。
【0089】
具体的には、訓練装置21は、訓練中に14個の異常歩行動作を検出する(例えば、体幹の前傾、振出し困難、体幹の後傾等)。練習実績取得部11dは、1回のリハビリ訓練における異常歩行動作の検出回数を取得する。表示部14は、基準点613を中心とする14角形上に、検出回数をプロットしている。異常歩行動作の検出回数が0回の場合、検出回数を示す点が基準点613上にプロットされる。そして、検出回数が多くなるほど、基準点613からの距離が遠くなるように、検出回数を示す点がプロットされる。したがって、表示部14は、達成度に応じて、基準点613からの距離が変わるように、表示画面に表示させる。
【0090】
さらに、リハビリ患者90が訓練装置21での訓練を複数回行っている場合には、表示部14は、第1の情報の時間変化を示すように表示してもよい。例えば、直近の5回分の訓練で取得されたデータを表示するようにしてもよい。そして、表示部14は、訓練日(取得日)毎に、点の形状や色を変えて表示を行うようにする。このように、複数回の訓練の達成度を一度に表示することで、訓練の進捗度合いを確認することができる。また、時系列にそって達成度を表示するようにしてもよい。補助者80等が、表示するデータの取得日時やその範囲を指定するようにしてもよい。
【0091】
ここで、各表示領域610~640により、各訓練装置20での達成度を示す情報を表示する。表示画面に表示される表示領域610~640の数は、訓練を行った訓練装置20の数に応じて変化しても良い。たとえば、2つの訓練装置21及び22のみでしか訓練を行わないリハビリ患者90については、表示部14は、第1表示領域610及び第2表示領域620の2つの表示領域のみを表示してもよい。つまり、第3の訓練装置20及び第4の訓練装置20からの情報は取得されないため、第3表示領域630及び第4表示領域640の表示を省略することができる。よって、リハビリ患者90毎に表示領域の数を変えることが可能である。
【0092】
なお、第2表示領域620、第3表示領域630及び第4表示領域640において、それぞれの訓練装置20での達成度に応じた情報が表示される。第2表示領域620は、訓練装置22の達成度に応じた第2の情報を表示する。第3表示領域630は、第3の訓練装置20の達成度に応じた第3の情報を表示し、第4表示領域640は、第4の訓練装置20の達成度に応じた第4の情報を表示する。
【0093】
例えば、それぞれの訓練装置20は、リハビリ患者90の異常歩行動作などの異常動作を検出する。訓練装置20は、異常動作の検出回数をリハビリ支援装置10に送信する。表示部14は、検出回数をレーダチャートとして表示する。もちろん、表示部14は、異常動作以外の情報を表示してもよい。表示部14は、2つ以上の訓練装置20で得られた情報を同時に詳細表示してもよい。また、表示部14は、2つ以上の訓練装置20で得られた情報を1つレーダチャート612上に表示してもよい。
【0094】
第5表示領域650及び第6表示領域660には、練習項目が表示されている。例えば、第5表示領域650には、能力低下対応練習項目(IE)が表示され、第6表示領域660には、上肢機能練習項目(UE)が表示されている。さらに、リハビリ患者90の訓練の達成度合いに応じ、リハビリ支援装置10が効果的な練習項目を提示してもよい。例えば、練習項目取得部11cは、第1の情報及び第2の情報の少なくとも一方に基づいて、効果的な練習項目を取得する。表示部14は、効果的な練習項目を強調して表示してもよい。
【0095】
なお、第5表示領域650及び第6表示領域660に表示される練習項目は、訓練装置20毎に変わってもよく、複数の訓練装置20に対して共通であってもよい。
【0096】
<達成段階取得部>
達成段階取得部11eは、練習した練習実績によって達成した達成段階を取得する。達成段階は、所定の評価項目で示されてもよいし、FIMで示されてもよい。例えば、リハビリ患者90が歩行練習を練習した練習実績によって、FIMが向上した場合には、達成段階取得部11eは、達成した達成段階として向上したFIMを取得する。また、リハビリ患者90が歩行練習を練習した練習実績によって、所定の評価項目を達成した場合には、達成段階取得部11eは、達成した達成段階として所定の評価項目を取得する。
【0097】
患者情報取得部11a、目標取得部11b、練習項目取得部11c、練習実績取得部11d及び達成段階取得部11eは、取得部11として一体化してもよい。患者情報取得部11a、目標取得部11b、練習項目取得部11c、練習実績取得部11d及び達成段階取得部11eのうち、少なくともいずれか2つは、取得部11として一体化してもよい。
【0098】
<予測部>
予測部12は、達成した達成段階に基づいて、目標達成予定日を予測する。目標達成予定日は、長期目標を達成する長期目標達成予定日及び短期目標を達成する短期目標達成予定日を含む。予測部12は、対象患者91の現在までの練習実績と類似する他のリハビリ患者90(過去患者92を含む)における練習実績、達成段階及び目標達成日に基づいて、目標達成予定日を予測してもよい。目標達成日は、他のリハビリ患者90が短期目標を達成した短期目標達成日及び長期目標を達成した長期目標達成日を含む。
【0099】
また、予測部12は、各補助者80に対応付けられた練習実績に基づいて、各目標達成予定日を予測してもよい。よって、リハビリ患者90の目標達成予定日を早めるために適した補助者80を見出すことができる。
【0100】
<記憶部>
記憶部13等(記憶部13及びデータベースDBの少なくともいずれか)は、目標取得部11bによって取得された長期目標及び短期目標、練習実績取得部11dによって取得された練習実績、達成段階取得部11eによって取得された達成段階、並びに、予測部12によって予測された目標達成予定日を記憶する。記憶部13等は、他のリハビリ患者90(過去患者92を含む。)における長期目標、短期目標、練習実績、達成段階、並びに、短期目標達成日及び長期目標達成日を記憶してもよい。
【0101】
記憶部13等は、リハビリ患者90が身体動作の機能を回復させる練習項目を練習した際に、リハビリ患者90を補助した補助者を、練習実績に対応付けて記憶してもよい。補助者80は、理学療法士、作業療法士、言語療法士、医師及び看護師の少なくともいずれかの属性を含む。記憶部13等は、各属性を、練習実績に対応付けて記憶してもよい。練習項目に適した補助者80に当該練習項目を補助させることができ、リハビリ患者90の達成段階を向上させることができる。また、各属性に適した練習項目を補助させることができ、リハビリ患者90の達成段階を向上させることができる。
【0102】
また、記憶部13等は、リハビリ患者90が身体動作の機能を回復させる練習項目を練習する際に、1人で行った個別練習、または、複数で行った集団練習を、練習実績に対応付けて記憶してもよい。リハビリ患者90が練習する練習項目によっては、個別練習で行った方がよい場合と集団練習を行った方がよい場合とがある。よって、個別練習で行った練習実績に基づいた達成段階と、集団練習で行った練習実績に基づいた達成段階とを比べることにより、適した練習方法を選択することができる。
【0103】
また、記憶部13等は、リハビリ患者90のリハビリ患者情報を記憶してもよい。記憶部13等は、リハビリ患者90毎に全評価項目の評価指標を記憶してもよい。もちろん、記憶部13等は、一部の評価項目については、評価指標を未入力とされてもよい。記憶部13等は、リハビリ患者90の回復状況に応じて、評価指標を更新されてもよい。つまり、記憶部13等は、最新の評価指標を記憶している。評価指標は、そのデータを取得した取得日と対応付けられている。発症日及びリハビリ開始日からの日数が対応付けられていてもよい。記憶部13等は、取得日に加えて取得時間などを記憶してもよい。
【0104】
記憶部13等は、初期(発症時)の評価指標を格納していてもよく、発症日から所定期間ごとの評価指標を格納していてもよい。記憶部13等は、リハビリの経過日数に応じた評価指標を時系列に沿って記憶していてもよい。評価項目の評価指標は、端末31を用いて入力するものであってもよく、訓練装置20によって自動的に取得されるものであってもよい。
【0105】
記憶部13等は、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)またはSSD(Solid State Drive)等の不揮発性メモリを含む。記憶部13等は、複数のリハビリ患者90に関する情報を格納するデータベースDBを含んでもよい。記憶部13は、リハビリ患者90に関する情報をリハビリ患者90毎に格納してもよい。
【0106】
<表示部>
表示部14は、補助者80等に対して、長期目標、短期目標、練習項目、練習実績、達成段階、長期目標達成予定日及び短期目標達成予定日等を、例えば、ディスプレイ等の表示装置に表示させる。表示部14は、例えば、練習実績、達成段階及び目標達成予定日等を重畳して表示装置に表示してもよい。表示部14は、特定の補助者80に対応付けられた練習実績、達成段階及び目標達成予定日等を抽出して表示装置に表示させてもよい。
【0107】
図10は、実施形態1に係る表示部14が短期目標、長期目標、練習実績及び達成段階を表示させた表示画面を例示した図である。
図10に示すように、表示部14は、表示画面の中央部に、横軸を日数とし、2つの縦軸を練習時間及びFIMとするグラフを表示させる。グラフの右側縦軸は、練習時間を示し、グラフの左側縦軸は、FIMを示す。これにより、補助者80等は、練習実績とFIM等を並べて確認することができる。
【0108】
練習実績及びFIMは、横軸の0日目を発症日として設定してもよい。発症日とは、症状が出現し始めた日をいう。なお、横軸の0日目を、入院日やリハビリ開始日に変更してもよい。補助者80等は、表示画面の各種ボタンを操作することで、横軸の0日目を、発症日だけでなく、入院日やリハビリ開始日等に変更することもできる。
【0109】
表示部14は、表示画面上でリハビリ患者90の練習実績を、積み上げ棒グラフや折れ線グラフを用いて可視化させてもよい。表示部14は、補助者80が記録したリハビリ患者90の練習項目ごとの練習時間を練習実績として表示させてもよい。
図10において、表示部14は、横軸の練習日数が20日の箇所に、短期目標の線101を表示させている。また、表示部14は、横軸の練習日数が80日の箇所に、長期目標の線102を表示させている。表示部14は、横軸の練習日数が90日のところに、退院予定日を示す線103を表示させている。
【0110】
短期目標及び長期目標の各線101及び102は、前述した目標取得部11bによって取得されたものでもよい。退院予定日の線103は、前述した練習項目取得部11cによって取得されたものでもよい。なお、短期目標、長期目標及び退院予定日の各線101~103は、補助者80等によって任意に設定されたものでもよい。練習項目としては、歩行練習(例えば、平地歩行、階段など)、食事練習、トイレ練習などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
また、
図10に示すように、表示部14は、練習実績等のデータに関連付けて、「しているFIM」111及び「できるFIM」112を表示させている。
【0112】
「しているFIM」は、リハビリ患者90が普段の生活の中で練習項目をどの程度行っているかを示す。例えば、歩行練習の場合において、リハビリ患者90がなんとか杖なしで歩くことも可能であるが、普段の生活では、杖をついて歩いている状態を、「しているFIM」では、「リハビリ患者は杖をついて歩くことができる」と表す。一方、「できるFIM」では、「杖なしで歩くことができる」と表す。「しているFIM」は、定期的(例えば、1月に一回)にリハビリ患者90の様子を観察して練習項目ごとに補助者80によって取得されてもよい。「できるFIM」は、日々の生活の患者の様子を観察して練習項目ごと補助者80によって取得されてもよい。また、「しているFIM」は、入院時と退院時において、それぞれ補助者80によって取得され、その差を、リハビリの実績を評価するために使用されてもよい。
【0113】
回復の観点から、「しているFIM」と「できるFIM」との値は、できる限り一致することが望ましい。したがって、補助者80は、これらの値の差をできる限り、近づけるような対策を患者に施すことが好ましい。
【0114】
図11は、実施形態1に係る表示部14が短期目標、長期目標、練習実績、達成段階及び目標達成予定日を表示させた表示画面を例示した図である。
図11に示すように、表示部14は、予測部12が予測した短期目標達成予定日(線104)及び長期目標達成予定日(線105)を含む目標達成予定日を重畳して表示装置に表示させてもよい。よって、立案した短期目標及び長期目標との差分を直感的に認識できるようにすることができる。これにより、補助者80等は、短期目標及び長期目標に対するリハビリの進捗状況を容易に把握することができる。
【0115】
具体的には、短期目標の線101と短期目標達成予定日の線104との間隔が大きい場合には、短期目標に対する練習実績になんらかの問題があることを示す。この場合には、表示部14は、補助者80等に短期目標を達成できるかアラートを表示してもよい。よって、補助者80等は、練習項目を見直し、達成段階が向上するようにしてもよい。例えば、補助者80等は、達成段階が向上するような練習項目を練習項目取得部11cに取得させてもよい。練習項目取得部11cは、他のリハビリ患者90における練習実績、達成段階及び目標達成日、並びに、予測部12が予測した目標達成予定日に基づいて、新たな練習項目を取得する。
【0116】
一方、短期目標の線101と短期目標達成予定日の線104との間隔が小さい場合には、短期目標に対する練習実績が十分であることを示す。この場合には、補助者80等は、このペースを保つようにすることができる。長期目標の線102及び長期目標達成予定日の線105の場合も同様である。よって、補助者80等は、練習実績及び達成段階に基づいた目標達成の進捗を把握し、練習項目を変更することができる。また、目標達成の進捗を把握することで、リハビリへのモチベーションを高めることができる。
【0117】
表示部14は、表示画面上で、練習実績に対応付けられた補助者80を表示させてもよい。例えば、表示部14は、歩行練習に対応付けられた補助者80を表示させてもよい。また、補助者等80は、表示画面上で補助者80の名前等を選択することにより、特定の補助者80に対応付けられた練習実績を抽出して表示装置に表示させてもよい。表示部14は、担当した補助者80に対応付けられた練習実績等のデータを色分け等により区別可能に表示させてもよい。表示部14は、補助者80の属性毎に区別可能に表示させてもよい。また、表示部14は、リハビリ患者90が1人で練習する個別練習、及び、複数人の患者が集まって練習する集団練習を区別可能に表示させてもよい。
【0118】
<リハビリ支援方法>
次に、本実施形態のリハビリ支援方法を説明する。
図12は、実施形態1に係るリハビリ支援方法を例示したフローチャート図である。
【0119】
図12のステップS11に示すように、患者情報、短期目標、長期目標、練習項目、練習実績及び達成段階等を取得する。具体的には、例えば、患者情報取得部11aは、記憶部13に記憶されたリハビリ患者情報を取得する。
【0120】
なお、ステップS11の前に、リハビリ患者情報として、他のリハビリ患者90における患者情報、短期目標、長期目標、練習項目、練習実績、達成段階、短期目標達成日及び長期目標達成日等を記憶部13に記憶させるステップをさらに備えてもよい。そして、患者情報取得部11aは、記憶部13から他のリハビリ患者90のリハビリ患者情報を取得してもよい。
【0121】
目標取得部11bは、短期目標及び長期目標を取得する。具体的には、目標取得部11bは、リハビリ患者90における所定の身体動作の機能を回復させるために、長期の期間をかけて達成する長期目標及び短期の期間をかけて達成する短期目標を取得する。目標取得部11bは、他のリハビリ患者90のリハビリ患者情報を参照して、短期目標及び長期目標を取得してもよい。
【0122】
練習項目取得部11cは、練習項目を取得する。練習項目取得部11cは、対象患者91のリハビリ患者情報、練習実績及び達成段階に類似した他のリハビリ患者90の練習項目、練習実績及び達成段階に基づいて、練習項目を取得してもよい。
【0123】
練習実績取得部11dは、練習実績を取得する。具体的には、練習実績取得部11dは、各練習日に練習した練習項目を練習実績として取得する。達成段階取得部11eは、練習実績によって達成した達成段階を取得する。
【0124】
次に、ステップS12に示すように、目標達成予定日を予測する。具体的には、予測部12は、達成した達成段階に基づいて、長期目標達成予定日及び短期目標達成予定日を含む目標達成予定日を予測する。目標達成予定日を予測する際において、予測部12は、対象患者91の練習実績及び達成段階に類似した他のリハビリ患者90における練習実績、達成段階及び目標達成日に基づいて、目標達成予定日を予測してもよい。また、各補助者80に対応付けられた練習実績及び達成段階に基づいて、各目標達成予定日を予測してもよい。
【0125】
なお、練習した練習実績、達成した達成段階、及び、予測した目標達成予定日を記憶部13に記憶させてもよい。具体的には、取得部11及び予測部12は、取得した各情報及び予測した目標達成予定日を記憶部13に記憶させてもよい。取得した各情報及び予測した目標達成予定日を記憶部13に記憶させる際において、リハビリ患者90を補助した補助者80を、練習実績に対応付けて記憶させてもよい。また、リハビリ患者90が練習項目を練習する際に、1人で行った個別練習、または、複数で行った集団練習を、練習実績に対応付けて記憶させてもよい。
【0126】
次に、ステップS13に示すように、練習実績及び達成段階等と目標達成予定日とを重畳して表示装置に表示させる。表示部14は、練習実績及び達成段階等と目標達成予定日とを重畳して表示装置に表示させる際において、特定の補助者80に対応付けられた練習実績を抽出して表示装置に表示させてもよい。このようにして、リハビリ支援装置10は、リハビリ患者90の各種データを表示装置に表示させることができる。
【0127】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態のリハビリ支援装置10は、リハビリ患者90における所定の身体動作の機能を回復させるための目標、練習実績、達成段階、及び、目標達成予定日を重畳して表示装置に表示させる。よって、計画した目標を現在の練習実績及び達成段階と合わせて表示することで、目標までの遅れや進捗状況を直観的に確認・認識することができる。これにより、訓練開始から退院までの長期に渡って、リハビリのモチベーションを維持することができる。
【0128】
予測部12は、対象患者91の練習実績及び達成段階に類似した他のリハビリ患者90における練習実績及び達成段階に基づいて、目標達成予定日を予測する。よって、目標達成予定日の精度を向上させることができる。
【0129】
記憶部13は、リハビリ患者90を補助した補助者80を、練習実績に対応付けて記憶する。よって、予測部12は、各補助者80に対応付けられた各練習実績及び各達成段階に基づいて各補助者80に対応した目標達成予定日を予測することができる。これにより、目標達成予定日を早めるために、最適の補助者80に対応付けられた各練習項目を選択して練習することができる。
【0130】
また、記憶部13は、1人で行った個別練習、または、複数で行った集団練習を、練習実績に対応付けて記憶する。よって、予測部12は、個別練習または集団練習に対応付けられた各練習実績及び各達成段階に基づいて目標達成予定日を予測することができる。これにより、目標達成予定日を早めるために、個別練習または集団練習のうち最適な各練習項目を選択して練習することができる。
【0131】
次に、上述したリハビリ支援方法をプログラムで実行するためのリハビリ支援装置10の構成を説明する。
図13は、実施形態1に係るリハビリ支援装置10の構成例を示すブロック図である。
図13に示すように、リハビリ支援装置10は、インターフェース1201、プロセッサ1202及びメモリ1203を含む。インターフェース1201は、通信システムを構成する他のネットワークノード装置と通信するために使用される。インターフェース1201は、無線通信を行うために使用されてもよい。
【0132】
プロセッサ1202は、メモリ1203からソフトウェア(コンピュータプログラム)を読み出して実行することで、上述の実施形態においてフローチャートもしくはシーケンスを用いて説明されたリハビリ支援装置10の処理を行う。プロセッサ1202は、例えば、マイクロプロセッサ、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、ECU(Electronic Control Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等であってもよい。プロセッサ1202は、複数のプロセッサを含んでもよい。
【0133】
メモリ1203は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。メモリ1203は、プロセッサ1202から離れて配置されたストレージを含んでもよい。この場合、プロセッサ1202は、図示されていない入出力(I/O)インターフェースを介してメモリ1203にアクセスしてもよい。
【0134】
メモリ1203は、ソフトウェアモジュール群を格納するために使用される。プロセッサ1202は、これらのソフトウェアモジュール群をメモリ1203から読み出して実行することで、上述の実施形態において説明されたリハビリ支援装置10の処理を行うことができる。リハビリ支援装置10等が有するプロセッサの各々は、図面を用いて説明されたアルゴリズムをコンピュータに行わせるための命令群を含む1又は複数のプログラムを実行する。
【0135】
また、上述したシステム、装置、端末等における処理の一部又は全部は、コンピュータプログラムとして実現可能である。このようなプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0136】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態よる限定は受けない。また、実施形態1における各構成は、適宜、組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0137】
1 支援システム
10 リハビリ支援装置
11 取得部
11a 患者情報取得部
11b 目標取得部
11c 練習項目取得部
11d 練習実績取得部
11e 達成段階取得部
12 予測部
13 記憶部
14 表示部
20、21、22 訓練装置
31 端末
80 補助者
90 リハビリ患者
91 対象患者
92 過去患者
101、102、103、105、106 線
111 しているFIM
112 できるFIM
510 第1表示領域
511 表示枠
520 第2表示領域
512 表示枠
530 患者情報表示領域
540 検索条件表示領域
610 第1表示領域
611 詳細表示ボタン
612 レーダチャート
613 基準点
620 第2表示領域
621 詳細表示ボタン
630 第3表示領域
631 詳細表示ボタン
640 第4表示領域
641 詳細表示ボタン
650 第5表示領域
660 第6表示領域
1201 インターフェース
1202 プロセッサ
1203 メモリ
DB データベース
N ネットワーク