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  • 特開-車両部品の接合構造 図1
  • 特開-車両部品の接合構造 図2
  • 特開-車両部品の接合構造 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003017
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】車両部品の接合構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 27/02 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
B62D27/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103455
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朝井 雅剛
(72)【発明者】
【氏名】矢野 博人
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203BB54
3D203BB55
3D203BB57
3D203CA12
3D203CA66
3D203CB07
3D203CB09
3D203CB18
3D203CB22
3D203CB26
(57)【要約】
【課題】本開示は、車両部品の接合部に要求される高いシール性と優れた耐衝撃性を両立させることが可能な車両部品の接合構造を提供する。
【解決手段】第1部品VP1と第2部品VP2とを接合する車両部品VPの接合構造JC。第1部品VP1に設けられた凸部CVの外周壁CV1と、第2部品VP2に設けられて第1部品VP1の凸部CVを係合させる凹部CNの内周壁CN1との間に、ダイラタント流体DFが封入されたシール部材SMが配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部品と第2部品とを接合する車両部品の接合構造であって、
前記第1部品に設けられた凸部の外周壁と、前記第2部品に設けられて前記第1部品の前記凸部を係合させる凹部の内周壁との間に、ダイラタント流体が封入されたシール部材が配置されることを特徴とする車両部品の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両部品の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電食防止用シール材を介して異種金属からなる第一、第二パネルの互いの端部を接合する車体のパネル接合構造に関する発明が知られている(下記特許文献1を参照)。特許文献1は、互いに異なる金属からなり、車体を構成する第一、第二パネルの接合構造を開示している。
【0003】
特許文献1のパネル接合構造は、第一、第二パネルのそれぞれの端部を折り曲げて起立面を形成し、この起立面の端部をさらに折り曲げて接合面を形成し、第一パネルの接合面の上側に電食防止用シール材を介して第二パネルの接合面を重複させて接合する。この従来のパネル接合構造において、第一パネルの接合面は、先端部にへこんだエンボス部が形成される。また、このエンボス部が形成されていない部分は、エンボス部よりも起立面からの延在長が長くなるように設定されている。
【0004】
このような構成により、第一パネルの接合面の先端部に形成されたエンボス部と、このエンボス部よりも起立面からの延在長が長いエンボス部が形成されていない部分とにより、第一、第二パネル間からはみ出した電食防止用シール材を受け止めることができる。これにより、電食防止用シール材の垂れ落ちを抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-283841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
サーキュラーエコノミーの一環として、従来は一つであった車両部品を複数の部品に分割し、その複数の部品の一部を複数の車種で共用化することが検討されている。このように、一部の部品を複数の車種で共用化することで、新たに製造が必要な部品点数を削減することができる。また、共有化する部品の再利用が可能になり、サーキュラーエコノミーを向上させることができる。
【0007】
しかしながら、従来は一つであった車両部品を複数の部品に分割すると、分割された部品同士の間に新たな接合部が生じる。この新たな接合部は、水などの浸入を防止するシール性と衝突等によって生じ得る衝撃に耐えうる耐衝撃性の両立が求められる。本開示は、車両部品の接合部に要求されるシール性と耐衝撃性を両立させることが可能な車両部品の接合構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、第1部品と第2部品とを接合する車両部品の接合構造であって、前記第1部品に設けられた凸部の外周壁と、前記第2部品に設けられて前記第1部品の前記凸部を係合させる凹部の内周壁との間に、ダイラタント流体が封入されたシール部材が配置されることを特徴とする車両部品の接合構造である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の上記一態様によれば、車両部品の接合部に要求されるシール性と耐衝撃性を両立させることが可能な車両部品の接合構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示に係る車両部品の接合構造の実施形態を示す車両部品の概略側面図。
図2図1の第1部品と第2部品との接合構造を示す分解斜視図。
図3図2の接合構造における第1部品と第2部品の接合状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示に係る車両部品の接合構造の実施形態を説明する。
【0012】
図1は、本開示に係る車両部品の接合構造の実施形態を示す車両部品VPの概略側面図である。車両部品VPは、たとえば、フロントバンパーFB、フェンダーF、ボディB、および、リアバンパーRBなどを含む。本実施形態において、ボディBは、たとえば、第1部品VP1としてのアッパーボディUPBと、第2部品VP2としてのアンダーボディUNBを含む複数の部品に分割されている。
【0013】
従来は一つの部品であったボディBをアッパーボディUPBとアンダーボディUNBとを含む複数の部品に分割することで、複数の車種においてアンダーボディUNBを共用化することができる。これにより、複数の車種においてアッパーボディUPBだけを取り換えることが可能になり、新たに製造が必要な部品点数を削減することができる。また、共有化するアンダーボディUNBの再利用が可能になり、サーキュラーエコノミーを向上させることができる。
【0014】
図2は、図1の第1部品VP1と第2部品VP2との接合構造JCを示す分解斜視図である。図3は、図2の車両部品VPの接合構造JCにおける第1部品VP1と第2部品VP2の接合状態を示す斜視図である。図1に示すように、車両部品VPのうち、第1部品VP1としてのアッパーボディUPBと、第2部品VP2としてのアンダーボディUNBとは、たとえば、左右にそれぞれ3カ所ずつ、合計で6カ所の接合部JPを有している。
【0015】
図1に示す第1部品VP1と第2部品VP2との間の複数の接合部JPの各々は、たとえば、図2および図3に示す車両部品VPの接合構造JCによって接合されている。すなわち、本実施形態の車両部品VPの接合構造JCは、第1部品VP1と第2部品VP2とを接合する構造である。なお、第1部品VP1および第2部品VP2は、それぞれアッパーボディUPBおよびアンダーボディUNBに限定されず、他の車両部品VPであってもよい。
【0016】
本実施形態の車両部品VPの接合構造JCの接合対象である第1部品VP1と第2部品VP2は、それぞれ、凸部CVと凹部CNを有している。第1部品VP1の凸部CVは、たとえば、第1部品VP1の底面の中央部から下方へ突出するように設けられている。また、第1部品VP1の凸部CVは、たとえば、突出方向に対して交差する方向に凸部CVを貫通するネジ穴SHまたは貫通孔THを有している。図3に示すように、ネジ穴SHにはボルトBLが螺合され、貫通孔THにはボルトBLまたはピンPが挿通される。
【0017】
第2部品VP2の凹部CNは、その内側に第1部品VP1の凸部CVを受け入れる。第2部品VP2の凹部CNは、たとえば、内周壁CN1と底面CN2とを有し、第2部品VP2の上端面に凹状に設けられている。また、凹部CNは、たとえば、底面CN2に凹状に設けられて第1部品VP1の凸部CVの先端側の部分を係合させる係合穴CN3を有している。
【0018】
第2部品VP2の係合穴CN3は、第1部品VP1の凸部CVの形状および寸法に対応する形状および寸法を有し、第1部品VP1の凸部CVの先端側の部分を所定の寸法公差でぴったりと係合させる。図3に示すように、第1部品VP1の凸部CVの先端側の部分を第2部品VP2の凹部CNの係合穴CN3に係合させ、第1部品VP1の底面を第2部品VP2の上面に当接させる。
【0019】
この図3に示す状態で、第1部品VP1の凸部CVの外周壁CV1と、第2部品VP2の凹部CNの内周壁CN1との間には、シール部材SMを収容する空間が形成される。より詳細には、第1部品VP1の底面および凸部CVの外周壁CV1と、第2部品VP2の凹部CNの内周壁CN1および底面CN2とによって、シール部材SMを収容する空間が形成される。
【0020】
また、第2部品VP2の凹部CNは、たとえば、第1部品VP1のネジ穴SHまたは貫通孔THに対応する位置に、ボルトBLまたはピンPを挿通させる貫通孔TH、もしくは、ボルトBLを螺合させるネジ穴SHを有している。たとえば、図3に示すように、ボルトBLを、第1部品VP1のネジ穴SHに螺合させて第2部品VP2の貫通孔THに挿通させ、または、第1部品VP1の貫通孔THに挿通させて第2部品VP2のネジ穴SHに螺合させ、もしくは、ピンPを双方の貫通孔THに挿通させる。これにより、第1部品VP1を第2部品VP2に固定することができる。
【0021】
シール部材SMは、第1部品VP1に設けられた凸部CVの外周壁CV1と、第2部品VP2に設けられて第1部品VP1の凸部CVを係合させる凹部CNの内周壁CN1との間に配置され、第1部品VP1と第2部品VP2との間を封止する。シール部材SMは、たとえば、タイヤチューブのような、弾性を有する中空のリング状の部材であり、内部にダイラタント流体DFが封入されている。
【0022】
ダイラタント流体DFは、ダイラタンシーまたはせん断増粘性を有する粉粒体と液体との混合物であり、ダイラタンシー流体、または、せん断増粘流体とも呼ばれる。ダイラタンシーまたはせん断増粘性は、ゆっくりとした変形に対しては流動性を示し、急激な変形に対しては固体的に振る舞う性質である。たとえば、粉粒体である片栗粉に、液体として水を加えることで、ダイラタント流体DFが得られる。
【0023】
粉粒体として片栗粉を用い、液体として水を用いてダイラタント流体DFを生成する場合には、片栗粉の重量を水の重量で除した混合比を1.45から1.6の間に調整することができる。上記の範囲で片栗粉と水を混合したダイラタント流体DFを袋に入れ、シート状に成形して鋼板の上に乗せ、デュポン衝撃試験機を用いてダイラタント流体DFに衝撃を加えて鋼鈑の凹みを比較検証した。その結果、上記の混合比が大きくなるほど、鋼鈑の凹みが減少した。また、片栗粉と水の混合比が1.6のときに、ダイラタント流体DFを載せた鋼鈑の凹みは、ダイラタント流体DFを載せない鋼鈑の凹みよりも約80%程度、削減された。
【0024】
以下、本実施形態の車両部品VPの接合構造JCの作用を説明する。
【0025】
サーキュラーエコノミーの一環として、たとえば、ボディBなどの車両部品VPを、アッパーボディUPBとアンダーボディUNBを含む複数の部品に分割し、その複数の部品の一部であるアンダーボディUNBを複数の車種で共用化することが検討されている。このように、アンダーボディUNBを複数の車種で共用化することで、新たに製造が必要な部品点数を削減することができる。また、共有化するアンダーボディUNBの再利用が可能になり、サーキュラーエコノミーを向上させることができる。
【0026】
しかしながら、ボディBなどの車両部品VPを、アッパーボディUPBなどの第1部品VP1と、アンダーボディUNBなどの第2部品VP2を含む複数の部品に分割すると、分割された第1部品VP1と第2部品VP2との間に新たな接合部JPが発生する。この新たな接合部JPは、水などの浸入を防止するシール性と衝突等によって生じ得る衝撃に耐えうる耐衝撃性の両立が求められる。
【0027】
これに対し、第1部品VP1と第2部品VP2とを接合する本実施形態の車両部品VPの接合構造JCは、次の構成を特徴としている。車両部品VPの接合構造JCは、第1部品VP1に設けられた凸部CVの外周壁CV1と、第2部品VP2に設けられて第1部品VP1の凸部CVを係合させる凹部CNの内周壁CN1との間に、ダイラタント流体DFが封入されたシール部材SMが配置される。
【0028】
このように、本実施形態の車両部品VPの接合構造JCによれば、第1部品VP1と第2部品VP2との間にシール部材SMを挟み込むことで、水などの浸入を防止する高いシール性を発揮することができる。また、第1部品VP1と第2部品VP2との間に配置されるシール部材SMにダイラタント流体DFを封入することで、第1部品VP1と第2部品VP2との接合部JPに加わる衝撃をダイラタント流体DFによって緩和することができる。したがって、第1部品VP1と第2部品VP2とを接合する車両部品VPの接合構造JCの耐衝撃性を向上させることができる。
【0029】
また、シール部材SMによってシール性が確保されることで、第1部品VP1と第2部品VP2との間の接合部JPにシーラを塗布する必要がなくなる。これにより、車両の製造工程を簡略化して生産性を向上させることができるだけでなく、第2部品VP2の再利用時にシーラを除去する必要がなくなる。また、第1部品VP1と第2部品VP2との間の接合部JPにシーラを塗布することによる段差が形成されないため、接合部JPの外観の美感が向上する。
【0030】
また、シール部材SMに封入されたダイラタント流体DFによって車両部品VPの接合構造JCの耐衝撃性を確保することができるので、第2部品VP2の凹部CNの内側など、強度が低い部分に鋼鈑補強材を張り付ける必要がなくなり、生産性が向上する。以上説明したように、本実施形態によれば、車両部品VPの接合部JPに要求される高いシール性と優れた耐衝撃性を両立させることが可能な車両部品VPの接合構造JCを提供することができる。
【0031】
以上、図面を用いて本開示に係る車両部品の接合構造の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。たとえば、アッパーボディUPBに凹部CNを設け、アンダーボディUNBに凸部CVを設けてもよい。この場合、アンダーボディUNBが第1部品VP1となり、アッパーボディUPBが第2部品VP2となる。
【符号の説明】
【0032】
CN 凹部
CN1 内周壁
CV 凸部
CV1 外周壁
DF ダイラタント流体
JC 接合構造
SM シール部材
VP 車両部品
VP1 第1部品
VP2 第2部品
図1
図2
図3