(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003023
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】プレス成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 51/30 20060101AFI20241226BHJP
B29C 51/08 20060101ALI20241226BHJP
B30B 15/02 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B29C51/30
B29C51/08
B30B15/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103464
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】國分 正幸
【テーマコード(参考)】
4F202
4F208
【Fターム(参考)】
4F202CA09
4F202CA17
4F202CB01
4F202CK90
4F202CL02
4F202CL50
4F208AC03
4F208AF01
4F208AG05
4F208MA05
4F208MB01
4F208MC03
4F208MH06
(57)【要約】
【課題】簡単な構成により、主成形部からの板材の流出を抑制できるプレス成形装置を提供する。
【解決手段】プレス成形装置50は、板材が載置される第1面10aを有する第1型10と、第1面10aとともに板材を成形する成形部51を構成する第2面20aを有する第2型20とを備えている。成形部51は、主成形部52と、主成形部52の外周側に形成され、第1面10aと第2面20aとの間の距離が主成形部52における距離よりも小さくされた副成形部53とを備えている。第2型20には、スリット部26と、スリット部26と副成形部53との間に設けられ、スリット部26の幅を小さくするように弾性変形可能に構成された撓み部27とが設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材をプレス成形する装置であって、
前記板材が載置される第1面を有する第1型と、
前記第1型に対して接近及び離間するように相対移動可能に設けられ、前記第1面とともに前記板材を成形する成形部を構成する第2面を有する第2型と、を備え、
前記成形部は、主成形部と、前記主成形部の外周側に形成され、前記第1面と前記第2面との間の距離が前記主成形部の外周縁における前記距離よりも小さくされた副成形部と、を備えており、
前記第1型及び前記第2型のうちいずれか一方には、外周面を切り欠いたスリット部と、前記第1型及び前記第2型が相対移動する移動方向において前記スリット部と前記副成形部との間に設けられ、前記移動方向において前記スリット部の幅を小さくするように弾性変形可能に構成された撓み部と、が設けられている、
プレス成形装置。
【請求項2】
前記副成形部は、前記第1面及び前記第2面のいずれか一方に形成され、前記主成形部を取り囲む凸条を含む、
請求項1に記載のプレス成形装置。
【請求項3】
前記スリット部は、前記撓み部を構成する第1対向面と、前記移動方向において前記第1対向面に対向する第2対向面と、を備え、
前記移動方向における前記スリット部の幅は、前記撓み部が弾性変形した際に前記第1対向面が前記第2対向面に当接するように設定されている、
請求項1または請求項2に記載のプレス成形装置。
【請求項4】
前記スリット部は、前記撓み部を構成する第1対向面と、前記移動方向において前記第1対向面に対向する第2対向面と、前記第1対向面と前記第2対向面とを連結する連結面と、を備え、
前記連結面は、前記移動方向に対して湾曲した凹面状である、
請求項1に記載のプレス成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プレス成形用の金型が記載されている。この金型は、上型と、下型とを備えている。上型は、ダイスを有している。ダイスの中央部には、成形用凹部が形成されている。ダイスの周縁部には、ビード用凸部が形成されている。下型は、パンチ、ホルダ、及びクッションを有している。パンチには、ダイスの成形用凹部と係合する成形用凸部が形成されている。ホルダは、パンチの周囲に配置されている。ホルダには、ダイスのビード用凸部に係合するビード用凹部が形成されている。クッションは、ホルダの下面に当接するように配置されている。
【0003】
こうした金型では、ビード用凸部及びビード用凹部が成形用凸部及び成形用凹部に対して先行して板材を成形することでビード部が形成される。そのため、プレス成形時に成形用凹部及び成形用凸部の間への板材の流入、及び当該間からの板材の流出がビード部により抑制される。また、プレス成形の進行に伴ってビード用凸部及びビード用凹部における成形圧力が高くなった場合であっても、クッションにより板材への成形圧力が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうした金型においては、下型が、それぞれ別体のホルダ、パンチ、及びクッションを備える。そのため、金型の構成が複雑化するといった問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのプレス成形装置の各態様を記載する。
[態様1]板材をプレス成形する装置であって、前記板材が載置される第1面を有する第1型と、前記第1型に対して接近及び離間するように相対移動可能に設けられ、前記第1面とともに前記板材を成形する成形部を構成する第2面を有する第2型と、を備え、前記成形部は、主成形部と、前記主成形部の外周側に形成され、前記第1面と前記第2面との間の距離が前記主成形部の外周縁における前記距離よりも小さくされた副成形部と、を備えており、前記第1型及び前記第2型のうちいずれか一方には、外周面を切り欠いたスリット部と、前記第1型及び前記第2型が相対移動する移動方向において前記スリット部と前記副成形部との間に設けられ、前記移動方向において前記スリット部の幅を小さくするように弾性変形可能に構成された撓み部と、が設けられている、プレス成形装置。
【0007】
上記構成によれば、第1型と第2型とを互いに接近させて板材をプレス成形する際、副成形部が主成形部の外周縁に対して先行して板材をプレスする。そのため、成形圧力により主成形部から外周側に流出する板材が副成形部よりも外周側に流出しにくくなる。これにより、主成形部からの板材の流出を抑制できる。
【0008】
ここで、副成形部が主成形部の外周縁に対して先行して板材を成形すると、プレス成形の進行に伴って副成形部における成形圧力が高くなる。副成形部における成形圧力が過剰になると、主成形部において板材に対して充分に成形圧力を作用させることが困難な場合がある。この点、上記構成によれば、第1型及び第2型のうちいずれか一方には、スリット部及び撓み部が設けられている。そのため、プレス成形時に副成形部における成形圧力が高くなったとしても、撓み部が移動方向においてスリット部の幅を小さくするように弾性変形することによって上記成形圧力が吸収される。これにより、副成形部において板材に対して必要以上に成形圧力が作用することを抑制できる。以上のことから、クッションを別途設けるといった従来の構成よりも簡単な構成により主成形部において板材に対して充分に成形圧力を作用させることができる。また、板材が加熱された樹脂材である場合、クッションを別途設けるといった従来の技術のように、別体のクッションと第1型または第2型との間に隙間が生じることがないため、当該隙間に樹脂材が流入すること、ひいてはバリが生じることがない。
【0009】
したがって、簡単な構成により、主成形部からの板材の流出を抑制できる。
[態様2]
前記副成形部は、前記第1面及び前記第2面のいずれか一方に形成され、前記主成形部を取り囲む凸条を含む、[態様1]に記載のプレス成形装置。
【0010】
上記構成によれば、主成形部からの板材の流出を抑制するといった効果が主成形部の全周にわたって発揮される。したがって、主成形部からの板材の流出を一層抑制できる。
[態様3]前記スリット部は、前記撓み部を構成する第1対向面と、前記移動方向において前記第1対向面に対向する第2対向面と、を備え、前記移動方向における前記スリット部の幅は、前記撓み部が弾性変形した際に前記第1対向面が前記第2対向面に当接するように設定されている、[態様1]または[態様2]に記載のプレス成形装置。
【0011】
プレス成形時に副成形部における成形圧力が高くなることにより撓み部が弾性変形する場合、撓み量が大きくなることで撓み部が弾性域を超えて塑性変形するおそれがある。この点、上記構成によれば、第1対向面が第2対向面に当接することで撓み部の撓み量が規制される。そのため、撓み部の塑性変形を抑制できる。
【0012】
[態様4]前記スリット部は、前記撓み部を構成する第1対向面と、前記移動方向において前記第1対向面に対向する第2対向面と、前記第1対向面と前記第2対向面とを連結する連結面と、を備え、前記連結面は、前記移動方向に対して湾曲した凹面状である、[態様1]~[態様3]に記載のプレス成形装置。
【0013】
撓み部が弾性変形する場合、スリット部の連結面に応力が集中する。この点、上記構成によれば、スリット部の連結面は、移動方向に対して湾曲した凹面状である。これにより、連結面に作用する上記応力が分散される。したがって、連結面に上記応力が集中することを抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡単な構成により、主成形部からの板材の流出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、プレス成形装置の第1実施形態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のプレス成形装置の要部を拡大して示す断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態のプレス成形装置によるプレス成形工程を示す図であって、板材がプレスされる直前の状態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態のプレス成形装置によるプレス成形工程を示す図であって、板材がプレスされている途中の状態を示す断面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態のプレス成形装置によるプレス成形工程を示す図であって、板材のプレスが完了した直後の状態を示す断面図である。
【
図7】
図7は、プレス成形装置の第2実施形態を示す図であって、
図3に対応する断面図である。
【
図8】
図8は、プレス成形装置の変形例を示す図であって、
図3に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1~
図7を参照して、プレス成形装置の各実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1及び
図2に示すように、プレス成形装置50は、板材30を熱プレス成形する装置であり、第1型10と、第1型10に対して接近及び離間するように移動可能に設けられた第2型20とを有している。板材30は、樹脂材である。樹脂材としては、例えば熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0017】
なお、以降において、第2型20が第1型10に対して移動する方向(
図1及び
図2における上下方向)を、単に移動方向として説明する。
<第1型10>
図1及び
図2に示すように、第1型10は、所謂固定型であり、板材30が載置される第1面10aを有している。
【0018】
第1面10aは、第1主成形部11と、第1主成形部11の外周側に形成された第1副成形部13とを有している。
第1主成形部11は、移動方向と直交する方向(
図2における左右方向)に互いに間隔をあけて並ぶ複数の凸条12を有している。
【0019】
第1副成形部13は、第1主成形部11を取り囲む凸条14を有している。凸条14は、第1主成形部11を隙間なく取り囲んでいる(
図1参照)。なお、以降では、第1面10aのうち、凸条12及び凸条14以外の部分を一般面15として説明する。
【0020】
図3に示すように、凸条14の一般面15からの突出高さH1は、複数の凸条12の一般面15からの突出高さH2よりも大きい(H1>H2)。なお、凸条14の突出高さH1は、凸条14の延在方向の全体にわたって複数の凸条12の突出高さH2よりも大きくされている。
【0021】
<第2型20>
図1及び
図2に示すように、第2型20は、所謂可動型であり、板材30が当接する第2面20aを有している。
【0022】
第2面20aは、第1面10aとともに板材30を成形する成形部51を構成している。
図2に示すように、第2面20aは、移動方向において第1主成形部11と対向する位置に設けられた第2主成形部21と、第1副成形部13と対向する位置に設けられた第2副成形部23とを有している。
【0023】
第2主成形部21は、複数の凸条12の並び方向に互いに間隔をあけて並ぶ複数の溝部22を有している。各溝部22は、複数の凸条12の各々と移動方向において対向している。
【0024】
第1主成形部11と、第2主成形部21とによって主成形部52が構成されている。なお、主成形部52は、板材30の中央部に製品部40を成形する部分である。
第2副成形部23は、第2主成形部21を取り囲む溝部24により構成されている。図示は省略するが、溝部24は、第2主成形部21を隙間なく取り囲んでいる。なお、以降では、第2面20aのうち、溝部22及び溝部24以外の部分を一般面25として説明する。
【0025】
図3に示すように、溝部24の一般面25からの深さD1は、複数の溝部22の一般面25からの深さD2と同一である(D1=D2)。なお、溝部24の深さD1は、溝部24の延在方向の全体にわたって複数の溝部22の深さD2と同一にされている。
【0026】
第1副成形部13と、第2副成形部23とによって副成形部53が構成されている。なお、副成形部53は、板材30の外周部に所謂ビード部41を成形する部分である。
図2に示すように、副成形部53は、主成形部52の外周側に形成されている。より詳しくは、副成形部53は、主成形部52を取り囲んでいる。
【0027】
図3に示すように、移動方向における第1面10aと第2面20aとの間の距離は、副成形部53における距離L1の方が主成形部52における距離L2よりも小さい(L1<L2)。なお、副成形部53における距離L1は、副成形部53の延在方向の全体にわたって主成形部52における距離L2よりも小さくされている。
【0028】
図1~
図3に示すように、第2型20は、第2型20の外周面20bを切り欠いたスリット部26と、撓み部27とを有している。
スリット部26は、外周面20bの全周にわたって設けられるとともに、外周面20bから直交して内側に向かって延びている。
【0029】
図2及び
図3に示すように、スリット部26は、第1対向面26aと、移動方向において第1対向面26aに対向する第2対向面26bと、第1対向面26aと第2対向面26bとを連結する連結面26cと、外周面20bに開口する開口部26dとを有している。
【0030】
第1対向面26a及び第2対向面26bは、移動方向において副成形部53と重なる位置に設けられている。第1対向面26a及び第2対向面26bは、互いに平行に延びている。
【0031】
連結面26cは、移動方向に対して湾曲した凹面状である。より詳しくは、連結面26cは、開口部26dと対向する対向方向において同開口部26dとは反対側に向かって凹んだ凹面状である。
【0032】
撓み部27は、移動方向においてスリット部26と副成形部53との間に設けられている。撓み部27は、第1対向面26aを含むとともに、第2副成形部23を含んでいる。
撓み部27は、移動方向においてスリット部26の幅W1を小さくするように弾性変形可能に構成されている。より詳しくは、撓み部27は、移動方向において第1対向面26aと第2対向面26bとの間の距離を小さくするように弾性変形可能に構成されている。
【0033】
次に、第1実施形態の作用について説明する。
第1実施形態のプレス成形装置50においては、以下のようにして板材30が成形される。
【0034】
図4に示すように、第1型10の第1面10aに板材30が載置された状態で第2型20を第1型10に接近させる。そして、第2面20aの一般面25を板材30に当接させる。
【0035】
次に、
図5に示すように、プレス成形装置50の内部に設けられた図示しないヒータによってプレス成形装置50及び板材30が加熱された状態で、第2型20を第1型10に接近させると、副成形部53が主成形部52に対して先行して板材30をプレスする。つまり、板材30の外周部が、第1副成形部13と第2副成形部23とによって挟持された状態となる。これにより、板材30の外周部にビード部41が成形される。
【0036】
そして、
図6に示すように、第2型20を第1型10に対してさらに接近させると、主成形部52が板材30をプレスする。つまり、板材30の中央部が、第1主成形部11と第2主成形部21とによって挟持された状態となる。これにより、板材30の中央部に製品部40が成形される。
【0037】
このとき、副成形部53が主成形部52に対して先行して板材30を成形しているため、主成形部52から外周側への板材30の流出が抑制される一方で、副成形部53における成形圧力が高くなる。
【0038】
ここで、第2型20には、スリット部26及び撓み部27が設けられている。そのため、撓み部27が移動方向においてスリット部26の幅W1を小さくするように弾性変形する。このとき、スリット部26は、移動方向における開口部26dの幅が小さくなるように変形している。これにより、撓み部27が所謂クッションとして機能することで、上記成形圧力が吸収される。このようにして、板材30に対して製品部40及びその外周を取り囲むビード部41が成形される。なお、製品部40としては、例えば燃料電池用のセパレータ等が挙げられる。
【0039】
次に、第1実施形態の効果について説明する。
(1-1)成形部51は、主成形部52と、第1面10aと第2面20aとの間の距離L1が主成形部52における距離L2よりも小さくされた副成形部53とを備えている。
【0040】
こうした構成によれば、上述した作用を奏することから、成形圧力により主成形部52から外周側に流出する板材30が副成形部53よりも外周側に流出しにくくなる。これにより、主成形部52からの板材30の流出を抑制できる。
【0041】
(1-2)第2型20には、外周面20bを切り欠いたスリット部26と、移動方向においてスリット部26と副成形部53との間に設けられ、移動方向においてスリット部26の幅W1を小さくするように弾性変形可能に構成された撓み部27とが設けられている。
【0042】
副成形部53が主成形部52に対して先行して板材30を成形すると、プレス成形の進行に伴って副成形部53における成形圧力が高くなる。副成形部53における成形圧力が過剰になると、主成形部52において板材30に対して充分に成形圧力を作用させることが困難な場合がある。この点、上記構成によれば、上述した作用を奏することから、副成形部53において板材30に対して必要以上に成形圧力が作用することを抑制できる。そのため、クッションを別途設けるといった従来の構成よりも簡単な構成により主成形部52において板材30に対して充分に成形圧力を作用させることができる。また、クッションを別途設けるといった従来の技術のように、別体のクッションと第1型10または第2型20との間に隙間が生じることがないため、当該隙間に樹脂材が流入すること、ひいてはバリが生じることがない。
【0043】
したがって、簡単な構成により、主成形部52からの板材30の流出を抑制できる。
(1-3)副成形部53は、第1面10aに形成され、主成形部52のうち第1主成形部11を取り囲む凸条14と、第2面20aに形成され、主成形部52のうち第2主成形部21を取り囲む溝部24とによって構成されている。
【0044】
こうした構成によれば、主成形部52からの板材30の流出を抑制するといった効果が主成形部52の全周にわたって発揮される。したがって、主成形部52からの板材30の流出を一層抑制できる。
【0045】
<第2実施形態>
以下、
図7を参照して、プレス成形装置の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、スリット部26の構成が第1実施形態と相違しているため、第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態のプレス成形装置50の構成と同一のまたは対応する構成については、同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
【0046】
図7に示すように、第2実施形態におけるスリット部26は、第1実施形態におけるスリット部26に対して移動方向における幅を部分的に小さくされている。
より詳しくは、第2実施形態におけるスリット部26は、第1実施形態におけるスリット部26の幅W1よりも移動方向における幅を小さくされた第1部分26Aを有している。
【0047】
第1部分26Aは、第1対向面26a及び第2対向面26bにより構成され、開口部26dを含む部分である。すなわち移動方向における第1対向面26aと第2対向面26bとの間の距離(以下、スリット部26の幅W2)は、幅W1よりも小さい(W1>W2)。また、こうした変更に伴い、第2実施形態におけるスリット部26には、連結面26cにより構成され、断面視略円形状を成す第2部分26Bが形成されている。
【0048】
連結面26cは、移動方向において第2部分26Bを第1部分26Aよりも拡幅するように第2対向面26bから延びて、第1対向面26aに連結されている。
移動方向におけるスリット部26の幅W2は、撓み部27が弾性変形した際に第1対向面26aが第2対向面26bに当接するように設定されている。
【0049】
次に、第2実施形態の作用効果について説明する。本実施形態では、第1実施形態の作用効果(1-1)~(1-3)に加えて新たに以下の作用効果を奏することができる。
プレス成形時に副成形部53における成形圧力が高くなることにより撓み部27が弾性変形する場合、撓み量が大きくなることで撓み部27が弾性域を超えて塑性変形するおそれがある。
【0050】
この点、上記構成によれば、
図7に二点鎖線にて示すように、第1対向面26aが第2対向面26bに当接することで撓み部27の撓み量が規制される。そのため、撓み部27の塑性変形を抑制できる。
【0051】
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0052】
・第2実施形態におけるスリット部26は、第1部分26Aよりも拡幅された第2部分26Bを有する形状に限定されず、第2部分26Bを省略してもよい。
・連結面26cは、移動方向に対して湾曲した凹面状に限定されず、例えば、第1対向面26aと第2対向面26bとを移動方向に沿って連結する平面状であってもよい。
【0053】
・スリット部26は、可動型としての第2型20に設けられるものに限定されず、固定型としての第1型10に設けられるものであってもよい。
・凸条14の突出高さH1は、複数の凸条12の突出高さH2よりも大きいものに限定されず、例えば同一であってもよいし(H1=H2)、または突出高さH1が突出高さH2よりも小さくてもよい(H1<H2)。こうした場合であっても、例えば、
図8に示すように、溝部24の深さD1を溝部22の深さD2よりも小さくすることで、副成形部53の距離L1を主成形部52の距離L2よりも小さくすればよい。なお、
図8では、H1=H2の場合について例示している。
【0054】
・上記実施形態では、第1副成形部13が、第1面10aに形成された凸条14を有するとともに、第2副成形部23が、第2面20aに形成された溝部24を有するものを例示したが、副成形部53はこの構成に限定されない。例えば、第1副成形部13が、第1面10aに形成された溝部を有するとともに、第2副成形部23が、第2面20aに形成された凸条を有するようにしてもよい。
【0055】
・副成形部53は、主成形部52を取り囲むものに限定されず、複数の副成形部53が主成形部52の外周側において互いに間隔を置いて当該外周に沿って並ぶものであってもよい。この場合、スリット部26は、第2型20の外周面20bの全周にわたって設けられるものに限定されず、移動方向において副成形部53に対応する箇所にのみ設けるようにしてもよい。
【0056】
・主成形部52は、副成形部53よりも移動方向における第1面10aと第2面20aとの間の距離が大きいものに限定されない。例えば、主成形部52は、部分的に副成形部における距離L1よりも距離L2が小さい部分を有していてもよい。この場合であっても、副成形部53の距離L1が、主成形部52のうち少なくとも外周縁における距離L3よりも小さいものであればよい。
【0057】
・板材30としては、本実施形態で例示した樹脂材に限定されず、例えば金属材料からなる薄板を用いることもできる。
・本発明に係る製造装置は、第2型20が第1型10に対して接近及び離間するように移動するものに限定されず、第1型10が第2型20に対して接近及び離間するように移動するものであってもよい。すなわち、本発明に係る製造装置は、第2型が第1型に対して接近及び離間するように相対移動可能に設けられているものであればよい。
【符号の説明】
【0058】
D1,D2…深さ
H1,H2…高さ
L1,L2,L3…距離
W1,W2…幅
10…第1型
10a…第1面
11…第1主成形部
12…凸条
13…第1副成形部
14…凸条
15…一般面
20…第2型
20a…第2面
20b…外周面
21…第2主成形部
22…溝部
23…第2副成形部
24…溝部
25…一般面
26…スリット部
26A…第1部分
26B…第2部分
26a…第1対向面
26b…第2対向面
26c…連結面
26d…開口
27…撓み部
30…板材
40…製品部
41…ビード部
50…プレス成形装置
51…成形部
52…主成形部
53…副成形部