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特開2025-30296画像形成装置、加熱方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025030296
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】画像形成装置、加熱方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20250228BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G21/00 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023135462
(22)【出願日】2023-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】木村 拓
(72)【発明者】
【氏名】井口 幸宣
(72)【発明者】
【氏名】関 裕正
(72)【発明者】
【氏名】野々山 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 豊
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼津 宏明
【テーマコード(参考)】
2H033
2H270
【Fターム(参考)】
2H033BA25
2H033BA30
2H033CA07
2H033CA23
2H033CA44
2H033CA45
2H033CA46
2H270LA10
2H270LA25
2H270MA35
2H270MB33
2H270MC44
2H270MD02
2H270MG01
2H270MG02
2H270ZC04
2H270ZC05
2H270ZC08
(57)【要約】
【課題】加熱ヒーターを2本に分け直並列を切り替えるという構成を設けることなく、使用される入力電圧が異なっても加熱部の適切な熱量を得ることができる画像形成装置、加熱方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】画像形成装置1は、加熱部311と、複数種類の入力電圧を受け付ける受付部200、700と、受付部が受け付けた入力電圧に応じて、加熱部311に電流が流れるタイミングを決定する決定部400、500、600と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱部と、
複数種類の入力電圧を受け付ける受付部と、
前記受付部が受け付けた入力電圧に応じて、前記加熱部に電流が流れるタイミングを決定する決定部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
入力電圧を検知する電圧検知手段を備え、前記電圧検知手段の検知結果に応じて、前記加熱部に電流が流れるタイミングを決定する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記加熱部の温度を検知する温度検知手段を備え、前記電圧検知手段の検知結果と前記温度検知手段の検知結果に応じて、前記加熱部に電流が流れるタイミングを決定する請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記加熱部に流れる電流の上限値を入力電圧の種類により切り替える請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
入力電圧が相対的に低い場合、入力電圧が相対的に高い場合よりも、加熱部に流れる電流の上限値を高く設定する請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記加熱部に流れる電流の上限値は、加熱部の電力が所定値以下となる値に設定する請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記加熱部に流れる電流をPWM制御により制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、入力電流の半周期内でPWMデューティ比を変化させることにより電流を切り替える請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記加熱部に流れる電流を位相制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、発熱手段への導通角を変化させることにより電流を切り替える請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記加熱部に流れる電流を入力電圧の半周期単位でオン、オフすることにより電流を切り替える請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項10】
画像形成装置が設置された地域についての情報を取得して前記地域を判別する取得手段を有し、
前記加熱部へ流れる電流の上限値を、前記取得手段により判別された地域に対応した値に設定する請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項11】
加熱部を備えた画像形成装置が、
複数種類の入力電圧を受け付ける受付ステップと、
前記受付ステップにより受け付けた入力電圧に応じて、前記加熱部に電流が流れるタイミングを決定する決定ステップと、
を実行することを特徴とする加熱方法。
【請求項12】
加熱部を備えた画像形成装置のコンピュータに、
複数種類の入力電圧を受け付ける受付ステップと、
前記受付ステップにより受け付けた入力電圧に応じて、前記加熱部に電流が流れるタイミングを決定する決定ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、定着器の加熱ヒーター等の加熱部を有する複写機、プリンタ、MFPと称される多機能デジタル複合機等の画像形成装置、加熱方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
定着器を有する上述したような画像形成装置は、世界中に広く流通している。しかし、各地域の商用電源電圧は異なっているため、使用される入力電圧に応じて仕向けを分ける必要があった。
【0003】
用紙等の記録媒体上にトナーを加熱定着させる定着器の熱源である加熱ヒーターは、その定格電圧に対し入力電圧が高いほど電流、電力が大きくなり、熱量も増大する特性を有している。加熱ヒーターの仕向けを分けず、定格電圧を100V系商用電源地域に合わせておき、これを200V系商用電源地域においても使用する場合は、200V系商用電源地域での電流、電力が大きくなり発熱量も増大する。そのため、電流がコンセント定格を超えるとか、発熱量の増加によりトナーを加熱定着する温度のバラつきが大きくなり画像異常が発生する、といった問題が起こる。
【0004】
また、200V系商用電源地域に定格電圧を合わせておき、これを100V系商用電源地域においても使用する場合は、100V系商用電源地域での電流、電力が小さくなり熱量が低下する。そのため、トナーを十分に加熱定着する事が出来ず画像異常が発生する。
【0005】
このような問題を引き起こさないように、使用される入力電圧に応じて加熱ヒーターの仕向けを分ける必要があった。
【0006】
一方、特許文献1には、低い入力電圧と高い入力電圧の二種類の入力電圧において熱源の動作モードを切り替える事で、加熱ヒーターの仕向けを不要とする技術が開示されている。本技術では例えば加熱ヒーターを2本に分け、低い入力電圧では加熱ヒーターを並列に接続する動作モードにて動作し、高い入力電圧では加熱ヒーターを直列に接続する動作モードにて動作する事で、入力電圧によらず適切な熱量を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-003469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、加熱ヒーターを2本に分け、直並列を切り替えるスイッチ素子が必要であるため高価であり、且つ定着器が大型化するという別の問題があった。
【0009】
この発明の目的は、加熱ヒーターを2本に分け直並列を切り替えるという構成を設けることなく、使用される入力電圧が異なっても加熱部の適切な熱量を得ることができる画像形成装置、加熱方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、以下の手段によって達成される。
(1)加熱部と、
複数種類の入力電圧を受け付ける受付部と、
前記受付部が受け付けた入力電圧に応じて、前記加熱部に電流が流れるタイミングを決定する決定部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
(2)入力電圧を検知する電圧検知手段を備え、前記電圧検知手段の検知結果に応じて、前記加熱部に電流が流れるタイミングを決定する前項1に記載の画像形成装置。
(3)前記加熱部の温度を検知する温度検知手段を備え、前記電圧検知手段の検知結果と前記温度検知手段の検知結果に応じて、前記加熱部に電流が流れるタイミングを決定する前項1または2に記載の画像形成装置。
(4)前記加熱部に流れる電流の上限値を入力電圧の種類により切り替える前項1または2に記載の画像形成装置。
(5)入力電圧が相対的に低い場合、入力電圧が相対的に高い場合よりも、加熱部に流れる電流の上限値を高く設定する前項1または2に記載の画像形成装置。
(6)前記加熱部に流れる電流の上限値は、加熱部の電力が所定値以下となる値に設定する前項1または2に記載の画像形成装置。
(7)前記加熱部に流れる電流をPWM制御により制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、入力電流の半周期内でPWMデューティ比を変化させることにより電流を切り替える前項1または2に記載の画像形成装置。
(8)前記加熱部に流れる電流を位相制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、発熱手段への導通角を変化させることにより電流を切り替える前項1または2に記載の画像形成装置。
(9)前記加熱部に流れる電流を入力電圧の半周期単位でオン、オフすることにより電流を切り替える前項1または2に記載の画像形成装置。
(10)画像形成装置が設置された地域についての情報を取得して前記地域を判別する取得手段を有し、
前記加熱部へ流れる電流の上限値を、前記取得手段により判別された地域に対応した値に設定する前項1または2に記載の画像形成装置。
(11)加熱部を備えた画像形成装置が、
複数種類の入力電圧を受け付ける受付ステップと、
前記受付ステップにより受け付けた入力電圧に応じて、前記加熱部に電流が流れるタイミングを決定する決定ステップと、
を実行することを特徴とする加熱方法。
(12)加熱部を備えた画像形成装置のコンピュータに、
複数種類の入力電圧を受け付ける受付ステップと、
前記受付ステップにより受け付けた入力電圧に応じて、前記加熱部に電流が流れるタイミングを決定する決定ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、複数種類の入力電圧を受け付けるとともに、受け付けた入力電圧に応じて、加熱部に電流が流れるタイミングを決定するから、使用される入力電圧が異なっても適切な熱量を得ることができる。このため、加熱ヒーターを2本に分け直並列を切り替えるという構成を設ける必要はないから、定着器等の大型化やコスト増を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】第1の実施形態に係るヒーター制御回路の回路図である。
図3】加熱ローラーの温度が設定値を超えた場合、あるいは設定値を下回った場合のデューティ比の調整値の一例を示す表である。
図4】(A)~(C)は、第1の実施の形態における入力電圧Vin、PWM信号S2、ハロゲンヒーターに流れる電流Ihe、の一例をそれぞれ示す波形図、(D)はPWM信号S2と電流Iheの一部を拡大して示す図である。
図5】第1の実施の形態における入力電圧Vinに対する上限電流値Ihemax、上限電力値Whemax、オンデューティ比上限dutymaxの一例を示す表である。
図6】第2の実施形態に係るヒーター制御回路の回路図である。
図7】(A)~(C)は、第2の実施の形態における入力電圧Vin、位相制御信号S4、ハロゲンヒーターに流れる電流Ihe、の一例をそれぞれ示す波形図である。
図8】第2の実施の形態における入力電圧Vinに対する上限電流値Ihemax、上限電力値Whemax、オン位相角の下限値θminの一例を示す表である。
図9】第3の実施形態に係るヒーター制御回路の回路図である。
図10】(A)~(C)は、第3の実施の形態における入力電圧Vin、半波制御信号S5、ハロゲンヒーター311に流れる電流Ihe、の一例をそれぞれ示す波形図である。
図11】第3の実施の形態における入力電圧Vinに対する上限電流値Ihemax、上限電力値Whemax、オン半波数の上限値HCmaxの一例を示す表である。
図12】第4の実施形態に係るヒーター制御回路の回路図である。
図13】第4の実施の形態における各対象地域の入力電圧Vinに対する上限電流値Ihemax、上限電力値Whemax、オンデューティ比上限dutymaxの一例を示す表である。
図14】第5の実施形態に係るヒーター制御回路の回路図である。
図15】第5の実施の形態における各対象地域の入力電圧Vinに対する上限電流値Ihemax、上限電力値Whemax、オン位相角の下限値θminの一例を示す表である。
図16】第6の実施形態に係るヒーター制御回路の回路図である。
図17】第6の実施の形態における各対象地域の入力電圧Vinに対する上限電流値Ihemax、上限電力値Whemax、オン半波数の上限値HCmaxの一例を示す表である。
図18】第7の実施の形態における各対象地域の入力電圧Vinに対する上限電流値Ihemax、上限電力値Whemax、オンデューティ比上限dutymaxの一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
【0015】
画像形成装置1は、装置本体1Aの下部に給紙部2が、中央部にカラー画像形成部3が、上部に排紙部4がそれぞれ配されて構成されている。給紙部2から排紙部4に渡っては給紙部2から繰り出されたシート(用紙)Sを上方へ搬送するシート搬送路20が設けられている。
【0016】
カラー画像形成部3は、装置本体1Aの上下方向の略中央に配置された駆動ローラ51及び従動ローラ50と、これら駆動および従動ローラ51,50間に水平に掛設されて矢印方向へ走行する中間転写ベルト60と、この走行方向に沿って配置されたイエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色の作像ユニット62Y,62M,62C,62Kとを備えている。
【0017】
各作像ユニット62Y,62M,62C,62Kで作成されたトナー画像を重ね合わせて転写ベルト60に転写し、シート搬送路20を搬送されてくるシートSに対して転写ベルト60の搬送端(図中右端)で2次転写を行い、シートSを定着部300の加熱ローラー310と加圧ローラー320で形成されるニップ部に送給してトナー画像の定着を行うようになっている。加熱ローラー310には加熱ローラー310を所定温度に加熱するための加熱ヒーター311が設けられている。
【0018】
各作像ユニット62Y,62M,62C,62Kは、静電複写方式により作像するもので、それらの周囲に配設された帯電器、4個のレーザーダイオード、ポリゴンミラー、および走査レンズ等を有するプリントヘッド41ならびに4つの反射ミラー42等を備えた露光部40と、現像器61Y,61M,61C,61Kと、感光体ドラムと、転写器等とを備えている。
【0019】
また、各作像ユニット62Y,62M,62C,62Kの現像器61Y,61M,61C,61Kにトナーを補給する補給機構として、トナーカートリッジ70Y,70M,70C,70Kおよびサブホッパ80Y,80M,80C,80Kが前記作像ユニット62Y,62M,62C,62Kの上方位置に配置されている。
【0020】
符号9は制御部であり、符合5はキー部や表示部を備えた操作パネル部である。制御部9は画像形成装置1の全体を統括的に制御するものであり、CPU91とROM92とRAM93と記憶部94等を備えている。
【0021】
CPU91は動作プログラムに従って動作することにより、画像形成装置1の各種の機能を実現する。ROM92は画像形成装置1の動作に必要な各種の設定値等を記憶する。RAM93はCPU91の動作プログラムが展開されるとともに、CPU91が動作する際の作業領域を提供する。記憶部94はCPU91の動作プログラム、その他のアプリケーション、各種のデータ等を記憶する。
【0022】
符号10は電源回路である。電源回路10は、画像形成装置1の使用地域における商用電源からの交流電力を一定電圧の直流に変換しあるいは変換することなく、定着器300の加熱ヒーター311を含む画像形成装置1の各負荷に供給する。
【0023】
ところで、画像形成装置1が使用される国や地域によって、使用される商用電源の電圧(電源回路10の入力電圧)の大きさが異なると、加熱ヒーター311の発熱量が適切な値にならない。このため良好な定着を行うことができずず、画像不良などを生じる。
【0024】
そこで、この実施形態では、従来技術で説明したような複雑な構成を必要とすることなく、入力電圧が異なっても加熱ヒーター311の適切な発熱量を確保するためのヒーター制御回路が設けられている。
[第1の実施形態]
図2は、第1の実施形態に係るヒーター制御回路の回路図である。
【0025】
このヒーター制御回路は、交流電源101と、交流電源101からの交流電圧を全波整流する整流回路102を備え、整流回路102の上流側には、交流電源101からの入力電圧Vinの電圧値(実効値)を検知する入力電圧検知部200(受付部に相当)が接続されている。
【0026】
整流回路102の出力側には、定着器300の加熱ローラー310を加熱するための加熱ヒーター311が直列に接続されている。この実施形態では、加熱ヒーター311としてハロゲンヒーターが用いられている。以下の説明では、加熱ヒーターをハロゲンヒーターと記すことがある。また、整流回路102の正側端子と加熱ヒーター311の間にはコイル103が接続され、加熱ヒーター311と整流回路102の負側端子の間には、FET等からなるスイッチング素子110が接続されている。
【0027】
さらに、加熱ヒーター311とスイッチング素子110の間にアノードが接続され、整流回路102とコイル103の間にカソードが接続されたダイオード104が設けられている。
【0028】
符号400はPWM制御部である。PWM制御部400は、入力電圧検知部200から入力電圧検知信号S1を受信すると共に、加熱ローラー310の近傍に配置された加熱ローラー310の温度を検出するための温度検知部312からの温度検知信号S3を受信する。そして、PWM制御部400は、受信した入力電圧検知信号S1と温度検知信号S3を基に、スイッチング素子110のオンオフを制御するためのPWM信号S2を、スイッチング素子110に対して出力する。なお、PWM制御部400は、前述した制御部9により構成されていても良いし、制御部9の指令下で動作する別の制御部であっても良い。
【0029】
次に、図2に示したヒーター制御回路の動作を説明する。
【0030】
交流電源101が供給されると、入力電圧検知部200が入力電圧Vinの電圧値を検知し入力電圧検知信号S1をPWM制御部400へ送信する。温度検知部312は加熱ローラー310の温度を検知し、温度検知信号S3をPWM制御部400へ送信する。PWM制御部400は入力電圧検知信号S1と温度検知信号S3に基づき、加熱ローラー310の温度が普通紙印字、厚紙印字等の各動作モードにおける設定温度となるようにPWM信号S2のオンデューティ比を決定し、スイッチング素子110へ送信する。
【0031】
例えば、加熱ローラー310の温度が設定温度に到達後、設定値を超えた場合、各入力電圧Vinに応じたデューティ調整値分、デューティ比を下げる事でハロゲンヒーター311への投入電力を下げる。また、加熱ローラー310の温度が設定値を下回った場合は、各入力電圧Vinに応じたデューティ調整値分、デューティ比を上げる事でハロゲンヒーター311への投入電力を上げ、加熱ローラー310の温度が設定温度となるよう制御される。デューティ調整値の一例を図3の表に示す。この例では、加熱ローラー310の温度が設定温度を超えた場合はデューティ比を-0.5%下げ、設定温度を下回った場合はデューティ比を+0.5%挙げるように構成されている。
【0032】
スイッチング素子110はPWM信号S2に基づきオン、オフ動作を開始する。スイッチング素子110がオンすると、交流電源101から供給される電流は、整流回路102により全波整流されコイル103およびハロゲンヒーター311に流れる。この間、コイル103は、自身を流れる電流Iheの一部を磁気エネルギーとして蓄える。一方、スイッチング素子110がオフになると、コイル103に蓄えられた磁気エネルギーが電流Iheとして放出されてハロゲンヒーター311に流れ始める。この電流Iheは、ダイオード104を介してコイル103に戻る。コイル103からの電流がなくなると、スイッチング素子110の次のオン動作までハロゲンヒーター311へ流れる電流Iheはゼロになり、ハロゲンヒーター311の加熱は中断する。
【0033】
以上の動作により、ハロゲンヒーター311に各動作モードの設定温度を維持するために必要な電力が供給され、加熱ローラー310の温度が各動作モードにおける設定温度に維持される。
【0034】
PWM制御部400にて決定されるオンデューティ比の上限値dutymaxは、入力電圧検知部200で検知される入力電圧Vinに応じて、ハロゲンヒーター311の電力Wheが用紙にトナーを定着するのに十分な上限電力値Whemax以下となるように、上限電流値Ihemaxに対応した値に設定される。
【0035】
図4(A)~(C)に、第1の実施の形態における入力電圧Vin、PWM信号S2、ハロゲンヒーター311に流れる電流Ihe、の一例をそれぞれ示す。同図(D)は、PWM信号S2と電流Iheの一部を拡大して示す図である。PWM信号S2がオンのときスイッチング素子110がオンとなる。PWM信号S2のオンデューティ比をdutymax以下に制限することで、電流Iheを上限電流値Ihemax以下に制限する。
【0036】
図5は、第1の実施の形態における入力電圧Vinに対する上限電流値Ihemax、上限電力値Whemax、オンデューティ比上限dutymaxの一例を示す表である。
【0037】
例えば日本、北米といった100V系商用電源地域では、100V系商用電源地域の入力電圧に応じたオンデューティ比の上限値dutymaxが設定される。日本での使用時に、入力電圧検知部200により例えば入力電圧Vin=102Vが検知された場合、オンデューティ比の上限値dutymaxは100V≦Vin<110Vに対応した73.4%に設定され、上限電流値Ihemaxは9.1Aに制限される。上限電力値Whemaxは1000Wに設定されている。
【0038】
オンデューティ比の上限値dutymaxの決定は、予めPWM制御部400に記憶された図5の表のような入力電圧に対するオンデューティ比の上限値dutymaxを参照し決定しても良いし、以下のような計算式から算出しても良い。以下の計算式はハロゲンヒーター311での一例であり、この式に限られるものではない。また、商用電源101からハロゲンヒーター311の入力端子までの電圧降下、スイッチング素子110の応答遅れ、ハロゲンヒーター311の抵抗変化等、電力に影響を与えるパラメータを考慮して決定されても良い。
【0039】
dutymax(%)=Whemax(W)/Vin(V)/((Whemax(W)/Vhetyp(V))×(Vin(V)/Vhetyp(V))^0.54)
ただしVhetypはハロゲンヒーターの定格電圧である。
【0040】
以上のように、入力電圧検知部200で検知される交流電源101の入力電圧Vinに応じて、オンデューティ比の上限値dutymaxを切り替えるから、入力電圧Vinに応じてハロゲンヒーター311に電流が流れるタイミングが最適な値に決定される。この動作により、従来の特許文献1に記載のように、ヒーターを2本に分けて直並列切替を行うことなく、入力電圧Vinが使用国や地域によって異なっても、トナーを定着するための適切な熱量を得ることができる。
[第2の実施形態]
図6はこの発明の第2の実施形態に係るヒーター制御回路の回路図である。
【0041】
このヒーター制御回路では、図2に示したヒーター制御回路の整流回路102、コイル103が設けられることなく、交流電源101とハロゲンヒーター311とが直列に接続され、交流電源101からの交流電力がハロゲンヒーター311に供給されるようになっている。また、交流電源101の入力電圧Vinを検知する入力電圧検知部200が設けられると共に、ハロゲンヒーター311と交流電源101との間に、トライアック等からなる双方向性のスイッチング素子120が配置されている。また、入力電圧検知部200は入力電圧Vinのゼロクロスの検知をも行い、ゼロクロスであることを示すゼロクロス信号S7を出力する。
【0042】
符号500は位相制御部である。位相制御部500は、入力電圧検知部200から入力電圧検知信号S1及びゼロクロス信号S7を受信すると共に、加熱ローラー311の近傍に配置された温度検知部312からの温度検知信号S3を受信する。そして、位相制御部500は、受信した入力電圧検知信号S1とゼロクロス信号S7と温度検知信号s3を基に、スイッチング素子120のオンのタイミングを制御するための位相制御信号S4を、スイッチング素子120に対して出力する。なお、位相制御部500は、前述した制御部9により構成されていても良いし、制御部9の指令下で動作する別の制御部であっても良い。
【0043】
次に、図6に示したヒーター制御回路の動作を説明する。
【0044】
交流電源101が供給されると、入力電圧検知部200が入力電圧Vinの電圧値を検知し入力電圧検知信号S1を位相制御部500へ送信する。また、入力電圧検知部200は入力電圧Vinのゼロクロスの検知をも行い、ゼロクロス信号S7を位相制御部500へ送信する。温度検知部312は加熱ローラー310の温度を検知し温度検知信号S3を位相制御部500へ送信する。
【0045】
位相制御部500は入力電圧検知信号S1とゼロクロス信号S7と温度検知信号S3に基づき、加熱ローラー310の温度が普通紙印字、厚紙印字等の各動作モードにおける設定温度となるように、スイッチング素子120をオンするタイミングである位相角を決定する。そして、決定した位相角でスイッチング素子120がオンするように、交流電源101の半周期毎に位相制御信号S4をスイッチング素子120へ送信する。
【0046】
スイッチング素子120は位相制御信号S4に基づきオン動作を開始する。スイッチング素子120がオンすると、交流電源101から供給される電流のゼロクロス点に至るまでスイッチング素子120のオンが維持され、その間ハロゲンヒーター311に電流が流れる。
【0047】
以上の動作によりハロゲンヒーター311に各動作モードの設定温度を維持するために必要な電力が供給され、加熱ローラー310の温度が各動作モードにおける設定温度に維持される。
【0048】
位相制御部500にて決定されるオン位相角の下限値θminは、入力電圧Vinに応じて、ハロゲンヒーター311の電力Wheが用紙にトナーを定着するのに十分な上限電力値Whemax以下となるように、上限電流値Ihemaxに対応した値に設定される。
【0049】
図7(A)~(C)に、第2の実施の形態における入力電圧Vin、位相制御信号S4、ハロゲンヒーター311に流れる電流Ihe、の一例をそれぞれ示す。位相制御信号S4のオン位相角を下限値θmin以上に制限することで、電流Iheを上限電流値Ihemax以下に制限する。
【0050】
図8は、第2の実施の形態における入力電圧Vinに対する上限電流値Ihemax、上限電力値Whemax、オン位相角の下限値θminの一例を示す表である。
【0051】
例えば日本、北米といった100V系商用電源地域では、100V系商用電源地域の入力電圧Vinに応じたオン位相角の下限値θminが設定される。日本での使用時に、入力電圧検知部200により入力電圧Vin=102Vが検知された場合、オン位相角の下限値θminは100V≦Vin<110Vに対応した107度に設定され、上限電流値Ihemaxは9.1Aに制限される。上限電力値Whemaxは1000Wに設定されている。
【0052】
オン位相角の下限値θminの決定は、予め位相制御部500に記憶された図8のような入力電圧に対するオン位相角の下限値θminを参照し決定しても良い。
【0053】
以上のように、入力電圧検知部200で検知される交流電源101の入力電圧Vinに応じて、オン位相角の下限値θminを切り替えるから、入力電圧Vinに応じてハロゲンヒーター311に電流が流れるタイミングが最適な値に決定される。この動作により、従来の特許文献1に記載のように、ヒーターを2本に分けて直並列切替を行うことなく、入力電圧Vinが使用国や地域によって異なっても、トナーを定着するための適切な熱量を得ることができる。しかも、第1の実施形態に較べて、整流回路102、コイル103、ダイオード104が不要となり更に低コスト化が可能となる。
[第3の実施形態]
図9はこの発明の第3の実施形態に係るヒーター制御回路の回路図である。
【0054】
このヒーター制御回路は、図6に示した第2の実施形態に係るヒーター制御回路と同様に、整流回路102、コイル103、ダイオード104が設けられることなく、交流電源101とハロゲンヒーター311とが直列に接続され、交流電源101からの交流電力がハロゲンヒーター311に供給されるようになっている。また、交流電源101の入力電圧Vinを検知する入力電圧検知部200が設けられると共に、ハロゲンヒーター311と交流電源101との間に、双方向性のスイッチング素子120が配置されている。また、入力電圧検知部200は入力電圧Vinのゼロクロスの検知をも行い、ゼロクロスであることを示すゼロクロス信号S7を出力する。
【0055】
符号600は半波制御部である。半波制御部600は、入力電圧検知部200から入力電圧検知信号S1とゼロクロス信号S7を受信すると共に、加熱ローラー310の近傍に配置された温度検知部312からの温度検知信号S3を受信する。そして、半波制御部600は、受信した入力電圧検知信号S1とゼロクロス信号S7と温度検知信号S3を基に、スイッチング素子120のオンオフの動作を制御するための半波制御信号S5を、スイッチング素子120に対して出力する。
【0056】
具体的には、予め所定の周期(例えば20半波分)を設定しておく。半波制御部600は、設定された一周期において、交流電源101からの入力電圧Vinに応じ、入力電圧Vinの各半波のうち必要な個数の半波がハロゲンヒーター311に供給されるように、半波制御信号S5を出力する。以下の説明では、設定された周期を半波制御周期ともいい、半波の必要個数をオン半波数ともいう。なお、半波制御部600は、前述した制御部9により構成されていても良いし、制御部9の指令下で動作する別の制御部であっても良い。
【0057】
次に、図9に示したヒーター制御回路の動作を説明する。
【0058】
交流電源101が供給されると、入力電圧検知部200が入力電圧Vinの電圧値を検知し入力電圧検知信号S1を半波制御部600へ送信する。また、入力電圧検知部200は入力電圧Vinのゼロクロスの検知をも行い、ゼロクロス信号S7を位相制御部500へ送信する。温度検知部312は加熱ローラー310の温度を検知し温度検知信号S3を半波制御部600へ送信する。
【0059】
半波制御部600は入力電圧検知信号S1と温度検知信号S3に基づき、加熱ローラー310の温度が普通紙印字、厚紙印字等の各動作モードにおける設定温度となるように、半波制御周期におけるオン半波数を決定し、半波制御信号S5をスイッチング素子120へ送信する。スイッチング素子120は半波制御信号S5に基づきオン、オフ動作を開始する。スイッチング素子120がオンすると、交流電源101から供給される電流がゼロクロス点に至るまでハロゲンヒーター311に流れる。
【0060】
以上の動作によりハロゲンヒーター311に各動作モードの設定温度を維持するために必要な電力が供給され、加熱ローラー310の温度が各動作モードにおける設定温度に維持される。
【0061】
半波制御部600にて決定されるオン半波数の上限値HCmaxは、入力電圧Vinに応じて、ハロゲンヒーター311の電力Wheが用紙にトナーを定着するのに十分な上限電力値Whemax以下となるように、上限電流値Ihemaxに対応した値に設定される。
【0062】
図10(A)~(C)に、第3の実施の形態における入力電圧Vin、半波制御信号S5、ハロゲンヒーター311に流れる電流Ihe、の一例をそれぞれ示す。本例では、半波制御周期を20半波分としているが、20半波に限られるものではない。半波制御信号S5のオン半波数を上限値以下に制限することで、電流Iheを上限電流値Ihemax以下に制限する。
【0063】
図11は、第3の実施の形態における入力電圧Vinに対する上限電流値Ihemax、上限電力値Whemax、オン半波数の上限値HCmaxの一例を示す表である。
【0064】
例えば日本、北米といった100V系商用電源地域では、100V系商用電源地域の入力電圧Vinに応じたオン半波数の上限値HCmaxが設定される。日本での使用時に、入力電圧検知部200により入力電圧Vin=102Vが検知された場合、オン半波数の上限値HCmaxは100V≦Vin<110Vに対応した15半波に設定され、上限電流値Ihemaxは9.3Aに制限される。上限電力値Whemaxはトナーを定着するために十分な1000Wに対し1022Wが設定されている。
【0065】
オン半波数の上限値HCmaxの決定は、予め半波制御部600に記憶された図11の表のような入力電圧に対するオン半波数の上限値HCmaxを参照し決定しても良いし、以下のような計算式から算出しても良い。以下の計算式はハロゲンヒーター311での一例であり、この式に限られるものではない。また、商用電源101からヒーター入力端子までの電圧降下、スイッチング素子120の応答遅れ、ハロゲンヒーター311の抵抗変化等、電力に影響を与えるパラメータを考慮して決定されても良い。
【0066】
HCmax(半波)=半波制御周期(20半波)/(Vin/Vhetyp)^1.54
ただしVhetypはハロゲンヒーターの定格電圧である。
【0067】
以上のように、入力電圧検知部200で検知される交流電源101の入力電圧Vinに応じて、オン半波数の上限値HCmaxを切り替えるから、入力電圧Vinに応じてハロゲンヒーター311に電流が流れるタイミングが最適な値に決定される。この動作により、従来の特許文献1に記載のように、ヒーターを2本に分けて直並列切替を行うことなく、入力電圧Vinが使用国や地域によって異なっても、トナーを定着するための適切な熱量を得ることができる。また、第2の実施の形態に対し、ハロゲンヒーター311に流れる電流Iheの波形歪が無く、正弦波状の波形となる事から力率の悪化を回避できる。しかも、第1の実施形態に較べて、整流回路102、コイル103、ダイオード104が不要となり更に低コスト化が可能となる。
[第4の実施形態]
図12はこの発明の第4の実施形態に係るヒーター制御回路の回路図である。
【0068】
この実施形態では、入力電圧検知部200の代わりに位置情報を取得可能なGPS(Global Positioning System)700(受付部に相当)を備えている点が、図2に示した第1の実施形態に係るヒーター制御回路と異なる。PWM制御部400は、GPS700により取得された位置情報信号S6と温度検知部312からの温度検知信号S3を受信して、PWM信号S2をスイッチング素子110へ送信する。
【0069】
具体的には、PWM制御部400は、GPS700により取得された位置情報信号S6を受信して画像形成装置1が設置されている地域を判別し、その地域の交流電源の入力電圧Vinを特定する。PWM制御部400は、特定した入力電圧Vinと、温度検知部312から受信した温度検知信号S3を基に、加熱ローラー310の温度が普通紙印字、厚紙印字等の各動作モードにおける設定温度となるようにPWM信号S2のオンデューティ比を決定する。そして、決定したオンデューティ比のPWM信号S2をスイッチング素子110へ送信する。
【0070】
PWM信号S2がスイッチング素子110へ送信された後のヒーター制御回路の動作は、図2の第1の実施形態の場合と同様である。
【0071】
PWM制御部400にて決定されるオンデューティ比の上限値dutymaxは、GPS700により取得された位置情報信号S6を基に特定された入力電圧Vinに応じて、ハロゲンヒーター311の電力Wheが用紙にトナーを定着するのに十分な上限電力Whemax以下となるよう、上限電流値Ihemaxに対応した値に設定される。
【0072】
図13は、第4の実施の形態における各対象地域の入力電圧Vinに対する上限電流値Ihemax、上限電力値Whemax、オンデューティ比上限dutymaxの一例を示す表である。
【0073】
例えば、地域が日本と判別された場合、入力電圧Vin=100Vが特定され、Vin=100Vに対応したオンデューティ比の上限dutymaxである85%が設定される。上限電力値Whemaxは1000Wに設定されている。
【0074】
オンデューティ比の上限値dutymaxの決定は、予めPWM制御部400に記憶された図13の表に示すような、入力電圧Vinに対するオンデューティ比の上限値を参照し決定しても良いし、以下のような計算式から算出しても良い。以下の計算式はハロゲンヒーター311での一例であり、この式に限られるものではない。また、商用電源101からヒーター入力端子までの電圧降下、スイッチング素子110の応答遅れ、ハロゲンヒーター311の抵抗変化等、電力に影響を与えるパラメータを考慮して決定されても良い。
【0075】
dutymax(%)=Whemax(W)/Vin(V)/((Whemax(W)/Vhetyp(V))×(Vin(V)/Vhetyp(V))^0.54)
ただし、Vhetypはハロゲンヒーターの定格電圧である。
【0076】
以上のように、GPS700により取得された位置情報を基に特定された交流電源101の入力電圧Vinに応じて、オンデューティ比の上限値dutymaxを切り替えるから、入力電圧Vinに応じてハロゲンヒーター311に電流が流れるタイミングが最適な値に決定される。この動作により、従来の特許文献1に記載のように、ヒーターを2本に分けて直並列切替を行うことなく、入力電圧Vinが使用国や地域によって異なっても、トナーを定着するための適切な熱量を得ることができる。
[第5の実施形態]
図14はこの発明の第5の実施形態に係るヒーター制御回路の回路図である。
【0077】
この実施形態では、入力電圧検知部200の代わりに、図12に示したヒーター制御回路と同様に位置情報を取得可能なGPS700とゼロクロス検知部105を備えている点が、図5に示した第2の実施形態に係るヒーター制御回路と異なる。ゼロクロス検知部105は、入力電圧Vinのゼロクロスを検知してゼロクロス信号S7を出力する。
【0078】
位相制御部500は、GPS700により取得された位置情報信号S6とゼロクロス検知部105からのゼロクロス信号S7と温度検知部312からの温度検知信号S3を受信して、位相制御信号S2をスイッチング素子SW3へ送信する。
【0079】
具体的には、位相制御部500は、GPS700により取得された位置情報信号S6を受信して画像形成装置1が設置されている地域を判別し、その地域の交流電源の入力電圧Vinを特定する。位相制御部500は、特定した入力電圧Vinと、温度検知部312から受信した温度検知信号S3を基に、加熱ローラー310の温度が普通紙印字、厚紙印字等の各動作モードにおける設定温度となるように、スイッチング素子120をオンするタイミングであるオン位相角を決定する。そして、ゼロクロス検知部105からのゼロクロス信号S7を基に、決定した位相角でスイッチング素子120がオンするように、交流電源101の半周期毎に位相制御信号S4をスイッチング素子120へ送信する。
【0080】
位相制御信号S4がスイッチング素子120へ送信された後のヒーター制御回路の動作は、図6の第2の実施形態の場合と同様である。
【0081】
位相制御部500にて決定されるオン位相角の下限値θminは、GPS700により取得された位置情報信号S6を基に特定された入力電圧Vinに応じて、ハロゲンヒーター311の電力Wheが用紙にトナーを定着するのに十分な上限電力値Whemax以下となるよう、上限電流値Ihemaxに対応した値に設定される。
【0082】
図15は、第5の実施の形態における各対象地域の入力電圧Vinに対する上限電流値Ihemax、上限電力値Whemax、オン位相角の下限値θminの一例を示す表である。
【0083】
例えば、地域が日本と判別された場合、入力電圧Vin=100Vが特定され、Vin=100Vに対応したオン位相角の下限値θminである85度が設定される。上限電力値Whemaxは1000Wに設定されている。
【0084】
オン位相角の下限値θminの決定は、予め位相制御部500に記憶された図15の表のようなオン位相角の下限値を参照し決定すれば良い。
【0085】
以上のように、GPS700により取得された位置情報を基に特定された交流電源101の入力電圧Vinに応じて、オン位相角の下限値θminを切り替えるから、入力電圧Vinに応じてハロゲンヒーター311に電流が流れるタイミングが最適な値に決定される。この動作により、従来の特許文献1に記載のように、ヒーターを2本に分けて直並列切替を行うことなく、入力電圧Vinが使用国や地域によって異なっても、トナーを定着するための適切な熱量を得ることができる。
[第6の実施形態]
図16はこの発明の第6の実施形態に係るヒーター制御回路の回路図である。
【0086】
この実施形態では、入力電圧検知部200の代わりに、図12に示したヒーター制御回路と同様に位置情報を取得可能なGPS700とゼロクロス検知部105を備えている点が、図6に示した第2の実施形態に係るヒーター制御回路と異なる。半波制御部600は、GPS700により取得された位置情報信号S6とゼロクロス検知部105からのゼロクロス信号S7と温度検知部312からの温度検知信号S3を受信して、PWM信号S2をスイッチング素子120へ送信する。
【0087】
半波制御部600は、GPS700により取得された位置情報信号S6を受信して画像形成装置1が設置されている地域を判別し、その地域の交流電源の入力電圧Vinを特定する。半波制御部600は、特定した入力電圧Vinと温度検知部312から受信した温度検知信号S3に基づき、加熱ローラー311の温度が普通紙印字、厚紙印字等の各動作モードにおける設定温度となるように、半波制御周期におけるオン半波数を決定する。そして、ゼロクロス検知部から受信したゼロクロス検知信号S10を基に、決定したオン半波数となるように、半波制御信号S5をスイッチング素子SW4へ送信する。
【0088】
半波制御信号S5がスイッチング素子120へ送信された後のヒーター制御回路の動作は、図9の第3の実施形態の場合と同様である。
【0089】
半波制御部600にて決定されるオン半波数の上限値HCmaxは、入力電圧Vinに応じて、ハロゲンヒーター311の電力Wheが、用紙にトナーを定着するのに十分な上限電力値Whemax以下となるように、上限電流値Ihemaxに対応した値に設定される。
【0090】
図16は第6の実施の形態における各対象地域の入力電圧Vinに対する上限電流値Ihemax、上限電力値Whemax、オン半波数の上限値HCmaxの一例を示す表である。
【0091】
例えば、地域が日本と判別された場合、日本の入力電圧Vin=100Vに対応したオン半波数の上限値HCmaxである18半波が設定される。上限電力値Whemaxはトナーを定着するために十分な1000Wに対し1059Wが設定されている。オン半波数の上限値HCmaxの決定は予め半波制御部600に記憶された、図17の表のような入力電圧に対するオン半波数の上限値HCmaxを参照し決定しても良いし、以下のような計算式から算出しても良い。以下計算式はハロゲンヒーター311での一例であり、この式に限られるものではない。また、商用電源101からヒーター入力端子までの電圧降下、スイッチング素子120の応答遅れ、ハロゲンヒーター311の抵抗変化等、電力に影響を与えるパラメータを考慮しても良い。
【0092】
HCmax(半波)=半波制御周期(20半波)/(Vin/Vhetyp)^1.54
ただしVhetypはハロゲンヒーターの定格電圧である。
【0093】
以上の動作により、入力電圧検知部200を設けることなく、入力電圧Vinによらずトナーを定着するために適切な熱量を得る事ができる。
[第7の実施形態]
この実施形態では、入力電圧Vinの地域を100V系商用電源地域と200V系商用電源地域の2種類に分類して、各種類に応じた設定を行う構成となっている。
【0094】
ヒーター制御回路の構成は図2に示した第1の実施形態と同じである。PWM信号S2のオンデューティ比をdutymax以下に制限する事で、電流Iheを上限電流値Ihemax以下に制限する。
【0095】
図18は、第7の実施の形態における各対象地域の入力電圧Vinに対する上限電流値Ihemax、上限電力値Whemax、オンデューティ比上限dutymaxの一例を示す表である。
【0096】
入力電圧検知部200が、日本や北米といった100V系商用電源地域の入力電圧Vin(100V≦Vin≦120V)を検知した場合は、本地域に対応したオンデューティ比の上限値dutymax=100%を設定する。欧州や中国といった200V系商用電源地域の入力電圧Vin(220V≦Vin≦240V)を検知した場合は、本地域に対応したオンデューティ比の上限値dutymax=29.7%を設定する。
【0097】
上限電力値Whemaxは、トナーを定着するのに十分な1000Wに対し、100V系商用電源地域では1324W、200V系商用電源地域では1143Wが設定されている。
【0098】
本実施の形態では、第1の実施の形態と同じヒーター制御回路の構成を例とした。しかし、第2又は第3の実施の形態と同じヒーター制御回路の構成とし、100V系商用電源地域、200V系商用電源地域に対し、オン位相角の下限値θminやオン半波数の上限値HCmaxを設定するようにしても良い。また、第4、第5または第6の実施の形態と同じようにGPS700を備えた構成とし、100V系商用電源地域、200V系商用電源地域に対し、オンデューティの上限値dutymax、オン位相角の下限値θmin、オン半波数の上限値HCmaxを設定するようにしても良い。
【0099】
以上の動作により、第1から第6の実施の形態に対し100V系商用電源地域、200V系商用電源地域の設定をそれぞれ1つにまとめることができ、オンデューティ比の上限値dutymax、オン位相角の下限値θmin、オン半波数の上限値HCmaxの決定処理を簡素化できる。
【0100】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第1の実施形態において、加熱ローラー310の温度が設定温度を超えた場合、あるいは下回った場合に、図3に示すデューティ調整値分、デューティ比を調整することを説明した。しかし、加熱ローラー310の温度が設定温度を超えた場合、あるいは下回った場合のデューティ調整は、第2~第7の実施形態において同様に行われても良い。
【符号の説明】
【0101】
1 画像形成装置
3 画像形成部
9 制御部
10 電源回路
101 交流電源(商用電源)
102 整流回路
103 コイル
104 ダイオード
105 ゼロクロス検知部
110、120 スイッチング素子
200 入力電圧検知部(受付部)
300 定着部
310 加熱ローラー
311 加熱ヒーター(ハロゲンヒーター)
312 温度検知部
320 加圧ローラー
400 PWM制御部
500 位相制御部
600 半波制御部
700 GPS(受付部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18