(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003036
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】磁気センサ装置
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20241226BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
G01R33/02 C
G01D5/245 W
G01D5/245 110W
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103482
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(72)【発明者】
【氏名】江川 広祐
(72)【発明者】
【氏名】足立 誠
【テーマコード(参考)】
2F077
2G017
【Fターム(参考)】
2F077AA46
2F077PP13
2F077VV02
2F077VV23
2F077VV31
2F077WW06
2G017AA01
2G017AC06
2G017AD29
2G017CB22
2G017CC03
(57)【要約】
【課題】磁気センサを他の電気・電子部品と共に基板に容易に設けることができるようにする。
【解決手段】磁気センサ装置3は、センサユニット4および基板側コネクタ24、25を備えている。センサユニット4は、磁気センサ、ヨーク、およびケーシング19を備えている。磁気センサは、大バルクハウゼン効果を奏する磁性線材、内部に磁性線材が配置されたボビン、ボビンに電線を巻回することにより形成されたコイル、ボビンの左端部に設けられたセンサ側コネクタ、およびボビンの右端部に設けられたセンサ側コネクタを備えている。磁気センサ装置3は、基板側コネクタ24、25を基板35上に実装し、その後、センサユニット4を基板側コネクタ24、25に接続することにより、基板35上に設けられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大バルクハウゼン効果を奏する磁性線材、内部に前記磁性線材が配置されたボビン、前記ボビンに電線を巻回することにより形成されたコイル、前記ボビンの一端部に設けられた第1のコネクタ、および前記ボビンの他端部に設けられた第2のコネクタを備えた磁気センサと、
前記第1のコネクタと着脱可能に接続される第3のコネクタと、
前記第2のコネクタと着脱可能に接続される第4のコネクタとを備え、
前記第1のコネクタは、第1の嵌合部と、前記電線の一端部が接続された第1の端子とを備え、
前記第2のコネクタは、第2の嵌合部と、前記電線の他端部が接続された第2の端子とを備え、
前記第3のコネクタは、前記第1の嵌合部と嵌合される第3の嵌合部と、前記第1の嵌合部が前記第3の嵌合部と嵌合されたときに前記第1の端子と接触する第3の端子とを備え、
前記第4のコネクタは、前記第2の嵌合部と嵌合される第4の嵌合部と、前記第2の嵌合部が前記第4の嵌合部と嵌合されたときに前記第2の端子と接触する第4の端子とを備えていることを特徴とする磁気センサ装置。
【請求項2】
前記コイルは前記ボビンの一端部と他端部との間に設けられ、前記第1のコネクタは前記ボビンの一端部の下部に設けられ、前記第2のコネクタは前記ボビンの他端部の下部に設けられ、前記第3のコネクタは前記第3の嵌合部に前記第1の嵌合部が前記第3の嵌合部の上方から嵌合可能となるように基板の上面上に設けられ、前記第4のコネクタは前記第4の嵌合部に前記第2の嵌合部が前記第4の嵌合部の上方から嵌合可能となるように前記基板の上面上に設けられ、前記第3のコネクタおよび前記第4のコネクタは前記基板の上面上において互いに離れて配置され、前記第1の嵌合部が前記第3の嵌合部の上方から前記第3の嵌合部と嵌合されかつ前記第2の嵌合部が前記第4の嵌合部の上方から前記第4の嵌合部と嵌合された状態で、前記磁性線材および前記ボビンは前記基板の上面と平行に伸長し、前記コイルの外周面の下部と前記基板の上面との間に空間が形成されることを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項3】
前記第3のコネクタおよび前記第4のコネクタはそれぞれ基板に表面実装されることを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項4】
外部磁界の磁束の方向を制御するヨークを備え、
前記ヨークは磁気センサに固定されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項5】
外部磁界の磁束の方向を制御するヨークと、
前記磁気センサが収容されたケーシングとを備え、
前記ヨークは前記ケーシングに固定されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項6】
前記ヨークは前記ケーシングとインサート成形により一体化していることを特徴とする請求項5に記載の磁気センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大バルクハウゼン効果を利用した磁気センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大バルクハウゼン効果を利用した磁気センサは、大バルクハウゼン効果を奏する磁性線材、内部に磁性線材が配置されたボビン、ボビンに電線を巻回することにより形成されたコイル、およびコイルを外部の検出回路に接続するための2つの端子を備えている。2つの端子はボビンの両端部にそれぞれ固定されている。2つの端子のうち、一方の端子には、コイルを形成する電線の一端が接続され、他方の端子には、コイルを形成する電線の他端が接続されている。磁気センサは、例えば、2つの端子のそれぞれの端部を、基板上に設けられた導電部に半田付けすることにより、基板上に固定される。国際公開第2016/021074号(特許文献1)には、このような磁気センサの一例が記載されている。
【0003】
例えば、国際公開第2016/021074号に記載されているように、回転シャフトの回転の検出に磁気センサを用いる場合、回転シャフトの外周部に磁石を固定し、回転シャフトが回転したときに回転シャフトの外周側に回転磁界が形成されるようにする。また、回転シャフトの外周側に、回転シャフトおよび磁石のいずれとも接触しないように基板を設け、その基板上に複数の磁気センサを設ける。また、複数の磁気センサは、磁石の回転軌道の近傍であって、磁石の回転方向においてそれぞれ互いに異なる位置に配置する。これにより、回転シャフトの回転により形成される回転磁界を複数の磁気センサにより検出することができ、各磁気センサのコイルから出力される検出信号に基づいて回転シャフトの回転量および回転方向等を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁気センサが設けられる基板には、磁気センサの他にも複数の電気・電子部品が設けられる。これら電気・電子部品としては、抵抗、コンデンサ、ダイオード、トランジスタまたは集積回路等、種々の部品が考えられるが、基板面積の縮小化等の要請から、これら電気・電子部品として小型の表面実装型の部品(チップ部品)が用いられる。一方、国際公開第2016/021074号に記載されているように、従来の磁気センサは挿入実装型の部品(ディップ部品)である。
【0006】
従来の磁気センサを他の電気・電子部品と共に、基板上に実装するに当たり、次のような問題がある。
【0007】
例えば従来の磁気センサの各端子の形状を変更することにより、従来の磁気センサを表面実装可能な構造にすることはできる。しかしながら、磁気センサは、表面実装型の小型の電気・電子部品と比較して体積が大きく、それゆえ熱容量が大きい。リフロー半田付け方式により複数の部品を基板上に表面実装するに当たり、複数の部品間で熱容量の差が大きい場合には、半田付けを適切に行うための加熱、断熱、放熱等の設定または措置が複雑になる。そのため、リフロー半田付け方式により、磁気センサと他の電気・電子部品とを基板上に一度に表面実装することは容易でない。その結果、他の電気・電子部品を基板上に表面実装する工程とは別に、磁気センサを基板上に実装する工程を設けなければならず、磁気センサおよび他の電気・電子部品を基板に半田付けする工数が多くなってしまう。
【0008】
また、磁気センサは、表面実装型の小型の電気・電子部品と比較して大型であるため、基板上に磁気センサを設けた場合、基板面積に対する磁気センサの占有面積の割合が大きくなる。その結果、他の電気・電子部品を実装する基板上のスペースが小さくなり、基板上に実装することが可能な電気・電子部品の数が少なくなってしまう。
【0009】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、磁気センサを他の電気・電子部品と共に基板に容易に設けることができる磁気センサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の磁気センサ装置は、大バルクハウゼン効果を奏する磁性線材、内部に前記磁性線材が配置されたボビン、前記ボビンに電線を巻回することにより形成されたコイル、前記ボビンの一端部に設けられた第1のコネクタ、および前記ボビンの他端部に設けられた第2のコネクタを備えた磁気センサと、前記第1のコネクタと着脱可能に接続される第3のコネクタと、前記第2のコネクタと着脱可能に接続される第4のコネクタとを備え、前記第1のコネクタは、第1の嵌合部と、前記電線の一端部が接続された第1の端子とを備え、前記第2のコネクタは、第2の嵌合部と、前記電線の他端部が接続された第2の端子とを備え、前記第3のコネクタは、前記第1の嵌合部と嵌合される第3の嵌合部と、前記第1の嵌合部が前記第3の嵌合部と嵌合されたときに前記第1の端子と接触する第3の端子とを備え、前記第4のコネクタは、前記第2の嵌合部と嵌合される第4の嵌合部と、前記第2の嵌合部が前記第4の嵌合部と嵌合されたときに前記第2の端子と接触する第4の端子とを備えていることを特徴とする。
【0011】
上記本発明の磁気センサ装置において、第3のコネクタおよび第4のコネクタを、例えば、他の電気・電子部品と共に基板上に実装し、その後、基板上に実装された第3のコネクタおよび第4のコネクタに、磁気センサが備えている第1のコネクタおよび第2のコネクタをそれぞれ接続することにより、磁気センサを基板上に設けることができる。
【0012】
第3のコネクタおよび第4のコネクタは表面実装型とすることができる。第3のコネクタおよび第4のコネクタはそれぞれ磁気センサと比較して小型であり、熱容量が小さい。したがって、第3のコネクタおよび第4のコネクタを他の電気・電子部品と共に基板上にリフロー半田付け方式により表面実装する場合、磁気センサを他の電気・電子部品と共に基板にリフロー半田付け方式により表面実装する場合と比較して、半田付けを適切に行うための加熱、断熱、放熱等の設定または措置が容易になる。それゆえ、第3のコネクタ、第4のコネクタ、および他の電気・電子部品をリフロー半田付け方式により基板上に一度に容易に表面実装することができる。よって、磁気センサおよび他の電気・電子部品を基板に設けるに当たり、半田付けの工数を減らすことができる。
【0013】
また、上記本発明の磁気センサにおいては、第3のコネクタおよび第4のコネクタを例えば基板の実装面内の互いに離れた2つの場所にそれぞれ実装し、これら第3のコネクタおよび第4のコネクタに、磁気センサが備えている第1のコネクタおよび第2のコネクタをそれぞれ接続することにより、磁気センサを基板上に設けることができる。この場合、磁気センサを第3のコネクタと第4のコネクタとの間を架橋するように設けることができる。磁気センサをこのように設けることにより、磁気センサにおいて第1のコネクタが設けられた一端部と第2のコネクタが設けられた他端部と間の中間部分と、基板の実装面との間に、他の電気・電子部品を実装することが可能な空間を形成することができる。この空間に他の電気・電子部品を実装することにより、基板上に実装することが可能な電気・電子部品の数を増やすことができる。
【0014】
上記本発明の磁気センサ装置において、前記コイルは前記ボビンの一端部と他端部との間に設けられ、前記第1のコネクタは前記ボビンの一端部の下部に設けられ、前記第2のコネクタは前記ボビンの他端部の下部に設けられ、前記第3のコネクタは前記第3の嵌合部に前記第1の嵌合部が前記第3の嵌合部の上方から嵌合可能となるように基板の上面上に設けられ、前記第4のコネクタは前記第4の嵌合部に前記第2の嵌合部が前記第4の嵌合部の上方から嵌合可能となるように前記基板の上面上に設けられ、前記第3のコネクタおよび前記第4のコネクタは前記基板の上面上において互いに離れて配置され、前記第1の嵌合部が前記第3の嵌合部の上方から前記第3の嵌合部と嵌合されかつ前記第2の嵌合部が前記第4の嵌合部の上方から前記第4の嵌合部と嵌合された状態で、前記磁性線材および前記ボビンは前記基板の上面と平行に伸長し、前記コイルの外周面の下部と前記基板の上面との間に空間が形成される構成としてもよい。また、上記本発明の磁気センサ装置において、前記第3のコネクタおよび前記第4のコネクタはそれぞれ基板に表面実装されることとしてもよい。また、上記本発明の磁気センサ装置において、外部磁界の磁束の方向を制御するヨークを備え、前記ヨークは磁気センサに固定されていることとしてもよい。また、上記本発明の磁気センサ装置において、外部磁界の磁束の方向を制御するヨークと、前記磁気センサが収容されたケーシングとを備え、前記ヨークは前記ケーシングに固定されていることとしてもよく、この場合、前記ヨークは前記ケーシングとインサート成形により一体化していることとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、磁気センサを他の電気・電子部品と共に基板に容易に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態の磁気センサ装置を含む回転検出装置を示す説明図である。
【
図2】
図1中の切断線A-Aに沿って切断した回転検出装置の断面を
図1中の右下から見た状態を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態の磁気センサ装置を前右上から見た状態を示す斜視図である。
【
図4】(A)は本発明の実施形態の磁気センサ装置におけるセンサユニットを後ろ右上から見た状態を示す斜視図であり、(B)は当該センサユニットを前右下から見た状態を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態の磁気センサ装置におけるセンサユニットが有する磁気センサ、ヨークおよびケーシングを前右上から見た状態を示す説明図である。
【
図6】本発明の実施形態の磁気センサ装置における磁気センサを前右上から見た状態を示す斜視図である。
【
図7】(A)は本発明の実施形態の磁気センサ装置の磁気センサにおけるボビンを前右上から見た状態を示す斜視図であり、(B)は当該ボビンを後ろ右下から見た状態を示す斜視図である。
【
図8】(A)は本発明の実施形態の磁気センサ装置における磁気センサの左端部を下から見た状態を示す外観図であり、(B)は
図8(A)中の切断線B-Bに沿って切断した磁気センサの左端部を左から見た状態を示す断面図である。
【
図9】本発明の実施形態の磁気センサ装置においてインサート成形により一体化したヨークおよびケーシングを示す斜視図である。
【
図10】本発明の実施形態の磁気センサ装置において磁気センサのケーシングへの取付方法を示す説明図である。
【
図11】(A)は本発明の実施形態の磁気センサ装置における基板側コネクタを上から見た状態を示す外観図であり、(B)は当該基板側コネクタを下から見た状態を示す外観図である。
【
図12】(A)はセンサ側コネクタと基板側コネクタとが分離した状態を示す断面図であり、(B)はセンサ側コネクタと基板側コネクタとが接続された状態を示す断面図である。
【
図13】本発明の実施形態の磁気センサ装置における基板側コネクタが回転検出装置の基板に設けられた状態を示す説明図である。
【
図14】基板に設けられた本発明の実施形態の磁気センサ装置を前から見た状態を示す説明図である。
【
図15】本発明の実施形態の磁気センサ装置の磁界検出動作を示す説明図である。
【
図16】本発明の実施形態の磁気センサ装置の第1の変形例を示す説明図である。
【
図17】本発明の実施形態の磁気センサ装置の第2の変形例を示す説明図である。
【
図18】本発明の実施形態の磁気センサ装置の第3の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(回転検出装置)
図1は、本発明の実施形態の磁気センサ装置3を含む回転検出装置1を示している。
図2は、
図1中の切断線A-Aに沿って切断した回転検出装置1の断面を
図1中の右下から見た状態を示している。
【0018】
図1において、回転検出装置1は、回転体としての回転シャフト40の回転を検出する装置である。回転検出装置1は、回転磁界を形成する磁界形成部材2、回転磁界を検出する複数の磁気センサ装置3、および基板35を備えている。
【0019】
磁界形成部材2は、例えばフェライト等の磁性材料によりリング状に形成されている。磁界形成部材2は、回転シャフト40の外周側に回転シャフト40と同軸に配置され、回転シャフト40に固定されている。磁界形成部材2は多極着磁された磁石であり、磁界形成部材2の外周側部分には、N極、S極、N極、S極の4つの磁極が、この順序で磁界形成部材2の周方向に例えば90度間隔に形成されている。なお、磁界形成部材2は、多極着磁されていない4つの磁石により形成することもできる。
【0020】
基板35は回転シャフト40の外周側に設けられている。基板35は、
図2に示すように、その実装面35Aを含む平面が回転シャフト40の軸線Xと直交するように配置されている。また、基板35の中央部には貫通穴35Bが形成され、貫通穴35B内には回転シャフト40が挿入されている。貫通穴35Bの直径は回転シャフト40の外径よりも大きく、回転シャフト40は基板35に接触していない。また、基板35は、回転シャフト40が回転可能に支持された装置(例えばモータ等)の筐体等にブラケット等を介して固定されている。
【0021】
複数の磁気センサ装置3は基板35の実装面35A上に設けられている。
図1に示すように、本実施形態において、基板35には3つの磁気センサ装置3が設けられている。3つの磁気センサ装置3は磁界形成部材2の外周側に所定の間隔(例えば120度間隔)で配置されている。また、3つの磁気センサ装置3は、回転シャフト40の軸線Xとの距離がそれぞれ互いに等しくなるように配置されている。また、各磁気センサ装置3は磁界形成部材2から離れている。また、
図2に示すように、回転シャフト40の軸線方向において、各磁気センサ装置3の位置は磁界形成部材2の位置と略一致している。
【0022】
磁界形成部材2が回転シャフト40と共に回転するの対し、各磁気センサ装置3は不動である。回転シャフト40と共に磁界形成部材2が回転すると、磁界形成部材2により形成される磁界が回転する。これにより、回転シャフト40の軸線Xを回転軸として回転する回転磁界が形成される。各磁気センサ装置3はこの回転磁界を検出する。具体的には、磁界形成部材2により形成される磁界が回転することにより、各磁気センサ装置3に作用する磁界の方向が変化する。各磁気センサ装置3は、この磁界の方向の変化に対応したパルス信号を出力する。各磁気センサ装置3から出力されるパルス信号に基づいて回転シャフト40の回転量および回転方向等を検出することができる。
【0023】
また、図示を省略しているが、基板35の実装面35A上には、磁気センサ装置3以外に、例えば抵抗、コンデンサ、ダイオード、トランジスタまたは集積回路等の複数の小型の表面実装型の電気・電子部品(これを「他の電気・電子部品」という。)が実装されている。
【0024】
(磁気センサ装置)
図1において基板35には同一の磁気センサ装置3が3つ設けられている。
図3はこれら3つの磁気センサ装置3のうちの1つを示している。以下、この1つの磁気センサ装置3について説明を行うが、その説明において、前(Fd)、後(Bd)、上(Ud)、下(Dd)、左(Ld)、右(Rd)の方向を述べる際には、
図3~12、14および15中の右下に描いた矢印に従う。
【0025】
磁気センサ装置3は、
図3に示すように、センサユニット4および2つの基板側コネクタ24、25を備えている。基板側コネクタ24、25は基板35の実装面35A上に実装される。センサユニット4は、基板側コネクタ24、25に接続されることにより、基板35に設けられる。
【0026】
(センサユニット)
図4(A)はセンサユニット4を後ろ右上から見た状態を示している。
図4(B)はセンサユニット4を前右下から見た状態を示している。
図5は、センサユニット4が有する磁気センサ5、ヨーク18およびケーシング19を示している。なお、
図5においては、ケーシング19につき、その外形のみを二点鎖線で示している。
【0027】
図4(A)、4(B)および5に示すように、センサユニット4は、磁気センサ5、ヨーク18、およびケーシング19を備え、磁気センサ5およびヨーク18はケーシング19の内側に設けられている。
【0028】
図6は磁気センサ5を示している。
図7(A)は磁気センサ5のボビン7を前右上から見た状態を示している。
図7(B)はボビン7を後ろ右下から見た状態を示している。
図8(A)は磁気センサ5の左端部を下から見た状態を示している。
図8(B)は
図8(A)中の切断線B-Bに沿って切断した磁気センサ5の左端部の断面を左から見た状態を示している。
【0029】
磁気センサ5は、磁気センサ装置3において、上記回転磁界の検出を行う部分である。磁気センサ5は、
図6に示すように、磁性線材6、ボビン7、コイル12、および2つのセンサ側コネクタ14、15を備えている。
【0030】
磁性線材6は大バルクハウゼン効果を奏する磁性線材であり、複合磁気ワイヤと呼ばれるものである。磁性線材6は、例えば、鉄およびコバルトを含む半硬質磁性材料により形成され、直径が例えばおよそ0.1mm~1mmで、長さが例えばおよそ10mm~30mmの線材である。磁性線材6は、例えば、上記半硬質磁性材料を線引きし、方向を変えながら複数回捻ることにより形成されている。磁性線材6は、磁化が容易な方向が当該磁性線材6の中心軸の方向である一軸異方性を有している。また、磁性線材6において、その外周側部分よりも中心側部分の方が保磁力が大きい。磁性線材6は外部磁界の方向の変化に応じて磁性線材6(その外周側部分)の磁化方向が急反転する性質を有している。
【0031】
ボビン7は例えば樹脂等の非磁性材料により形成されている。ボビン7は、
図7(A)に示すように、電線巻回部8、2つの線材支持部9、2つの鍔部10、および線材収容溝11を備えている。電線巻回部8は、ボビン7の左右方向中間部に設けられ、左右方向に伸長した円柱状に形成されている。線材支持部9は、ボビン7の左端部および右端部にそれぞれ設けられている。鍔部10は、電線巻回部8と左側の線材支持部9との間、および電線巻回部8と右側の線材支持部9との間にそれぞれ設けられている。各鍔部10は電線巻回部8よりも大径である。線材収容溝11は、ボビン7の左端から右端にかけて伸長した溝である。
【0032】
磁性線材6は、左右方向に直線状に伸長するようにボビン7の内部に配置されている。具体的には、磁性線材6は、線材収容溝11内に配置されている。磁性線材6の左端部は、左側の線材支持部9に形成された線材収容溝11の左端部に接着剤を用いた接着等の手段により支持(固定)されている。同様に、磁性線材6の右端部は、右側の線材支持部9に形成された線材収容溝11の右端部に支持(固定)されている。なお、線材収容溝11に代えて、ボビン7の左端から右端にかけて伸長した穴である線材収容穴を設け、線材収容穴内に磁性線材6を配置していもよい。
【0033】
コイル12は、線材収容溝11内に配置された磁性線材6の外周側に設けられている。具体的には、コイル12は、
図6に示すように、例えばエナメル線等の絶縁電線13を電線巻回部8に巻回することにより形成されている。
【0034】
センサ側コネクタ14、15は、
図7(B)に示すように、ボビン7の左端部および右端部にそれぞれ設けられている。具体的には、センサ側コネクタ14は、ボビン7において、左側の線材支持部9の下部に一体形成されている。センサ側コネクタ15は、ボビン7において、右側の線材支持部9の下部に一体形成されている。また、センサ側コネクタ14は左側の線材支持部9から下方に突出し、センサ側コネクタ15は右側の線材支持部9から下方に突出している。センサ側コネクタ14は基板側コネクタ24と着脱可能に接続され、センサ側コネクタ15は基板側コネクタ25と着脱可能に接続される。
【0035】
センサ側コネクタ14は、
図8(A)および8(B)に示すように、嵌合部16および端子17を備えている。嵌合部16は基板側コネクタ24の嵌合部27と嵌合される。嵌合部16は、左側の線材支持部9から下方に突出した筒状(例えば四角筒状)に形成されている。端子17は、導電材料、例えば銅合金等の金属材料により、L字状に折れ曲がった棒状に形成されている。端子17は嵌合部16の後部の左右方向中央部に配置されている。端子17の一端側部分は電線接続部17Aとなり、端子17の他端側部分は接触部17Bとなり、電線接続部17Aは前後方向に伸長し、接触部17Bは上下方向に伸長している。電線接続部17Aは、嵌合部16の後部の上側部分から後方に伸長し、その先端部はボビン7の外側に突出している。また、電線接続部17Aには絶縁電線13の一端部が固定され、かつ電気的に接続されている。接触部17Bは、嵌合部16の内側の後部に位置し、嵌合部16の上端から下端に亘って伸長している。なお、センサ側コネクタ14は「第1のコネクタ」の具体例であり、センサ側コネクタ14の嵌合部16は「第1の嵌合部」の具体例であり、センサ側コネクタ14の端子17は「第1の端子」の具体例である。
【0036】
センサ側コネクタ15はセンサ側コネクタ14と左右対称に形成されており、センサ側コネクタ14と同様に、嵌合部16および端子17を備えている。また、センサ側コネクタ15の端子17の電線接続部17Aには絶縁電線13の他端部が固定され、かつ電気的に接続されている。なお、センサ側コネクタ15は「第2のコネクタ」の具体例であり、センサ側コネクタ15の嵌合部16は「第2の嵌合部」の具体例であり、センサ側コネクタ15の端子17は「第2の端子」の具体例である。
【0037】
ヨーク18は、外部磁界の磁束の方向を制御する機能を有している。本実施形態においては、ヨーク18は、磁界形成部材2により形成された磁界の磁束の方向を制御する。ヨーク18は、
図5に示すように、2つのヨーク片18Aを備えている。各ヨーク片18Aは例えば鉄等の軟磁性材料により形成されている。一方のヨーク片18Aの一部は磁気センサ5の左部の前方に配置され、一方のヨーク片18Aの他の一部は磁気センサ5の左端部の上方に配置されている。また、他方のヨーク片18Aの一部は磁気センサ5の右部の前方に配置され、他方のヨーク片18Aの他の一部は磁気センサ5の右端部の上方に配置されている。
【0038】
ケーシング19は、磁気センサ5とヨーク18とを一体化する機能を有している。ケーシング19は例えば樹脂等の非磁性材料により形成されている。
図9に示すように、ヨーク18はケーシング19に埋設されることにより、ケーシング19と一体化している。具体的には、ヨーク18はケーシング19とインサート成形により一体化している。また、ケーシング19には、
図10に示すように、センサ収容部20が設けられている。センサ収容部20は、ケーシング19の下面に形成された穴であり、下向きに開口し、上部は閉塞されている。センサ収容部20内には、
図4(B)に示すように、磁気センサ5が収容される。
【0039】
磁気センサ5がセンサ収容部20内にぴったりと挿入されるように、センサ収容部20の開口形状は磁気センサ5の外形および大きさに応じた四角形であり、センサ収容部20の左右方向の寸法は磁気センサ5の左右方向の寸法と略等しく、センサ収容部20の前後方向の寸法は、磁気センサ5のボビン7の左端部および右端部の前後方向の寸法と略等しい。また、
図10に示すように、ケーシング19の左後部および右後部には切り欠き21がそれぞれ形成されている。センサ収容部20内に磁気センサ5が挿入されたときには、
図4(A)に示すように、磁気センサ5のボビン7の左端部から後方に突出した端子17の先端部が、ケーシング19の左後部の切り欠き21の内側に配置され、磁気センサ5のボビン7の右端部から後方に突出した端子17の先端部が、ケーシング19の右後部の切り欠き21の内側に配置される。また、
図10に示すように、センサ収容部20の後面には、前方に突出した複数の突起22が形成されている。磁気センサ5がセンサ収容部20内に挿入されたとき、各突起22がボビン7に強く当たる。これにより、磁気センサ5がセンサ収容部20内に固定される。磁気センサ5をケーシング19に装着する際には、作業者は、磁気センサ5をセンサ収容部20内に圧入する。
【0040】
また、
図4(B)に示すように、磁気センサ5がセンサ収容部20内に装着された状態で、磁気センサ5においてセンサ側コネクタ14、15を除く部分はセンサ収容部20内に配置されるが、センサ側コネクタ14、15はセンサ収容部20から出ている。すなわち、センサ側コネクタ14、15はケーシング19から下方にそれぞれ突出している。
【0041】
(基板側コネクタ)
図11(A)は上から見た基板側コネクタ24を示している。
図11(B)は下から見た基板側コネクタ24を示している。
図12(A)は磁気センサ5のセンサ側コネクタ14と基板側コネクタ24とが分離した状態を示している。
図12(B)はセンサ側コネクタ14と基板側コネクタ24とが接続された状態を示している。なお、
図12(A)および12(B)において、磁気センサ5は、
図8(A)中の切断線B-Bに沿って切断した磁気センサ5の左端部の断面を左から見たものであり、基板側コネクタ24は、
図11(A)中の切断線C-Cに沿って切断した基板側コネクタ24の断面を左から見たものである。
【0042】
基板側コネクタ24には、磁気センサ5のセンサ側コネクタ14が接続される。基板側コネクタ24は、
図11(A)に示すように、嵌合部27を有するハウジング26、および2つの端子33を備えている。なお、基板側コネクタ24は「第3のコネクタ」の具体例であり、基板側コネクタ24の「嵌合部27」は「第3の嵌合部」の具体例であり、基板側コネクタ24の「端子33」は「第3の端子」の具体例である。
【0043】
ハウジング26は、例えば樹脂等の非磁性材料により形成されている。また、ハウジング26は、
図3に示すように、上下方向に伸長した軸線を有する柱状(例えば四角柱状)に形成されている。本実施形態の基板側コネクタ24は低背であり、その上下方向の寸法は、その左右方向および前後方向のいずれの寸法よりも小さい。
【0044】
嵌合部27はハウジング26の上部に設けられている。具体的には、嵌合部27は、
図11(A)および12(A)に示すように、ハウジング26の上面に形成された有底の穴28と、この穴28の底面の中央部から上方に突出した突出部29を備えている。センサ側コネクタ14の嵌合部16は、穴28の内周面と突出部29の外周面との間の空間内に入る。穴28の開口形状および突出部29の形状は、センサ側コネクタ14の嵌合部16の形状に対応している。例えば、穴28の開口形状、および基板側コネクタ24を上から見たときの突出部29の形状はそれぞれ四角形である。
【0045】
また、ハウジング26の下面において、左右方向中央の前部および後部には、
図11(B)に示すように、前後方向に伸長した端子配置溝30がそれぞれ形成されている。また、
図11(A)に示すように、嵌合部27の突出部29において、左右方向中央の前部および後部には、上下方向に伸長した変位許容溝31が形成されている。また、ハウジング26において、左右方向中央の前部および後部には、上下方向に伸長した端子固定穴32が形成されている。
【0046】
2つの端子33は、ハウジング26の左右方向中央部の前部および後部にそれぞれ配置されている。各端子33は、
図12(A)に示すように、導電材料、例えば銅合金等の金属材料により、L字状に折れ曲がった棒状に形成されている。また、各端子33の一端側部分は基板接続部33Aとなり、端子17の他端側部分は接触部33Bとなり、基板接続部33Aは前後方向に伸長し、接触部33Bは上下方向に伸長している。また、各端子33には、端子33をハウジング26に固定するための固定部33Cが設けられおり、固定部33Cは基板接続部33Aから上方に突出している。
【0047】
後ろ側の端子33において、基板接続部33Aは、ハウジング26の下面の後部に形成された端子配置溝30内に配置されている。基板接続部33Aは、ハウジング26の下面に沿って伸長し、その先端部は端子配置溝30内から後方に突出し、ハウジング26の外側に出ている。接触部33Bは、突出部29の後面に接近した位置に配置され、端子配置溝30内からハウジング26の上面に至るまで突出部29の後面に沿って伸長している。また、接触部33Bは変位許容溝31の後方に位置している(本実施形態においては接触部33Bの一部が変位許容溝31内に入っている)。また、固定部33Cは、ハウジング26の後部に形成された端子固定穴32内に挿入されている。固定部33Cには係止片が形成されており、固定部33Cは、係止片が端子固定穴32の内周面に引っ掛かることにより、端子固定穴32内に固定されている。これにより、後ろ側の端子33がハウジング26に固定されている。
【0048】
前側の端子33は、後ろ側の端子33と前後対称に配置されている。すなわち、前側の端子33において、基板接続部33Aはハウジング26の下面の前部に形成された端子配置溝30内に配置され、その先端部は端子配置溝30内から前方に突出している。また、接触部33Bは突出部29の前面に接近した位置に配置され、変位許容溝31の前方に位置している。また、固定部33Cはハウジング26の前部に形成された端子固定穴32内に固定され、これにより、前側の端子33がハウジング26に固定されている。
【0049】
磁気センサ装置3は、
図3に示すように、2つの基板側コネクタ24、25を有しているが、基板側コネクタ25は、基板側コネクタ24と同一のものである。なお、基板側コネクタ25は「第4のコネクタ」の具体例であり、基板側コネクタ25の「嵌合部27」は「第4の嵌合部」の具体例であり、基板側コネクタ25の「端子33」は「第4の端子」の具体例である。
【0050】
図12(B)に示すように、磁気センサ5のボビン7の左端部に設けられたセンサ側コネクタ14の嵌合部16が基板側コネクタ24の嵌合部27に入ることにより、両者は互いに嵌合される。嵌合部16と嵌合部27との嵌合により、センサ側コネクタ14は基板側コネクタ24に固定される。なお、センサ側コネクタ14を基板側コネクタ24により強固に固定するために、嵌合部16および嵌合部27に係止機構またはロック機構を設けてもよい。また、嵌合部16が嵌合部27と嵌合したとき、センサ側コネクタ14の端子17の接触部17Bが、基板側コネクタ24の端子33の接触部33Bと接触し、接触部33Bを押す。接触部33Bは弾性変形して前方に変位し、変位許容溝31内に入る。これにより、接触部17Bと接触部33Bとが互いに強く接触し、両者が電気的に接続される。同様に、磁気センサ5のボビン7の右端部に設けられたセンサ側コネクタ15の嵌合部16が基板側コネクタ25の嵌合部27に入ることにより、両者は互いに嵌合され、固定される。このとき、センサ側コネクタ15の端子17の接触部17Bが、基板側コネクタ25の端子33の接触部33Bと強く接触し、両者が電気的に接続される。なお、嵌合部16と嵌合部27との嵌合は、例えば基板35に対してセンサユニット4を引っ張ることにより、解除することができる。
【0051】
なお、基板側コネクタ24、25はいずれも前後対称の構造を有しているので、基板側コネクタ24、25を基板35に設ける際に、基板側コネクタ24の前後の向きを逆にしてもセンサ側コネクタ14と基板側コネクタ24との接続に支障は生じず、また、基板側コネクタ25の前後の向きを逆にしてもセンサ側コネクタ15と基板側コネクタ25との接続に支障は生じない。
【0052】
(磁気センサ装置の基板への設置)
図1に示すように、回転検出装置1を形成するために、3つの磁気センサ装置3を基板35に設ける際には、3つの磁気センサ装置3を、磁界形成部材2の外周側に120度間隔で配置し、かつ、3つの磁気センサ装置3と回転シャフト40の軸線Xとの距離がそれぞれ互いに等しくなるように配置し、かつ、各磁気センサ装置3の前部が回転シャフト40の軸線Xの方を向くように配置する。
【0053】
3つの磁気センサ装置3を基板35に設ける手順は次の通りである。
【0054】
まず、3つの磁気センサ装置3の基板側コネクタ24、25を、
図13に示すように、基板35の実装面35A上に表面実装する。基板側コネクタ24、25を基板35の実装面35A上に表面実装するに当たり、基板35の実装面35A上において、基板側コネクタ24、25の位置を、それらが、
図1に示すように配置される3つの磁気センサ装置3におけるセンサ側コネクタ14、15の位置と対応する位置となるように定める。続いて、基板側コネクタ24、25のハウジング26の下面を基板35の実装面35A上に載置する。基板側コネクタ24のハウジング26の下面が基板35の実装面35A上に載置されることにより、基板側コネクタ24は、当該基板側コネクタ24の嵌合部27にセンサ側コネクタ14の嵌合部16が当該基板側コネクタ24の嵌合部27の上方から嵌合可能となるように基板35の実装面35A上に設けられる。また、基板側コネクタ25のハウジング26の下面が基板35の実装面35A上に載置されることにより、基板側コネクタ25は、当該基板側コネクタ25の嵌合部27にセンサ側コネクタ15の嵌合部16が当該基板側コネクタ25の嵌合部27の上方から嵌合可能となるように基板35の実装面35A上に設けられる。続いて、基板側コネクタ24、25の各端子33の基板接続部33Aを、基板35の実装面35A上に設けられた導電部に、リフロー半田付け方式により半田付けする。基板側コネクタ24、25の各端子33の基板接続部33Aが実装面35A上の導電部に半田付けされることにより、基板側コネクタ24、25の端子33が基板35の導電部に電気的に接続されると共に、基板側コネクタ24、25が基板35に固定される。
【0055】
次に、3つの磁気センサ装置3のセンサユニット4を基板側コネクタ24、25にそれぞれ接続する。具体的には、各磁気センサ装置3において、ケーシング19に固定された磁気センサ5のセンサ側コネクタ14、15のそれぞれの嵌合部16を、基板側コネクタ24、25のそれぞれの嵌合部27にそれらの上方から嵌合する。これにより、センサ側コネクタ14、15のそれぞれの端子17が基板側コネクタ24、25のそれぞれの端子33と電気的に接続される。また、センサユニット4が基板35に固定される。
【0056】
図14は、基板35に設けられた1つの磁気センサ装置3を前から見た状態を示している。
図14では、磁気センサ5を破線で示しているが、ヨーク18の図示は省略している。磁気センサ装置3が基板35に設けられた状態では、
図14に示すように、磁気センサ装置3の基板側コネクタ24、25は、互いに離れた状態で基板35の実装面35A上に配置されている。また、基板側コネクタ24、25のハウジング26は基板35の実装面35Aから上方に突出している。また、磁気センサ5の磁性線材6およびボビン7の伸長方向が基板35の実装面35Aと平行になっている。また、センサユニット4が、互いに離れた基板側コネクタ24と基板側コネクタ25との間を架橋するように配置されている結果、センサユニット4の左右方向中央部の下面(磁気センサ5のコイル12の外周面の下部)と基板35の実装面35Aとの間に、他の電気・電子部品を実装することが可能な空間Sが形成されている。
【0057】
(磁気センサ装置の磁界検出動作)
図15(A)は、基板35に設けられた3つの磁気センサ装置3における磁気センサ5およびヨーク18、並びに磁界形成部材2との位置関係を示している。以下、
図15(A)中の3つの磁気センサ装置3のうち、上側に配置された1つの磁気センサ装置3に着目して、磁気センサ装置3の磁界検出動作について説明する。
【0058】
図15(A)においては、上側の1つの磁気センサ装置3の左前方において磁界形成部材2のS極が接近し、当該磁気センサ装置3の右前方において磁界形成部材2のN極が接近している。この状態から、回転シャフト40が時計回りに90度回転すると、
図15(B)に示すように、当該磁気センサ装置3の左前方においては磁界形成部材2のN極が接近し、当該磁気センサ装置3の右前方においては磁界形成部材2のS極が接近するようになる。このとき、当該磁気センサ装置3の磁性線材6に作用する磁界の方向は右方向になる。これにより、直前まで左方向であった磁性線材6の磁化方向が右方向に急反転する。その結果、
図15(D)に示すように、コイル12に例えば正方向の電流パルスP1が生じる。
【0059】
その後、回転シャフト40がさらに時計回りに90度回転すると、
図15(C)に示すように、当該磁気センサ装置3の左前方においては磁界形成部材2のS極が接近し、当該磁気センサ装置3の右前方においては磁界形成部材2のN極が接近するようになる。このとき、当該磁気センサ装置3の磁性線材6に作用する磁界の方向は左方向になる。これにより、直前まで右方向であった磁性線材6の磁化方向が左方向に急反転する。その結果、
図15(D)に示すように、コイル12に例えば負方向の電流パルスP2が生じる。
【0060】
コイル12を形成する絶縁電線13の一端部は、センサ側コネクタ14の端子17、基板側コネクタ24の端子33、および基板35の実装面35A上に設けられた一の導電部を介して、例えば基板35に設けられた検出回路に接続されている。また、コイル12を形成する絶縁電線13の他端部は、センサ側コネクタ15の端子17、基板側コネクタ25の端子33、および基板35の実装面35A上に設けられた他の導電部を介して上記検出回路に接続されている。この構成により、コイル12に生じた電流パルスP1、P2はパルス信号として上記検出回路に出力される。
【0061】
上記検出回路は、基板35に設けられた3つの磁気センサ装置3が有する磁気センサ5のコイル12からそれぞれ出力されるパルス信号に基づいて回転シャフト40の回転量および回転方向等を検出する。なお、回転検出装置1における回転シャフト40の回転量および回転方向の検出方法として例えば国際公開第2016/002437号に記載された方法を用いることができる。
【0062】
また、コイル12に生じる電流パルスのレベルを大きくし、または電流パルスの波形を鋭くするためには、磁気センサ装置3の左前方および右前方に接近した磁界形成部材2の2つの磁極により形成される磁界の磁束を磁性線材6に集中させることが好ましい。
図15(B)または15(C)に示すように、磁気センサ5と磁界形成部材2との間にはヨーク18が配置されている。ヨーク18は、磁気センサ装置3の左前方および右前方に接近した磁界形成部材2の2つの磁極により形成される磁界の磁束が磁性線材6に集中するように磁束の方向を制御する。
図15(B)および15(C)中の矢印Fは、ヨーク18により方向が制御された磁束の流れを示している。ヨーク18により磁束を磁性線材6に集中させることにより、磁束が磁性線材6の伸長方向に沿って流れるようになり、また、磁束が磁性線材6を確実に通るようになる。
【0063】
以上説明した通り、本発明の実施形態の磁気センサ装置3は、磁気センサ5を含むセンサユニット4、および基板側コネクタ24、25を備え、磁気センサ5はセンサ側コネクタ14、15を備えている。そして、基板側コネクタ24、25を基板35の実装面35A上にリフロー半田付け方式により表面実装し、その後、センサ側コネクタ14、15を基板側コネクタ24、25に接続することにより、磁気センサ装置3を基板35に設けることができる。基板側コネクタ24、25の体積は磁気センサ装置3全体の体積と比較して小さく、それゆえ、基板側コネクタ24、25の熱容量は磁気センサ装置3全体の熱容量と比較して小さい。したがって、基板側コネクタ24、25と、基板35の実装面35A上に表面実装される他の電気・電子部品との熱容量の差は、磁気センサ装置3全体と、基板35の実装面35A上に表面実装される他の電気・電子部品との熱容量の差と比較して小さくなる。よって、リフロー半田付け方式により、基板側コネクタ24、25と他の電気・電子部品とを基板35の実装面35A上に一度に容易に表面実装することができる。したがって、磁気センサ装置3および他の電気・電子部品を基板35に設けるに当たり、半田付けの工数を減らすことができる。
【0064】
また、磁気センサ装置3を基板35の実装面35A上に設けた状態において、
図14に示すように、センサユニット4の左右方向中央部の下面(磁気センサ5のコイル12の外周面の下部)と基板35の実装面35Aとの間に、他の電気・電子部品を実装することが可能な空間Sが形成される。したがって、この空間Sを利用し、基板35の実装面35A上において、他の電気・電子部品を実装するスペースを拡大させることができ、基板35の実装面35A上に実装する他の電気・電子部品の数を増やすことができる。
【0065】
また、磁気センサ装置3は、センサ側コネクタ14、15と基板側コネクタ24、25との挿抜により、基板35に対して容易に着脱することができる。したがって、磁気センサ装置3の交換等を容易に行うことができる。
【0066】
また、磁気センサ装置3のセンサユニット4は、磁気センサ5とヨーク18とがケーシング19を介して一体化した構造を有している。これにより、磁気センサ5とヨーク18とが互いに分離して別体となっている場合と比較して、磁気センサ5およびヨーク18の基板35への取付が容易になり、また、磁気センサ5とヨーク18との配置の精度を高めることができる。
【0067】
また、ヨーク18をケーシング19とインサート成形により一体化することにより、センサユニット4の組立性を良くすることができ、また、磁気センサ5とヨーク18との配置の精度を一層高めることができる。
【0068】
また、磁気センサ装置による磁界検出は、磁性線材の大バルクハウゼン効果を用いるので、無電源で行うことができる。
【0069】
なお、
図16に示すように、3つの磁気センサ装置のセンサユニット4のケーシング19を連結部45を介して連結してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、磁気センサ5とヨーク18とをケーシング19を介して一体化する場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。例えば、
図17に示すように、磁気センサ5とヨーク18とを例えばねじ止め、接着剤による接着等の手段を用いて一体化するようにし、ケーシングを用いないようにしてもい。
【0071】
また、上記実施形態における基板側コネクタ24には2つの端子33が設けられているが、基板側コネクタ24に設ける端子33は1つでもよい。基板側コネクタ25についても同様である。
【0072】
また、上記実施形態において、磁気センサ5のボビン7の一端部には、嵌合部16および端子17を備えたセンサ側コネクタ14が設けられており、基板35には、このセンサ側コネクタ14が接続されるコネクタとして、嵌合部27を有するハウジング26および端子33を備えた基板側コネクタ24が設けられる。しかしながら、磁気センサ5のボビン7の一端部に、例えば
図18に示すセンサ側コネクタ51を設け、基板35には、このセンサ側コネクタ51が接続されるコネクタとして、
図18に示す基板側コネクタ61を設けてもよい。
図18において、センサ側コネクタ51は、電線接続部52Aおよび接触部52Bを有する端子52のみにより構成されている。また、接触部52Bは、ボビン7の線材支持部9の下面に設けられた凹部53内に配置されている。一方、基板側コネクタ61はスリーブ状の端子62のみにより形成されている。端子62は基板35の実装面35A上に表面実装され、上向きに開口している。端子52の接触部52Bはスリーブ状の端子62にその上方から嵌合(挿入)される。これにより、センサ側コネクタ51が基板側コネクタ61に接続される。この構造から、センサ側コネクタ51の端子52の接触部52B、および基板側コネクタ61のスリーブ状の端子62はそれぞれ嵌合部としての機能を有する。それゆえ、センサ側コネクタ51の端子52は端子であると同時に嵌合部であり、基板側コネクタ61の端子62は端子であると同時に嵌合部である。同様に、磁気センサ5のボビン7の他端部に、
図18に示すセンサ側コネクタ51を設け、基板35に、磁気センサ5のボビン7の他端部に設けられたセンサ側コネクタ51が接続されるコネクタとして、
図18に示す基板側コネクタ61を設けてもよい。
【0073】
また、本発明の磁気センサ装置は、ヨークを用いない実施形態も可能である。また、本発明の磁気センサ装置は、回転検出装置以外のものにも適用することができる。
【0074】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う磁気センサ装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
3 磁気センサ装置
5 磁気センサ
6 磁性線材
7 ボビン
12 コイル
13 絶縁電線(電線)
14、15、51 センサ側コネクタ(第1のコネクタ、第2のコネクタ)
16 嵌合部(第1の嵌合部、第2の嵌合部)
17、52 端子(第1の端子、第2の端子)
18 ヨーク
19 ケーシング
24、25、61 基板側コネクタ(第3のコネクタ、第4のコネクタ)
27 嵌合部(第3の嵌合部、第4の嵌合部)
33、62 端子(第3の端子、第4の端子)
35 基板