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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003037
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】磁気センサ装置および回転検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
G01D5/245 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103483
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(72)【発明者】
【氏名】江川 広祐
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA25
2F077AA46
2F077AA47
2F077NN02
2F077NN04
2F077NN17
2F077NN19
2F077PP13
2F077QQ07
2F077RR03
2F077TT31
(57)【要約】
【課題】複数の磁気センサを用いて回転体の回転の検出を行うために複数の磁気センサを基板上に実装するに当たり、複数の磁気センサ間の配置のずれを抑制し、また、実装作業の手間を減らす。
【解決手段】磁気センサ装置3は、大バルクハウゼン効果を奏する磁性線材5、および磁性線材5の外周側に設けられたコイルを有する複数の磁気センサ4と、複数の磁気センサ4がそれぞれ固定されたケーシング16とを備え、複数の磁気センサ4は、ケーシング16の下面と同一の基準面上に、基準面と直交する基準線の周りに周方向に所定の間隔で、磁性線材5の伸長方向が基準面と平行となるように配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大バルクハウゼン効果を奏する磁性線材、および前記磁性線材の外周側に設けられたコイルを有する複数の磁気センサと、
前記複数の磁気センサがそれぞれ固定された1つのケーシングとを備え、
前記複数の磁気センサは、前記ケーシングの下面と同一のまたは平行な1つの基準面上に、前記基準面と直交する基準線の周りに周方向に所定の間隔で、かつ前記磁性線材の伸長方向が前記基準面と平行となるように配置されていることを特徴とする磁気センサ装置。
【請求項2】
外部磁界の磁束の方向を制御する複数のヨークを備え、
前記複数のヨークは前記複数の磁気センサと一対一に対応するように設けられ、
前記複数のヨークは前記複数の磁気センサと共に前記ケーシングに固定されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項3】
前記複数のヨークは前記ケーシングとインサート成形により一体化していることを特徴とする請求項2に記載の磁気センサ装置。
【請求項4】
回転体の回転を検出する回転検出装置であって、
請求項1に記載の磁気センサ装置と、
前記回転体と共に回転し、前記回転体が回転したときに前記回転体の外周側に回転磁界を形成する磁界形成部材と、
実装面を有し、前記磁界形成部材の近傍に、前記実装面が上を向き、前記実装面を含む平面が前記回転軸と直交し、かつ前記回転体および前記磁界形成部材のいずれとも接触しないように配置された基板とを備え、
前記磁気センサ装置の前記ケーシングは、前記基準線が前記回転体の回転軸と一致し、かつ前記ケーシングの下面が前記実装面と平行となるように前記実装面上または前記実装面の上方に配置された状態で、前記基板に固定されていることを特徴とする回転検出装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大バルクハウゼン効果を利用した磁気センサ装置、および当該磁気センサ装置を含む回転検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大バルクハウゼン効果を利用した磁気センサは、大バルクハウゼン効果を奏する磁性線材、および磁性線材の外周側に設けられたコイルを備えている。具体的には、磁気センサには、磁性線材およびコイルのそれぞれの位置を定めるためにボビンが設けられ、磁性線材はボビンの軸部の内部に配置され、コイルはボビンの軸部の外周側に電線を巻回することにより形成されている。国際公開第2016/021074号(特許文献1)には、このような磁気センサの一例が記載されている。
【0003】
例えば、国際公開第2016/021074号に記載されているように、回転シャフト等の回転体の回転の検出に磁気センサを用いる場合、回転体の外周部に磁石を固定し、回転体が回転したときに回転体の外周側に回転磁界が形成されるようにする。また、回転体の外周側に、回転体および磁石のいずれとも接触しないように基板を設け、その基板上に複数の磁気センサを設ける。また、複数の磁気センサは、磁石の回転軌道の近傍であって、磁石の回転方向においてそれぞれ互いに異なる位置に配置する。これにより、回転体の回転により形成される回転磁界を複数の磁気センサにより検出することができ、各磁気センサのコイルから出力される検出信号に基づいて回転体の回転量および回転方向等を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/021074号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の磁気センサを用いて回転体の回転の検出を行うに当たり、検出精度を向上させるためには、基板上における複数の磁気センサ間の配置の精度を高めることが要請される。しかしながら、従来技術においては、複数の磁気センサを基板上にそれぞれ個別に実装するため、基板上における複数の磁気センサ間の配置がずれることがある。また、複数の磁気センサを基板上に個別に実装する作業には手間がかかる。
【0006】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、複数の磁気センサを用いて回転体の回転の検出を行うために複数の磁気センサを基板上に実装するに当たり、複数の磁気センサ間の配置のずれを抑制することができ、また、実装作業の手間を減らすことができる磁気センサ装置および回転検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の磁気センサ装置は、大バルクハウゼン効果を奏する磁性線材、および前記磁性線材の外周側に設けられたコイルを有する複数の磁気センサと、前記複数の磁気センサがそれぞれ固定された1つのケーシングとを備え、前記複数の磁気センサは、前記ケーシングの下面と同一のまたは平行な1つの基準面上に、前記基準面と直交する基準線の周りに周方向に所定の間隔で、かつ前記磁性線材の伸長方向が前記基準面と平行となるように配置されていることを特徴とする。
【0008】
複数の磁気センサを用いて回転体の回転の検出を行うときには、例えば、回転体の外周部に磁石を固定し、回転体が回転したときに回転体の外周側に回転磁界が形成されるようにする。また、回転体の外周側に、回転体および磁石のいずれとも接触しないように基板を設ける。基板は、その実装面を含む平面が回転体の回転軸と直交するように配置する。そして、その基板の実装面上に、本発明の磁気センサ装置を設ける。本発明の磁気センサ装置を基板の実装面上に設ける際には、例えばケーシングの下面を基板の実装面上に載置する。また、前記基準線が回転体の回転軸と一致するように基板の実装面上におけるケーシングの配置を定める。複数の磁気センサはケーシングに固定されているので、ケーシングを基板の実装面上に配置することにより、基板の実装面上において複数の磁気センサ間の配置が定まる。その後、ケーシングまたは各磁気センサを基板に固定する。
【0009】
本発明の磁気センサ装置では、複数の磁気センサが、ケーシングの下面と同一のまたは平行な1つの基準面上に、当該基準面と直交する基準線の周りに周方向に所定の間隔で、かつ磁性線材の伸長方向が前記基準面と平行となるように配置されている。したがって、ケーシングの下面を基板の実装面上に載置し、前記基準線が回転体の回転軸と一致するように基板の実装面上におけるケーシングの配置を定めることにより、複数の磁気センサを、基板の実装面と同一のまたは平行な面上に配置することができ、また、複数の磁気センサを、磁石の回転軌道の外周側に、磁石の回転方向において所定の間隔で配置することができ、また、複数の磁気センサを、磁性線材の伸長方向が基板の実装面と平行となるように配置することができる。すなわち、ケーシングを基板の実装面上に上述したように配置するだけで、回転体の回転の検出を行うことができる複数の磁気センサの基板上における配置を定めることができる。したがって、本発明の磁気センサ装置によれば、複数の磁気センサを用いて回転体の回転の検出を行うために複数の磁気センサを基板上に実装するに当たり、複数の磁気センサを基板上にそれぞれ個別に実装する従来技術と比較して、複数の磁気センサ間の配置のずれを抑制することができ、また、実装作業の手間を減らすことができる。
【0010】
また、上記本発明の磁気センサ装置において、外部磁界の磁束の方向を制御する複数のヨークを備え、前記複数のヨークは前記複数の磁気センサと一対一に対応するように設けられ、前記複数のヨークは前記複数の磁気センサと共に前記ケーシングに固定されていることとしてもよい。この場合、前記複数のヨークは前記ケーシングとインサート成形により一体化していることとしてもよい。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の回転検出装置は、回転体の回転を検出する回転検出装置であって、上記本発明の磁気センサ装置と、前記回転体と共に回転し、前記回転体が回転したときに前記回転体の外周側に回転磁界を形成する磁界形成部材と、実装面を有し、前記磁界形成部材の近傍に、前記実装面が上を向き、前記実装面を含む平面が前記回転軸と直交し、かつ前記回転体および前記磁界形成部材のいずれとも接触しないように配置された基板とを備え、前記磁気センサ装置の前記ケーシングは、前記基準線が前記回転体の回転軸と一致し、かつ前記ケーシングの下面が前記実装面と平行となるように前記実装面上または前記実装面の上方に配置された状態で、前記基板に固定されていることを特徴とする。この回転検出装置において、磁気センサ装置のケーシングは、基準線が回転体の回転軸と一致し、かつケーシングの下面が基板の実装面と平行となるように基板の実装面上または基板の実装面の上方に配置された状態で基板に固定されている。具体的には、ケーシングは、基準線が回転体の回転軸と一致し、かつケーシングの下面が基板の実装面に接触するように、基板の実装面上に載置された状態で基板に固定され、または、基準線が回転体の回転軸と一致し、かつケーシングの下面が基板の実装面と平行となるように基板の実装面の上方に配置された状態で基板に固定されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の磁気センサを用いて回転体の回転の検出を行うために複数の磁気センサを基板上に実装するに当たり、複数の磁気センサ間の配置のずれを抑制することができ、また、実装作業の手間を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態の磁気センサ装置を含む回転検出装置を上から見た状態を示す説明図である。
図2図1中の切断線II-IIに沿って切断した回転検出装置の断面を横から見た状態を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態の磁気センサ装置、および基板を示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態の磁気センサ装置を下から見た状態を示す説明図である。
図5】(A)は本発明の実施形態の磁気センサ装置における磁気センサを前右上から見た状態を示す斜視図であり、(B)は当該磁気センサを後ろ右上から見た状態を示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態の磁気センサ装置の磁気センサにおけるボビンを前右上から見た状態を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態の磁気センサ装置における磁気センサおよびヨークを前右上から見た状態を示す斜視図である。
図8】本発明の実施形態の磁気センサ装置において、磁気センサのケーシングへの取付方法を示す説明図である。
図9】本発明の実施形態の磁気センサ装置のケーシング内における磁気センサおよびヨークの配置を示す説明図である。
図10】本発明の実施形態の磁気センサ装置のケーシング内における磁気センサおよびヨークの配置を示す説明図である。
図11】本発明の実施形態の磁気センサ装置における磁気センサ等の磁界検出動作を示す説明図である。
図12】本発明の実施形態の磁気センサ装置の第1の変形例を示す説明図である。
図13】本発明の実施形態の磁気センサ装置の第2の変形例を示す説明図である。
図14】本発明の実施形態の磁気センサ装置の第3の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(回転検出装置)
図1は、本発明の実施形態の磁気センサ装置3を含む回転検出装置1を上から見た状態を示している。図2は、図1中の切断線II-IIに沿って切断した回転検出装置1の断面を横(図1においては下)から見た状態を示している。
【0015】
図1において、回転検出装置1は、回転体としての回転シャフト40の回転を検出する装置である。回転検出装置1は、回転磁界を形成する磁界形成部材2、回転磁界を検出する磁気センサ装置3、および基板31を備えている。
【0016】
磁界形成部材2は、例えばフェライト等の磁性材料によりリング状に形成されている。磁界形成部材2は、回転シャフト40の外周側に回転シャフト40と同軸に配置され、回転シャフト40に固定されている。磁界形成部材2は多極着磁された磁石であり、磁界形成部材2の外周側部分には、N極、S極、N極、S極の4つの磁極が、この順序で磁界形成部材2の周方向に例えば90度間隔で形成されている。なお、磁界形成部材2は、多極着磁されていない4つの磁石により形成することもできる。
【0017】
基板31は回転シャフト40の外周側に設けられている。また、基板31は磁界形成部材2の近傍に設けられている。基板31はその実装面31Aが上を向くように配置されている。また、基板31は、図2に示すように、実装面31Aを含む平面が回転シャフト40の回転軸Xと直交するように配置されている。また、基板31の中央部には貫通穴31Bが形成され、貫通穴31B内には回転シャフト40が挿入されている。貫通穴31Bの中心は回転シャフト40の回転中心と一致している。また、貫通穴31Bの直径は回転シャフト40の外径よりも大きく、回転シャフト40は基板31に接触していない。また、基板31は、回転シャフト40が回転可能に支持された装置(例えばモータ等)の筐体等にブラケット等を介して固定されている。
【0018】
磁気センサ装置3は、後述するように、3つの磁気センサ4と3つのヨーク15とが1つのケーシング16内に収容され、固定されることにより形成されている。図1では、ケーシング16内に収容された3つの磁気センサ4および3つのヨーク15を破線で示している。磁気センサ装置3は、ケーシング16における基準線Qを回転シャフト40の回転軸Xと一致させつつ、ケーシング16の下面を基板31の実装面31A上に載置することにより、基板31の実装面31A上に配置されている。また、磁気センサ装置3は、ケーシング16に設けられた固定金具22を、基板31の実装面31A上に設けられた固定パッド32に半田付けすることにより、基板31に固定されている。
【0019】
磁気センサ装置3がこのように基板31の実装面31A上に配置された状態においては、3つの磁気センサ4が基板31の実装面31A上に配置される。また、3つの磁気センサ4は、磁界形成部材2の外周側に、磁界形成部材2の回転方向において120度の間隔で配置される。また、各磁気センサ4は、磁性線材5の伸長方向が基板31の実装面31Aと平行となるように配置される。また、基板31の実装面31Aを上から見たとき、各磁気センサ4は、磁性線材5の伸長方向の中央部(厳密には磁性線材5の中心軸の伸長方向における中央部)が、磁界形成部材2の外周側に描かれた、回転シャフト40の回転中心を中心とする円Dと接するように配置される。
【0020】
また、磁気センサ装置3が上述したように基板31の実装面31A上に配置された状態においては、3つのヨーク15が基板の実装面31A上に配置される。3つのヨーク15は3つの磁気センサ4と一対一に対応するように配置される。また、3つのヨーク15は、磁界形成部材2の外周側に、磁界形成部材2の回転方向において120度の間隔で配置される。また、各ヨーク15は磁気センサ4の内周側に磁気センサ4と隣り合うように配置される。
【0021】
磁界形成部材2は3つの磁気センサおよび3つのヨークのいずれとも接触していない。また、磁界形成部材2が回転シャフト40と共に回転するの対し、磁気センサ装置3は不動である。回転シャフト40と共に磁界形成部材2が回転すると、磁界形成部材2により形成される磁界が回転する。これにより、回転シャフト40の回転軸Xを中心として回転する回転磁界が形成される。3つの磁気センサ4はこの回転磁界を検出する。具体的には、磁界形成部材2により形成される磁界が回転することにより、各磁気センサ4に作用する磁界の方向が変化する。各磁気センサ4は、この磁界の方向の変化に対応したパルス信号を出力する。各磁気センサ4から出力されるパルス信号に基づいて回転シャフト40の回転量および回転方向等を検出することができる。
【0022】
(磁気センサ装置)
図3は、基板31に実装される前の磁気センサ装置3、および基板31を上斜め横から見た状態を示している。図4は磁気センサ装置3を下から見た状態を示している。
【0023】
磁気センサ装置3は、3つの磁気センサ4、3つのヨーク15、および1つのケーシング16を備えている。磁気センサ装置3は、3つの磁気センサ4および3つのヨーク15をケーシング16を介して一体化したものである。3つの磁気センサ4および3つのヨーク15は、図3に示すように、ケーシング16内に収容され、固定されている。具体的には、図4に示すように、3つの磁気センサ4は、ケーシング16の下面に設けられた3つのセンサ収容穴19内に取り付けられている。また、3つのヨーク15はケーシング16内に埋め込まれている。3つの磁気センサ4および3つのヨーク15はケーシング16内における所定の位置に配置されている。また、3つの磁気センサ4はそれぞれ同一のものである。また、3つのヨーク15はそれぞれ同一のものである。
【0024】
(磁気センサおよびヨーク)
磁気センサ4およびヨーク15について説明する。説明の便宜上、磁気センサ4およびヨーク15についての前(Fd)、後(Bd)、上(Ud)、下(Dd)、左(Ld)、右(Rd)の方向を図5~7、11の右下に描いた矢印が示すように定める。
【0025】
図5(A)は3つの磁気センサ4のうちの1つを前右上から見た状態を示している。図5(B)は磁気センサ4を後ろ右上から見た状態を示している。図6は磁気センサ4のボビン6を前右上から見た状態を示している。
【0026】
磁気センサ4は、磁気センサ装置3において、上記回転磁界の検出を行う部分である。磁気センサ4は、図5(A)に示すように、磁性線材5、ボビン6、コイル12、および2つの端子14を備えている。
【0027】
磁性線材5は大バルクハウゼン効果を奏する磁性線材であり、複合磁気ワイヤと呼ばれるものである。磁性線材5は、例えば、鉄およびコバルトを含む半硬質磁性材料により形成され、直径が例えばおよそ0.1mm~1mmで、長さが例えばおよそ10mm~30mmの線材である。磁性線材5は、例えば、上記半硬質磁性材料を線引きし、方向を変えながら複数回捻ることにより形成されている。磁性線材5は、磁化が容易な方向が当該磁性線材5の中心軸の方向である一軸異方性を有している。また、磁性線材5において、その外周側部分よりも中心側部分の方が保磁力が大きい。磁性線材5は外部磁界の方向の変化に応じて磁性線材5(その外周側部分)の磁化方向が急反転する性質を有している。
【0028】
ボビン6は例えば樹脂等の非磁性材料により形成されている。ボビン6は左右対称の形状を有している。ボビン6は、図6に示すように、電線巻回部7、2つの線材支持部8、2つの鍔部9、および線材収容溝10を備えている。電線巻回部7は、ボビン6の左右方向中間部に設けられ、左右方向に伸長した円柱状に形成されている。線材支持部8は、ボビン6の左端部および右端部にそれぞれ設けられている。鍔部9は、電線巻回部7と左の線材支持部8との間、および電線巻回部7と右の線材支持部8との間にそれぞれ設けられている。各鍔部9は電線巻回部7よりも大径である。線材収容溝10は、ボビン6の左端から右端にかけて伸長した溝である。
【0029】
磁性線材5は、左右方向に直線状に伸長するようにボビン6の内部に配置されている。具体的には、磁性線材5は、線材収容溝10内に配置されている。磁性線材5の左端部は、左の線材支持部8に形成された線材収容溝10の左端部に接着剤を用いた接着等の手段により支持(固定)されている。同様に、磁性線材5の右端部は、右の線材支持部8に形成された線材収容溝10の右端部に支持(固定)されている。なお、線材収容溝10に代えて、ボビン6の左端から右端にかけて伸長した穴である線材収容穴を設け、線材収容穴内に磁性線材5を配置していもよい。
【0030】
コイル12は、線材収容溝10内に配置された磁性線材5の外周側に設けられている。具体的には、コイル12は、図5(A)に示すように、例えばエナメル線等の絶縁電線13を電線巻回部7に巻回することにより形成されている。
【0031】
2つの端子14は、図5(B)に示すように、2つの線材支持部8の後部にそれぞれ設けられている。具体的には、一方の端子14は、左の線材支持部8の後面から後方に突出した端子固定部11に設けられている。また、他方の端子14は、右の線材支持部8の後面から後方に突出した端子固定部11に設けられている。各端子14は、導電材料、例えば銅合金等の金属材料により、L字状に折れ曲がった棒状に形成されている。各端子14の一端側部分は電線接続部14Aとなり、各端子14の他端側部分は基板接続部14Bとなっている。各端子14において、電線接続部14Aは端子固定部11から上方に突出し、基板接続部14Bは端子固定部11の下側から後方に突出している。一方の端子14の電線接続部14Aには絶縁電線13の一端部が固定され、かつ電気的に接続されている。他方の端子14の電線接続部14Aには絶縁電線13の他端部が固定され、かつ電気的に接続されている。
【0032】
図7は磁気センサ4および当該磁気センサ4に対応するヨーク15を前右上から見た状態を示している。ヨーク15は、外部磁界の磁束の方向を制御する機能を有している。具体的には、ヨーク15は、磁界形成部材2により形成された磁界の磁束の方向を制御する。ヨーク15は、図7に示すように、2つのヨーク片15Aを備えている。各ヨーク片15Aは例えば鉄等の軟磁性材料により形成されている。一方のヨーク片15Aの一部は磁気センサ4の左部の前方に配置され、一方のヨーク片15Aの他の一部は磁気センサ4の左端部の上方に配置されている。また、他方のヨーク片15Aの一部は磁気センサ4の右部の前方に配置され、他方のヨーク片15Aの他の一部は磁気センサ4の右端部の上方に配置されている。
【0033】
(ケーシング)
ケーシング16は、例えば樹脂等の非磁性材料により形成されている。ケーシング16は、図3に示すように、3つのセンサ保持部17を連結部18を介して連結した構造を有している。各センサ保持部17には、図4を示すように、1つの磁気センサ4および1つのヨーク15が収容され、固定されている。3つのセンサ保持部17の形状はそれぞれ互いに同一である。
【0034】
図8は、ケーシング16における1つのセンサ保持部17を下斜め横から見た状態を示している。説明の便宜上、センサ保持部17についての前(Fd)、後(Bd)、上(Ud)、下(Dd)、左(Ld)、右(Rd)の方向を図8中の右下に描いた矢印が示すように定める。
【0035】
センサ保持部17には、図8に示すように、磁気センサ4を収容するセンサ収容穴19が形成されている。センサ収容穴19は、センサ保持部17の下面に形成されており、下向きに開口し、上部は閉塞されている。センサ収容穴19の開口形状は、磁気センサ4がセンサ収容穴19内にぴったりと挿入されるように、磁気センサ4の外形および大きさに応じた四角形である。センサ収容穴19の左右方向の寸法は磁気センサ4の左右方向の寸法と略等しく、センサ収容穴19の前後方向の寸法は、磁気センサ4のボビン6の各線材支持部8の前後方向の寸法と略等しい。
【0036】
また、センサ保持部17の左後部および右後部には切り欠き20がそれぞれ形成されている。センサ収容穴19内に磁気センサ4が挿入されたときには、磁気センサ4のボビン6の左の線材支持部8の後部に設けられた端子固定部11および端子14が左の切り欠き20の内側に配置され、磁気センサ4のボビン6の右の線材支持部8の後部に設けられた端子固定部11および端子14が右の切り欠き20の内側に配置される。
【0037】
また、センサ収容穴19の後面には、前方に突出した複数の突起21が形成されている。磁気センサ4がセンサ収容穴19内に挿入されたとき、各突起21がボビン6に強く当たる。これにより、磁気センサ4がセンサ収容穴19内に固定される。磁気センサ4をセンサ保持部17に装着する際には、作業者は、磁気センサ4をセンサ収容穴19内に圧入する。また、磁気センサ4がセンサ収容穴19内の奥まで挿入されて磁気センサ4がセンサ保持部17に装着された状態では、磁気センサ4のボビン6の下面(各線材支持部8の下面)が、センサ保持部17の下面、すなわちケーシング16の下面と同一平面内に配置される。
【0038】
また、センサ保持部17の後ろ下部には、ケーシング16を基板31に固定するための固定金具22が取り付けられ、固定されている。
【0039】
3つのセンサ保持部17は、図3に示すように、それらの前部が連結部18により連結されることにより一体化している。また、3つのセンサ保持部17は、それらの下面が同一平面内に位置するように配置されている。また、ケーシング16を上から見たとき、3つのセンサ保持部17は、基準線Qの周りに基準線Qを中心として120度の間隔で配置されている。また、3つのセンサ保持部17は、それぞれの前部が基準線Qの方を向くように配置されている。また、3つのセンサ保持部17は、センサ保持部17と基準線Qとの間の距離がそれぞれ互いに等しくなるように配置されている。また、連結部18は円筒状に形成されており、連結部18の中心は基準線Q上に位置している。また、連結部18の内径は磁界形成部材2の外径よりも大きい値に設定されている。また、本実施形態においては、基板31の貫通穴31Bの直径が磁界形成部材2の外径よりも大きい値に設定されており、連結部18の内径は貫通穴31Bの直径と同一の値に設定されている(図1および2を参照)。また、ケーシング16は、それを上から見たとき、基準線Qを中心とした回転対称(3回対称)の形状を有している。
【0040】
3つの磁気センサ4は、ケーシング16が有する3つのセンサ保持部17のセンサ収容穴19内に装着される。また、本実施形態において、3つのヨークはケーシング16とインサート成形により一体化している。3つのヨーク15は、3つのセンサ保持部17にそれぞれ埋め込まれている。各センサ保持部17において、ヨーク15はセンサ収容穴19の前方に位置している。
【0041】
(ケーシング内における磁気センサ等の配置)
図9はケーシング16内における3つの磁気センサ4および3つのヨーク15の配置を上から見た状態を示している。図10はケーシング16内における3つの磁気センサ4および3つのヨーク15の配置を上斜め横から見た状態を示している。図9および図10において、Sはケーシング16の下面と同一平面内に位置する基準面を示している。図示の都合上、基準面Sに格子状の模様を付している。
【0042】
図9および10に示すように、ケーシング16内において、3つの磁気センサ4は、ケーシング16の下面と同一平面内に位置する基準面S上に配置されている。具体的には、各磁気センサ4のボビン6の各線材支持部8の下面が基準面S上に載置されている。また、ケーシング16内において、3つの磁気センサ4は、基準面Sと直交する基準線Qの周りに120度の間隔で配置されている。また、ケーシング16内において、3つの磁気センサ4は、磁性線材5の伸長方向が基準面Sと平行となるように配置されている。また、本実施形態では、ケーシング16内において、3つの磁気センサ4は、ケーシング16を上から見たときに磁性線材5の伸長方向における中央部(厳密には磁性線材5の中心軸の伸長方向における中央部)が基準円Cに接するように配置されている。基準円Cは、基準面S上に描かれ、その中心が基準線Q上に位置する1つの円である。3つの磁気センサ4は、それらの前部が基準線Qの方を向き、かつ磁気センサ4と基準線Qとの間の距離がそれぞれ互いに等しくなるように配置されている。3つの磁気センサ4がケーシング16の3つのセンサ収容穴19に装着されたとき、3つの磁気センサ4はこのような配置になる。
【0043】
また、ケーシング16内において、3つのヨークは、基準線Qの周りに配置された3つの磁気センサ4の内周側に、3つの磁気センサ4とそれぞれ隣り合うように配置されている。具体的には、3つのヨーク15は、それらの前部が基準線Qの方を向き、かつヨーク15と基準線Qとの間の距離がそれぞれ互いに等しくなるように120度の間隔で基準面S上に配置されている。3つのヨーク15は、このような配置となるようにケーシング16内に埋め込まれている。
【0044】
(磁気センサ装置の基板への実装)
磁気センサ装置3は、3つの磁気センサ4、3つのヨーク15、および1つのケーシング16を備え、3つの磁気センサ4および3つのヨーク15はケーシング16を介して一体化されている。したがって、磁気センサ装置3の基板31への実装は、3つの磁気センサ4および3つのヨーク15が一体化されたケーシング16を基板31の実装面31A上に実装するだけで略完了する。
【0045】
ケーシング16を基板31の実装面31A上に実装するに当たり、作業者は、まず、ケーシング16における基準線Qを回転シャフト40の回転軸Xと一致させつつ、ケーシング16の下面を基板31の実装面31A上に載置する。ケーシング16の下面が基板31の実装面31Aに接触したとき、同時に、各磁気センサ4のボビン6の各線材支持部8の下面も基板31の実装面31Aに接触する。また、これと同時に、ケーシング16に設けられた各固定金具22の下面が、基板31の実装面31A上に設けられた固定パッド32に接触し、同時に、各磁気センサ4の各端子14の基板接続部14Bの下面が、基板31の実装面31A上に設けられた接続パッド33に接触する。次に、各固定金具22を固定パッド32に半田付けする。また、各磁気センサ4における各端子14の基板接続部14Bを接続パッド33に半田付けする。
【0046】
ケーシング16を基板31の実装面31A上にこのように実装することにより、図1および2に示すように、磁界形成部材2がケーシング16の連結部18の内側に連結部18とは非接触の状態で配置される。そして、図9に示す基準面Sの位置が実装面31Aの位置と同一になり、3つの磁気センサ4および3つのヨーク15が、基準面S上に形成されたこれらの位置関係を保持したまま、基板31の実装面31A上における磁界形成部材2の外周側に配置される。
【0047】
すなわち、図1および2に示すように、3つの磁気センサ4が基板31の実装面31A上に配置される。3つの磁気センサ4は、磁界形成部材2の外周側に、磁界形成部材2の回転方向において120度の間隔で配置される。また、各磁気センサ4は、磁性線材5の伸長方向が基板31の実装面31Aと平行となるように配置される。また、基板31の実装面31Aを上から見たとき、各磁気センサ4は、磁性線材5の伸長方向の中央部(厳密には磁性線材5の中心軸の伸長方向における中央部)が、磁界形成部材2の外周側に描かれた、回転シャフト40の回転中心を中心とする円Dと接するように配置される。ケーシング16が実装された基板31の実装面31Aを上から見たとき、この円Dは基準円Cと重なり合う。また、3つのヨーク15が基板の実装面31A上に配置される。3つのヨーク15は、磁界形成部材2の外周側に、磁界形成部材2の回転方向において120度の間隔で配置される。また、各ヨーク15は磁気センサ4の内周側に磁気センサ4と隣り合うように配置される。
【0048】
このように、ケーシング16を基板31の実装面31A上に実装するだけで、回転シャフト40の回転を検出するための、磁界形成部材2、3つの磁気センサ4および3つのヨーク15の所定の位置関係が一度に定まる。
【0049】
(磁気センサ等の磁界検出動作)
図11(A)は、磁気センサ装置3が基板31に設けられた状態における磁界形成部材2、3つの磁気センサ4および3つのヨーク15の位置関係を示している。以下、図11(A)中の3つの磁気センサ4および3つのヨーク15のうち、上側に配置された1つの磁気センサ4および1つのヨーク15に着目して、磁気センサ4およびヨーク15の磁界検出動作について説明する。
【0050】
図11(A)においては、上側の1つの磁気センサ4の左前方において磁界形成部材2のS極が接近し、当該磁気センサ4の右前方において磁界形成部材2のN極が接近している。この状態から、回転シャフト40が時計回りに90度回転すると、図11(B)に示すように、当該磁気センサ4の左前方においては磁界形成部材2のN極が接近し、当該磁気センサ4の右前方においては磁界形成部材2のS極が接近するようになる。このとき、当該磁気センサ4の磁性線材5に作用する磁界の方向は右方向になる。これにより、直前まで左方向であった磁性線材5の磁化方向が右方向に急反転する。その結果、図11(D)に示すように、コイル12に例えば正方向の電流パルスP1が生じる。
【0051】
その後、回転シャフト40がさらに時計回りに90度回転すると、図11(C)に示すように、当該磁気センサ4の左前方においては磁界形成部材2のS極が接近し、当該磁気センサ4の右前方においては磁界形成部材2のN極が接近するようになる。このとき、当該磁気センサ4の磁性線材5に作用する磁界の方向は左方向になる。これにより、直前まで右方向であった磁性線材5の磁化方向が左方向に急反転する。その結果、図11(D)に示すように、コイル12に例えば負方向の電流パルスP2が生じる。
【0052】
コイル12を形成する絶縁電線13の一端部は、磁気センサ4の一方の端子14および基板31の実装面31A上に設けられた一の接続パッド33を介して、例えば基板31に設けられた検出回路に接続されている。また、コイル12を形成する絶縁電線13の他端部は、磁気センサ4の他方の端子14および基板31の実装面31A上に設けられた他の接続パッド33を介して上記検出回路に接続されている。この構成により、コイル12に生じた電流パルスP1、P2はパルス信号として上記検出回路に出力される。
【0053】
上記検出回路は、基板31の実装面31A上に配置された3つの磁気センサ4が有するコイル12からそれぞれ出力されるパルス信号に基づいて回転シャフト40の回転量および回転方向等を検出する。なお、回転検出装置1における回転シャフト40の回転量および回転方向の検出方法として例えば国際公開第2016/002437号に記載された方法を用いることができる。
【0054】
また、コイル12に生じる電流パルスのレベルを大きくし、または電流パルスの波形を鋭くするためには、磁気センサ4の左前方および右前方に接近した磁界形成部材2の2つの磁極により形成される磁界の磁束を磁性線材5に集中させることが好ましい。図11(B)または11(C)に示すように、磁気センサ4と磁界形成部材2との間にはヨーク15が配置されている。ヨーク15は、磁気センサ4の左前方および右前方に接近した磁界形成部材2の2つの磁極により形成される磁界の磁束が磁性線材5に集中するように磁束の方向を制御する。図11(B)および11(C)中の矢印Fは、ヨーク15により方向が制御された磁束の流れを示している。ヨーク15により磁束を磁性線材5に集中させることにより、磁束が磁性線材5の伸長方向に沿って流れるようになり、また、磁束が磁性線材5を確実に通るようになる。
【0055】
以上説明した通り、本発明の実施形態の磁気センサ装置3においては、3つの磁気センサ4がケーシング16内に固定され、かつ3つの磁気センサ4が、ケーシング16の下面と同一平面内に位置する基準面S上に、基準面Sと直交する基準線Qの周りに120度の間隔で、磁性線材5の伸長方向が基準面Sと平行となるように、かつ、ケーシング16を上から見たときに磁性線材5の伸長方向における中央部が基準円Cに接するように配置されている。このように、本実施形態の磁気センサ装置3においては、回転シャフト40の回転を検出するための3つの磁気センサ4間の配置がケーシング16内において定められ、固定されているので、ケーシング16を基板31の実装面31A上に実装することにより、回転シャフト40の回転を検出するための3つの磁気センサ4間の配置が基板31の実装面31A上において定まる。したがって、本実施形態の磁気センサ装置3によれば、3つの磁気センサを基板上にそれぞれ個別に実装する従来技術と比較して、3つの磁気センサ4間の配置のずれを抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態の磁気センサ装置3によれば、ケーシング16を基板31の実装面31A上に実装するだけで、回転シャフト40の回転を検出するための、磁界形成部材2および3つの磁気センサ4の所定の位置関係が一度に定まる。したがって、3つの磁気センサを基板上に個別に実装する作業を行う従来技術と比較して、磁気センサの実装作業の手間を減らすことができる。
【0057】
また、本実施形態の磁気センサ装置3においては、3つの磁気センサ4と一対一に対応する3つのヨーク15が、3つの磁気センサ4と共にケーシング16内に固定されている。このような構成を有する本実施形態の磁気センサ装置3によれば、ケーシング16を基板31の実装面31A上に実装するだけで、3つのヨーク15を基板31の実装面31A上に配置することができ、磁界形成部材2により形成される磁界の磁束を各磁気センサ4の磁性線材5に集中させることができる。それゆえ、3つのヨークを基板上にそれぞれ個別に実装する場合と比較して、ヨークと磁気センサとの間の配置のずれを抑制することができ、また、ヨークの実装作業の手間を減らすことができる。
【0058】
また、本実施形態の磁気センサ装置3においては、複数のヨークがケーシングとインサート成形により一体化している。これにより、ヨーク15をケーシング内に強固に固定することができ、また、ケーシング16内におけるヨークの位置を高精度に定めることができるので、ヨークと磁気センサとの間の配置のずれを抑制する効果を高めることができる。
【0059】
また、本実施形態の磁気センサ装置3においては、ケーシング16の連結部18の内径が基板31の貫通穴31Bの直径と一致している。これにより、連結部18の内面と貫通穴31Bの内面とが互いに揃うようにケーシング16を基板31の実装面31A上に配置することで、ケーシング16の基板31上の実装位置を正確に定めることができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、ケーシング16を基板31の実装面31A上に実装するだけで、回転シャフト40の回転を検出するための磁界形成部材2、3つの磁気センサ4および3つのヨーク15の配置が定まるので、回転検出精度の高い回転検出装置1を容易に製造することができる。
【0061】
なお、上記実施形態では、磁気センサ装置3のケーシング16内に3つの磁気センサ4が120度間隔で配置され、かつ3つのヨーク15が120度間隔で配置されている場合を例にあげたが、3つの磁気センサの配置の間隔および3つのヨーク15の配置の間隔はこれに限定されない。例えば、図12に示すように、磁気センサ装置51のケーシング52内に3つの磁気センサ4を60度間隔で配置し、かつ3つのヨーク15を60度間隔で配置してもよい。
【0062】
また、本発明の磁気センサ装置のケーシングに設ける磁気センサの個数は3つに限らず、2つでもよいし、4つ以上でもよい。ヨークについても同様である。本発明の磁気センサ装置のケーシング内にヨークを設けない構成とすることも可能である。
【0063】
また、上記実施形態では、ケーシング16において、3つの磁気センサ4を、ケーシング16を上から見たときに磁性線材5の伸長方向における中央部が基準円Cに接するように配置する場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。例えば、図13に示すように、3つの磁気センサ4を、各磁気センサ4の磁性線材5が基準円Cの円周と交差するように配置してもよい。なお、この配置の場合には、回転検出装置における磁界形成部材(回転磁界を形成するための磁極または磁石)の配置も異なってくる。磁界形成部材の配置については、特開2019-200098号公報が参考になる。また、本発明の磁気センサ装置における複数の磁気センサの配置には、さらに他の態様を採用することも可能である。
【0064】
また、上記実施形態では、基準面Sをケーシング16の下面と同一平面内に位置する面である場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。基準面Sを、ケーシング16の下面と平行であり、かつケーシング16の下面よりも上方または下方に位置する面としてもよい。
【0065】
基準面Sを、ケーシング16の下面と平行であり、かつケーシング16の下面よりも上方に位置する面とした場合、各磁気センサ4をケーシング16のセンサ収容穴19内に装着したとき、磁気センサ4のボビン6の各線材支持部8の下面の位置がケーシング16の下面の位置よりも上になる。その結果、ケーシング16の下面を基板31の実装面31A上に載置したとき、各磁気センサ4のボビン6の各線材支持部8の下面が基板31の実装面31Aよりも上方に位置し、各磁気センサ4の各端子14の基板接続部14Bが基板31の実装面31A上の接続パッド33に接触しない。そこで、基準面Sをケーシング16の下面よりも上方に位置する面とした場合には、各磁気センサ4の各端子14の基板接続部14Bの位置を線材支持部8の下面よりも下げ、各端子14の基板接続部14Bの下面の上下方向における位置が固定金具22の下面の上下方向における位置と一致するようにする。これにより、ケーシング16の下面を基板31の実装面31A上に載置したとき、各磁気センサ4の各端子14の基板接続部14Bと各固定金具22とが、基板31の実装面31A上の接続パッド33と固定パッド32とにそれぞれ同時に接触するようになり、各磁気センサ4の各端子14の基板接続部14Bと各固定金具22とを接続パッド33と固定パッド32とにそれぞれ半田付けすることができるようになる。
【0066】
一方、基準面Sを、ケーシング16の下面と平行であり、かつケーシング16の下面よりも下方に位置する面とした場合、各磁気センサ4をケーシング16のセンサ収容穴19内に装着したとき、磁気センサ4のボビン6の各線材支持部8の下面の位置がケーシング16の下面の位置よりも下になる。その結果、ケーシング16を基板31の実装面31A上に実装する際には、各磁気センサ4のボビン6の各線材支持部8の下面を基板31の実装面31A上に載置することとなる。このとき、ケーシング16の下面は、基板31の実装面31Aの上方に基板31の実装面31Aと平行に配置される。その結果、ケーシング16の各固定金具22が基板31の実装面31A上の固定パッド32に接触しない。そこで、基準面Sをケーシング16の下面よりも下方に位置する面とした場合には、各固定金具22の下部をケーシング16の下面よりも下げ、固定金具22の下面の上下方向における位置が各端子14の基板接続部14Bの下面の上下方向における位置と一致するようにする。これにより、各磁気センサ4の各線材支持部8の下面を基板31の実装面31A上に載置したとき、各磁気センサ4の各端子14の基板接続部14Bと各固定金具22とが、基板31の実装面31A上の接続パッド33と固定パッド32とにそれぞれ同時に接触するようになり、各磁気センサ4の各端子14の基板接続部14Bと各固定金具22とを接続パッド33と固定パッド32とにそれぞれ半田付けすることができるようになる。
【0067】
また、上記実施形態において、磁気センサ装置3(51)のケーシング16(52)を、3つのセンサ保持部17を連結部18を介して連結する構造としたが、本発明の磁気センサ装置のケーシングの構造はこれに限らず、例えば、一塊のブロック状または板状でもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、3つの磁気センサ4および3つのヨーク15が固定されたケーシング16を基板31上に載置して、基板31に固定することにより、基板31上に3つの磁気センサ4、3つのヨーク15およびケーシング16を設ける場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。例えば、3つの磁気センサ4および3つのヨーク15が分離可能に固定されたケーシング16を基板31に載置した後、各磁気センサ4および各ヨーク15を基板31に強固に固定するが、ケーシング16は基板31に固定しないようにし、各磁気センサ4および各ヨーク15を基板31に強固に固定した後に、3つの磁気センサ4および3つのヨーク15を基板31上に残したまま、ケーシング16を基板31から取り去るようにしてもよい。
【0069】
この場合、例えば、3つの磁気センサ4のそれぞれにヨーク15を容易に分離できないように固定し、ヨーク15が固定された3つの磁気センサ4をケーシング16の下面に設けられた3つのセンサ収容穴内にそれぞれ容易に分離できるように固定する。回転検出装置を組み立てる際には、まず、図14(A)に示すように、ヨーク15が固定された3つの磁気センサ4が容易に分離できるように固定されたケーシング16を基板31の実装面31A上に載置する。次に、図14(B)に示すように、各磁気センサ4の各端子14の基板接続部14Bを、基板31の実装面31A上の接続パッド33に半田付けする。これにより、ヨーク15が固定された3つの磁気センサ4が基板31に強固に固定される。次に、図14(C)に示すように、ケーシング16を基板31から上方へ引き離す。これにより、基板31に半田付けされた3つの磁気センサ4、および3つの磁気センサ4に容易に分離できないようにそれぞれ固定された3つのヨーク15からケーシング16が分離し、3つの磁気センサ4および3つのヨーク15が基板31の実装面31A上に残る。3つの磁気センサ4のそれぞれにヨーク15を容易に分離できないように固定する方法としては、例えばヨーク15を磁気センサ4のボビン6の各線材支持部8に接着剤で接着する方法を用いることができる。また、ヨーク15が固定された磁気センサ4をケーシング16に装着することができるように、ケーシング16の下面に形成するセンサ収容穴を上記実施形態におけるセンサ収容穴19よりも大きくする。また、ヨーク15が固定された磁気センサ4とケーシング16とを互いに容易に分離可能にするために、例えば、ケーシング16のセンサ収容穴の後面に形成する各突起の高さを実施形態における突起21よりも低くし、ヨーク15が固定された磁気センサ4がセンサ収容穴から抜け易くなるようにする。また、ヨーク15が固定された3つの磁気センサ4を基板31に半田付けした後にケーシング16を基板31から取り去るので、ケーシング16に固定金具22を設けない。また、部品を基板へ実装する際に、部品の基板上への移動および配置等を行うために、吸着ノズルを備えた実装装置を用いることがある。図14(A)に示すように、ケーシング16の連結部18の上部を閉塞し、ケーシング16の上面の中央部に、ケーシング16を吸着ノズルに吸着させるための吸着面23を形成することが好ましい。
【0070】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う磁気センサ装置および回転検出装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1 回転検出装置
2 磁界形成部材
3、51 磁気センサ装置
4 磁気センサ
5 磁性線材
12 コイル
15 ヨーク
16、52 ケーシング
31 基板
31A 実装面
40 回転シャフト(回転体)
Q 基準線
S 基準面


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14