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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025030391
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】音声伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 3/50 20060101AFI20250228BHJP
【FI】
H04B3/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023135641
(22)【出願日】2023-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 誠
(72)【発明者】
【氏名】米田 晋
(72)【発明者】
【氏名】上西 栄一
(72)【発明者】
【氏名】白矢 優貴
【テーマコード(参考)】
5K046
【Fターム(参考)】
5K046AA01
5K046BB01
5K046ZZ11
(57)【要約】
【課題】配線の複雑化を抑制しつつ断線検知可能な音声伝送システムを提供する。
【解決手段】音声伝送システムは、マスター回路と、スレーブ回路と、差動出力マイクロフォンを含む1以上のマイクロフォンモジュールと、入力回路と、入力回路から出力される信号をアナログ/デジタル変換して得られる音声信号をスレーブ回路へ出力するアナログ/デジタル変換器と、を備え、入力回路は、差動出力マイクロフォンの第1出力端子および第2出力端子が入力側に接続され、アナログ/デジタル変換器が出力側に接続されるオペアンプと、オペアンプの入力側に接続され、かつ、ファントム給電を行う電源と、オペアンプの入力側とスレーブ回路との間に接続され、かつ、差動出力マイクロフォンが入力回路とが接続されている場合は第1出力電圧をスレーブ回路へ出力し、差動出力マイクロフォンが入力回路に接続されていない場合は第1出力電圧とは異なる第2出力電圧をスレーブ回路へ出力する出力部と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスター回路と、
1以上の伝送線を介して前記マスター回路と接続されるスレーブ回路と、
第1出力端子と第2出力端子とを有する差動出力マイクロフォンを含む1以上のマイクロフォンモジュールと、
前記差動出力マイクロフォンからの信号が入力される入力回路と、
前記入力回路から出力される信号をアナログ/デジタル変換して得られる音声信号を前記スレーブ回路へ出力するアナログ/デジタル変換器と、を備え、
前記入力回路は、
前記差動出力マイクロフォンの前記第1出力端子および前記第2出力端子が入力側に接続され、前記アナログ/デジタル変換器が出力側に接続されるオペアンプと、
前記オペアンプの入力側に接続され、かつ、ファントム給電を行う電源と、
前記オペアンプの入力側と前記スレーブ回路との間に接続され、かつ、前記差動出力マイクロフォンが前記入力回路とが接続されている場合は第1出力電圧を前記スレーブ回路へ出力し、前記差動出力マイクロフォンが前記入力回路に接続されていない場合は前記第1出力電圧とは異なる第2出力電圧を前記スレーブ回路へ出力する出力部と、を含む、
音声伝送システム。
【請求項2】
前記出力部から前記第1出力電圧が出力される場合は、前記差動出力マイクロフォンが前記入力回路に接続されていると判定し、前記出力部から前記第2出力電圧が出力される場合は、前記差動出力マイクロフォンと前記入力回路とが接続されていないと判定する判定部をさらに備える、
請求項1に記載の音声伝送システム。
【請求項3】
前記出力部は、トランジスタであり、
前記第1出力端子および前記第2出力端子のうちの一方が前記トランジスタの制御入力端子に接続され、前記トランジスタの出力端子は前記スレーブ回路に接続される、
請求項1または2に記載の音声伝送システム。
【請求項4】
前記出力部を構成するトランジスタは、NPN型のトランジスタ、PNP型のトランジスタ、NチャネルMOSトランジスタあるいは、PチャネルMOSトランジスタであり、
前記第1出力端子あるいは前記第2出力端子のうちいずれか一方が前記トランジスタの制御入力端子に接続され、前記制御入力端子に接続された出力端子の電圧は、前記トランジスタの閾値の電圧に対し、オン状態を維持可能な電圧に設定される、
請求項3に記載の音声伝送システム。
【請求項5】
前記マスター回路と接続される信号処理回路をさらに備え、
前記信号処理回路は、前記音声信号が閾値よりも大きい場合は、前記判定部による判定を禁止する、
請求項2に記載の音声伝送システム。
【請求項6】
前記第1出力端子と前記第2出力端子との間に接続されるツェナーダイオードをさらに備え、
前記ツェナーダイオードのツェナー電圧は、前記第1出力端子あるいは前記第2出力端子のうち、前記制御入力端子と接続される出力端子の電圧が、前記差動出力マイクロフォンと前記入力回路との接続時における前記トランジスタのオン状態を維持する範囲となるように設定される、
請求項3に記載の音声伝送システム。
【請求項7】
前記トランジスタがNPN型のトランジスタである場合、前記第1出力端子あるいは前記第2出力端子のうち低電位側の出力端子が前記トランジスタの制御入力端子に接続され、
前記ツェナーダイオードのツェナー電圧は、前記第1出力端子あるいは前記第2出力端子のうち前記トランジスタの制御入力端子に接続される出力端子の電圧の最小値が前記トランジスタの閾値を上回るように設定される、
請求項6に記載の音声伝送システム。
【請求項8】
前記ツェナーダイオードは前記入力回路に設けられる、
請求項6に記載の音声伝送システム。
【請求項9】
前記ツェナーダイオードは前記マイクロフォンモジュールに設けられる、
請求項6に記載の音声伝送システム。
【請求項10】
前記トランジスタの制御入力端子に接続される第1の抵抗と、
前記第1の抵抗と直列に接続される第2の抵抗と、
前記第1の抵抗と前記第2の抵抗との接続点に一端が接続され、他端が電源に接続される第3の抵抗と、を備える
請求項7に記載の音声伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音声伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、A2B(Autоmоtive Audiо Bus)(登録商標)に代表される2線式通信システムが知られている。この2線式通信システムは例えば車両に適用され得る。
【0003】
例えば2線式通信システムにおけるマイクロフォンモジュールの断線を検知する方法として、各マイクロフォンモジュールに専用線を設け、専用線の状態に応じてマイクロフォンモジュールの断線を検知する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020―150487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、断線検知のための専用線を設ける必要があるため、配線が複雑になるという問題がある。
【0006】
本開示は、配線の複雑化を抑制しつつ断線検知可能な音声伝送システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の音声伝送システムは、マスター回路と、1以上の伝送線を介して前記マスター回路と接続されるスレーブ回路と、第1出力端子と第2出力端子とを有する差動出力マイクロフォンを含む1以上のマイクロフォンモジュールと、前記差動出力マイクロフォンからの信号が入力される入力回路と、前記入力回路から出力される信号をアナログ/デジタル変換して得られる音声信号を前記スレーブ回路へ出力するアナログ/デジタル変換器と、を備え、前記入力回路は、前記差動出力マイクロフォンの前記第1出力端子および前記第2出力端子が入力側に接続され、前記アナログ/デジタル変換器が出力側に接続されるオペアンプと、前記オペアンプの入力側に接続され、かつ、ファントム給電を行う電源と、前記オペアンプの入力側と前記スレーブ回路との間に接続され、かつ、前記差動出力マイクロフォンが前記入力回路とが接続されている場合は第1出力電圧を前記スレーブ回路へ出力し、前記差動出力マイクロフォンが前記入力回路に接続されていない場合は前記第1出力電圧とは異なる第2出力電圧を前記スレーブ回路へ出力する出力部と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、断線検知のための専用線を設ける必要が無く、出力部から出力される電圧に基づいて断線を検知することができるので、配線の複雑化を抑制しつつ断線検知可能な音声伝送システムを提供できる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載された何れかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態の音声伝送システムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、第1実施形態の音声伝送システムが車両に搭載された状態の一例を示す図である。
図3図3は、第1実施形態のスレーブボードの構成を説明するための図である。
図4図4は、第1実施形態のトランジスタの特性の一例を示す図である。
図5図5は、第1実施形態の変形例のスレーブボードの構成を説明するための図である。
図6図6は、第2実施形態の第2端子の電圧とコレクタの電圧とを示す図である。
図7図7は、第2実施形態の第2端子の電圧とコレクタの電圧とを示す図である。
図8図8は、第2実施形態のDSPの構成の一例を示す図である。
図9図9は、第3実施形態のマイクロフォンモジュールの構成の一例を示す図である。
図10図10は、第3実施形態の入力回路の構成の一例を示す図である。
図11図11は、第4実施形態の入力回路の構成の一例を示す図である。
図12図12は、出力部の変形例を示す図である。
図13図13は、出力部の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の実施形態に係る音声伝送システムを詳細に説明する。
【0011】
[1]第1実施形態
図1は、第1実施形態の音声伝送システム10の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、音声伝送システム10は、複数(図1の例では4つ)のマイクロフォンモジュール1A~1Dと、スレーブボード2と、マスターボード3と、を備える。
以下では、マイクロフォンモジュール1A~1Dを互いに区別しない場合は、「マイクロフォンモジュール1」のように末尾の英字を省略するものとする。マイクロフォンモジュール1に含まれる各要素についても同様の表記とする。なお、図1の例ではマイクロフォンモジュール1の数は4つであるが、これに限らず、マイクロフォンモジュール1の数は、設計思想、設計条件等に応じて任意に変更可能である。
【0012】
図2は、本実施形態の音声伝送システム10を車両200に搭載した場合の例を示す図である。
図2の例では、マイクロフォンモジュール1Aおよび1Cは車両200の左側方に配置され、マイクロフォンモジュール1Bおよび1Dは車両100の右側方に配置されている。しかしながら、これに限らず、マイクロフォンモジュール1の配置は、設計思想、設計条件等に応じて任意に変更可能である。また、本実施形態の音声伝送システム10が搭載される機器は車両200に限られず、様々な機器に搭載可能である。
【0013】
図1に戻って説明を続ける。各マイクロフォンモジュール1は、第1出力端子101と第2出力端子102とを有する差動出力マイクロフォン103を含む。本実施形態では、第1出力端子101に供給される電圧は、第2出力端子102に供給される電圧よりも高い。第1出力端子101および第2出力端子102は、スレーブボード2内の後述の入力回路201に接続される。
【0014】
次に、スレーブボード2の構成を説明する。
図1に示すように、スレーブボード2は、入力回路201と、アナログ/デジタル変換器202Aおよびアナログ/デジタル変換器202Bと、スレーブ回路203と、を備える。以下の説明では、アナログ/デジタル変換器202Aおよびアナログ/デジタル変換器202Bを互いに区別しない場合は「アナログ/デジタル変換器202」と称するものとする。
【0015】
入力回路201は、差動出力マイクロフォン103からの信号が入力される。より具体的には、本実施形態の入力回路201は、マイクロフォンモジュール1Aに含まれる差動出力マイクロフォン103A、マイクロフォンモジュール1Bに含まれる差動出力マイクロフォン103B、マイクロフォンモジュール1Cに含まれる差動出力マイクロフォン103C、および、マイクロフォンモジュール1Dに含まれる差動出力マイクロフォン103Dの各々からの信号が入力される。
【0016】
図3は、スレーブボード2のうち、1つのマイクロフォンモジュール1(図3の例ではマイクロフォンモジュール1B)に対応する回路部分のみを例示する図であるが、他の3つのマイクロフォンモジュール1のそれぞれに対応する回路部分についても同様の構成となる。以下、図3を参照しながら、入力回路201の具体的な構成を説明する。
【0017】
入力回路201のうちマイクロフォンモジュール1Bに対応する回路部分は、オペアンプ204Bと、電源205と、トランジスタ206Bと、を備える。
オペアンプ204Bの入力側には、差動出力マイクロフォン103Bの第1出力端子101Bおよび第2出力端子102Bが接続される。本実施形態では、オペアンプ204Bの正の入力側に対して第1出力端子101Bが接続され、オペアンプ204Bの負の入力側に対して、第1出力端子101Bよりも低電位側の第2出力端子102Bが接続される。
【0018】
また、オペアンプ204Bの出力側には、アナログ/デジタル変換器202Aが接続される。より具体的には、オペアンプ204Bの出力側には、アナログ/デジタル変換器202AのRチャンネル端子が接続される。この構成により、オペアンプ204Bは、対応する差動出力マイクロフォン103Bの第1出力端子101Bおよび第2出力端子102Bの各々から入力されるアナログ音声信号を差動増幅した信号を、マイクロフォンモジュール1Bのアナログ音声信号として、アナログ/デジタル変換器202AのRチャンネル入力端子へ出力する。
【0019】
本第1実施形態では、アナログ/デジタル変換器202Aは、マイクロフォンモジュール1Aおよびマイクロフォンモジュール1Bに対応して設けられる。より具体的には、入力回路201のうちマイクロフォンモジュール1Aに対応する回路部分に含まれるオペアンプ204Aの出力側は、アナログ/デジタル変換器202AのLチャンネル端子に接続され、入力回路201のうちマイクロフォンモジュール1Bに対応する回路部分に含まれるオペアンプ204Bの出力側は、アナログ/デジタル変換器202AのRチャンネル端子に接続される。
つまり、アナログ/デジタル変換器202AのLチャンネル端子には、マイクロフォンモジュール1Aのアナログの音声信号が入力され、Rチャンネル端子には、マイクロフォンモジュール1Bのアナログの音声信号が入力される。
【0020】
同様に、アナログ/デジタル変換器202B(図3では図示省略)は、マイクロフォンモジュール1Cおよびマイクロフォンモジュール1Dに対応して設けられる。
より具体的には、入力回路201のうちマイクロフォンモジュール1Cに対応する回路部分に含まれるオペアンプ204Cの出力側は、アナログ/デジタル変換器202BのLチャンネル端子に接続され、入力回路201のうちマイクロフォンモジュール1Dに対応する回路部分に含まれるオペアンプ204Dの出力側は、アナログ/デジタル変換器202BのRチャンネル端子に接続される。
【0021】
つまり、アナログ/デジタル変換器202BのLチャンネル端子には、マイクロフォンモジュール1Cのアナログ音声信号が入力され、Rチャンネル端子には、マイクロフォンモジュール1Dのアナログの音声信号が入力される。
【0022】
上記構成において、アナログ/デジタル変換器202Aおよびアナログ/デジタル変換器202Bは、データ伝送路がシリアル接続されている。さらにアナログ/デジタル変換器202Aおよびアナログ/デジタル変換器202Bには、スレーブ回路203からフレーム同期信号Frame及びビットクロック信号Bit_Clockが時分割多重化のために入力されている。
【0023】
そして、アナログ/デジタル変換器202Aは、フレーム同期信号Frame及びビットクロック信号Bit_Clockに基づいて、フレーム同期を行いながら、1ビットずつフレームデータにデータ書込を行うことで、アナログ/デジタル変換器202Aに割り当てられた複数のタイムスロットに対し、Rチャンネルのデジタル音声信号及びLチャンネルのデジタル音声信号を割り当てて、フレームデータとしてアナログ/デジタル変換器202Bに送出する。
【0024】
より具体的には、本第1実施形態では、アナログ/デジタル変換器202Aに割り当てられたLチャンネルデジタル音声信号及びRチャンネルデジタル音声信号に対応したフレームデータの2個のタイムスロットに対し、マイクロフォンモジュール1Aのデジタル音声信号(Lチャンネルのデジタル音声信号)及びマイクロフォンモジュール1Bのデジタル音声信号(Rチャンネルのデジタル音声信号)が割り当てられる。
【0025】
そして、アナログ/デジタル変換器202Aからフレームデータを受信したアナログ/デジタル変換器202Bは、フレーム同期信号Frame及びビットクロック信号Bit_Clockに基づいて、アナログ/デジタル変換器202Aから入力されたフレームデータを構成しているアナログ/デジタル変換器202Bに割り当てられた複数のタイムスロットに対し、Rチャンネルのデジタル音声信号及びLチャンネルのデジタル音声信号を割り当てて、完成したフレームデータとしてスレーブ回路203に送出する。
【0026】
より具体的には、本第1実施形態では、アナログ/デジタル変換器202Bに割り当てられたLチャンネルデジタル音声信号及びRチャンネルデジタル音声信号に対応したフレームデータの2個のタイムスロットに対し、マイクロフォンモジュール1Cのデジタル音声信号(Lチャンネルのデジタル音声信号)及びマイクロフォンモジュール1Dのデジタル音声信号(Rチャンネルのデジタル音声信号)が割り当てられ、完成したフレームデータとしてスレーブ回路203に送出することとなる。
これらの結果、スレーブ回路203は、多重化デジタル音声信号としてマスターボード3へ出力する。
【0027】
入力回路201の説明を続ける。図3の例では、電源205は、オペアンプ204Bの入力側に接続され、かつ、ファントム給電を行う。
図3の例では、オペアンプ204Bの非反転入力端子は、ファントム抵抗R1031を介して電源205に接続される一方、オペアンプ204Bの反転入力端子は、ファントム抵抗R1032を介して接地される。
【0028】
トランジスタ206Bは、オペアンプ204の入力側とスレーブ回路203との間に接続される。トランジスタ206Bは、差動出力マイクロフォン103が入力回路201に接続されている場合は第1出力電圧をスレーブ回路203へ出力し、差動出力マイクロフォン103が入力回路201に接続されていない場合は第1出力電圧とは異なる第2出力電圧をスレーブ回路203へ出力する「出力部」の一例である。
【0029】
この場合において、差動出力マイクロフォン103が入力回路201に接続されていない場合とは、差動出力マイクロフォン103の出力端子が入力回路201に物理的に接続されていない場合及び断線等の様に電気的に接続されていない場合等の差動出力マイクロフォン103が正常に音声アナログ信号を出力できない場合を含むものとする。
【0030】
トランジスタ206の種類に応じて、第1出力端子101Bおよび第2出力端子102Bのうちの一方がトランジスタ206Bのベースまたはゲートに接続され、トランジスタ206Bの出力端子としてのコレクタまたはドレインはスレーブ回路203に接続される。
ここで、トランジスタの種類とは、NPN型のバイポーラトランジスタ、PNP型のバイポーラトランジスタ、NチャネルMOSトランジスタ、PチャネルMOSトランジスタ等をいう。
【0031】
本第1実施形態では、トランジスタ206Bは、NPN型のバイポーラトランジスタである。
このため、図3の例では、第1出力端子101Bおよび第2出力端子102Bのうち低電位側の第2出力端子102Bがトランジスタ206Bのベースに接続される。
【0032】
また、差動出力マイクロフォン103が入力回路201に接続される場合、第2出力端子102Bの電圧は、トランジスタ206Bの閾値(電圧)よりも大きくなるように設定される。つまり、トランジスタ206Bがオン状態になり、差動出力マイクロフォン103の接続検出信号が出力されるように設定される。
【0033】
本実施形態では、差動出力マイクロフォン103と入力回路201とが接続される場合、すなわち、第1出力端子101Bおよび第2出力端子102Bの各々がオペアンプ204Bの非反転入力端子及び反転入力端子に接続される場合、第2出力端子102Bの電圧がトランジスタ206Bの閾値よりも大きくなるように、第2出力端子102Bの電圧、電源205の電圧、抵抗R1031および抵抗R1032のそれぞれの値が設定されている。
【0034】
図4は、本実施形態のトランジスタ206Bの特性の一例を示す図である。
図4の例では、制御入力端子としてのベースの電圧を入力電圧として横軸に表し、出力端子としてのコレクタの電圧を出力電圧として縦軸に表している。
【0035】
図4の例では、トランジスタ206Bの閾値電圧は約0.7Vであり、ベースの電圧(入力電圧)が0.7V未満の場合は、トランジスタ206Bはオフ状態となり、コレクタの電圧(出力電圧)は、電源の電圧Vddと同電位となる。
【0036】
図3の例では、このときの出力端子としてのコレクタの電圧は約3.3Vとなる。一方、ベースの電圧が0.7V以上の場合は、トランジスタ206Bはオン状態となり、コレクタは接地されて接地電位GND(この例では0V)と同電位になる。図3の例では、このときのコレクタの電圧は0Vとなる。
【0037】
図3の説明を続ける。本実施形態では、電源205の電圧は、例えば8Vであり、差動出力マイクロフォン103Bが入力回路201に接続される場合(第1出力端子101Bおよび第2出力端子102Bの各々がオペアンプ204Bの非反転入力端子及び反転入力端子にそれぞれ平滑コンデンサを介して動作可能に接続されている場合)、第2出力端子102Bの電圧は2Vとなるように設定される。この場合、トランジスタ206Bのゲートへ入力される第2出力端子102Bの電圧は閾値(0.7V)を上回るので、トランジスタ206Bはオン状態となる。
【0038】
一方、差動出力マイクロフォン103Bが入力回路201に接続されずに断線している場合(第2出力端子102Bがオペアンプ204Bの非反転入力端子に接続されない場合)、トランジスタ206Bのベースは、抵抗R1032を介して接地されて接地電位GNDと同電位になる。これにより、トランジスタ206Bのゲートの電圧はほぼ0Vとなって閾値を下回るので、トランジスタ206Bはオフ状態となる。
【0039】
図3の例では、トランジスタ206Bのコレクタ(「出力端子」の一例)は、スレーブ回路203に接続される。上記のように、差動出力マイクロフォン103Bと入力回路201とが接続される場合、トランジスタ206Bはオン状態になるので、コレクタは接地されて接地電位GNDと同電位になり、接地電位GNDが第1出力電圧としてスレーブ回路203へ出力される。
【0040】
また、上記のように、差動出力マイクロフォン103Bと入力回路201とが接続されずに断線している場合、トランジスタ206Bはオフ状態になる。これにより、トランジスタ206Bのコレクタからは、トランジスタ206Bの電源とコレクタとの間に介在する抵抗R1の分だけ電源の電圧Vddから降下した電圧が、第2出力電圧としてスレーブ回路203へ出力される。以下の説明では、コレクタからスレーブ回路203へ出力される電圧(第1出力電圧または第2出力電圧)をGPIO信号(図1におけるGPIO0~GPIO3)と称する場合がある。
【0041】
スレーブ回路203は、上述したデジタル音声信号に加えて、マイクロフォンモジュール1ごとに設けられるトランジスタ206のコレクタから出力されるGPIO信号をマスターボード3へ出力する。以上が、スレーブボード2の構成の説明である。
【0042】
図1に戻り、マスターボード3の構成を説明する。図1に示すように、マスターボード3は、マスター回路301と、信号処理回路(以下、「DSP」と称する)302と、出力回路303と、通信回路304と、を備える。
【0043】
マスター回路301は、スレーブ回路203から受信したデジタルの音声信号およびGPIO信号をDSP302へ出力する。DSP302は、マイクロフォンモジュール1ごとのGPIO信号に基づいて、該マイクロフォンモジュール1(差動出力マイクロフォン103)と入力回路201とが接続されているか否かを判定する機能(判定部)を有する。
【0044】
より具体的には、判定部は、マスター回路301から入力されたGPIO信号が第1出力電圧を示す場合は、差動出力マイクロフォン103と入力回路201とが接続されていると判定し、GPIO信号が第2出力電圧を示す場合は、差動出力マイクロフォン103が入力回路201に接続されていないと判定する。
【0045】
本実施形態では、判定部はDSP302に設けられているが、これに限らず、例えば判定部はマスター回路301に設けられる形態であってもよいし、スレーブボード2側(例えばスレーブ回路203等)に設けられる形態であってもよい。
【0046】
マスター回路301と接続されるDSP302は、マスター回路301から入力されたデジタルの音声信号に対して、フィルタリング等の処理を行い、出力形式に応じたデータを生成して出力回路303へ渡す。
【0047】
出力回路303は、DSP302から入力されたデータをスピーカ4等の機器へ出力する。また、出力回路303は、DSP302から入力されたデータを、通信回路304を介して外部へ出力することができる。
【0048】
[1.1]第1実施形態の変形例
図5は、第1実施形態の変形例のスレーブボードの構成を説明するための図である。
図5において、図3と同様の部分については、同一の符号を付すものとする。
図5においても、図3と同様に、スレーブボード2Xのうち、1つのマイクロフォンモジュール1(図5の例ではマイクロフォンモジュール1B)に対応する回路部分のみを例示する図である。他の3つのマイクロフォンモジュール1のそれぞれに対応する回路部分についても同様の構成となる。以下、図5を参照しながら、入力回路201Xの具体的な構成を説明する。
【0049】
入力回路201Xのうちマイクロフォンモジュール1Bに対応する回路部分は、オペアンプ204Bと、電源205と、トランジスタ206Bと、を備える。
オペアンプ204Bの入力側には、差動出力マイクロフォン103Bの第1出力端子101Bおよび第2出力端子102Bが接続される。本実施形態では、オペアンプ204Bの正の入力側に対して第1出力端子101Bが接続され、オペアンプ204Bの負の入力側に対して、第1出力端子101Bよりも低電位側の第2出力端子102Bが接続される。
【0050】
また、オペアンプ204Bの出力側には、アナログ/デジタル変換器202Aが接続される。より具体的には、オペアンプ204Bの出力側には、アナログ/デジタル変換器202AのRチャンネル端子が接続される。この構成により、オペアンプ204Bは、対応する差動出力マイクロフォン103Bの第1出力端子101Bおよび第2出力端子102Bの各々から入力されるアナログの音声信号を差動増幅した信号を、マイクロフォンモジュール1Bのアナログの音声信号として、アナログ/デジタル変換器202AのRチャンネル入力端子へ出力する。
【0051】
そして、アナログ/デジタル変換器202Aは、フレーム同期信号Frame及びビットクロック信号Bit_Clockに基づいて、フレーム同期を行いながら、1ビットずつフレームデータにデータ書込を行うことで、アナログ/デジタル変換器202Aに割り当てられた複数のタイムスロットに対し、Rチャンネルのデジタル音声信号及びLチャンネルのデジタル音声信号を割り当てて、フレームデータとしてアナログ/デジタル変換器202Bに送出する。
【0052】
そして、アナログ/デジタル変換器202Aからフレームデータを受信したアナログ/デジタル変換器202Bは、フレーム同期信号Frame及びビットクロック信号Bit_Clockに基づいて、アナログ/デジタル変換器202Aから入力されたフレームデータを構成しているアナログ/デジタル変換器202Bに割り当てられた複数のタイムスロットに対し、Rチャンネルのデジタル音声信号及びLチャンネルのデジタル音声信号を割り当てて、完成したフレームデータとしてスレーブ回路203に送出する。
これらの結果、スレーブ回路203は、多重化デジタル音声信号としてマスターボード3へ出力する。
【0053】
入力回路201Xの説明を続ける。
図5の例においても、電源205は、オペアンプ204Bの入力側に接続され、かつ、ファントム給電を行う。
図5の例においても、オペアンプ204Bの非反転入力端子は、ファントム抵抗R1031を介して電源205に接続され、オペアンプ204Bの反転入力端子は、ファントム抵抗R1032を介して接地される。
【0054】
トランジスタ206BXは、オペアンプ204の入力側とスレーブ回路203との間に接続される。トランジスタ206Bは、差動出力マイクロフォン103が入力回路201に接続されている場合は第1出力電圧をスレーブ回路203へ出力し、差動出力マイクロフォン103が入力回路201に接続されていない場合は第1出力電圧とは異なる第2出力電圧をスレーブ回路203へ出力する「出力部」の一例である。
【0055】
第1出力端子101Bがトランジスタ206BXの制御入力端子としてのベースに接続され、トランジスタ206BXの出力端子としてのコレクタは、分圧抵抗R11、R12のうち、抵抗R11を介してスレーブ回路203に接続される。
【0056】
本第1実施形態の変形例では、トランジスタ206BXは、PNP型のバイポーラトランジスタである。
図5の例では、第1出力端子101Bおよび第2出力端子102Bのうち高電位側の第1出力端子101Bがトランジスタ206BXの制御入力端子としてのベースに接続される。
【0057】
また、差動出力マイクロフォン103が入力回路201に接続される場合、第1出力端子101Bの電圧は、トランジスタ206BXの閾値よりも小さくなるように設定される。つまり、トランジスタ206BXがオン状態になるように設定される。
【0058】
第1実施形態の変形例では、差動出力マイクロフォン103が入力回路201に接続されている場合、すなわち、第1出力端子101Bおよび第2出力端子102Bの各々がオペアンプ204Bの非反転入力端子及び反転入力端子に接続される場合、第1出力端子101Bの電圧がトランジスタ206Bの閾値よりも小さくなるように、第1出力端子101Bの電圧、電源205の電圧、抵抗R1031および抵抗R1032のそれぞれの値が設定されている。
【0059】
以上に説明したように、第1実施形態あるいは第1実施形態の変形例では、スレーブボード2に入力回路201が設けられ、入力回路201には、差動出力マイクロフォン103ごとにトランジスタ206が設けられる。差動出力マイクロフォン103の第1出力端子101および第2出力端子102のうちの一方がトランジスタ206の制御入力端子としてのベースに接続され、出力端子としてのトランジスタ206コレクタはスレーブ回路203に接続される。
【0060】
そして、トランジスタ206は、差動出力マイクロフォン103が入力回路201に接続される場合は第1出力電圧をスレーブ回路203へ出力し、差動出力マイクロフォン103が入力回路201に接続されていない場合は、第2出力電圧をスレーブ回路203へ出力する。つまり、差動出力マイクロフォン103と入力回路201とが接続されているか否かに応じてトランジスタ206の出力電圧が異なる。
【0061】
すなわち、出力電圧を確認することによって、差動出力マイクロフォン103が入力回路201に接続されているか否かを判定できる。
したがって、本実施形態によれば、断線検知のための専用線を設ける必要が無く、トランジスタ206から出力される電圧に基づいて断線を検知することができるので、配線の複雑化を抑制しつつ断線検知可能な音声伝送システム1を提供できる。
【0062】
また以上の説明は、トランジスタ206(トランジスタ206X)がバイポーラトランジスタの場合であったが、同様に、トランジスタ206として、NチャネルMOSトランジスタあるいはPチャネルMOSトランジスタを用いるように構成することも可能である。
【0063】
[2]第2実施形態
次に、第2実施形態について説明する。
第2実施形態では、DSP302は、マスター回路301から入力される音声信号(デジタル音声信号)の音声レベルが閾値よりも大きい場合は、判定部による判定を禁止する点で上述の第1実施形態と相違している。
【0064】
図6は、マイクロフォンモジュール1の動作領域が、入力音声の音声レベルとマイクロフォンモジュール1の出力電圧とが比例関係にある線形領域にあるときの第2出力端子102の電圧と、トランジスタ206の電圧(コレクタの電圧)とを示す図である。
【0065】
図6の例では、第2出力端子102の電圧はトランジスタ206の閾値を上回るので、トランジスタ206はオン状態となり、コレクタは接地されて接地電位GND(この例ではほぼ0V)が第1出力電圧として出力される。この場合、GPIO信号は第1出力電圧を示すので、マイクロフォンモジュール1は接続状態、つまり、差動出力マイクロフォン103が入力回路201に接続されていると判定される。
【0066】
図7は、マイクロフォンモジュール1の動作領域が、入力音声の音声レベルとマイクロフォンモジュール1の出力電圧とが比例関係になく、所定音声レベル以上において出力電圧が一定となってしまう飽和領域にあるときの第2出力端子102の電圧と、トランジスタ206の電圧とを示す図である。
【0067】
図7の例では、第2出力端子102の最小電圧がトランジスタ206の閾値を下回る期間が存在することにより、トランジスタ206がオフ状態となる期間が存在し、コレクタの電圧は、トランジスタ206Bの電源の電圧Vddから抵抗R1の分だけ降下した第2出力電圧(>0V)となる。
【0068】
この場合、マイクロフォンモジュール1が接続状態であっても、第2出力端子102の最小電圧がトランジスタ206の閾値を下回る期間においては、GPIO信号は第2出力電圧を示すので、差動出力マイクロフォン103と入力回路201とが接続されていないと判定される。つまり、マイクロフォンモジュール1が飽和領域にある場合、マイクロフォンモジュール1が接続状態であるか否かの判定(接続の判定)において誤判定が起こる。
【0069】
そこで、本第2実施形態のDSP302は、マイクロフォンモジュール1が飽和領域にある場合、つまり、スレーブ回路203から出力されるデジタル音声信号(マスター回路301へ入力されるデジタル音声信号)に対応する音声信号レベルが閾値よりも大きい場合は、判定部による判定を無効化することで、上記のような誤検知を防止することができる。
【0070】
例えば、図8に示すように、DSP302は、バッファ(ゲート)2021と、レベル検出部2022と、を備える形態であってもよい。レベル検出部2022は、GPIO信号が所定の基準値未満の場合に、バッファ2021を動作可能状態(イネーブル状態)とするイネーブル信号を出力する。
【0071】
この例では、第2出力電圧は基準値よりも大きい値に設定されるので、GPIO信号として第2出力電圧がバッファ2021へ入力された場合、バッファ2021はハイレベルの信号を出力する。この例では、バッファ2021がハイレベルの信号を出力することは、マイクロフォンモジュール1の非接続状態(断線)が検知されたことを意味する。
【0072】
レベル検出部2022は、マスター回路301からデジタル音声信号を受信する。レベル検出部2022は、マスター回路301から受信したデジタル音声信号に対応する音声信号レベルが閾値よりも大きい場合は、バッファ2021に対して、バッファ2021の出力を無効(例えば、出力端子をハイインピーダンス状態)にするイネーブル信号を出力し、バッファ2021の出力動作を停止させる。
【0073】
以上の説明のように、本第2実施形態によれば、マイクロフォンモジュール1の動作領域が飽和領域にある場合であっても、マイクロフォンモジュール1の接続状態を正確に判定できるので、接続の誤判定を防止できる。
【0074】
[3]第3実施形態
次に、第3の実施形態について説明する。
図9または図10に示すように、第3の実施形態では、第1出力端子101と第2出力端子102との間に接続されるツェナーダイオード501をさらに備え、ツェナーダイオード501のツェナー電圧は、第1出力端子101および第2出力端子102のうちトランジスタ206のゲートと接続される方の電圧が、差動出力マイクロフォン103と入力回路201との接続時におけるトランジスタ206の動作状態を維持する範囲となるように設定される。
【0075】
上述の第1実施形態と同様に、トランジスタ206がNPN型のバイポーラトランジスタである場合、第1出力端子101および第2出力端子102のうち低電位側の第2出力端子102がトランジスタ206のベースに接続される。
【0076】
そして、ツェナーダイオード501のツェナー電圧は、第1出力端子101および第2出力端子102のうちトランジスタ206のベースに接続される第2出力端子102の電圧の最小値がトランジスタ206の閾値を上回るように設定される。この例では、差動出力マイクロフォン103と入力回路201との接続時におけるトランジスタ206の動作状態はオン状態なので、ツェナー電圧は、第2出力端子102の電圧の最小値がトランジスタ206の閾値を上回るように設定される。
【0077】
ところで、図3に例示した、ファントム給電を行う電源205の抵抗であるファントム抵抗R1031およびファントム抵抗R1032は同一の抵抗値とすることが一般的である。また、トランジスタ206のベース引き込み電流は、ファントム抵抗R1032を流れる電流に対して無視できるほど小さいものとする。
【0078】
これにより、抵抗R1031および抵抗R1032の各々を流れる電流は等しくなる。ツェナー電圧Vzを、電源205の電圧Pоwer以下の適切な値に設定すると、第1出力端子101の最大電圧及び第2出力端子102の最小電圧は、それぞれ以下の式1および式2で表すことができる。
第1出力端子101の最大電圧=(Pоwer+Vz)/2 (式1)
第2出力端子102の最小電圧=(Pоwer-Vz)/2 (式2)
【0079】
第3実施形態では、上記式2で表される第2出力端子102の最小電圧がトランジスタ206の閾値を上回るようにツェナー電圧Vzを設定することにより、マイクロフォンモジュール1の動作領域が飽和領域にあってもトランジスタ206はオン状態を維持する。つまり、マイクロフォンモジュール1の動作領域が飽和領域にあっても、差動出力マイクロフォン103と入力回路201との接続時におけるトランジスタ206の動作状態はオン状態を維持するので、コレクタは接地されて接地電位GND(この例では0V)が第1出力電圧として出力される。この場合、GPIO信号は第1出力電圧を示すので、マイクロフォンモジュール1が入力回路201に接続された状態であると判定される。
【0080】
すなわち、本第3実施形態によっても、第2実施形態と同様に、マイクロフォンモジュール1の動作領域が飽和領域にあっても、マイクロフォンモジュール1の接続状態を正確に判定できるので、接続の誤判定を防止できる。
【0081】
なお、例えば図9に示すように、ツェナーダイオード501はマイクロフォンモジュール1に設けられてもよい。また、例えば図10に示すように、ツェナーダイオード501は入力回路201に設けられてもよい。
【0082】
[4]第4実施形態
次に、第4実施形態について説明する。
第4実施形態では、トランジスタ206の閾値を調整するための抵抗が設けられる点で上述の各実施形態と相違する。図11に示すように、トランジスタ206のゲートには第1の抵抗R11が接続される。この第1の抵抗R11は、上述の各実施形態においても設けられる。図11に示すように、本実施形態では、第1の抵抗R11と直列に接続される第2の抵抗R1033と、第1の抵抗R11と第2の抵抗R1033との接続点に一端が接続され、他端が電源Vddに接続される第3の抵抗R1034と、をさらに備える。
【0083】
上述の各実施形態と同様に、トランジスタ206はNPN型のバイポーラトランジスタである。本第4実施形態では、トランジスタ206の閾値が、トランジスタ206のゲートに接続される第2出力端子102の電圧の最小値を下回るように、第1の抵抗R11、第2の抵抗R1033および第3の抵抗R1034の各々の抵抗値が設定される。
【0084】
これにより、マイクロフォンモジュール1が飽和領域にあっても、差動出力マイクロフォン103と入力回路201との接続時におけるトランジスタ206の動作状態はオン状態を維持するので、上記と同様にGPIO信号は第1出力電圧を示し、マイクロフォンモジュール1は接続状態であると判定される。すなわち、マイクロフォンモジュール1が飽和領域にあっても、接続の誤判定を防止できる。
【0085】
以上、本開示の実施形態を説明したが、上述の実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら新規な実施形態およびその変形は、発明の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0086】
また、本明細書に記載された実施形態における効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、他の効果があってもよい。
【0087】
[5]実施形態の他の変形例
以下、実施形態の他の変形例を記載する。
【0088】
[5.1]第1の他の変形例
上述の各実施形態では、「出力部」の一例としてトランジスタ206が採用されているが、これに限らず、例えば図12に示すように、コンパレータ207Bが「出力部」として採用される形態であってもよい。
図12の例では、コンパレータ207Bの反転入力端子には、分圧抵抗により基準電圧が入力され、非反転入力端子には、第2出力端子102Bが接続される。
そして、コンパレータ207Bの出力側はスレーブ回路203に接続される。
【0089】
これらの結果、差動出力マイクロフォン103Bが入力回路201に接続される場合、コンパレータ207Bの非反転入力端子の電圧は、反転入力端子に入力される基準電圧より低くなるため、コンパレータ207Bの出力はローレベルとなり、ローレベルを示すGPIO信号がスレーブ回路203へ出力される。
【0090】
一方、差動出力マイクロフォン103Bが入力回路201に接続されない場合、コンパレータ207Bの出力はハイレベルとなり、コンパレータ207Bの非反転入力端子の電圧は、反転入力端子に入力される基準電圧より高くなるため、ハイレベルを示すGPIO信号がスレーブ回路203へ出力される。
【0091】
図12の構成では、差動出力マイクロフォン103と入力回路201とが接続されているか否かに応じてコンパレータ207Bの出力電圧レベル(ハイレベルまたはローレベル)が異なるので、この出力電圧を確認することによって、差動出力マイクロフォン103と入力回路201とが接続されているか否かを判定できる。つまり、図12の構成によれば、断線検知のための専用線を設ける必要が無く、コンパレータ207Bから出力される電圧に基づいて断線を検知することができるので、配線の複雑化を抑制しつつ断線検知可能な音声伝送システム1を提供できる。
【0092】
[5.2]第2の他の変形例
また、例えば図13に示すように、マイコン208Bが「出力部」として採用される形態であってもよい。
図13の例では、マイコン208Bは、アナログ/デジタル変換器(「ADC」と表記)2081と、I/Оポート2082と、を含む。ADC2081には第2出力端子102Bの電圧が入力され、ADC2081は、入力されたアナログの電圧信号をデジタルの電圧信号に変換する。I/Оポート2082は、ADC2081から入力されたデジタルの電圧信号を、スレーブ回路203へ出力する。
【0093】
図13の構成でも、差動出力マイクロフォン103と入力回路201とが接続されているか否かに応じてI/Оポート2082の出力電圧が異なるので、この出力電圧を確認することによって、差動出力マイクロフォン103と入力回路201とが接続されているか否かを判定できる。つまり、図13の構成によれば、断線検知のための専用線を設ける必要が無く、コンパレータ207Bから出力される電圧に基づいて断線を検知することができるので、配線の複雑化を抑制しつつ断線検知可能な音声伝送システム1を提供できる。
【0094】
要するに、「出力部」は、オペアンプ204の入力側とスレーブ回路203との間に接続され、かつ、差動出力マイクロフォン103と入力回路201とが接続される場合は第1出力電圧をスレーブ回路203へ出力し、差動出力マイクロフォン103と入力回路201とが接続されない場合は第1出力電圧とは異なる第2出力電圧をスレーブ回路203へ出力する形態であればよい。例えば上述したように、「出力部」はトランジスタ206であってもよいし、コンパレータ207であってもよいし、マイコン208であってもよい。
【0095】
上述の実施形態は、以上の変形例と任意に組み合わせることができるし、以上の変形例同士を任意に組み合わせてもよい。また、上述の実施形態同士を任意に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1、1A~1D マイクロフォンモジュール
2 スレーブボード
3 マスターボード
10 音声伝送システム
101、101A~101D 第1出力端子
102、102A~102D 第2出力端子
103、103A~103D 差動出力マイクロフォン
201 入力回路
202 アナログ/デジタル変換器
203 スレーブ回路
204 オペアンプ
205 電源
206、206B、206BX トランジスタ
207 コンパレータ
208 マイコン
301 マスター回路
302 DSP
303 出力回路
304 通信回路
R11 第1の抵抗
R1033 第2の抵抗
R1034 第3の抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13