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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025030393
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】分解ガス回収システム
(51)【国際特許分類】
   B09B 1/00 20060101AFI20250228BHJP
   B09B 3/60 20220101ALI20250228BHJP
【FI】
B09B1/00 A ZAB
B09B3/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023135652
(22)【出願日】2023-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(71)【出願人】
【識別番号】514035453
【氏名又は名称】株式会社エックス都市研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北垣 剛
(72)【発明者】
【氏名】堀井 安雄
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA01
4D004AB05
4D004BB03
4D004CA12
4D004CA18
4D004CC11
4D004CC15
(57)【要約】
【課題】有機性廃棄物の埋立地で発生したガスが大気中に排出されるのを抑える。
【解決手段】分解ガスを回収するシステムは、通気管と、ガス回収構造と、を備える。前記通気管は、地中に形成された埋立処分場の底面に対して略垂直方向に設けられる。前記通気管は、前記埋立処分場に埋め立てられた有機性廃棄物の分解により発生する分解ガスを、埋め立て面の上方に排出する。前記ガス回収構造は、前記通気管を経由する分解ガスの排出経路に設けられる。前記ガス回収構造は、分解ガスからCOガス及びCHガスの少なくとも一方を回収する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に形成された埋立処分場の底面に対して略垂直方向に設けられ、前記埋立処分場に埋め立てられた有機性廃棄物の分解により発生する分解ガスを、埋め立て面の上方に排出する通気管と、
前記通気管を経由する分解ガスの排出経路に設けられ、分解ガスからCOガス及びCHガスの少なくとも一方を回収するガス回収構造と、
を備えることを特徴とする分解ガス回収システム。
【請求項2】
前記通気管が、第1通気管と、前記第1通気管の内側に設けられて前記第1通気管よりも小径の第2通気管とを含み、
前記第1及び第2通気管は、外周面に形成された複数の通気孔をそれぞれ有し、
前記ガス回収構造が、前記第1通気管の内側、かつ、前記第2通気管の外側に位置し、COガス及びCHガスの少なくとも一方を回収するガス回収材料を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の分解ガス回収システム。
【請求項3】
前記通気管が、前記埋め立て面の上方に位置する開口を有し、
前記ガス回収構造が、前記開口に着脱可能に取り付けられたベンチレータと、前記ベンチレータに組み込まれ、COガス及びCHガスの少なくとも一方を回収するガス回収材料と、を含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の分解ガス回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋立処分場において有機性廃棄物の分解により発生する分解ガスを回収するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、準好気性の廃棄物処分場の構造を開示する。この従来の構造は、地盤中に形成された埋立地と、この埋立地に隣接して形成された浸出水集水ピットと、この埋立地の底面に配置された浸出水集排水管と、を備えている。浸出水集排水管は、有孔の配管である。浸出水集排水管は、この孔を介して埋立地の浸出水を集めて集水ピットに送る。集水ピットは、浸出水集排水管から送られてきた浸出水を外部の処分施設に送る。
【0003】
従来の構造は、また、送気管と、通気管とを備えている。送気管の一端は浸出水集排水管に接続され、他端は地上に開放されている。送気管の地上側の開放端にはブロワが設けられており、このブロワを稼働することで、送気管を介して浸出水集排水管に外気が送られ、又は、浸出水集排水管内のガスが送気管を介して外部に排出される。通気管は、有孔の配管であり、その一端は浸出水集排水管に接続され、他端は地上に開放されている。通気管は、この孔を介して埋立地で発生したガスを外部に排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機性廃棄物の埋立地では、微生物による有機性廃棄物の分解が進行する。この分解が進行すると、CHガス、COガスといったガスが発生する。発生したガスは、「分解ガス」又は「埋立ガス」と呼ばれる。嫌気性の埋立地では、分解ガスに占めるCHガスの割合が多くなる。一方、準好気性の埋立地では、分解ガスに占めるCHガスの割合が低下し、COガスの割合が多くなる。我が国では、CHガスの排出量を抑えることのできる準好気性の埋立地が多く設置されている。
【0006】
分解ガスに含まれるCHガス及びCOガスは、温室効果ガスでもある。そのため、埋立地で発生したこれらのガスは、地中から大気中に排出されるのを抑えることが望ましい。この点、特許文献1の構造は、埋立地で発生した分解ガスを大気中に積極的に排出するものであることから、改良の余地がある。
【0007】
本発明の1つの目的は、有機性廃棄物の埋立地で発生したガスが大気中に排出されるのを抑えるための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、分解ガスを回収するシステムであり、次の特徴を有する。
前記システムは、通気管と、ガス回収構造と、を備える。
前記通気管は、地中に形成された埋立処分場の底面に対して略垂直方向に設けられる。前記通気管は、前記埋立処分場に埋め立てられた有機性廃棄物の分解により発生する分解ガスを、埋め立て面の上方に排出する。
前記ガス回収構造は、前記通気管を経由する分解ガスの排出経路に設けられる。前記ガス回収構造は、分解ガスからCOガス及びCHガスの少なくとも一方を回収する。
【0009】
本発明において、前記通気管は、第1通気管と、第2通気管とを含んでいてもよい。前記第2通気管は、前記第1通気管の内側に設けられる。前記第2通気管は、前記第1通気管よりも小さい径を有する。前記第1及び第2通気管は、外周面に形成された複数の通気孔をそれぞれ有する。
本発明において、前記ガス回収構造は、前記第1通気管の内側、かつ、前記第2通気管の外側に位置し、COガス及びCHガスの少なくとも一方を回収するガス回収材料を含んでいてもよい。
【0010】
本発明において、前記通気管は、前記埋め立て面の上方に位置する開口を有していてもよい。
本発明において、前記ガス回収構造は、前記開口に着脱可能に取り付けられたベンチレータと、前記ベンチレータに組み込まれ、COガス及びCHガスの少なくとも一方を回収するガス回収材料と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、通気管を経由する分解ガスの排出経路にガス回収構造が設けられるので、このガス回収構造によって分解ガスからCOガス及びCHガスの少なくとも一方を回収することができる。従って、分解ガスに含まれるCOガス又はCHガスが、通気管を経由して大気中に排出されるのを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る分解ガス回収システムが適用される埋立処分場の構成例を示す図である。
図2図1の2-2線での断面を示す図である。
図3図1の3-3線での断面を示す図である。
図4】埋立処分場でのガス及び液体の排出経路を説明する図である。
図5】ガス回収構造の第1例を説明する図である。
図6】ガス回収構造の第2例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
1.埋立処分場の構成例
図1は、実施形態に係る分解ガス回収システムが適用される廃棄物の埋立処分場の構成例を示す図である。図1には、廃棄物の埋立処分場10の平面図が描かれている。図1のX-Y面は地面と略並行であり、埋立処分場10は地中に設けられる。埋立処分場10の底面11と、X軸方向(長手方向)の側面12及び13と、Y軸方向の側面14とは、例えば、コンクリート板から構成される。底面11には、保護マット及び遮水シートが少なくとも1枚ずつ敷設される。側面12、13及び14にも保護マット及び遮水シートが敷設されてもよい。
【0015】
底面11には、また、浸出水集排水管が敷設される。浸出水集排水管は、底面11、側面12、13、14等により区画される処分空間内の浸出水を集めて、集めた浸出水を処分空間外に排出する。図1に示される例では、浸出水集排水管が、幹線21と、支線22-29とを含んでいる。幹線21及び支線22-29は、例えば、合成樹脂から形成される。幹線21及び支線22-29の各管の外周面には、通水孔が複数形成されている。各管の周囲に存在する水(浸出水)は、これらの通水孔を通じて各管の内側に移動する。
【0016】
幹線21は、X軸方向に直線上に延びている。支線22-25は、それぞれ、側面12側に一端が位置し、他端が幹線21に接続されている。支線26-29は、それぞれ、側面13側に一端が位置し、他端が幹線21に接続されている。そのため、支線22-29によって集められた浸出水は、幹線21に移動する。幹線21の端部には、浸出水集水ピット31が接続されている。浸出水集水ピット31は、排水ポンプを備えている。排水ポンプが駆動されると、幹線21に集められた浸出水が処分空間外に排出される。
【0017】
幹線21の長手方向には、通気管32及び33が設けられている。通気管32及び33は、処分空間内に外気(空気)を供給し、又は、処分空間内のガスを外部に排出することを主たる目的として設けられる。通気管32及び33は、底面11に対して略垂直方向に設けられる。通気管32及び33は、例えば、合成樹脂から形成される。また、通気管32及び33の各管の外周面には、通気孔が複数形成されている。そのため、通気管32及び33には、外気及びガスだけでなく浸出水も流れる。通気管32及び33には、埋め立ての進捗に応じて延伸が可能な管(例えば、プレスト管)が用いられる。
【0018】
図2は、図1の2-2線での断面を示す図である。図2は、図1に示した通気管32の軸方向に沿った断面図でもある。図2のZ軸正方向は、鉛直上向き方向と一致しており、底面11に対して略垂直な方向とも一致している。尚、図1に示した通気管33の軸方向に沿った断面図は、これから説明する通気管32のそれと基本的に同じである。図2に示されるように、通気管32は、第1通気管32aと、第2通気管32bとを含んでいる。第2通気管32bは第1通気管32aよりも小径であり、第1通気管32aの内側に挿入されている。
【0019】
第1通気管32aの基端(開口端)は、幹線21の全体を覆う切栗石台34に接続されている。第1通気管32aの先端(開口端)は、蓋部材35によって覆われている。蓋部材35の中央部には、第2通気管32bを通す孔が形成されている。第2通気管32bの基端(開口端)は幹線21に接続され、第2通気管32bの先端(開口端)は開放されている。第1通気管32aの内側、かつ、第2通気管32bの外側の空間には切栗石群36が配置されている。尚、図2に示される例では、第1通気管32aの内側、かつ、第2通気管32bの外側の空間の一部に切栗石群36が描かれているが、実際には、この空間の全体に満遍なく切栗石群36が配置されている。
【0020】
切栗石台34を構成する切栗石と、切栗石群36を構成する切栗石は同じである。切栗石台34の主たる配置目的は、幹線21及び支線22-29の周囲の通気性及び通水性の確保にある。切栗石群36の主たる配置目的は、通気管32の立設状態の維持と、第2通気管32bの周囲の通気性及び通水性の確保にある。切栗石群36は、後述するガス回収構造の第1の例の一部を構成する。
【0021】
図3は、図1の3-3線での断面を示す図である。図2に示されたのが幹線21の断面であったのに対し、図3には支線24の断面が示されている。図3に示されるように、支線24の全体は切栗石台34によって覆われている。切栗石台34の左右には土37が敷設されている。
【0022】
埋立処分場10に有機性廃棄物が埋め立てされた状態の一例を、図4を参照して説明する。図4に描かれる断面の位置は、図2で説明した断面の位置と同じである。処分空間に廃棄された有機性廃棄物WSは、Z軸上向きに堆積する。有機性廃棄物WSの廃棄の都度、有機性廃棄物WSの露出面を覆う土38が敷設される。図4には、有機性廃棄物WSと土38のセットが2セット描かれている。1段目のセットがより古いセットであり、2段目のセットが新しいセットである。2段目のセットを構成する土38の表面が「埋め立て面」を構成する。
【0023】
第1通気管32a及び第2通気管32bの先端は、埋め立て面よりも上方に位置している。図4に示される例において、有機性廃棄物WSを更に埋め立てる場合は、第1通気管32a及び第2通気管32bの先端に追加の管をそれぞれ連結する。これにより、第1通気管32a及び第2通気管32bの先端の位置が、埋め立て面よりも上方に保たれている。尚、第1通気管32aに追加の管を連結する場合は、連結前に蓋部材35が一旦取り外され、連結後に蓋部材35が追加の管の先端に取り付けられる。
【0024】
2.分解ガスの排出経路
有機性廃棄物WSが微生物の働きにより分解されると、CHガスとCOガスを含む分解ガスGASが生成する。この分解ガスGASは、有機性廃棄物WSの層内を移動し、第1通気管32aの近傍へと移動する。第1通気管32aの近傍の分解ガスGASは、第1通気管32aの通気孔を通って第1通気管32aの内側に進入し、切栗石群36の隙間を更に通って第2通気管32bの近傍へと移動する。第2通気管32bの近傍の分解ガスGASは、第2通気管32bの通気孔を通って第2通気管32bの内側に進入する。そして、第2通気管32bの内部をZ軸上向き(上方)に移動し、第2通気管32bの先端から外部に排出される。
【0025】
実施形態では、有機性廃棄物WSの層から第2通気管32bの先端に至る分解ガスGASの一連の排出経路においてCHガスとCOガスが回収される。このCHガスとCOガスを回収するガス回収機構の例を次に説明する。
【0026】
3.ガス回収機構
3-1.第1の例
図5は、ガス回収機構の第1の例を説明する図である。図5には、切栗石群36の拡大模式図が描かれている。この図5では、切栗石群36が、切栗石41と、切栗石41の近傍に配置されたガス回収材料42と、を含んでいる。ガス回収材料42には、主にCOガスを回収する材料と、主にCHガスを回収する材料とが含まれている。
【0027】
COガスを回収するガス回収材料42としては、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩といった無機系CO吸着材や、アミン系CO吸着材が例示される。ガス回収材料42としては、無機系CO吸着材として例示した化学物質を多く含むスラグ、廃棄物焼却プロセスにおいて飛灰中の有害物質を固定化するために消石灰を過剰に吹き込まれた焼却灰も例示される。CHガスを回収するガス回収材料42としては、比表面積及び孔径が調整された活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンといった炭素系吸着材が例示される。
【0028】
切栗石41の近傍にガス回収材料42が配置されていることで、切栗石群36の隙間を更に通って第2通気管32bの近傍へと移動する分解ガスGASから、COガス及びCHガスの少なくとも一方を分離回収することが可能となる。
【0029】
3-2.第2の例
図6は、ガス回収機構の第2の例を説明する図である。図6に描かれる断面の位置は、図2で説明した断面の位置と同じである。また、図6には、図4で説明した有機性廃棄物WSと土38のセットが描かれている。図6に示される例では、第2通気管32bの先端に、ベンチレータ43が着脱可能に取り付けられている。ベンチレータ43を着脱可能に取り付けられた理由は、定期的な点検及び交換を目的としている。ベンチレータ43は、埋め立て面の上方に流れる風の吸引作用によって、第2通気管32b内の分解ガスGASを外部に排出する。
【0030】
第2の例では、このベンチレータ43に、第1の例で説明したガス回収材料42が組み込まれている。ガス回収材料42の組み込み例としては、ベンチレータ43内の通気路の途中にガス回収材料42を含んだユニットを取り付けることが挙げられる。
【0031】
4.効果
以上説明した実施形態によれば、通気管32及び33を経由する分解ガスGASの排出経路にガス回収構造が設けられるので、このガス回収構造によって分解ガスGASからCOガス及びCHガスの少なくとも一方を回収することができる。従って、分解ガスGASに含まれるCOガス又はCHガスが、通気管32又は33を経由して大気中に排出されるのを抑えることが可能となる。
【符号の説明】
【0032】
10…埋立処分場、11…底面、12,13,14…側面、21…幹線、22,23,24,25,26,27,28,29…支線、31…浸出水集水ピット、32,33…通気管、32a…第1通気管、32b…第2通気管、34…切栗石台、35…蓋部材、36…切栗石群、37,38…土、41…切栗石、42…ガス回収材料、43…ベンチレータ、WS…有機性廃棄物、GAS…分解ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6