(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003041
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】省電力型運行管理システム
(51)【国際特許分類】
B61L 3/08 20060101AFI20241226BHJP
B61L 29/28 20060101ALI20241226BHJP
B61L 23/22 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B61L3/08 Z
B61L29/28 B
B61L23/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103490
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(71)【出願人】
【識別番号】517251812
【氏名又は名称】株式会社社会システム開発研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋一
(72)【発明者】
【氏名】南部 修二
(72)【発明者】
【氏名】神宮 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】中村 英夫
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161BB02
5H161DD21
5H161EE04
5H161EE07
(57)【要約】
【課題】列車の通過時にのみ、地上装置を一時的に稼働させる省電力型運行管理システムを提供する。
【解決手段】省電力型運行管理システムは、軌道を走行する列車と、各列車10及び踏切装置30の運行管理を行う管理センタと、軌道上に配置される踏切装置30とを備えている。センタ装置は踏切装置30に列車10が接近すると、この踏切装置30の踏切保安装置31に対して一時的に電源をオフからオンにして、非稼働状態から稼働状態にし、列車10が稼働状態の踏切装置30を通過後に、踏切装置30の踏切保安装置31を元の非稼働状態に戻す。これらの処理を列車が目的地に到着するまで繰り返して行う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道を走行する列車と、該軌道上に配置される地上装置と、前記列車及び前記地上装置の運行管理を行うセンタ装置とから構成される省電力型運行管理システムであって、
前記センタ装置は、第1の列車の前方で最も近い第1の地上装置を前記第1の列車の通行を妨げる支障点として設定し、
前記第1の列車が前記第1の地上装置から所定距離である第1の設定位置に到達した際に、前記第1の地上装置に対して、電力の供給を行わない非稼働状態から電力を供給する稼働状態とし、
該稼働状態時に前記支障点を解除するか否かの判定処理を行い、
前記支障点を解除した場合は、前記第1の列車に対して前記第1の地上装置を通過させ、通過後に前記第1の地上装置を前記稼働状態から前記非稼働状態にすることを特徴とする省電力型運行管理システム。
【請求項2】
前記地上装置は踏切保安装置を備えた踏切装置であり、
前記踏切保安装置は遮断桿の昇降を行う昇降部と、警切内の障害物を検出する障害物検出部とを少なくとも備えており、
前記センタ装置による前記判定処理は、稼働した前記昇降部の上昇状態である遮断桿が下降状態となる条件と、稼働した前記障害物検出部により踏切内に障害物を検出していない条件とのうち、少なくとも1つの条件を充足していないと判定した場合には、前記支障点を解除せずに維持することを特徴とする請求項1に記載の省電力型運行管理システム。
【請求項3】
更に、前記踏切保安装置は警報制御を行う警報部を備えており、
前記条件に加えて、稼働した前記警報部による警報を行う条件を加え、これらの条件のうち、少なくとも1つの条件を充足していないと判定した場合には、前記支障点を解除せずに維持することを特徴とする請求項2に記載の省電力型運行管理システム。
【請求項4】
前記第1の列車が前記踏切装置を通過後は、前記遮断桿を上昇した状態にして、前記踏切装置を前記稼働状態から前記非稼働状態にすることを特徴とする請求項2又は3に記載の省電力型運行管理システム。
【請求項5】
前記センタ装置は、第1の踏切装置に対して前記条件の全てを充足した場合には、前記第1の列車に対して支障点解除情報を送信し、
前記センタ装置から前記支障点解除情報を未受信の状態で、前記第1の列車が前記第1の踏切装置から所定距離である第2の設定位置に到達した際は、減速制御を開始することを特徴とする請求項2又は3に記載の省電力型運行管理システム。
【請求項6】
前記第1の列車は、前記センタ装置から支障点解除情報を受信するまで前記減速制御を継続することを特徴とする請求項5に記載の省電力型運行管理システム。
【請求項7】
前記踏切装置の設置位置から前記第2の設置位置までの距離は、前記列車が減速パターンに従って停止する際に要する距離より大きいことを特徴とする請求項5に記載の省電力型運行管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道上を移動する列車と、軌道上に配置した地上装置の制御を行う省電力型運行管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、駅に個別に備えられた駅装置を含む信号保安装置であって、列車が進入した当該駅装置及び当該駅の1つ前方にある駅装置は、電源をオンにして稼動状態にし、他の駅に備えられた駅装置の電源をオフにすることにより、電力消費を低減させる信号保安装置が開示されている。
【0003】
各駅に個別に設けられた駅装置は、電源開閉回路と、連動装置とを含んでおり、電源開閉回路は、隣り合う駅の連動装置から与えられる列車位置情報に基づき電源入力をオンオフし、駅装置を稼動状態又は非稼動状態としている。
【0004】
特許文献2には、電子制御回路等に故障が発生した時には、電子制御回路による昇降制御を打ち切って、リレー制御回路によって遮断桿を強制的に下降させる踏切保安装置が開示されている。そして、踏切保安装置は故障状態が解消して昇降制御が開始するまで、自重で下降した遮断桿は下降位置を維持することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平01-132469号公報
【特許文献2】特開2012-201270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の信号保安装置では、駅装置単位で電源のオン、オフを行うため、駅、駅周辺の軌道上に配置された踏切保安装置等の地上装置毎に、電源のオン、オフを行うことはできない。
【0007】
また、駅装置以外の駅間に設置される引用文献2の踏切保安装置等の軌道上の地上装置に対しては、常時、電力が供給され続けてしまい、余分に電力を消費してしまうという問題が生ずる。
【0008】
また、運行列車の本数が少なく、踏切を横断する交通量が多い踏切装置では、故障した際に列車が接近していない状態であっても遮断桿が強制的に下降した状態であるので、車両や横断者が一切横断できなくなるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、上述の課題を解決し、列車の通過時にのみ、地上装置を一時的に稼働させることで地上装置の電力消費を抑えると共に、地上装置である踏切装置の不具合により、列車が接近していないにも関わらず、遮断桿が下降した状態が維持され、横断車両や横断者が通行不可となることのない省電力型運行管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る省電力型運行管理システムは、軌道を走行する列車と、該軌道上に配置される地上装置と、前記列車及び前記地上装置の運行管理を行うセンタ装置とから構成される省電力型運行管理システムであって、前記センタ装置は、第1の列車の前方で最も近い第1の地上装置を前記第1の列車の通行を妨げる支障点として設定し、前記第1の列車が前記第1の地上装置から所定距離である第1の設定位置に到達した際に、前記第1の地上装置の一部に対して、電力の供給を行わない非稼働状態から電力を供給する稼働状態とし、該稼働状態時に前記支障点を解除するか否かの判定処理を行い、支障点を解除した場合は、前記第1の列車に対して前記第1の地上装置を通過させ、通過後に前記第1の地上装置を開制御し、前記第1の地上装置を前記稼働状態から前記非稼働状態にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る省電力型運行管理システムによれば、センタ装置は踏切装置に列車が接近すると、この踏切装置の踏切保安装置に対して一時的に電源をオフからオンにして、非稼働状態から稼働状態にし、列車が稼働状態の踏切装置を通過後に、踏切装置の踏切保安装置を元の非稼働状態に戻すことを、列車が到着点に到着するまで繰り返すことになる。列車の通過時にのみ、踏切装置の踏切保安装置を一時的に稼働させることで、踏切装置の電力消費を抑えることが可能である。
【0012】
更に、列車が踏切装置に接近していない状態であれば、踏切保安装置の遮断桿は上昇を維持しているので、従来のリレー制御回路を用いた踏切保安装置のように不具合によって列車の位置に関係なく遮断桿が下降することはない。従って、列車が踏切装置に接近していない状態では、車両や歩行者が踏切装置の横断を制限されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】省電力型運行管理システムのシステム構成図である。
【
図2】踏切装置の電源供給のフローチャート図である。
【
図3】列車及び踏切装置の位置関係を示した路線図である。
【
図4】電源投入位置を通過した列車及び支障点である踏切装置の路線図である。
【
図5】支障点を解除した状態の踏切装置及び列車の路線図である。
【
図6】踏切装置を通過した列車及び踏切装置の路線図である。
【
図7】支障点が解除されない場合の踏切装置及び列車の路線図である。
【
図8】踏切装置の手前で停止した状態の列車及び踏切装置の路線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は省電力型運行管理システムの構成図であり、この省電力型運行管理システムは、軌道Rを走行する列車10と、各列車10及び軌道R上に配置された地上装置の運行管理を行う管理センタ20と、管理センタ20と接続され軌道R上に配置される地上装置である踏切装置30と、管理センタ20と接続され、各列車10と無線通信回線を介した通信を行う無線通信部40とから構成されている。
【0015】
踏切装置30と管理センタ20とは、第1の通信ネットワークL1によって接続され、無線通信部40と、管理センタ20とは第2の通信ネットワークL2によって接続されている。
【0016】
なお、第1の通信ネットワークL1と第2の通信ネットワークL2は、有線ネットワークとして図示しているが、無線ネットワークであってもよく、更には第1の通信ネットワークL1と第2の通信ネットワークL2は1つのネットワークであってもよい。
【0017】
所定範囲の通信エリアを有する基地局である無線通信部40は、例えば一定距離間隔毎に設置されており、通信エリアが一部で重複することで、列車10と管理センタ20間の通信が途切れることのないようになっている。列車10と管理センタ20との通信は、無線通信回線を介して行う以外に、軌道Rに沿ってループアンテナや敷設した漏洩同軸ケーブルを、無線通信部40として通信を行うように構成することもできる。
【0018】
列車10には、無線通信部40と各種情報の送受信を行うアンテナ部11と、このアンテナ部11と接続した車上装置12とが設けられている。車上装置12によって処理される列車10の列車IDや走行速度、走行位置等を含む列車情報を、アンテナ部11、無線通信部40を介して、管理センタ20に随時に送信している。
【0019】
列車情報の走行速度は、例えば車軸に取り付けられた回転計が検出する回転数を基に算出される。また、走行位置は例えばキロ程として算出される。或いは、GPS端末を搭載して、緯度経度情報を走行位置として送信するようにしてもよい。更に、車上装置12は管理センタ20から送信される速度制御情報等の指令情報に従って列車10の速度制御等を行っている。
【0020】
省電力型運行管理システム内の何れかの駅等に設置される管理センタ20は、第1の通信ネットワークL1及び第2の通信ネットワークL2と接続されたセンタ装置21と、このセンタ装置21と接続され、オペレータにより操作される操作端末22とから構成されている。
【0021】
センタ装置21は踏切装置30に対して遮断桿の昇降制御等を行う演算制御部23を備え、この演算制御部23は図示しない演算処理部と記憶部を内蔵する所謂サーバ装置が用いられる。
【0022】
センタ装置21は、列車10、踏切装置30から各種情報を随時受信し、これらの各種情報を記憶部で記憶し、後述する演算処理部による運行管理制御の演算処理を経て、各種の指令情報を適宜に、列車10及び踏切装置30に対して送信している。
【0023】
操作端末22は、センタ装置21に接続された所謂クライアント装置であり、図示しないモニタ装置に表示される路線図等により、各列車10からの列車情報に基づく各列車の走行位置、走行速度や、踏切装置30の遮断桿の昇降状態等を、随時にモニタすることが可能である。更に、図示しないキーボード、マウス等の入力部を介して、各種の設定処理や制御指令等をオペレータによって行うことができる。
【0024】
軌道R上に配置される踏切装置30は、センタ装置21の指令情報により稼働する踏切保安装置31と、この踏切保安装置31に対して電源のオンオフや駆動制御を行う制御部32とから構成されている。
【0025】
踏切保安装置31は、遮断桿33の昇降を行う昇降部34と、警報音の出力と一対のランプを交互に点滅させる警報部35と、踏切内の障害物を検出する障害物検出部36とから構成されている。なお、遮断桿33及び昇降部34が所謂、遮断機に相当する。
【0026】
制御部32は、センタ装置21からの指令に基づいて、踏切保安装置31に対して電源のオンオフの制御や、電力が供給され、踏切保安装置31が稼働状態になると、昇降部34に対して遮断桿33の昇降制御、警報部35の警報制御、障害物検出部36のよる検出状況の各々の状態をセンタ装置21に対して通報制御を行う。
【0027】
また、制御部32は、センタ装置21からの指令に基づいて、踏切保安装置31に対してのみに電源のオンオフを制御するようにしてもよい。このような場合には、制御部32の電源のオン制御により踏切保安装置31に電力が供給されて可動状態になると、昇降部34、警報部35及び障害物検出部36は、制御を開始し、各部が制御状態をセンタ装置21に対して通報制御を行うことになる。
【0028】
図2はセンタ装置21によって、列車10が通過する踏切装置30に対する電源供給制御のフローチャート図である。列車10は車上装置12に走行する経路を設定した後に軌道Rの走行を開始する。
【0029】
なお、センタ装置21は軌道Rを走行する各列車10から無線通信部40を介して送信される列車情報により、各列車10の走行位置、列車10の進行を妨げる支障点となり得る踏切装置30等を随時把握しているが、必ずしも列車10から経路についての情報を受信する必要はない。
【0030】
図2に示すフローチャートを起動後に、ステップST1において列車10の前方で最も近い踏切装置30nに対して、列車10の進行を妨げる支障点Sであると設定する。この場合は、センタ装置21は列車10に対して、支障点Sが設定された支障点情報を送信して、この支障点情報を受信した列車10は前方に存在する支障点Sを設定することになる。
【0031】
これは、踏切装置30を通過する列車10にとっては、遮断桿33が上昇位置にあって、通行人及び車両が横断可能な状態の踏切装置30が進行を妨げる支障点Sに該当するからである。
【0032】
続いて、ステップST2において列車10が踏切装置30nに対して、第1の設定位置である電源投入位置P1に到達したか否かを判定する。
図3は列車10の軌道R上で最も近い踏切装置30nを踏切装置301とし、走行する列車10とこの踏切装置301との位置関係を示した路線図である。
【0033】
そして、電源投入位置P1は少なくとも列車10が踏切装置301に到達する所定秒数手前の地点であり、つまり踏切装置301の設置位置P0から列車10の走行する秒速に前述の所定秒数を掛けた距離の手前の地点、つまり設置位置P0から電源投入位置P1までの間の距離は、軌道Rにおける制限速度で前述の所定秒数間走行した距離を採用することができる。
【0034】
ステップST2において、列車10が電源投入位置P1に到達していない場合はステップST2を繰り返し、列車10が電源投入位置P1に到達した場合は、ステップST3に移行する。
【0035】
ステップST3では、センタ装置21は電力供給を開始する電源オン指令情報を制御部32nに送信し、スリープ状態であった踏切保安装置31nに対して電力を供給する。
【0036】
ステップST3では、センタ装置21による踏切装置30の閉制御が指令され、電力が供給された踏切保安装置31nは、先ず制御部32nによって警報部35nの警報音の出力と一対のランプを交互に点滅する警報制御が開始される。
【0037】
併せて制御部32nによって障害物検出部36nの踏切内の障害物の検出処理が開始される。この障害物検出処理は、例えば画像センサを用いて、踏切内に歩行者が存在していること、或いは踏切内に車両がエンスト等により停止していること等を検出することができる。
【0038】
続いて、警報部35nの警報制御開始後の所定秒数経過に、制御部32nによって昇降部34nに対して上昇位置にあった遮断桿33nを下降させる制御が開始される。
【0039】
図4は列車10が電源投入位置P1を通過することによって、踏切保安装置311が起動し、昇降部341によって遮断桿331の下降している状態を示した路線図である。
【0040】
ステップST4では、踏切保安装置31nに電力が供給された後の稼働した警報部35nの警報が正常に稼働することを条件1とし、稼働した昇降部34nによる遮断桿33nの下降が正常に完了することを条件2とし、稼働した障害物検出部36により踏切内に障害物が検出されないことを条件3として、これらの条件1~3の全てが充足しているか否かの判定を行う。
【0041】
支障点Sを解除するか否かを判定するステップST4において、条件1~3の何れかを充足しない場合は、ステップST4を繰り返し、条件1~3の全てを充足した場合はステップST5に移行する。
【0042】
図4に示すように、遮断桿331が下降している状態ではステップST4を繰り返すことになり、遮断桿331の下降完了後に、障害物検出部36により障害物が検出されない状態になることで、ステップST4からステップST5に移行し、ステップST5において踏切装置301の支障点Sを解除する。
【0043】
併せて、センタ装置21は、列車10に対して支障点Sが解除された支障点解除情報を送信する。この支障点解除情報を受信した列車10は、踏切装置301の支障点Sを解除することになる。
【0044】
図5は踏切装置301の支障点Sを解除した状態の路線図であり、列車10にとって、横断者及び横断車両が横断不可になった踏切装置301は通過可能となる。そして、ステップST5の踏切装置301の支障点Sの解除後に、ステップST6に移行する。
【0045】
ステップST6では、センタ装置21は列車10が通過予定の踏切装置30nを通過したか否かを判定する。列車10が踏切装置30nを通過するまでステップST6を繰り返し、列車10が踏切装置30を通過した場合は、ステップST7に移行する。
【0046】
ステップST7では、センタ装置21による踏切装置30の開制御が指令され、列車10が踏切装置30を通過後に踏切装置30nの制御部32nは、警報部35nの出力を停止させ、且つ昇降部34nによって下降状態である遮断桿33nを上昇させる。
【0047】
併せてセンタ装置21は制御部32nに対して電源オフ指令情報を送信して、この電源オフ指令情報を受信した踏切装置30nの制御部32nは、遮断桿33nが上昇した状態となった後に、踏切保安装置31nを非稼働状態であるスリープ状態にする。
【0048】
図6は列車10が踏切装置301を通過し、遮断桿331を上昇状態にして踏切保安装置311を非稼働状態にした状態の路線図である。続くステップST8では次の踏切装置30nである踏切装置302に対して、ステップST1~ST8を繰り返すことになる。このような踏切装置30nの踏切保安装置31nを非稼働から稼働、稼働から非稼働にする処理は、列車10が目的地に到着するまで繰り返して行う。
【0049】
図7は昇降部341に不具合、例えばモータが故障し、遮断桿331の下降が完了せずに条件2を充足できない状態で、列車10が減速位置P2に到達した状態を示した路線図である。
【0050】
なお、列車10にとって、電源投入位置P1はセンタ装置21により電源を投入するタイミングを表しており、減速位置P2は踏切装置301の設置位置P0で停止できるブレーキ制御タイミングの限界点を表している。
【0051】
図7に示す路線図の状態は、条件1~3に対して緊急状態が発生して、ステップST4を繰り返している状態を示しており、センタ装置21ではどの条件1~3に対して緊急状態が発生しているのかを制御部32nを介して把握することが可能である。管理センタ20はこの緊急状態を解消するために、直ちに踏切装置30nに対して作業員の派遣等の手配を行う。
【0052】
条件1~3の少なくとも1つを充足していない状態では、踏切内の歩行者、車両等が列車10と接触する虞れがあるので、踏切装置30は支障点Sとして維持されることになる。
【0053】
図7に示すように、踏切装置301の所定距離dm手前には、減速位置P2が設定されており、この踏切装置301の設置位置P0から減速位置P2までの間の所定距離dmは、列車10が減速パターンに従って停止する際に要する距離に対して、十分に余裕がある距離を設定されている。
【0054】
また、第2の設定位置である減速位置P2は、電源投入位置P1を通過した列車10が条件1~3を充足する最短時間における走行地点よりも踏切装置30側に存在している。
【0055】
ステップST4において条件1~3の全てを充足しないため、センタ装置21から列車10に対して、支障点解除情報を送信せず、列車10が支障点解除情報を未受信の状態で減速位置P2に到達した場合には、列車10は減速制御を開始することになる。
【0056】
続いて、センタ装置21において条件1~3の全てを充足されずにステップST4の繰り返し処理が継続し、センタ装置21から列車10に対して支障点解除情報が送信されない状態が継続した場合には、
図8に示すように最終的に列車10は、昇降部341に不具合が発生した踏切装置301の手前で停止することになる。
【0057】
なお、上述のステップST4の繰り返し処理時に、例えば踏切内の転倒者等が自力で移動することで、条件3の障害物検知が解消され、条件1~3を全て充足することが多々ある。
【0058】
このようにして緊急状態が解除された場合は、ステップST5に移行し、センタ装置21は踏切装置30の支障点Sを解除すると共に、列車10に対して支障点解除情報を送信する。この支障点解除情報を減速制御中に受信した列車10は、前方の支障点Sを解除すると共に、減速制御の解除を行うことになる。
【0059】
図8に示すように、踏切装置301の手前で列車10が停止することで、踏切内の障害物や、横断を継続している横断車両、又は横断者と、列車10とが接触することはない。
【0060】
なお、上述の条件1~3については、警報部35nの条件1を省略することもできる。この場合は、遮断桿33nの下降完了と、遮断桿33nの下降完了後の障害物検出部36nの障害物を検出していないことの両方を充足することで踏切装置30nの支障点Sの解除を行う。
【0061】
遮断桿33が下降した状態であって、踏切内に障害物が存在していなければ列車10は安全に踏切装置30nを通過することが可能だからである。そして、不具合が発生している警報部35に対しては、管理センタ20から作業員の派遣等の手配を速やかに行う。
【0062】
このようにして、省電力型運行管理システムによれば、センタ装置21は踏切装置30に列車10が接近すると、この踏切装置30の踏切保安装置31に対して一時的に電源をオフからオンにして、非稼働状態から稼働状態にし、列車10が稼働状態の踏切装置30を通過後に、踏切装置30の踏切保安装置31を元の非稼働状態に戻すことを、列車10が到着点Pに到着するまで繰り返すことになる。列車10の通過時にのみ、踏切装置30の踏切保安装置31を一時的に稼働させることで、踏切装置30の電力消費を抑えることが可能である。
【0063】
更に、列車10が踏切装置30に接近していない状態であれば、踏切保安装置31の遮断桿33は上昇を維持しているので、従来のリレー制御回路を用いた踏切保安装置のように不具合によって列車10の位置に関係なく遮断桿が下降することはない。従って、列車10が踏切装置30に接近していない状態では、車両や歩行者が踏切装置30の横断を制限されることはない。
【符号の説明】
【0064】
10 列車
21 センタ装置
30,30n,301,302 踏切装置
31,31n,311 踏切保安装置
32,32n,321 制御部
33,33n,331 遮断桿
34,34n,341 昇降部
35,35n,351 警報部
36,36n,361 障害物検出部
P0 設置位置
P1 電源投入位置
P2 減速位置
R 軌道
S 支障点