(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025030505
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】樹脂成形品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/16 20060101AFI20250228BHJP
【FI】
B29C45/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023135854
(22)【出願日】2023-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】杉江 信二
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AA11
4F206AA45
4F206AG07
4F206AG28
4F206AH17
4F206AR12
4F206AR20
4F206JA07
4F206JB28
4F206JF01
4F206JL02
4F206JM11
4F206JN12
(57)【要約】
【課題】樹脂成形品の分別を容易にする。
【解決手段】樹脂成形品としての車両用ベントダクト10は、第1の樹脂で形成された本体部12と、本体部12の外面に、本体部12を周回りに囲うように第2の樹脂で環状に形成されたシール部14とを備えている。第1の樹脂と第2の樹脂とは互いに融着しないものであると共に、第2の樹脂は、第1の樹脂より成形収縮率が大きいものが用いられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂で形成された本体部と、
前記本体部の外面に、前記本体部を周回りに囲うように第2の樹脂で環状に形成されたシール部と、を備え、
前記第1の樹脂と前記第2の樹脂とは互いに融着しないと共に、前記第2の樹脂は前記第1の樹脂より成形収縮率が大きい、樹脂成形品。
【請求項2】
前記本体部の外面から突出する第1壁部と、前記第1壁部に対して前記周回りと交差する方向に離間して前記本体部から突出する第2壁部と、を備え、
前記第1壁部が、前記第2壁部よりも前記本体部の外面から大きく突出し、
前記シール部は、前記第1壁部と前記第2壁部との間から前記第2壁部側に延出している請求項1に記載の樹脂成形品。
【請求項3】
前記シール部は、前記第1壁部の端面に当接する当接部を有する請求項2に記載の樹脂成形品。
【請求項4】
前記第1壁部から前記第2壁部に向けて突出して、前記シール部に嵌まる第1突出部を備える請求項2に記載の樹脂成形品。
【請求項5】
前記第1の樹脂がポリプロピレンであり、前記第2の樹脂がポリエステルエラストマーである請求項1に記載の樹脂成形品。
【請求項6】
車両用ベントダクト又は車両用シールプレートである請求項1に記載の樹脂成形品。
【請求項7】
第1の樹脂を射出成形して本体部を形成した後に、
前記本体部がセットされたキャビティにおいて、前記第1の樹脂よりも成形収縮率が大きくかつ前記第1の樹脂に融着しない第2の樹脂を射出成形して、前記本体部の外面に、前記本体部を周回りに囲う環状のシール部を形成する、樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂成形品及び樹脂成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品としては、例えば、ポリプロピレンからなる枠体と、枠体の周縁部に接合された、TPOからなるシール部材とを備えるベントダクトが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のベントダクトは、枠体をインサートとして配置した金型において、シール部材を成形することで、枠体にシール部材を接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、樹脂成形品について、リサイクルを促進することが求められている。前述したベントダクトは、複数の樹脂で構成されているので、そのままリサイクルすることができず、枠体からシール部材を取り外す必要がある。しかし、ベントダクトにおいて、枠体とシール部材とが接合されているので、枠体とシール部材との分別が難しい。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記課題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、本体部とシール部とを簡単に分別できる樹脂成形品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る樹脂成形品の第1態様は、
第1の樹脂で形成された本体部と、
前記本体部の外面に、前記本体部を周回りに囲うように第2の樹脂で環状に形成されたシール部と、を備え、
前記第1の樹脂と前記第2の樹脂とは互いに融着しないと共に、前記第2の樹脂は前記第1の樹脂より成形収縮率が大きいことを要旨とする。
【0007】
本発明に係る樹脂成形品の第2態様は、前記樹脂成形品の第1態様において、
前記本体部の外面から突出する第1壁部と、前記第1壁部に対して前記周回りと交差する方向に離間して前記本体部から突出する第2壁部と、を備え、
前記第1壁部が、前記第2壁部よりも前記本体部の外面から大きく突出し、
前記シール部は、前記第1壁部と前記第2壁部との間から前記第2壁部側に延出していてもよい。
【0008】
本発明に係る樹脂成形品の第3態様は、前記樹脂成形品の第2態様において、
前記シール部は、前記第1壁部の端面に当接する当接部を有していてもよい。
【0009】
本発明に係る樹脂成形品の第4態様は、前記樹脂成形品の第2態様又は第3態様において、
前記第1壁部から前記第2壁部に向けて突出して、前記シール部に嵌まる第1突出部を備えていてもよい。
【0010】
本発明に係る樹脂成形品の第5態様は、前記樹脂成形品の第1態様、第2態様、第3態様及び第4態様の何れか1つにおいて、
前記第1の樹脂がポリプロピレンであり、前記第2の樹脂がポリエステルエラストマーであってもよい。
【0011】
本発明に係る樹脂成形品の第6態様は、前記樹脂成形品の第1態様、第2態様、第3態様、第4態様及び第5態様の何れか1つにおいて、
車両用ベントダクト又は車両用シールプレートであってもよい。
【0012】
本発明に係る樹脂成形品の製造方法の第1態様は、
第1の樹脂を射出成形して本体部を形成した後に、
前記本体部がセットされたキャビティにおいて、前記第1の樹脂よりも成形収縮率が大きくかつ前記第1の樹脂に融着しない第2の樹脂を射出成形して、前記本体部の外面に、前記本体部を周回りに囲う環状のシール部を形成することを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る樹脂成形品によれば、本体部とシール部とを簡単に分別できる。
本発明に係る樹脂成形品の製造方法によれば、本体部とシール部とを簡単に分別できる樹脂成形品を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係る車両用ベントダクトを示す正面側から見た斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る車両用ベントダクトを示す背面図である。
【
図3】第1実施形態に係る車両用ベントダクトを示す縦断面図である。
【
図5】
図2のB-B線で破断した要部断面図である。なお、車体係止部及び車体当接部の図示を省略している。
【
図6】第1実施形態に係る車両用ベントダクトの製造過程を示す説明図である。
【
図7】第1実施形態に係る車両用ベントダクトの製造過程を示す説明図である。
【
図8】第2実施形態に係る車両用シールプレートを背面側から見た斜視図である。
【
図9】第2実施形態に係る車両用シールプレートを車体に取り付けた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係る樹脂成形品及び樹脂成形品の製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一例を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【実施例0016】
(第1実施形態)
第1実施形態では、本発明の樹脂成形品の一例として、自動車等の車両の車体50(
図3)に取り付けられ、車室内の空気を換気するための排気口としての車両用ベントダクト10を例示する。
図1及び
図2に示すように、車両用ベントダクト10は、通気路12aを有する筒形状の本体部12と、本体部12の外面に、本体部12を周回りに囲うように形成されたシール部14とを備えている。また、車両用ベントダクト10は、本体部12の通気路12aを開閉する開閉弁16を備えている。本体部12は、第1の樹脂で形成された射出成形品である。また、シール部14は、本体部12を構成する第1の樹脂と異なる第2の樹脂で形成された射出成形品である。そして、車両用ベントダクト10は、異なる樹脂からなる本体部12とシール部14とを組み合わせた二色成形品である。
【0017】
図1及び
図2に示すように、本体部12は、上下左右の通路壁部18によって横長略矩形の開口形状の通気路12aを形成する筒形である。また、本体部12は、通気路12aに上下に延在する板状の支持部20を複数有している(
図2参照)。複数の支持部20は、横方向に離して配置されている。本体部12は、横側の通路壁部18、下側の通路壁部18および支持部20の車両外側に臨む面によって形成され、閉じ姿勢の開閉弁16を受け止める受け面を有している。本体部12の受け面は、下方に向かうにつれて車両外側へ傾斜している(
図3参照)。
【0018】
図3に示すように、本体部12は、通路壁部18の外面から突出する第1壁部22と、通路壁部18の外面から突出する第2壁部24とを備えている。第1壁部22は、通路壁部18における車両外側の端縁に、本体部12の外面における周回り全周に亘って形成されている。第2壁部24は、第1壁部22から車両内側(本体部12の周回りと交差する方向)に離して、本体部12の外面における周回り全周に亘って形成されている。第1壁部22は、第2壁部24よりも本体部12の外面から大きく突出し、第1壁部22の突出端が、第2壁部24の突出端よりも外側に位置している。
【0019】
図5に示すように、本体部12は、第1壁部22から第2壁部24に向けて突出して、シール部14に嵌まる第1突出部26を備えている。第1突出部26における第1壁部22からの突出寸法は、第1壁部22と第2壁部24との間隔よりも小さく、第1突出部26が第2壁部24から離れている。第1突出部26の突出寸法は、第1壁部22と第2壁部24との間隔の半分以下に設定することが好ましい。第1突出部26は、本体部12の周回り方向に互いに離して複数設けられている。
【0020】
図5に示すように、本体部12は、第2壁部24から第1壁部22に向けて突出して、シール部14に嵌まる第2突出部28を備えている。第2突出部28における第2壁部24からの突出寸法は、第1壁部22と第2壁部24との間隔よりも小さく、第2突出部28が第1壁部22から離れている。第2突出部28の突出寸法は、第1壁部22と第2壁部24との間隔の半分以下に設定することが好ましい。第2突出部28は、第1突出部26に対して周回り方向にずらして配置されている。第2突出部28は、本体部12の周回り方向に互いに離して複数設けられ、第1実施形態では、第1突出部26と第2突出部28とが周回り方向に交互に配置されている。
【0021】
図2及び
図3に示すように、本体部12は、第2壁部24よりも車両内側に形成された車体係止部30を有している。車体係止部30は、上下の通路壁部18のそれぞれに設けられ、本体部12の外面から突出した後に車両外側に向けて屈曲する鉤形状に形成されている。車体係止部30は、本体部12を車体50の取付口50aに嵌めた際に、車体50の内面に引っ掛かる。
【0022】
図2及び
図3に示すように、本体部12は、本体部12の外面から突出する板状の車体当接部32を備えている。車体当接部32は、上下の通路壁部18のそれぞれに設けられている。本体部12を取付口50aに挿入した際に、車体当接部32が車体50の取付口50aに嵌まる。
【0023】
本体部12は、通路壁部18、支持部20、第1壁部22、第2壁部24、第1突出部26、第2突出部28、車体係止部30及び車体当接部32が一体的に形成された硬質な樹脂部材である。本体部12を構成する第1の樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂は、分子構造における電荷の偏りがない又は非常に小さい無極性の樹脂であり、自身と異なる種類の樹脂とほぼ融着しないものである。
【0024】
図4に示すように、シール部14は、本体部12における上下左右の通路壁部18の外面に当接して、本体部12における上下左右の通路壁部18を周回り全周に亘って囲うように形成されている。シール部14は、本体部12に対して、融着、溶着や接着等により接合されておらず、周回りに縮まる方向に働く自身の成形収縮により本体部14の外面に押し付けられている。シール部14は、車体50との当接により変形する柔軟性と、変形した際に適度に戻る弾力性とを有しているとよい。
【0025】
図3に示すように、シール部14は、第1壁部22と第2壁部24との間から第2壁部24側に延出している。より具体的には、シール部14は、第1壁部22と第2壁部24との間から外側へ延びるにつれて車両内側へ向けて曲がるヒレ状である。また、シール部14は、第2壁部24の外側において、本体部12側から先端に向かうにつれて薄くなる先細り形状である。シール部14は、第1壁部22の端面に当接する当接部14aを有している。
【0026】
シール部14を構成する第2の樹脂としては、第1の樹脂と互いに融着しない樹脂が用いられる。前述したように、第1の樹脂が無極性樹脂であることから、第2の樹脂としては、第1の樹脂と異なる種類の無極性樹脂又は極性樹脂が用いられる。第2の樹脂としては、ポリスチレン系(TPS)、オレフィン系(TPO)、ポリ塩化ビニル系(TPVC)、ポリウレタン系(TPU)、ポリエステル系(TPEE或はTPC)、ポリアミド系(TPAE)などの熱可塑性エラストマーが挙げられる。ここで、熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントに第1の樹脂と異なる種類の樹脂を含むものが用いられ、例えば、第1の樹脂がポリプロピレンであれば、オレフィン系エラストマー以外の熱可塑性エラストマーを用いるとよい。
【0027】
シール部14を構成する第2の樹脂としては、第1の樹脂よりも成形収縮率が大きい樹脂が用いられる。ここで、第2の樹脂としては、非結晶性樹脂よりも成形収縮率が大きい結晶性樹脂をハードセグメントとして含む熱可塑性エラストマーが好ましく、例えば、オレフィン系(TPO)、ポリエステル系(TPEE或はTPC)、ポリアミド系(TPAE)が挙げられ、この中でもポリエステル系(TPEE或はTPC)熱可塑性エラストマーが成形収縮率が大きいことから望ましい。例えば、第1の樹脂と第2の樹脂との具体的な組み合わせとしては、第1の樹脂としてのポリプロピレンと第2の樹脂としてのポリエステル系熱可塑性エラストマーとの組み合わせや、第1の樹脂としてのポリエチレンと第2の樹脂としてのポリエステル系熱可塑性エラストマーとの組み合わせなどが挙げられる。この中でも、第1の樹脂と第2の樹脂との組み合わせとしては、本体部12とシール部14とが互いに融着しないと共にシール部14の成形収縮を適切に作用させる観点から、第1の樹脂としてポリプロピレンを用い、第2の樹脂としてポリエステル系熱可塑性エラストマーを用いることが望ましい。
【0028】
開閉弁16は、薄い板状体であって、オレフィン系エラストマー(TPO)やスチレン系エラストマー等のエラストマー、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等のゴム系材料など、可撓性を有する材料で構成されている。また、開閉弁16は、曲げた状態から戻ろうとする弾性を有している。
図3に示すように、開閉弁16の上端部は、本体部12における上側の通路壁部18から下方へ張り出した部位に固定されている。開閉弁16は、上端部が本体部12に固定されているだけで、上側の通路壁部18から通気路12aに吊り下がる本体部分に、閉じ姿勢に向けて自重が作用するようになっている。開閉弁16は、本体部12に後付けしても、シール部14を成形する際に開閉弁16も第2の樹脂で一緒に成形してもよい。
【0029】
開閉弁16は、通気路12aに吊り下がり、自重による開閉弁16の車両内側への変位が本体部12の受け面で規制されて、通気路12aを塞ぐ閉じ姿勢になる(
図3実線参照)。車両用ベントダクト10は、自重で閉じ姿勢となった開閉弁16によって、通気路12aを塞いで車両外側からの埃や水などの異物の侵入を防止する。また、車両用ベントダクト10は、ドアを閉じたときなどの車室内外の気圧差により開閉弁16が車両外側へ変位することで通気路12aが開放され、車室側から外へ向けた空気の流通を許容する(
図3二点鎖線参照)。
【0030】
図3に示すように、車両用ベントダクト10は、車体50に形成された取付口50aに嵌め合わせて取り付けられる。車両用ベントダクト10は、リアバンパーなどの車両外装部材(図示せず)によって外側が覆われて、車両外側から隠されている。車両用ベントダクト10は、通気路12aの上流側が車体50の内側に設けられた車室側空間に繋がり、通気路12aの下流側が車両外側に通じており、車室の空気を、通気路12aを通じて車両外側に排出可能である。
【0031】
次に、第1実施形態の車両用ベントダクト10の製造方法について説明する。
図6に示すように、第1型40と第2型42との間に形成される第1キャビティ41に、第1の樹脂を圧力を加えつつ充填して、本体部12を射出成形する。第1型40と第2型42とを型開きし、第1型40に本体部12を残した状態にする。なお、第2型42は、第1壁部22及び第2壁部24に対応する部分が、型開き方向と交差する方向へ移動可能な第2スライド型42aになっている。
【0032】
図7に示すように、本体部12を第1型40に保持した状態で、第2型42を第3型44に入れ替えて、第1型40及び第1型40に保持された本体部12と第3型44との間に形成される第2キャビティ43に、第2の樹脂を圧力を加えつつ充填して、シール部14を射出成形する。第1型40と第3型44とを型開きし、シール部14が外面に形成された本体部12を取り出す。なお、第3型44は、シール部14に対応する部分が、型開き方向と交差する方向へ移動可能な第3スライド型44aになっている。そして、別に成形した開閉弁16を本体部12に取り付けることで、車両用ベントダクト10が得られる。このように、第1実施形態において、本体部12及びシール部14が、第1型40を共通する二色成形で製造される。
【0033】
前述した製造方法は、まず、第1キャビティ41において、第1の樹脂を射出成形して本体部12を形成している。その後に、本体部12がセットされた第2キャビティ43において、第1の樹脂よりも成形収縮率が大きくかつ第1の樹脂に融着しない第2の樹脂を射出成形して、本体部12の外面に、本体部12を周回りに囲う環状のシール部14を形成している。
【0034】
第1実施形態の車両用ベントダクト10は、本体部12とシール部14とが互いに融着しない樹脂で構成されていることから、本体部12とシール部14とが接合されていない。車両用ベントダクト10は、シール部14を構成する第2の樹脂が、本体部12を構成する第1の樹脂よりも成形収縮率が大きく、シール部14が本体部12を囲んで形成されている。そのため、シール部14自身が、成形収縮して小さくなることで、本体部12の外面に押し付けられた状態で保持される。なお、シール部14の成形収縮率が、本体部12の成形収縮率よりも大きいため、本体部12が収縮しても、それを越えてシール部14が収縮することから、シール部14が本体部12の外面に保持される。このように、車両用ベントダクト10は、本体部12とシール部14とを接合していないが、シール部14を本体部12の外面に取り付けることができる。
【0035】
第1実施形態の車両用ベントダクト10は、本体部12とシール部14とが互いに融着しない異なる樹脂で構成されていることから、本体部12とシール部14とが接合されていない。これにより、車両用ベントダクト10は、例えばシール部14を切って開くことで本体部12からシール部14を簡単に取り外すことができる。従って、車両用ベントダクト10を廃棄する際に、第1の樹脂からなる本体部12と第2の樹脂からなるシール部14とを簡単に分別することができる。
【0036】
シール部14は、本体部12の外面から突出する第1壁部22と、第1壁部22に対して本体部12の周回りと交差する方向に離間して本体部12から突出する第2壁部24との間に配置されている。これにより、シール部14が、第1壁部22及び第2壁部24によって本体部12の周回りと交差する方向へずれることを防止でき、シール部14を本体部12に接合することなく適切に位置固定できる。また、シール部14は、第1壁部22と第2壁部24との間から第2壁部24側に延出しているが、第1壁部22が、第2壁部24よりも本体部12の外面から大きく突出している。そのため、第2壁部24側へ延びるシール部14が車体50に当接した際に、第1壁部22によってシール部14がずれることを防止できる。更に、シール部14は、第1壁部22の端面に当接する当接部14aを有していることから、第2壁部24側へ延びるシール部14が車体50に当接した際に、第1壁部22の端面と当接部14aとの噛み合いによってシール部14がずれることを防止できる。
【0037】
第1壁部22から第2壁部24に向けて突出して、シール部14に嵌まる第1突出部26を備えていることで、シール部14に嵌まる第1突出部26によってシール部14の周回り方向の移動を防止できる。また、第2壁部24から第1壁部22に向けて突出して、シール部14に嵌まる第2突出部28を備えていることで、シール部14に嵌まる第2突出部28によってシール部14の周回り方向の移動を防止できる。特に、第1突出部26と第2突出部28とを周回り方向に交互に配置することで、シール部14の緩みを防止できる。
【0038】
(第2実施形態)
本発明の樹脂成形品の一例としては、
図8及び
図9に示す第2実施形態のように、自動車等の車両における車体50に取り付けられる車両用シールプレート60であってもよい。第2実施形態の車両用シールプレート60は、車両のピラーとフェンダーとの隙間を塞ぐものであり、フェンダーインシュレータとも呼ばれる。車両用シールプレート60は、板形状の本体部12と、本体部12の外面に、本体部12を周回りに囲うように形成されたシール部14とを備えている。本体部12は、第1の樹脂で形成された射出成形品である。また、シール部14は、本体部12を構成する第1の樹脂と異なる第2の樹脂で形成された射出成形品である。そして、車両用シールプレート60は、異なる樹脂からなる本体部12とシール部14とを組み合わせた二色成形品である。第2実施形態の車両用シールプレート60は、本体部12が板状である点が第1実施形態と相違するが、その他の構成及び製造方法は第1実施形態と同様なので、同じ機能を有する構成に第1実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。そして、第2実施形態の車両用シールプレート60であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0039】
(変更例)
前述した事項に限らず、例えば以下のようにしてもよい。なお、本発明は、実施形態及び以下の変更例の具体的な記載のみに限定されるものではない。
(1)樹脂成形品としては、車両用ベントダクトや車両用シールプレートに限らず、例えば、ドアカバー、サービスホールカバーなど、取り付け対象との間のシール性が要求されるその他の部材に適用してもよい。
(2)第1壁部及び第2壁部は、本体部の周回り全周に連続して形成される構成に限らず、本体部の外面の一部範囲に形成される構成であってもよい。
(3)第1の型で本体部を射出成形した後に、本体部を第1の型から取り出し、本体部を第2の型にセットした状態で第2の型でシール部を射出成形するインサート成形によって、樹脂成形品を製造してもよい。