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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025030516
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】電力回収システム及び端末装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/123 20060101AFI20250228BHJP
   G06Q 50/06 20240101ALI20250228BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
G08G1/123 A
G06Q50/06
H02J7/35 K
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023135878
(22)【出願日】2023-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】722010585
【氏名又は名称】セトラスホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100120499
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 淳
(72)【発明者】
【氏名】篠原 亘
【テーマコード(参考)】
5G503
5H181
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA02
5G503BB01
5G503EA05
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD04
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB08
5H181BB13
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF14
5H181FF27
5H181FF33
5H181MA41
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】太陽光発電設備を備える施設が太陽光による発電電力を使用しない非電力使用日に、太陽光発電設備が発電した電力を回収する。
【解決手段】電力回収システム1000は、太陽光発電設備を備える施設の非電力使用日に電力を回収する。上記非電力使用日は上記施設が太陽光発電による電力を使用しない日である。電力回収システム1000は、非電力使用日取得部612aと、回収指令送信部612cと、を備える。上記非電力使用日取得部612aは、非電力使用日に関する情報を取得する。上記回収指令送信部612cは、回収指令を送信する。上記回収指令は、上記非電力使用日に蓄電池805を搭載した車両800を上記施設まで運転させ、上記太陽光発電設備が発電した電力を上記蓄電池805に蓄電して回収させる指令である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電設備を備える施設の非電力使用日に電力を回収する電力回収システムであって、
前記非電力使用日は前記施設が太陽光発電による電力を使用しない日であり、
前記非電力使用日に関する情報を取得する非電力使用日取得部と、
前記非電力使用日に蓄電池を搭載した車両を前記施設まで運転させ、前記非電力使用日に前記太陽光発電設備が発電した余剰電力を前記蓄電池に蓄電して回収させる回収指令を送信する回収指令送信部と、
を備える、電力回収システム。
【請求項2】
前記回収指令は、前記施設の位置情報を含む、請求項1に記載の電力回収システム。
【請求項3】
前記車両又は前記車両のユーザの端末装置を更に備え、
前記回収指令送信部は、前記車両又は前記端末装置に前記回収指令を送信する、請求項1に記載の電力回収システム。
【請求項4】
電力の消費地から買電要求を受信する買電要求受信部と、
前記買電要求に基づいて、前記車両を前記消費地まで運転させ、前記蓄電池に蓄電された電力を前記消費地で売電させるための売電指令を送信する売電指令送信部と、
を更に備える、請求項1に記載の電力回収システム。
【請求項5】
前記売電指令は、前記消費地の位置情報を含む、請求項4に記載の電力回収システム。
【請求項6】
前記車両又はユーザの端末装置を更に備え、
前記売電指令送信部は、前記車両又は前記端末装置に前記売電指令を送信する、請求項4に記載の電力回収システム。
【請求項7】
太陽光発電設備を備える施設が太陽光発電による電力を使用しない非電力使用日に、蓄電池を搭載した車両を前記施設まで運転させ、前記非電力使用日に前記太陽光発電設備が発電した余剰電力を前記蓄電池に回収させる回収指令を受信する回収指令受信部と、
前記回収指令を表示装置に表示させるための処理を行う表示処理部と、
を備える端末装置。
【請求項8】
前記回収指令は、前記施設の位置情報を含む、請求項7に記載の端末装置。
【請求項9】
電力の消費地からの買電要求に基づいて前記車両を前記消費地まで運転させ、前記蓄電池に蓄電された電力を前記消費地で売電させるための売電指令を受信する売電指令受信部を更に備え、
前記表示処理部は、前記売電指令を前記表示装置に表示させるための処理を行う、請求項7に記載の端末装置。
【請求項10】
前記売電指令は、前記消費地の位置情報を含む、請求項9に記載の端末装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力回収システム及び端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光発電設備の余剰電力を電動車両に搭載された蓄電池に充電し、電力供給量が不足している場合は電気自動車の車載蓄電池からの放電を受ける技術が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-049339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工場などの施設に太陽光発電設備が備えられている場合、工場の非操業日には太陽光により発電した電力が使用されないため、余剰となった電力が廃棄される問題がある。非操業日に発電した電力を蓄電池に蓄電し、操業日に蓄電した電力を使用することも考えられる。しかし、一般的な工場では、蓄電池に満蓄電された電力が工場内で数分~1時間程度で消費されてしまうほど消費電力量は大きい。このため、太陽光による発電量を工場の消費電力量に近づけようとする程、すなわち太陽光発電設備の規模を大型化するほど、非操業日1日分の発電量を蓄電池に蓄電することは困難となる。したがって、年に数日程度の非操業日のために相応の蓄電容量の蓄電池を備えるようにすると、蓄電池導入のコストが増大し、却って無駄が多くなる可能性がある。また、非操業日に発電した電力を系統に供給することも考えられるが、この場合においては、系統側の停電時や工事時などに太陽光による発電電力を系統側に確実に流入させないようにする設備が必要となり、設備の導入のためのコストが増大する問題がある。
【0005】
上記特許文献1に記載された技術は、太陽光発電設備を備えた工場の非操業日など、太陽光発電による電力が使用されない非電力使用日を考慮していないため、非電力使用日に余剰となる電力を効率よく回収することができない問題がある。
【0006】
上記課題に鑑みて、本開示の目的は、太陽光発電設備を備える施設が太陽光による発電電力を使用しない非電力使用日に、太陽光発電設備が発電した電力を回収することが可能な電力回収システム及び端末装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0008】
(1)電力回収システムは、太陽光発電設備を備える施設の非電力使用日に電力を回収する。上記非電力使用日は上記施設が太陽光発電による電力を使用しない日である。上記電力回収システムは、非電力使用日取得部と、回収指令送信部と、を備える。上記非電力使用日取得部は、非電力使用日に関する情報を取得する。上記回収指令送信部は、回収指令を送信する。上記回収指令は、上記非電力使用日に蓄電池を搭載した車両を上記施設まで運転させ、上記非電力使用日に上記太陽光発電設備が発電した余剰電力を上記蓄電池に蓄電して回収させる指令である。
【0009】
(2)上記回収指令は、上記施設の位置情報を含む、上記(1)に記載の電力回収システム。
【0010】
(3)上記車両又はユーザの端末装置を更に備える、上記(1)又は(2)に記載の電力回収システム。上記回収指令送信部は、上記車両又は上記端末装置に上記回収指令を送信する。
【0011】
(4)優先順位決定部を更に備える、上記(3)に記載の電力回収システム。上記優先順位決定部は、複数の上記車両又は複数の上記端末装置が存在する場合に、上記回収指令を複数の上記車両又は複数の上記端末装置に送信する際の優先順位を決定する。上記回収指令送信部は、上記優先順位に基づいて上記回収指令を複数の上記車両又は複数の上記端末装置に送信する。
【0012】
(5)電力回収システムは、上記(3)において、上記優先順位決定部は、上記蓄電池が蓄電可能な蓄電容量、上記蓄電池の充電状態、及び上記車両の位置情報の少なくともいずれかに基づいて、上記回収指令を複数の上記車両に送信する際の上記優先順位を決定する。
【0013】
(6)発電量予測部を更に備える、上記(4)に記載の電力回収システム。上記発電量予測部は、上記非電力使用日における上記太陽光発電設備の発電量を予測する。上記回収指令送信部は、上記優先順位決定部が決定した優先順位に従い、優先順位の上位の所定数の上記車両に対して上記回収指令を送信する。上記回収指令送信部は、上記回収指令を送信する上記車両の上記蓄電池の残容量の合計が上記発電量より多くなるように上記所定数を決定する。
【0014】
(7)買電要求受信部と、売電指令送信部と、を更に備える、上記(1)~(6)のいずれかに記載の電力回収システム。上記買電要求受信部は、電力の消費地から買電要求を受信する。上記売電指令送信部は、売電指令を送信する。上記売電指令は、上記買電要求に基づいて上記車両を上記消費地まで運転させ、上記蓄電池に蓄電された電力を上記消費地で売電させるための指令である。
【0015】
(8)上記売電指令は、上記消費地の位置情報を含む、上記(7)に記載の電力回収システム。
【0016】
(9)上記車両又はユーザの端末装置を更に備える、上記(7)又は(8)に記載の電力回収システム。上記売電指令送信部は、上記車両又は上記端末装置に上記売電指令を送信する。
【0017】
(10)優先順位決定部を更に備える、上記(9)に記載の電力回収システム。上記優先順位決定部は、複数の上記車両又は複数の上記端末装置が存在する場合に、上記売電指令を複数の上記車両又は複数の上記端末装置に送信する際の優先順位を決定する。上記売電指令送信部は、上記優先順位に基づいて上記売電指令を複数の上記車両又は複数の上記端末装置に送信する。
【0018】
(11)電力回収システムは、上記(10)において、上記優先順位決定部は、上記蓄電池が蓄電可能な蓄電容量、上記蓄電池の充電状態、及び上記車両の位置情報の少なくともいずれかに基づいて上記売電指令を複数の上記車両に送信する際の上記優先順位を決定する。
【0019】
(12)端末装置は、回収指令受信部と、表示処理部と、を備える。上記回収指令受信部は、回収指令を受信する。上記回収指令は、非電力使用日に蓄電池を搭載した車両を上記施設まで運転させ、上記非電力使用日に上記太陽光発電設備が発電した余剰電力を上記蓄電池に回収させる指令である。上記非電力使用日は、太陽光発電設備を備える施設が太陽光発電による電力を使用しない日である。上記表示処理部は、上記回収指令を表示装置に表示させるための処理を行う。
【0020】
(13)上記回収指令は、上記施設の位置情報を含む、上記(12)に記載の端末装置。
【0021】
(14)売電指令受信部を更に備える、上記(12)又は(13)に記載の端末装置。上記売電指令受信部は、売電指令を受信する。上記売電指令は、電力の消費地からの買電要求に基づいて上記車両を上記消費地まで運転させ、上記蓄電池に蓄電された電力を上記消費地で売電させるための指令である。上記表示処理部は、上記売電指令を上記表示装置に表示させるための処理を行う。
【0022】
(15)上記売電指令は、上記消費地の位置情報を含む、上記(14)に記載の端末装置。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、太陽光発電設備を備える施設が太陽光による発電電力を使用しない非電力使用日に、太陽光発電設備が発電した電力を回収することが可能な電力回収システム及び端末装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】完全自家消費型のオンサイトPPAの構成例を示す模式図である。
図2】太陽光発電の制御システムが備えられた工場の外観を示す模式図である。
図3】蓄電池を搭載した車両が運転される様子を示す模式図である。
図4】電力回収システムの構成を示す模式図である。
図5】サーバの構成を示すブロック図である。
図6】車両に搭載されている車両制御システムの構成を示すブロック図である。
図7】サーバのプロセッサの機能を示すブロック図である。
図8】各工場の非電力使用日を示す模式図である。
図9】端末装置の機能を示すブロック図である。
図10】回収指令が表示された表示装置の画面を示す模式図である。
図11】売電指令が表示された表示装置の画面を示す模式図である。
図12】サーバのプロセッサおよび端末装置のプロセッサの処理の時系列的な流れを示すシーケンス図である。
図13】サーバのプロセッサおよび端末装置のプロセッサの処理の時系列的な流れを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示に係る幾つかの実施形態について図を参照しながら説明する。しかしながら、これらの説明は、本開示の好ましい実施形態の単なる例示を意図するものであって、本開示をこのような特定の実施形態に限定することを意図するものではない。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0026】
一例として、本実施形態に係る太陽光発電の制御システム100は、太陽光パネルを含む太陽光発電設備であり、完全自家消費型のオンサイトPPAの態様で利用される。オンサイトPPAでは、図1に示すように、発電事業者300が需要家350の敷地内に制御システム100を設置して、制御システム100で発電した電力を現地(オンサイト)で需要家350に供給する。発電事業者300と需要家350は電力販売契約、すなわちPPA:Power Purchase Agreementを締結する。発電事業者300は、PPAに基づき、制御システム100を設置することに加えて、制御システム100を保有し、これを管理する。需要家350は、PPAに基づき、電力料金を発電事業者300に支払う。
【0027】
また、完全自家消費型の場合、制御システム100で発電された電力は全て需要家350の敷地内で自家消費される。したがって、制御システム100で発電された電力は、需要家350の敷地内の施設のみに供給され、電力が他の電力系統の送電網または配電網に供給されることはない。
【0028】
需要家350が必要とする電力量に対し、制御システム100で発電された電力量が余剰である場合、余剰分は蓄電池に蓄電される。そして、需要家350が必要とする電力量に対し、制御システム100で発電された電力量が不足する場合、不足分は蓄電池に蓄電された電力で補われる。また、不足分は需要家350が既存の電力会社400から電力を購入することで補われてもよい。なお、後述するように、本実施形態では、非電力使用日に太陽光による発電電力を回収するため、制御システム100は蓄電池を必ずしも備える必要はない。一方、制御システム100は、例えば非常時の利用を想定して、蓄電池を備えていてもよい。
【0029】
本実施形態では、需要家350が工場主である場合を例示する。発電事業者300は、図1に示す制御システム100を、図2に示す工場500に設置する。なお、需要家350は工場主以外であってよく、制御システム100は、工場500以外の施設、建物などに設置されていてもよい。制御システム100は、太陽光パネル102を備え、太陽光パネル102は工場500の屋根などに設置される。制御システム100は、太陽光発電による電力を工場500に備えられた各種設備に供給する。
【0030】
工場500において太陽光パネル102が日々発電した電力は、その日のうちに工場500内の各種設備で消費されてしまうことが多い。一方、工場500の非操業日、すなわち休業日においても、太陽光パネル102は発電を行うが、電力を消費する設備が稼働していないと、発電した電力は消費されることなく廃棄されてしまう。太陽光発電による電力を有効活用する観点からは、工場500の非操業日に発電した電力を蓄電池に蓄電し、蓄電した電力を工場の操業日に消費することが好ましい。しかし、工場500の非操業日は年に数日程度の場合があり、数少ない非操業日のために工場500が相応の蓄電池を保有すると蓄電池導入のコストが増大し、無駄が大きくなる可能性もある。また、非操業日に発電した電力を系統に供給する場合、系統側の停電時や工事時などに太陽光による発電電力を系統側に確実に流入させないようにする設備が必要となり、設備の導入のためのコストが増大する。
【0031】
以上のように、太陽光発電設備を備える工場500などの施設においては、非操業日などの電力を使用しない非電力使用日において、太陽光発電による電力を有効活用することが望ましい。本実施形態では、各工場500の非電力使用日に太陽光発電により発電された電力を回収させるための指令が蓄電池を搭載した車両又はユーザの端末装置に送信される。なお、ユーザは、具体的には車両の運転者である。この指令に基づいて、蓄電池805を搭載した車両800が、図3に示すように、工場500の非電力使用日に工場500まで運転される。そして、車両800が工場500の敷地内に駐車した状態で、車両800側の充電ケーブルが工場500に設置された給電コネクタに接続され、非電力使用日に工場500の太陽光パネル102が発電した電力が車両800の蓄電池805に蓄電される。したがって、工場500の非電力使用日に発電された電力が廃棄されて無駄になることが抑制される。
【0032】
非電力使用日とは、太陽光発電設備を備える施設が太陽光発電による電力を使用しない日をいう。非電力使用日は、必ずしも太陽光発電設備を備える施設が太陽光発電による電力を全く使用しない場合だけに限られない。非電力使用日は、1日の電力使用量が、1日の通常の電力使用量に対し所定割合以下の日であってもよい。ここで、1日の通常の電力使用量とは、工場500の操業日の1日の電力使用量の年間平均値、または工場500の年間の電力使用量を365日で除した値であってもよい。
【0033】
例えば、非電力使用日は、製造環境維持のための設備は稼働しているが、製造設備は停止していることから、1日の電力使用量が、1日の通常の電力使用量の5%以上10%以下になる日であってもよい。1日の電力使用量が、1日の通常の電力使用量の5%以上10%以下になる日として、週末の土曜日または日曜日が挙げられる。
【0034】
また、非電力使用日は、工場を停電させはしないが、工場の大部分の設備を停止させるため、1日の電力使用量が、完全にゼロではないものの、1日の通常の電力使用量の5%未満となる日であってもよい。また、非電力使用日は、完全に工場を停電させる日であって、1日の電力使用量が、完全にゼロとなる日であってもよい。1日の電力使用量が、完全にゼロとなる日として、年に1,2回の定修日が挙げられる。
【0035】
車両800および蓄電池805は、発電事業者300が所有するものであってもよい。この場合、指令は、発電事業者300が所有する車両800または発電事業者300の従業員が所有する端末装置に送信されてもよい。指令を受け取った従業員は、工場500の非電力使用日に車両800を工場500まで運転し、太陽光発電による電力を回収する。また、指令を受け取った車両800は、工場500の非電力使用日に工場500まで自動運転を行い、太陽光発電による電力を回収してもよい。蓄電された蓄電池805は、図3に示すように、車両800により発電事業者300の拠点まで輸送され、発電事業者300の拠点に集約されてもよい。
【0036】
一方、車両800は、自家用車としての電気自動車またはハイブリッド自動車であってもよく、蓄電池805は、電気自動車またはハイブリッド自動車に備えられた車両用のバッテリであってよい。この場合、指令を受け取った人は、工場500の非電力使用日に車両800を工場500まで運転し、太陽光発電による電力を回収する。蓄電池805に蓄電された電力は、車両800の駆動用の電力として、あるいは一般家庭で使用される電力として利用可能である。したがって、工場500は、一般の人が利用可能な充電ステーションとして機能することもできる。この場合においても、指令を受け取った車両800は、工場500の非電力使用日に工場500まで自動運転を行い、太陽光発電による電力を回収してもよい。太陽光発電による電力を回収すると、車両800の所有者は電力の代金を発電事業者300に対して支払う。
【0037】
車両800は、電力の消費地950から買電要求があると、図3に示すように、消費地950まで運転される。そして、蓄電池805に蓄電された電力は、消費地950で消費される。この場合、買電要求にしたがって、蓄電池805に蓄電された電力を消費地950で売電するための売電指令が車両800またはユーザの端末装置に送信される。この指令に基づいて、蓄電された蓄電池805を搭載した車両800が、消費地950まで運転される。そして、車両800が消費地950の敷地内に駐車した状態で、車両800側の給電ケーブルが消費地の充電コネクタに接続され、蓄電池805に蓄電された電力が消費地950に給電される。
【0038】
消費地950は、一例として農業用温室が設置された場所であってもよい。農業用温室では、気象条件に応じて、温室内の冷暖房のために電力が必要となる場合がある。このような場合、消費地950から買電要求が出される。
【0039】
また、消費地950は、蓄電池が設置され、蓄電池に蓄電された電力を利用している場所であってもよい。蓄電池に蓄電された電力の容量が不足すると、消費地950から買電要求が出される。このような消費地950として、例えば他の工場、学校、集合住宅、ショッピングモールが挙げられる。また、蓄電池に蓄電された電力の容量が不足する場合の例として、地震、水害を含む自然災害による停電が挙げられる。非常時に概ね72時間程度の事業継続が出来るように蓄電池の導入を進めている施設もあるが、大部分の施設では停電時に電力不足が発生することが想定され、停電が長期化すれば蓄電池の容量が枯渇する可能性もある。
【0040】
買電要求に応じて、蓄電池805に蓄電された電力が消費地950に給電されることで、工場500の非電力使用日に発電された電力が消費地950において有効利用され、発電事業者300は売電により利益を上げることができる。また、車両800が自家用車の場合、車両800の所有者は売電による収入を得ることができる。なお、自然災害の場合、売電の代金は公的機関によって補償されることが望ましい。
【0041】
電力回収システム1000は、図4に示すように、各工場500の端末装置510と、サーバ600を有する。サーバ600は、発電事業者300が保有するものであってもよい。電力回収システム1000は、サーバ600に加えて、車両800と、ユーザの端末装置900と、消費地950の端末装置960と、を有していてもよい。車両800および端末装置510,900,960とサーバ600とは、光通信回線などで構成される通信ネットワーク700及び通信ネットワーク700とゲートウェイ(図示せず)を介して接続される無線基地局720を介して互いに通信可能となっている。すなわち、通信ネットワーク700および無線基地局720は、車両800および端末装置510,900,960とサーバ600間の通信を中継する。
【0042】
サーバ600は、図5に示すように、制御装置610と、ストレージ装置620と、を有している。
【0043】
制御装置610は、プロセッサ612と、メモリ614と、通信インターフェース616とを有する。プロセッサ612は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ612は、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。メモリ614は、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。通信インターフェース616は、図5に示す通信I/Fに対応し、制御装置610をサーバ600内のネットワーク、または通信ネットワーク700に接続するためのインターフェース回路を有する。通信インターフェース616は、車両800および端末装置510,900,960と、通信ネットワーク700及び無線基地局720を介して通信可能に構成される。すなわち、通信インターフェース616は、車両800または端末装置510,900,960から無線基地局720及び通信ネットワーク700を介して受信した信号、すなわち非電力使用日、位置情報、買電要求、および決済情報の信号をプロセッサ612へわたす。また、通信インターフェース616は、プロセッサ612から受け取った信号、すなわち回収指令および売電指令の信号を、通信ネットワーク700及び無線基地局720を介して車両800または端末装置900へ送信する。なお、サーバ600と、端末装置510と、端末装置960とは、無線基地局720を介さずに、通信ネットワーク700を介して通信可能に構成されてもよい。
【0044】
ストレージ装置620は、例えば、ハードディスク装置または光記録媒体及びそのアクセス装置を有する。ストレージ装置620には、工場500の非電力使用日、工場500の住所などの各種情報が記憶されている。なお、ストレージ装置620は、プロセッサ612上で実行される処理を実行するためのコンピュータプログラムを記憶してもよい。
【0045】
車両800に搭載されている車両制御システムは、図6に示すように、測位情報受信機810と、車両制御機器820と、無線端末830と、1以上のセンサ840と、ナビゲーション装置850と、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)860と、表示装置870と、スピーカ880と、を有している。これらの構成要素は、コントローラエリアネットワーク(Controller Area Network)、イーサネット(登録商標)といった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。なお、以下では、電子制御装置860を単にECU860と称する。ユーザの端末装置900は、そのハードウェアの機能は図6と同様に構成される。但し、ユーザの端末装置900は、車両制御機器820を含まない。一方、ユーザの端末装置900は、車両制御機器820を含んでもよい。
【0046】
測位情報受信機810は、車両800の現在位置及び姿勢を表す測位情報を取得する。例えば、測位情報受信機810は、GPS(Global Positioning System)受信機とすることができる。測位情報受信機810は、測位情報を受信する度に、取得した測位情報を、時刻情報とともに、車内ネットワークを介してECU860へ出力する。
【0047】
車両制御機器820は、車両制御に関わる各種機器であり、車両800を走行させる駆動源としてのエンジンまたはモータ、操舵装置、制動装置、および電力を蓄える車両用のバッテリを含む。
【0048】
無線端末830は、例えば、アンテナと、無線信号の変調及び復調といった、無線通信に関連する各種の処理を実行する信号処理回路とを有する。そして無線端末830は、無線基地局720からダウンリンクの無線信号を受信し、また、アップリンクの無線信号を無線基地局720へ送信する。すなわち、無線端末830は、無線基地局720から受信したダウンリンクの無線信号から、サーバ600から車両800へ伝送される信号、すなわち回収指令および売電指令を取り出してECU860へわたす。また無線端末830は、ECU860から受け取ったサーバ600へ送信される信号を含むアップリンクの無線信号を生成し、その無線信号を送信する。
【0049】
1以上のセンサ840は、車両制御機器820のモータの電流値、または電圧値を検出するセンサを含む。また、1以上のセンサ840は、バッテリの端子間電流、端子間電圧を検出する電圧センサを含む。
【0050】
ナビゲーション装置850は、車両800の現在地から移動目的地までの走行予定ルートを、ダイクストラ法といった所定の経路探索手法に従って求める。このため、ナビゲーション装置850は、地図情報を記憶するメモリを備えている。ナビゲーション装置850は、回収指令に含まれる回収先の住所、または売電指令に含まれる売電先の住所に基づいて、車両800の現在地から回収先または売電先までの走行予定ルートを求める。なお、地図情報は、ECU860のメモリ864に記憶されていてもよい。
【0051】
ECU860は、プロセッサ862と、メモリ864と、通信インターフェース866とを有する。プロセッサ862は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ862は、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。メモリ864は、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ864には、各種情報が記憶されている。通信インターフェース866は、図6に示す通信I/Fに対応し、ECU860を車内ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。
【0052】
表示装置870は、例えば液晶表示ディスプレイ(LCD)から構成され、メーターパネル、またはダッシュボードの近辺に設けられ、サーバ600から受信した回収指令および売電指令を表示する。また、表示装置870は、ナビゲーション装置850が求めた車両800の現在地から回収先または売電先までの走行予定ルートを表示する。スピーカ880は、サーバ600から受信した回収指令および売電指令を音声で発する。
【0053】
サーバ600の制御装置610のプロセッサ612は、図7に示すように、非電力使用日取得部612aと、位置情報取得部612bと、回収指令送信部612cと、買電要求受信部612dと、売電指令送信部612eと、情報取得部612fと、発電量予測部612gと、優先順位決定部612hと、学習部612iと、決済処理部612jと、を有している。プロセッサ612が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ612上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。つまり、プロセッサ612が有するこれらの各部は、プロセッサ612とこれを機能させるためのプログラム(ソフトウェア)から構成される。また、そのプログラムは、制御装置610のメモリ614または外部から接続される記録媒体に記録されていてもよい。あるいは、プロセッサ612が有するこれらの各部は、プロセッサ612に設けられる専用の演算回路であってもよい。
【0054】
非電力使用日取得部612aは、各工場500の端末装置510から、非電力使用日に関する情報を取得する。非電力使用日は、太陽光発電設備を備える施設、すなわち工場500が太陽光発電による電力を使用しない日である。非電力使用日取得部612aが取得した各工場500の非電力使用日の一覧が図8に示されている。図8に示す非電力使用日の一覧は、制御装置610のメモリ614に記憶される。
【0055】
位置情報取得部612bは、各工場500の端末装置510から各工場500の位置情報、すなわち住所を取得する。
【0056】
回収指令送信部612cは、非電力使用日に蓄電池805を搭載した車両800を、太陽光発電設備を備える施設まで運転させ、非電力使用日に太陽光発電設備が発電した余剰電力を蓄電池805に蓄電して回収させる回収指令を送信する。回収指令送信部612cは、回収指令を車両800またはユーザの端末装置900に送信する。回収指令は、電力の回収先の施設の位置情報、すなわち工場500の住所を含む。
【0057】
買電要求受信部612dは、電力の消費地950から買電要求を受信する。具体的には、買電要求受信部612dは、消費地950の端末装置960から送信された買電要求を受信する。例えば、消費地950に農業用温室が設置されている場合、天気予報に基づいて予測される予想最低気温が予め定めた閾値よりも低いと、温室の温度が想定よりも低下する。このような場合、消費地950の端末装置960は、買電要求をサーバ600に送信する。また、消費地950に蓄電池が設置され、消費地950で蓄電池に蓄電された電力を利用している場合、蓄電池の充電状態SOCが予め定めた閾値よりも低下すると、消費地950の端末装置960は買電要求をサーバ600に送信する。買電要求は、消費地950の位置情報、すなわち住所を含む。
【0058】
売電指令送信部612eは、買電要求に基づいて、車両800を消費地950まで運転させ、蓄電池805に蓄電された電力を消費地950で売電させるための売電指令を送信する。売電指令送信部612eは、売電指令を車両800またはユーザの端末装置900に送信する。売電指令は、消費地950の位置情報、すなわち住所を含む。
【0059】
情報取得部fは、通信ネットワーク700を介して、各車両800の識別情報、各車両800の位置情報、各車両800の蓄電池805が蓄電可能な蓄電容量、および各車両800の蓄電池805のSOCを取得する。また、情報取得部fは、各端末装置900の識別情報、各端末装置900の位置情報を取得する。また、車両800と端末装置900が紐づけられている場合、情報取得部fは、車両800の識別情報に紐づけられた、端末装置900の識別情報を取得する。更に、情報取得部fは、通信ネットワーク700を介して接続された外部のサーバから気象情報を取得する。
【0060】
発電量予測部612gは、太陽光パネル102の発電量を予測する。例えば、発電量予測部612gは、情報取得部210Fが外部のサーバから取得した気象情報に基づいて、太陽光パネル102の発電量を予測する。
【0061】
発電量予測部612gは、太陽光パネル102の発電量を予測するために機械学習された学習済モデルから構成されていてもよい。この場合、学習部210iは、例えば入力値x,x,x,x,xと、入力値x,x,x,x,xに対する教師データyからなる複数のデータセットから学習済モデルを作成する。或る入力値に対して教師データyが求められており、この入力値に対する出力層からの出力値がyであった場合、誤差関数として平方誤差が用いられている場合には、平方誤差Eは、E=(1/2)・(y-y)で求められる。
【0062】
学習部210iは、データセットに含まれる入力値をニューラルネットワークに入力し、得られた出力値yとデータセットに含まれる教師データyから二乗誤差Eを計算する。そして、学習部210iは、複数の学習用のデータセットから得られる平方誤差Eの和を最小化するため、例えば誤差逆伝播法、確率的勾配降下法などの演算を行うことによって、各ノードの重みwおよびバイアスbを算出することで、学習済モデルを作成する。なお、教師データを検出できない場合、学習部210iは、教師無し学習または強化学習により学習済モデルを作成してもよい。
【0063】
学習部210eが発電量予測部612gに相当する学習済モデルを作成する場合、入力値x,x,x,x,xは、一例として、日射量、天候、気温、風力などの気象情報である。また、教師データyは太陽光パネル102の発電量の実績値である。これにより、作成した学習済モデルに日射量、天候、気温、風力などのパラーメータを入力すると、学習済モデルから太陽光パネル102の発電量の予測値が出力される。
【0064】
優先順位決定部612hは、複数の車両800又は端末装置900が存在する場合に、回収指令または売電指令を複数の車両800またはユーザの端末装置900に送信する際の優先順位を決定する。優先順位決定部612hは、回収指令または売電指令の送信先として複数の車両800の候補がある場合に、情報取得部fが取得した蓄電池805が蓄電可能な蓄電容量、蓄電池805のSOCまたは蓄電量に基づいて送信先を決定してもよい。なお、蓄電池805の蓄電量は、蓄電池805が蓄電可能な蓄電容量にSOCを乗算することで求まる。
【0065】
例えば、優先順位決定部612hは、回収指令の送信先として複数の車両800の候補がある場合に、搭載している蓄電池805のSOCまたは蓄電量がより低い車両800を優先的に回収指令の送信先として決定する。また、例えば、優先順位決定部612hは、売電指令の送信先として複数の車両800の候補がある場合に、搭載している蓄電池805のSOCまたは蓄電量がより高い車両800を優先的に売電指令の送信先として決定する。
【0066】
また、優先順位決定部612hは、回収指令または売電指令の送信先として複数の車両800の候補がある場合に、各車両800の位置情報に基づいて送信先を決定してもよい。優先順位決定部612hは、回収指令または売電指令の送信先として複数の端末装置900の候補がある場合に、各端末装置900の位置情報に基づいて送信先を決定してもよい。
【0067】
例えば、優先順位決定部612hは、現在位置が電力を回収する工場500により近い車両800または端末装置900を優先的に回収指令の送信先として決定する。また、例えば、優先順位決定部612hは、現在位置が売電する消費地950により近い車両800または端末装置900を優先的に売電指令の送信先として決定する。
【0068】
優先順位決定部612hは、回収指令または売電指令の送信先として複数の車両800の候補がある場合に、各車両800の蓄電池805が充電可能な充電容量、蓄電池805のSOCまたは蓄電量と、各車両800の位置情報の少なくともいずれかに基づいて送信先を決定してもよい。例えば、優先順位決定部612hは、蓄電池805のSOCが50%以下である車両800の中から、電力を回収する工場500のより近くに位置する車両800を優先的に回収指令の送信先として決定してもよい。より好ましくは、優先順位決定部612hは、工場500と車両800の位置関係、蓄電池805の蓄電容量、および蓄電池805のSOCを正規化して合計することで回収のし易さの指標とし、回収のし易い順に優先順位を定めてもよい。また、例えば、優先順位決定部612hは、蓄電池805のSOCが50%超である車両800の中から、電力を売電する消費地950のより近くに位置する車両800を優先的に売電指令の送信先として決定してもよい。より好ましくは、優先順位決定部612hは、消費地950と車両800の位置関係、蓄電池805の蓄電容量、および蓄電池805のSOCを正規化して合計することで売電のし易さの指標とし、売電のし易い順に優先順位を定めてもよい。
【0069】
更に、優先順位決定部612hは、回収指令または売電指令を送信する際の送信先の優先順位を決定するために機械学習された学習済モデルから構成されてもよい。回収指令を例に挙げて説明すると、学習部210iは、上記と同様に、例えば入力値と、この入力値に対する教師データyからなる複数のデータセットから学習済モデルを作成する。学習部210iが回収指令を送信する際の優先順位を決定するための学習済モデルを作成する場合、入力値x,x,x,x,xは、学習段階で回収指令を送信した時点における、電力回収先の工場500の位置、各車両800の位置、各車両800の蓄電池805が蓄電可能な蓄電容量、および各車両800の蓄電池805のSOCである。また、教師データyは、実際に工場500で電力を回収した車両800についての、回収指令を送信した時点における、位置、蓄電池805の蓄電容量、および蓄電池805のSOCと、、電力回収先の工場500の位置である。好適には、教師データyは、工場500と車両800の位置関係、蓄電容量、およびSOCを正規化して統合し、回収のし易さの指標として表したものであってもよい。これにより、作成した学習済モデルに、回収指令を送信する時点における、各車両800の位置、各車両800の蓄電池805の蓄電容量およびSOC、電力回収先の工場500の位置を入力すると、学習済モデルから教師データyに対応する、回収のし易さを表す指標が出力される。優先順位決定部612hは、回収指令を送信する時点において、各車両800のそれぞれについて同様の指標を算出し、学習済モデルから出力された指標に最も近い順に優先順位を決定する。
【0070】
学習部210iが売電指令を送信する際の優先順位を決定するための学習済モデルを作成する場合も、回収指令の場合と同様に学習済モデルが作成される。この場合、入力値としては、位置情報、蓄電容量、およびSOCに加えて、消費地950が要求する電力量を含めてもよい。これにより、作成した学習済モデルに、売電指令を送信する時点における、各車両800の位置情報、蓄電容量、SOC、および消費地950が要求する電力量を入力すると、学習済モデルから教師データyに対応する売電のし易さを表す指標が出力される。優先順位決定部612hは、回収指令と同様に、この指標に基づいて優先順位を決定する。
【0071】
回収指令送信部612cは、複数の車両800に回収指令を送信する際に、優先順位決定部612hが決定した優先順位に従い、優先順位の上位の所定数の車両800に対して回収指令を送信してもよい。この場合に、回収指令送信部612cは、非電力使用日に制御システム100が発電する電力量と、回収指令を送信する車両800の蓄電池805の残容量とを比較する。そして、回収指令送信部612cは、回収指令を送信する車両800の蓄電池805の残容量の合計が非電力使用日に制御システム100が発電する電力量より多くなるように上記所定数を決定し、これら所定数の車両800に回収指令を送信してもよい。これにより、回収に向かった全ての車両800の蓄電池805に蓄電することが可能となり、回収に向かったにも関わらず蓄電池805に蓄電ができない車両800が発生してしまうことが抑制される。なお、非電力使用日に制御システム100が発電する電力量は、発電量予測部612gにより予測される。
【0072】
決済処理部612jは、電力を回収した車両800、またはユーザの端末装置900から決済情報を受信し、決済に必要な条件が満たされると、決済処理を行う。これにより、車両800のユーザによる、回収した電力の購入手続きが完了する。なお、決済処理は、余剰電力を一般の人が回収する場合のみ行われるものであってもよい。すなわち、発電事業者300が車両800および蓄電池805を所有し、発電事業者300が電力を回収する場合、回収した電力は引き続き発電事業者300が所有することになるため、決済処理は行われなくてもよい。
【0073】
車両8009ECU860のプロセッサ862は、車載された端末装置の一態様である。プロセッサ862は、図9に示すように、回収指令受信部862aと、売電指令受信部862bと、表示処理部862cと、車両制御部862dと、決済情報送信部862eと、を有している。プロセッサ862が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ862上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。つまり、プロセッサ862が有するこれらの各部は、プロセッサ862とこれを機能させるためのプログラム(ソフトウェア)から構成される。また、そのプログラムは、ECU860のメモリ864または外部から接続される記録媒体に記録されていてもよい。あるいは、プロセッサ862が有するこれらの各部は、プロセッサ862に設けられる専用の演算回路であってもよい。なお、端末装置900のプロセッサも図9に示すECU860のプロセッサ862と同様に構成されるが、端末装置900のプロセッサは車両制御部862dを含まない。
【0074】
回収指令受信部862aは、太陽光発電設備を備える施設が太陽光発電による電力を使用しない非電力使用日に、蓄電池805を搭載した車両800を施設まで運転させ、非電力使用日に太陽光発電設備が発電した余剰電力を蓄電池805に回収させる回収指令を、サーバ600から受信する。
【0075】
売電指令受信部862bは、電力の消費地950からの買電要求に基づいて車両800を消費地950まで運転させ、蓄電池805に蓄電された電力を消費地950で売電させるための売電指令を、サーバ600から受信する。
【0076】
表示処理部862cは、回収指令または売電指令を表示装置870に表示させるための処理を行う。図10に回収指令の表示の一例を示すように、表示装置870には、工場Aが非電力使用日であること、蓄電池805を搭載した車両800を運転して工場Aに向かい、電力回収を促すこと、工場Aの住所、などが表示される。また、図11に売電指令の表示の一例を示すように、表示装置870には、電力を必要としている消費地があること、蓄電池805を搭載した車両800を運転して消費地に向かい、売電を促すこと、消費地の住所、などが表示される。したがって、これらの表示を視認した車両800の運転者は、車両800を工場Aまで運転して電力回収をすることができ、また車両800を消費地まで運転して蓄電池805に蓄電された電力を売電することができる。
【0077】
車両制御部862dは、回収指令に基づいて車両制御機器820を制御し、車両800を非電力使用日の工場500まで運転する。また、車両制御部862dは、売電指令に基づいて車両制御機器820を制御し、車両800を消費地950まで運転する。この際、車両制御部862dは、ナビゲーション装置850が求めた回収先の工場500または売電先の消費地950までの走行予定ルートにしたがって車両800を工場500または消費地950まで運転する。
【0078】
決済情報送信部862eは、車両800が電力を回収すると、決済情報をサーバ600に送信する。決済情報には、車両800の識別情報、ユーザの端末装置900の識別情報、回収した電力量、ユーザの住所および氏名、または決済のためのクレジットカード情報を含むものであってよい。サーバ600が決済情報を受信すると、サーバ600の決済処理部612jにより決済処理が行われる。
【0079】
また、決済情報送信部862eは、車両800が消費地で電力を買電すると、決済情報を消費地の端末装置960に送信する。決済情報には、車両800の識別情報、ユーザの端末装置900の識別情報、売電代金の振込先、ユーザの住所および氏名、または売電した電力量を含むものであってよい。端末装置960が決済情報を受信し、売電代金がユーザの口座に振り込まれると、決済が完了する。
【0080】
以上のサーバ600のプロセッサ612およびECU860のプロセッサ862の処理の時系列的な流れを図12に基づいて説明する。先ず、プロセッサ612の非電力使用日取得部612aが各工場500の端末装置510から非電力使用日を取得する(ステップS10)。次に、位置情報取得部612bが各工場500の端末装置510から各工場500の位置情報を取得する(ステップS12)。次に、非電力使用日であるか否かが判定され(ステップS14)、非電力使用日の場合、回収指令送信部612cが、各工場500の非電力使用日に太陽光発電により発電された電力を回収させるための回収指令を送信する(ステップS16)。
【0081】
次に、プロセッサ862の回収指令受信部862aが回収指令を受信したか否かを判定し(ステップS20)、回収指令受信部862aが回収指令を受信した場合、表示処理部862cが、回収指令を表示装置870に表示させるための処理を行う(ステップS22)。これにより、車両800の運転者は、表示装置870に表示された回収指令に基づいて、車両800を非電力使用日の工場500まで運転する。または、ステップS22では、車両制御部862dが、回収指令に基づいて車両800を非電力使用日の工場500まで自動運転させる。
【0082】
また、消費地950から買電要求が出された場合の処理の時系列的な流れを図13に基づいて説明する。先ず、消費地950の端末装置960が買電要求をサーバ600に送信する(ステップS30)。次に、サーバ600のプロセッサ612の買電要求受信部612dが買電要求を受信したか否かを判定し(ステップS40)、買電要求を受信した場合、売電指令送信部612eが売電指令を送信する(ステップS42)。
【0083】
次に、ECU860のプロセッサ862の売電指令受信部862bが売電指令を受信したか否かを判定し(ステップS50)、売電指令を受信した場合は、表示処理部862cが、売電指令を表示装置870に表示させるための処理を行う(ステップS52)。これにより、車両800の運転者は、表示装置870に表示された売電指令に基づいて、車両800を消費地950まで運転する。または、ステップS52では、車両制御部862dが、売電指令に基づいて車両800を消費地950まで自動運転させる。
【0084】
以上説明したように本実施形態の電力回収システムによれば、工場500の非電力使用日に蓄電池805を搭載した車両800が工場500に運転されて太陽光発電による電力が回収される。したがって、非電力使用日に太陽光発電による電力が無駄に廃棄されることが抑制される。非電力使用日に発電された電力を蓄電する蓄電池を工場に設ける必要がなく、また工場500から系統に電力を供給する設備を設ける必要がないため、電力回収システムの導入コストが抑制される。
【符号の説明】
【0085】
100 制御システム
102 太陽光パネル
300 発電事業者
350 需要家
400 電力会社
500 工場
510,900,960 端末装置
600 サーバ
610 制御装置
612,862 プロセッサ
612a 非電力使用日取得部
612b 位置情報取得部
612c 回収指令送信部
612d 買電要求受信部
612e 売電指令送信部
612f 情報取得部
612g 発電量予測部
612h 優先順位決定部
612i 学習部
612j 決済処理部
614,864 メモリ
616,866 通信インターフェース
620 ストレージ装置
700 通信ネットワーク
720 無線基地局
800 車両
805 蓄電池
810 測位情報受信機
820 車両制御機器
830 無線端末
840 センサ
850 ナビゲーション装置
860 電子制御装置
862a 回収指令受信部
862b 売電指令受信部
862c 表示処理部
862d 車両制御部
862e 決済情報送信部
870 表示装置
880 スピーカ
950 消費地
1000 電力回収システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13