(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025030568
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】位相同期装置、通信機器及び位相同期方法
(51)【国際特許分類】
H03L 7/085 20060101AFI20250228BHJP
【FI】
H03L7/085
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023135977
(22)【出願日】2023-08-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2025-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 康弘
(72)【発明者】
【氏名】増子 英克
【テーマコード(参考)】
5J106
【Fターム(参考)】
5J106AA05
5J106CC02
5J106CC21
5J106CC41
5J106CC52
5J106DD13
5J106GG04
5J106HH02
5J106JJ02
5J106KK06
5J106KK25
(57)【要約】
【課題】 出力クロック信号におけるWanderの発生を抑制できる位相同期装置等を提供する。
【解決手段】 本開示の一態様に係る位相同期装置は、リファレンスクロック信号が分周された分周リファレンスクロック信号とフィードバックされた出力クロック信号が分周された出力分周信号との位相の比較を行う位相比較部と、前記位相の比較の結果が示す値の所定値未満の部分である非主要部分の変動の範囲内の乱数値を生成する乱数生成部と、前記非主要部分が前記乱数値よりも大きい場合、前記位相の比較の結果が示す前記値の所定値以上の部分である主要部分に前記所定値を加算し、前記非主要部分が前記乱数値以下である場合、前記位相の比較の結果の前記主要部分に前記所定値を加算しない、加算処理を行う加算部と、デューティーを表す値として前記加算処理が行われた前記主要部分の値を用いて生成された矩形波を使用して生成された前記出力クロック信号を出力する出力部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リファレンスクロック信号が分周された分周リファレンスクロック信号とフィードバックされた出力クロック信号が分周された出力分周信号との位相の比較を行う位相比較部と、
前記位相の比較の結果が示す値の所定値未満の部分である非主要部分の変動の範囲内の乱数値を生成する乱数生成部と、
前記非主要部分が前記乱数値よりも大きい場合、前記位相の比較の結果が示す前記値の所定値以上の部分である主要部分に前記所定値を加算し、前記非主要部分が前記乱数値以下である場合、前記位相の比較の結果の前記主要部分に前記所定値を加算しない、加算処理を行う加算部と、
デューティーを表す値として前記加算処理が行われた前記主要部分の値を用いて生成された矩形波を使用して生成された前記出力クロック信号を出力する出力部と、
を備える位相同期装置。
【請求項2】
前記位相比較部は、前記位相の比較の結果として、前記分周リファレンスクロック信号と前記出力分周信号との位相差を算出する
請求項1に記載の位相同期装置。
【請求項3】
前記非主要部分は、前記位相差を表す値の前記所定値未満の部分であり、
前記主要部分は、前記位相差を表す値の前記所定値以上の部分である
請求項2に記載の位相同期装置。
【請求項4】
前記非主要部分は、前記位相差を表す値を表すビット列の所定ビットよりも下位のビットが表す値であり、
前記主要部分は、前記位相差を表す値を表すビット列の前記所定ビットと当該所定ビットより上位のビットが表す値である
請求項2に記載の位相同期装置。
【請求項5】
前記非主要部分は、前記位相差を表す値の1未満の部分であり、
前記主要部分は、前記位相差を表す値の整数の部分である
請求項2に記載の位相同期装置。
【請求項6】
前記加算処理が行われた前記主要部分の値を、前記デューティーを表す値として使用して、前記矩形波を生成する矩形波生成部
をさらに備える請求項1又は2に記載の位相同期装置。
【請求項7】
前記矩形波生成部は、前記加算処理が行われた前記主要部分の値を、前記矩形波の2つのレベルのうち高い方のレベルが継続する時間を表す値として使用して、前記矩形波を生成する
請求項6に記載の位相同期装置。
【請求項8】
前記リファレンスクロック信号を受信する受信部と、
前記リファレンスクロック信号を分周することによって前記分周リファレンスクロック信号を生成する第1分周部と、
前記フィードバックされた前記出力クロック信号を分周することによって前記出力分周信号を生成する第2分周部と、
前記非主要部分が前記乱数値以下であるか否かを判定する補正判定部と、
前記加算処理が行われた前記主要部分の値を、前記デューティーを表す値として使用して、前記矩形波を生成する矩形波生成部と、
前記矩形波に対してローパスフィルタを適用することによって、前記矩形波から電圧信号を生成するローパスフィルタ部と、
前記電圧信号が示す電圧に応じた周波数の前記出力クロック信号を生成する電圧制御発振部と、
をさらに備える請求項1又は2に記載の位相同期装置。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の位相同期装置を含み、
前記位相同期装置は、GPS(Global Positioning System)受信機からのクロック信号を前記リファレンスクロック信号として受信し、
前記出力クロック信号をクロック信号として使用する
通信機器。
【請求項10】
リファレンスクロック信号が分周された分周リファレンスクロック信号とフィードバックされた出力クロック信号が分周された出力分周信号との位相の比較を行い、
前記位相の比較の結果が示す値の所定値未満の部分である非主要部分の変動の範囲内の乱数値を生成し、
前記非主要部分が前記乱数値よりも大きい場合、前記位相の比較の結果が示す前記値の所定値以上の部分である主要部分に前記所定値を加算し、前記非主要部分が前記乱数値以下である場合、前記位相の比較の結果の前記主要部分に前記所定値を加算しない、加算処理を行い、
デューティーを表す値として前記加算処理が行われた前記主要部分の値を用いて生成された矩形波を使用して生成された前記出力クロック信号を出力する、
位相同期方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、位相同期装置、通信機器及び位相同期方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルPLL(Phase Locked Loop;位相同期ループ)回路では、一般に、マスタークロックとスレーブクロックとの位相差を、分周されたクロックのカウントされたパルス数によって表すことがある。それによって、様々な問題が生じる可能性がある。
【0003】
特許文献1には、上述のパルス数を表す位相差検出値の範囲制限によって、引き込み動作が影響されないデジタルPLL回路を開示している。特許文献1のPLL回路の位相差検出器は、長さが2πの範囲内の値をとる位相差検出値を出力する。補正部は、位相差検出値を範囲に限定されない位相値に補正する。スレーブクロック生成部は、補正部の出力する位相値に応じてスレーブクロックを生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デジタルPLL回路では、位相差の比較の結果に従って、矩形波のDUTY(使用)が制御される。このDUTYは、例えば、矩形波においてHighの状態が継続する時間を表す。しかし、位相比較器における位相差のデジタル演算から、デジタル演算の結果を用いたDUTY制御による矩形波の生成の過程において、デジタル誤差が発生する。
【0006】
具体的には、位相差を表す値は、例えば、上述のパルス数によって表される。そして、位相差がパルスの長さによって割り切れず、位相差に1パルスの長さの倍数の部分と、1パルスに満たない端数部分とが含まれている場合、端数部分は、例えば切り捨てられ、DUTY制御に使用されない。これにより、位相差出力器の、上述のマスタークロック(言い換えると、リファレンスクロック信号)とスレーブクロック(言い換えると、出力クロック信号)との位相差を表す出力は、必ずしも一定にならない。言い換えると、端数のプラスの誤差が蓄積され、蓄積された誤差が1パルスの長さを超えた場合、位相差は、1増加する。そして、端数のマイナスの誤差が加算されることによって誤差が減少し、蓄積された誤差が1パルスの長さを下回った場合、位相差は、1減少する。このように、位相差の増加と減少が緩やかに繰り返される。これにより、出力クロック信号にWanderが発生する。このWanderは、出力クロック信号の矩形波がHighの状態の継続時間が、周期的に増加と減少とを繰り返すことである。
【0007】
特許文献1の技術は、位相差検出値の範囲制限による引き込み動作の影響を抑制することができる。しかし、特許文献1の技術では、スレーブクロックの生成に、位相差のパルス数がそのまま使用される。従って、特許文献1の技術は、出力クロック信号におけるWanderの発生を抑制することはできない。
【0008】
本開示の目的の1つは、出力クロック信号におけるWanderの発生を抑制できる位相同期装置、通信機器及び位相同期方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る位相同期装置は、リファレンスクロック信号が分周された分周リファレンスクロック信号とフィードバックされた出力クロック信号が分周された出力分周信号との位相の比較を行う位相比較部と、前記位相の比較の結果が示す値の所定値未満の部分である非主要部分の変動の範囲内の乱数値を生成する乱数生成部と、前記非主要部分が前記乱数値よりも大きい場合、前記位相の比較の結果が示す前記値の所定値以上の部分である主要部分に前記所定値を加算し、前記非主要部分が前記乱数値以下である場合、前記位相の比較の結果の前記主要部分に前記所定値を加算しない、加算処理を行う加算部と、デューティーを表す値として前記加算処理が行われた前記主要部分の値を用いて生成された矩形波を使用して生成された前記出力クロック信号を出力する出力部と、を備える。
【0010】
本開示の一態様に係る位相同期方法は、リファレンスクロック信号が分周された分周リファレンスクロック信号とフィードバックされた出力クロック信号が分周された出力分周信号との位相の比較を行い、前記位相の比較の結果が示す値の所定値未満の部分である非主要部分の変動の範囲内の乱数値を生成し、前記非主要部分が前記乱数値よりも大きい場合、前記位相の比較の結果が示す前記値の所定値以上の部分である主要部分に前記所定値を加算し、前記非主要部分が前記乱数値以下である場合、前記位相の比較の結果の前記主要部分に前記所定値を加算しない、加算処理を行い、デューティーを表す値として前記加算処理が行われた前記主要部分の値を用いて生成された矩形波を使用して生成された前記出力クロック信号を出力する。
【発明の効果】
【0011】
本開示には、出力クロック信号におけるWanderの発生を抑制できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係るデジタル位相同期回路の構成の例を表す図である。
【
図2】
図2は、本開示の比較例に係るデジタル位相同期回路の構成の例を表す図である。
【
図3】
図3は、本開示の比較例に係るデジタル位相同期回路における信号を模式的に表す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係る通信システムの構成の例を表すブロック図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態に係るデジタル位相同期回路における信号を模式的に表す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態に係る位相同期装置の構成の例を表すブロック図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態に係る位相同期装置の動作の例を表すフローチャートである。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態に係る位相同期装置の構成の例を表すブロック図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態に係る位相同期装置の動作の例を表すフローチャートである。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態に係る位相同期装置の動作の例を表すフローチャートである。
【
図11】
図11は、本開示の実施形態に係る位相同期装置の加算処理の動作を表すフローチャートである。
【
図12】
図12は、本開示の実施形態に係る位相同期装置を実現することができる、コンピュータのハードウェア構成の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本開示の実施形態を説明する前に、本開示の比較例について図面を使用して詳細に説明する。
【0014】
<比較例>
図2は、本開示の比較例に係るデジタル位相同期回路の構成の例を表す図である。
【0015】
以下では、本開示の比較例に係るデジタル位相同期回路(以下、デジタルPLL回路とも表記)について、
図2を使用して説明する。
【0016】
図2に示す例では、本比較例に係るデジタルPLL回路は、2つの分周器1と、位相比較器2と、矩形波生成器3と、アナログLPF(Low-Pass Filter)4と、VCO(Voltage-Controlled Oscilator;電圧制御発振器)5とを含む。
【0017】
2つの分周器1には、それぞれ、追従の対象であるリファレンスクロック信号(以下、リファレンスクロックとも表記)と、出力クロック信号(以下、出力クロックとも表記)とが入力される。リファレンスクロックが入力された分周器1は、入力されたリファレンスクロックの分周を行うことによって、リファレンスクロックが分周された分周信号である分周リファレンスクロック信号を生成する。出力クロックが入力された分周器1は、入力された出力クロック信号の分周を行ことによって、出力クロック信号が分周された分周信号である分周出力クロック信号を生成する。2つの分周器1の分周比は同じである。
【0018】
位相比較器2は、分周リファレンスクロック信号の位相と、分周出力クロック信号の間の位相とを比較する。具体的には、位相比較器2は、分周リファレンスクロック信号と、分周出力クロック信号との間の位相差を、デジタル演算によって算出する。位相比較器2は、位相差として、分周リファレンスクロック信号の位相と、分周出力クロック信号の間の位相との間の実数によって表される位相差を丸めることによって整数とした位相差を出力する。位相比較器2による位相差を丸める処理は、例えば、切り捨て、四捨五入、切り上げのうちあらかじめ定められたいずれかの処理である。
【0019】
矩形波生成器3は、算出された位相差から、矩形波の信号である矩形信号を生成する。具体的には、矩形波生成器3は、DUTY(デューティーとも表記)が、算出された位相差に応じた値である矩形波を生成する。DUTYは、矩形波において信号の値がHighである状態が継続する時間を示す値である。DUTYの値は、例えば、位相差の値に所定の係数を掛けた値であってよい。
【0020】
アナログLPF4は、生成された矩形信号の、高周波成分を抑制する平滑化を行う。これにより、矩形信号は電圧に変換される。
【0021】
VCO5は、アナログLPF4から出力された信号から、出力クロック信号として、その信号の電圧の高さに応じた周波数のクロック信号を生成する。
【0022】
出力クロックをリファレンスクロックに追従させるために、矩形波生成器3は、位相の比較の結果である位相差を用いて、矩形波のDUTYを制御する。位相差の単位は、適宜定められていてよい。例えば、「度」又は「ラジアン」等の実数倍が、本開示の説明における位相差の単位(すなわち、本開示の説明において1によって表される位相差)であってもよい。この位相差として、例えば、位相差の整数の部分が使用される。この場合の位相差は、例えば、実際は整数に限られない位相差を丸めた整数の位相差である。言い換えると、1に満たない端数部分は切り捨てられた位相差である。言い換えると、位相の比較の結果である位相差は、位相差を丸めることによって生じる1に満たない誤差(すなわちデジタル誤差)を含む位相差である。このデジタル誤差は、例えば、位相差を整数とみなすことによって、整数とみなされた位相差と実際の位相差との間に生じる誤差である。
【0023】
位相比較器2のデジタル演算による結果(すなわち位相差)を使用したDUTY制御によって矩形波生成器3が矩形波を生成する過程において、デジタル演算によって発生したデジタル誤差による、矩形波への影響が生じる。実際の位相差と出力される位相差との差(すなわち、上述のデジタル誤差)は、蓄積される。言い換えると、次に算出されるデジタル誤差に加算される。実際の位相差が、位相比較器2によって出力される整数の位相差よりも大きい場合、実際のデジタル誤差は増加する。増加したデジタル誤差の値が1を超えると、出力される位相差は1増加する。実際の位相差が、位相比較器2によって出力される整数の位相差よりも小さい場合、デジタル誤差は減少する。減少したデジタル誤差が0を下回ると、出力される位相差は1減少する。このようにして、位相差の増加と減少が緩やかに繰り返される。これにより、出力クロック信号にWanderが発生する。このWanderは、出力クロック信号の周波数が高い状態と低い状態とを周期的に繰り返すことである。
【0024】
図3は、本開示の比較例に係るデジタル位相同期回路における信号を模式的に表す図である。
【0025】
図3の「リファレンスクロック(分周器出力)」は、分周リファレンスクロック信号の波形を表す。「出力クロック(分周器出力)」は、分周出力クロック信号の波形を表す。「位相比較器出力(DUTY)制御」は、位相比較器2によって出力される、位相差を表す値である。「矩形波」は、矩形波生成器3によって出力される矩形波の波形である。LPF出力は、アナログLPF4から出力される信号の電圧の推移を表す。LPF出力は、矩形波生成器3が出力する矩形波のDUTYが増加すると、アナログLPF4の平滑化によって、ゆっくり増加する。また、LPF出力は、矩形波生成器3が出力する矩形波のDUTYが減少すると、アナログLPF4の平滑化によって、ゆっくり減少する。これにより、出力クロック信号にWanderが発生する。
【0026】
図3に示す例では、位相差が8である場合の周波数の出力クロック信号が出力される時間帯と、位相差の出力クロック信号が9である場合の周波数が出力される時間帯とが繰り返される、Wanderが発生している。
【0027】
<第1の実施形態>
次に、本開示の第1の実施形態について、図面を使用して詳細に説明する。
【0028】
<構成>
図1は、本開示の実施形態に係るデジタル位相同期回路の構成の例を表す図である。
【0029】
以下では、本開示の第1の実施形態に係るデジタル位相同期回路の構成について、
図1を使用して説明する。
【0030】
図1に示す例では、デジタルPLL回路は、2つの分周器10と、位相比較器20と、矩形波生成器30と、アナログLPF40と、VCO50と、を含む。デジタルPLL回路は、さらに、位相比較器20と矩形波生成器30との間に、乱数発生器60と、補正判定器70と、加算器80とを含む。
図1において、「+1」によって示されている部分が、加算器80である。
【0031】
2つの分周器10には、それぞれ、追従の対象であるリファレンスクロック信号(上述のように、リファレンスクロックとも表記)と、出力クロック信号(上述のように、出力クロックとも表記)とが入力される。リファレンスクロックが入力された分周器10は、入力されたリファレンスクロックの分周を行うことによって、リファレンスクロックが分周された分周信号である分周リファレンスクロック信号を生成する。出力クロックが入力された分周器10は、入力された出力クロック信号の分周を行うことによって、出力クロック信号が分周された分周信号である分周出力クロック信号を生成する。
【0032】
位相比較器20は、分周リファレンスクロック信号の位相と、分周出力クロック信号の間の位相とを比較する。具体的には、位相比較器20は、分周リファレンスクロック信号と、分周出力クロック信号との間の位相差を、デジタル演算によって算出する。位相比較器20は、位相差のうち、矩形波の生成に使用される部分(以下、主要部分とも表記)を、加算器80に出力する。位相比較器20は、位相差のうち、矩形波の生成に使用されない部分(以下、非主要部分とも表記)を、補正判定器70に出力する。位相比較器20によって算出される位相差の値は、主要部分の値と非主要部分の値との和によって表される。
【0033】
主要部分は、例えば、位相差の値を表す所定ビット長のビット列の、上位の所定ビット数によって表される値である。言い換えると、主要部分は、上位の所定ビット数のビット列が、位相差の値を表すビット列における上位の所定ビット数のビット列と同じであり、上位の所定ビット数を除く下位のビット列の各ビットの値が0である、所定ビット長のビット列によって表される。さらに言い換えると、主要部分は、位相差の値を表すビット列の所定ビット(上位から上述の所定ビット数番目のビット)以上のビット(所定ビット及び所定ビットよりも上位のビット)によって表される値である。
【0034】
非主要部分は、例えば、位相差の値を表す所定ビット長のビット列の、上位の所定ビット数を除く下位のビット列によって表される値である。言い換えると、非主要部分は、上位の所定ビット数のビット列の各ビットの値が0であり、上位の所定ビット数を除く下位のビット列が、位相差の値を表すビット列における下位のビット列と同じである、所定ビット長のビット列によって表される。さらに言い換えると、非主要部分は、位相差の値を表すビット列の所定ビット(上位から上述の所定ビット数番目のビット)よりも下位のビットによって表される値である。
【0035】
さらに言い換えると、主要部分は、位相差の値の所定値以上の部分である。そして、非主要部分は、位相差の値の所定値未満の部分である。この所定値は、例えば、上位から所定ビット数番目のビットが1であり、他のビットが0である、所定ビット長のビット列によって表される値である。この所定値は、例えば、矩形波生成器30が生成する矩形波のDUTYの単位に対応する。DUTYの単位は、DUTYの値の変化の最小値である。例えば、DUTYの値の単位が1である場合、位相差の値が所定値変化すると、DUTYの値が1変化する。
【0036】
位相差を表すビット列が、固定小数点数によって表されている場合、主要部分は、整数の部分である。この場合、非主要部分は、小数の部分である。そして、この場合、上述の所定値は、1である。この所定値を、以下では、加算値とも表記する。
【0037】
乱数発生器60は、非主要部分の値の可変範囲(言い換えると、非主要部分の値が取りうる値の範囲)と同じ範囲の乱数を発生する。乱数発生器60は、上述の乱数として、疑似乱数を発生してもよい。乱数発生器60が乱数を発生する頻度は、例えば、位相比較器20が位相の比較を行う(すなわち、位相差を算出する頻度)と同じでよい。乱数発生器60が乱数を発生する頻度は、例えば、位相比較器20が位相の比較を行う(すなわち、位相差を算出する頻度)よりも高い頻度であってもよい。乱数発生器60は、発生した乱数(具体的には、乱数の値を表すデータ)を、補正判定器70に出力する。
【0038】
補正判定器70は、乱数発生器60が発生した乱数(すなわち乱数の値)と、位相比較器20から出力された、位相差の非主要部分(具体的には、非主要部分の値)とを比較する。補正判定器70は、乱数の値よりも非主要部分が大きい場合、加算器80が、位相差の主要部分(すなわち、主要部分が表す値)に加算値を加算するように制御する。補正判定器70は、位相差の非主要部分が乱数の値以下である場合、加算器80が、位相差の主要部分(すなわち、主要部分が表す値)に加算値を加算しないように制御する。
【0039】
加算器80は、補正判定器70の制御に従って、非主要部分が乱数の値よりも大きい場合、位相差の主要部分(すなわち、主要部分が表す値)に上述の所定値(すなわち、加算値)を加算する。主要部分が位相差の整数部分であり、非主要部分が位相差の小数部分である場合、この加算値は、1である。この場合、加算器80は、加算値が加算された位相差の主要部分(すなわち、位相差の主要部分と加算値との和を表す値)を示す信号を矩形波生成器30に出力する。加算器80は、補正判定器70の制御に従って、位相差の非主要部分が乱数の値以下である場合、位相差の主要部分(すなわち、主要部分が表す値)に加算値を加算しない。この場合、加算器80は、位相差の主要部分(すなわち、位相差の主要部分の値)を示す信号を矩形波生成器30に出力する。
【0040】
矩形波生成器30は、加算器80が出力する位相差(補正位相差とも表記)の値から、矩形波の信号である矩形信号を生成する。上述のように、加算器80が出力する位相差(すなわち、補正位相差)の値は、非主要部分が乱数の値よりも大きい場合、加算値が加算された位相差の主要部分(すなわち、位相比較器20によって出力された位相差の主要部分と、加算値と、の和を表す値)である。加算器80が出力する位相差の値は、位相差の非主要部分が乱数の値以下である場合、位相差の主要部分(すなわち、位相比較器20によって出力された位相差の主要部分)の値である。
【0041】
具体的には、矩形波生成器30は、DUTY(デューティーとも表記)が、加算器80から出力された位相差の値に応じた値である矩形波を生成する。上述のようにDUTYは、矩形波において信号の値がHighである状態が継続する時間を示す値である。本実施形態では、DUTYの値は、例えば、加算器80が出力する位相差(すなわち、補正位相差)の値に所定の係数を掛けた値であってよい。
【0042】
アナログLPF40は、生成された矩形信号の、高周波成分を抑制する平滑化を行う。これにより、矩形信号は電圧に変換される。
【0043】
VCO50は、アナログLPF40から出力された信号から、出力クロック信号として、その信号の電圧の高さに応じた周波数のクロック信号を生成する。
【0044】
以上の処理によって、位相比較器20によって生成される位相差の主要部分に加算値が加算される確率は、上述の所定値(すなわち、加算値)に対する位相差の非主要部分(例えば位相差の小数部分)の値の比となる。非主要部分が位相差の小数部分である場合、加算値は1である。そして、この確率は、1である加算値に対する、位相差の非主要部分の値の比、すなわち、位相差の非主要部分の値となる。アナログLPF40へ入力される矩形波のDUTYは、平均すると、上述の所定値(すなわち、加算値。例えば1)に対する位相差の非主要部分(例えば位相差の小数部分)の値の比の割合でシフトする。この場合の、アナログLPF40へ入力される矩形波のDUTYがシフトするとは、矩形波のDUTYが、位相差の主要部分によって定まるDUTYから、位相差の主要部分と加算値との和によって定まるDUTYに変化することである。そして、アナログLPF40の出力は、平滑化によって、位相差の値(すなわち、位相差の主要部分と非主要部分との和)によって定まる電圧となる。
【0045】
図5は、本開示の実施形態に係るデジタル位相同期回路における信号を模式的に表す図である。
【0046】
図5のリファレンスクロック(分周器出力)は、分周リファレンスクロック信号の波形を表す。出力クロック(分周器出力)は、分周出力クロック信号の波形を表す。位相比較器出力(DUTY)制御は、位相比較器20によって出力される、位相差を表す値である。矩形波は、矩形波生成器30によって出力される矩形波の波形である。LPF出力は、アナログLPF40から出力される信号の電圧の推移を表す。
図5に示す例では、LPF出力は、アナログLPF40の平滑化によって、位相差の値(すなわち、位相差の主要部分と非主要部分との和)によって定まる電圧となっている。
図5に示す例では、出力クロック信号にWanderは発生していない。
【0047】
<効果>
以上で説明した本実施形態には、出力クロック信号におけるWanderの発生を抑制できるという効果がある。その理由は、加算器80が、非主要部分が乱数の値よりも大きい場合、位相差の主要部分に加算値を加算し、位相差の非主要部分が乱数の値以下である場合、位相差の主要部分に加算値を加算しないからである。これにより、アナログLPF40の出力が、出力クロック信号の連続する複数のパルスのタイミングでシフトする可能性が低下する。アナログLPF40の出力は、平滑化によって、おおむね、主要部分と非主要部分との和に対する電圧になる。そして、VCO50によって出力されるクロック信号の周波数が、連続する複数のパルスで基本周波数よりも高い周波数になることが抑制される。この基本周波数は、矩形波生成器30に入力される位相差の値が、位相差の主要部分の値である場合の、出力クロック信号の周波数である。言い換えると、出力クロック信号におけるWanderの発生が抑制される。
【0048】
<第1の実施形態の変形例>
図4は、本開示の実施形態に係る通信システムの構成の例を表すブロック図である。
【0049】
図4に示す通信システムは、GPS(Global Positioning System)受信機101と、通信機器102とを含む。通信機器102は、デジタルPLL回路103と、信号処理回路部104とを含む。デジタルPLL回路103は、第1の実施形態に係るデジタルPLL回路である。
【0050】
GPS受信機101は、クロック信号を、通信機器102のデジタルPLL回路103に出力する。
【0051】
デジタルPLL回路103は、リファレンスクロック信号として、GPS受信機101からのクロック信号を受け取る。デジタルPLL回路103は、出力クロック信号を、信号処理回路部104に出力する。
【0052】
信号処理回路部104は、デジタルPLL回路103からの出力クロック信号をクロック信号として受信し、受け取ったクロック信号を使用した、あらかじめ定められている信号処理を行う。
【0053】
<第2の実施形態>
以下では、本開示の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態の主要部を表す。
【0054】
<構成>
図6は、本開示の実施形態に係る位相同期装置の構成の例を表すブロック図である。
図6の位相同期装置は、例えばデジタルPLL回路(位相同期回路)である。
【0055】
まず、本開示の第2の実施形態に係る位相同期装置について、
図6を使用して説明する。本実施形態の位相同期装置は、デジタル位相同期回路(すなわち、デジタルPLL回路)として実現される。
【0056】
図6に示す例では、位相同期装置100Aは、位相比較部120と、乱数発生部160と、加算部180と、出力部192と、を備える。
【0057】
位相比較部120は、リファレンスクロック信号が分周された分周リファレンスクロック信号とフィードバックされた出力クロック信号が分周された出力分周信号との位相の比較を行う。
【0058】
乱数発生部160は、前記位相の比較の結果が示す値の所定値未満の部分である非主要部分の変動の範囲内の乱数の値(すなわち乱数値)を生成する。
【0059】
加算部180は、前記非主要部分が前記乱数値よりも大きい場合、前記位相の比較の結果が示す前記値の所定値以上の部分である主要部分に所定数を加算し、前記非主要部分が前記乱数値以下である場合、前記位相の比較の結果の前記主要部分に前記所定数を加算しない、加算処理を行う。
【0060】
出力部192は、デューティーを表す値として前記加算処理が行われた前記主要部分の値を使用して生成された矩形波を使用して生成された前記出力クロック信号を出力する。出力クロック信号を生成する方法は、第1の実施形態における出力クロック信号を生成する方法と同じである。
【0061】
本実施形態の位相比較部120、乱数発生部160、及び、加算部180は、それぞれ、第1の実施形態の位相比較器20、乱数発生器60、及び、加算器80と同じである。本実施形態の位相比較部120、乱数発生部160、及び、加算部180は、それぞれ、第1の実施形態の位相比較器20、乱数発生器60、及び、加算器80と同様に動作する。本実施形態の出力部192は、第1の実施形態のVCO50が出力信号を出力する信号線に対応する。
【0062】
<動作>
図7は、本開示の実施形態に係る位相同期装置の動作の例を表すフローチャートである。
【0063】
以下では、本実施形態に係る位相同期装置100Aの動作について、
図7を使用して説明する。
【0064】
図7に示す例では、位相比較部120が、分周リファレンスクロック信号と出力分周信号と位相の比較を行う(ステップS11)。次に、乱数発生部160が、位相の比較の結果が示す値の所定値未満の部分である非主要部分の変動の範囲内の乱数値を生成する(ステップS12)。
【0065】
非主要部分が乱数値以下である場合(ステップS13においてYES)、加算部180は、位相の比較の結果が示す値の所定値以上の部分である主要部分に所定値を加算する(ステップS14)。非主要部分が乱数値よりも大きい場合(ステップS13においてNO),加算部180は、ステップS14の動作を行わない。
【0066】
そして、出力部192は、デューティーを表す値として主要部分の値を用いて生成された矩形波を使用して生成された出力クロック信号を出力する(ステップS15)。
【0067】
<効果>
本実施形態には、第1の実施形態と同じ効果がある。その理由は、加算部180が、非主要部分が乱数値よりも大きい場合、主要部分に所定数を加算し、非主要部分が乱数値以下である場合、位相の比較の結果の主要部分に所定数を加算しない、加算処理を行うからである。上述のように、非主要部分は、位相の比較の結果が示す値の所定値未満の部分である。主要部分は、位相の比較の結果が示す値の所定値以上の部分である。そして、出力部192が、デューティーを表す値として加算処理が行われた主要部分の値を使用して生成された矩形波を使用して生成された出力クロック信号を出力するからである。これにより、例えば第1の実施形態の効果の説明において記述されているように、出力クロック信号におけるWanderの発生が抑制される。
【0068】
<第3の実施形態>
本開示の第3の実施形態について、図面を使用して詳細に説明する。本実施形態は、第1の実施形態を模式的に表す。
【0069】
図8は、本開示の実施形態に係る位相同期装置の構成の例を表すブロック図である。
【0070】
以下では、本開示の第3の実施形態に係る位相同期装置100について、
図8を使用して説明する。
【0071】
図8に示す位相同期装置100は、分周部110Aと、分周部110Bと、位相比較部120と、矩形波生成部130と、アナログLPF部140と、VCO部150と、乱数発生部160と、補正判定部170と、加算部180と、受信部191と、出力部192と、を含む。
【0072】
本実施形態の分周部110Aと分周部110Bは、第1の実施形態の2つの分周器10に対応する。本実施形態の位相比較部120、矩形波生成部130、アナログLPF部140、VCO部150、乱数発生部160、補正判定部170、及び、加算部180は、それぞれ、第1の実施形態の位相比較器20、矩形波生成器30、アナログLPF40、VCO50、乱数発生器60、補正判定器70、及び、加算器80と同じである。本実施形態の受信部191は、第1の実施形態の、リファレンスクロック信号が分周器1に入力される信号線に対応する。本実施形態の出力部192は、第1の実施形態の、VCO50から出力クロック信号が出力される信号線に対応する。
【0073】
<受信部191>
受信部191は、リファレンスクロック信号を受信する。
【0074】
<分周部110A>
分周部110Aは、リファレンスクロック信号を所定の分周比で分周することによって、リファレンスクロック信号が分周された信号である分周リファレンスクロック信号を生成する。分周部110Aは、第1分周部とも表記される。
【0075】
<分周部110B>
分周部110Bは、フィードバックされた出力クロック信号を所定の分周比で分周することによって、フィードバックされた出力クロック信号が分周された信号である分周出力クロック信号を生成する。分周部110Bの分周比は、分周部110Aの分周比と同じである。分周部110Aは、第2分周部とも表記される。
【0076】
<位相比較部120>
位相比較部120は、リファレンスクロック信号が分周された分周リファレンスクロック信号とフィードバックされた出力クロック信号が分周された出力分周信号との位相の比較を行う。
位相比較部120は、位相比較部は、位相の比較の結果として、分周リファレンスクロック信号と出力分周信号との位相差を算出する。位相比較部120は、位相差の主要部分の値を、加算部180に出力する。位相比較部120は、位相差の非主要部分の値を、補正判定部170に出力する。
【0077】
非主要部分は、位相差を表す値の所定値未満の部分である。そして、主要部分は、位相差を表す値の所定値以上の部分である。非主要部分は、位相差を表す値を表すビット列の所定ビットよりも下位のビットが表す値であってもよい。主要部分は、位相差を表す値を表すビット列の所定ビットと当該所定ビットより上位のビットが表す値であってもよい。非主要部分は、位相差を表す値の1未満の部分(すなわち、位相差を表す値の小数の部分)であってもよい。主要部分は、位相差を表す値の整数の部分であってもよい。
【0078】
<乱数発生部160>
乱数発生部160は、位相の比較の結果が示す値の所定値未満の部分である非主要部分の変動の範囲内の乱数値を生成する。非主要部分の変動の範囲は、予め、乱数発生部160に与えられる。
【0079】
<補正判定部170>
補正判定部170は、位相差の非主要部分が乱数値以下であるか否かを判定する。
【0080】
<矩形波生成部130>
矩形波生成部130は、加算処理が行われた主要部分(すなわち、補正主要部分)の値を、DUTY(デューティー)を表す値として使用して、前記矩形波を生成する。矩形波生成部130が生成する矩形波の周波数は、あらかじめ定められていてよい。この場合、デューティーを表す値は、デューティー比を表す。
【0081】
<アナログLPF部140>
アナログLPF部140(ローパスフィルタ部とも表記)は、矩形波生成部130によって生成された矩形波に対してローパスフィルタを適用することによって、矩形波から電圧信号を生成する。矩形波生成部130によって生成される矩形波の周波数と、アナログLPF部140が透過させる周波数の帯域は、矩形波のデューティー比が一定である場合に、生成された電圧信号が、所定の基準では一定であるとみなされるように構成される。
【0082】
<VCO部150>
VCO部150(電圧制御発振部とも表記)は、電圧信号が示す電圧に応じた周波数の出力クロック信号を生成する。VCO部150は、生成した出力クロック信号を、出力部192に送出する。VCO部150は、生成した出力クロック信号を、さらに、分周部110Bに送出する(言い換えると、フィードバックする)。
【0083】
<出力部192>
出力部192は、生成された出力クロック信号を出力する。
【0084】
<動作>
図9及び
図10は、本開示の実施形態に係る位相同期装置の動作の例を表すフローチャートである。
【0085】
以下では、本開示の位相同期装置100の動作について、
図9及び
図10を用いて説明する。
【0086】
図9及び
図10に示す例では、まず、受信部191が、リファレンスクロック信号を受信する(ステップS101)。
【0087】
次に、分周部110Aが、リファレンスクロック信号を分周することによって、分周リファレンスクロック信号を生成する(ステップS102)。また、分周部110Bが、フィードバックされた出力クロック信号を分周することによって、分周出力クロック信号を生成する(ステップS103)。ステップS102の動作と、ステップS103の動作は、並列に行われる。
【0088】
位相比較部120は、分周リファレンスクロック信号と分周出力クロック信号との位相の比較を行い、位相差を算出する(ステップS104)。
【0089】
乱数発生部160は、位相の比較の結果が示す値の所定値未満の部分である非主要部分の変動の範囲内の乱数値を生成する(ステップS105)。
【0090】
次に、位相同期装置100は、加算処理を行う(ステップS106)。加算処理については、後で詳細に説明する。
【0091】
矩形波生成部130は、加算処理が行われた主要部分の値を用いて、矩形波を生成する(ステップS107)。
【0092】
次に、アナログLPF部140が、生成された矩形波にローパスフィルタを適用することによって、電圧信号を生成する(ステップS108)。
【0093】
VCO部150は、電圧信号が示す電圧に応じた周波数の出力クロック信号を生成する(ステップS109)。VCO部150は、分周部110Bに出力クロック信号をフィードバックする(ステップS110)と共に、出力クロック信号を出力部192に送出する。
【0094】
出力部192は、出力クロック信号を出力する(ステップS111)。
【0095】
図11は、本開示の実施形態に係る位相同期装置の加算処理の動作を表すフローチャートである。
【0096】
以下では、本開示の第2の実施形態に係る位相同期装置100の動作について、
図11を使用して説明する。
【0097】
図11に示す例では、まず、補正判定部170が、非主要部分の値と乱数値とを比較する(ステップS121)。
【0098】
非主要部分が乱数値以下である場合(ステップS122においてYES)、加算部180は、位相の比較の結果が示す値の所定値以上の部分である主要部分に所定値を加算する(ステップS123)。
【0099】
非主要部分が乱数値よりも大きい場合(ステップS122においてNO)、位相同期装置100は、ステップS123の動作を行わない。
【0100】
<効果>
以上で説明した本実施形態には、第2の実施形態の効果と同じ効果がある。その理由は、第2の実施形態の効果が生じる理由と同じである。
【0101】
<他の実施形態>
本開示の実施形態に係る位相同期回路及び位相同期装置は、メモリにロードされたプログラムを実行するプロセッサを含むコンピュータによって実現することができる。本開示の実施形態に係る位相同期回路及び位相同期装置は、回路等の専用のハードウェアによって実現することもできる。本開示の実施形態に係る位相同期回路及び位相同期装置は、前述のコンピュータと回路等の専用のハードウェアとの組み合わせによって実現することもできる。以下では、位相同期回路を、位相同期装置とも表記する。
【0102】
図12は、本開示の実施形態に係る位相同期装置を実現することができる、コンピュータ1000のハードウェア構成の一例を表す図である。
図12に示す例では、コンピュータ1000は、プロセッサ1001と、メモリ1002と、記憶装置1003と、I/O(Input/Output)インタフェース1004とを含む。また、コンピュータ1000は、記憶媒体1005にアクセスすることができる。メモリ1002と記憶装置1003は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクなどの記憶装置である。記憶媒体1005は、例えば、RAM、ハードディスクなどの記憶装置、ROM(Read Only Memory)、可搬記憶媒体である。記憶装置1003が記憶媒体1005であってもよい。プロセッサ1001は、メモリ1002と、記憶装置1003に対して、データやプログラムの読み出しと書き込みを行うことができる。プロセッサ1001は、I/Oインタフェース1004を介して、他の装置にアクセスすることができる。プロセッサ1001は、記憶媒体1005にアクセスすることができる。記憶媒体1005には、コンピュータ1000を、本開示の実施形態に係る位相同期装置として動作させるプログラムが格納されている。
【0103】
プロセッサ1001は、記憶媒体1005に格納されている、コンピュータ1000を、本開示の実施形態に係る位相同期装置として動作させるプログラムを、メモリ1002にロードする。そして、プロセッサ1001が、メモリ1002にロードされたプログラムを実行することにより、コンピュータ1000は、本開示の実施形態に係る位相同期装置として動作する。
【0104】
分周器10、位相比較器20、矩形波生成器30、アナログLPF40、VCO50、乱数発生器60、補正判定器70、加算器80は、例えば、メモリ1002にロードされたプログラムを実行するプロセッサ1001によって実現できる。分周部110、位相比較部120、矩形波生成部130、アナログLPF部140、VCO部150、乱数発生部160、補正判定部170、加算部180、受信部191、出力部192は、例えば、メモリ1002にロードされたプログラムを実行するプロセッサ1001によって実現できる。
【0105】
分周器10、位相比較器20、矩形波生成器30、アナログLPF40、VCO50、乱数発生器60、補正判定器70、加算器80の一部又は全部は、それらの機能を実現する専用の回路によって実現できる。分周部110、位相比較部120、矩形波生成部130、アナログLPF部140、VCO部150、乱数発生部160、補正判定部170、加算部180、受信部191、出力部192の一部又は全部は、それらの機能を実現する専用の回路によって実現できる。
【0106】
また、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0107】
(付記1)
リファレンスクロック信号が分周された分周リファレンスクロック信号とフィードバックされた出力クロック信号が分周された出力分周信号との位相の比較を行う位相比較部と、
前記位相の比較の結果が示す値の所定値未満の部分である非主要部分の変動の範囲内の乱数値を生成する乱数生成部と、
前記非主要部分が前記乱数値よりも大きい場合、前記位相の比較の結果が示す前記値の所定値以上の部分である主要部分に前記所定値を加算し、前記非主要部分が前記乱数値以下である場合、前記位相の比較の結果の前記主要部分に前記所定値を加算しない、加算処理を行う加算部と、
デューティーを表す値として前記加算処理が行われた前記主要部分の値を用いて生成された矩形波を使用して生成された前記出力クロック信号を出力する出力部と、
を備える位相同期装置。
【0108】
(付記2)
前記位相比較部は、前記位相の比較の結果として、前記分周リファレンスクロック信号と前記出力分周信号との位相差を算出する
付記1に記載の位相同期装置。
【0109】
(付記3)
前記非主要部分は、前記位相差を表す値の前記所定値未満の部分であり、
前記主要部分は、前記位相差を表す値の前記所定値以上の部分である
付記2に記載の位相同期装置。
【0110】
(付記4)
前記非主要部分は、前記位相差を表す値を表すビット列の所定ビットよりも下位のビットが表す値であり、
前記主要部分は、前記位相差を表す値を表すビット列の前記所定ビットと当該所定ビットより上位のビットが表す値である
付記2に記載の位相同期装置。
【0111】
(付記5)
前記非主要部分は、前記位相差を表す値の1未満の部分であり、
前記主要部分は、前記位相差を表す値の整数の部分である
付記2に記載の位相同期装置。
【0112】
(付記6)
前記加算処理が行われた前記主要部分の値を、前記デューティーを表す値として使用して、前記矩形波を生成する矩形波生成部
をさらに備える付記1又は2に記載の位相同期装置。
【0113】
(付記7)
前記矩形波生成部は、前記加算処理が行われた前記主要部分の値を、前記矩形波の2つのレベルのうち高い方のレベルが継続する時間を表す値として使用して、前記矩形波を生成する
付記6に記載の位相同期装置。
【0114】
(付記8)
前記リファレンスクロック信号を受信する受信部と、
前記リファレンスクロック信号を分周することによって前記分周リファレンスクロック信号を生成する第1分周部と、
前記フィードバックされた前記出力クロック信号を分周することによって前記出力分周信号を生成する第2分周部と、
前記非主要部分が前記乱数値以下であるか否かを判定する補正判定部と、
前記加算処理が行われた前記主要部分の値を、前記デューティーを表す値として使用して、前記矩形波を生成する矩形波生成部と、
前記矩形波に対してローパスフィルタを適用することによって、前記矩形波から電圧信号を生成するローパスフィルタ部と、
前記電圧信号が示す電圧に応じた周波数の前記出力クロック信号を生成する電圧制御発振部と、
をさらに備える付記1又は2に記載の位相同期装置。
【0115】
(付記9)
付記1又は2に記載の位相同期装置を含み、
前記位相同期装置は、GPS(Global Positioning System)受信機からのクロック信号を前記リファレンスクロック信号として受信し、
前記出力クロック信号をクロック信号として使用する
通信機器。
【0116】
(付記10)
リファレンスクロック信号が分周された分周リファレンスクロック信号とフィードバックされた出力クロック信号が分周された出力分周信号との位相の比較を行い、
前記位相の比較の結果が示す値の所定値未満の部分である非主要部分の変動の範囲内の乱数値を生成し、
前記非主要部分が前記乱数値よりも大きい場合、前記位相の比較の結果が示す前記値の所定値以上の部分である主要部分に前記所定値を加算し、前記非主要部分が前記乱数値以下である場合、前記位相の比較の結果の前記主要部分に前記所定値を加算しない、加算処理を行い、
デューティーを表す値として前記加算処理が行われた前記主要部分の値を用いて生成された矩形波を使用して生成された前記出力クロック信号を出力する、
位相同期方法。
【0117】
(付記11)
前記位相の比較の結果として、前記分周リファレンスクロック信号と前記出力分周信号との位相差を算出する
付記10に記載の位相同期方法。
【0118】
(付記12)
前記非主要部分は、前記位相差を表す値の前記所定値未満の部分であり、
前記主要部分は、前記位相差を表す値の前記所定値以上の部分である
付記11に記載の位相同期方法。
【0119】
(付記13)
前記非主要部分は、前記位相差を表す値を表すビット列の所定ビットよりも下位のビットが表す値であり、
前記主要部分は、前記位相差を表す値を表すビット列の前記所定ビットと当該所定ビットより上位のビットが表す値である
付記11に記載の位相同期方法。
【0120】
(付記14)
前記非主要部分は、前記位相差を表す値の1未満の部分であり、
前記主要部分は、前記位相差を表す値の整数の部分である
付記11に記載の位相同期方法。
【0121】
(付記15)
前記加算処理が行われた前記主要部分の値を、前記デューティーを表す値として使用して、前記矩形波を生成する
付記10又は11に記載の位相同期方法。
【0122】
(付記16)
前記加算処理が行われた前記主要部分の値を、前記矩形波の2つのレベルのうち高い方のレベルが継続する時間を表す値として使用して、前記矩形波を生成する
付記15に記載の位相同期方法。
【0123】
(付記17)
前記リファレンスクロック信号を受信し、
前記リファレンスクロック信号を分周することによって前記分周リファレンスクロック信号を生成し、
前記フィードバックされた前記出力クロック信号を分周することによって前記出力分周信号を生成し、
前記非主要部分が前記乱数値以下であるか否かを判定し、
前記加算処理が行われた前記主要部分の値を、前記デューティーを表す値として使用して、前記矩形波を生成し、
前記矩形波に対してローパスフィルタを適用することによって、前記矩形波から電圧信号を生成し、
前記電圧信号が示す電圧に応じた周波数の前記出力クロック信号を生成する、
付記10又は11に記載の位相同期方法。
【0124】
(付記18)
付記10又は11に記載の位相同期方法を含み、
前記位相同期方法は、GPS(Global Positioning System)受信機からのクロック信号を前記リファレンスクロック信号として受信し、
前記出力クロック信号をクロック信号として使用する
通信方法。
【0125】
以上、実施形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0126】
1 分周器
2 位相比較器
3 矩形波生成器
4 アナログLPF
5 VCO
10 分周器
20 位相比較器
30 矩形波生成器
40 アナログLPF
50 VCO
60 乱数発生器
70 補正判定器
80 加算器
100 位相同期装置
100A 位相同期装置
101 GPS受信機
102 通信機器
103 デジタルPLL回路
104 信号処理回路部
110 分周部
110A 分周部
110B 分周部
120 位相比較部
130 矩形波生成部
140 アナログLPF部
150 VCO部
160 乱数発生部
170 補正判定部
180 加算部
191 受信部
192 出力部
1000 コンピュータ
1001 プロセッサ
1002 メモリ
1003 記憶装置
1004 I/Oインタフェース
1005 記憶媒体
【手続補正書】
【提出日】2024-11-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リファレンスクロック信号が分周された分周リファレンスクロック信号とフィードバックされた出力クロック信号が分周された出力分周信号との位相の比較を行う位相比較部と、
前記位相の比較の結果が示す値の所定値未満の部分である非主要部分の変動の範囲内の乱数値を生成する乱数生成部と、
前記非主要部分が前記乱数値よりも大きい場合、前記位相の比較の結果が示す前記値の前記所定値以上の部分である主要部分に前記所定値を加算し、前記非主要部分が前記乱数値以下である場合、前記位相の比較の結果の前記主要部分に前記所定値を加算しない、加算処理を行う加算部と、
デューティーを表す値として前記加算処理が行われた前記主要部分の値を用いて生成された矩形波を平滑化することによって得られる電圧の高さに応じた周波数の前記出力クロック信号を出力する出力部と、
を備え、
前記所定値は、前記位相の比較の結果が示す値において前記矩形波の生成に使用される部分の最小値であり、
前記デューティーは、前記矩形波の信号の値が、前記矩形波の信号が示す二値のうち高い方の値である状態が継続する時間を示す値である、
位相同期装置。
【請求項2】
前記位相比較部は、前記位相の比較の結果として、前記分周リファレンスクロック信号と前記出力分周信号との位相差を算出する
請求項1に記載の位相同期装置。
【請求項3】
前記非主要部分は、前記位相差を表す値の前記所定値未満の部分であり、
前記主要部分は、前記位相差を表す値の前記所定値以上の部分である
請求項2に記載の位相同期装置。
【請求項4】
前記非主要部分は、前記位相差を表す値を表すビット列の所定ビットよりも下位のビットが表す値であり、
前記主要部分は、前記位相差を表す値を表すビット列の前記所定ビットと当該所定ビットより上位のビットが表す値である
請求項2に記載の位相同期装置。
【請求項5】
前記非主要部分は、前記位相差を表す値の1未満の部分であり、
前記主要部分は、前記位相差を表す値の整数の部分である
請求項2に記載の位相同期装置。
【請求項6】
前記加算処理が行われた前記主要部分の値を、前記デューティーを表す値として使用して、前記矩形波を生成する矩形波生成部
をさらに備える請求項1又は2に記載の位相同期装置。
【請求項7】
前記矩形波生成部は、前記加算処理が行われた前記主要部分の値を、前記矩形波の2つのレベルのうち高い方のレベルが継続する時間を表す値として使用して、前記矩形波を生成する
請求項6に記載の位相同期装置。
【請求項8】
前記リファレンスクロック信号を受信する受信部と、
前記リファレンスクロック信号を分周することによって前記分周リファレンスクロック信号を生成する第1分周部と、
前記フィードバックされた前記出力クロック信号を分周することによって前記出力分周信号を生成する第2分周部と、
前記非主要部分が前記乱数値以下であるか否かを判定する補正判定部と、
前記加算処理が行われた前記主要部分の値を、前記デューティーを表す値として使用して、前記矩形波を生成する矩形波生成部と、
前記矩形波に対してローパスフィルタを適用することによって、前記矩形波から電圧信号を生成するローパスフィルタ部と、
前記電圧信号が示す電圧に応じた周波数の前記出力クロック信号を生成する電圧制御発振部と、
をさらに備える請求項1又は2に記載の位相同期装置。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の位相同期装置を含み、
前記位相同期装置は、GPS(Global Positioning System)受信機からのクロック信号を前記リファレンスクロック信号として受信し、
前記出力クロック信号をクロック信号として使用する
通信機器。
【請求項10】
リファレンスクロック信号が分周された分周リファレンスクロック信号とフィードバックされた出力クロック信号が分周された出力分周信号との位相の比較を行い、
前記位相の比較の結果が示す値の所定値未満の部分である非主要部分の変動の範囲内の乱数値を生成し、
前記非主要部分が前記乱数値よりも大きい場合、前記位相の比較の結果が示す前記値の前記所定値以上の部分である主要部分に前記所定値を加算し、前記非主要部分が前記乱数値以下である場合、前記位相の比較の結果の前記主要部分に前記所定値を加算しない、加算処理を行い、
デューティーを表す値として前記加算処理が行われた前記主要部分の値を用いて生成された矩形波を平滑化することによって得られる電圧の高さに応じた周波数の前記出力クロック信号を出力し、
前記所定値は、前記位相の比較の結果が示す値において前記矩形波の生成に使用される部分の最小値であり、
前記デューティーは、前記矩形波の信号の値が、前記矩形波の信号が示す二値のうち高い方の値である状態が継続する時間を示す値である、
位相同期方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
非主要部分が乱数値よりも大きい場合(ステップS13においてNO)、加算部180は、位相の比較の結果が示す値の所定値以上の部分である主要部分に所定値を加算する(ステップS14)。非主要部分が乱数値以下である場合(ステップS13においてYES)、加算部180は、ステップS14の動作を行わない。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0098
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0098】
非主要部分が乱数値よりも大きい場合(ステップS122においてNO)、加算部180は、位相の比較の結果が示す値の所定値以上の部分である主要部分に所定値を加算する(ステップS123)。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0099
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0099】
非主要部分が乱数値以下である場合(ステップS122においてYES)、位相同期装置100は、ステップS123の動作を行わない。
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】