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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003061
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】測定装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/364 20150101AFI20241226BHJP
【FI】
H04B17/364
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103522
(22)【出願日】2023-06-23
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4~5年度、総務省、戦略的情報通信研究開発推進事業(国際標準獲得型(5G高度化))、「製造分野における5G高度化技術の研究開発」委託研究、令和4~5年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発、「空間伝送型ワイヤレス電力伝送の干渉抑制・高度化技術に関する研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芝 隆司
(72)【発明者】
【氏名】末松 憲治
(72)【発明者】
【氏名】古市 朋之
(57)【要約】
【課題】測定装置から特定の信号を送出することなく被測定システムの送信機と受信機との間の遅延プロファイルを測定可能とする。
【解決手段】無線通信システム200の送信機2の近傍に配置した第1の受信アンテナ4と、無線通信システム200の遅延プロファイル測定地点の受信機位置に配置した第2の受信アンテナ3とに接続され、第1の受信アンテナ4及び第2の受信アンテナからのアナログ信号をデジタル信号に変換する信号変換器1と、信号変換器1からのデジタル信号の入力を受け付け、第1の受信アンテナ4への入力信号(CH1)の伝達関数Hi(ω)と、第2の受信アンテナ3への入力信号(CH2)の伝達関数Ho(ω)と、前記伝達関数Ho(ω)と前記伝達関数Hi(ω)との比であるHoi(ω)=Ho(ω)/Hi(ω)とに基づき、時刻tにおける前記遅延プロファイルPDP(t)を算出する信号処理装置5と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定システムである無線通信システムの到達信号の遅延プロファイルを測定する測定装置であって、
前記無線通信システムの送信機の近傍に配置した第1の受信アンテナと、前記無線通信システムの遅延プロファイル測定地点の受信機位置に配置した第2の受信アンテナとに接続され、前記第1の受信アンテナ及び前記第2の受信アンテナからのアナログ信号をデジタル信号に変換する信号変換器と、
前記信号変換器からの前記デジタル信号の入力を受け付け、前記第1の受信アンテナへの入力信号(CH1)の伝達関数Hi(ω)と、前記第2の受信アンテナへの入力信号(CH2)の伝達関数Ho(ω)と、前記伝達関数Ho(ω)と前記伝達関数Hi(ω)との比であるHoi(ω)=Ho(ω)/Hi(ω)とに基づき、時刻tにおける前記遅延プロファイルPDP(t)を算出する信号処理装置と、
を備えることを特徴とする、測定装置。
【請求項2】
前記信号処理装置は、
前記Hi(ω)の絶対値が他の周波数の値に比べ極端に小さい場合、前記Hoi(ω)の値を0とするゼロパディング処理を行う、ことを特徴とする、請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記信号処理装置は、
FFTがフーリエ変換を表し、IFFTが逆フーリエ変換を表し、Hi(ω)=FFT(CH1)であり、Ho(ω)=FFT(CH2)であるとき、時刻tにおける前記遅延プロファイルを、PDP(t)=IFFT(Hoi(ω))の式を用いて算出する、
ことを特徴とする、請求項1または2記載の測定装置。
【請求項4】
信号相関行列の固有ベクトルを用いる方法を用いて、前記Hoi(ω)より、前記遅延プロファイルPDP(t)を算出する、
ことを特徴とする、請求項1または2記載の測定装置。
【請求項5】
前記信号処理装置は、
Multiple Signal Classification(MUSIC)法を用いて、前記Hoi(ω)及び
【数1】
(pは信号の最大次元数、Mは総次元数、VがHoi(ω)の相関行列から求めた信号相関行列の固有ベクトル、e(t)が複素正弦波ベクトルであり、VがVの共役転置行列を表す)の式に基づき、前記遅延プロファイルPDP(t)を算出する、
ことを特徴とする、請求項4記載の測定装置。
【請求項6】
前記信号処理装置は、
出力時間分解能を前記被測定システムの帯域幅で決まる時間分解能よりも小さく設定する、
ことを特徴とする、請求項4に記載の測定装置。
【請求項7】
前記信号処理装置は、
データを時間方向に分割したスナップショットと、複数の同条件データから求めたスナップショットとの少なくともいずれかのスナップショットに基づき、前記遅延プロファイルPDP(t)を算出する、
ことを特徴とする、請求項4に記載の測定装置。
【請求項8】
被測定システムである無線通信システムの到達信号の遅延プロファイルを測定し、信号変換器及び信号処理装置を備える測定装置において、
前記信号変換器は、前記無線通信システムの送信機の近傍に配置した第1の受信アンテナと、前記無線通信システムの遅延プロファイル測定地点の受信機位置に配置した第2の受信アンテナとに接続され、前記第1の受信アンテナ及び前記第2の受信アンテナからのアナログ信号をデジタル信号に変換し、
前記信号処理装置は、前記第1の受信アンテナへの入力信号(CH1)の伝達関数Hi(ω)と、前記第2の受信アンテナへの入力信号(CH2)の伝達関数Ho(ω)と、前記伝達関数Ho(ω)と前記伝達関数Hi(ω)との比であるHoi(ω)=Ho(ω)/Hi(ω)とに基づき、時刻tにおける前記遅延プロファイルPDP(t)を算出する、
ことを特徴とする、測定方法。
【請求項9】
前記信号処理装置は、
前記Hi(ω)の絶対値が他の周波数の値に比べ極端に小さい場合、前記Hoi(ω)の値を0とするゼロパディング処理を行う、
ことを特徴とする、請求項8記載の測定方法。
【請求項10】
前記信号処理装置は、
FFTがフーリエ変換を表し、IFFTが逆フーリエ変換を表し、Hi(ω)=FFT(CH1)であり、Ho(ω)=FFT(CH2)であるとき、時刻tにおける前記遅延プロファイルを、PDP(t)=IFFT(Hoi(ω))の式を用いて算出する、
ことを特徴とする、請求項8または9記載の測定方法。
【請求項11】
信号相関行列の固有ベクトルを用いる方法を用いて、前記Hoi(ω)より、前記遅延プロファイルPDP(t)を算出する、
ことを特徴とする、請求項8または9記載の測定方法。
【請求項12】
前記信号処理装置は、
Multiple Signal Classification(MUSIC)法を用いて、前記Hoi(ω)及び
【数2】
(pは信号の最大次元数、Mは総次元数、VがHoi(ω)の相関行列から求めた信号相関行列の固有ベクトル、e(t)が複素正弦波ベクトルであり、VがVの共役転置行列を表す)の式に基づき、前記遅延プロファイルPDP(t)を算出する、
ことを特徴とする、請求項11記載の測定方法。
【請求項13】
前記信号処理装置は、
出力時間分解能を前記被測定システムの帯域幅で決まる時間分解能よりも小さく設定する、
ことを特徴とする、請求項11に記載の測定方法。
【請求項14】
前記信号処理装置は、
データを時間方向に分割したスナップショットと、複数の同条件データから求めたスナップショットとの少なくともいずれかのスナップショットに基づき、前記遅延プロファイルPDP(t)を算出する、
ことを特徴とする、請求項11に記載の測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載する技術は、測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムのための電力遅延プロファイル(Power Delay Profile, PDP)の測定は、多チャンネル又は多入力多出力(MIMO)の設計を含む無線システムのチャネル設計に用いられる(例えば、非特許文献1を参照)。
【0003】
図1は、従来例における無線通信システム600の構成例を模式的に示すブロック図である。
【0004】
無線通信システム600は、PDP測定装置6、送信機(Tx)7及び受信機(Rx)8を備える。PDP測定装置6は、サウンダと称されてもよく、Tx7に対してTx信号を入力する。Tx7は、入力されたTx信号に基づき、マルチチャネル伝送路を介してRxに対して信号を送信する。Rx8は、Tx7から受信したRx信号をPDP測定装置6へ入力する。そして、PDP測定装置6は、遅延プロファイルを算出する。
【0005】
遅延プロファイルPDP(t)は、So(t)が受信信号(Rx信号)で、Sr(t)が特殊な参照信号(例えば最長符号系列等のPN符号の変調波の場合はTx信号も同じPN符号の変調波)であるとき、次式に基づいて算出されてよい。
【数1】
【0006】
また、PDP測定装置6としてVector Network Analyser(VNA)を適用する場合には、Tx信号及びRx信号は周波数掃引された連続信号(CW)であってもよい。この場合に、遅延プロファイルPDP(t)は、Hs(ω)が無線通信システム600の伝達関数であるとき、次式に基づいて算出されてよい。なお、IFFTは、逆フーリエ変換を表す。
【数2】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-178877号公報
【特許文献2】特開2008-228200号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Theodore S, George R. MacCartney, Jr., Mathew K. Samimi, Shu Sun「Wideband Millimeter-Wave Propagation Measurements and Channel Models for Future Wireless Communication System Design」IEEE TRANSACTIONS ON COMMUNICATIONS, VOL. 63, NO. 9、2015年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来例におけるPDP測定装置6では、PDP測定装置6から出力された特定の送信信号を、無線通信システム600のTx7から出力しなければならないという課題がある。
【0010】
1つの側面では、本明細書に記載する技術は、測定装置から特定の信号を送出することなく被測定システムの送信機と受信機との間の遅延プロファイルを測定可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの側面において、測定装置は、被測定システムである無線通信システムの到達信号の遅延プロファイルを測定する測定装置であって、前記無線通信システムの送信機の近傍に配置した第1の受信アンテナと、前記無線通信システムの遅延プロファイル測定地点の受信機位置に配置した第2の受信アンテナとに接続され、前記第1の受信アンテナ及び前記第2の受信アンテナからのアナログ信号をデジタル信号に変換する信号変換器と、前記信号変換器からの前記デジタル信号の入力を受け付け、前記第1の受信アンテナへの入力信号(CH1)の伝達関数Hi(ω)と、前記第2の受信アンテナへの入力信号(CH2)の伝達関数Ho(ω)と、前記伝達関数Ho(ω)と前記伝達関数Hi(ω)との比であるHoi(ω)=Ho(ω)/Hi(ω)とに基づき、時刻tにおける前記遅延プロファイルPDP(t)を算出する信号処理装置と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
1つの側面として、測定装置から特定の信号を送出することなく被測定システムの送信機と受信機との間の遅延プロファイルを測定可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来例における無線通信システムの構成例を模式的に示すブロック図である。
図2】実施形態における測定装置の構成例を模式的に示すブロック図である。
図3】実施形態における信号処理装置によるサイドローブ抑圧と時間分解能とを例示するグラフである。
図4】(a)は変形例において単一のデータにMultiple Signal Classification(MUSIC)法を適用した場合のサイドローブ抑圧と時間分解能とを例示するグラフであり、(b)は、変形例において複数のデータにMUSIC法を適用した場合のサイドローブ抑圧と時間分解能とを例示するグラフである。
図5】実施形態における信号変換器、アンテナ及び信号処理装置のハードウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して実施の形態を説明する。ただし、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、実施形態で明示しない種々の変形例や技術の適用を排除する意図はない。すなわち、本実施形態を、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0015】
また、各図は、図中に示す構成要素のみを備えるという趣旨ではなく、他の構成要素を含むことができる。以下、図中において、同一の符号を付した部分は特に断らない限り、同一若しくは同様の部分を示す。
【0016】
[実施形態の一例]
図2は、実施形態における測定装置100の構成例を模式的に示すブロック図である。ここでは、被測定システム(別言すれば、無線通信システム200)として、Local 5Gシステムを取り上げて説明する。
【0017】
測定装置100は、信号変換器1、送信機(L5G RU;Local 5th Generation Radio Unit)2、受信機(Rx;受信用受信アンテナ)3及び送信用受信アンテナ4、信号処理装置5を備える。信号処理装置5は本実施形態ではPCを用いた。信号変換器1は本実施形態ではオシロスコープを用いた。
【0018】
Tx2は、マルチチャネル伝送路を介してRxに対して任意の信号を送信する。Rx3は、Tx2から受信した信号(CH2)を信号変換器(オシロスコープ)1へ入力する。
【0019】
また、Tx2は、送信用受信アンテナ4に対しても任意の信号を送信する。送信用受信アンテナ4は、Tx2から受信した信号(CH1)を信号変換器(オシロスコープ)1へ入力する。信号変換器(オシロスコープ)1へ入力された信号はデジタルデータとして信号処理装置(PC)5に送られる。
【0020】
信号変換器(オシロスコープ)1は、測定装置100の一例であり、ダイレクトRFアンダーサンプリング型のADC(analog to digital converter)を用いたスペクトラムモニタであってもよい。信号処理装置(PC)5は、デジタル化された送信用受信アンテナ4から入力された信号(CH1)とRx3から入力された信号(CH2)を用いて、遅延プロファイルを算出する。
【0021】
遅延プロファイルPDP(t)は、SCH1がCH1の入力信号(参照信号)で、SCH2がCH2の入力信号(受信信号)であるとき、次式に基づいて算出されてよい。
【数3】
【0022】
図3は、実施形態における信号処理装置5によるサイドローブ抑圧と時間分解能とを例示するグラフである。
【0023】
図3の符号A1において、信号処理装置5で計算されるPDP特性が例示されている。符号A11は直接波を表し、符号A12に示す領域はマルチパス波である。
【0024】
符号A13,A14に示すサイドローブは、ゼロパディングによる誤差によって生じる。ゼロパディングは、符号A21に示す伝達関数Hi(ω)に基づき、符号A22に示す波形を符号A23に示す波形に変換したHo(ω)/Hi(ω)を算出することを表す。具体的には、ゼロパディングは、Hi(ω)の絶対値が他の周波数の値に比べ極端に小さい場合(例えばピークに対して10-4よりも小さい場合)に図3に示したようにHo(ω)/Hi(ω)の値が極端に大きくなり、他の重要な情報が埋もれてしまうため、Ho(ω)/Hi(ω)の値を0とする処理である。
【0025】
また、図3の符号A15において、送信機2のシステム送信信号帯域をBとすると、時間分解能ΔT=1/Bとなり、例えば、Local 5Gシステムの場合、B≒100Hz,ΔT≒10nsである。
【0026】
実施形態における測定装置100によれば、被測定システムである無線通信システム200から特定の信号を送出することなく(送信機の回路、信号処理方法を変更することなく)、被測定システムである無線通信システム200の送信機と受信機との間の遅延プロファイルを測定可能とすることができる。
【0027】
[実施形態の変形例]
上述した実施形態の一例によれば、PDPを得ることができるが、上述のゼロパディング処理によるサイドローブが比較的大きくなってしまい、時間分解能がシステム送信信号帯域幅Bで決まってしまう。そこで、変形例においては、PDPの測定にMUSIC法が適用される。
【0028】
以下、MUSIC法を例に説明を行うが、それに限られない。以下の実施形態における利点は、例えば、ESPRIT法等の他の信号相関行列の固有ベクトルを用いる方法を用いても同様の利点が得られる。MUSIC法による遅延プロファイルPDPmusic(t)は、SCH1がCH1の入力信号(参照信号)で、SCH2がCH2の入力信号(受信信号)で、pが信号の最大次元数、Mが総次元数、VがHoi(ω)の相関行列から求めた信号相関行列の固有ベクトル、e(t)が複素正弦波ベクトルであり、VがVの共役転置行列であるとき、次式に基づいて算出されてよい。
【数4】
【0029】
MUSIC法では、相関行列の固有ベクトルから所望のPDP特性を得ているため、基本的には、時間分解能はシステム帯域Bに制限を受けないため、より高い時間分解能特性を得ることができる。
【0030】
MUSIC法では、複数のスナップショットと呼ばれるデータに対して、処理を行う場合が多いため、ここでは例えば1msのデータを時間方向に10分割して、それぞれをスナップショットとして相関行列を求めた。
【0031】
図4の(a)は変形例において単一のデータ(この例では、10スナップショット)にMUSIC法を適用した場合のサイドローブ抑圧と時間分解能とを例示するグラフであり、図4の(b)は変形例において同条件での複数(この例では、46)のデータ(460(10×46)スナップショット)にMUSIC法を適用した場合のサイドローブ抑圧と時間分解能とを例示するグラフである。
【0032】
図4の(a)において、同じデータにMUSIC法が適用される場合には、符号B1,B2に示すようにサイドローブの抑圧度は最大15dB程度と実施形態と同等となるが、符号B3に示すように時間分解能は元の実施形態と比較して10倍程度となり、元の実施形態では観測できなかった、マルチパス信号B3を観測することができた。
【0033】
さらに、スナップショット数を上げるため複数のデータを測定されてよい。これにより、上述のゼロパディング処理によるサイドローブは一定位置に現れない雑音と見做せるため、データ数を上げることができれば、サイドローブを抑圧可能である。
【0034】
図4の(b)において、46個のデータにMUSIC法が適用される場合には、符号C1,C2に示すようにサイドローブの抑圧度は最大20dB程度と元の実施形態よりも向上し、時間分解能は実施形態と比較して10倍程度となる。
【0035】
すなわち、実施形態の変形例を用いれば、出力時間分解能は、被測定システムである無線通信システム200の帯域幅Bで決まる時間分解能よりも小さく設定することが可能で、さらにゼロパディングによるサイドローブも、より小さくすることができる。
【0036】
[ハードウェア構成例]
図5は、実施形態における信号変換器(オシロスコープ)1、アンテナ3、4及び信号処理装置5のハードウェア構成例を模式的に示すブロック図である。
【0037】
アンテナ4(送信用受信アンテナ)は、図2を用いて示したように、被測定システムの送信機2の近傍に配置される。アンテナ3(受信用受信アンテナ)は、被測定システムの遅延プロファイル測定地点に配置され、被測定システムの受信機3に対応する。それぞれのアンテナ3、4からの信号は、信号変換器1に入力される。
【0038】
図5は信号変換器1として、オシロスコープを用いた場合を示している。信号変換器1は、CPU11、メインメモリ12、表示制御部13、記憶装置14、入力IF15、外部記録媒体処理部16、通信IF17及びADC回路18を備える。同様に、信号処理装置5は、CPU11、メインメモリ12、表示制御部13、記憶装置14、入力IF15、外部記録媒体処理部16及び通信IF17を備えてよい。
【0039】
メインメモリ12は、記憶部の一例であり、例示的に、Read Only Memory(ROM)及びRandom Access Memory(RAM)などである。メインメモリ12のROMには、Basic Input/Output System(BIOS)等のプログラムが書き込まれてよい。メインメモリ12のソフトウェアプログラムは、CPU11に適宜に読み込まれて実行されてよい。また、メインメモリ12のRAMは、一時記録メモリあるいはワーキングメモリとして利用されてよい。
【0040】
表示制御部13は、表示装置131と接続され、表示装置131を制御する。表示装置131は、液晶ディスプレイやOrganic Light-Emitting Diode(OLED)ディスプレイ、Cathode Ray Tube(CRT)、電子ペーパーディスプレイ等であり、オペレータ等に対する各種情報を表示する。表示装置131は、入力装置と組み合わされたものでもよく、例えば、タッチパネルでもよい。表示装置131は、信号変換器(オシロスコープ)1のユーザに対する種々の情報を表示する。
【0041】
記憶装置14は、高IO性能の記憶装置であり、例えば、Dynamic Random Access Memory(DRAM)やSSD(Solid State Drive),Storage Class Memory(SCM),HDD(Hard Disk Drive)が用いられてよい。
【0042】
入力IF15は、マウス151やキーボード152等の入力装置と接続され、マウス151やキーボード152等の入力装置を制御してよい。マウス151やキーボード152は、入力装置の一例であり、これらの入力装置を介して、オペレータが各種の入力操作を行う。
【0043】
外部記録媒体処理部16は、記録媒体160が装着可能に構成される。外部記録媒体処理部16は、記録媒体160が装着された状態において、記録媒体160に記録されている情報を読み取り可能に構成される。本例では、記録媒体160は、可搬性を有する。例えば、記録媒体160は、フレキシブルディスク、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、又は、半導体メモリ等である。具体的にはこの記録媒体160を介して、下記のADC回路18によりデジタル値に変換されたCH1、CH2の信号データが信号処理装置(PC)5に送られてよい。
【0044】
通信IF17は、外部装置との通信を可能にするためのインタフェースである。上述したように記録媒体160を介して信号処理装置(PC)5にCH1、CH2の信号データが送られてもよいし、この通信IF17を介して信号処理装置(PC)5にデータが送られてもよい。
【0045】
ADC回路18は、前述の被測定システムの送信機2の近傍に配置した送信信号受信用の受信アンテナ4からの信号を受信する端子(CH1)と、前述の被測定システムの遅延プロファイル測定地点(被測定システムの受信機3が設置される)受信点用の受信アンテナからの信号が入力される端子(CH2)とから入力された信号を、デジタル信号に変換して、共通バスに送信する機能を有する。
【0046】
CPU11は、プロセッサの一例であり、種々の制御や演算を行う処理装置である。CPU11は、メインメモリ12に読み込まれたOperating System(OS)やプログラムを実行することにより、種々の機能を実現する。なお、CPU11は、複数のCPUを含むマルチプロセッサであってもよいし、複数のCPUコアを有するマルチコアプロセッサであってもよく、或いは、マルチコアプロセッサを複数有する構成であってもよい。本実施例では、記録媒体160又は通信IF17を介して、信号処理装置(PC)5にCH1、CH2の信号データが送られたが、外部信号処理装置(PC)5を用いないで、オシロスコープ内のCPU11、メモリ12を用いて本発明の処理を行い、PDPを得ることも可能である。
【0047】
信号処理装置5は、信号変換器(オシロスコープ)1から送られた、前述のCH1信号と、CH2信号を用いて、本発明の信号処理によって、PDPを求めている。
【0048】
本実施形態の測定装置及び測定方法は、被測定システムの測定装置から特定の信号を送出することなく送信機と受信機との間の遅延プロファイルを測定可能にする。これにより、被測定システムの送信機の回路変更、信号処理変更を必要としなくなる。また、被測定システムの信号そのもののPDP測定が可能となり、より正確なPDP測定が可能となる。特に、法令等により被測定システムの送信信号を変更できない場合には有効である。この測定されたPDP特性はマルチパス通信において、通信容量を特定する際に効果的である。
【0049】
また、本実施形態の測定装置及び測定方法は、MUSIC法を適用することにより、従来のPDP測定に近い、時間分解能の向上及びサイドロープの抑圧を達成することができる。
【0050】
開示の技術は上述した各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。各実施形態の各構成及び各処理は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
【0051】
上述した実施形態において、被測定システムである無線通信システム200はLocal 5G通信を行うこととしたが、これに限定されるものではない。被測定システムである無線通信システム200は4G通信や3G通信を行ってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 :信号変換器
2、7 :Tx
3、8 :Rx
4 :送信用受信アンテナ
5 :信号処理装置
6 :PDP測定装置
11 :CPU
12 :メインメモリ
13 :表示制御部
14 :記憶装置
15 :入力IF
16 :外部記録媒体処理部
17 :通信IF
18 :ADC回路
100、600:測定装置
131 :表示装置
151 :マウス
152 :キーボード
160 :記録媒体
200 :無線通信システム
図1
図2
図3
図4
図5