(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025030691
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】フォークリフト、レバー抵抗値変更システムおよびレバー抵抗値推定プログラム
(51)【国際特許分類】
B66F 9/20 20060101AFI20250228BHJP
【FI】
B66F9/20 A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136200
(22)【出願日】2023-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 良平
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333CA21
3F333DB10
(57)【要約】
【課題】レバー抵抗値(重さ)を各運転者に応じて、自動的に変更することができるフォークリフトを提供する。
【解決手段】フォークリフトは、フォークリフトの操作に用いられるレバー14と、運転者記憶部31と、抵抗値記憶部39と、運転者特定部32と、抵抗値変更部18と、を備えている。運転者記憶部31は、複数の運転者の運転者情報を記憶し、抵抗値記憶部39は、各運転者の適切なレバー抵抗値(重さ)を運転者情報と対応付けて記憶している。運転者特定部32は、運転者情報を参照して運転者を特定し、抵抗値変更部18は、抵抗値記憶部39に記憶されている各運転者の適切なレバー抵抗値に基づいて、レバー14の抵抗値を特定された運転者に対応する適切なレバー抵抗値に変更する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォークリフトの操作に用いられるレバーと、
複数の運転者の運転者情報を記憶している運転者記憶部と、
各前記運転者の適切なレバー抵抗値を前記運転者情報と対応付けて記憶している抵抗値記憶部と、
前記運転者情報を参照して、前記運転者を特定する運転者特定部と、
前記抵抗値記憶部に記憶されている各前記運転者の適切な前記レバー抵抗値に基づいて、前記レバーの抵抗値を、特定された前記運転者に対応する適切な前記レバー抵抗値に変更する抵抗値変更部と、を備えるフォークリフト。
【請求項2】
各前記運転者の習熟度を各前記運転者情報と対応付けて記憶している習熟度記憶部と、
各前記運転者の前記習熟度に基づいて、各前記運転者の適切な前記レバー抵抗値を推定する抵抗値推定部と、をさらに備え、
前記抵抗値記憶部は、推定された各前記運転者の適切な前記レバー抵抗値を前記運転者情報と対応付けて記憶している請求項1に記載のフォークリフト。
【請求項3】
各前記運転者の各荷役作業時における前記フォークリフトの所定の加速度を超えた回数および所定の減速度を超えた回数を前記運転者情報と対応付けて記憶する加減速記憶部と、
記憶された前記所定の加速度を超えた回数および前記所定の減速度を超えた回数に基づいて、各前記運転者の前記習熟度を判定する習熟度判定部と、をさらに備え、
前記習熟度記憶部は、判定された各前記運転者の前記習熟度を前記運転者情報と対応付けて記憶している請求項2に記載のフォークリフト。
【請求項4】
各前記運転者の各荷役作業時における前記フォークリフトの衝突回数を前記運転者情報と対応付けて記憶する衝突回数記憶部と、
記憶された前記衝突回数に基づいて、各前記運転者の前記習熟度を判定する習熟度判定部と、をさらに備え、
前記習熟度記憶部は、判定された各前記運転者の前記習熟度を前記運転者情報と対応付けて記憶している請求項2に記載のフォークリフト。
【請求項5】
各前記運転者の各荷役作業時における前記フォークリフトの停車回数を前記運転者情報と対応付けて記憶する停車回数記憶部と、
記憶された前記停車回数に基づいて、各前記運転者の前記習熟度を判定する習熟度判定部と、をさらに備え、
前記習熟度記憶部は、判定された各前記運転者の前記習熟度を前記運転者情報と対応付けて記憶している請求項2に記載のフォークリフト。
【請求項6】
各前記運転者の各荷役作業時における前記フォークリフトの所定の加速度を超えた回数および所定の減速度を超えた回数を前記運転者情報と対応付けて記憶する加減速記憶部と、
各前記運転者の各荷役作業時における前記フォークリフトの停車回数を前記運転者情報と対応付けて記憶する停車回数記憶部と、
学習済みモデルを有する習熟度判定部と、をさらに備え、
前記学習済みモデルは、前記所定の加速度を超えた回数、前記所定の減速度を超えた回数および前記停車回数を入力データとし、前記習熟度を出力データとする教師データに基づいて予め学習し、記憶された前記所定の加速度を超えた回数、前記所定の減速度を超えた回数および前記停車回数を入力されると、前記運転者の前記習熟度を出力するよう構成されており、
前記習熟度記憶部は、出力された各前記運転者の前記習熟度を、前記運転者情報と対応付けて記憶している請求項2に記載のフォークリフト。
【請求項7】
各前記運転者の各荷役作業時における前記フォークリフトの所定の加速度を超えた回数および所定の減速度を超えた回数を前記運転者情報と対応付けて記憶する加減速記憶部と、
各前記運転者の各荷役作業時における前記フォークリフトの衝突回数を前記運転者情報と対応付けて記憶する衝突回数記憶部と、
学習済みモデルを有する習熟度判定部と、をさらに備え、
前記学習済みモデルは、前記所定の加速度を超えた回数、前記所定の減速度を超えた回数および前記衝突回数を入力データとし、前記習熟度を出力データとする教師データに基づいて予め学習し、記憶された前記所定の加速度を超えた回数、前記所定の減速度を超えた回数および前記衝突回数を入力されると、前記運転者の前記習熟度を出力するよう構成されており、
前記習熟度記憶部は、出力された各前記運転者の前記習熟度を、前記運転者情報と対応付けて記憶している請求項2に記載のフォークリフト。
【請求項8】
各前記運転者の各荷役作業時における前記フォークリフトの所定の加速度を超えた回数および所定の減速度を超えた回数を前記運転者情報と対応付けて記憶する加減速記憶部と、
各前記運転者の各荷役作業時における前記フォークリフトの停車回数を前記運転者情報と対応付けて記憶する停車回数記憶部と、
各前記運転者の各荷役作業時における前記フォークリフトの衝突回数を前記運転者情報と対応付けて記憶する衝突回数記憶部と、
学習済みモデルを有する習熟度判定部と、をさらに備え、
前記学習済みモデルは、前記所定の加速度を超えた回数、前記所定の減速度を超えた回数、前記停車回数および前記衝突回数を入力データとし、前記習熟度を出力データとする教師データに基づいて予め学習し、記憶された前記所定の加速度を超えた回数、前記所定の減速度を超えた回数、前記停車回数および前記衝突回数を入力されると、前記運転者の前記習熟度を出力するよう構成されており、
前記習熟度記憶部は、出力された各前記運転者の前記習熟度を、前記運転者情報と対応付けて記憶している請求項2に記載のフォークリフト。
【請求項9】
前記抵抗値推定部は、前記習熟度が低いほど、適切な前記レバー抵抗値をより強く推定する請求項2に記載のフォークリフト。
【請求項10】
フォークリフトの操作に用いられるレバーのレバー抵抗値変更システムであって、
複数の運転者の運転者情報を記憶している運転者記憶部と、
各前記運転者の適切なレバー抵抗値を前記運転者情報と対応付けて記憶している抵抗値記憶部と、
前記運転者情報を参照して、前記運転者を特定する運転者特定部と、
前記抵抗値記憶部に記憶されている各前記運転者の適切な前記レバー抵抗値に基づいて、前記レバー抵抗値を、特定された前記運転者に対応する適切な前記レバー抵抗値に変更する抵抗値変更部と、を備えるレバー抵抗値変更システム。
【請求項11】
フォークリフトの操作に用いられるレバーと、
推定された適切なレバー抵抗値に基づいて、前記レバーの抵抗値を変更する抵抗値変更部と、
コンピュータと、を備えたフォークリフトに利用されるレバー抵抗値推定プログラムであって、
前記コンピュータは、各運転者の習熟度を運転者情報と対応付けて記憶しており、
前記レバー抵抗値推定プログラムは、前記コンピュータを、
記憶している前記運転者の前記習熟度に基づいて、当該運転者の適切な前記レバー抵抗値を推定する抵抗値推定部として動作させるレバー抵抗値推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトのレバー抵抗値変更システム、当該システムを備えたフォークリフト、およびレバー抵抗値推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフトには、リーチ式フォークリフトとカウンター式フォークリフトがある。フォークリフトのレバーは、フォークリフトの種類ごとに数や機能が異なっている。
【0003】
特許文献1に開示のように、リーチ式フォークリフトは、フォークを昇降するためのリフトレバーと、フォークの上下方向の角度を変更するためのティルトレバーと、昇降装置を前後させるためのリーチレバーと、フォークリフトを走行させるためのアクセルレバーとを備えている。また、特許文献2に開示のように、カウンター式フォークリフトは、ティルトレバーと、アクセルレバーとを備えている。
【0004】
特許文献3に開示のように、一般的に、レバーは、中立位置から前方または後方に揺動するように構成され、非操作時にはスプリングによって中立位置に自動復帰する。しかしながら、このスプリングによるレバーの抵抗、言い換えればレバーの重さは、オペレータを疲労させる。そこで、特許文献3に開示の発明は、オペレータの疲労を軽減するために、操作レバーの操作量が所定値を超えると、アクチュエータによってレバー操作をアシストする。特許文献3以外にも車両のレバー操作をアシストする技術を開示した文献として、例えば、特許文献4がある。
【0005】
ところで、フォークリフトは、乗用車と異なり1つのフォークリフトを習熟度の異なる複数の運転者が代わる代わる乗車することがある。そして、フォークリフトは、習熟度の違いによる運転者ごとのレバー操作の違いが乗用車よりも大きい。したがって、レバーの抵抗値を、例えば、運転者の習熟度ごとに異ならせることが好ましいが、乗車するたびに運転者が適切なレバー抵抗値を調整することは煩わしい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-47745号公報
【特許文献2】特開2017-88390号公報
【特許文献3】特開2002-370898号公報
【特許文献4】特開2003-301942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、レバー抵抗値、言い換えればレバーの重さを各運転者に応じて、自動的に変更することができるフォークリフトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るフォークリフトは、フォークリフトの操作に用いられるレバーと、複数の運転者の運転者情報を記憶している運転者記憶部と、各運転者の適切なレバー抵抗値を運転者情報と対応付けて記憶している抵抗値記憶部と、運転者情報を参照して運転者を特定する運転者特定部と、抵抗値記憶部に記憶されている各運転者の適切なレバー抵抗値に基づいてレバーの抵抗値を特定された運転者に対応する適切なレバー抵抗値に変更する抵抗値変更部と、を備える。
【0009】
上記フォークリフトは、好ましくは、各運転者の習熟度を各運転者情報と対応付けて記憶している習熟度記憶部と、各運転者の習熟度に基づいて各運転者の適切なレバー抵抗値を推定する抵抗値推定部と、をさらに備え、抵抗値記憶部は、推定された各運転者の適切なレバー抵抗値を運転者情報と対応付けて記憶している。
【0010】
上記フォークリフトは、好ましくは、各運転者の各荷役作業時におけるフォークリフトの所定の加速度を超えた回数および所定の減速度を超えた回数を運転者情報と対応付けて記憶する加減速記憶部と、記憶された所定の加速度を超えた回数および所定の減速度を超えた回数に基づいて各運転者の習熟度を判定する習熟度判定部と、をさらに備え、習熟度記憶部は、判定された各運転者の習熟度を運転者情報と対応付けて記憶している。
【0011】
上記フォークリフトは、好ましくは、
各運転者の各荷役作業時におけるフォークリフトの衝突回数を運転者情報と対応付けて記憶する衝突回数記憶部と、記憶された衝突回数に基づいて、各運転者の習熟度を判定する習熟度判定部と、をさらに備え、習熟度記憶部は、判定された各運転者の習熟度を運転者情報と対応付けて記憶している。
【0012】
上記フォークリフトは、好ましくは、各運転者の各荷役作業時におけるフォークリフトの停車回数を運転者情報と対応付けて記憶する停車回数記憶部と、記憶された停車回数に基づいて各運転者の習熟度を判定する習熟度判定部と、をさらに備え、習熟度記憶部は、判定された各運転者の習熟度を運転者情報と対応付けて記憶している。
【0013】
上記フォークリフトは、好ましくは、各運転者の各荷役作業時におけるフォークリフトの所定の加速度を超えた回数および所定の減速度を超えた回数を運転者情報と対応付けて記憶する加減速記憶部と、各運転者の各荷役作業時におけるフォークリフトの停車回数を運転者情報と対応付けて記憶する停車回数記憶部と、学習済みモデルを有する習熟度判定部と、をさらに備える。学習済みモデルは、所定の加速度を超えた回数、所定の減速度を超えた回数および停車回数を入力データとし、習熟度を出力データとする教師データに基づいて予め学習し、記憶された所定の加速度を超えた回数、所定の減速度を超えた回数および停車回数を入力されると、運転者の習熟度を出力するよう構成されている。習熟度記憶部は、出力された各運転者の習熟度を、運転者情報と対応付けて記憶している。
【0014】
上記フォークリフトは、好ましくは、各運転者の各荷役作業時におけるフォークリフトの所定の加速度を超えた回数および所定の減速度を超えた回数を運転者情報と対応付けて記憶する加減速記憶部と、各運転者の各荷役作業時におけるフォークリフトの衝突回数を運転者情報と対応付けて記憶する衝突回数記憶部と、学習済みモデルを有する習熟度判定部と、をさらに備える。学習済みモデルは、所定の加速度を超えた回数、所定の減速度を超えた回数および衝突回数を入力データとし、習熟度を出力データとする教師データに基づいて予め学習し、記憶された所定の加速度を超えた回数、所定の減速度を超えた回数および衝突回数を入力されると、運転者の習熟度を出力するよう構成されている。習熟度記憶部は、出力された各運転者の習熟度を、運転者情報と対応付けて記憶している。
【0015】
上記フォークリフトは、好ましくは、各運転者の各荷役作業時におけるフォークリフトの所定の加速度を超えた回数および所定の減速度を超えた回数を運転者情報と対応付けて記憶する加減速記憶部と、各運転者の各荷役作業時におけるフォークリフトの停車回数を運転者情報と対応付けて記憶する停車回数記憶部と、各運転者の各荷役作業時におけるフォークリフトの衝突回数を運転者情報と対応付けて記憶する衝突回数記憶部と、学習済みモデルを有する習熟度判定部と、をさらに備える。学習済みモデルは、所定の加速度を超えた回数、所定の減速度を超えた回数、停車回数および衝突回数を入力データとし、習熟度を出力データとする教師データに基づいて予め学習し、記憶された所定の加速度を超えた回数、所定の減速度を超えた回数、停車回数および衝突回数を入力されると、運転者の習熟度を出力するよう構成されている。習熟度記憶部は、出力された各運転者の習熟度を、運転者情報と対応付けて記憶している。
【0016】
上記フォークリフトでは、好ましくは、抵抗値推定部は、習熟度が低いほど、適切なレバー抵抗値をより強く推定する。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明に係るレバー抵抗値変更システムは、フォークリフトの操作に用いられるレバーのレバー抵抗値変更システムであって、複数の運転者の運転者情報を記憶している運転者記憶部と、各運転者の適切なレバー抵抗値を運転者情報と対応付けて記憶している抵抗値記憶部と、運転者情報を参照して運転者を特定する運転者特定部と、抵抗値記憶部に記憶されている各運転者の適切なレバー抵抗値に基づいてレバー抵抗値を特定された運転者に対応する適切なレバー抵抗値に変更する抵抗値変更部と、を備える。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明に係るレバー抵抗値推定プログラムは、フォークリフトの操作に用いられるレバーと、推定された適切なレバー抵抗値に基づいてレバーの抵抗値を変更する抵抗値変更部と、コンピュータと、を備えたフォークリフトに利用されるレバー抵抗値推定プログラムであって、コンピュータは、各運転者の習熟度を運転者情報と対応付けて記憶しており、レバー抵抗値推定プログラムは、コンピュータを、記憶している運転者の習熟度に基づいて、当該運転者の適切なレバー抵抗値を推定する抵抗値推定部として動作させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るフォークリフトは、レバー抵抗値を各運転者に応じて、自動的に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフォークリフトの斜視図である。
【
図3】制御部の各記憶部に記憶されている運転者の各荷役作業時の所定の加速度を超えた回数(加速度回数)、所定の減速度を超えた回数(減速度回数)、停車回数、衝突回数を表で表した図である。
【
図5】レバー抵抗値変更の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係るフォークリフト、レバー抵抗値変更システムおよびレバー抵抗値推定プログラムの一実施形態について説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係るフォークリフト1の斜視図である。フォークリフト1は、バッテリ式のリーチ式フォークリフトである。
図1に示すように、フォークリフト1は、複数の車輪10と、車体11と、運転席12と、ヘッドガード13と、レバー14と、左右のマスト15と、左右のフォーク16と、カメラ17と、を備えている。また、フォークリフト1は、
図2に示すように、抵抗値変更部18と、加減速検出部19と、停車検出部20と、衝突検出部21と、制御部30と、を備えている。
【0023】
複数の車輪10は、車体11の前方および下部に設けられている。運転席12は、車体11の後部右側に設けられており、ヘッドガード13は、車体11の上方に設けられている。
【0024】
レバー14は、リフトレバーと、ティルトレバーと、リーチレバーと、アクセルレバーとを有し、運転席12の前部に設けられている。
【0025】
左右のフォーク16は、左右のマスト15を介して昇降可能に構成されており、運転者は、フォーク16を昇降させて荷役作業を行う。
【0026】
カメラ17は、ヘッドガード13の後部に固定され、フォークリフト1に乗車する運転者の顔を撮影するよう構成されている。カメラ17は、例えば、制服を着た人(すなわち、運転者)を運転者として検出し、運転者がフォークリフト1に近寄ると、自動的にその人を撮影するよう構成されてもよい。または、カメラ17は、運転席12に着席した運転者の顔を撮影するよう運転席12に設けられていてもよい。カメラ17は、運転者の顔を撮影して顔画像を生成し、生成された顔画像は、制御部30に送信される。
【0027】
抵抗値変更部18は、後で説明する抵抗値推定部38によって推定されたレバー抵抗値に基づいて、運転者が操作する際のレバー14の抵抗値を変更する。抵抗値変更部18は、例えば、油圧によって抵抗値を調整できる装置、ばねによって抵抗値を調整できる装置などによって構成されている。
【0028】
また、例えば、抵抗値変更部18は、レバー14の操作をアシストするアシスト装置としてもよい。この場合、抵抗値変更部18は、抵抗値推定部38によって推定されたレバー抵抗値に基づいて、アシスト力を調整し、実質的に運転者が操作する際のレバー14の抵抗値を変更してもよい。
【0029】
または、抵抗値変更部18は、例えば、抵抗値推定部38によって推定されたレバー抵抗値に基づいて、レバー14の操作量に応答する各装置の動力または制止力の大きさを変更するよう構成されてもよい。これにより、抵抗値変更部18は、実質的にレバー抵抗値を変更する。
【0030】
加減速検出部19は、公知の加減速センサであって、フォークリフト1の各荷役作業時における加速度および減速度を検出する。本発明における「荷役作業時」とは、例えば、荷取りしてから荷置きするまでの間の走行時としてもよいし、荷の積み下ろしの間も荷役作業時に含んでもよい。加減速検出部19は、例えば、車輪速度センサによって構成されており、車輪10の回転数や回転方向を検出する。加減速検出部19は、フォークリフト1の各荷役作業時における加速度および減速度を検出し、検出した加速度および減速度を制御部30に送信する。
【0031】
停車検出部20は、各荷役作業時におけるフォークリフト1の停車回数を検出する。フォークリフト1の熟練者は、荷役作業における前進、後進の切り替え、すなわち、走行を一時的に停止する回数が初心者よりも少ない。停車検出部20は、その停車回数の違いを検出することを目的としている。したがって、本発明における停車とは、完全な停止であってもよいし、停止と前進、後進の切り替えとを含む概念であってもよい。停車検出部20は、フォークリフト1の停車を検出すると、停車信号を制御部30に送信する。
【0032】
衝突検出部21は、各荷役作業時におけるフォークリフト1の衝突を検出する。衝突検出部21は、例えば、公知の加速度センサや、車体11に設けられた衝突センサによって構成されていてもよい。衝突検出部21によって衝突が検出されると、衝突信号が制御部30に送信される。
【0033】
なお、荷役作業の開始および終了(すなわち荷役作業時)を認識する手段として、例えば、フォークリフト1が、公知の荷重検出部をさらに備え、荷重検出部によって荷の積載時を検出するとともに、荷の積載時を荷役作業の開始時とし、荷の積載開放時を荷役作業の終了時としてもよい。または、フォークリフト1は、荷役開始ボタン、荷役終了ボタンをさらに備え、当該ボタンが押されることにより荷役開始時および荷役終了時を認識してもよい。これらは単なる一例であって、本発明における荷役作業の開始時および終了時の概念およびその認識方法は、特に限定されない。
【0034】
制御部30は、車体11内に配置されたコンピュータによって構成されており、演算装置と、記憶装置と、メモリと、を有する。記憶装置には、コンピュータを後で説明する抵抗値推定部38として動作させるレバー抵抗値推定プログラムが記憶されている。
【0035】
図2は、フォークリフト1の機能ブロック図である。
図2に示すように、制御部30は、運転者記憶部31と、運転者特定部32と、加減速記憶部33と、停車回数記憶部34と、衝突回数記憶部35と、習熟度判定部36と、習熟度記憶部37と、抵抗値推定部38と、抵抗値記憶部39と、を有する。
【0036】
運転者記憶部31は、各運転者の運転者情報を記憶しており、運転者情報には、運転者の顔画像と、運転者の識別子(例えば、「運転者No.」)とを含み、運転者記憶部31は、この顔画像および識別子を対応付けて記憶している。
【0037】
運転者特定部32は、カメラ17によって生成された顔画像と、運転者記憶部31に記憶されている顔画像とを参照して、運転者を特定する。特定された運転者に対応する運転者の識別子は、加減速記憶部33、停車回数記憶部34、衝突回数記憶部35、習熟度判定部36、習熟度記憶部37、抵抗値推定部38および抵抗値記憶部39に送信される。
【0038】
加減速記憶部33は、各運転者のフォークリフト1の各荷役作業時において、所定の加速度を超えた加速度を受信した回数および所定減速度を超えた減速度を受信した回数を運転者情報と対応付けて随時記憶する。
図3は、制御部30の各記憶部に記憶されている運転者の各荷役作業時の所定の加速度を超えた回数(加速度回数)、所定の減速度を超えた回数(減速度回数)、停車回数、衝突回数を表で表した図である。
図3に示すように、本実施形態では、制御部30の各記憶部は、運転者の運転者No.とともに、各荷役作業のNo.、所定の加速度を超えた回数、所定の減速度を超えた回数、停車回数および衝突回数をそれぞれ記憶している。
【0039】
停車回数記憶部34は、停車検出部20から受信した停車信号に基づいて、
図3に示すように、各運転者の各荷役作業時におけるフォークリフト1の停車回数を運転者情報(本実施形態では、運転者No.)と対応付けて随時記憶する。
【0040】
衝突回数記憶部35は、衝突検出部21から受信した衝突信号に基づいて、各運転者の各荷役作業時におけるフォークリフト1の衝突回数を運転者情報(本実施形態では、運転者No.)と対応付けて随時記憶する。
【0041】
図4に示すように、習熟度判定部36は、学習済みモデル360を有する。
【0042】
学習済みモデル360は、各運転者の各荷役作業時におけるフォークリフト1の所定の加速度を超えた回数、所定の減速度を超えた回数、停車回数および衝突回数を入力データとし、各運転者の習熟度を出力データとする教師データに基づいて予め学習している。そして、学習済みモデル360は、各運転者の各荷役作業時におけるフォークリフト1の所定の加速度を超えた回数、所定の減速度を超えた回数、停車回数および衝突回数を入力されると、習熟度を出力するよう構成されている。
【0043】
学習済みモデル360は、例えば、ディープラーニングを利用したニューラルネットで構成されていてもよく、学習方法を特に限定されない。例えば、学習済みモデル360は、フォークリフト1の車種ごとに学習を行い、車種ごとの学習済みモデル360で構成されていてもよい。または、学習済みモデル360は、教師データの入力データに車種を含み、車種を入力されることにより、車種に応じた習熟度を出力するよう学習されてもよい。
【0044】
学習済みモデル360は、例えば、習熟度を5段階など整数で表される複数段階に分けて出力してもよいし、例えば、1~5の間で、小数点を含んだ実数で出力してもよい。
【0045】
習熟度判定部36は、学習済みモデル360に運転者の各荷役作業時におけるフォークリフト1の所定の加速度を超えた回数、所定の減速度を超えた回数、停車回数および衝突回数を入力し、運転者の習熟度を出力させる。出力された習熟度は、習熟度記憶部37および抵抗値推定部38に送信される。
【0046】
習熟度記憶部37は、受信した習熟度を運転者情報(本実施形態では、運転者No.)と対応付けて記憶する。
【0047】
抵抗値推定部38は、運転者の習熟度に基づいて、運転者の適切なレバー抵抗値を推定する。あるデータによれば、習熟度が高いとされる運転者ほど、急発進、急ブレーキ、衝突が少ないとされている。このデータを逆の観点で見れば、習熟度が低い運転者ほど、急発進、急ブレーキ、衝突が多いといえる。そこで、例えば、抵抗値推定部38は、習熟度が低い運転者の急発進、急ブレーキ、衝突を減少させるために、習熟度が低い運転者ほど、適切なレバー抵抗値をより強く推定してもよい。
【0048】
また、抵抗値推定部38は、例えば、運転者情報に運転者の年齢、性別、体重が含まれていれば、運転者情報を参照し、習熟度に加えて運転者の年齢、性別、体重に基づいて運転者の適切なレバー抵抗値を推定してもよい。この場合における抵抗値推定部38が推定するレバー抵抗値に対する習熟度、年齢、性別、体重の重み付けは、限定されるものではない。また、抵抗値推定部38が推定する運転者に適切なレバー抵抗値は、フォークリフト1が備えるすべてのレバー14の抵抗値を推定するものでなくてもよい。すなわち、抵抗値推定部38は、本実施形態では、リフトレバー、ティルトレバー、リーチレバーおよびアクセルレバーのうちの少なくとも1つのレバー抵抗値を推定するものであればよい。
【0049】
抵抗値記憶部39は、運転者の適切なレバー抵抗値を運転者情報(本実施形態では、運転者No.)と対応付けて記憶する。
【0050】
抵抗値変更部18は、抵抗値記憶部39に記憶されている各運転者の適切なレバー抵抗値に基づいて、フォークリフト1のレバー14の抵抗値を、運転者特定部32によって特定された運転者に対応するレバー抵抗値に変更する。これにより、初心者によってアクセルレバーが急に倒されて急加速することを防止したり、急なプラギング制動による急減速を防止したりする。また、シフトレバーの抵抗値を強くすることにより、フォーク16のシフト動作を遅くさせることで、フォーク16の位置合わせを丁寧にさせることもできる。
【0051】
<レバー抵抗値変更のフロー>
次に、フォークリフト1のレバー抵抗値変更のフローを
図5を参照しつつあらためて説明する。
【0052】
(1)フォークリフト1は、運転者特定部32によって乗車する運転者を特定し、かつ、各検出部によって、各荷役作業時における運転者の操作によるフォークリフト1の所定の加速度を超えた回数、所定の減速度を超えた回数、停車回数および衝突回数を随時検出するとともに各記憶部に随時記憶する(
図5のS(ステップ)51参照)。
【0053】
(2)次いで、フォークリフト1は、記憶されている運転者の操作によるフォークリフト1の所定の加速度を超えた回数、所定の減速度を超えた回数、停車回数および衝突回数に基づいて、習熟度判定部36によって各運転者の習熟度を判定する(
図5のS52参照)。
【0054】
(3)次いで、フォークリフト1は、習熟度記憶部37によって各運転者の習熟度を運転者情報に対応付けて記憶する(
図5のS53参照)。このとき、各運転者に対応する習熟度が更新される。
【0055】
(4)次いで、フォークリフト1は、抵抗値推定部38によって、各運転者の習熟度に基づいて各運転者の適切なレバー抵抗値を推定する(
図5のS54参照)。
【0056】
(5)次いで、フォークリフト1は、抵抗値記憶部39によって、推定された各運転者の適切なレバー抵抗値を運転者情報に対応付けて記憶する。このとき、各運転者に対応する適切なレバー抵抗値が更新される(
図5のS55参照)。これまでの流れにより運転者の適切なレバー抵抗値がフォークリフト1のコンピュータ内でデータベース化されている。
【0057】
(6)次いで、フォークリフト1は、乗車する運転者をカメラ17によって撮影し、運転者特定部32によって運転者を特定するとともに(
図5のS56参照)、抵抗値記憶部39を参照して、特定された運転者に対応する適切なレバー抵抗値を特定する(
図5のS57参照)。
【0058】
(7)次いで、フォークリフト1は、特定されたレバー抵抗値にフォークリフト1のレバー14の抵抗値を変更する(
図5のS58参照)。
【0059】
このフローにより、フォークリフト1は、レバー14の抵抗値を各運転者の習熟度に応じて自動的に変更し、習熟度に応じたより適切な運転操作を運転者に提供することができる。フォークリフト1は、習熟度が低い運転者ほど適切なレバー抵抗値をより強く推定することにより、急激なレバー14の操作を防止することができる。また、フォークリフト1は、習熟度が高い運転者ほど、適切なレバー抵抗値をより弱く推定することにより、習熟度が高い運転者のレバー14の操作による負担を軽減させることができる。習熟度が高い運転者は、所定時間における作業量が多く、その結果、所定時間におけるレバー14の操作が多い可能性があるので、習熟度が高い運転者ほどレバー抵抗値を弱くすることが有用である可能性がある。
【0060】
以上、本発明に係るフォークリフト、レバー抵抗値変更システムおよびレバー抵抗値推定プログラムの一実施形態について説明してきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明に係るフォークリフト、レバー抵抗値変更システムおよびレバー抵抗値推定プログラムは、例えば、以下の変形例ごとに実施されたり、各変形例を適宜組み合わせて実施されてもよい。
【0061】
<変形例>
・フォークリフト1は、カウンター式フォークリフトであってもよい。また、フォークリフト1は、エンジン式のフォークリフトであってもよい。
【0062】
・抵抗値推定部38は、上記実施形態では、習熟度を参照して、運転者に適切なレバー抵抗値を推定したが、例えば、運転者の体重、筋肉量および年齢のすべてまたはそのいずれかをさらに参照して適切なレバー抵抗値を推定してもよい。この場合、運転者情報には、各運転者の体重、筋肉量および年齢のすべてまたはそのいずれかが含まれている。
【0063】
・フォークリフト1は、各運転者に対応する氏名や識別子などの入力、またはIDカード等の各運転者を特定させるツールの入力を受け付ける入力部を備えてもよい。この場合、運転者特定部32は、当該入力部が受け付けたこの運転者情報に基づいて、運転者を特定してもよい。
【0064】
・運転者情報には、各運転者を特定させるタグ、QRコード(登録商標)等が含まれていてもよい。この場合、ヘルメットが各運転者を特定させるタグ、QRコード(登録商標)等を有してもよく、フォークリフト1は、これら運転者情報を検出するツールを有してもよい。
【0065】
・習熟度判定部36は、学習済みモデル360を有さず、各運転者の各荷役作業時におけるフォークリフト1の所定の加速度を超えた回数、所定の減速度を超えた回数、停車回数および衝突回数のすべてまたはそのいずれかに基づいて、所定の式によって運転者の習熟度を判定してもよい。
【0066】
・習熟度記憶部37には、人手によって入力された各運転者の習熟度が記憶されていてもよい。また、各運転者の習熟度は人によって判定されてもよく、習熟度記憶部37は、当該判定結果を運転者情報と対応付けて記憶してもよい。また、すべての運転者の習熟度が人によって判定されるのであれば、制御部30は、習熟度判定部36を有しなくてもよい。
【0067】
・抵抗値記憶部39には、人手によって入力された各運転者の適切なレバー抵抗値が記憶されていてもよい。また、各運転者の適切なレバー抵抗値は、人によって推定されてもよく、抵抗値記憶部39は、当該推定結果を運転者情報と対応付けて記憶してもよい。また、すべての運転者の適切なレバー抵抗値が人によって推定されるのであれば、制御部30は、抵抗値推定部38を有しなくてもよい。なお、人によって運転者の適切なレバー抵抗値が推定される場合、習熟度によって適切なレバー抵抗値が推定されてもよい。
【0068】
・制御部30は、例えば、クラウド上に設けられたサーバコンピュータによって構成されてもよい。この場合、フォークリフト1は、このサーバコンピュータと互いに通信することにより、運転者に適切なレバー抵抗値を推定してもよい。
【0069】
・学習済みモデル360は、例えば、教師データとして、各運転者の各荷役作業時におけるフォークリフト1の停車回数または衝突回数が含まれていなくてもよい。この場合、学習済みモデル360は、各運転者の各荷役作業時におけるフォークリフト1の所定の加速度を超えた回数、所定の減速度を超えた回数、および停車回数または衝突回数を入力されると、習熟度を出力するよう構成される。
【符号の説明】
【0070】
1 フォークリフト
10 車輪
11 車体
12 運転席
13 ヘッドガード
14 レバー
15 マスト
16 フォーク
17 カメラ
18 抵抗値変更部
19 加減速検出部
20 停車検出部
21 衝突検出部
30 制御部
31 運転者記憶部
32 運転者特定部
33 加減速記憶部
34 停車回数記憶部
35 衝突回数記憶部
36 習熟度判定部
360 学習済みモデル
37 習熟度記憶部
38 抵抗値推定部
39 抵抗値記憶部