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特開2025-30695蛍光偏光測定装置及び偏光度の測定方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025030695
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】蛍光偏光測定装置及び偏光度の測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20250228BHJP
   G01N 21/21 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
G01N21/64 A
G01N21/21 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136206
(22)【出願日】2023-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】303018827
【氏名又は名称】Tianma Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100183955
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 悟郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100180334
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋美
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100174067
【弁理士】
【氏名又は名称】湯浅 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 成美
(72)【発明者】
【氏名】住吉 研
(72)【発明者】
【氏名】今井 阿由子
【テーマコード(参考)】
2G043
2G059
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043AA03
2G043BA16
2G043CA03
2G043EA01
2G043HA07
2G043HA09
2G043JA03
2G043KA02
2G059AA01
2G059BB04
2G059BB13
2G059CC16
2G059EE05
2G059EE07
2G059GG02
2G059HH02
2G059JJ03
2G059JJ07
2G059JJ18
2G059JJ19
2G059KK03
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM12
(57)【要約】
【課題】測定感度が高い蛍光偏光測定装置及び偏光度の測定方法を提供する。
【解決手段】蛍光偏光測定装置100は、光源部10と偏光方向変調素子30と検出部50と制御部70とを備える。光源部10は直線偏光の励起光ELを出射する。偏光方向変調素子30は、励起光ELの偏光方向を所定の周波数で空間変調し、測定対象溶液に、偏光方向を所定の周波数で空間変調された励起光ELを出射する。検出部50は、偏光方向を所定の周波数で空間変調された励起光ELによって、測定対象溶液から発する蛍光FLのうち、所定の方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布を検出する。制御部70は、検出された蛍光強度の空間分布から、所定の周波数と同一の周波数を有する成分と直流成分とを抽出し、抽出された成分と直流成分に基づいて測定対象溶液の偏光度を求める。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光の励起光を出射する、光源部と、
前記励起光の偏光方向を所定の周波数で空間変調し、測定対象溶液に、偏光方向を前記所定の周波数で空間変調された前記励起光を出射する、偏光方向変調素子と、
偏光方向を前記所定の周波数で空間変調された前記励起光によって、前記測定対象溶液から発する蛍光のうち、所定の方向の偏光方向を有する前記蛍光の蛍光強度の空間分布を検出する、検出部と、
検出された前記蛍光強度の空間分布から、前記所定の周波数と同一の周波数を有する成分と直流成分とを抽出し、抽出された前記成分と前記直流成分に基づいて、前記測定対象溶液の偏光度を求める制御部と、を備える、
蛍光偏光測定装置。
【請求項2】
前記光源部は、前記励起光の偏光方向を直交する2つの方向に切り替えて、出射する、
請求項1に記載の蛍光偏光測定装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記測定対象溶液から発する前記蛍光のうち、前記所定の方向の偏光方向を有する前記蛍光を選択する偏光調整素子と、前記所定の方向の偏光方向を有する前記蛍光の蛍光強度の空間分布を検出する受光部と、を備える、
請求項1に記載の蛍光偏光測定装置。
【請求項4】
前記偏光調整素子は、前記所定の方向の偏光方向を有する前記蛍光を、前記光源部から出射される前記励起光の偏光方向に水平な偏光方向を有する前記蛍光と、前記光源部から出射される前記励起光の偏光方向に垂直な偏光方向を有する前記蛍光とに切り替える、
請求項3に記載の蛍光偏光測定装置。
【請求項5】
前記偏光調整素子が偏光ビームスプリッタである、
請求項3に記載の蛍光偏光測定装置。
【請求項6】
前記測定対象溶液は、測定対象物質と、前記測定対象物質を蛍光標識した蛍光標識誘導体と、前記測定対象物質と特異的に結合する抗体とを含む、
請求項1に記載の蛍光偏光測定装置。
【請求項7】
偏光方向を所定の周波数で空間変調された励起光を、測定対象溶液に照射する工程と、
前記測定対象溶液から発せられる蛍光のうち、所定の方向の偏光方向を有する前記蛍光の蛍光強度の空間分布を検出する工程と、
検出された前記蛍光強度の空間分布から、前記所定の周波数と同一の周波数を有する成分と直流成分とを抽出する工程と、
抽出された前記成分と前記直流成分とに基づいて、前記測定対象溶液の偏光度を求める工程と、を含む、
偏光度の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蛍光偏光測定装置及び偏光度の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光を用いた免疫分析法として、抗原抗体反応を利用して測定対象物質を検出する蛍光偏光免疫分析法(FPIA:Fluorescence Polarization Immunoassay)が知られている。例えば、特許文献1は、測定された蛍光の偏光度から測定抗原(測定対象物質)の濃度を求める方法を開示している。
【0003】
また、特許文献2は、サンプルから発した蛍光の偏光面を周期的に(時間的に)90°回転させる変調手段を備える、蛍光測定装置を開示している。特許文献2では、変調手段が蛍光の偏光面を回転させるので、偏光子を回転させることなく、励起光の偏光方向と平行な偏光方向を有する蛍光の蛍光強度と、励起光の偏光方向と垂直な偏光方向を有する蛍光の蛍光強度とを、直接、測定できる。これにより、特許文献2の蛍光測定装置は、検出器、フィルタ等の偏光特性の影響を抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3-103765号公報
【特許文献2】米国特許第6970241号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2の蛍光測定装置では、検出器、フィルタ等の偏光特性の影響を抑制できるが、蛍光強度が小さい場合、十分なSN比(信号対雑音比)で蛍光強度を得ることは、困難である。
【0006】
本開示は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、測定感度が高い蛍光偏光測定装置及び偏光度の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の第1の観点に係る蛍光偏光測定装置は、
直線偏光の励起光を出射する、光源部と、
前記励起光の偏光方向を所定の周波数で空間変調し、測定対象溶液に、偏光方向を前記所定の周波数で空間変調された前記励起光を出射する、偏光方向変調素子と、
偏光方向を前記所定の周波数で空間変調された前記励起光によって、前記測定対象溶液から発する蛍光のうち、所定の方向の偏光方向を有する前記蛍光の蛍光強度の空間分布を検出する、検出部と、
検出された前記蛍光強度の空間分布から、前記所定の周波数と同一の周波数を有する成分と直流成分とを抽出し、抽出された前記成分と前記直流成分に基づいて、前記測定対象溶液の偏光度を求める制御部と、を備える。
【0008】
本開示の第2の観点に係る偏光度の測定方法は、
偏光方向を所定の周波数で空間変調された励起光を、測定対象溶液に照射する工程と、
前記測定対象溶液から発せられる蛍光のうち、所定の方向の偏光方向を有する前記蛍光の蛍光強度の空間分布を検出する工程と、
検出された前記蛍光強度の空間分布から、前記所定の周波数と同一の周波数を有する成分と直流成分とを抽出する工程と、
抽出された前記成分と前記直流成分とに基づいて、前記測定対象溶液の偏光度を求める工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、蛍光強度の空間分布から、励起光の偏光方向を空間変調する所定の周波数と同一の周波数を有する成分を抽出するので、測定感度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1に係る蛍光測定装置を示す模式図である。
図2】実施形態1に係るマイクロデバイスを示す平面図である。
図3図2に示すマイクロデバイスをA-A線で矢視した断面図である。
図4】実施形態1に係る、偏光方向変調素子の光軸と励起光の偏光成分の強度とを示す図である。
図5】実施形態1に係る、液晶分子の配向方向と偏光方向変調素子の光軸とを示す図である。
図6】実施形態1に係る制御部の構成を示すブロック図である。
図7】実施形態1に係る画像データから求められる蛍光強度を示す図である。
図8】実施形態1に係る、偏光方向変調素子の空間周波数と同一の周波数を有する成分と直流成分とを示す図である。
図9】実施形態1に係る、励起光の偏光方向と平行な偏光方向を有する蛍光の蛍光強度と、励起光の偏光方向と垂直な偏光方向を有する蛍光の蛍光強度とを説明するための図である。
図10】実施形態1に係る制御部のハードウェア構成を示す図である。
図11】実施形態1に係る励起光の強度分布を説明する図である。
図12】実施形態1に係る検出処理を示すフローチャートである。
図13】実施形態1に係る偏光度測定処理を示すフローチャートである。
図14】実施形態2に係る、X方向成分とX方向直流成分とZ方向成分とZ方向直流成分を示す図である。
図15】実施形態2に係る、励起光の偏光成分の強度と、蛍光のX方向成分とX方向直流成分とZ方向成分とZ方向直流成分とを示す図である。
図16】実施形態2に係る偏光度測定処理を示すフローチャートである。
図17】実施形態3に係る第2励起光の偏光成分の強度を示す図である。
図18】実施形態3に係る、第1励起光の偏光成分の強度と、蛍光の第1成分と第1直流成分とを示す図である。
図19】実施形態3に係る、第2励起光の偏光成分の強度と、蛍光の第2成分と第2直流成分とを示す図である。
図20】実施形態3に係る、蛍光の第1成分と第1直流成分と第2成分と第2直流成分とを示す図である。
図21】実施形態3に係る偏光度測定処理を示すフローチャートである。
図22】実施形態4に係る蛍光測定装置を示す模式図である。
図23】実施形態4に係る、励起光の偏光成分の強度と、蛍光のX方向成分とX方向直流成分とY方向成分とY方向直流成分とを示す図である。
図24】変形例に係る、偏光方向変調素子の光軸と励起光の偏光成分の強度と蛍光強度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る蛍光偏光測定装置について、図面を参照して説明する。
【0012】
<実施形態1>
図1図12を参照して、本実施形態に係る蛍光偏光測定装置100を説明する。蛍光偏光測定装置100は、例えば、蛍光偏光免疫分析法を用いた、測定対象溶液に含まれる測定対象物質の検出に使用される。
【0013】
蛍光偏光測定装置100は、図1に示すように、光源部10と、偏光方向変調素子30と、ダイクロイックミラー40と、対物レンズ42と、検出部50と、制御部70とを備える。光源部10は、直線偏光の励起光ELを出射する。偏光方向変調素子30は、光源部10から出射された励起光ELの偏光方向を所定の周波数で空間変調する。偏光方向を所定の周波数で空間変調された励起光ELは、ダイクロイックミラー40と対物レンズ42とを介して、後述するマイクロデバイス200のマイクロ流路220に導入された、測定対象溶液に照射される。検出部50は、測定対象溶液から発せられる蛍光FLのうち、所定の方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布を検出する。制御部70は、蛍光偏光測定装置100の各部を制御する。また、制御部70は、検出された蛍光強度の空間分布から、測定対象溶液の偏光度Pを求める。さらに、制御部70は、測定対象溶液の偏光度Pから、測定対象物質の濃度を求める。
【0014】
なお、理解を容易にするため、本明細書では、図1における蛍光偏光測定装置100の左方向(紙面の左方向)を+Z方向、上方向(紙面の上方向)を+Y方向、+Y方向と+Z方向に垂直な方向(紙面の手前方向)を+X方向として説明する。また、励起光ELは、後述する蛍光標識誘導体を励起し、蛍光標識誘導体に蛍光を発光させる光である。光源部10と偏光方向変調素子30とダイクロイックミラー40と対物レンズ42は照明光学系を形成し、対物レンズ42とダイクロイックミラー40と検出部50は観察光学系を形成している。
【0015】
まず、測定対象溶液とマイクロデバイス200について、説明する。測定対象溶液は、測定対象物質と蛍光標識誘導体と抗体とを含む。測定対象物質は、蛍光偏光測定装置100の検出対象である。測定対象物質は、蛍光免疫分析法で検出可能な化合物であればよい。測定対象物質として、抗生物質、生理活性物質、カビ毒等が挙げられる。具体的な測定対象物質として、プロスタグランジンE2、β-ラクトグロブリン、クロラムフェニコール、デオキシニレバノール等が挙げられる。蛍光標識誘導体は、測定対象物質を蛍光物質により蛍光標識した誘導体である。蛍光標識誘導体は、公知の方法を用いて、測定対象物質に蛍光物質を結合することにより得られる。蛍光物質は、フルオレセイン(励起光ELの波長:494nm、蛍光FLの波長:521nm)、ローダミンB(励起光ELの波長:550nm、蛍光FLの波長:580nm)等である。抗体は、抗原抗体反応により、測定対象物質と特異的に結合する。抗体は、例えば、測定対象物質を宿主動物(例えば、ねずみ、牛)に接種した後、宿主動物が産生した血液中の抗体を回収し精製することにより、得られる。また、抗体として、市販されている抗体も利用できる。
【0016】
測定対象物質と蛍光標識誘導体は、抗原抗体反応により、抗体に競合して特異的に結合する。蛍光偏光免疫分析法では、測定対象溶液に含まれる蛍光標識誘導体が発する蛍光FLの偏光度Pを得て、得られた偏光度Pと予め作成された検量線とから、測定対象物質の濃度を求める。
【0017】
抗体と結合していない蛍光標識誘導体は、測定対象溶液中で激しく動いているので、偏光した励起光ELが抗体と結合していない蛍光標識誘導体に照射された場合、蛍光FLはランダムに放射される。一方、抗体と結合している蛍光標識誘導体は、測定対象溶液中で動きを制限されるので、偏光した励起光ELが抗体と結合している蛍光標識誘導体に照射された場合、励起光ELの偏光方向に偏った蛍光FLが放射される。励起光ELの偏光方向と平行な偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度Ihと、励起光ELの偏光方向と垂直な偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度Ivとを測定し、蛍光強度の偏りを偏光度Pとして求める。偏光度Pは、抗体と結合している蛍光標識誘導体の量に依存するので、得られた偏光度Pと予め作成された検量線とから、測定対象物質の濃度を得ることができる。なお、偏光度Pは、P=(Ih-Iv)/(Ih+Iv)と表される。
【0018】
マイクロデバイス200は、図2図3に示すように、第1基板202と第2基板204と隔壁206と3つのマイクロ流路220とを備える。マイクロ流路220のそれぞれに、測定対象溶液が導入される。マイクロデバイス200は、蛍光偏光測定装置100のステージSTに設置される。
【0019】
マイクロデバイス200の第1基板202は、平板状の石英ガラス基板である。偏光方向を所定の周波数で空間変調された励起光ELが、第1基板202からマイクロデバイス200に入射する。励起光ELは、-Z方向から図2に示す測定領域Sに照射され、第1基板202の主面202aに垂直に入射する。
【0020】
マイクロデバイス200の第2基板204は、平板状の基板である。第2基板204は、自家蛍光が小さい材料から形成される。第2基板204は、例えば、カーボンブラックを含むポリジメチルシロキサン(PDMS:Polydimethylsiloxane)から形成される。第2基板204は第1基板202に対向し、第2基板204と第1基板202は隔壁206を挟む。
【0021】
マイクロデバイス200の隔壁206は、第1基板202と第2基板204に挟まれてマイクロ流路220を形成する。隔壁206は、自家蛍光が小さい材料から形成される。また、隔壁206は、励起光EL、蛍光FL等の光を吸収する材料から形成されることが好ましい。本実施形態では、隔壁206は、第2基板204と一体に形成されている。
【0022】
マイクロデバイス200のマイクロ流路220は、測定領域S内において、X方向に平行に延びる。測定領域S内におけるマイクロ流路220の幅は、例えば、200μmである。マイクロ流路220は、それぞれ、第2基板204と隔壁206とを貫通する2つの開口部222を有する。測定対象溶液が、開口部222から導入又は排出される。
【0023】
次に、蛍光偏光測定装置100の各部を説明する。蛍光偏光測定装置100の光源部10は、図1に示すように、光源12と、集光レンズ14と、アイリス16と、コリメータ18と、第1偏光調整素子20と、励起光フィルタ22とを有する。
【0024】
光源12は、励起光ELを含む光を+Z方向に出射する。光源12は、例えばLED(Light emitting diode)素子から構成される。光源12から出射された光は、集光レンズ14により集光された後、アイリス16を通過する。アイリス16は、外光(光源12から出射された光以外の光)の影響を低減する。アイリス16を通過した光は、コリメータ18に入射する。
【0025】
コリメータ18は、入射した光を平行光に変換する。平行光に変換された光は、第1偏光調整素子20に入射する。
【0026】
第1偏光調整素子20は、入射した光のうち、所定の方向の偏光方向を有する光を選択して、所定の方向の偏光方向を有する光を出射する。第1偏光調整素子20から出射した光は、励起光フィルタ22に入射する。本実施形態では、第1偏光調整素子20における所定の方向はX方向であり、第1偏光調整素子20は偏光板である。すなわち、第1偏光調整素子20に入射した励起光ELを含む光は、X方向の偏光方向を有する直線偏光として出射され、励起光フィルタ22に入射する。励起光フィルタ22は、光源12から出射された光のうち、励起光EL以外の光を除く。励起光フィルタ22は、例えば、バンドパスフィルタである。
【0027】
したがって、X方向の偏光方向を有する励起光ELが、光源部10から+Z方向に出射される。X方向の偏光方向を有する励起光ELは、偏光方向変調素子30に入射する。
【0028】
蛍光偏光測定装置100の偏光方向変調素子30は、X方向の偏光方向を有する励起光ELの偏光方向を、X方向に沿って、所定の周波数(所定の周期)で空間変調する。偏光方向変調素子30は、例えば、光軸がX方向に沿って連続的に変化する半波長板である。本実施形態の偏光方向変調素子(半波長板)30では、図4に示すように、光軸が、X方向に沿って、-X方向から+X方向に連続的に180°回転している。これにより、励起光ELの偏光方向はX方向に沿ってX方向から連続的に回転し、偏光方向変調素子30から出射される励起光ELにおける、X方向の偏光方向を有する成分とY方向の偏光方向を有する成分の強度は、図4に示すように、偏光方向変調素子30が偏光方向を変調する所定の周波数と同じ周波数で、周期的に増減する。X方向の偏光方向を有する成分とY方向の偏光方向を有する成分の強度は、逆相(逆位相)となっている。
偏光方向変調素子30は、空間変調した励起光ELをダイクロイックミラー40に出射する。
【0029】
偏光方向変調素子30は、例えば、ネマティック液晶をホモジニアス配向させた液晶セルから形成される。この液晶セルでは、液晶分子の配向方向が、図5に示すように、X方向に沿って、連続的に180°回転している。また、液晶セルのリターデーション値は、励起光ELの波長の1/2である。
【0030】
図1に戻り、蛍光偏光測定装置100のダイクロイックミラー40は空間変調された励起光ELを+Z方向に透過し、マイクロデバイス200から出射された蛍光FLを検出部50(+Y方向)に反射する。蛍光偏光測定装置100の対物レンズ42は、ダイクロイックミラー40を透過した励起光ELと、蛍光FLとを集光する。
【0031】
偏光方向変調素子30によって空間変調された励起光ELは、ダイクロイックミラー40と対物レンズ42を介して、マイクロデバイス200の測定領域Sに照射される。これにより、蛍光FLが、マイクロデバイス200のマイクロ流路220に導入された測定対象溶液(蛍光標識誘導体)から発せられる。蛍光FLは、対物レンズ42とダイクロイックミラー40とを介して、+Y方向に進行し、検出部50(後述する吸収フィルタ52)に入射する。
【0032】
蛍光偏光測定装置100の検出部50は、ダイクロイックミラー40の+Y側に配置される。検出部50は、吸収フィルタ52と、第2偏光調整素子54と、結像レンズ56と、第1受光部58Aとを有する。
【0033】
吸収フィルタ52は、マイクロデバイス200から出射された蛍光FLと散乱光、漏れ光等とを分離し、蛍光FLを透過する。吸収フィルタ52は、例えば、バンドパスフィルタである。吸収フィルタ52から出射した蛍光FLは、第2偏光調整素子54に入射する。
【0034】
第2偏光調整素子54は、入射した蛍光FL光のうち、所定の方向の偏光方向を有する蛍光FLを選択して、所定の方向の偏光方向を有する蛍光FLを出射する。本実施形態では、第2偏光調整素子54における所定の方向はX方向であり、第2偏光調整素子54は偏光板である。したがって、X方向の偏光方向を有する蛍光FLが、第2偏光調整素子54から出射する。X方向の偏光方向を有する蛍光FLは、結像レンズ56を介して、第1受光部58Aに入射する。
【0035】
第1受光部58Aは、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。第1受光部58Aは、所定の偏光方向(X方向の偏光方向)を有する蛍光FLの、蛍光強度の空間分布を画像として検出する。第1受光部58Aは、蛍光FLの蛍光強度の空間分布に応じた画像データを生成して、画像データを制御部70に送信する。なお、マイクロデバイス200の第1基板202の主面202aと第1受光部58Aの撮像面は、結像関係にある。
【0036】
蛍光偏光測定装置100の制御部70は、所定の偏光方向(X方向の偏光方向)を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布から、偏光方向変調素子30がX方向の偏光方向を有する励起光ELの偏光方向をX方向に沿って空間変調する所定の周波数と、同一の周波数を有する成分と、直流成分とを抽出する。制御部70は、抽出された成分と直流成分に基づいて測定対象溶液の偏光度Pを求め、さらに、偏光度Pと検量線から測定対象物質の濃度を求める。制御部70は、図6に示すように、入出力部72と、記憶部74と、抽出部76と、偏光度算出部78と、濃度算出部80とを有する。制御部70は、更に、光源制御部82と、検出制御部84とを有する。なお、以下では、偏光方向変調素子30がX方向の偏光方向を有する励起光ELの偏光方向を空間変調する所定の周波数を、偏光方向変調素子30の空間周波数と記載する。
【0037】
入出力部72は、制御部70と各部との間の信号、データ等を入出力する。
【0038】
記憶部74は、プログラム、蛍光FLの蛍光強度の空間分布に応じた画像データ、偏光度Pと測定対象物質の濃度との検量線を表すデータ等を記憶する。
【0039】
抽出部76は、蛍光FLの蛍光強度の空間分布に応じた画像データから、蛍光FLの蛍光強度の空間分布を求める。さらに、抽出部76は、求められた蛍光FLの蛍光強度の空間分布から、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分と直流成分とを抽出する。
【0040】
ここで、画像データから求められた蛍光FLの蛍光強度の空間分布と、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分について、説明する。
【0041】
本実施形態では、偏光方向変調素子30によって空間変調された励起光ELが、測定対象溶液(マイクロデバイス200)に照射される。偏光方向変調素子30によって空間変調された励起光ELは、図4に示すように、強度が偏光方向変調素子30の空間周波数と同じ周波数で周期的に増減する、X方向の偏光方向を有する成分とY方向の偏光方向を有する成分を有している。一方、検出部50は、X方向の偏光方向を有する蛍光FLの、蛍光強度の空間分布を画像として検出する。したがって、画像データから得られる蛍光FLの蛍光強度の空間分布は、励起光ELのうちのX方向の偏光方向を有する成分の強度と同様な周期性を有する。しかし、測定対象物質の濃度が低い場合、画像データから得られる蛍光FLの蛍光強度の空間分布は、図7に示すように、迷光、振動、受光部の感度のバラツキ等によるノイズを多く含む空間分布となる。このようなノイズの大きい蛍光強度の空間分布から、直接、偏光度Pを求めることは困難である。
【0042】
そこで、抽出部76は、求められた蛍光FLの蛍光強度の空間分布から、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分と直流成分とを抽出する。求められた蛍光FLの蛍光強度の空間分布に含まれるノイズの空間周波数と偏光方向変調素子30の空間周波数は、異なるので、求められた蛍光FLの蛍光強度の空間分布から偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分を抽出することにより、蛍光FLの蛍光強度のSN比を向上できる。なお、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分と直流成分とを抽出するとは、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分を表す関数を求めている、とも言える。
【0043】
具体的には、抽出部76は、画像データから求められた蛍光FLの蛍光強度の空間分布に対して、偏光方向変調素子30の空間周波数を用いてフーリエ変換を施し、次いで、逆フーリエ変換を施すことにより、図8に示すように、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分と直流成分(DCオフセット)とを求める。
【0044】
偏光度算出部78は、抽出部76によって求められた、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分と直流成分から、偏光度Pを求める。上述したように、測定対象溶液に照射される励起光ELの、X方向の偏光方向を有する成分とY方向の偏光方向を有する成分の強度は逆相関係にある。また、検出部50は、X方向の偏光方向を有する蛍光FLの、蛍光強度の空間分布を検出している。したがって、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分(直流成分を含む)における最大値は、図9に示すように、励起光ELの偏光方向と平行な偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度Ihに相当する。また、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分(直流成分を含む)における最小値は、励起光ELの偏光方向と垂直な偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度Ivに相当する。したがって、偏光度算出部78は、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分における、最大値と最小値から、偏光度Pを求める。蛍光FLの蛍光強度のSN比が高いので、蛍光偏光測定装置100は高い測定感度で偏光度Pを検出できる。
【0045】
濃度算出部80は、偏光度算出部78によって求められた偏光度Pと、偏光度Pと測定対象物質の濃度との検量線から、測定対象物質の濃度を求める。
【0046】
光源制御部82は、光源部10(光源12)を制御する。検出制御部84は、検出部50(第1受光部58A)を制御する。
【0047】
図10は、制御部70のハードウェアの構成を示す。制御部70は、CPU(Central Processing Unit)92と、ROM(Read Only Memory)93と、RAM(Random Access Memory)94と、入出力インターフェース96から構成される。CPU92はROM93に記憶されているプログラムを実行する。ROM93は、プログラム、データ等を記憶している。RAM94は、データを記憶する。入出力インターフェース96は、各部の間の信号、データ等を入出力する。制御部70の機能は、CPU92のプログラムの実行により、実現される。
【0048】
以上のように、求められた蛍光FLの蛍光強度の空間分布から、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分を抽出するので、蛍光偏光測定装置100は、ノイズの影響を抑えて、蛍光偏光測定装置100の偏光度Pの測定感度を向上できる。さらに、図11に示すような、測定対象溶液に照射される励起光ELの強度が不均一である場合においても、蛍光偏光測定装置100は、励起光ELの強度分布の影響を抑えて、偏光度Pを得ることができる。また、偏光度Pの測定感度が高いので、蛍光偏光測定装置100は、測定対象物質の濃度が低くとも、測定対象物質を正確に検出できる。
【0049】
さらに、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分における最大値が蛍光強度Ihに相当し、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分における最小値が蛍光強度Ivに相当する。したがって、蛍光偏光測定装置100は、測定対象溶液に照射する励起光ELの偏光方向と検出する蛍光FLの偏光方向のいずれも切り替えることなく、1つの画像データから偏光度Pを得ることができ、測定時間を短縮できる。
【0050】
次に、図12図13を参照して、蛍光偏光測定装置100の検出処理(すなわち、測定対象物質の検出方法)を説明する。検出処理は、図11に示すように、偏光度Pを求める偏光度測定処理(ステップS100)、測定対象物質の濃度を検出する濃度算出処理(ステップS200)の順に行われる。
【0051】
図13を参照して、偏光度測定処理(ステップS100)を説明する。偏光度測定処理(ステップS100)では、マイクロデバイス200のマイクロ流路220に導入された測定対象溶液が発する蛍光FLから、測定対象溶液の偏光度Pを求める。まず、制御部70は、光源12を制御することにより、ステージSTに設置されたマイクロデバイス200のマイクロ流路220に導入された測定対象溶液に、偏光方向を所定の周波数で空間変調された励起光ELを照射する(ステップS110)。光源12から出射された励起光ELを含む光は、第1偏光調整素子20、偏光方向変調素子30等を介して、偏光方向を所定の周波数(偏光方向変調素子30の空間周波数)で空間変調された励起光ELに変換される。そして、偏光方向を所定の周波数で空間変調された励起光ELが、測定対象溶液に照射される。これにより、蛍光FLが、測定対象溶液から発せられる。
【0052】
次に、制御部70は、測定対象溶液から発せられる蛍光FLのうち、所定の方向(X方向)の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布を検出する(ステップS120)。具体的には、測定対象溶液から発せられた蛍光FLは、ダイクロイックミラー40、第2偏光調整素子54等を介して、所定の方向(X方向)の偏光方向を有する蛍光FLとして、第1受光部58Aに入射する。制御部70の抽出部76は、第1受光部58Aから所得された、蛍光FLの蛍光強度の空間分布に応じた画像データから、蛍光FLの蛍光強度の空間分布を求める。
【0053】
さらに、制御部70は、求められた蛍光FLの蛍光強度の空間分布から、所定の周波数(偏光方向変調素子30の空間周波数)と同一の周波数を有する成分と直流成分とを抽出する(ステップS130)。具体的には、制御部70の抽出部76は、蛍光強度の空間分布に対して、偏光方向変調素子30の空間周波数を用いてフーリエ変換を施し、次いで、逆フーリエ変換を施す。これにより、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分と直流成分とを抽出できる。検出された蛍光強度の空間分布には、蛍光強度の他に、ノイズが含まれている。ノイズの空間周波数と偏光方向変調素子30の空間周波数は、異なるので、検出された蛍光FLの蛍光強度の空間分布から偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分を抽出することにより、蛍光FLの蛍光強度のSN比を向上できる。
【0054】
制御部70は、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分と直流成分とに基づいて、測定対象溶液の偏光度Pを求める(ステップS140)。具体的には、制御部70の偏光度算出部78は、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分における最大値を蛍光強度Ihと、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分における最小値を蛍光強度Ivとして、偏光度Pを求める。
【0055】
図12に戻り、濃度算出処理(ステップS200)を説明する。濃度算出処理(ステップS200)では、ステップS140により求められた偏光度Pと、予め測定された検量線から測定対象溶液に含まれる測定対象物質の濃度を求める。具体的には、制御部70の濃度算出部80は、偏光度算出部78によって求められた偏光度Pと、偏光度Pと測定対象物質の濃度との検量線から、測定対象物質の濃度を求める。
濃度算出処理(ステップS200)が終了すると、検出処理は終了する。
【0056】
以上のように、蛍光偏光測定装置100は、検出された蛍光FLの蛍光強度の空間分布から、励起光ELを空間変調する所定の周波数と同一の周波数を有する成分を抽出するので、ノイズを抑えて、高い測定感度で偏光度Pを検出できる。また、蛍光偏光測定装置100は、励起光ELの強度分布の影響を抑えて、高い測定感度で偏光度Pを検出できる。蛍光偏光測定装置100は、偏光度Pの測定感度が高いので、測定対象物質の濃度が低くとも、測定対象物質を正確に検出できる。
【0057】
さらに、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分における最大値が蛍光強度Ihに相当し、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分における最小値が蛍光強度Ivに相当するので、蛍光偏光測定装置100は1つの画像データから偏光度Pを得ることができる。
【0058】
<実施形態2>
実施形態1では、検出部50は、X方向の偏光方向を有する蛍光FLの、蛍光強度の空間分布を検出する。検出部50は、X方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布と、Z方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布とを検出してもよい。
【0059】
本実施形態の蛍光偏光測定装置100は、実施形態1の蛍光偏光測定装置100と同様に、光源部10と、偏光方向変調素子30と、ダイクロイックミラー40と、対物レンズ42と、検出部50と、制御部70とを備える。本実施形態の光源部10~対物レンズ42の構成は、実施形態1と同様であるので、本実施形態の検出部50と制御部70とを説明する。
【0060】
本実施形態の検出部50は、実施形態1の検出部50と同様に、吸収フィルタ52と、第2偏光調整素子54と、結像レンズ56と、第1受光部58Aとを有する。本実施形態の吸収フィルタ52と結像レンズ56の構成は、実施形態1と同様である。
【0061】
本実施形態の第2偏光調整素子54は、第2偏光調整素子54から出射する蛍光FLの偏光方向を、X方向とZ方向に切り替える。本実施形態の第2偏光調整素子54から出射された蛍光FLは、結像レンズ56を介して、第1受光部58Aに入射する。本実施形態の第2偏光調整素子54は、TN液晶セル、回転可能に保持された偏光板等である。本実施形態の第2偏光調整素子54は、制御部70の検出制御部84により制御される。なお、光源部10はX方向の偏光方向を有する励起光ELを出射し、蛍光FLは+Y方向に進行しているので、本実施形態の第2偏光調整素子54は、第2偏光調整素子54から出射する蛍光FLを、光源部10から出射される励起光ELの偏光方向に水平な偏光方向を有する蛍光FLと、光源部10から出射される励起光ELの偏光方向に垂直な偏光方向を有する蛍光FLに切り替えている。
【0062】
本実施形態の第1受光部58Aは、実施形態1の第1受光部58Aと同様に、X方向の偏光方向を有する蛍光FLの、蛍光強度の空間分布を画像として検出する。また、本実施形態の第1受光部58Aは、Z方向の偏光方向を有する蛍光FLの、蛍光強度の空間分布を画像として検出する。本実施形態の第1受光部58Aは、X方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布に応じた画像データと、Z方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布に応じた画像データとを、制御部70に送信する。
【0063】
本実施形態の制御部70は、X方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布から、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分と、直流成分とを抽出する。また、本実施形態の制御部70は、Z方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布から、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分と、直流成分とを抽出する。本実施形態の制御部70は、抽出された成分と直流成分に基づいて、測定対象溶液の偏光度Pを求める。さらに、本実施形態の制御部70は、偏光度Pと検量線から測定対象物質の濃度を求める。本実施形態の制御部70は、実施形態1の制御部70と同様に、入出力部72~検出制御部84を有する。本実施形態の入出力部72と記憶部74と濃度算出部80と光源制御部82と検出制御部84の構成は、実施形態1と同様である。
【0064】
本実施形態の抽出部76は、蛍光FLの蛍光強度の空間分布に応じた画像データから、蛍光FLの蛍光強度の空間分布を求める。本実施形態では、X方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布と、Z方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布が、求められる。求められた蛍光FLの蛍光強度の空間分布は、実施形態1と同様に、ノイズを含んでいる。
【0065】
本実施形態の抽出部76は、実施形態1の抽出部76と同様に、求められた蛍光FLの蛍光強度の空間分布から、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分と直流成分とを抽出する。すなわち、本実施形態では、抽出部76は、X方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布から、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分(以下、X方向成分と記載)と直流成分(以下、X方向直流成分と記載)とを抽出する。また、抽出部76は、Z方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布から、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分(Z方向成分と記載)と直流成分(以下、Z方向直流成分と記載)を抽出する。これにより、実施形態1と同様に、蛍光FLの蛍光強度のSN比を向上できる。
【0066】
具体的には、本実施形態の抽出部76は、実施形態1と同様に、蛍光FLの蛍光強度の空間分布に対して、偏光方向変調素子30の空間周波数を用いて、フーリエ変換と逆フーリエ変換を施す。これにより、図14に示すような、X方向成分とX方向直流成分とZ方向成分とZ方向直流成分が求められる。
【0067】
本実施形態の偏光度算出部78は、X方向成分とX方向直流成分と、Z方向成分とZ方向直流成分のうちの少なくとも一方から偏光度Pを求める。本実施形態では、実施形態1と同様に、図4に示す偏光成分の強度の空間分布を有する励起光ELが測定対象溶液に照射される。したがって、図15に示すように、励起光ELの偏光成分の強度とX方向成分及びZ方向成分は同期しており、X方向成分(直流成分を含む)又はZ方向成分(直流成分を含む)の最大値が励起光ELの偏光方向と平行な偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度Ihに相当する。また、X方向成分(直流成分を含む)又はZ方向成分(直流成分を含む)の最小値が励起光ELの偏光方向と垂直な偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度Ivに相当する。したがって、本実施形態の偏光度算出部78は、X方向成分又はZ方向成分の最大値と、X方向成分又はZ方向成分の最小値から偏光度Pを求める。
【0068】
本実施形態では、図15に示すように、マイクロ流路220の同じ位置(同じX座標)で、蛍光FLの蛍光強度Ihと蛍光FLの蛍光強度Ivが得られる。したがって、複数の位置における、蛍光FLの蛍光強度Ihと蛍光FLの蛍光強度Ivを比較することにより、マイクロ流路220内の異物によるノイズ、第1受光部58Aの輝点ノイズ等を、容易に見つけ出すことができる。
【0069】
次に、本実施形態の検出処理を説明する。本実施形態の検出処理は、実施形態1と同様に、偏光度測定処理(ステップS100)、濃度算出処理(ステップS200)の順に行われる(図12)。本実施形態の濃度算出処理(ステップS200)は、実施形態1と同様であるので、図16を参照して、本実施形態の偏光度測定処理(ステップS100)を説明する。
【0070】
本実施形態の偏光度測定処理(ステップS100)では、制御部70は、まず、第2偏光調整素子54から出射する蛍光FLの偏光方向をX方向に制御して、測定対象溶液に、偏光方向を所定の周波数で空間変調された励起光ELを照射する(ステップS112a)。次に、制御部70は、第1受光部58Aから、測定対象溶液から発せられる蛍光FLのうち、X方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布に応じた画像データを取得する(ステップS114a)。さらに、制御部70は、第2偏光調整素子54から出射する蛍光FLの偏光方向をZ方向に制御して、測定対象溶液に、偏光方向を所定の周波数で空間変調された励起光ELを照射する(ステップS112b)。そして、制御部70は、第1受光部58Aから、測定対象溶液から発せられる蛍光FLのうち、Z方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布に応じた画像データを取得する(ステップS114b)。
【0071】
制御部70は、測定対象溶液から発せられる蛍光FLのうち、所定の方向(X方向とZ方向)の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布を検出する(ステップS120)。具体的には、制御部70の抽出部76は、X方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布に応じた画像データから、X方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布を求める。また、制御部70の抽出部76は、Z方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布に応じた画像データから、Z方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布を求める。
【0072】
さらに、制御部70は、求められた蛍光強度の空間分布から、所定の周波数(偏光方向変調素子30の空間周波数)と同一の周波数を有する成分と直流成分とを抽出する(ステップS130)。具体的には、抽出部76は、X方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布から、X方向成分とX方向直流成分とを抽出する。また、抽出部76は、Z方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布から、Z方向成分とZ方向直流成分とを抽出する。X方向成分とX方向直流成分と、Z方向成分とZ方向直流成分は、実施形態1と同様に、蛍光強度の空間分布に対して、偏光方向変調素子30の空間周波数を用いて、フーリエ変換と逆フーリエ変換を施すことによって、抽出される。
【0073】
制御部70は、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分と直流成分とに基づいて、測定対象溶液の偏光度Pを求める(ステップS140)。具体的には、制御部70の偏光度算出部78は、X方向成分(直流成分を含む)又はZ方向成分(直流成分を含む)の最大値と、X方向成分(直流成分を含む)又はZ方向成分(直流成分を含む)の最小値から偏光度Pを求める。
【0074】
以上のように、本実施形態の蛍光偏光測定装置100も、実施形態1の蛍光偏光測定装置100と同様に、ノイズを抑えて、高い測定感度で偏光度Pを検出できる。また、本実施形態の蛍光偏光測定装置100は、励起光ELの強度分布の影響を抑えて、高い測定感度で偏光度Pを検出できる。偏光度Pの測定感度が高いので、蛍光偏光測定装置100は、測定対象物質の濃度が低くとも、測定対象物質を正確に検出できる。
【0075】
さらに、本実施形態の蛍光偏光測定装置100は、マイクロ流路220内の異物によるノイズ、第1受光部58Aの輝点ノイズ等を容易に見つけ出すことができる。
【0076】
<実施形態3>
実施形態1では、光源部10は、X方向の偏光方向を有する励起光ELを偏光方向変調素子30に出射する。光源部10は、励起光ELの偏光方向を直交する2つの方向(X方向とY方向)に切り替えてもよい。
【0077】
本実施形態の蛍光偏光測定装置100は、実施形態1の蛍光偏光測定装置100と同様に、光源部10と、偏光方向変調素子30と、ダイクロイックミラー40と、対物レンズ42と、検出部50と、制御部70とを備える。本実施形態の偏光方向変調素子30~対物レンズ42の構成は、実施形態1と同様であるので、本実施形態の光源部10と検出部50と制御部70とを説明する。
【0078】
本実施形態の光源部10は、実施形態1の光源部10と同様に、光源12と、集光レンズ14と、アイリス16と、コリメータ18と、第1偏光調整素子20と、励起光フィルタ22とを有する。本実施形態の光源12~コリメータ18と励起光フィルタ22の構成は、実施形態1と同様であるので、本実施形態の第1偏光調整素子20を説明する。
【0079】
本実施形態の第1偏光調整素子20は、第1偏光調整素子20から出射する励起光ELを含む光の偏向方向をX方向とY方向に切り替える。本実施形態の第1偏光調整素子20は、TN液晶セル、回転可能に保持された偏光板等である。本実施形態の第1偏光調整素子20は、制御部70の光源制御部82により制御される。
【0080】
本実施形態の第1偏光調整素子20から出射した光は、励起光フィルタ22を介して、光源部10から出射される。したがって、本実施形態の光源部10は、励起光ELの偏光方向をX方向とY方向とに切り替えて、出射する。
【0081】
本実施形態では、X方向の偏光方向を有する励起光ELが光源部10から出射された場合、偏光方向変調素子30を介して、偏光成分の強度が偏光方向変調素子30の空間周波数で周期的に増減する励起光ELが、測定対象溶液(マイクロデバイス200)に照射される。X方向の偏光方向を有する励起光ELが光源部10から出射された場合、実施形態1と同様に、励起光ELにおける、X方向の偏光方向を有する成分とY方向の偏光方向を有する成分の強度は、偏光方向変調素子30の空間周波数で周期的に増減し、互いに逆相となっている(図4)。以下では、X方向の偏光方向を有する励起光ELが光源部10から出射された場合に測定対象溶液に照射される励起光ELを、第1励起光ELと記載する。
【0082】
一方、Y方向の偏光方向を有する励起光ELが光源部10から出射された場合、第1励起光ELのX方向の偏光方向を有する成分がY方向の偏光方向を有する成分に、第1励起光ELのY方向の偏光方向を有する成分がX方向の偏光方向を有する成分に入れ替わった、励起光EL(図17)が測定対象溶液に照射される。以下では、Y方向の偏光方向を有する励起光ELが光源部10から出射された場合に測定対象溶液に照射される励起光ELを、第2励起光ELと記載する。
【0083】
本実施形態の検出部50は、実施形態1の検出部50と同様に、吸収フィルタ52と、第2偏光調整素子54と、結像レンズ56と、第1受光部58Aとを有する。本実施形態の吸収フィルタ52~結像レンズ56の構成は、実施形態1と同様である。
【0084】
本実施形態の第1受光部58Aは、実施形態1の第1受光部58Aと同様に、X方向の偏光方向を有する蛍光FLの、蛍光強度の空間分布を画像として検出する。本実施形態では、第1受光部58Aは、第1励起光が測定対象溶液に照射された場合(すなわち、光源部10がX方向の偏光方向を有する励起光ELを出射した場合)に測定対象溶液から発せられた蛍光FL光のうち、X方向の偏光方向を有する蛍光FLの、蛍光強度の空間分布(以下、第1蛍光強度の空間分布と記載)を検出する。また、第1受光部58Aは、第2励起光が測定対象溶液に照射された場合(すなわち、光源部10がY方向の偏光方向を有する励起光ELを出射した場合)に測定対象溶液から発せられた蛍光FL光のうち、X方向の偏光方向を有する蛍光FLの、蛍光強度の空間分布(以下、第2蛍光強度の空間分布と記載)を検出する。本実施形態の第1受光部58Aは、第1蛍光強度の空間分布に応じた画像データと第2蛍光強度の空間分布に応じた画像データとを、制御部70に送信する。
【0085】
本実施形態の制御部70は、第1蛍光強度の空間分布から、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分と、直流成分とを抽出する。また、本実施形態の制御部70は、第2蛍光強度の空間分布から、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分と、直流成分とを抽出する。本実施形態の制御部70は、抽出された成分と直流成分に基づいて測定対象溶液の偏光度Pを求め、偏光度Pと検量線から測定対象物質の濃度を求める。本実施形態の制御部70は、実施形態1の制御部70と同様に、入出力部72~検出制御部84を有する。本実施形態の入出力部72と記憶部74と濃度算出部80と光源制御部82と検出制御部84の構成は、実施形態1と同様である。
【0086】
本実施形態の抽出部76は、蛍光FLの蛍光強度の空間分布に応じた画像データから、蛍光FLの蛍光強度の空間分布を求める。本実施形態では、抽出部76は、第1蛍光強度の空間分布と第2蛍光強度の空間分布が求められる。求められた、第1蛍光強度の空間分布と第2蛍光強度の空間分布は、実施形態1と同様に、ノイズを含んでいる。
【0087】
本実施形態の抽出部76は、実施形態1の抽出部76と同様に、求められた蛍光FLの蛍光強度の空間分布から、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分と直流成分とを抽出する。本実施形態では、抽出部76は、第1蛍光強度の空間分布から、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分(以下、第1成分と記載)と直流成分(以下、第1直流成分と記載)とを抽出する。また、抽出部76は、第2蛍光強度の空間分布から、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分(以下、第2成分と記載)と直流成分(以下、第2直流成分と記載)とを抽出する。これにより、実施形態1と同様に、蛍光FLの蛍光強度のSN比を向上できる。
【0088】
具体的には、本実施形態の抽出部76は、実施形態1と同様に、第1蛍光強度の空間分布に対して、偏光方向変調素子30の空間周波数を用いて、フーリエ変換と逆フーリエ変換を施す。これにより、図18に示すような、第1成分と第1直流成分が求められる。また、本実施形態の抽出部76は、第2蛍光強度の空間分布に対して、偏光方向変調素子30の空間周波数を用いて、フーリエ変換と逆フーリエ変換を施す。これにより、図19に示すような、第2成分と第2直流成分が求められる。
【0089】
本実施形態の偏光度算出部78は、第1成分と第1直流成分又は第2成分と第2直流成分から偏光度Pを求める。本実施形態では、実施形態1と同様に、第1成分(第1直流成分を含む)と第2成分(第2直流成分を含む)の最大値は、図18図19に示すように、励起光ELの偏光方向と平行な偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度Ihに相当する。また、第1成分(第1直流成分を含む)と第2成分(第2直流成分を含む)の最小値は、励起光ELの偏光方向と平行な偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度Ivに相当する。したがって、本実施形態では、偏光度算出部78は、第1成分の最大値と最小値、又は、第2成分の最大値と最小値から、偏光度Pを求める。
【0090】
本実施形態では、図20に示すように、第1成分と第2成分は逆相関係にあり、マイクロ流路220の同じ位置(同じX座標)で、蛍光FLの蛍光強度Ihと蛍光FLの蛍光強度Ivが得られる。したがって、第1成分と第2成分の蛍光FLの蛍光強度Ihと蛍光FLの蛍光強度Ivを比較することにより、マイクロ流路220内の異物によるノイズ、第1受光部58Aの輝点ノイズ等を、容易に見つけ出すことができる。
【0091】
次に、本実施形態の検出処理を説明する。本実施形態の検出処理は、実施形態1と同様に、偏光度測定処理(ステップS100)、濃度算出処理(ステップS200)の順に行われる(図12)。本実施形態の濃度算出処理(ステップS200)は、実施形態1と同様であるので、図21を参照して、本実施形態の偏光度測定処理(ステップS100)を説明する。
【0092】
本実施形態の偏光度測定処理(ステップS100)では、制御部70は、まず、第1偏光調整素子20から出射する光(光源部10から出射する励起光EL)の偏光方向をX方向に制御して、測定対象溶液に、第1励起光ELを照射する(ステップS116a)。次に、制御部70は、第1受光部58Aから、第1蛍光強度の空間分布に応じた画像データを取得する(ステップS118a)。さらに、制御部70は、第1偏光調整素子20から出射する光をY方向に制御して、測定対象溶液に、第2励起光ELを照射する(ステップS116b)。そして、制御部70は、第1受光部58Aから、第2蛍光強度の空間分布に応じた画像データを取得する(ステップS118b)。
【0093】
制御部70は、測定対象溶液から発せられる蛍光FLのうち、所定の方向(X方向)の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布を検出する(ステップS120)。具体的には、制御部70の抽出部76は、第1蛍光強度の空間分布に応じた画像データから、第1蛍光強度の空間分布を求める。また、制御部70の抽出部76は、第2蛍光強度の空間分布に応じた画像データから、第2蛍光強度の空間分布を求める。
【0094】
さらに、制御部70は、求められた蛍光強度の空間分布から、所定の周波数(偏光方向変調素子30の空間周波数)と同一の周波数を有する成分と直流成分とを抽出する(ステップS130)。具体的には、抽出部76は、第1蛍光強度の空間分布から、第1成分と第1直流成分とを抽出する。また、抽出部76は、第2蛍光強度の空間分布から、第2成分と第2直流成分とを抽出する。第1成分と第1直流成分と、第2成分と第2直流成分は、実施形態1と同様に、蛍光強度の空間分布に対して、偏光方向変調素子30の空間周波数を用いて、フーリエ変換と逆フーリエ変換を施すことによって、抽出される。
【0095】
制御部70は、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分と直流成分とに基づいて、測定対象溶液の偏光度Pを求める(ステップS140)。具体的には、制御部70の偏光度算出部78は、偏光度算出部78は、第1成分(直流成分を含む)の最大値と最小値、又は、第2成分(直流成分を含む)の最大値と最小値から、偏光度Pを求める。
【0096】
以上のように、本実施形態の蛍光偏光測定装置100も、実施形態1の蛍光偏光測定装置100と同様に、ノイズを抑えて、高い測定感度で偏光度Pを検出できる。また、本実施形態の蛍光偏光測定装置100は、励起光ELの強度分布の影響を抑えて、高い測定感度で偏光度Pを検出できる。偏光度Pの測定感度が高いので、蛍光偏光測定装置100は、測定対象物質の濃度が低くとも、測定対象物質を正確に検出できる。さらに、本実施形態の蛍光偏光測定装置100は、マイクロ流路220内の異物によるノイズ、第1受光部58Aの輝点ノイズ等を容易に見つけ出すことができる。
【0097】
<実施形態4>
実施形態2では、検出部50は、第2偏光調整素子54から出射する蛍光FLの偏光方向をX方向とZ方向に切り替えることにより、X方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布と、Z方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布とを検出している。検出部50は、蛍光FLの偏光成分に分離することにより、X方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布と、Y方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布とを検出してもよい。
【0098】
本実施形態の蛍光偏光測定装置100は、実施形態1の蛍光偏光測定装置100と同様に、光源部10と、偏光方向変調素子30と、ダイクロイックミラー40と、対物レンズ42と、検出部50と、制御部70とを備える。本実施形態の光源部10~対物レンズ42の構成は、実施形態1と同様であるので、本実施形態の検出部50と制御部70とを説明する。
【0099】
本実施形態の検出部50は、図22に示すように、吸収フィルタ52と、第2偏光調整素子54と、2つの結像レンズ56と、第1受光部58Aと、第2受光部58Bとを有する。本実施形態の吸収フィルタ52の構成は、実施形態1と同様である。
【0100】
本実施形態の第2偏光調整素子54は、偏光ビームスプリッタである。本実施形態では、第2偏光調整素子54は、-Y方向から入射する蛍光FLのうち、X方向の偏光方向を有する蛍光FLを透過し、Z方向の偏光方向を有する蛍光FLをY方向の偏光方向を有する蛍光FLとして+Z方向に反射する。
【0101】
X方向の偏光方向を有する蛍光FLは、結像レンズ56を介して、第1受光部58Aに入射する。また、Y方向の偏光方向を有する蛍光FLは、結像レンズ56を介して、第2受光部58Bに入射する。
【0102】
本実施形態の第1受光部58Aは、実施形態1の第1受光部58Aと同様に、X方向の偏光方向を有する蛍光FLの、蛍光強度の空間分布を画像として検出する。本実施形態の第1受光部58Aは、X方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布に応じた画像データを、制御部70に送信する。
【0103】
第2受光部58Bは、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。Y方向の偏光方向を有する蛍光FLの、蛍光強度の空間分布を画像として検出する。第2受光部58Bは、Y方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布に応じた画像データを、制御部70に送信する。
【0104】
蛍光偏光測定装置100の制御部70は、第1受光部58Aにより検出された、X方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布から、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分(X方向成分)と、直流成分(X方向直流成分)とを抽出する。また、本実施形態の制御部70は、第2受光部58Bにより検出された、Y方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布から、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分(以下、Y方向成分)と、直流成分(以下、Y方向直流成分)とを抽出する。本実施形態の制御部70は、抽出された成分と直流成分に基づいて測定対象溶液の偏光度Pを求め、偏光度Pと検量線から測定対象物質の濃度を求める。
【0105】
本実施形態の制御部70は、実施形態1と実施形態2の制御部70と同様に、入出力部72~検出制御部84を有する。本実施形態の制御部70の各部の構成は、実施形態2におけるZ方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布の代わりに、Y方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布を用いることを除き、実施形態2の制御部70の各部の構成と同様である。
【0106】
本実施形態では、図23に示すように、X方向成分(直流成分を含む)又はY方向成分(直流成分を含む)の最大値が励起光ELの偏光方向と平行な偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度Ihに相当する。また、X方向成分(直流成分を含む)又はY方向成分(直流成分を含む)の最小値が励起光ELの偏光方向と垂直な偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度Ivに相当する。偏光度Pは、X方向成分又はY方向成分の最大値と、X方向成分又はY方向成分の最小値から求められる。さらに、測定対象物質の濃度は、偏光度Pと測定対象物質の濃度との検量線から求められる。
【0107】
本実施形態の蛍光偏光測定装置100は、実施形態2の蛍光偏光測定装置100と同様に、ノイズを抑えて、高い測定感度で偏光度Pを検出できる。また、マイクロ流路220の同じ位置(同じX座標)で、蛍光FLの蛍光強度Ihと蛍光FLの蛍光強度Ivが得られるので、本実施形態の蛍光偏光測定装置100は、マイクロ流路220内の異物によるノイズ、第1受光部58Aの輝点ノイズ等を、容易に見つけ出すことができる。さらに、本実施形態の蛍光偏光測定装置100は、測定対象溶液に照射する励起光ELの偏光方向と検出する蛍光FLの偏光方向のいずれも切り替えることなく、偏光度Pを測定できるので、測定時間を短縮できる。
【0108】
<変形例>
以上、実施形態を説明したが、本開示は、要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0109】
例えば、実施形態のマイクロデバイス200は、3つのマイクロ流路220を備える。マイクロデバイス200は、少なくとも1つのマイクロ流路220を備えればよい。マイクロデバイス200は、複数のマイクロ流路220を備えてもよい。
【0110】
第1受光部58Aと第2受光部58Bは、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサであってもよい。また、第1受光部58Aと第2受光部58Bは、撮像素子に限られない。
【0111】
実施形態1~実施形態4では、偏光方向変調素子30は、励起光ELの偏光方向を、X方向に沿って、所定の周波数で連続的に変調している。偏光方向変調素子30は、励起光ELの偏光方向を、所定の周波数で変調すればよく、連続的に変調しなくともよい。偏光方向変調素子30は、制御部70が蛍光強度から偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の成分を抽出できるように、励起光ELの偏光方向を変調すればよい。
【0112】
実施形態2の検出処理では、X方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布に応じた画像データを取得した後に、Z方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布に応じた画像データを取得している(ステップS112a、S114a→ステップS112b、S114b)。実施形態2では、Z方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布に応じた画像データを取得した後に、X方向の偏光方向を有する蛍光FLの蛍光強度の空間分布に応じた画像データを取得してもよい(ステップS112b、S114b→ステップS112a、S114a)。
【0113】
実施形態3の検出処理では、第1蛍光強度の空間分布に応じた画像データを取得した後に、第2蛍光強度の空間分布に応じた画像データを取得している(ステップS116a、S118a→ステップS116b、S118b)。実施形態3では、第2蛍光強度の空間分布に応じた画像データを取得した後に、第1蛍光強度の空間分布に応じた画像データを取得してもよい(ステップS116b、S118b→ステップS116a、S118a)。
【0114】
偏光度測定処理では、複数の画像データから蛍光強度の空間分布を検出してもよい。
【0115】
さらに、偏光度測定処理では、励起光ELを照射せずに、バックグラウンドの蛍光強度を検出してもよい。検出された蛍光強度の空間分布からバックグラウンドの蛍光強度を差し引いた後に、偏光方向変調素子30の空間周波数と同一の周波数を有する成分と直流成分とを抽出してもよい。これにより、第1受光部58Aと第2受光部58Bのダークノイズ、第1受光部58Aと第2受光部58Bの回路からのノイズ等を抑制できる。
【0116】
蛍光偏光測定装置100では、蛍光を発する標準試料に励起光ELを照射することにより、励起光ELの偏光方向と蛍光強度の最大値と最小値の位置が整合するように(図24)、偏光方向変調素子30と第1受光部58A(第1受光部58Aと第2受光部58B)の位置合わせを行ってもよい。
【0117】
以上、好ましい実施形態について説明したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。
【符号の説明】
【0118】
10 光源部、12 光源、14 集光レンズ、16 アイリス、18 コリメータ、20 第1偏光調整素子、22 励起光フィルタ、30 偏光方向変調素子、40 ダイクロイックミラー、42 対物レンズ、50 検出部、52 吸収フィルタ、54 第2偏光調整素子、56 結像レンズ、58A 第1受光部、58B 第2受光部、70 制御部、72 入出力部、74 記憶部、76 抽出部、78 偏光度算出部、80 濃度算出部、82 光源制御部、84 検出制御部、92 CPU、93 ROM、94 RAM、96 入出力インターフェース、100 蛍光偏光測定装置、200 マイクロデバイス、202 第1基板、202a 主面、204 第2基板、206 隔壁、220 マイクロ流路、222 開口部、P 偏光度、Ih 励起光の偏光方向と平行な偏光方向を有する蛍光の蛍光強度、Iv 励起光の偏光方向と垂直な偏光方向を有する蛍光の蛍光強度、EL 励起光,第1励起光,第2励起光、FL 蛍光、ST ステージ
図1
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