(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025030701
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】診断装置、診断方法および診断システム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20250228BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20250228BHJP
【FI】
G05B23/02 302Y
G01M99/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136216
(22)【出願日】2023-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田巻 賢志
(72)【発明者】
【氏名】真柄 洋平
【テーマコード(参考)】
2G024
3C223
【Fターム(参考)】
2G024AC01
2G024AD01
2G024CA13
2G024FA06
2G024FA15
3C223AA01
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223EB02
3C223FF04
3C223FF24
3C223FF45
3C223GG01
3C223HH03
3C223HH08
(57)【要約】
【課題】
異常と過渡状態を区別して異常原因を推定する診断装置を提供する。
【解決手段】
対象機器に備えた複数のセンサから得られた各計測値を入力する計測値入力部と、各計測値の異常有無を判定する異常判定部と、異常判定部で異常有無を判定された各計測値によって、前記対象機器の異常原因を推定する異常原因推定部と、からなり、異常原因推定部は、異常判定部から取得した各計測値の異常有無の組合せと、異常が検知された計測値の組合せと対象機器が過渡状態であることを含む異常原因とが予め対応付けて記憶されている異常原因データベースとを用いて、対象機器の異常原因を推定する
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象機器の計測値に基づき異常原因を推定する診断装置であって、
前記対象機器に備えた複数のセンサから得られた前記計測値を入力する計測値入力部と、
前記計測値の異常有無を判定する異常判定部と、
前記異常判定部による前記計測値の異常有無の結果によって、前記対象機器の異常原因を推定する異常原因推定部と、
を有し、
前記異常原因推定部は、前記異常判定部から取得した前記計測値の異常有無の組合せと、異常が検知された計測値の組合せと、前記対象機器が過渡状態であることを含む異常原因とが予め対応付けて記憶されている異常原因データベースとを用いて、前記対象機器の異常原因を推定する、
ことを特徴とする診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の診断装置であって、
前記対象機器の前記計測値の正常時における代表値が記録された正常時計測データベースを有し、
前記異常判定部は、前記計測値入力部からの前記計測値から計算された統計量と前記正常時計測データベースの代表値から計算された統計量とを比較し、両者の差分に基づいて異常判定を行う、
ことを特徴とする診断装置。
【請求項3】
請求項1に記載の診断装置であって、
前記対象機器の計測値の正常時における時系列の複数の値が記録された正常時計測データベースを有し、
前記異常判定部は、前記計測値入力部からの前記計測値と前記正常時計測データベースの前記複数の値とを用い、統計的処理によって異常判定を行う、
ことを特徴とする診断装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の診断装置であって、
前記センサから得られる前記計測値を用いて前記対象機器の性能値を算出する性能計算部を有し、
前記正常時計測データベースは、前記対象機器の性能値の正常時における値が記録されており、
前記異常判定部は、前記計測値入力部からの前記計測値と前記性能計算部からの性能値とに関して、前記正常時計測データベースを参照して異常判定を行う、
ことを特徴とする診断装置。
【請求項5】
請求項4に記載の診断装置であって、
前記異常原因データベースは、異常が検知された前記計測値及び前記性能値の組合せと前記対象機器が過渡状態であることを含む異常原因とが予め対応付けて記憶されており、
前記異常原因推定部は、前記異常判定部から取得した前記計測値及び前記性能値の異常有無の組合せと、前記異常原因データベースとを用いて、前記対象機器の異常原因を推定する、
ことを特徴とする診断装置。
【請求項6】
請求項5に記載の診断装置であって、
前記異常原因推定部は、前記異常原因データベースを参照し、前記異常判定部から取得した前記計測値及び前記性能値の異常有無の組合せと同一パターンの組合せを探索し、
一致した組合せを検出した場合は、その組合せに対する前記異常原因データベースで規定した異常原因を出力し、
一致した組合せを検出しなかった場合は、類似した組合せに対する前記異常原因データベースで規定した異常原因を類似度順に出力すること、
を特徴とする診断装置。
【請求項7】
請求項6に記載の診断装置であって、
前記異常原因推定部から出力された異常原因を、表示装置にて表やグラフを用いて表示する結果出力部を有すること、
を特徴とする診断装置。
【請求項8】
請求項6に記載の診断装置であって、
前記対象機器は流体機械であること、
を特徴とする診断装置。
【請求項9】
対象機器の計測値に基づき異常原因を推定する診断方法であって、
前記対象機器に備えた複数のセンサから得られた前記計測値を入力し、
前記計測値の異常有無を判定し、
異常が検知された前記計測値の組合せと前記対象機器が過渡状態であることを含む異常原因とを予め対応付けて記憶しておき、前記判定した前記計測値の異常有無の組合せと比較参照することによって前記対象機器の異常原因を推定する、
ことを特徴とする診断方法。
【請求項10】
請求項4に記載の診断装置を有する診断システムであって、
前記診断システムは、クラウドにアクセス可能な顧客施設の通信手段と保守会社施設の診断装置とを有し、
前記顧客施設の通信手段は、プラントシステムに備わる前記対象機器より保守に使用する前記計測値を収集して前記クラウドの記憶装置へアップロードし、
前記保守会社施設の診断装置は、請求項4に記載の診断装置であって、前記記憶装置にアップロードされた前記計測値をダウンロードし、前記対象機器の異常有無及びその原因を診断結果として前記クラウドのダッシュボードへ出力すること、
を特徴とする診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機械等の異常原因推定を行う診断装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
化学プラントや発電プラントでは、安定的運転や保守作業合理化を目的として、プラント機器の状態監視、診断技術の導入が進められている。プラント機器に異常が発生した場合に、早期に検知して対策を行うことで、運転の継続や保守作業時間の短縮などが期待できる。より効果的に対策を実施するために、異常が発生した場合に異常の原因を推定する診断技術が重要となる。
【0003】
診断技術の一例として、例えば特許文献1には、「現象パターン抽出部104は、設備の過去のセンサ信号の現象パターンを抽出する。関連情報紐付部105は、センサ信号を保守履歴情報に基づいて紐付する。現象パターン分類基準作成部107は、抽出された現象パターンと、現象パターンのもととなるセンサ信号を紐付けた保守履歴情報に含まれる作業キーワードとに基づいて、現象パターンを分類するための分類基準を作成する。現象パターン分類部108は、分類基準に基づいて、現象パターンを分類する。診断モデル作成部109は、分類された現象パターンと、作業キーワードとに基づいて、保守作業者に提示する作業キーワードを推定するための診断モデルを作成する。」と記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
化学プラントや発電プラントに用いられる流体機械は、プラント稼働中において常時運転する場合だけでなく運転から停止、停止から運転というように動作状態が変化する場合がある。このような流体機械に対して既存の異常原因推定システムを適用した場合、上述した運転から停止、停止から運転のような過渡状態では、異常原因推定に用いる流体機械からの計測値が大きく変動する。このため、実際は流体機械に異常がないにもかかわらず、これを異常として推定してしまう可能性があるため、実際に異常が起きている状態と上記過渡状態とを区別する必要がある。
【0006】
本発明の目的は異常と過渡状態を区別して異常原因を推定する診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明の診断装置は、対象機器に備えた複数のセンサから得られた各計測値を入力する計測値入力部と、各計測値の異常有無を判定する異常判定部と、異常判定部による各計測値の異常有無の結果によって、前記対象機器の異常原因を推定する異常原因推定部と、からなり、異常原因推定部は、異常判定部から取得した各計測値の異常有無の組合せと、異常が検知された計測値の組合せと対象機器が過渡状態であることを含む異常原因とが予め対応付けて記憶されている異常原因データベースとを用いて、対象機器の異常原因を推定するようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、実際の異常状態と過渡状態とを区別して、異常原因を推定する診断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の異常原因推定システムの一実施例における全体構成図である。
【
図2】本発明における監視対象機器の例とした遠心圧縮機の全体構造を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態における異常原因推定装置の例である。
【
図4】本発明の実施形態における計測値の時系列データの例である。
【
図5】本発明の実施形態における正常時計測値データベースに記録された各値の例である。
【
図6】本発明の実施形態における過渡状態の時系列で異常有無を判定した結果の例である。
【
図7A】本発明の実施形態における異常原因データベースのデータの初期状態の例である。
【
図7B】本発明の実施形態における異常原因データベースのデータの更新後の例である。
【
図8】本発明の実施形態における診断結果出力の画面表示例である。
【
図9】本発明の実施形態における処理フローである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。なお、各図面を通して、同等の構成要素には同一の符号を付してあるが、図面の構成や記載の都合上、同等の構成要素に異なる符号を付したものもある。
【実施例0011】
図1は本実施例の異常原因推定システムにおける全体構成図であり、異常原因推定の対象である装置や機器を有する顧客施設120と、クラウド140と、異常原因推定の主要な処理を行う設備を有する保守会社施設160とから構成されている。なお、ここにいう施設とは、単に建物を示すだけでなく、装置や機器あるいは設備を有する複数の構造物やそれらが設置された領域をも含む総称である。
顧客施設120は異常原因推定の対象となる監視対象機器122を有するプラントシステム121と、プラントシステム121における各種運転データを収集する運転データ収集装置123と、運転データ収集装置123で収集した運転データを確認したり、公衆回線や専用回線を介して後述するクラウド140へ運転データをアップロードする顧客PC(Personal Computer)124を有する。また、顧客PC124はクラウド140へアクセスすることによって、後述する保守会社施設160による異常原因推定の結果を閲覧することができる。
【0012】
クラウド140は記憶装置141とダッシュボード142を有しており、記憶装置141は顧客施設120からの運転データを記憶し、ダッシュボード142は保守会社施設160によって実行された異常原因推定の結果を表示する。
保守会社施設160は顧客からの運転データ等を記憶する専用ハードディスク(HDD)161と、その運転データを用いて異常原因推定を行う分析装置である分析用PC(Personal Computer)162とを有している。なお、上述した顧客PCおよび分析用PCは、いわゆるパーソナルコンピュータに限定されるものではなく、業務用の汎用コンピュータやラップトップ型のコンピュータ等、本実施例で想定する処理を実行する能力を有するものであればよい。
図1における大まかな処理の流れを説明すると、顧客施設120のプラントシステム121における監視対象機器122から、各種運転データが計測データとして運転データ収集装置123によって収集され、顧客PC124によってクラウド140の記憶装置141へアップロードされる。保守会社施設160では記憶装置141の運転データを専用HDD161へダウンロードし、分析用PC162にて異常原因推定を実施する。そしてその結果を分析用PC162にて表示するだけでなくダッシュボード142へも出力する。顧客施設120では顧客PC124にてダッシュボード142へ出力された異常原因推定の結果が閲覧される。
【0013】
本実施例では、監視対象機器122として代表的な流体機械である遠心圧縮機を対象とした場合を想定しており、
図2はこのような遠心圧縮機の全体構造の一例を示す図である。
図2において、遠心圧縮機201は、円筒状などに形成され静止部となるケーシング202と、このケーシング202内に、ジャーナル軸受203及びスラスト軸受204によりロータ205が回転可能支持されている。ロータ205には複数の羽根車206が設けられており、羽根車206の回転によって流体が圧縮される。この遠心圧縮機122には、図示しないセンサが各所に設けられており、各種運転データを取得して運転データ収集装置123へ送信するようになっている。また、遠心圧縮機の例としては、例えば、特開2019-2361号公報等に記載のものがある。
【0014】
次に、本実施例の異常原因推定システムにおいて、各種運転データから異常およびその原因を推定する異常原因推定装置301の構成を
図3に示す。なお、異常原因推定装置301は
図1における分析用PC162によって実現されており、アプリケーションソフトウェアや専用のハードウエア、もしくはそれらの組み合わせによって構成されている。
【0015】
図3において、計測値入力部302は、監視対象機器122(本実施例では
図2の遠心圧縮機201に相当)に設置された各種センサからの計測値が入力されるが、各計測値は運転データ収集装置123、顧客PC124を通じて記憶装置141へ記憶された後、専用HDD161へダウンロードされて分析用PC162へ入力される。
図4は入力される計測値の時系列データ400の例であって、各時刻410における遠心圧縮機201の運転状態(運転/停止)401、及び、遠心圧縮機201に設置された図示しないセンサから得られる軸振動402、吸込温度403、吐出温度404、吸込圧力405、吐出圧力406、回転数407などの計測値である。なお、実際の遠心圧縮機などでは、これら以外のものも含めて80~100種類程度の計測値を測定しているが、本明細書等においては簡略化して説明している。
【0016】
ここで、時刻410において運転状態401が運転から停止へ切り替わった時間帯411、もしくは、停止から運転に切り替わった時間帯412は過渡状態であって、各計測値がそれまでの運転状態と比較して変動量が大きいことがわかる。
【0017】
性能計算部303では、前記計測値入力部302で入力された計測値から流体機械の性能としてポリトロープ効率を算出する。
異常判定部304では、前記計測値入力部302で入力された計測値、および前記性能計算部303で算出したポリトロープ効率(性能)について、異常の有無を判定する機能を有している。ここでセンサの計測値および性能の異常とは、センサの計測値および性能が所定の正常範囲から逸脱していることを意味しており、このまま放置すると機器の正常な機能が損なわれる、もしくは既に損なわれている可能性がある。
【0018】
異常判定部304は監視対象機器122(遠心圧縮機201)の正常時の計測値および性能を正常時計測値データベース305から取得し、この正常時を基準として計測値および計測値から算出した性能に異常があるか否かを判定する。
図5は正常時計測値データベース305に記録された各値の例であり、これらの正常時の値を基準として、実際の計測値との差分の大きさによって異常を判定することができる。また、
図4の計測値の時系列データのように、正常状態における複数の計測値を正常時計測値データベース305へ記憶し、これらの正常時計測値データの母集団と実際の計測値を用い、統計的処理(例えばホテリングのT
2法)によって異常の有無を判定してもよい。
【0019】
図6は異常判定部304で過渡状態の時系列で異常有無を判定した結果の例である。具体的には、
図4の時系列データにおいて、運転と停止が切り替わったタイミング付近(411、412等)のデータを用いて異常判定を行う。本例では、過渡状態において軸振動600と軸移動601とスラスト軸受温度602と吸込圧力605と吐出圧力606と回転数607とポリトロープ効率608の値が異常を示し、給油温度603、給油圧力604については過渡状態において異常値を示さなかったことを示している。本例では、過渡状態で異常と判定されたセンサの計測値や性能値が多数あることを示しており、過渡状態では全てのセンサの計測値が異常を示す場合もある。
【0020】
異常判定部304による判定結果は、本システムの初期準備段階(初期設定等)において、異常原因データベース307に過渡状態における追加データとして出力するとともに、本システムによって実際に異常原因推定を行う際にはこの判定結果が異常原因推定部306に出力される。
【0021】
異常原因データベース307には流体機械の異常原因と異常が現れるセンサおよび性能との関係が格納されており、例えば、そのプラントにおける過去の実データに基づき学習して作成されたデータベースである。新規のプラントであれば、同様の構成を有する他のプラントのデータベースを導入段階では流用し、順次アップデートしていくようにしてもよい。
【0022】
図7Aは異常原因データベース307に記録されたデータテーブルの初期状態の例であり、例えば、軸振動700のセンサ計測値およびポリトロープ効率値に異常があった場合に、異常原因720としては流路汚れ721が想定される。同様に、軸移動701とスラスト軸受温度702と吐出温度704の計測値およびポリトロープ効率値に異常があった場合、異常原因720としては内部リーク722が想定される。
【0023】
ここで、
図7Aに示す初期状態では、対象とするシステムの過渡状態については考慮されていないため、異常原因推定の初期段階において、
図7Aのテーブルに
図6で示した過渡状態において異常値を示した計測値や性能値のテーブルデータを追加して、
図7Bに示すテーブルデータを有する異常原因データベース307が構築される。すなわち、
図7Bは
図7Aのテーブルデータ730と
図6のテーブルデータ740とが合体したものになっている。
【0024】
異常原因推定部306は、異常判定部304から受け取った異常判定結果と異常原因データベース307に基づき、異常の原因を推定する。すなわち、異常原因推定部306は、異常原因データベース307を参照し、異常判定部304から取得した各計測値及び性能値についての異常有無の組合せと同一パターンの組合せを探索し、一致した組合せを検出した場合は、その組合せに対する異常原因データベース307で規定した異常原因を出力する。
【0025】
例えば、吸込温度703と吸込圧力705と吐出圧力706と回転数707とポリトロープ効率708との値に異常が見られた場合は、異常原因としては効率低下731であるとの推定を行う。また、軸振動700と軸移動701とスラスト軸受温度702と吸込圧力705と吐出圧力706と回転数707とポリトロープ効率708の値が異常を示した場合は、過渡状態に起因したものと判断することができる。これによって、真の異常と過渡状態における計測値の異常とを切り分けるとともに、異常原因の推定を行うことができる。
【0026】
なお、前述したように実際のシステムでは計測値の項目(例えば、
図7Bのテーブルデータであれば軸振動700~ポリトロープ効率708の各項目)が80~100種類程度に及ぶこともあって、異常値を示した実際の計測値項目と
図7Bのテーブルデータにおける異常有りの項目の組み合わせが完全に一致しないケースもありうる。このような場合は、
図7Bのテーブルデータから類似した項目の組み合わせを複数抽出し、実際の計測値の異常有りの組合せとの類似度や一致率を公知の方法等で計算し、類似度(一致率)順に提示するようにしてもよい。
【0027】
結果出力部308は、異常原因推定部306から計測値および性能の異常判定結果と推定された異常原因を受信し、診断結果として可視的にわかりやすいよう、グラフや表等を用いて出力する。この診断結果は表示装置(分析用PC162の画面等)に表示することもできるし、クラウド140のダッシュボード142へ出力させ、顧客PC124にて閲覧することもできる。
【0028】
図8は上述した診断結果出力の分析用PC162やダッシュボード142への画面表示例であって、対象期間800は診断を行う期間、すなわち、計測データの取得期間でもある。ここでは、3月1日から3月31日までの1か月間である。810、820、830はその対象期間内おいて、測定データに異常が見られた事象を示しており、例えば、事象1(810)は3月2日14:11~14:13において、軸振動、回転数などの測定値に異常が検知され、原因推定の結果、流路汚れ、効率低下、潤滑不良がそれぞれ88%、65%、43%の確率で起こっていることを示している。なお、視認性を向上させるため、これらの確率を棒グラフで示すようにしてもよい。
【0029】
また、事象3(830)は3月25日16:41~16:43において、給油圧力、吐出圧力などの測定値に異常が検知されたが、原因推定の結果、これらの異常値は対象機器の過渡状態によるものであって、機器自体の異常ではないことを示している。
【0030】
図9は本実施例の異常原因推定システムにおける処理のフローを示すものである。まず、対象機器から取得した計測データにつき、過渡状態におけるデータを抽出する(ステップS911)。そして、その過渡状態における計測データを用いて異常判定を行い(ステップS912)、過渡状態で異常値を示したセンサ(計測値)の組合せ(
図6に相当)を取得し(ステップS913)、異常原因データベース307の初期状態(
図7Aに相当)に追加して過渡状態を含む異常原因データベース307(
図7Bに相当)を構築する。ここまでのステップS911~S914(前処理910)は本システムの導入時等に実施するものであって、必ずしも毎回実施する必要はないが、必要に応じて定期的に実施してもよい。
【0031】
以上の前処理910を行った後、実際の異常原因推定の本処理920(ステップS921~S923)へ移る。まず、過渡状態を含む全計測データに対して正常時計測データベース305(
図5)を用いて異常判定を行い(ステップS921)、異常と判定された測定値(および性能値)の組合せにつき、異常原因データベース307(
図7B)にて異常原因の推定を行う(ステップS922)。そして、その推定結果を例えば
図8のような画面表示の形式で出力する(ステップS923)。 このようにして、対象機器の過渡状態をも考慮して異常判定とその原因推定を行うことが可能となる。
【0032】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、
図1においてクラウド140及び保守会社施設160に備えた記憶装置141や分析用PC162を、顧客施設120内に設けることによって、顧客自身で異常原因の推定を行うようにしてもよい。さらには、運転データは顧客から保守会社にメールで送付されてもよく、異常原因推定結果は報告書等のドキュメントとして顧客に提供されてもよい。
【0033】
また、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。