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特開2025-30747除草および田植え方法、除草具、田植機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025030747
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】除草および田植え方法、除草具、田植機
(51)【国際特許分類】
   A01B 39/18 20060101AFI20250228BHJP
   A01G 22/22 20180101ALI20250228BHJP
【FI】
A01B39/18 Z
A01G22/22 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136309
(22)【出願日】2023-08-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】523322793
【氏名又は名称】立脇 真吾
(74)【代理人】
【識別番号】100093115
【弁理士】
【氏名又は名称】佐渡 昇
(72)【発明者】
【氏名】立脇 真吾
【テーマコード(参考)】
2B034
【Fターム(参考)】
2B034AA07
2B034BA05
2B034BB01
2B034HA11
2B034HB01
(57)【要約】
【課題】除草剤を用いることなく田んぼの雑草を効率的に除草するとともに苗を植えるのに適した領域も形成して田植えを行うことができる、除草および田植え方法、除草具、ならびに田植機を提供する。
【解決手段】以下の工程を含むことを特徴とする除草および田植え方法。
(1)田んぼTの粘土層T1に雑草Zが生え始めた後、田んぼTの水量を調整して、田んぼTの粘土層T1を露出させる工程
(2)前記田んぼTにおいて苗Nを植えるべき、線状に伸びる苗植領域TNにおける前記粘土層T1の表層部T11を削るとともに、削った表層部T11の天地を反転させ、前記苗植領域TNに隣接して線状に伸びる非苗植領域NTNにおける前記粘土層T1の表層部T11上に被せる工程
(3)苗植領域TNに苗Nを植える工程
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含むことを特徴とする除草および田植え方法。
(1)田んぼ(T)の粘土層(T1)に雑草(Z)が生え始めた後、田んぼ(T)の水量を調整して、田んぼ(T)の粘土層(T1)を露出させる工程
(2)前記田んぼ(T)において苗(N)を植えるべき、線状に伸びる苗植領域(TN)における前記粘土層(T1)の表層部(T11)を削るとともに、削った表層部(T11)の天地(T11A,T11B)を反転させ、前記苗植領域(TN)に隣接して線状に伸びる非苗植領域(NTN)における前記粘土層(T1)の表層部(NT11)上に被せる工程
(3)苗植領域(TN)に苗(N)を植える工程
【請求項2】
水量が調整されて粘土層(T1)が露出した田んぼ(T)において、苗(N)を植えるべき、線状に伸びる苗植領域(TN)における粘土層(T1)の表層部(T11)に進入して該表層部(T11)を線状に削る進入部(11)と、
この進入部(11)に連なり、進入部(11)で削られた前記表層部(T11)の天地(T11A,T11B)を反転させて前記苗植領域(TN)に隣接して線状に伸びる非苗植領域(NTN)における前記粘土層(T1)の表層部(NT11)上に被せるように排出する反転排出部(12)と、
を備えていることを特徴とする除草具。
【請求項3】
請求項2記載の除草具を備えたことを特徴とする田植機。
【請求項4】
請求項2記載の除草具と、苗植付面(TN)の整地を行うことが可能なフロート(21)と、苗(N)を植える苗植装置(22)とを備えた田植機であって、
田植機の進行方向に関し、前記フロート(21)の後方かつ苗植装置22の前方に前記除草具が設けられていることを特徴とする田植機。
【請求項5】
請求項2記載の除草具と、車輪(24)とを備えた田植機であって、
田植機の進行方向に関し、前記車輪(24)が通過した溝(TG)上に、前記除草具の反転排出部(12)が配置されることを特徴とする田植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除草および田植え方法、除草具、田植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1、2に見られるような技術が知られている。
<特許文献1>特許第4955030号公報
特許文献1には、
「簡単容易に且つ効率的に雑草の生長を阻止し枯死させる水田又は畑の除草・抑草方法を提供せんとする」ことを課題とし(同文献0010段落)、
「通常より1ヶ月位早い時期に代掻きを行ない、代掻き後の田植え又は種子の直播までの間に、土壌表面を撹拌若しくは押圧し、発芽した雑草を土中に埋没させる作業を7日から14日間隔で数回行い、発芽した雑草の種子を枯死させ」(同文献0011段落)、
あるいは、
「種蒔や苗の植え付け前に、通常の種蒔や苗の植え付け時期の1ヶ月位早い前の時期に、土壌表面を撹拌若しくは押圧し、発芽した雑草を土中に埋没させる作業を7日から14日間隔で数回行い、発芽した雑草の種子を枯死させる」(同文献0012段落)
水田又は畑の除草・抑草方法が記載されている。
【0003】
しかし、この方法は、土壌表面を撹拌若しくは押圧することで、発芽した雑草を土中に埋没させようとするものであるから、発芽した雑草を効率的に土中に埋没させることはできない。
また、この方法では、苗を植えるべき領域についての考慮はなされていない。
【0004】
<特許文献2>特開2015-100325号公報
特許文献2には、
「作業負担を軽減しつつ除草効果を高めることの可能な、水田用除草機及び水田用除草機を用いた除草方法を提供する」ことを課題とし、
「車輪1に支持された機体10と、下面に根切り用の突起部が形成された除草板20と、機体10に取り付けられて除草板20を上下に昇降させる昇降手段30とを有し、機体走行時に昇降手段30により除草板20を昇降させて土壌表面を断続的に押圧し、雑草を根切りしながら土中に埋め込む。昇降手段30は、除草板20を機体10の進行方向に対して斜め後方に向けて降下させる。機体10の単位時間当たりの走行距離よりも、除草板20の単位時間当たりの後方移動距離の方を長くする」
水田用除草機及び水田用除草機を用いた除草方法
が記載されている(同文献要約欄)。
【0005】
しかし、この技術は、除草板20を断続的に昇降させるための機構が必要であるため、構造が複雑化するという難点を有している。
また、この技術では、苗を植えるべき領域についての考慮はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4955030号公報
【特許文献2】特開2015-100325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、除草剤を用いることなく田んぼの雑草を効率的に除草するとともに苗を植えるのに適した領域も形成して田植えを行うことができる、除草および田植え方法を提供することである。また、この方法を実施するのに適した除草具、ならびに田植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の除草および田植え方法は、以下の工程を含むことを特徴とする。
(1)田んぼの粘土層に雑草が生え始めた後、田んぼの水量を調整して、田んぼの粘土層を露出させる工程
(2)前記田んぼにおいて苗を植えるべき、線状に伸びる苗植領域における前記粘土層の表層部を削るとともに、削った表層部の天地を反転させ、前記苗植領域に隣接して線状に伸びる非苗植領域における前記粘土層の表層部上に被せる工程
(3)苗植領域に苗を植える工程
【0009】
上記の構成となっているので、この除草および田植え方法によれば次のような作用効果が得られる。
工程(1)により、
田んぼの粘土層に雑草が生え始めた後、田んぼの水量が調整され、田んぼの粘土層が露出するので、次工程(2)による粘土層表層部の削りおよび反転等が行いやすくなる。
工程(2)により、
前記田んぼにおいて苗を植えるべき、線状に伸びる苗植領域における前記粘土層の表層部が削られるとともに、削られた表層部は、その天地が反転し、前記苗植領域に隣接して線状に伸びる非苗植領域における前記粘土層の表層部上に被せられる。
これによって、苗植領域における粘土層の表層部に生え始めている雑草があるときは、その天地が逆にされた状態で非苗植領域における粘土層の表層部上に被せられるので、粘土層によって埋没されることとなる。
一方、非苗植領域における粘土層の表層部に生え始めている雑草があるときは、上記のように削られ反転された粘土層の表層部で覆われることで、やはり、粘土層によって埋没されることとなる。
すなわち、苗植領域における粘土層の表層部に生え始めている雑草も、非苗植領域における粘土層の表層部に生え始めている雑草も、その上下が粘土層の表層部で覆われて粘土層に埋没することとなるので、効率的に除草することが可能となる。
工程(3)により、
前記苗植領域に苗が植えられる。
このとき、苗植領域は上記工程(2)により、生え始めている雑草が除去された状態であり、また、表層部が削られることで、ある程度の平滑化が可能であるから、良好に田植えを行うことができる。
【0010】
以上のように、この除草および田植え方法によれば、除草剤を用いることなく田んぼの雑草を効率的に除草するとともに苗を植えるのに適した領域も形成して田植えを行うことができる。
【0011】
また、上記課題を解決するために本発明の除草具は、
水量が調整されて粘土層が露出した田んぼにおいて、苗を植えるべき、線状に伸びる苗植領域における粘土層の表層部に進入して該表層部を線状に削る進入部と、
この進入部に連なり、進入部で削られた前記表層部の天地を反転させて前記苗植領域に隣接して線状に伸びる非苗植領域における前記粘土層の表層部上に被せるように排出する反転排出部と、
を備えていることを特徴とする。
【0012】
上記の構成となっているので、この除草具によれば次のような作用効果が得られる。
水量が調整されて粘土層が露出した田んぼにおいて、苗を植えるべき、線状に伸びる苗植領域上に進入部を沿わせ、進入部を粘土層の表層部に進入させるようにしてこの除草具を移動させると、進入部によって粘土層の表層部が線状に削られ、この削られた表層部は、進入部に連なる反転排出部によって、天地が反転させられて前記苗植領域に隣接して線状に伸びる非苗植領域における粘土層の表層部上に被せられる。
したがって、上述したように、苗植領域における粘土層の表層部に生え始めている雑草も、非苗植領域における粘土層の表層部に生え始めている雑草も、その上下が粘土層の表層部で覆われて粘土層に埋没することとなるので、効率的に除草することが可能となる。
また、苗植領域は、進入部によって、生え始めている雑草が除去された状態であり、表層部が削られることで、ある程度の平滑化がなされ得るから、良好に田植えを行うことができる。
【0013】
以上のように、この除草具によれば、除草剤を用いることなく田んぼの雑草を効率的に除草するとともに苗を植えるのに適した領域も形成して田植えを行うことができる。
【0014】
また、上記課題を解決するために本発明の田植機は、上記の除草具を備えたことを特徴とする。
この田植機によれば、この田植機が備える除草具の進入部を線状に伸びる苗植領域上に沿わせるように、田植機を走行させることにより、効率的に除草することが可能となり、また当該田植機が備える機能によって田植えを行うことが可能となる。
【0015】
また、上記課題を解決するために本発明の田植機は、
上記の除草具と、苗植付面の整地を行うことが可能なフロートと、苗を植える苗植装置とを備えた田植機であって、
田植機の進行方向に関し、前記フロートの後方かつ苗植装置の前方に前記除草具が設けられていることを特徴とする。
【0016】
上記の構成となっているので、この田植機によれば次のような作用効果が得られる。
この田植機が備える除草具の進入部を線状に伸びる苗植領域上に沿わせるように、田植機を走行させることにより、効率的に除草することが可能となり、また当該田植機が備える機能によって田植えを行うことが可能となる。
除草具の前方にはフロートが設けられており、このフロートによって苗植付面の整地が行なわれた後に、除草具の進入部が粘土層表層部を削ることとなるので、削られる表層部の厚さがある程度均一化される。そのため、円滑な除草作用が得られることとなる。
また、除草具の後方に苗植装置が設けられているので、除草されかつ平滑化された苗植領域に、苗を植えることができるため、除草と同時に良好な田植えを行うことができる。
【0017】
また、上記課題を解決するために本発明の田植機は、
上記除草具と、車輪とを備えた田植機であって、
田植機の進行方向に関し、前記車輪が通過した溝上に、前記除草具の反転排出部が配置されることを特徴とする。
この田植機によれば、車輪が通過する非苗植領域における粘土層の表層部に生え始めている雑草があるときは、その雑草が車輪で踏まれた後に、前述したようにして削られ反転された粘土層の表層部で覆われることで、除草効果が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る除草および田植え方法の実施の形態の説明図で、(a)は部分平面図、(b)は断面図。
図2】同じく(a)は部分平面図、(b)(c)は断面図。
図3】同じく(a)は部分平面図、(b)(c)は断面図。
図4】本発明に係る除草具の実施の形態を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)の左側面図、(c)は(a)の平面図、(d)は(a)の底面図。
図5】上記除草具の作用説明図で、(a)は平面図、(b)は断面図。
図6】本発明に係る除草具の他の実施の形態を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)の左側面図、(c)は(a)の平面図、(d)は(a)の底面図。。
図7】上記除草具の作用説明図で、(a)は平面図、(b)は断面図。。
図8】本発明に係る田植機の実施の形態を示す図で、(a)は模式的部分省略平面図、(b)は概略正面図。
図9】上記田植機の作用説明平面図。
図10】本発明に係る田植機の他の実施の形態を示す図で、(a)は模式的部分省略平面図、(b)は概略正面図。。
図11】除草具10’(10)の田植機に対する取付機構の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る除草および田植え方法、除草具、田植機の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、同一部分ないし相当する部分には、同一の符号を付してある。
【0020】
この実施の形態の除草および田植え方法は、以下の工程を含むことを特徴とする。
【0021】
(1)図1(a)(b)に示すように、田んぼTの粘土層(作土層)T1に雑草Zが生え始めた後、田んぼTの水量を調整して、田んぼTの粘土層T1を露出させる工程。
なお、図においてT2は粘土層(作土層)T1の下方に位置する下層土である。
田んぼTの水量を調整する方法としては、田んぼの水を抜く、田んぼに入れる水量を調整する等の方法を挙げることができる。田んぼTの粘土層T1を露出させ、次工程を実施できるようにすることが重要である。
田んぼTの粘土層T1に雑草Zが生え始める時期は、最終代かきから7~10日後が目安であるが、これはその土地の風土、気候、前後の天気などで多少違いがある。
【0022】
(2)図2(a)(b)に示すように、田んぼTにおいて苗N(図3参照)を植えるべき、線状に伸びる苗植領域TNにおける粘土層T1の表層部T11を削るとともに、図2(b)から(c)に示すように削った表層部T11の天地T11A,T11Bを反転させ(矢印R参照)、苗植領域TNに隣接して線状に伸びる非苗植領域NTNにおける粘土層T1の表層部NT11上に被せる工程。
【0023】
(3)図3(a)(b)に示すように、苗植領域TNに苗Nを植える工程。
【0024】
なお、図2図3では、図の煩雑を避けるため、最も左側の苗植領域TNおよび非苗植領域NTNにおける粘土層T1の反転状態と苗植状態を示しているが、こららの作業は、全ての苗植領域TNおよび非苗植領域NTNにおいてなされる。
【0025】
上記の構成となっているので、この除草および田植え方法によれば次のような作用効果が得られる。
【0026】
図1参照): 工程(1)により、
田んぼTの粘土層T1に雑草Zが生え始めた後、田んぼTの水量が調整され、田んぼTの粘土層T1が露出するので、次工程(2)による粘土層T1表層部T11の削りおよび反転等が行いやすくなる。
【0027】
図2参照): 工程(2)により、
田んぼTにおいて苗Nを植えるべき、線状に伸びる苗植領域TNにおける粘土層T1の表層部T11が削られるとともに、削られた表層部T11は、その天地T11A,T11Bが反転し、苗植領域TNに隣接して線状に伸びる非苗植領域NTNにおける粘土層T1の表層部NT11上に被せられる。
【0028】
これによって、苗植領域TNにおける粘土層T1の表層部T11に生え始めている雑草Z1があるときは、その天地が逆にされた状態で非苗植領域NTNにおける粘土層T1の表層部T11上に被せられるので、雑草Z1は粘土層T1(表層部T11)によって埋没されることとなる(図2(c))。
【0029】
一方、非苗植領域NTNにおける粘土層T1の表層部T11に生え始めている雑草Z2があるときは、上記のように削られ反転された粘土層T1の表層部T11で覆われることで、やはり、雑草Z2も粘土層T1(表層部T11)によって埋没されることとなる(図2(c))。
【0030】
すなわち、苗植領域TNにおける粘土層T1の表層部T11に生え始めている雑草Z1も、非苗植領域NTNにおける粘土層T1の表層部NT11に生え始めている雑草Z2も、その上下が粘土層T1の表層部T11で覆われて粘土層T1に埋没することとなるので、除草剤を用いることなく効率的に除草することが可能となる。
【0031】
図3参照): 工程(3)により、
苗植領域TNに苗Nが植えられる。
このとき、苗植領域TNは上記工程(2)により、生え始めている雑草Z(Z1,Z2)が除去された状態であり、また、表層部T11が削られることで、ある程度の平滑化が可能であるから、良好に田植えを行うことができる。
なお、その後、必要に応じ、田んぼに水を入れる。
【0032】
以上のように、この除草および田植え方法によれば、除草剤を用いることなく田んぼTの雑草Zを効率的に除草するとともに苗Nを植えるのに適した領域も形成して田植えを行うことができる。
【0033】
図4図5に示す実施の形態の除草具10は、
水量が調整されて粘土層T1が露出した田んぼTにおいて、苗Nを植えるべき、線状に伸びる苗植領域TNにおける粘土層T1の表層部T11に進入して該表層部T11を線状に削る進入部11と、
この進入部11に連なり、進入部11で削られた表層部T11の天地を反転させて苗植領域TNに隣接して線状に伸びる非苗植領域NTNにおける粘土層T1の表層部NT11上に被せるように排出する反転排出部12と、
を備えている。
【0034】
上記の構成となっているので、この除草具10によれば次のような作用効果が得られる。
【0035】
図5に示すように、水量が調整されて粘土層T1が露出した田んぼTにおいて、苗Nを植えるべき、線状に伸びる苗植領域TN上に進入部11を沿わせ、進入部11を粘土層T1の表層部T11に進入させるようにしてこの除草具10を移動させると(図5(a)において上方(矢印F方向)へ移動させると)、進入部11によって粘土層T1の表層部T11が進行方向から見て断面略矩形の線状に削られ、この削られた表層部T11は、進入部11に連なる反転排出部12によって、図5(b)に示すように天地が反転させられて苗植領域TNに隣接して線状に伸びる非苗植領域NTNにおける粘土層T1の表層部NT11上に被せられる。
【0036】
したがって、上述したように、苗植領域TNにおける粘土層T1の表層部T11に生え始めている雑草Z1も、非苗植領域NTNにおける粘土層T1の表層部NT11に生え始めている雑草Z2も、その上下が粘土層T1の表層部T11(NT11)で覆われて粘土層T1に埋没することとなるので、除草剤を用いることなく効率的に除草することが可能となる。
【0037】
また、苗植領域TNは、生え始めている雑草Z1が、進入部11によって除去された状態であり(図5(a)におけるTNC参照)、表層部T11が削られることで、ある程度の平滑化がなされ得るから、良好に田植えを行うことができる状態となる(図3参照)。
【0038】
以上のように、この除草具10によれば、除草剤を用いることなく田んぼTの雑草Zを効率的に除草するとともに苗Nを植えるのに適した領域TNCも形成することができる。
【0039】
図6図7に示す実施の形態の除草具10’は、上述した除草具10を左右一対対称にして一体化したものである。
【0040】
図7に示すように、このような除草具10’によれば、苗植領域TNにおける粘土層T1の表層部T11を左右にそれぞれ反転させて、左右の非苗植領域NTNにおける粘土層T1の表層部NT11にそれぞれ被せて除草しながら、苗Nを植えるのに適した領域TNCを形成することができる。
【0041】
図8示す実施の形態の田植機20は、上記の除草具10’を備えている。
図9に示すように、この田植機20によれば、この田植機20が備える除草具10’の進入部11を線状に伸びる苗植領域TN上に沿わせるように、田植機20を走行させることにより、効率的に除草することが可能となり、また同時に、当該田植機20が備える機能によって田植えを行うことが可能となる。図中23は苗植装置22の植え付け爪である。
【0042】
この田植機20は、
上記の除草具10’と、苗植付面(TN)の整地を行うことが可能なフロート21と、苗Nを植える苗植装置22とを備え、
田植機20の進行方向(矢印F方向)に関し、フロート21の後方かつ苗植装置22の前方に除草具10’が設けられている。
【0043】
上記の構成となっているので、この田植機20によればさらに次のような作用効果が得られる。
【0044】
図8図9に示すように、除草具10’の前方にはフロート21が設けられており、このフロート21によって苗植付面(TN)の整地が行なわれた後に、図7に示したように除草具10’の進入部11が粘土層T1表層部T11を削ることとなるので、削られる表層部T11の厚さD(図4(d)、図11参照)がある程度均一化される。そのため、円滑な除草作用が得られることとなる。
削られる表層部T11の厚さDは、適宜調整することができる。通常は、2cm以上5cm以下とする。
【0045】
また、この田植機20によれば、除草具10’の後方に苗植装置22が設けられているので、除草されかつ平滑化された苗植領域TNに苗Nを植えることができるため、除草と同時に良好な田植えを行うことができる。
【0046】
この田植機20は、上記除草具10’と、車輪24とを備え、
田植機20の進行方向Fに関し、車輪24が通過した溝TG上に、除草具10’の反転排出部12が配置される。
【0047】
この田植機20によれば、車輪24が通過する非苗植領域NTNにおける粘土層T1の表層部T11に生え始めている雑草Zがあるときは、その雑草Zが車輪24で踏まれた後に、前述したようにして削られ反転された粘土層T1の表層部T11でさらに覆われるので、除草効果が向上する。
【0048】
以下さらに詳しく説明する。
【0049】
除草具は、進入部11で表層部T11を削り、その表層部T11を、その天地を逆転させて排出することができる構造を有していれば、任意の構造を採用し得る。
例えば、図4図6に示す実施の形態の除草具10(10’)の進入部11(図(c))と反転排出部12(図(d))の開口形状は、進入方向から見て矩形となっているが、これに限るものではない。例えば、底板が波形(底板がトタン状)等であってもかまわない。
また、この実施の形態における反転排出部12は、進入部11から進入して天地が反転させられた表層部T11を、進行方向後方へ向けて略真っ直ぐに排出させるためのガイド部12gを有しているが、このガイド部12gは設けなくてもかまわない。しかしながら、ガイド部12gを設けることで、天地が反転させられた表層部T11を、進行方向後方へ向けて略真っ直ぐに排出することができるようになるので、ガイド部12gを設けることが望ましい。
除草具10は、適宜の材料、例えば金属で構成することができる。
この実施の形態の除草具10は、金属板からなる樋状のものを、その両端部(前端と後端)を相対的に180度ひねり、図4(d)に示すように、進入口11bと排出口12bとを、水平方向に当該口部の幅Wだけずらし、かつ、垂直方向に当該口の高さHだけずらした形状となっている。なお、この形状は金属板によらなくても構成することが可能である。
両端部(前端と後端)を相対的に捻る角度は、この発明の対象となる田んぼの性質(土壌・表層部T11の性質)に応じて90~180度の範囲、望ましくは、125~145度の範囲で適宜設定することができる。両端部(前端と後端)を相対的に捻る角度が90度未満であると、削られた表層部T11を反転させることが困難になる。逆に180度を超えると、反転されて排出される表層部T11の排出方向が非苗植領域NTNからそれやすくなる。したがって、両端部(前端と後端)を相対的に捻る角度は、田んぼの性質(土壌・表層部T11の性質)に応じて90~180度の範囲とすることが望ましい。また、田んぼの性質(土壌・表層部T11の性質)にもよるが、両端部(前端と後端)を相対的に捻る角度を略135度にすると、反転排出部12における表層部T11の自重による反転ないし自由落下作用が得られて良好な反転排出作用が得られるから、田んぼの性質(土壌・表層部T11の性質)に応じて125~145度の範囲とすることがさらに望ましい。
進入口11bと排出口12bとを、水平方向に当該口部の幅Wだけずらし、垂直方向に当該口の高さHだけずらことにより、苗植領域TNにおける粘土層T1の表層部T11を反転させて非苗植領域NTNにおける粘土層T1の表層部NT11に良好に被せることが可能となる。
【0050】
除草具10(10’)は、田植機20の適所に取り付けることができる。
田植機としては、公知の適宜の田植機を用いることができる。
例えば、図8に示すような乗用田植機においては、苗載せ台25の支持フレーム25fに取付ブラケット25bを用いて取り付けることができる。
【0051】
このように構成すると、田植機反転時に持ち上げられる部位である苗載せ台25等とともに除草具10(10’)も持ち上げられるので、別途除草具用のリフト機構を設ける必要がなくなる。
【0052】
また、例えば図10に示すような手押しタイプの田植機20においては、載せ台25の支持フレーム(図示せず)や苗植装置22のフレームないしケーシング22cに取付ブラケット等を用いて取り付けることができる。
このように構成すると、田植機反転時に持ち上げられる部位である苗載せ台25等とともに除草具10(10’)も持ち上げられるので、別途除草具用のリフト機構を設ける必要がなくなる。
なお、手押しタイプの田植機20が一輪である場合には中央の車輪24sのみを備え、三輪である場合には、それに加え両サイドの車輪24sも備えることとなる。
【0053】
例えば主として図11に示すように、除草具10’(10)の田植機に対する取付機構30には、例えばネジ機構(31)からなる高さ調整機構ないし位置調整機構31を設けることができる。図11に示すように高さ調整機構ないし位置調整機構31を前後に2つ設ければ、除草具10’(10)の取付高さおよび取付角度を調整することができる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変形実施可能である。
【符号の説明】
【0055】
10: 除草具
11: 進入部
12: 反転排出部
20: 田植機
図1
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図11