(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025030789
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】プラスチック分解微生物
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20250228BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20250228BHJP
【FI】
C12N1/20 F
C12N1/20 D
C12N15/31
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136373
(22)【出願日】2023-08-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度 独立行政法人環境再生保全機構 環境研究総合推進費「廃棄プラスチックのバイオリサイクル技術の開発」による委託研究業務 産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】522263840
【氏名又は名称】株式会社Enzyme Labo
(71)【出願人】
【識別番号】505089614
【氏名又は名称】国立大学法人福島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼松 一弘
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 美恵
(72)【発明者】
【氏名】杉森 大助
(72)【発明者】
【氏名】千葉 剛大
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA03X
4B065AA04X
4B065AA15X
4B065AA41X
4B065AA48X
4B065AC20
4B065BA22
4B065BB40
4B065BD40
4B065CA55
(57)【要約】
【課題】プラスチック分解微生物を提供すること。
【解決手段】一つの態様において、本開示は、Acinetobacter属、Achromobacter属、Pseudomonas属、Serratia属、Amycolatopsis属およびBacillus属からなる群から選択される属の微生物であって、プラスチックを分解する能力を有する、微生物を提供する。一つの態様において、分解されるプラスチックには、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)およびエチレン-ビニルアルコールコポリマー(EVOH)のうち少なくとも一つが含まれる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Acinetobacter属、Achromobacter属、Pseudomonas属、Serratia属、Amycolatopsis属およびBacillus属からなる群から選択される属の微生物であって、プラスチックを分解する能力を有する、微生物。
【請求項2】
前記プラスチックが、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)およびエチレン-ビニルアルコールコポリマー(EVOH)のうち少なくとも一つを含む、請求項1に記載の微生物。
【請求項3】
前記微生物が、Acinetobacter属、Achromobacter属およびPseudomonas属からなる群から選択される属の微生物であり、ポリプロピレン(PP)を分解する能力を有する、請求項1に記載の微生物。
【請求項4】
前記微生物が、A. beijerinckii、A. junii、A. venetianus、A. haemolyticus、A. halotolerans、A. nosocomialis、A. baumannii、A. seifertii、A. pittii、A. lactucae、A. calcoaceticus、A. soliおよびA. baylyiからなる群から選択されるAcinetobacter属微生物である、請求項3に記載の微生物。
【請求項5】
前記微生物が、2-4-2A(受領番号AP-03962の株)、5-3-1A(受領番号AP-03963の株)、17-5-3D(受領番号AP-03964の株)またはその近縁株である、請求項3に記載の微生物。
【請求項6】
配列番号1~4のいずれかの配列と少なくとも90%の配列同一性を有する16S rDNAを含む、請求項3に記載の微生物。
【請求項7】
受領番号AP-03962、AP-03963およびAP-03964からなる群から選択される株である、請求項3に記載の微生物。
【請求項8】
前記微生物が、Serratia属、Acinetobacter属、Achromobacter属またはPseudomonas属の微生物であり、ポリエチレン(PE)を分解する能力を有する、請求項1に記載の微生物。
【請求項9】
前記微生物が、TIKK4D(受領番号AP-03965の株)、2-4-2A(受領番号AP-03962の株)、5-3-1A(受領番号AP-03963の株)、17-5-3D(受領番号AP-03964の株)またはその近縁株である、請求項8に記載の微生物。
【請求項10】
配列番号5~6のいずれかの配列と少なくとも90%の配列同一性を有する16S rDNAを含む、請求項8に記載の微生物。
【請求項11】
受領番号AP-03965、AP-03962、AP-03963およびAP-03964からなる群から選択される株である、請求項8に記載の微生物。
【請求項12】
前記微生物が、Amycolatopsis属またはBacillus属の微生物であり、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)を分解する能力を有する、請求項1に記載の微生物。
【請求項13】
前記微生物が、5Acc(受領番号AP-03966の株)またはその近縁株である、請求項12に記載の微生物。
【請求項14】
配列番号7~8のいずれかの配列と少なくとも90%の配列同一性を有する16S rDNAを含む、請求項13に記載の微生物。
【請求項15】
受領番号AP-03966の株である、請求項13に記載の微生物。
【請求項16】
請求項1に記載の微生物の菌体、培養上清、破砕物、その抽出物またはそれらの組み合わせを含む、プラスチック分解剤。
【請求項17】
プラスチックを分解する方法であって、
請求項1に記載の微生物の菌体、培養上清、破砕物、その抽出物またはそれらの組み合わせをプラスチックと接触させる工程
を含む、方法。
【請求項18】
前記接触させる工程の前にプラスチックを変性させる工程を含まない、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
プラスチック分解微生物を取得する方法であって、
候補微生物をプラスチックを唯一の炭素源として含む環境で培養する工程、および培養後に見出されたコロニーから微生物を単離する工程
を含む、方法。
【請求項20】
プラスチック分解剤を作製する方法であって、
請求項19に記載の方法で取得した微生物を使用して組成物を調製する工程
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラスチックを分解する能力を有する微生物、およびこのような微生物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
石油系成分から合成されるプラスチックは何十年にもわたって使用されており、廃棄プラスチックは、主に埋立処分や焼却処分される。これらのプラスチック廃棄物は、自然環境下での分解性が低いことから、いったん自然界に放出されてしまうとその回収、処理が難しいものとなってしまう。このようなプラスチックを分解する微生物は、わずかしか知られていないため、新たなプラスチック分解微生物が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明者らは、鋭意研究した結果、プラスチックを分解する能力を有する新規微生物を見出した。本開示は、このように見出された微生物およびその誘導株、ならびにその使用を提供する。また、本開示は、プラスチックを分解する能力を有する微生物を取得するための方法も提供する。
【0004】
したがって、本開示は以下を提供する。
(項目1)
Acinetobacter属、Achromobacter属、Pseudomonas属、Serratia属、Amycolatopsis属およびBacillus属からなる群から選択される属の微生物であって、プラスチックを分解する能力を有する、微生物。
(項目2)
前記プラスチックが、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)およびエチレン-ビニルアルコールコポリマー(EVOH)のうち少なくとも一つを含む、前記項目のいずれかの微生物。
(項目3)
前記微生物が、Acinetobacter属、Achromobacter属およびPseudomonas属からなる群から選択される属の微生物であり、ポリプロピレン(PP)を分解する能力を有する、前記項目のいずれかの微生物。
(項目4)
前記微生物が、A. beijerinckii、A. junii、A. venetianus、A. haemolyticus、A. halotolerans、A. nosocomialis、A. baumannii、A. seifertii、A. pittii、A. lactucae、A. calcoaceticus、A. soliおよびA. baylyiからなる群から選択されるAcinetobacter属微生物である、前記項目のいずれかの微生物。
(項目5)
前記微生物が、2-4-2A(受領番号AP-03962の株)、5-3-1A(受領番号AP-03963の株)、17-5-3D(受領番号AP-03964の株)またはその近縁株である、前記項目のいずれかの微生物。
(項目6)
配列番号1~4のいずれかの配列と少なくとも90%の配列同一性を有する16S rDNAを含む、前記項目のいずれかの微生物。
(項目7)
受領番号AP-03962、AP-03963およびAP-03964からなる群から選択される株である、前記項目のいずれかの微生物。
(項目8)
前記微生物が、Serratia属、Acinetobacter属、Achromobacter属またはPseudomonas属の微生物であり、ポリエチレン(PE)を分解する能力を有する、前記項目のいずれかの微生物。
(項目9)
前記微生物が、TIKK4D(受領番号AP-03965の株)、2-4-2A(受領番号AP-03962の株)、5-3-1A(受領番号AP-03963の株)、17-5-3D(受領番号AP-03964の株)またはその近縁株である、前記項目のいずれかの微生物。
(項目10)
配列番号5~6のいずれかの配列と少なくとも90%の配列同一性を有する16S rDNAを含む、前記項目のいずれかの微生物。
(項目11)
受領番号AP-03965、AP-03962、AP-03963およびAP-03964からなる群から選択される株である、前記項目のいずれかの微生物。
(項目12)
前記微生物が、Amycolatopsis属またはBacillus属の微生物であり、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)を分解する能力を有する、前記項目のいずれかの微生物。
(項目13)
前記微生物が、5Acc(受領番号AP-03966の株)またはその近縁株である、前記項目のいずれかの微生物。
(項目14)
配列番号7~8のいずれかの配列と少なくとも90%の配列同一性を有する16S rDNAを含む、前記項目のいずれかの微生物。
(項目15)
受領番号AP-03966の株である、前記項目のいずれかの微生物。
(項目16)
前記項目のいずれかの微生物の菌体、培養上清、破砕物、その抽出物またはそれらの組み合わせを含む、プラスチック分解剤。
(項目17)
プラスチックを分解する方法であって、
前記項目のいずれかの微生物の菌体、培養上清、破砕物、その抽出物またはそれらの組み合わせをプラスチックと接触させる工程
を含む、方法。
(項目18)
前記接触させる工程の前にプラスチックを変性させる工程を含まない、前記項目のいずれかの方法。
(項目19)
プラスチック分解微生物を取得する方法であって、
候補微生物をプラスチックを唯一の炭素源として含む環境で培養する工程、および
培養後に見出されたコロニーから微生物を単離する工程
を含む、方法。
(項目20)
プラスチック分解剤を作製する方法であって、
前記項目のいずれかの方法で取得した微生物を使用して組成物を調製する工程
を含む、方法。
【0005】
本開示において、上記1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供されうることが意図される。本開示のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
【発明の効果】
【0006】
本開示の微生物は、プラスチックを分解し得るので、石油製品の廃棄物の処理などにおいて利用でき、環境負荷を低下させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】見出されたPP分解菌の画線培養の写真を示す。
【
図2】2-3-1A、5-3-1A、2-4-2Aおよび6-3-1F株の16S rDNA塩基配列に基づく分子系統樹解析のクラスター図を示す。
【
図3】13-3-1C、17-4-2C、17-4-1Fおよび17-5-3D株の16S rDNA塩基配列に基づく分子系統樹解析のクラスター図を示す。
【
図4】それぞれの分離株のPP分解能についての試験結果を示す。それぞれの培養期間は以下の通りであった:_1:2-3-1A、17-5-3D、ctrlいずれも55日間培養。_2:2-4-2Aは9日、ctrlは63日間培養。_3:5-3-1Aは1日、6-3-1Fとctrlは56日間培養。_4:13-3-1Cは2日間、ctrlは7日間培養。17-4-1F:22日間培養。_5:17-4-2Cとctrlいずれも95日間培養。縦軸は、(開始時のPP片重量-培養後のPP片重量)/(開始時のPP片重量)で計算した分解率を示す。
【
図5】(左)17-5-3D株を添加して培養した場合のPPキャップ片の写真を示す。(右)菌添加なしの対照条件培養のPPキャップ片の写真を示す。
【
図6】TIKK4A、TIKK4DおよびAPKK9-2B株の16S rDNA塩基配列に基づく分子系統樹解析のクラスター図を示す。
【
図7】取得されたプラスチック分解菌のLDPE片分解能(上)およびHDPE片分解能(下)を評価した結果を3回の実験の平均値および標準誤差とともに示す。
【
図8】PE分解菌がPEフィルムに吸着することを示す写真である。(左)洗浄前、(右)洗浄後。(上段)TIKK4D、(中断)APKK9-2B、(下段)TIKK4A。
【
図9】PE分解菌が吸着したPEフィルムのFT-IR分析結果を示す。
【
図10】PVDC分解菌5Aの画線培養の写真を示す。
【
図11】7B、5A、7Aおよび5C株の16S rDNA塩基配列に基づく分子系統樹解析のクラスター図を示す。
【
図12】5Acc株の16S rDNA塩基配列に基づく分子系統樹解析のクラスター図を示す。
【
図13】取得されたPVDC分解菌のPVDCを唯一の炭素源とする培地中における増殖能を濁度に基づいて評価した結果を示す。
【
図14】取得されたプラスチック分解菌のEVOHを唯一の炭素源とする培地中における増殖能を濁度に基づいて評価した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
【0009】
(定義等)
本明細書において「分解」とは、対象となった物質(例えば、プラスチック)がそれより小さな分子になることを指す。プラスチックの分解を判定するために、必ずしもこの小さな分子を検出することは必要ではなく、プラスチック重量の減少、プラスチックの改変(酸化など)、プラスチックを唯一の炭素源とする環境における微生物の増殖などを検出することで分解が判定され得る。
【0010】
本明細書で使用される「近縁株」は、好ましくは、限定を意図するものではないが、対象となる微生物のDNAに実質的に相同な領域を含む遺伝子(例えば、16S rDNA)を含む。例えば、近縁株は、当該分野で公知のコンピュータ相同性プログラムによってアラインメントを行って元となる株の全ゲノムの配列と比較した際、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%または少なくとも99.9%同一である全ゲノム配列、および/または元となる株の16S rDNAの配列と比較した際、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%または少なくとも99.9%同一である16S rDNAを有する。これは、遺伝子の変異、置換、欠失および/または付加によって改変された微生物であり、その近縁株は、元の微生物の生物学的機能を、必ずしも同じ度合いでなくてもよいが示すことが好ましい。例えば、遺伝子の変異は、任意の公知の変異剤、UV、プラズマ、ゲノム編集技術などを使用して導入することができる。本明細書において「同一性」は、特に断りのない限りNCBIのBLASTによって測定された値で表すことができる。BLASTで塩基配列を比較するときのアルゴリズムには、Blastpをデフォルト設定で使用できる。測定結果はPositivesまたはIdentitiesとして数値化される。
【0011】
本明細書において「精製された」生物学的因子(例えば、特定の株の生物または細胞内成分)とは、その生物学的因子に天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。従って、通常、精製された生物学的因子におけるその生物学的因子の純度は、その生物学的因子が通常存在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)。本明細書中で使用される用語「精製された」は、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同型の生物学的因子(例えば、特定の生物株)が存在することを意味する。
【0012】
本明細書において、用語「約」は、特に別の定義が示されない限り、示された値プラスまたはマイナス10%を指す。温度について使用する場合、「約」は、示された値プラスまたはマイナス5℃を指し得る。
【0013】
本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、本開示の微生物を含む組成物、追加的な成分、緩衝液、説明書など)が提供されるユニットをいう。安定性等のため、混合されて提供されるべきでなく、使用直前に混合して使用することが好ましいような組成物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。そのようなキットは、好ましくは、提供される部分(例えば、微生物を含む組成物、追加的な成分)などをどのように使用するか、あるいは、どのように処理すべきかを記載する指示書または説明書を備えていることが有利である。本明細書においてキットが使用される場合、キットには、通常、本開示の微生物や組成物等の使い方などを記載した指示書などが含まれる。
【0014】
(好ましい実施形態)
以下に本開示の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本開示のよりよい理解のために提供されるものであり、本開示の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本開示の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本開示の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができることが理解される。
【0015】
(プラスチック分解微生物)
一つの局面において、本開示は、プラスチックを分解する能力を有する新たな微生物を提供する。分解対象であるプラスチックとしては、炭素-炭素二重結合を含むモノマー(または複数種類のモノマーの組み合わせ)のラジカル重合等により形成されるポリマーが挙げられ、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)およびエチレン-ビニルアルコールコポリマー(EVOH)などである。
【0016】
一つの実施形態では、本開示の微生物は、Acinetobacter属、Achromobacter属、Pseudomonas属、Serratia属、Amycolatopsis属およびBacillus属からなる群から選択される属の微生物である。
【0017】
一つの実施形態では、本開示の微生物は、アシネトバクター属(Acinetobacter)の細菌である。Acinetobacter属の微生物は、グラム陰性桿菌の真正細菌であり、好気性であり、短い棒状の形をしており、鞭毛を持たず、土壌など湿潤環境がよく見出される。Acinetobacter属には、albensis、apis、baumannii、baylyi、beijerinckii、bereziniae、bohemicus、boissieri、bouvetii、brisouii、calcoaceticus、celticus、chengduensis、chinensis、colistiniresistens、courvalinii、cumulans、defluvii、dispersus、equi、gandensis、gerneri、guerrae、guillouiae、gyllenbergii、haemolyticus、halotolerans、harbinensis、indicus、johnsonii、junii、kookii、lactucae、lanii、larvae、lwoffii、modestus、nectaris、nosocomialis、parvus、piscicola、pittii、populi、portensis、pragensis、proteolyticus、pseudolwoffii、pullicarnis、pullorum、puyangensis、qingfengensis、radioresistens、rongchengensis、rudis、schindleri、seifertii、shaoyimingii、sichuanensis、soli、tandoii、tianfuensis、tjernbergiae、towneri、ursingii、variabilis、venetianus、vivianii、wanghuae、およびwuhouensisなどの種が含まれる。
【0018】
Acinetobacter属の微生物の分類が、Jiayuanら、mSystems. 2021 May; 6(3)において提唱されており、A. lactucaeの最近縁種としてA. pittiiが挙げられており、その次のレベルの近縁種としてA. calcoaceticusが挙げられ、さらに次のレベルの近縁種としてA. baumannii、A. nosocomialisおよびA. seifertiiが挙げられている。A. lactucaeと近縁である種の微生物であるほど、6-3-1F、17-4-1Fおよび17-5-3Dなどと同様の性質が見出される可能性が高くなり得る。本願実施例の結果も考慮して、A. beijerinckii、A. junii、A. venetianus、A. haemolyticus、A. halotolerans、A. nosocomialis、A. baumannii、A. seifertii、A. pittii、A. lactucae、A. calcoaceticus、A. soliおよびA. baylyiからなる群から選択されるAcinetobacter属微生物には、ポリプロピレン分解能が見出され得る。
【0019】
一つの実施形態では、本開示の微生物は、Acinetobacter属であり、A. lactucaeが最も近縁である。本発明者は、ポリプロピレンを炭素源とする培地における増殖能を調べることで見出した。新たな微生物株(6-3-1F、17-4-1Fおよび17-5-3D)をA. lactucaeと近縁なAcinetobacter属細菌と同定し、このうちの17-5-3Dを独立行政法人製品評価技術基盤機構に寄託し、2023年8月14日に受領された。受領番号はAP-03964である。一つの実施形態では、本開示の微生物は、17-5-3D(受領番号:AP-03964)であるか、またはその近縁株である。一つの実施形態では、本開示の微生物は、17-5-3D(受領番号:AP-03964)の株と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%または少なくとも99.9%の配列同一性を有する全ゲノムを含む。一つの実施形態では、本開示の微生物は、配列番号4の16S rDNAと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%または少なくとも99.9%の配列同一性を有する16S rDNAを含む。
【0020】
一つの実施形態では、本開示の微生物は、アクロモバクター属(Achromobacter)の細菌である。Achromobacter属の微生物は、グラム陰性の桿菌であり、べん毛を有し、好気性であり、水や土壌中によく見出される。Achromobacter属には、arsenitoxydans、cholinophagum、clevelandea、cycloclastes、denitrificans、insolitus、lyticus、marplatensis、mucicolens、obae、piechaudii、ruhlandii、spaniusおよびxylosoxidansなどの種が含まれる。
【0021】
一つの実施形態では、本開示の微生物は、Achromobacter属細菌である。本発明者は、ポリプロピレンを炭素源とする培地における増殖能を調べることで見出した新たな微生物株5-3-1AをA. mucicolensと同定し、17-4-2をA. mucicolensに近縁なAchromobacter属細菌と同定した。このうちの5-3-1Aを独立行政法人製品評価技術基盤機構に寄託し、2023年8月14日に受領された。受領番号はAP-03963である。一つの実施形態では、本開示の微生物は、5-3-1A(受領番号:AP-03963)であるか、またはその近縁株である。一つの実施形態では、本開示の微生物は、5-3-1A(受領番号:AP-03963)の株と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%または少なくとも99.9%の配列同一性を有する全ゲノムを含む。一つの実施形態では、本開示の微生物は、配列番号2または3の16S rDNAと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%または少なくとも99.9%の配列同一性を有する16S rDNAを含む。
【0022】
一つの実施形態では、本開示の微生物は、シュードモナス属(Pseudomonas)の細菌である。シュードモナス属の微生物は、桿菌である、グラム陰性である、運動性を与える1本または数本の極鞭毛を有する、好気性である、胞子を形成しない、カタラーゼテストで陽性である、オキシダーゼテストで陽性である、グルコースを用いたヒュー・レイフソンテストにおいてガス形成しない、血液寒天培地上でベータ溶血性を示す、インドールテストに陰性である、メチルレッド、Voges-Proskauerテストに陰性である、クエン酸テストに陽性である、のうちの少なくとも1つの特性を有し得る。シュードモナス属には、abietaniphila、acidovorans、aestusnigri、aeruginosa、agarici、alcaligenes、alcaliphila、aminovorans、amygdali、andropogonis、anguilliseptica、antarctica、antimicrobica、argentinensis、arsenicoxydans、asplenii、asturiensis、aurantiaca、aureofaciens、avellanae、avenae、avenae subsp. avenae、avenae subsp. citrulli、avenae subsp. konjaci、azotifigens、azotoformans、baetica、balearica、bauzanensis、beijerinckii、benzenivorans、beteli、borbori、boreopolis、brassicacearum、brassicacearum subsp. brassicacearum、brassicacearum subsp. neoaurantiaca、brenneri、caeni、cannabina、carboxydohydrogena、caricapapayae、caryophylli、cattleyae、cedrina、cedrina subsp. cedrina、cedrina subsp. fulgida、cepacia、chengduensis、chloritidismutans、chlororaphis、chlororaphis subsp. aurantiaca、chlororaphis subsp. aureofaciens、chlororaphis subsp. chlororaphis、chlororaphis subsp. piscium、cichorii、cissicola、citronellolis、cocovenenans、composti、congelans、corrugata、costantinii、cremoricolorata、cuatrocienegasensis、deceptionensis、delafieldii、delhiensis、diminuta、doudoroffii、duriflava、echinoides、elongata、entomophila、extremaustralis、extremorientalis、facilis、ficuserectae、flava、flavescens、flectens、fluorescens、fragi、frederiksbergensis、fulva、fuscovaginae、gelidicola、geniculata、gessardii、gladioli、glathei、glumae、graminis、grimontii、guangdongensis、guariconensis、guguanensis、guineae、halophila、helmanticensis、hibiscicola、hussainii、huttiensis、indica、indigofera、iners、japonica、jessenii、jinjuensis、kilonensis、knackmussii、koreensis、kunmingensis、kuykendallii、lanceolata、lemoignei、libanensis、lini、litoralis、lundensis、lurida、lutea、luteola、mallei、maltophilia、mandelii、marginalis、marina、marincola、mediterranea、meliae、mendocina、mephitica、meridiana、mesophilica、migulae、mixta、mohnii、monteilii、moorei、moraviensis、mosselii、mucidolens、multiresinivorans、nautica、nicosulfuronedens、nitroreducens、oleovorans、oleovorans subsp. lubricantis、oleovorans subsp. oleovorans、orientalis、oryzihabitans、otitidis、pachastrellae、palleroniana、palleronii、panacis、panipatensis、parafulva、paucimobilis、pelagia、peli、perfectomarina、pertucinogena、phenazinium、pickettii、pictorum、plantarii、plecoglossicida、poae、pohangensis、prosekii、protegens、proteolytica、pseudoalcaligenes、pseudoalcaligenes subsp. citrulli、pseudoalcaligenes subsp. konjaci、pseudoalcaligenes subsp. pseudoalcaligenes、pseudoflava、pseudomallei、psychrophila、psychrotolerans、punonensis、putida、pyrrocinia、radiora、reinekei、resinovorans、rhizosphaerae、rhodesiae、rhodos、rubrilineans、rubrisubalbicans、sabulinigri、saccharophila、salegens、salomonii、saponiphila、savastanoi、segetis、seleniipraecipitans、simiae、solanacearum、spinosa、stanieri、straminea、stutzeri、synxantha、syringae、syringae subsp. savastanoi、syringae subsp. syringae、syzygii、taeanensis、taeniospiralis、taetrolens、taiwanensis、testosteroni、thermotolerans、thivervalensis、tolaasii、toyotomiensis、tremae、trivialis、tuomuerensis、umsongensis、vancouverensis、veronii、vesicularis、viridiflava、vranovensis、woodsii、xanthomarina、xiamenensis、xinjiangensis、zeshuiiなどの種が含まれる。
【0023】
一つの実施形態では、本開示の微生物は、Pseudomonas nicosulfuronedensに近縁なPseudomonas属細菌である。本発明者は、ポリプロピレンを炭素源とする培地における増殖能を調べることで見出した新たな微生物株(2-3-1A、13-3-1Cおよび2-4-2A)をP. nicosulfuronedensに近縁なPseudomonas属細菌と同定し、このうちの2-4-2Aを独立行政法人製品評価技術基盤機構に寄託し、2023年8月14日に受領された。受領番号はAP-03962である。一つの実施形態では、本開示の微生物は、2-4-2A(受領番号:AP-03962)であるか、またはその近縁株である。一つの実施形態では、本開示の微生物は、2-4-2A(受領番号:AP-03962)の株と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%または少なくとも99.9%の配列同一性を有する全ゲノムを含む。一つの実施形態では、本開示の微生物は、配列番号1の16S rDNAと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%または少なくとも99.9%の配列同一性を有する16S rDNAを含む。
【0024】
一つの実施形態では、本開示の微生物は、セラチア属(Serratia)の細菌である。Serratia属の微生物は、グラム陰性の非芽胞形成通性嫌気性の桿菌であり、鞭毛を有し、土壌、水中などで見出される。Serratia属には、aquatilis、entomophila、ficaria、fonticola、glossinae、grimesii、liquefaciens、marcescens、myotis、nematodiphila、odorifera、plymuthica、proteamaculans、quinivorans、rubidaea、symbiotica、ureilyticaおよびvespertilionisなどの種が含まれる。
【0025】
一つの実施形態では、本開示の微生物は、Serratia nematodiphilaまたはSerratia marcescens subsp. sakuensisに帰属するSerratia marcescensである。一つの実施形態では、本開示の微生物は、Serratia marcescensである。本発明者は、ポリエチレンを炭素源とする培地における増殖能を調べることで見出した新たな微生物株(TIKK4A、TIKK4D、APKK9-2B)をS. marcescensの近縁種と同定し、このうちのTIKK4Dを独立行政法人製品評価技術基盤機構に寄託し、2023年8月14日に受領された。受領番号はAP-03965である。一つの実施形態では、本開示の微生物は、TIKK4D(受領番号:AP-03965)であるか、またはその近縁株である。一つの実施形態では、本開示の微生物は、TIKK4D(受領番号:AP-03965)の株と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%または少なくとも99.9%の配列同一性を有する全ゲノムを含む。一つの実施形態では、本開示の微生物は、配列番号5または6の16S rDNAと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%または少なくとも99.9%の配列同一性を有する16S rDNAを含む。
【0026】
一つの実施形態では、本開示の微生物は、アミコラトプシス属(Amycolatopsis)の細菌である。Amycolatopsis属の微生物は、グラム陽性菌であり、高いGC含量を有する。Achromobacter属には、acidicola、acididurans、acidiphila、aidingensis、alba、albidoflavacorrig、albispora、alkalitolerans、anabasis、antarctica、arida、australiensis、azurea、balhimycina、bartoniae、benzoatilytica、bullii、camponoti、cappadoca、cihanbeyliensis、circi、coloradensis、decaplanina、dendrobii、deserti、dongchuanensis、eburnea、echigonensis、endophytica、equina、flava、granulosa、halotolerans、helveola、hippodromi、japonicacorrig、jejuensis、jiangsuensis、jiguanensis、kentuckyensis、keratiniphila、lactamdurans、lexingtonensis、lurida、magusensis、marina、mediterranei、methanolica、minnesotensis、nigrescens、niigatensis、nivea、oliviviridis、orientalis、palatopharyngis、panacis、pigmentata、pithecellobiicorrig、pittospori、plumensis、pretoriensis、regifaucium、rhabdoformis、rhizosphaerae、rifamycinica、roodepoortensis、ruanii、rubida、saalfeldensis、sacchari、samaneae、silviterrae、speibonae、stemonae、suaedae、sulphurea、taiwanensis、thailandensis、thermalba、thermoflava、thermophila、tolypomycina、tucumanensis、ultiminotia、umgeniensis、vancoresmycina、vastitatis、viridis、xuchangensisおよびxylanicaなどの種が含まれる。
【0027】
本発明者は、ポリ塩化ビニリデンを炭素源とする培地における増殖能を調べることで見出した新たな微生物株5AccをAmycolatopsis属の微生物と同定し、これを独立行政法人製品評価技術基盤機構に寄託し、2023年8月14日に受領された。受領番号はAP-03966である。5Accは、16S rDNAに基づくクラスタリングによって、A. halotoleransおよびA. albidoflavusと近縁である。一つの実施形態では、本開示の微生物は、5Acc(受領番号:AP-03966)であるか、またはその近縁株である。一つの実施形態では、本開示の微生物は、5Acc(受領番号:AP-03966)の株と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%または少なくとも99.9%の配列同一性を有する全ゲノムを含む。一つの実施形態では、本開示の微生物は、配列番号7の16S rDNAと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%または少なくとも99.9%の配列同一性を有する16S rDNAを含む。
【0028】
一つの実施形態では、本開示の微生物は、バチルス属(Bacillus)の細菌である。Bacillus属の微生物は、芽胞を形成し、偏性好気性(一部通性嫌気性)のグラム陽性桿菌である。Bacillus属には、acidiceler、acidicola、acidiproducens、acidocaldarius、acidoterrestris、aeolius、aerius、aerophilus、agaradhaerens、agri、aidingensis、akibai、alcalophilus、algicola、alginolyticus、alkalidiazotrophicus、alkalinitrilicus、alkalisediminis、alkalitelluris、altitudinis、alveayuensis、alvei、amyloliquefaciens、amylolyticus、andreesenii、aneurinilyticus、anthracis、aquimaris、arenosi、arseniciselenatis、arsenicus、aurantiacus、arvi、aryabhattai、asahii、atrophaeus、axarquiensis、azotofixans、azotoformans、badius、barbaricus、bataviensis、beijingensis、benzoevorans、beringensis、berkeleyi、beveridgei、bogoriensis、boroniphilus、borstelensis、brevis、butanolivorans、canaveralius、carboniphilus、cecembensis、cellulosilyticus、centrosporus、cereus、chagannorensis、chitinolyticus、chondroitinus、choshinensis、chungangensis、cibi、circulans、clarkii、clausii、coagulans、coahuilensis、cohnii、composti、curdlanolyticus、cycloheptanicus、cytotoxicus、daliensis、decisifrondis、decolorationis、deserti、dipsosauri、drentensis、edaphicus、ehimensis、eiseniae、enclensis、endophyticus、endoradicis、farraginis、fastidiosus、fengqiuensis、firmus、flexus、foraminis、fordii、formosus、fortis、fumarioli、funiculus、fusiformis、galactophilus、galactosidilyticus、galliciensis、gelatini、gibsonii、ginsengi、ginsengihumi、ginsengisoli、globisporus、glucanolyticus、gordonae、gottheilii、graminis、halmapalus、haloalkaliphilus、halochares、halodenitrificans、halodurans、halophilus、halosaccharovorans、hemicellulosilyticus、hemicentroti、herbersteinensis、horikoshii、horneckiae、horti、huizhouensis、humi、hwajinpoensis、idriensis、indicus、infantis、infernus、insolitus、invictae、iranensis、isabeliae、isronensis、jeotgali、kaustophilus、kobensis、kochii、kokeshiiformis、koreensis、korlensis、kribbensis、krulwichiae、laevolacticus、larvae、laterosporus、lautus、lehensis、lentimorbus、lentus、licheniformis、ligniniphilus、litoralis、locisalis、luciferensis、luteolus、luteus、macauensis、macerans、macquariensis、macyae、malacitensis、mannanilyticus、marinus、marisflavi、marismortui、marmarensis、massiliensis、megaterium、mesonae、methanolicus、methylotrophicus、migulanus、mojavensis、mucilaginosus、muralis、murimartini、mycoides、naganoensis、nanhaiensis、nanhaiisediminis、nealsonii、neidei、neizhouensis、niabensis、niacini、novalis、oceanisediminis、odysseyi、okhensis、okuhidensis、oleronius、oryzaecorticis、oshimensis、pabuli、pakistanensis、pallidus、pallidus、panacisoli、panaciterrae、pantothenticus、parabrevis、paraflexus、pasteurii、patagoniensis、peoriae、persepolensis、persicus、pervagus、plakortidis、pocheonensis、polygoni、polymyxa、popilliae、proteolyticus、pseudalcaliphilus、pseudofirmus、pseudomycoides、psychrodurans、psychrophilus、psychrosaccharolyticus、psychrotolerans、pulvifaciens、pumilus、purgationiresistens、pycnus、qingdaonensis、qingshengii、reuszeri、rhizosphaerae、rigui、ruris、safensis、salarius、salexigens、saliphilus、schlegelii、sediminis、selenatarsenatis、selenitireducens、seohaeanensis、shacheensis、shackletonii、siamensis、silvestris、simplex、siralis、smithii、soli、solimangrovi、solisalsi、songklensis、sonorensis、sphaericus、sporothermodurans、stearothermophilus、stratosphericus、subterraneus、subtilis、taeanensis、tequilensis、thermantarcticus、thermoaerophilus、thermoamylovorans、thermocatenulatus、thermocloacae、thermocopriae、thermodenitrificans、thermoglucosidasius、thermolactis、thermoleovorans、thermophilus、thermoruber、thermosphaericus、thiaminolyticus、thioparans、thuringiensis、tianshenii、trypoxylicola、tusciae、validus、vallismortis、vedderi、velezensis、vietnamensis、vireti、vulcani、wakoensis、weihenstephanensis、xiamenensis、xiaoxiensisおよびzhanjiangensisなどの種が含まれる。
【0029】
一つの実施形態では、本開示の微生物は、Bacillus cereusグループに属し、帰属候補種はBacillus proteolyticusまたはBacillus cereusである。本発明者は、ポリ塩化ビニリデンを炭素源とする培地における増殖能を調べることで見出した新たな微生物株(7A、7B、5A、5C)をB. proteolyticusまたはB. cereusに帰属する可能性のあるB. cereusグループの微生物と同定した。一つの実施形態では、本開示の微生物は、配列番号8の16S rDNAと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%または少なくとも99.9%の配列同一性を有する16S rDNAを含む。
【0030】
一つの実施形態では、本開示の微生物は、ポリプロピレン(PP)分解能を有し得る。ポリプロピレン(PP)分解能を有する本開示の微生物は、Acinetobacter属、Achromobacter属、またはPseudomonas属の微生物であり得る。一つの実施形態では、本開示の微生物は、ポリプロピレン(PP)分解能を有し、クリーンベンチ内でW培地5mLを含む試験管に廃棄PPキャップ(蒸留水で洗浄後、約1cmに切断したもの)1片および特定量(乾燥重量または細胞数、例えば、前培養液1%v/v)の分離菌を入れ、特定の日数(例えば、1日間、1週間、30日間など)往復振とう培養(例えば、28℃、160min-1)を行い、PPキャップ片を回収、洗浄および乾燥させ、菌添加なしの対照培養物と比較してPPキャップ片の分解率を測定した場合に、同量の2-4-2A、5-3-1Aまたは17-5-3D株を使用したときの分解率と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%または少なくとも200%の分解率を達成する微生物であり得る。
【0031】
一つの実施形態では、本開示の微生物は、ポリエチレン(PE)分解能を有し得る。ポリエチレン(PE)分解能を有する本開示の微生物は、Acinetobacter属、Achromobacter属、Pseudomonas属、またはSerratia属の微生物であり得る。一つの実施形態では、本開示の微生物は、ポリエチレン(PE)分解能を有し、クリーンベンチ内でW培地5mLを含む試験管に低密度ポリエチレン(LDPE)製の業務用ポリ袋(日本サニパック)(約3cm角に切断したもの)3片または高密度ポリエチレン(HDPE)製の0.022mm厚さ乳白レジ袋(アスクル株式会社)3片および特定量(乾燥重量または細胞数、例えば、前培養液2%v/v)の分離菌を入れ、特定の日数(例えば、7日間など)旋回振とう培養(例えば、30℃、160min-1)を行い、PE片を回収、洗浄および乾燥させ、菌添加なしの対照培養物と比較してPE片の分解率を測定した場合に、同量のTIKK4D株を使用したときの分解率と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%または少なくとも200%の分解率を達成する微生物であり得る。
【0032】
一つの実施形態では、本開示の微生物は、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)分解能を有し得る。ポリ塩化ビニリデン(PVDC)分解能を有する本開示の微生物は、Amycolatopsis属またはBacillus属の微生物であり得る。一つの実施形態では、本開示の微生物は、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)分解能を有し、クリーンベンチ内でW培地5mLを含む試験管にクレラップ(株式会社クレハ)1片および特定量(乾燥重量または細胞数、例えば、前培養液1%v/v)の分離菌を入れ、特定の日数(例えば、28日間など)往復振とう培養(例えば、37℃、160min-1)を行い、PVDC片を回収、洗浄および乾燥させ、菌添加なしの対照培養物と比較してPVDC片の分解率を測定した場合に、同量の5Acc株を使用したときの分解率と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%または少なくとも200%の分解率を達成する微生物であり得る。
【0033】
一つの実施形態では、本開示の微生物は、以下で説明する微生物を取得する方法で取得される微生物である。
【0034】
(プラスチック分解微生物を取得する方法)
一つの局面において、本開示は、プラスチック分解微生物を取得する方法を提供する。この方法は、候補微生物をプラスチックを唯一の炭素源として含む環境で培養する工程、および培養後に見出されたコロニーから微生物を単離する工程を含み得る。プラスチックを唯一の炭素源として含む環境で増殖した微生物は、プラスチックを分解する能力を有し得る。単離した候補微生物について、さらにプラスチックを分解する能力を確認してもよい。候補微生物をプラスチックを唯一の炭素源として含む環境で培養することで取得した培養物をプレート上に播種して培養を行うことで、候補微生物のコロニーが形成され得る。
【0035】
一つの実施形態では、クリーンベンチ内でW培地5mLを含む試験管に廃棄PPキャップ(蒸留水で洗浄後、約1cmに切断したもの)1片および特定量(乾燥重量または細胞数、例えば、前培養液1%v/v)の分離菌を入れ、特定の日数(例えば、1日間、1週間、30日間など)往復振とう培養(例えば、28℃、160min-1)を行い、PPキャップ片を回収、洗浄および乾燥させ、菌添加なしの対照培養物と比較してPPキャップ片の分解率を測定した場合に、PPキャップ片の分解(本明細書に記載の微生物のPP分解能)が確認されたときに、ポリプロピレン(PP)分解能を有する微生物が取得され得る。
【0036】
1
一つの実施形態では、クリーンベンチ内でW培地5mLを含む試験管に低密度ポリエチレン(LDPE)製の業務用ポリ袋(日本サニパック、厚さ0.03mm)を約3cm角に切断したもの3片または高密度ポリエチレン(HDPE)製の白色不透明レジ袋(アスクル株式会社、厚さ0.022mm)を約3cm角に切断したもの3片、および特定量(乾燥重量または細胞数、例えば、前培養液2%v/v)の分離菌を入れ、特定の日数(例えば、7日間など)旋回振とう培養(例えば、30℃、160min-1)を行い、PE片を回収、洗浄および乾燥させ、菌添加なしの対照培養物と比較してPE片の分解率を測定した場合に、PE片の分解(本明細書に記載の微生物のPE分解能)が確認されたときに、PE分解能を有する微生物が取得され得る。
【0037】
一つの実施形態では、クリーンベンチ内でW培地5mLを含む試験管にクレラップ(株式会社クレハ)約1cm角に切断したもの1片および特定量(乾燥重量または細胞数、例えば、前培養液1%v/v)の分離菌を入れ、特定の日数(例えば、28日間など)往復振とう培養(例えば、37℃、160min-1)を行い、PVDC片を回収、洗浄および乾燥させ、菌添加なしの対照培養物と比較してPVDC片の分解率を測定した場合に、PVDC片の分解(本明細書に記載の微生物のPVDC分解能)が確認されたときに、PVDC分解能を有する微生物が取得され得る。
【0038】
(プラスチック分解微生物を含む組成物)
一つの局面において、本開示は、本開示の微生物の菌体、培養上清、破砕物、その抽出物またはそれらの組み合わせを含む組成物を提供する。本開示の微生物は、任意の適当な方法により培養することで製造することができる。一つの実施形態では、組成物はプラスチック分解剤である。一つの実施形態では、組成物はポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)および/またはエチレン-ビニルアルコールコポリマー(EVOH)の分解剤である。
【0039】
一つの局面において、本開示は、本開示の微生物の菌体、培養上清、破砕物、その抽出物またはそれらの組み合わせを含むプラスチック分解剤を作製する方法を提供する。この方法は、本明細書に記載の方法で取得した微生物を使用して組成物を調製する工程を含み得る。一つの実施形態では、この方法は、本明細書に記載のプラスチック分解微生物を取得する方法を実施する工程、および取得した微生物を使用して組成物を調製する工程を含み得る。微生物の菌体、培養上清、破砕物、その抽出物またはそれらの組み合わせを任意の物質(本明細書に記載の追加の成分、担体など)と組み合わせて組成物が調製され得る。
【0040】
一つの実施形態では、プラスチック分解剤は、Acinetobacter属、Achromobacter属またはPseudomonas属からなる群から選択される微生物の菌体、培養上清、破砕物、その抽出物またはそれらの組み合わせを含む、ポリプロピレン(PP)および/またはポリエチレン(PE)分解剤である。一つの実施形態では、プラスチック分解剤は、Serratia属の微生物の菌体、培養上清、破砕物、その抽出物またはそれらの組み合わせを含む、ポリエチレン(PE)分解剤である。一つの実施形態では、プラスチック分解剤は、Amycolatopsis属またはBacillus属からなる群から選択される微生物の菌体、培養上清、破砕物、その抽出物またはそれらの組み合わせを含む、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)分解剤である。
【0041】
(適用対象)
一つの実施形態では、本開示の微生物または組成物は、石油化学製品の廃棄物など任意の種類のプラスチックを含む対象に適用できる。一つの実施形態では、本開示の微生物または組成物は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)およびエチレン-ビニルアルコールコポリマー(EVOH)のうち少なくとも一つを含む対象に適用できる。一つの実施形態では、対象は、本開示の微生物または組成物を適用する前に物理破砕(切断など)、洗浄、乾燥、滅菌などの操作がなされていてもよい。一つの実施形態では、対象は、本開示の微生物または組成物を適用する前にUV照射、高温および/または高圧(オートクレーブなど)への曝露、化学処理などの操作がなされていてもよく、微生物によるプラスチック分解が促進され得る。
【0042】
(使用形態)
本開示の微生物または組成物の形態としては、例えば、液体状態、固体状態などが挙げられる。液体状態の微生物または組成物としては、微生物の培養液、培養液から微生物を遠心分離などにより集菌した後、水や緩衝液或いは培養液などに再度分散させたものなどが例示される。固体状態の微生物または組成物としては、遠心分離やプレス圧縮等により脱水したもの、固体と液体の中間のようなペースト状態・マヨネーズ状態のもの、乾燥(例えば、減圧乾燥、凍結乾燥)した乾燥体などが例示される。固体の形状として、例えば、粉末、顆粒、錠剤などが挙げられる。また、組成物は、微生物または培養上清が担体に固定された状態で提供されてもよい。
【0043】
一つの実施形態において、本開示の微生物または組成物は、約1×108細胞/mL、約1×107細胞/mL、約1×106細胞/mL、約1×105細胞/mL、約1×104細胞/mL、約1×103細胞/mL、約1×102細胞/mLまたは約10細胞/mLの密度となるようにキャリア(培養液、固定化剤、保護材、または保護剤など)に分散させて使用され得る。
【0044】
(適用環境)
本開示の微生物または組成物は、任意の好適な環境下で使用できる。一つの実施形態において、本開示の微生物または組成物は、0~100℃、5~70℃、10~50℃、15~40℃、20~35℃、70℃未満、60℃未満、50℃未満、40℃未満、30℃未満、25℃未満、20℃未満、15℃未満、10℃未満、5℃未満、0℃未満、約70℃、約60℃、約50℃、約40℃、約30℃、約25℃、約15℃、約10℃、約5℃または約0℃などの任意の温度環境で使用され得る。
【0045】
一つの実施形態において、本開示の微生物または組成物は、pH3~13、pH4~12、pH5~11、pH6~10、pH7~9、pH5.5~8.5、約pH3、約pH4、約pH5、約pH6、約pH7、約pH8、約pH9、約pH10、約pH11、約pH12または約pH13などの任意のpH環境で使用され得る。
【0046】
一つの実施形態において、本開示の微生物または組成物は、約0g/L、約0.05g/L、約0.1g/L、約0.5g/L、約0.7g/L、約1g/L、約1.5g/L、約2g/L、約2.5g/L、約3g/L、約4g/L、約5g/L、約7g/L、または約10g/Lなどの任意の塩(例えば、塩化ナトリウム)濃度の環境で使用され得る。
【0047】
一つの実施形態において、本開示の微生物または組成物は、塩、界面活性剤、光、超音波、マイクロ波などの電磁波、電流、撹拌操作、ばっ気操作、有機溶剤またはこれらの任意の組み合わせが存在する条件で使用されてもよい。
【0048】
一つの実施形態において、本開示の微生物または組成物は、微生物を固定できる担体とともに使用されてもよい。担体の材質としては、微生物を固定できるものであれば特に制限なく、例えば、炭素繊維(PAN系、ピッチ系、フェノール樹脂系等)、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレングリコール樹脂、アクリル樹脂、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、デキストリン、セラミックス、シリコン、金属、木炭、活性炭、鉱物(ゼオライト、珪藻土等)、ガラス、ガラスくず、これらの複合体などが挙げられる。微生物の固定化率及び微生物の作用効率を高めるために、多孔質又は繊維状の担体を用いることができる。ゲル状担体に微生物を包含させてもよい。担体の形状は、例えば、立方体状、直方体状、円柱状、球状、円板状、シート状、膜状などが挙げられる。
【0049】
(追加成分)
一つの実施形態において、本開示の微生物または組成物は、追加の成分と組み合わされて使用してもよい。一つの実施形態において、追加の成分は、組成物に添加されていてもよいし、微生物または組成物とは別個に使用されてもよく、別個に使用される場合には、キットとして提供されてもよい。
【0050】
一つの実施形態において、追加の成分として、使用する微生物の活性を高める成分(遷移金属イオン、ビタミンなど)、界面活性剤、乾燥保護剤、微生物を長期間維持するための成分、防腐剤、賦形剤、強化剤、酸化防止剤、分散剤、凝集剤、他の微生物が挙げられるが、これらに限定されず任意の好適な成分を使用することができる。追加の成分として、微生物の保存用の液、培養培地などが含まれてもよく、これらは、組成物に含まれて提供されてもよく、微生物または組成物とは別個に使用されてもよく、キットとして提供されてもよい。
【0051】
(微生物を使用する方法)
一つの局面において、本開示は、プラスチックを分解する方法を提供する。一つの実施形態において、この方法は、本開示の微生物の菌体、培養上清、破砕物、その抽出物またはそれらの組み合わせ、あるいは本開示の組成物をプラスチックを含む対象と接触させる工程を含む。プラスチックを含む対象は、本開示の微生物または組成物を適用することができる任意の本明細書に記載される対象であり得る。一つの実施形態において、本開示のプラスチックを分解する方法は、上記接触させる工程の前にプラスチックを変性させる工程を含まなくてもよい。この変性は、例えば、UV照射、高温および/または高圧への曝露(オートクレーブなど)、または化学処理により生じる変性であり得る。典型的には、変性は、物品表面の物理的処理(物品表面の摩擦、物品表面への力の付加など)、プラズマ照射、コロナ放電、UV照射、高温および/または高圧への曝露(例えば、オートクレーブ)あるいは化学的処理(例えば、遷移金属イオン、不飽和脂肪酸などのラジカル発生源、界面活性剤、クロロホルムなどの有機溶剤、硫酸、クロム酸などの酸、水酸化ナトリウムなどの塩基、過酸化水素、次亜塩素酸などの酸化剤を用いた処理、およびプライマー処理(接着剤用の下塗り剤など))により生じる変性であり得る。本開示のプラスチックを分解する方法は、本開示の微生物または組成物を適用することができる任意の本明細書に記載される環境において実施することができる。本開示のプラスチックを分解する方法では、本開示の微生物または組成物と組み合わせて使用され得る任意の本明細書に記載される追加成分を使用することができる。
【0052】
以下に、実施例に基づいて本開示を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例0053】
(実施例1:ポリプロピレン(PP)分解菌)
廃棄PPキャップを唯一の炭素源とするW培地を用いて、PP分解微生物のスクリーニングを行った。また、取得した菌株を対象に16S rDNA塩基配列解析による分類学上の同定を行った。
【0054】
(試薬と材料)
実験に使用した試薬を以下の表に示す。土壌、屋外のゴム、屋外のプラスチックなどから試料を採取し、微生物の分離を試みた。特に記載のない試薬は全て市販特級品、あるいは最高純度品を使用した。
【表1】
【0055】
(集積培養)
PP分解菌を増殖させるために、廃棄PPキャップを唯一の炭素源とするW培地を用いて、多種の微生物の混合系から特定の微生物のみを増殖させて単離する集積振とう培養を行った。また、菌の増殖は濁度の測定によって確認した。集積振とう培養の手順を以下に示す。
【0056】
試験管(φ18×180mm)にW培地を5mL入れ、シリコセンをしてアルミホイルで覆い、121℃で15分間オートクレーブ(ES-315、株式会社トミー精工、東京)滅菌した。
【表2】
【表3】
【0057】
クリーンベンチ内で廃棄PPキャップ(蒸留水で洗浄後、約1cmに切断したもの)を1片、蒸留水(DW)で懸濁した分離源の上澄み液を1%(v/v)加え、最大で20日間往復振とう培養(37℃、160min-1)を行った。
【0058】
分光光度計を用いて660nmにおける濁度(光学密度:OD)を測定し、ODが0.05程度以上まで上昇した試験管培養液から廃棄PPキャップを1片入れたW培地5mLに1%(v/v)植菌し、上記と同様に培養した。この操作を最低3回繰り返し(集積培養)、培養液の濁度上昇の再現性を確認した。
【0059】
(PP分解菌の分離)
PP分解菌を単離するために、濁度上昇に再現性のあるサンプルを対象に画線培養を行った。普通寒天培地プレートに白金耳を用いて集積培養液を画線し、分解菌の単一菌化を行い、各コロニーのマスタープレートとグリセロールストック(終濃度20v/v%グリセロール)を作製した(
図1)。
【表4】
【0060】
クリーンベンチ内で試験管W培地5mLに廃棄PPキャップを1片入れ、単一菌化を行った分解菌マスタープレートから一白金耳分植菌し、37℃、160min-1で1~14日間、往復振とう培養を行った。
【0061】
試験管にW培地5mLを入れ、事前に真空デシケーターで一晩乾燥させ、試験管に加える直前に電子天秤で重量を測定した廃棄PPキャップを1片入れた。分解菌マスタープレートから一白金耳分植菌し、37℃、160min-1で最大58日間、往復振とう培養を行った。培養液からピンセットを用いて廃棄PPキャップを回収した。
【0062】
50mL容ビーカー内に20mLの超純水(UPW)を注ぎスターラーで撹拌した。このビーカー内に回収した廃棄PPキャップを入れ、5分間洗浄をした。この操作を2回行った。洗浄後、廃棄PPキャップをPS製シャーレに入れ、シリカゲル入りの真空デシケーターで一晩真空乾燥し、直ちに重量を測定した。そして、廃棄PPキャップの重量変化から分解率を算出した。この実験を最低2回繰り返した。
【0063】
(PP分解菌の分類学上の同定)
分離した菌株について、16S rDNA塩基配列解析を行うことにより、PP分解候補菌株群の分類学上の同定を行った。簡易分子系統樹解析により以下の結果が得られた(
図2、3)。
・2-3-1A株の16S rDNA部分塩基配列はPseudomonas nicosulfuronedens LAM 1902T(アクセッション番号MN007089)に対し相同率99.9%の相同性を示した。
・2-4-1A株の16S rDNA部分塩基配列はPseudomonas nicosulfuronedens LAM 1902T(アクセッション番号MN007089)に対し相同率99.9%の相同性を示した。
・5-3-1A株の16S rDNA部分塩基配列はAchromobacter mucicolens R-46662T(アクセッション番号HE613446)に対し相同率99.9%の相同性を示した。
・6-3-1F株の16S rDNA部分塩基配列はAcinetobacter lactucae CCUG68785T(アクセッション番号KU921101)に対し相同率99.8%の相同性を示した。
・13-3-1C株の16S rDNA部分塩基配列はPseudomonas nicosulfuronedens LAM 1902T(アクセッション番号MN007089)に対し相同率99.9%の相同性を示した。
・17-4-1F株の16S rDNA部分塩基配列はAcinetobacter lactucae CCUG68785T(アクセッション番号KU921101)に対し相同率99.8%の相同性を示した。
・17-4-2C株の16S rDNA部分塩基配列はAchromobacter mucicolens R-46662T(アクセッション番号HE613446)に対し相同率99.8%の相同性を示した。
・17-5-3D株の16S rDNA部分塩基配列はAcinetobacter lactucae CCUG68785T(アクセッション番号KU921101)に対し相同率99.8%の相同性を示した。
【0064】
2-4-2A、5-3-1Aおよび17-5-3D株を寄託して、それぞれ受領番号AP-03962、AP-03963およびAP-03964が得られた。
【0065】
(分離株によるPP分解試験)
同定されたそれぞれの分離株について、PP分解能を試験した。クリーンベンチ内で廃棄PPキャップ(蒸留水で洗浄後、約1cmに切断したもの)1片を用いて上記のPP分解菌スクリーニングと同様に行った。1日から最大95日間、往復振とう培養(28℃、160min
-1)を行った。その結果、いずれの分離株にもPP分解能が観察された(
図3)。
【0066】
また、クリーンベンチ内で試験管802培地(Hipolypeptone 10g/L、酵母エキス2g/L、MgSO
4・7H
2O 1g/L)5mLにPPキャップ(日電理化硝子、TGK品番0717-04-10-57、約1cmに切断したもの)を1片入れ、単一菌化を行った17-5-3Dマスタープレートから一白金耳分植菌し、37℃、160min
-1で14日間、往復振とう培養を行い、菌添加無しの場合と比較した。その結果、PP分解菌添加条件ではPPキャップにクラックが見られ、PPが分解されていることが目視でも観察された(
図4)。
【0067】
(種々のAcinetobacter属細菌によるPP分解)
Acinetobacter lactucae以外のAcinetobacter属の種についてもPP分解能が認められるかを試験した。
【0068】
Acinetobacter属の種は、ゲノム分析に基づく分類が提唱されているが(Jiayuanら、mSystems. 2021 May-Jun; 6(3))、この分類に基づき、Acinetobacter lactucae周辺の種についてPP分解能が認められるか試験した。
【0069】
A. calcoaceticus、A. radioresistens、A. baumannii、A. haemolyticus、A. pittii、A. baylyi、A. gyllenbergii、A. parvus、A. ursingiiのそれぞれの株をNBRCから入手した。具体的には、以下の株である。
【表5】
【0070】
A. lactucaeと近縁である17-5-3D株および上記NBRC入手株について、PP粉末(セイシン企業、PPW-5J)15mgを用いて上記のPP分解菌スクリーニングと同様に行った。14日間、往復振とう培養(32℃、160min-1)を行った。
【0071】
分解実験は2回実施し、PP粉末の分解を以下の判定基準に従って評価した。
【表6】
【0072】
(1)、(2)および(3)の判定が比較的高いPP分解活性を示すと評価し、2回の実験の両方の結果において、(1)、(2)または(3)と判定された株を特に高いPP分解活性を示すと評価したところ、A. lactucae、A. calcoaceticusA. pittii、A. baumannii、A. baylyiおよびA. haemolyticusがこの基準を満たし、他の株はこの基準を満たさなかった。なお、他の株(A. ursingii、A. parvus、A. gyllenbergii、A. radioresistens)にも、少なくとも低度のPP分解活性が見られた。
【0073】
A. lactucae以外にも、A. lactucae、A. calcoaceticus、A. pittii、A. baumannii、A. baylyiおよびA. haemolyticusにおいて優れたPP分解能が観察された。
【0074】
このことから、Jiayuanら、mSystems. 2021 May-Jun; 6(3)の提唱するAcinetobacter属微生物の分類に従い、A. beijerinckii、A. junii、A. venetianus、A. haemolyticus、A. halotolerans、A. nosocomialis、A. baumannii、A. seifertii、A. pittii、A. lactucae、A. calcoaceticus、A. soliおよびA. baylyiの範囲の種において優れたPP分解能を有する微生物を得ることができると予想される。
【0075】
(実施例2:ポリエチレン(PE)分解菌)
クリーンベンチ内で市販透明ゴム袋(LDPE)(約1cm角に切断したもの)を1片を用いて上記のPP分解菌スクリーニングと同様に行った。
【0076】
(PE分解菌の分離)
PE分解菌を単離するために、濁度上昇に再現性のあるサンプルを対象に画線培養を行った。W培地プレートに白金耳を用いて集積培養液を画線し、市販透明ゴム袋を重層して28℃で培養した。PEフィルム下、周囲を好んで増殖するコロニーをピックアップし、再度同様の操作を数回繰り返した。最後に、普通培地プレートに画線し、単一菌化を確認し、各単一菌コロニーのマスタープレートとグリセロールストック(終濃度20v/v%グリセロール)を作製した。
【0077】
(PE分解菌の分類学上の同定)
分離した菌株について、16S rDNA塩基配列解析を行うことにより、PE分解候補菌株群の分類学上の同定を行った。簡易分子系統樹解析により以下の結果が得られた(
図9~10)。
・TIKK4A株およびTIKK4D株の16S rDNA部分塩基配列はSerratia nematodiphila DZ0503SBS1(アクセッション番号EU036987)およびSerratia marcescens subsp. sakuensis KRED(アクセッション番号AB061685)に対し相同率99.8%の相同性を示した。TIKK4A株およびTIKK4D株は、Serratia nematodiphilaまたはSerratia marcescens subsp. sakuensisに帰属する可能性のあるSerratia marcescensと同定された。
・APKK9-2B株の16S rDNA部分塩基配列はSerratia marcescens subsp. marcescens NMRC 102204(アクセッション番号AB681729)に対し相同率99.7%の相同性を示した。
【0078】
TIKK4D株を寄託して受領番号AP-03965が得られた。
【0079】
(分離株によるPE分解試験)
500mL容フラスコ内に100mLのW培地、クリーンベンチ内で低密度ポリエチレン(LDPE)製の業務用ポリ袋(日本サニパック)(約3cm角に切断したもの)3片、高密度ポリエチレン(HDPE)製の0.022mm厚さ乳白レジ袋(アスクル株式会社)3片、2%(v/v)NB培養液(約108~109細胞/mLの濃度)を用いて、7日間、旋回振とう培養(30℃、160min-1)を行った。培養液からピンセットを用いてLDPE片、HDPE片を回収した。
【0080】
試験管内に5mLの2%SDS溶液、LDPE片、HDPE片を加え、5分間超音波洗浄した。50mL容ビーカー内に20mLの超純水(UPW)を注ぎスターラーで撹拌した。このビーカー内に超音波洗浄したLDPE片、HDPE片を入れ、3分間洗浄した。洗浄後、LDPE片、HDPE片をPS製シャーレに入れ、シリカゲル入りの真空デシケーターで3日間真空乾燥し、直ちに重量を測定した。そして、LDPE片、HDPE片の重量変化から分解率を算出した。この実験は各菌について3回行った(
図11、12)。
【0081】
その結果、2-3-1A、2-4-2A、5-3-1A、17-4-1F、17-4-2C、17-5-3D、TIKK4A、およびTIKK4Dの株は、LDPE分解能を有し、2-3-1A、2-4-2A、5-3-1A、6-3-1F、13-3-1C、17-4-1F、17-4-2C、およびTIKK4Aの株はHDPE分解能を有することが見出された。
【0082】
(PE分解菌のPE吸着性)
クリーンベンチ内で低密度ポリエチレン(LDPE)製の業務用ポリ袋(日本サニパック)(約1cm角に切断したもの)1片を用いて上記のPP分解菌スクリーニングと同様に行った。乾燥したLDPE片を用いて、実体顕微鏡観察、FT-IR分析を行った(
図13、14)。その結果、TIKK4A、TIKK4DおよびAPKK9-2B株は、いずれもPEに吸着することが観察された。特に、TIKK4Aは高い吸着性を有することが観察された。
【0083】
(実施例3:ポリビニルジクロルデン(PVDC)分解菌)
クリーンベンチ内でクレラップ(株式会社クレハ)(約1cm角に切断したもの)1片を用いて上記PP分解菌スクリーニングと同様に行った。
【0084】
(PVDC分解菌の分離)
PVDC分解菌を単離するために、濁度上昇に再現性のあるサンプルを対象に画線培養を行った。W培地プレートに白金耳を用いて集積培養液を画線し、市販クレラップを重層して28度で培養した(
図15)。PVDCフィルム下、周囲を好んで増殖するコロニーをピックアップし、再度同様の操作を数回繰り返した。最後に、普通培地プレートに画線し、単一菌化を確認し、各単一菌コロニーのマスタープレートとグリセロールストック(終濃度20v/v%グリセロール)を作製した。
【0085】
(PVDC分解菌の分類学上の同定)
分離した菌株について、16S rDNA塩基配列解析を行うことにより、PVDC分解候補菌株群の分類学上の同定を行った。簡易分子系統樹解析により以下の結果が得られた(
図16~18)。
・7A株の16S rDNA部分塩基配列は、Bacillus proteolyticus MCCC1A00365(アクセッション番号KJ812418)およびBacillus cereus ATCC14579(アクセッション番号AED16877)に対し相同率99.9%の相同性を示し、B. proteolyticusまたはB. cereusに帰属する可能性のあるB. cereusグループの微生物と同定した。
・7B株の16S rDNA部分塩基配列は、Bacillus proteolyticus MCCC1A00365(アクセッション番号KJ812418)およびBacillus cereus ATCC14579(アクセッション番号AED16877)に対し相同率99.9%の相同性を示し、B. proteolyticusまたはB. cereusに帰属する可能性のあるB. cereusグループの微生物と同定した。
・5A株は16S rDNA部分塩基配列からB. cereusグループの微生物と同定した。
・5C株は16S rDNA部分塩基配列からB. cereusグループの微生物と同定した。
・5Acc株の16S rDNA部分塩基配列はAmycolatopsis halotolerans N4-6(アクセッション番号DQ000196)およびAmycolatopsis albidoflavus IMSNU22139(アクセッション番号AJ252832)に対し最も高い相同率を示したが、その相同率は98.9%であり、Amycolatopsis属の新種である可能性がある。
【0086】
5Acc株を寄託して受領番号AP-03966が得られた。
【0087】
(分離株によるPVDC分解試験)
試験管にW培地5mLを入れ、事前に真空デシケーターで一晩乾燥させ、試験管に加える直前に電子天秤で重量を測定したクレラップ(株式会社クレハ)を1片入れた。分解菌マスタープレートから一白金耳分植菌し、37℃、160min-1で28日間、往復振とう培養を行った。培養液からピンセットを用いてPVDC片を回収した。
【0088】
50mL容ビーカー内に20mLの超純水(UPW)を注ぎスターラーで撹拌した。このビーカー内に回収したPVDC片を入れ、5分間洗浄をした。洗浄後、PVDC片をPS製シャーレに入れ、シリカゲル入りの真空デシケーターで2日間真空乾燥し、直ちに重量を測定した。そして、PVDC片の重量変化から分解率を算出した。
【表7】
【0089】
表に示すように試験したいずれの菌株においてもPVDCの分解が確認でき、分解能力の上位3株は、7A、7Bおよび5Acc株であることが分かった。
【0090】
(PVDC分解菌の増殖能)
次に、PVDC分解菌株のPVDCを唯一の炭素源とする培地中における増殖能を試験した。
【0091】
クリーンベンチ内で試験管W培地5mLにクレラップ(株式会社クレハ)を1片入れ、単一菌化を行った分解菌マスタープレートから一白金耳分植菌し、37℃、160min
-1で14日間、往復振とう培養を行った。培養途中で、分光光度計を用いて660nmにおける濁度(光学密度:OD)を測定した。その結果、5Acc株はPVDCを含むW培地で特に良好に増殖した(
図19)。
【0092】
(実施例4:ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)(EVOH)分解)
また、上記プラスチック分解菌(PP、PE分解菌)について、EVOH分解能を試験した。
【0093】
試験管W培地5mLにEVOH(sigma、カタログ番号414093-100G)を3個入れ、オートクレーブ滅菌(121℃、15分間)を行った。
【0094】
クリーンベンチ内でオートクレーブ滅菌したEVOH添加試験管W培地5mLに、単一菌化を行った分解菌マスタープレートから一白金耳分植菌し、28℃、160min
-1で7日間、往復振とう培養を行った(
図20)。培養途中で、分光光度計を用いて660nmにおける濁度(光学密度:OD)を測定した。
【0095】
この結果から、2-3-1A、2-4-2A、5-3-1A、13-3-1C、17-4-1Fおよび17-4-2C株はEVOH分解能を有することが分かった。
【0096】
(注記)
以上のように、本開示の好ましい実施形態を用いて本開示を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願及び他の文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。