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特開2025-3085システム、制御装置、および、制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003085
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】システム、制御装置、および、制御方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
G08G1/09 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103563
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩堀 健人
(72)【発明者】
【氏名】横山 大樹
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA27
5H181BB04
5H181CC02
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF05
5H181FF13
(57)【要約】
【課題】遠隔制御に適した検出用画像を得られる可能性を高める技術を提供する。
【解決手段】システムは、車両であって、車両が撮影された検出用画像に含まれる予め定められた検出箇所を用いた遠隔制御によって走行する車両と、検出用画像を取得する画像取得部と、遠隔制御によって車両が走行する環境であって、検出用画像に影響を与え得る環境を表す環境情報を取得する環境情報取得部と、取得される環境情報に応じて、検出箇所として用いられる車両の部位と、検出用画像の撮影方向と、の少なくとも一方を決定する第1決定部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両であって、前記車両が撮影された検出用画像に含まれる予め定められた検出箇所を用いた遠隔制御によって走行する車両と、
前記検出用画像を取得する画像取得部と、
前記遠隔制御によって前記車両が走行する環境であって、取得される前記検出用画像に影響を与え得る環境を表す環境情報を取得する環境情報取得部と、
取得される前記環境情報に応じて、前記検出箇所として用いられる前記車両の部位と、前記検出用画像の撮影方向と、の少なくとも一方を決定する第1決定部と、を備える、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
前記環境情報は、前記遠隔制御によって前記車両が走行するタイミングを表す情報と、前記遠隔制御によって前記車両が走行する場所を表す情報と、の少なくとも一方を含む、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、
前記車両を撮影する複数のカメラと、
前記環境情報に応じて、各前記カメラのうち、決定される前記部位と前記撮影方向との前記少なくとも一方に関する条件を満たすように前記検出用画像を撮影可能な前記カメラを、前記検出用画像の撮影する担当カメラとして決定する第2決定部と、を備え、
前記画像取得部は、前記担当カメラから前記検出用画像を取得する、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、
前記第1決定部は、前記検出箇所として用いられる前記部位を少なくとも決定し、
前記第1決定部は、前記環境情報に応じて、前記部位を、前記車両の左側部分または右側部分に択一的に決定する、システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムであって、
前記第1決定部は、前記環境情報に応じて、前記部位を、前記車両の左後方角部または右後方角部に択一的に決定する、システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のシステムであって、
前記検出用画像における前記検出箇所を用いて、前記遠隔制御のための制御指令の生成に用いられる前記車両の位置を推定する推定処理の内容を、決定される前記部位と前記撮影方向との前記少なくとも一方に応じて決定する第3決定部を備える、システム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムであって、
前記第1決定部は、前記検出箇所として用いられる前記部位を少なくとも決定し、
前記第1決定部は、前記環境情報に応じて、前記部位を、前記車両の車幅方向において互いに対称に位置する第1部分と第2部分との一方に択一的に決定し、
前記第3決定部は、
前記検出箇所として前記第2部分が用いられる場合に、前記推定処理において、前記検出用画像を鏡像反転させた反転画像を生成するとともに、前記反転画像において前記第2部分を検出する処理を実行することを決定し、
前記検出箇所として前記第1部分が用いられる場合に、前記推定処理において、鏡像反転されていない前記検出用画像において前記第1部分を検出する処理を実行することを決定する、
システム。
【請求項8】
請求項6に記載のシステムであって、
前記第3決定部は、決定される前記部位と前記撮影方向との前記少なくとも一方に応じて、前記推定処理で用いられるプログラムを決定することによって、前記推定処理の内容を決定する、システム。
【請求項9】
車両が撮影された検出用画像であって、前記検出用画像に含まれる予め定められた検出箇所が前記車両の遠隔制御に用いられる検出用画像を取得する画像取得部と、
前記遠隔制御によって前記車両が走行する環境であって、取得される前記検出用画像に影響を与え得る環境を表す環境情報を取得する環境情報取得部と、
取得される前記環境情報に応じて、前記検出箇所として用いられる前記車両の部位と、前記検出用画像の撮影方向と、の少なくとも一方を決定する第1決定部と、を備える、制御装置。
【請求項10】
車両が撮影された検出用画像であって、前記検出用画像に含まれる予め定められた検出箇所が前記車両の遠隔制御に用いられる検出用画像を取得する工程と、
前記遠隔制御によって前記車両が走行する環境であって、取得される前記検出用画像に影響を与え得る環境を表す環境情報を取得する工程と、
取得される前記環境情報に応じて、前記検出箇所として用いられる前記車両の部位と、前記検出用画像の撮影方向と、の少なくとも一方を決定する工程と、を備える、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、システム、制御装置、および、制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の製造工程において、遠隔制御によって車両を走行させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-538619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カメラによって車両を撮影した撮影画像を用いて、車両を遠隔制御する技術が知られている。しかしながら、単に車両を撮影するのみでは、例えば、車両に強い日射しが照射されている場合や、車両が旋回している場合には、遠隔制御に適した撮影画像が得られない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、システムが提供される。このシステムは、車両であって、前記車両が撮影された検出用画像に含まれる予め定められた検出箇所を用いた遠隔制御によって走行する、車両と、前記検出用画像を取得する画像取得部と、前記遠隔制御によって前記車両が走行する環境であって、取得される前記検出用画像に影響を与え得る環境を表す環境情報を取得する環境情報取得部と、取得される前記環境情報に応じて、前記検出箇所として用いられる前記車両の部位と、前記検出用画像の撮影方向と、の少なくとも一方を決定する第1決定部と、を備える。
このような形態であれば、遠隔制御によって車両が走行する環境に応じて、検出箇所として用いられる車両の部位や、検出用画像の撮影方向を決定できる。そのため、車両の遠隔制御に適した検出用画像を得られる可能性が高まる。
(2)上記形態では、前記環境情報は、前記遠隔制御によって前記車両が走行するタイミングを表す情報と、前記遠隔制御によって前記車両が走行する場所を表す情報と、の少なくとも一方を含んでいてもよい。このような形態であれば、遠隔制御によって車両が走行するタイミングや場所に応じて、検出箇所として用いられる車両の部位や、検出用画像の撮影方向を決定できる。
(3)上記形態では、前記車両を撮影する複数のカメラと、前記環境情報に応じて、各前記カメラのうち、決定される前記部位と前記撮影方向との前記少なくとも一方に関する条件を満たすように前記検出用画像を撮影可能な前記カメラを、前記検出用画像の撮影する担当カメラとして決定する第2決定部と、を備え、前記画像取得部は、前記担当カメラから前記検出用画像を取得してもよい。このような形態であれば、環境情報に応じて、検出用画像の撮影を担当するカメラを適切に決定できる。
(4)上記形態では、前記第1決定部は、前記検出箇所として用いられる前記部位を少なくとも決定し、前記第1決定部は、前記環境情報に応じて、前記部位を、前記車両の左側部分または右側部分に択一的に決定してもよい。このような形態であれば、環境情報に応じて、検出箇所として、車両の左側部分や右側部分を用いることができる。
(5)上記形態では、前記第1決定部は、前記環境情報に応じて、前記部位を、前記車両の左後方角部または右後方角部に択一的に決定してもよい。このような形態であれば、環境情報に応じて、検出箇所として、車両の左後方角部や右後方角部を用いることができる。
(6)上記形態では、前記検出用画像における前記検出箇所を用いて、前記遠隔制御のための制御指令の生成に用いられる前記車両の位置を推定する推定処理の内容を、決定される前記部位と前記撮影方向との前記少なくとも一方に応じて決定する第3決定部を備えていてもよい。このような形態であれば、検出箇所として決定される車両の部位や、決定される撮影方向に応じて、推定処理の内容を決定できる。そのため、推定処理において車両の位置をより精度良く推定できる可能性が高まる。
(7)上記形態では、前記第1決定部は、前記検出箇所として用いられる前記部位を少なくとも決定し、前記第1決定部は、前記環境情報に応じて、前記部位を、前記車両の車幅方向において互いに対称に位置する第1部分と第2部分との一方に択一的に決定し、前記第3決定部は、前記検出箇所として前記第2部分が用いられる場合に、前記推定処理において、前記検出用画像を鏡像反転させた反転画像を生成するとともに、前記反転画像において前記第2部分を検出する処理を実行することを決定し、前記検出箇所として前記第1部分が用いられる場合に、前記推定処理において、鏡像反転されていない前記検出用画像において前記第1部分を検出する処理を実行することを決定してもよい。このような形態であれば、検出箇所として第1部分を用いる場合と第2部分を用いる場合とで、検出用画像を鏡像反転させることを除いて同様の手順で、第1部分や第2部分を検出できる。
(8)上記形態では、前記第3決定部は、決定される前記部位と前記撮影方向との前記少なくとも一方に応じて、前記推定処理で用いられるプログラムを決定することによって、前記推定処理の内容を決定してもよい。このような形態であれば、第3決定部によってプログラムを決定することで、検出箇所として決定される車両の部位や、決定される撮影方向に応じて、推定処理の内容を決定できる。
【0007】
本開示は、上述したシステムとしての形態以外にも、例えば、制御装置や、制御方法や、その制御方法を実現するためのコンピュータプログラム、および、コンピュータプログラムが記録された一時的でない記録媒体などの形態で実現することができる。また、例えば、上記のシステムは、車両を遠隔制御するために、予め準備された機械学習モデルに検出用画像を入力することによって、検出用画像における検出箇所を検出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】システムの構成を示す概念図である。
図2】車両と制御装置との構成を示すブロック図である。
図3】決定処理のフローチャートである。
図4】第1実施形態における決定処理を説明する第1の図である。
図5】第1実施形態における決定処理を説明する第2の図である。
図6】第1実施形態における決定処理を説明する第3の図である。
図7】推定処理のフローチャートである。
図8】推定処理において画像が解析される様子の例を示す説明図である。
図9】第2実施形態における決定処理を説明する第1の図である。
図10】第2実施形態における決定処理を説明する第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態におけるシステム10の構成を示す概念図である。図2は、車両100と制御装置200との構成を示すブロック図である。システム10は、車両100を遠隔制御により走行させる遠隔制御システムとして構成されている。システム10は、1台以上の車両100と、車両100の遠隔制御を実行する制御装置200と、車両100が撮影された撮影画像Piを撮影する複数のカメラ300と、車両100の製造工程の管理を行う工程管理装置400とを備える。
【0010】
本実施形態における車両100は、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)である。なお、車両100は、電気自動車に限られず、例えば、ガソリン自動車や、ハイブリッド自動車や、燃料電池自動車でもよい。
【0011】
本実施形態では、車両100を製造する工場において、車両100の遠隔制御が実行される。図1に示すように、本実施形態における工場は、第1場所PL1と第2場所PL2とを備えている。第1場所PL1は、例えば、車両100の組み立てが実施される場所であり、第2場所PL2は、例えば、車両100の検査が実施される場所である。工場内の任意の位置は、基準座標系Σrのxyz座標値で表現される。基準座標系Σrは、例えば、ワールド座標系(グローバル座標系とも呼ばれる)として定義される。第1場所PL1と第2場所PL2とは、車両100が走行可能な走路SRによって接続されている。走路SRは、図1に示すような一連の走路でなくてもよく、例えば、途中で複数の走路に分岐する走路や、複数の走路が途中で合流する走路であってもよい。この場合、車両100の種別(例えば、車種や型式やグレードや動力源)や、車両100の検査結果や、各走路の混雑度合いや、次工程の混雑度合い等に応じて、車両100が走行する走路が決定されてもよい。このような走路の決定には、例えば、後述する製造情報が用いられてもよい。
【0012】
なお、第1場所PL1と第2場所PL2とは、同じ建屋内に設けられてもよいし、同じ敷地内の異なる建屋内に設けられてもよい。また、第1場所PL1と第2場所PL2とは、屋内ではなく、屋外に設けられてもよい。また、第1場所PL1と第2場所PL2とは、複数の敷地に分散して設けられてもよく、例えば、公道あるいは私道を挟んで隣接する第1工場と第2工場とに分散して設けられてもよい。この場合、第1工場と第2工場とを合わせて工場と呼び、走路SRには公道の一部あるいは私道の一部が含まれてもよい。
【0013】
走路SRの周辺には、車両100を撮影可能に構成された複数のカメラ300が設置されている。制御装置200は、各カメラ300によって撮影される撮影画像Piを用いて、リアルタイムで、目標ルートTRに対する車両100の相対的な位置および向きや、車両100の走行方向を取得することができる。このように検出される位置や向きや走行方向は、車両100を遠隔制御するための制御指令の生成に用いられる。本実施形態では、各カメラ300は、走路SRを上方から俯瞰する画像を撮影可能なように配置されている。また、個々のカメラ300の位置は固定されており、基準座標系Σrと個々のカメラ300の装置座標系(以下、カメラ座標系とも呼ぶ)との相対関係は既知である。基準座標系Σrの座標値と個々のカメラ300の装置座標系の座標値とを相互に変換するための座標変換行列は、制御装置200内に予め格納されている。なお、車両100の遠隔制御では、例えば、車両100に搭載された各種の車載カメラや、LiDAR(Light Detection And Ranging)、ミリ波レーダ、超音波センサ、赤外線センサ等の各種センサが補助的に用いられてもよい。
【0014】
本実施形態における制御装置200は、上述した制御指令を生成して車両100に送信する遠隔制御装置として構成されている。より詳細には、制御装置200は、車両100を目標ルートTRに沿って走行させるための制御指令を生成し、制御指令を車両100に送信する。車両100は、受信した制御指令に従って走行する。従って、システム10により、クレーンやコンベアなどの搬送装置を用いずに、車両100を第1場所PL1から第2場所PL2まで遠隔制御により移動させることができる。
【0015】
図2に示すように、車両100は、車両100の各部を制御するための車両制御装置110と、車両制御装置110の制御下で駆動するアクチュエータ群120と、無線通信により制御装置200と通信するための通信装置130と、車両100の位置情報を取得するためのGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機140とを備えている。本実施形態では、アクチュエータ群120には、車両100を加速させるための駆動装置のアクチュエータ、車両100の進行方向を変更するための操舵装置のアクチュエータ、および、車両100を減速させるための制動装置のアクチュエータが含まれている。駆動装置には、バッテリ、バッテリの電力により駆動する走行用モータ、および、走行用モータにより回転する駆動輪が含まれている。駆動装置のアクチュエータには、走行用モータが含まれている。なお、アクチュエータ群120には、さらに、車両100のワイパを揺動させるためのアクチュエータや、車両100のパワーウィンドウを開閉させるためのアクチュエータなどが含まれてもよい。
【0016】
車両制御装置110は、プロセッサ111と、メモリ112と、入出力インタフェイス113と、内部バス114とを備えるコンピュータにより構成されている。プロセッサ111、メモリ112、および、入出力インタフェイス113は、内部バス114を介して、双方向に通信可能に接続されている。入出力インタフェイス113には、アクチュエータ群120、通信装置130、および、GNSS受信機140が接続されている。
【0017】
本実施形態では、プロセッサ111は、メモリ112に予め記憶されているプログラムPG1を実行することにより、車両制御部115および位置情報取得部116として機能する。車両制御部115は、アクチュエータ群120を制御する。車両制御部115は、車両100に運転者が搭乗している場合に、運転者の操作に応じてアクチュエータ群120を制御することにより、車両100を走行させることができる。車両制御部115は、車両100に運転者が搭乗しているか否かにかかわらず、制御装置200から送信される制御指令に応じてアクチュエータ群120を制御することにより、車両100を走行させることもできる。位置情報取得部116は、GNSS受信機140を用いて、車両100の現在地を示す位置情報を取得する。ただし、位置情報取得部116とGNSS受信機140とは、省略可能である。
【0018】
制御装置200は、プロセッサ201と、メモリ202と、入出力インタフェイス203と、内部バス204とを備えるコンピュータにより構成されている。プロセッサ201、メモリ202、および、入出力インタフェイス203は、内部バス204を介して、双方向に通信可能に接続されている。入出力インタフェイス203には、無線通信により車両100,カメラ300,および,工程管理装置400と通信するための通信装置205が接続されている。
【0019】
本実施形態では、プロセッサ201は、メモリ202に予め記憶されているプログラムPG2を実行することにより、画像取得部210、環境情報取得部220、第1決定部230、第2決定部240、第3決定部245、推定部250、および、指令生成部260として機能する。メモリ202には、プログラムPG2に加え、後述する条件データ271と、カメラデータ272と、推定プログラム280とが格納されている。推定プログラム280は、後述する解析プログラムを含む。
【0020】
画像取得部210は、撮影画像Piをカメラ300から取得する。撮影画像Piのうち、予め定められた検出箇所を含む撮影画像Piのことを、検出用画像とも呼ぶ。検出箇所としては、車両100のうちの一部分が用いられる。検出用画像における検出箇所は、遠隔制御に用いられる。より詳細には、検出用画像における検出箇所は、車両100の位置を推定するのに用いられ、推定される車両100の位置は、遠隔制御のための制御指令の生成に用いられる。
【0021】
環境情報取得部220は、遠隔制御によって車両100が走行する環境(以下、走行環境とも呼ぶ)を表す環境情報を取得する。この環境情報によって表される走行環境は、画像取得部210によって取得される検出用画像に影響を与え得る。本実施形態における環境情報は、遠隔制御によって車両100が走行する場所(以下、走行場所とも呼ぶ)を表す走行場所情報を含む。車両100の走行場所は、車両100と各カメラ300との相対的な位置や角度に影響するため、検出用画像に影響を与え得る。本実施形態における走行場所情報は、走路SR上における車両100の現在位置情報である。なお、「車両100の現在位置情報」は、車両100の現在の居場所を少なくとも大まかに表す情報であればよい。制御装置200や工程管理装置400は、こうした現在位置情報を、例えば、GNSS受信機140や、走路SRの周辺に設けられたエリアセンサ(図示せず)や、上述した遠隔制御に用いられる各種センサ(例えば、カメラ300)を利用して取得する。また、車両100の現在位置情報と目標ルートTRとを用いて、車両100が今後に走行する予定の場所、例えば、車両100が今後に走行する予定の区間を特定可能である。
【0022】
第1決定部230は、環境情報取得部220によって取得される環境情報に応じて、検出箇所として用いられる車両100の部位である検出用部位と、検出用画像の撮影方向との少なくとも一方を決定する。本実施形態では、第1決定部230は、検出用部位を決定する。以下では、第1決定部230によって決定される検出用部位と撮影方向との少なくとも一方に関する条件のことを、画像条件とも呼ぶ。
【0023】
本実施形態では、第1決定部230は、環境情報に応じて条件データ271を参照することで、検出用部位を決定する。本実施形態における条件データ271は、走行環境と、検出箇所として使用され得る車両100の部位との対応関係を記録したデータである。より詳細には、本実施形態における条件データ271は、走路SRに含まれる区間ごとに、その区間で検出箇所として使用される車両100の部位を記録したデータである。
【0024】
第2決定部240は、環境情報に応じて、検出用画像の撮影を担当するカメラ300である担当カメラを決定する。このように決定される担当カメラは、決定される画像条件に従って車両100を撮影可能なカメラ300である。本実施形態では、担当カメラは、検出用部位を含む撮影画像Piを撮影可能なカメラ300である。
【0025】
本実施形態では、第2決定部240は、環境情報に応じてカメラデータ272を参照することで、担当カメラを決定する。カメラデータ272は、走行環境と、各カメラ300との対応関係を記録したデータである。より詳細には、本実施形態におけるカメラデータ272は、走路SRに含まれる区間ごとに、その区間における検出用画像の撮影を担当する各カメラ300の識別情報を記録したデータである。このカメラデータ272は、走路SRに含まれるいずれの区間においても、決定される画像条件を満たす検出用画像を撮影可能なカメラ300が担当カメラとして決定されるように定義されている。
【0026】
推定部250は、推定処理を実行する。推定処理は、検出用画像における検出箇所を用いて、遠隔制御対象の車両100の位置を推定する処理である。本実施形態における推定処理は、解析処理と、解析処理の結果を用いて車両100の位置を推定する処理とを含む。解析処理は、検出用画像を解析することによって、検出用画像における検出箇所を検出する処理である。本実施形態では、推定部250によって推定プログラム280が実行されることで、推定処理が実行される。なお、推定部250は、例えば、車両100の走行履歴や、車両100に搭載されているGNSS受信機140で検出された位置情報を用いて、車両100の位置や向きを推定することが可能である。また、車両100の走行方向は、車両100の向きや走行履歴や制御指令の履歴等を用いて推定可能である。
【0027】
本実施形態における推定部250は、上述した解析処理を実行する解析部251を有する。本実施形態における解析部251は、それぞれ解析プログラムである第1解析プログラム281や第2解析プログラム282を実行することで、解析処理を実行する。解析プログラムとは、解析プログラムを実行するコンピュータに、検出用画像を解析させて検出用画像における検出箇所を検出させる機能を実現させるプログラムである。
【0028】
第3決定部245は、画像条件、つまり、決定される検出用部位と撮影方向との少なくとも一方に応じて、推定処理の内容を決定する。本実施形態における第3決定部245は、画像条件に応じて推定処理で用いられるプログラムを決定することによって、画像条件に応じて推定処理の内容を決定する。より詳細には、第3決定部245は、画像条件に応じて検出用プログラムを決定する。検出用プログラムとは、解析処理で検出用画像における検出箇所の検出に用いられる解析プログラムである。なお、本明細書において、「画像条件に応じたプログラムの決定」とは、画像条件に応じてプログラムの処理工程を決定することを指す。そのため、「画像条件に応じたプログラムの決定」の意味は、例えば、予め準備された複数のプログラムから、画像条件に応じて一の解析プログラムを、決定される対象のプログラムとして選択することを含む。この場合、検出用プログラムの選択は、例えば、複数のプログラムを含む包括的なプログラムにおいて、画像条件に応じた条件分岐が実行されることによって実現されてもよい。また、「画像条件に応じたプログラムの決定」の意味は、例えば、プログラムに含まれるコードの一部や全部を画像条件に応じて書き換えることによって、決定される対象のプログラムを準備することを含む。
【0029】
上述した推定プログラム280は、解析プログラムとして、第1解析プログラム281と第2解析プログラム282とを含む包括的なプログラムである。第1解析プログラム281および第2解析プログラム282の詳細については後述する。
【0030】
指令生成部260は、推定部250によって推定される車両100の位置や向きを用いて、遠隔制御のための制御指令を生成して車両100に送信する。この制御指令は、メモリ202に格納された目標ルートTRに従って車両100を走行させる指令である。制御指令は、駆動力又は制動力と、舵角とを含む指令として生成することができる。或いは、制御指令を、車両100の位置及び向きの少なくとも一方と、今後の走行ルートとを含む指令として生成してもよい。
【0031】
工程管理装置400は、例えば、コンピュータによって構成され、工場における車両100の製造工程全般の管理を実行する。例えば、1台の車両100が目標ルートTRに沿った走行を開始する際には、その車両100を識別する識別番号や型式などを示す個体情報が、工程管理装置400から制御装置200に送信される。この個体情報は、車両100の製造工程の管理に用いられる製造情報に相当する。また、制御装置200で検出された車両100の位置は、工程管理装置400にも送信される。なお、工程管理装置400の機能を、制御装置200と同じ装置に実装するようにしてもよい。
【0032】
図3は、本実施形態における決定処理のフローチャートである。この決定処理は、本実施形態における制御方法を実現するための処理である。決定処理は、制御装置200のプロセッサ201によって、例えば、所定の時間間隔で実行される。
【0033】
図3のS110にて、環境情報取得部220は、遠隔制御対象の車両100の環境情報を取得する。S120にて、第1決定部230は、S110で取得された環境情報に応じて画像条件を決定する。上述したように、本実施形態におけるS120では、検出用部位が決定される。S130にて、第2決定部240は、S110で取得された環境情報に応じて担当カメラを決定する。S140にて、第3決定部245は、S120で決定された画像条件に応じて検出用プログラムを決定する。本実施形態におけるS140では、このように検出用プログラムが決定されることによって、画像条件に応じて、推定処理の内容が決定される。より具体的には、S140では、解析処理の内容が決定される。
【0034】
図4は、決定処理を説明する第1の図である。図5は、決定処理を説明する第2の図である。図6は、決定処理を説明する第3の図である。図4から図6は、それぞれ、遠隔制御によって車両100が走路SRを目標ルートTRに沿って走行する様子の例を示している。より詳細には、図4は、時刻t1において車両100Aが区間sc1を走行する様子を示している。図5は、時刻t1よりも後の時刻t2において、車両100Aが区間sc2を走行する様子を示している。図6は、時刻t2よりも後の時刻t3において、車両100Aが区間sc3を走行する様子を示している。
【0035】
図4から図6の例では、検出箇所として、第1部分Dp1または第2部分Dp2が択一的に用いられる。図4から図6では、検出箇所として用いられる一方の部位がハッチング付きのマーカによって示されるとともに、検出箇所として用いられない他方の部位が白色のマーカによって示されている。本実施形態では、第1部分Dp1は、車両100のうち車幅方向における中央位置よりも左側に位置する左側部分であり、第2部分Dp2は、車両100のうち上記の中央位置よりも右側に位置する右側部分である。より具体的には、第1部分Dp1は、車両100の左後方角部であり、第2部分Dp2は、車両100の右後方角部である。つまり、第1部分Dp1と第2部分Dp2とは、車両100の車幅方向において互いに略対称に位置する部分である。上述した条件データ271では、区間sc1と第1部分Dp1とが関連付けられ、区間sc2と第2部分Dp2とが関連付けられ、区間sc3と第1部分Dp1とが関連付けられている。なお、図2に示した第1解析プログラム281は、検出箇所として第1部分Dp1が用いられる場合に使用される。また、第2解析プログラム282は、検出箇所として第2部分Dp2が用いられる場合に使用される。
【0036】
また、本実施形態では、カメラデータ272において、区間sc1とカメラ300Aとが関連付けられ、区間sc2とカメラ300Aおよびカメラ300Bとが関連付けられ、区間sc3とカメラ300Bとが関連付けられている。カメラ300Aは、区間sc1において第1部分Dp1を撮影可能であり、区間sc2において第2部分Dp2を撮影可能である。カメラ300Bは、区間sc2において第2部分Dp2を撮影可能であり、区間sc3において第1部分Dp1を撮影可能である。なお、区間sc2のように、ある区間に複数のカメラ300が関連付けられている場合、その区間では、例えば、検出箇所をより適切に撮影可能なカメラ300が担当カメラとして決定されると好ましい。この場合、例えば、車両100との間の距離がより近くなるカメラ300が担当カメラとして決定されてもよいし、車両100以外の障害物が検出用画像に映り込むことをより抑制できるように担当カメラが決定されてもよい。また、例えば、ある区間において、第1決定部230による決定に従って複数のカメラ300が検出用画像を撮影可能である場合、その区間には、例えば、検出箇所をより適切に撮影可能なカメラ300のみが関連付けられてもよい。
【0037】
例えば、図4の例では、図3のS110にて、車両100Aの環境情報として、車両100Aの現在位置が区間sc1であることを表す走行場所情報が取得される。次に、S120では、S110で取得される車両100Aの走行場所情報に応じて条件データ271が参照されることで、区間sc1に対応して、検出用部位が第1部分Dp1に決定される。そして、S130では、S110で取得される環境情報に応じてカメラデータ272が参照されることで、区間sc1に対応して、第1部分Dp1を撮影可能なカメラ300Aが担当カメラとして決定される。また、S140では、第2部分Dp2に対応して、第1解析プログラム281が検出用プログラムとして決定される。
【0038】
また、図5の例では、図3のS110にて、車両100Aの走行場所が区間sc2であることを表す走行場所情報が取得される。S120では、区間sc2に対応して、第2部分Dp2を検出箇所として用いることが決定される。S130では、区間sc2に対応して、担当カメラが決定される。この場合、上述したように、例えば、カメラ300Aおよびカメラ300Bのうち、第2部分Dp2を含む撮影画像Piを撮影可能であり、かつ、車両100との間の距離がより近いカメラ300が、担当カメラとして決定される。S140では、第2部分Dp2に対応して、第2解析プログラム282が検出用プログラムとして決定される。なお、図6の例についても、図4図5と略同様である。
【0039】
なお、本実施形態とは違って、区間sc2においても検出箇所として第1部分Dp1が用いられる場合、区間sc1と区間sc2との間で車両100が右方向に旋回することに起因して、例えば、区間sc2を走行する車両100の第1部分Dp1を撮影可能なカメラを走路SRの周辺に配置することを要する可能性がある。また、例えば、走路SR周辺の天井や梁や壁等の配置によっては、区間sc2を走行する車両100の第1部分Dp1を適切に撮影できるようにカメラを配置することが困難な場合がある。本実施形態では、遠隔制御に使用されるカメラの個数を削減することや、カメラの設置位置の制約による遠隔制御への影響を抑制することができる。
【0040】
図7は、本実施形態における推定処理のフローチャートである。本実施形態では、推定処理は、担当カメラから検出用画像が制御装置200に送信されるたびに実行される。
【0041】
図7のS205にて、画像取得部210は、担当カメラから送信される検出用画像を取得する。図7のS210にて、推定部250は、図3のS140の結果に基づいて、検出用画像の解析に第1解析プログラム281を用いるか否かを判定する。S210で第1解析プログラム281を用いると判定された場合、解析部251は、S220からS230にて、第1解析プログラム281によって実現される第1処理を実行する。S210で第1解析プログラム281を用いると判定されなかった場合、解析部251は、S215、および、S220からS230にて、第2解析プログラム282によって実現される第2処理を実行する。なお、以下では、第1解析プログラム281によって実現されるS220をS220Aとも表記し、第2解析プログラム282によって実現されるS220をS220Bとも表記する。S225およびS230についても略同様である。
【0042】
第2処理は、第1処理とは違って、S215の反転処理を含む。反転処理とは、検出用画像を鏡像反転させた反転画像を生成する処理である。そのため、S220AからS230Aでは鏡像反転されていない検出用画像が解析されるのに対し、S220BからS230Bでは反転画像が解析される。このように画像を鏡像反転させる処理は、「フリップ」とも呼ばれる。
【0043】
第1処理と第2処理とは、第2処理が反転処理を含むことを除いて略同様である。つまり、S220BからS230Bでは、S220AからS230Aと同様のアルゴリズムを用いて、つまり、同様の手順で反転画像を解析することが可能である。より詳細には、検出箇所として第1部分Dp1が用いられる場合、S220AからS230Aにおいて、第1部分Dp1は、反転されていない検出用画像における左後方角部として検出される。一方で、検出箇所として第2部分Dp2が用いられる場合、実際には右後方角部である第2部分Dp2は、S220BからS230Bにおいて、擬似的に、反転画像における左後方角部として検出される。つまり、本実施形態では、反転画像において、第2部分Dp2は、鏡像反転されていない検出用画像における第1部分Dp1に相当する部分として検出される。
【0044】
図8は、推定処理において画像Im1が解析される様子の例を示す説明図である。図8に示した画像Im1は、走路SRを進行方向に沿って走行する車両100が撮影された画像である。画像Im1は、それぞれ、カメラ300の焦点を原点とするXc軸、および、Xc軸に直交するYc軸を座標軸として有するカメラ座標系で表される。画像Im1は、反転画像であってもよいし、鏡像反転されていない検出用画像であってもよい。画像Im1に対しては、例えば、画像Im1の歪みを補正する歪み補正処理や、画像Im1に含まれる車両100の移動ベクトルVの方向が予め定められた方向を向くように画像Im1を回転させる回転処理や、画像Im1から車両100を含まない不要領域を削除するクロップ処理といった、各種の補正や前処理が適宜行われてもよい。撮影画像Piに含まれる車両100の移動ベクトルVの大きさや方向の検出には、例えば、オプティカルフロー法が用いられる。
【0045】
図7のS220からS230にて、解析部251は、解析処理を実行する。本実施形態における解析処理では、解析部251は、画像Im1を用いて、図8に示した測位点PPの座標を算出することによって、測位点PPを検出する。測位点PPの座標は、後述する画像座標系における検出箇所の近傍の座標として算出される。このように検出される測位点PPは、検出用画像における検出箇所を表す。
【0046】
S220にて、解析部251は、画像Im1における車両100を検出する検出処理として、マスク処理を実行する。マスク処理は、画像Im1における車両100を検出するとともに、画像Im1において当該車両100を含む対象領域をマスクすることで、対象領域がマスクされた画像Im1に相当する画像Im2を生成する処理である。以下では、マスク処理によってマスクされた領域をマスク領域Msとも呼ぶ。マスク処理では、推定部250は、例えば、入力画像に含まれる車両100をマスクするように予め機械学習された機械学習モデル(図示せず)に画像Im1を入力することによって、画像Im2を生成する。この機械学習モデルとしては、例えば、セマンティックセグメンテーションやインスタンスセグメンテーションを実現する畳み込みニューラルネットワーク(以下、CNNとも呼ぶ)の構造を有するディープニューラルネットワーク(以下、DNNとも呼ぶ)が用いられる。なお、機械学習モデルは、上記に限られず、例えば、ニューラルネットワーク以外のアルゴリズムを用いて学習済みの機械学習モデルであってもよい。
【0047】
S225にて、解析部251は、透視変換処理を実行する。透視変換処理は、画像Im2を透視変換することによって、透視変換された画像Im2に相当する画像Im3を生成する処理である。透視変換処理では、解析部251は、例えば、カメラ300の位置情報や内部パラメータに関する透視変換パラメータを用いて、画像Im2を、走路SRの路面に略垂直な車両100の上方(例えば、車両100の真上)から見た鳥瞰画像に透視変換する。このように鳥瞰画像として生成される画像Im3は、カメラ座標系とは異なる画像座標系で表される。画像座標系は、透視変換によって投影される画像平面の一点を原点とし、Xi軸と、Xi軸に直交するYi軸とを座標軸として有する座標系である。画像Im3は、透視変換により変形されたマスク領域Msに相当するマスク領域Msbを含む。
【0048】
S230にて、解析部251は、測位点PPの座標を算出する測位点算出処理を実行する。本実施形態における測位点算出処理では、解析部251は、第1座標点P1の座標(Xi1,Yi1)と第2座標点P2の座標(Xi2,Yi2)とを用いて測位点PPの座標を算出する。
【0049】
第1座標点P1は、画像Im2における四角形R1bの頂点のうち、画像Im1におけるベース座標点P0に対応する座標点として特定される。四角形R1bは、透視変換により変形した第1外接矩形R1に相当する。第1外接矩形R1は、画像Im2において、マスク領域Msに外接し、かつ、車両100の移動ベクトルVと平行な長辺を有する矩形である。ベース座標点P0は、この第1外接矩形R1の頂点のうち、車両100の検出箇所に対応する頂点を表す座標点である。より詳細には、ベース座標点P0は、第1外接矩形R1の頂点のうち、移動ベクトルVの方向を前方としたときに、車両100の重心Cに対して左方かつ後方に位置する頂点を表す座標点である。
【0050】
第2座標点P2は、画像Im2における第2外接矩形R2の4つの頂点のうち、車両100の検出箇所に対応する頂点を表す座標点である。より詳細には、第2座標点P2は、第2外接矩形R2の頂点のうち、移動ベクトルVの方向を前方としたときに、車両100の重心Cに対して左方かつ後方に位置する頂点を表す座標である。第2外接矩形R2は、マスク領域Msbに外接し、かつ、Xi軸に平行な辺とYi軸に平行な辺とを有する矩形である。このように、第1座標点P1と第2座標点P2とは、ともに検出箇所に応じて定まる座標点であるため、互いに相関関係を有する。
【0051】
第1座標点P1の座標値Xi1が第2座標点P2の座標値Xi2よりも大きい場合、推定部250は、測位点PPのXi座標を座標値Xi2に決定する。反対に、座標値Xi1が座標値Xi2よりも小さい場合、推定部250は、測位点PPのXi座標を座標値Xi1に決定する。また、第1座標点P1の座標値Yi1が第2座標点P2の座標値Yi2よりも大きい場合、推定部250は、測位点PPのYi座標を座標値Yi1に決定する。反対に、座標値Yi1が座標値Yi2よりも小さい場合、推定部250は、測位点PPのYi座標を座標値Yi2に決定する。このように、測位点PPのXi座標およびYi座標が決定されることで、測位点PPが検出される。
【0052】
S235にて、推定部250は、車両座標算出処理を実行する。車両座標算出処理は、測位点PPを用いて車両座標点を算出する処理である。車両座標点は、基準座標系Σrにおいて測位点PPを表す座標点である。S235では、推定部250は、例えば、予め定められた推定式と、S230で算出された測位点PPの座標値とを用いて、車両座標点を算出する。なお、検出箇所を用いた車両100の位置推定の手法は、上記に限られない。例えば、マスク処理とは異なる処理によって検出用画像における車両100が検出されてもよいし、透視変換処理や測位点算出処理とは異なる処理によって検出用画像における検出箇所が検出されてもよいし、車両座標算出処理とは異なる処理によって車両座標点が算出されてもよい。
【0053】
指令生成部260は、推定処理で算出される車両座標点を用いて、制御指令を生成する。こうして生成される制御指令は、車両100に送信される。
【0054】
以上で説明した本実施形態におけるシステム10によれば、第1決定部230は、車両100の環境情報に応じて、検出用部位と、検出用画像の撮影方向との少なくとも一方を決定する。このようにすれば、車両100の走行環境に応じて、検出用部位や、検出用画像の撮影方向を決定できる。そのため、車両100の遠隔制御に適した検出用画像を得られる可能性が高まる。
【0055】
また、本実施形態では、環境情報は、車両100の走行場所情報を含む。そのため、遠隔制御によって車両100が走行する場所に応じて、検出用部位や、検出用画像の撮影方向を決定できる。
【0056】
また、本実施形態では、第2決定部240は、環境情報に応じて、複数のカメラ300のうち、決定される画像条件を満たすように検出用画像を撮影可能なカメラ300を、担当カメラとして決定する。そのため、環境情報に応じて担当カメラを適切に決定できる。
【0057】
また、本実施形態では、第1決定部230は、環境情報に応じて、検出用部位を車両100の左側部分または右側部分に択一的に決定する。このようにすれば、環境情報に応じて、検出箇所として、車両100の左側部分や右側部分を用いることができる。そのため、走路SRの左脇や右脇にカメラ300を設置することで、カメラ300によって、検出箇所を含む検出用画像を容易に撮影できる。特に、本実施形態では、第1決定部230は、環境情報に応じて、検出用部位を車両100の左後方角部または右後方角部に択一的に決定する。そのため、走路SRの左脇や右脇に設置されたカメラ300によって、車両100の後方側から車両100を撮影することで、検出用部位を含む検出用画像を容易に撮影できる。また、このようにすれば、解析処理において、外接矩形を用いて検出箇所を精度良く検出できる。
【0058】
また、本実施形態では、第3決定部245は、決定される画像条件に応じて推定処理の内容を変更する。このようにすれば、決定される画像条件に応じて推定処理の内容を変更できる。そのため、推定処理において車両100の位置をより精度良く推定できる可能性が高まる。
【0059】
また、本実施形態では、第3決定部245は、検出箇所として第2部分Dp2が用いられる場合に、推定処理において第2処理を実行することを決定し、検出箇所として第1部分Dp1が用いられる場合に、推定処理において第1処理を実行することを決定する。第1処理は、鏡像反転されていない検出用画像において第1部分Dp1を検出する処理である。第2処理は、反転画像において第2部分Dp2を検出する処理である。そのため、検出用箇所として第1部分Dp1を用いる場合と第2部分Dp2を用いる場合とで、検出用画像を鏡像反転させることを除いて同様の手順で、第1部分Dp1や第2部分Dp2を検出できる。
【0060】
また、本実施形態では、第3決定部245は、決定される画像条件に応じて、推定処理で用いられるプログラムを決定することによって、推定処理の内容を決定する。そのため、第3決定部245によってプログラムを決定することで、決定される画像条件に応じて推定処理の内容を変更できる。
【0061】
B.第2実施形態:
図9は、第2実施形態における決定処理を説明する第1の図である。図10は、第2実施形態における決定処理を説明する第2の図である。図9および図10は、図4から図6と略同様に、遠隔制御によって車両100が走路SRbを目標ルートTRに沿って走行する様子の例を示している。本実施形態では、第1実施形態とは違って、環境情報は、車両100が走行するタイミングを表す走行タイミング情報を含む。また、本実施形態における第1決定部230は、第1実施形態とは違って、検出用画像の撮影方向を決定する。第2実施形態におけるシステム10の構成のうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。
【0062】
図9は、時刻t4において車両100Bが走路SRbを走行する様子を示している。図10は、時刻t4とは異なる時刻t5において車両100Bが走路SRbを走行する様子を示している。時刻t4は、晴天の場合に、走路SRbを走行する車両100に対して車両100の右側から日光が照射され得る時刻である。そのため、時刻t4では、車両100の右側から車両100を撮影した場合、車両100の右側面部に照射される日光の影響により、適切な検出用画像が得られない場合がある。時刻t5は、晴天の場合に、走路SRbを走行する車両100に対して車両100の左側から日光が照射され得る時刻である。そのため、時刻t5では、車両100の左側から車両100を撮影した場合、車両100の左側面部に照射される日光の影響により、適切な検出用画像が得られない場合がある。このように、車両100の走行タイミングは、検出用画像に影響を与え得る。
【0063】
本実施形態における走行タイミング情報は、現在の時刻を表す情報である。他の実施形態では、走行タイミング情報は、例えば、遠隔制御によって車両100が走行する大まかな時間帯を表す情報であってもよい。本実施形態における条件データ271は、時間帯と、検出用画像の撮影方向との対応関係を記録したデータである。本実施形態におけるカメラデータ272は、時間帯と、各カメラ300との対応関係を記録したデータである。
【0064】
本実施形態では、条件データ271において、時刻t4を含み時刻t5を含まない時間帯と第1撮影方向d1とが関連付けられ、時刻t5を含み時刻t4を含まない時間帯と第2撮影方向d2とが関連付けられている。第1撮影方向d1とは、車両100を左後方側から撮影する撮影方向である。第2撮影方向d2とは、車両100を右後方側から撮影する撮影方向である。また、本実施形態では、カメラデータ272において、時刻t4を含み時刻t5を含まない時間帯とカメラ300Cとが関連付けられ、時刻t5を含み時刻t4を含まない時間帯とカメラ300Dとが関連付けられている。カメラ300Cは、車両100を左後方側から撮影可能に配置されている。カメラ300Dは、車両100を右後方側から撮影可能に配置されている。また、本実施形態では、第1解析プログラム281は、撮影方向が第1撮影方向d1である場合に使用される。また、第2解析プログラム282は、撮影方向が第2撮影方向d2である場合に使用される。
【0065】
図9の例では、図3のS110にて、車両100Bの環境情報として、現在時刻が時刻t4であることを表す走行タイミング情報が取得される。S120では、S110で取得される車両100Bの走行タイミング情報に応じて条件データ271が参照されることで、時刻t4に対応して、撮影方向が第1撮影方向d1に決定される。S130では、S110で取得される環境情報に応じてカメラデータ272が参照されることで、時刻t4に対応して、第1撮影方向d1から車両100Bを撮影可能なカメラ300Cが担当カメラとして決定される。なお、図10の例についても、図9と略同様である。
【0066】
以上で説明した第2実施形態によれば、環境情報は、車両100の走行タイミング情報を含む。このようにすれば、遠隔制御によって車両100が走行するタイミングに応じて、検出用部位や、検出用画像の撮影方向を決定できる。例えば、上述した図9および図10の例では、車両100に対して車両100の右側から日光が照射され得る時刻t4において、車両100を左側から撮影して検出用画像を得ることができる。また、車両100に対して車両100の左側から日光が照射され得る時刻t5において、車両100を右側から撮影して検出用画像を得ることができる。そのため、日光による影響が検出用画像に及ぶことを抑制できる。このように、本実施形態によっても、車両100の遠隔制御に適した検出用画像を得られる可能性が高まる。
【0067】
なお、他の実施形態では、環境情報は、走行タイミング情報と走行場所情報との両方を含んでいてもよい。この場合、第1決定部230は、検出用部位や撮影方向の決定に、走行タイミング情報および走行場所情報と、検出用部位として使用され得る車両100の部位や撮影方向との対応関係を記録した条件データ271を用いてもよい。この場合における条件データ271は、例えば、車両100が走行する区間と、その区間における検出用部位や撮影方向との対応関係を、時間帯ごとに記録したデータであってもよい。
【0068】
C.他の実施形態:
(C1)上記実施形態において、第1決定部230は、検出用部位と検出用画像の撮影方向との両方を決定してもよい。
【0069】
(C2)上記実施形態において、環境情報は、走行タイミング情報や走行場所情報に代えて、あるいは、これらに加えて、車両100の走行環境を表す種々の情報を含んでいてもよい。例えば、環境情報は、走路SRを含む地域における天候を表す天候情報を含んでいてもよい。この場合、第1決定部230は、検出用部位や撮影方向の決定に際して、天候と、検出用部位として使用され得る車両100の部位や撮影方向との対応関係を記録した条件データ271を用いてもよい。この場合、第1決定部230は、天候情報に応じて条件データ271を参照することで、例えば、晴天時と雨天時とで、検出用部位や撮影方向や担当カメラを異ならせることができる。また、環境情報が走行場所情報と天候情報とを含む場合、例えば、雨天時における走路SR中の区間ごとの水溜まりの生じやすさを考慮して、検出用部位や撮影方向や担当カメラを決定できる。このようにすれば、例えば、水溜まりによって反射された車両100の像が検出用画像に含まれることに起因する、車両100の位置推定精度の低下を抑制できる。また、環境情報は、例えば、遠隔制御対象の車両100に搭載されたセンサや、走路SR周辺に設置された各種センサによって取得される、車両100周辺の障害物の有無や、車両100が走行する場所の環境温度や環境湿度を表す情報であってもよい。
【0070】
(C3)上記実施形態では、環境情報に応じて、複数のカメラ300から担当カメラが決定されているが、このように決定されなくてもよい。例えば、カメラ300の角度や位置を変更可能に構成し、環境情報に応じて、決定された検出用部位を撮影できるように、または、決定された撮影方向で車両100を撮影できるように、1台のカメラ300の角度や位置を変更してもよい。この場合、システム10に備えられるカメラ300の数は、1つのみであってもよい。また、この場合、システム10は、第2決定部240を備えていなくてもよい。
【0071】
(C4)上記実施形態において、例えば、第1部分Dp1が車両100の右側部であり、第2部分Dp2が左側部であってもよい。また、検出箇所として、第1部分Dp1および第2部分Dp2のように車幅方向において互いに対称に位置する一対の部分が用いられなくてもよい。例えば、検出箇所として、車両100の左後方角部と右前方角部とが用いられてもよい。また、検出箇所として車両100の左側部や右側部が用いられていなくてもよく、車両100のうち左側部や右側部とは異なる部位が用いられてもよい。また、検出箇所としては、3つ以上の部位が用いられてもよい。また、第1決定部230によって検出用部位が決定されない場合、検出箇所として用いられる部位の数は、1つのみであってもよい。
【0072】
(C5)上記実施形態では、第3決定部245は、決定される画像条件に応じて、推定処理で用いられるプログラムを決定しなくてもよい。この場合、例えば、環境条件に応じて、推定処理で用いられるプログラムが決定されてもよい。また、例えば、画像条件が異なる場合であっても、推定処理において同一のプログラムが使用されてもよい。この場合、推定部250や解析部251は、推定処理や解析処理において使用するパラメータを画像条件に応じて変更することによって、推定処理や解析処理の内容を変更してもよい。また、第3決定部245は、画像条件に応じて推定処理の内容を決定しなくてもよい。この場合、推定部250は、例えば、画像条件によらず検出用画像を同一の機械学習モデルに入力することで、車両100の位置を推定してもよい。また、この場合、システム10は、第3決定部245を備えていなくてもよい。
【0073】
(C6)上記実施形態では、第3決定部245は、検出箇所として第2部分Dp2が用いられる場合に、推定処理において第2処理を実行することを決定している。これに対して、第3決定部245は、上記の場合に、第2処理を実行することを決定しなくてもよい。この場合、解析部251は、例えば、鏡像反転されていない検出用画像において実際に第2部分Dp2を検出することによって、第2部分Dp2を検出してもよい。
【0074】
(C7)上記実施形態において、車両100は、遠隔制御により移動可能な構成を備えていれば良く、例えば、以下に述べる構成を備えるプラットフォームの形態であっても良い。具体的には、車両100は、遠隔制御により「走る」、「曲がる」、「止まる」の3つの機能を発揮するために、少なくとも、車両制御部115と通信装置130とを備えていれば良い。すなわち、遠隔制御により移動可能な車両100は、運転席やダッシュボードなどの内装部品の少なくとも一部が装着されていなくてもよく、バンパーやフェンダーなどの外装部品の少なくとも一部が装着されていなくてもよく、ボディシェルが装着されていなくてもよい。この場合、車両100が工場から出荷されるまでの間に、ボディシェル等の残りの部品が車両100に装着されてもよいし、ボディシェル等の残りの部品が車両100に装着されていない状態で、車両100が工場から出荷された後にボディシェル等の残りの部品が車両100に装着されてもよい。なお、プラットフォームの形態に対しても、各実施形態における車両100と同様にして位置決定がなされ得る。
【0075】
(C8)上記実施形態において、システム10は、カメラ300や推定部250や指令生成部260を備える遠隔制御システムとして構成されているが、このように構成されていなくてもよい。例えば、システム10は、環境情報に応じて、検出用部位と検出用画像の撮影方向との少なくとも一方を決定するとともに、その決定結果を、カメラ300や推定部250や指令生成部260を備える他のシステムに送信するシステムとして構成されていてもよい。この場合、システム10は、例えば、カメラ300と推定部250や指令生成部260との一部や全部を備えていなくてもよい。
【0076】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
10…システム、100,100A,100B…車両、110…車両制御装置、111…プロセッサ、112…メモリ、113…入出力インタフェイス、114…内部バス、115…車両制御部、116…位置情報取得部、120…アクチュエータ群、130…通信装置、140…GNSS受信機、200…制御装置、201…プロセッサ、202…メモリ、203…入出力インタフェイス、204…内部バス、205…通信装置、210…画像取得部、220…環境情報取得部、230…第1決定部、240…第2決定部、245…第3決定部、250…推定部、260…指令生成部、271…条件データ、272…カメラデータ、280…推定プログラム、281…第1解析プログラム、282…第2解析プログラム、300,300A,300B,300C,300D…カメラ、400…工程管理装置
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