(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025030852
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】プリント配線板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/11 20060101AFI20250228BHJP
【FI】
H05K1/11 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136517
(22)【出願日】2023-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 富彦
【テーマコード(参考)】
5E317
【Fターム(参考)】
5E317AA24
5E317BB02
5E317BB12
5E317CC25
5E317CC32
5E317CC33
5E317CD15
5E317CD18
5E317CD25
5E317CD27
5E317CD32
5E317GG14
(57)【要約】
【課題】高密度化に適するプリント配線板の提供。
【解決手段】プリント配線板は、第1面と前記第1面と反対側の第2面を有し、縦糸と横糸で形成されているガラスクロスと樹脂とからなるコア材と、前記第1面上に形成されている第1導体層と、前記第2面上に形成されている第2導体層と、前記ガラスクロスのガラス繊維を貫通し前記第1面から前記第2面に至る第1と第2のスルーホール導体用の貫通孔と、前記ガラス繊維を貫通し前記第1面から前記第2面に至り前記第1と第2のスルーホール導体用の貫通孔間に位置する樹脂部材を充填するための樹脂部材用の貫通孔と、前記第1と第2のスルーホール導体用の貫通孔内に形成されていて、前記第1導体層と前記第2導体層を接続するスルーホール導体と、前記樹脂部材用の貫通孔を充填している前記樹脂部材、とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と前記第1面と反対側の第2面を有し、縦糸と横糸で形成されているガラスクロスと樹脂とからなるコア材と、
前記第1面上に形成されている第1導体層と、
前記第2面上に形成されている第2導体層と、
前記ガラスクロスのガラス繊維を貫通し前記第1面から前記第2面に至る第1と第2のスルーホール導体用の貫通孔と、
前記ガラス繊維を貫通し前記第1面から前記第2面に至り前記第1と第2のスルーホール導体用の貫通孔間に位置する樹脂部材を充填するための樹脂部材用の貫通孔と、
前記第1と第2のスルーホール導体用の貫通孔内に形成されていて、前記第1導体層と前記第2導体層を接続するスルーホール導体と、
前記樹脂部材用の貫通孔を充填している前記樹脂部材、とを有するプリント配線板。
【請求項2】
請求項1のプリント配線板であって、隣接する前記第1のスルーホール導体用の貫通孔と前記第2のスルーホール導体用の貫通孔を結ぶ線の中点に前記樹脂部材を充填するための前記樹脂部材用の貫通孔が形成されている。
【請求項3】
請求項2のプリント配線板であって、前記樹脂部材は、エポキシとガラス粒子を含む。
【請求項4】
請求項1のプリント配線板であって、前記第1のスルーホール導体用の貫通孔に形成されている前記スルーホール導体は第1スルーホール導体であって、前記第2のスルーホール導体用の貫通孔に形成されている前記スルーホール導体は第2スルーホール導体であって、前記第1スルーホール導体は電源回路に繋がっていて、前記第2スルーホール導体はグランド回路に繋がっている。
【請求項5】
請求項1のプリント配線板であって、前記第1のスルーホール導体用の貫通孔と前記第2のスルーホール導体用の貫通孔と前記樹脂部材用の貫通孔は前記ガラスクロスを形成する複数のガラス繊維の内、同じガラス繊維を貫通している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ガラス布のガラス繊維が互いに直交する縦方向と横方向に延びる複合絶縁層と、複合絶縁層を貫通する複数のスルーホールと、複数のスルーホールに形成されたスルーホール導体、とを備える多層配線基板を開示する。平面視したとき、隣り合う2つのスルーホールの間隙が200μm以下の場合には、2つのスルーホールの中心を結ぶ仮想中心線と、縦方向及び横方向に延びる仮想縦方向線及び仮想横方向線が、いずれも角度をなしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
[特許文献1の課題]
特許文献1のプリント配線板では、スルーホールの位置を自由に配置することができず、プリント配線板の高密度化を妨げると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のプリント配線板は、第1面と前記第1面と反対側の第2面を有し、縦糸と横糸で形成されているガラスクロスと樹脂とからなるコア材と、前記第1面上に形成されている第1導体層と、前記第2面上に形成されている第2導体層と、前記ガラスクロスのガラス繊維を貫通し前記第1面から前記第2面に至る第1と第2のスルーホール導体用の貫通孔と、前記ガラス繊維を貫通し前記第1面から前記第2面に至り前記第1と第2のスルーホール導体用の貫通孔間に位置する樹脂部材を充填するための樹脂部材用の貫通孔と、前記第1と第2のスルーホール導体用の貫通孔内に形成されていて、前記第1導体層と前記第2導体層を接続するスルーホール導体と、前記樹脂部材用の貫通孔を充填している前記樹脂部材、とを有する。
【0006】
本発明の実施形態のプリント配線板では、第1と第2のスルーホール導体用の貫通孔間に樹脂部材を充填するための樹脂部材用の貫通孔が形成されている。樹脂部材用の貫通孔は、コア材に形成されていて第1面から第2面に至り、ガラスクロスのガラス繊維を貫通する。そのため、ガラス繊維に沿ったマイグレーションが発生しがたい。実施形態によれば、2つのスルーホール導体用の貫通孔間に位置する樹脂部材用の貫通孔とその樹脂部材用の貫通孔に充填された樹脂部材でマイグレーションを抑制する。スルーホールの位置を自由に配置できる。そのため、プリント配線板の高密度化が妨げられない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態のプリント配線板を模式的に示す断面図。
【
図3A】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図3B】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図3C】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図4A】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図4B】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図4C】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図5A】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図5B】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図5C】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図6A】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図6B】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図6C】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図7A】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図7B】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図7C】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図8A】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【
図8B】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態>
図1は、実施形態のプリント配線板30の概略構成の模式的な断面図である。プリント配線板30は、コア材1と、第1導体層10Ua,10Ubと、第2導体層10La,10Lbと、を有する。コア材1は、第1面Fと第1面Fと反対側の第2面Sを有する。コア材1は、ガラスクロスと樹脂とからなる。ガラスクロスは、縦方向のガラス繊維(縦糸)Sxと横方向のガラス繊維(横糸)Syで形成されている。第1導体層10Ua,10Ubは第1面F上に形成されている。第2導体層10La,10Lbは第2面S上に形成されている。
【0009】
プリント配線板30は、ガラスクロスのガラス繊維を貫通する貫通孔50A,50Bと貫通孔150を有する。貫通孔50A,50B,150は第1面Fから第2面Sに至る。
図2は、貫通孔50A,50B,150の概略配置を模式的に表す平面図である。
【0010】
貫通孔(第1スルーホール導体用の貫通孔)50A内には、電源用のスルーホール導体(第1スルーホール導体)15Aが形成されている。スルーホール導体15Aは、第1導体層10Uaと第2導体層10Laとを接続する。スルーホール導体15Aは図示しない電源回路に繋がっている。
貫通孔(第2スルーホール導体用の貫通孔)50B内には、グランド用のスルーホール導体(第2スルーホール導体)15Bが形成されている。スルーホール導体15Bは、第1導体層10Ubと第2導体層10Lbとを接続する。スルーホール導体15Bは図示しないグランド回路に繋がっている。
【0011】
貫通孔(樹脂部材用の貫通孔)150内には、樹脂部材100が充填されている。貫通孔150は、貫通孔50A,50B間に位置している。貫通孔150は、隣接する貫通孔50Aと貫通孔50Bとを結ぶ線の中点に形成されている。隣接する貫通孔50Aと貫通孔50Bの中心間の距離は2Lである。貫通孔150と貫通孔50Aの中心間の距離はLである。貫通孔150と貫通孔50Bの中心間の距離はLである。樹脂部材100は、エポキシとガラス粒子を含む。
【0012】
貫通孔50Aと貫通孔50Bと貫通孔150は、ガラスクロスを形成する複数のガラス繊維Sx,Syの内、同じガラス繊維を貫通している。横方向に隣接する貫通孔50Aと貫通孔50Bと貫通孔150は、共通の横方向のガラス繊維Sxを貫通している。縦方向に隣接する貫通孔50Aと貫通孔50Bと貫通孔150は、共通の縦方向のガラス繊維Syを貫通している。
【0013】
スルーホール導体15A用の貫通孔50Aとスルーホール導体15B用の貫通孔50B間に、樹脂部材100用の貫通孔150が形成されている。貫通孔150はガラスクロスのガラス繊維を貫通する。そのため、ガラス繊維に沿うマイグレーションが発生しがたい。貫通孔150に充填されている樹脂部材100でマイグレーションを抑制するため、スルーホールの位置を自由に配置可能である。そのため、プリント配線板30の高密度化が妨げられない。
【0014】
<実施形態のプリント配線板の製造方法>
図3A~
図8Bは実施形態のプリント配線板30の製造方法を示す。
図3A~
図8Bは断面図である。
【0015】
図3Aに示されるように、樹脂からなるコア材1の両面に銅箔2がラミネートされている銅張積層板が出発材料とされる。
図3Bに示されるように、銅張積層板に対するドリル削孔がなされ、貫通孔50A,50B,150が形成される。貫通孔150内に、エポキシ及びガラス粒子を含む樹脂部材100が充填される。
図3Bでは、図示の煩雑を避けるために、貫通孔50Aが図示され、貫通孔50B,150の図示は省略されている。以下、
図3B~
図8Bでは、貫通孔50Aに電源用のスルーホール導体15Aが形成される工程が図示され、貫通孔50Bにグランド用のスルーホール導体15Bが形成される工程の図示は省略される。以降の説明では、貫通孔50Aに電源用のスルーホール導体15Aが形成される工程が示されるが、貫通孔50Bにグランド用のスルーホール導体15Bが形成される工程についても同様である。
【0016】
図3Cに示されるように、貫通孔50Aに対し、無電解めっきが施されて、スルーホール3が形成される。電解銅めっきが施され、無電解銅めっき膜及び電解銅めっき膜からなる導体層4が形成される。
【0017】
図4Aに示されるように、基板全体に対し、水洗、アルカリ系脱脂洗浄、弱酸による導体層の活性処理、乾燥の後、所定溶液への浸漬が行われて洗浄される。導体層4の全表面に、有機化合物層4aが形成される。
【0018】
図4Bに示されるように、所定の導電ペースト5が、スルーホール3内に充填され、乾燥後、加熱により硬化処理される。導体上面の粗化面及びスルーホール3からはみ出している導電ペースト5が、研磨により除去される。さらに、適宜のバフ研磨が行われ、基板全体の表面が平坦化される。
【0019】
図4Cに示されるように、平坦化後の基板全体の表面に、触媒が付与され、無電解銅めっきが施されることにより、無電解銅めっき膜6が形成される。
【0020】
図5Aに示されるように、所定条件で電解銅めっきが施され、電解銅めっき膜7が形成される。後述の内層の導体回路9となる部分の厚付けと、スルーホール3に充填されている導電ペースト5を覆う第1導体層10Ua及び第2導体層10Laとなる部分、が形成される。電解銅めっき膜7の上に感光性ドライフィルムが張り付けられ、マスク載置、露光、現像処理され、エッチングレジスト8が形成される。
【0021】
図5Bに示されるように、エッチングレジスト8を形成してない部分の電解銅めっき膜7がエッチングにて溶解除去され、さらにエッチングレジスト8が剥離除去される。独立した内層の導体回路9と、第1導体層10Ua及び第2導体層10Laが形成される。第1導体層10Ua及び第2導体層10La間の導電ペースト5により、スルーホール導体15Aが形成される。
【0022】
図5Cに示されるように、内層の導体回路9と第1導体層10Ua及び第2導体層10Laの上に、浸漬法によって有機化合物層11が形成される。内層の導体回路9と第1導体層10Ua間、内層の導体回路9と第2導体層10La間に、所定組成の樹脂充填材21aが塗布して充填され、硬化される。有機化合物層11の表面が露出するまで表面が研磨され平滑化される。
【0023】
図6Aに示されるように、基板全体の両面に、所定の無電解めっき用接着剤が塗布され、乾燥処理後、所定厚さの接着剤層12bが形成される。
【0024】
図6Bに示されるように、接着剤層12bの上に、黒円が印刷されているフォトマスクフィルムを密着させて露光後、現像される。接着剤層12bにビアホール形成用の開口13が形成される。さらに、基板全体が露光、加熱処理され、フォトマスクフィルムに相当する開口13を有する層間樹脂絶縁層が形成される。
【0025】
基板全体が所定溶液に浸漬され、接着剤層12bの表面粗化後、水洗される。基板全体に、所定の触媒が付与され、接着剤層12b及び開口13の表面に触媒核が付与される。
図6Cに示されるように、所定の無電解銅めっき水溶液中に基板全体が浸漬され、粗面全体に無電解銅めっき膜14が形成される。
【0026】
無電解銅めっき膜14上に感光性樹脂フィルムが張り付けられる。めっきレジスト非形成部分がマスクパターンとして描画されているガラス基板が感光性樹脂フィルムに密着後、露光、現像処理される。
図7Aに示されるように、所定厚さのめっきレジスト16のパターンが形成される。
【0027】
図7Bに示されるように、所定条件で電解銅めっきが施され、めっきレジスト16のパターンから露出している無電解銅めっき膜14上に電解銅めっき膜65が形成される。
【0028】
図7Cに示されるように、めっきレジスト16が剥離除去され、めっきレジスト16下の無電解銅めっき膜14がエッチング処理して溶解除去される。無電解銅めっき膜14と電解銅めっき膜65からなる外層の導体回路9及びビアホール導体17が形成される。外層の導体回路9及びビアホール導体17の表面に、所定厚さの有機化合物層11(
図8A参照)が形成される。
【0029】
図6B~
図7Cの工程が繰り返され、
図8Aに示されるように、さらに外層の層間樹脂絶縁層、外層の導体回路9及びビアホール導体17が形成される。外層の導体回路9及びビアホール導体17の表面に有機化合物層11が形成されている多層配線基板が得られる。
【0030】
図8Bに示されるように、多層配線基板の両面に、所定のソルダーレジスト組成物が塗布される。乾燥処理後、ソルダーレジスト開口部のマスクパターンが描画されているガラス基板がソルダーレジスト層に密着され、紫外線露光後、現像処理される。所定条件で加熱処理され、はんだパッドの上面、ビアホール及びランド部分が開口しているソルダーレジストパターン層18が形成される。その後、多層配線基板全体が無電解ニッケルめっき液に浸漬され、開口部にニッケルめっき層19が形成される。多層配線基板全体が、所定の無電解金めっき液に浸漬され、ニッケルめっき層19上に金めっき層20が形成される。ソルダーレジストパターン層18の開口部に、はんだペーストが形成され、リフロー処理にてはんだバンプ21が形成される。はんだバンプ21を有する多層プリント配線板30が得られる。
【符号の説明】
【0031】
1 :コア材
2 :銅箔
3 :スルーホール
4 :導体層
4a :有機化合物層
5 :導電ペースト
6 :電解銅めっき膜
7 :電解銅めっき膜
8 :エッチングレジスト
9 :導体回路
10La:第2導体層
10Lb:第2導体層
10Ua:第1導体層
10Ub:第1導体層
11 :有機化合物層
12b :接着剤層
13 :開口
14 :無電解銅めっき膜
15A :第1スルーホール導体
15B :第2スルーホール導体
16 :めっきレジスト
17 :ビアホール導体
18 :ソルダーレジストパターン層
19 :ニッケルめっき層
20 :金めっき層
21 :はんだバンプ
21a :樹脂充填材
30 :プリント配線板
50A :貫通孔
50B :貫通孔
65 :電解銅めっき膜
100 :樹脂部材
150 :貫通孔
F :第1面
S :第2面
Sx :ガラス繊維
Sy :ガラス繊維