(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025030880
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】3次元情報取得方法および3次元情報取得装置
(51)【国際特許分類】
G01R 33/26 20060101AFI20250228BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20250228BHJP
G01N 27/72 20060101ALI20250228BHJP
【FI】
G01R33/26
G01R33/02 L
G01N27/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136555
(22)【出願日】2023-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】513067727
【氏名又は名称】高知県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田上 周路
【テーマコード(参考)】
2G017
2G053
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AA03
2G017AD15
2G053AA11
2G053AB01
2G053BA02
2G053BA08
2G053BC02
2G053BC10
2G053BC14
2G053BC15
2G053DA01
(57)【要約】
【課題】光と相互作用する物質内部における3次元情報を取得できる3次元情報取得方法を提供する。
【解決手段】3次元情報取得方法は、明画素bpxと暗画素dpxとが配列された第1符号化パターンPT1および第2符号化パターンPT2を有した第1照射光L1および第2照射光L2を、セシウムが封入されたガラスセルGCに対して2方向から照射する光照射工程と、ガラスセルGCを透過した第1照射光L1および第2照射光L2を受光する受光工程と、第1照射光L1の第1符号化パターンPT1および第2照射光L2の第2符号化パターンPT2と、受光工程において受光した第1照射光L1および第2照射光L2の光信号とを用いて、ガラスセルGC内部における3次元情報を取得する取得工程とを備え、光照射工程および取得工程を、異なる符号化パターンを有した複数の照射光を用いて複数回実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が照射される領域である明画素と、光が照射されない領域である暗画素とが配列された符号化パターンを有した照射光を、前記照射光と相互作用する物質に対して2方向から照射する光照射工程と、
前記光照射工程において前記物質に照射され、前記物質を透過した前記照射光を受光する受光工程と、
前記光照射工程において前記物質に照射された前記照射光の前記符号化パターンと、前記受光工程において受光した照射光の光信号とを用いて、前記物質内部における3次元情報を取得する取得工程とを備え、
前記光照射工程および前記取得工程を、異なる符号化パターンを有した複数の照射光を用いて複数回実行し、
前記取得工程においては、複数回実行された前記光照射工程および前記取得工程における複数の前記符号化パターンと複数の前記光信号とを用いて前記3次元情報を取得することを特徴とする3次元情報取得方法。
【請求項2】
前記光照射工程においては、前記照射光を、直交する2方向から前記物質に照射する請求項1に記載の3次元情報取得方法。
【請求項3】
前記物質は、2方向から照射される前記照射光の前記符号化パターンによって区画される複数の区画セルを有し、
前記光照射工程および前記受光工程は、前記物質が有する前記区画セルの数以上の回数だけ実行される請求項1または請求項2に記載の3次元情報取得方法。
【請求項4】
前記光信号は、前記物質に印加される磁界の大きさによって変化し、
前記3次元情報は、前記物質の内部における3次元磁界分布である、請求項1または請求項2に記載の3次元情報取得方法。
【請求項5】
前記物質は、アルカリ金属であり、
前記照射光は、アルカリ金属に対する共鳴波長を有するとともに、円偏光成分を有するレーザ光である請求項1または請求項2に記載の3次元情報取得方法。
【請求項6】
光を出射する光源と、
前記光と相互作用する物質と、
前記光源から出射された光に対して、光が照射される領域である明画素と、光が照射されない領域である暗画素とが配列された第1符号化パターンを付与し、前記第1符号化パターンが付与された前記光である第1照射光を前記物質に照射する第1光学系と、
前記光源から出射される光に対して、光が照射される領域である明画素と、光が照射されない領域である暗画素とが配列された第2符号化パターンを付与し、前記第2符号化パターンが付与された前記光である第2照射光を、前記第1照射光の照射方向と異なる方向から前記物質に照射する第2光学系と、
前記物質を透過した前記第1照射光を受光する第1受光器と、
前記物質を透過した前記第2照射光を受光する第2受光器と、
前記第1符号化パターンと、前記第2符号化パターンと、前記第1受光器が受光した前記第1照射光の光信号と、前記第2受光器が受光した前記第2照射光の光信号とを用いて、前記物質の内部における3次元情報を取得するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、異なる複数の前記第1符号化パターンと、異なる複数の前記第2符号化パターンと、異なる複数の前記第1符号化パターンに対応する複数の前記第1照射光の光信号と、異なる複数の前記第2符号化パターンに対応する複数の前記第2照射光の光信号とを用いて、前記物質の内部における3次元情報を取得することを特徴とする3次元情報取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は3次元情報取得方法および3次元情報取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、アルカリ金属原子群が内包されたセルと、セルにポンプ光を入射させるポンプ光光学系と、セル内でポンプ光と交差するように、第一のプローブ光を入射させる第一のプローブ光光学系と、セル内でポンプ光及び第一のプローブ光と交差するように、第二のプローブ光を照射する第二のプローブ光光学系と、セルを通過した第一のプローブ光の偏光面の回転角を検出する第一の検出器と、セルを通過した第二のプローブ光の偏光面の回転角を検出する第二の検出器と、セル内に静磁場を印加する磁場印加手段と、第一の検出器で検出された回転角と、第二の検出器で検出された回転角とから、セル内の異なる2方向の磁場強度に関する情報を算出する算出手段と、を有した光ポンピング磁力計が知られている。
【0003】
このような磁力計においては、セルに内包される光と相互作用するアルカリ金属原子群等の物質おける、異なる2方向の磁場強度に関する情報を取得することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された構成の光ポンピング磁力計においては、セル内の異なる2方向の磁場強度に関する情報、つまりセルに内包される物質内の磁場強度に関する2次元情報を得ることが可能であるが、物質内の3次元情報を得ることは困難であった。
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、光と相互作用する物質内部における3次元情報を取得することができる3次元情報取得方法および3次元情報取得装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、3次元情報取得方法は、光が照射される領域である明画素と、光が照射されない領域である暗画素とが配列された符号化パターンを有した照射光を、前記照射光と相互作用する物質に対して2方向から照射する光照射工程と、前記光照射工程において前記物質に照射され、前記物質を透過した前記照射光を受光する受光工程と、前記光照射工程において前記物質に照射された前記照射光の前記符号化パターンと、前記受光工程において受光した照射光の光信号とを用いて、前記物質内部における3次元情報を取得する取得工程とを備え、前記光照射工程および前記取得工程を、異なる符号化パターンを有した複数の照射光を用いて複数回実行し、前記取得工程においては、複数回実行された前記光照射工程および前記取得工程における複数の前記符号化パターンと複数の前記光信号とを用いて前記3次元情報を取得する。
【0008】
これにより、物質内における3次元情報を高精度に取得することができる。
【0009】
また、前記光照射工程においては、前記照射光を、直交する2方向から前記物質に照射する。
【0010】
これにより、物質内において、有感領域と不感領域とを明確に区画することができる。
【0011】
また、前記物質は、2方向から照射される前記照射光の前記符号化パターンによって区画される複数の区画セルを有し、前記光照射工程および前記受光工程は、前記物質が有する前記区画セルの数以上の回数だけ実行される。
【0012】
これにより、物質内における3次元情報を高精度に取得することができる。
【0013】
また、前記光信号は、前記物質に印加される磁界の大きさによって変化し、前記3次元情報は、前記物質の内部における3次元磁界分布である。
【0014】
このように、物質内における3次元磁界分布を取得することで、磁界の発生源の配置位置を高精度に推定することができる。
【0015】
また、前記物質は、アルカリ金属であり、前記照射光は、アルカリ金属に対する共鳴波長を有するとともに、円偏光成分を有するレーザ光である。
【0016】
これにより、物質内における3次元情報として、3次元磁界分布を取得することができる。
【0017】
また、3次元情報取得装置は、光を出射する光源と、前記光と相互作用する物質と、前記光源から出射された光に対して、光が照射される領域である明画素と、光が照射されない領域である暗画素とが配列された第1符号化パターンを付与し、前記第1符号化パターンが付与された前記光である第1照射光を前記物質に照射する第1光学系と、前記光源から出射される光に対して、光が照射される領域である明画素と、光が照射されない領域である暗画素とが配列された第2符号化パターンを付与し、前記第2符号化パターンが付与された前記光である第2照射光を、前記第1照射光の照射方向と異なる方向から前記物質に照射する第2光学系と、前記物質を透過した前記第1照射光を受光する第1受光器と、前記物質を透過した前記第2照射光を受光する第2受光器と、前記第1符号化パターンと、前記第2符号化パターンと、前記第1受光器が受光した前記第1照射光の光信号と、前記第2受光器が受光した前記第2照射光の光信号とを用いて、前記物質の内部における3次元情報を取得するコントローラと、を備え、前記コントローラは、異なる複数の前記第1符号化パターンと、異なる複数の前記第2符号化パターンと、異なる複数の前記第1符号化パターンに対応する複数の前記第1照射光の光信号と、異なる複数の前記第2符号化パターンに対応する複数の前記第2照射光の光信号とを用いて、前記物質の内部における3次元情報を取得する。
【0018】
これにより、物質内における3次元情報を高精度に取得することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、物質内における3次元情報を高精度に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】第1符号化パターンを有した第1照射光および第2符号化パターンを有した第2照射光がガラスセルに照射される様子を示す斜視図である。
【
図4】第1照射光および第2照射光が照射されたガラスセル内における区画セルを示す分解斜視図である。
【
図5】第1照射光および第2照射光をガラスセルに照射した場合の、上層の区画セルにおける有感領域と不感領域とのパターンを示す図である。
【
図6】
図4に示したガラスセルに照射された第1照射光および第2照射光とは異なる第1符号化パターンおよび第2符号化パターンを有した第1照射光および第2照射光が照射されたガラスセル内の区画セルを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0022】
[3次元情報取得方法の概要]
本発明に係る3次元情報取得方法は、光が照射される領域である明画素と、光が照射されない領域である暗画素とが配列された符号化パターンを有した照射光を、前記照射光と相互作用する物質に対して2方向から照射する光照射工程と、前記光照射工程において前記物質に照射され、前記物質を透過した前記照射光を受光する受光工程と、前記光照射工程において前記物質に照射された前記照射光の前記符号化パターンと、前記受光工程において受光した照射光の光信号とを用いて、前記物質内部における3次元情報を取得する取得工程とを備え、前記光照射工程および前記取得工程を、異なる符号化パターンを有した複数の照射光を用いて複数回実行し、前記取得工程においては、複数回実行された前記光照射工程および前記取得工程における複数の前記符号化パターンと複数の前記光信号とを用いて前記3次元情報を取得するものである。
【0023】
この場合、照射光と相互作用する物質としては、例えばセシウム、カリウム、ルビジウム等のアルカリ金属を用いることができる。また、物質と相互作用する照射光としては、円偏光成分を有する光を用いることができる。
【0024】
円偏光成分を有する光は、物質を構成する原子の不対電子のスピンの向きを揃えるために用いられ、円偏光成分を有する光が照射された物質を構成する原子は、照射光の偏光方向に応じてスピン偏極し、磁化された状態となる。照射光と相互作用する物質としてのアルカリ金属は、円偏光成分を有する光と相互作用してスピン偏極する。
【0025】
物質を構成する原子をスピン偏極させる光を、「ポンプ光」とよぶ。また、物質を構成する原子をポンプ光によりスピン偏極させることを、「光ポンピングする」という。
【0026】
ポンプ光は、円偏光のみからなることが好ましいが、これに限るものではなく、円偏光成分を有していれば他の偏光成分を含有していてもよい。また、ポンプ光としては、アルカリ金属が基底準位から励起準位に光学遷移を生じる波長を有した光を用いる。
【0027】
光ポンピングにより生じた物質のスピン偏極は、静磁界が印加されると、磁界の大きさにより定まるラーモア周波数で歳差運動を行う。
【0028】
静磁界が印加された状態の物質に交流磁界を印加すると、印加された交流磁界によって歳差運動の位相が揃い、物質を透過する照射光は磁界に応じて強度変調されて、物質から出射される。物質を構成するアルカリ金属は、磁界が印加されると、磁界の強度に応じて光の透過率が変動する性質を有している。
【0029】
3次元情報取得方法においては、物質内部における3次元情報として、例えば物質内部における磁界の3次元分布状況を取得することができる。
【0030】
[3次元情報取得装置]
次に、3次元情報取得方法を実行する際に用いられる3次元情報取得装置について説明する。
【0031】
図1に示す3次元情報取得装置1は、ガラスセルGCと、光源11と、偏光ビームスプリッタ12と、第1ミラーアレイデバイス13と、第2ミラーアレイデバイス14と、第1フォトディテクタ15と、第2フォトディテクタ16と、コントローラ20と、3次元ヘルムホルツコイルHCと、金属線Wとを備えている。
【0032】
ガラスセルGCは、ガラスにて形成され、密封された立方体形状の容器であり、内部にアルカリ金属であるセシウムがガス状態で封入されている。ガラスセルGCとしては、例えば30mm角の立方体ガラスセルを用いることができる。セシウムは、照射光と相互作用する物質の一例である。ガラスセルGC内には、セシウムに加えて窒素およびヘリウムなどのバッファガスを封入することができる。ガラスセルGC内におけるバッファガスの封入量を調整することで、ガラスセルGCの検出感度および感度帯域幅を最適化することが可能である。
【0033】
3次元情報取得装置1においては、ガラスセルGCを取り囲むように3次元ヘルムホルツコイルHCが配置されており、3次元ヘルムホルツコイルHCによってガラスセルGCに静磁界を印加している。
【0034】
金属線Wは、ガラスセルGCに近接して配置されている。金属線Wには交流電流が流れており、金属線Wからは交流磁界が発生している。金属線Wから発生する交流磁界は、ガラスセルGCの内部に印加されている。ガラスセルGCの内部に印加される金属線Wからの交流磁界の大きさは、金属線Wからの距離に応じて異なっている。金属線Wから発生する交流磁界の周波数は、例えば70kHzに設定することができる。
【0035】
光源11は、ガラスセルGCに照射されるレーザ光を出射する。レーザ光は、光源が出射する光の一例である。光源11としては、例えば外部共振器付きレーザ(ECDL)を用いることができる。光源11は、例えば100mWのレーザ光の出力を得ることができるものを用いることができる。レーザ光は、光源11が有する光ファイバー11aから出射される。光源11から出射されるレーザ光の波長は、セシウムの共鳴波長である852nmに調整されている。
【0036】
光源11から出射したレーザ光は偏光ビームスプリッタ12に入射する。偏光ビームスプリッタ12は、光源11から出射されたレーザ光を、等しい強度で2つに分割する。偏光ビームスプリッタ12により分割された一方のレーザ光は、第1ミラーアレイデバイス13に入射し、偏光ビームスプリッタ12により分割された他方のレーザ光は、第2ミラーアレイデバイス14に入射する。
【0037】
光源11と偏光ビームスプリッタ12との間には1/2波長板31が配置され、光源11から出射したレーザ光は1/2波長板31を通過した後に偏光ビームスプリッタ12に入射される。光源11から出射したレーザ光は、絞りにより光量を適宜調整するとともに、ミラーにより反射した後に、偏光ビームスプリッタ12に入射することができる。
【0038】
偏光ビームスプリッタ12と第1ミラーアレイデバイス13との間には1/4波長板32が配置され、偏光ビームスプリッタ12と第2ミラーアレイデバイス14との間には1/4波長板33が配置されている。
【0039】
偏光ビームスプリッタ12から出射したレーザ光は、1/4波長板32を通過した後に第1ミラーアレイデバイス13に入射する。偏光ビームスプリッタ12から出射したレーザ光は、1/4波長板32を通過することにより円偏光となる。
【0040】
偏光ビームスプリッタ12から出射したレーザ光は、1/4波長板33を通過した後に第2ミラーアレイデバイス14に入射する。偏光ビームスプリッタ12から出射したレーザ光は、1/4波長板33を通過することにより円偏光となる。
【0041】
第1ミラーアレイデバイス13は、第1ミラーアレイデバイス13に入射したレーザ光を反射してガラスセルGCに照射する反射部材であり、第1ミラーアレイデバイス13に入射したレーザ光を反射する際に、レーザ光に第1符号化パターンPT1を付与する。第1符号化パターンPT1は、光が照射される領域である明画素bpxと、光が照射されない領域である暗画素dpxとが配列されたパターンである。第1符号化パターンPT1は、符号化パターンの一例である。
【0042】
図2(a)に示すように、第1ミラーアレイデバイス13は、基板131上に可動式のマイクロミラー132を多数配列したデバイスである。多数のマイクロミラー132は、例えば行列方向に格子状に配列されている。
【0043】
マイクロミラー132は、第1ミラーアレイデバイス13に入射されたレーザ光を反射可能であり、傾斜方向が異なるオン姿勢(
図2(a)におけるマイクロミラー132aの姿勢)と、オフ姿勢(
図2(a)におけるマイクロミラー132bの姿勢)とに移動することができる。マイクロミラー132は、コントローラ20の制御により駆動されて、オン姿勢とオフ姿勢とを切り替えることが可能である。
【0044】
オン姿勢にあるマイクロミラー132により反射されたレーザ光はガラスセルGCに照射され、オフ姿勢にあるマイクロミラー132により反射されたレーザ光はガラスセルGCに照射されない。
【0045】
従って、各マイクロミラー132を個別に駆動してオン姿勢またはオフ姿勢とすることで、第1ミラーアレイデバイス13によって反射されたレーザ光に、光が照射される領域である明画素bpxと、光が照射されない領域である暗画素dpxとが配列された第1符号化パターンPT1を付与することができる。
【0046】
図2(b)に示すように、第1符号化パターンPT1においては、複数の画素pxが格子状に配列されており、各画素pxは、光が照射される領域である明画素bpxまたは光が照射されない領域である暗画素dpxの何れかとなっている。第1符号化パターンPT1における各画素pxは、矩形状に形成されている。
図2(b)に示す第1符号化パターンPT1においては、行方向に5行の画素pxが配列され、列方向に5列の画素pxが配列されている。
【0047】
第1符号化パターンPT1の明画素bpxは、第1ミラーアレイデバイス13に入射したレーザ光がオン姿勢にあるマイクロミラー132aにより反射されることで形成され、暗画素dpxは、第1ミラーアレイデバイス13に入射したレーザ光がオフ姿勢にあるマイクロミラー132bにより反射されることで形成される。
【0048】
第2ミラーアレイデバイス14は、第2ミラーアレイデバイス14に入射したレーザ光を反射してガラスセルGCに照射する反射部材である。第2ミラーアレイデバイス14は、第1ミラーアレイデバイス13と同様に構成されており、第2ミラーアレイデバイス14に入射したレーザ光を反射する際に、レーザ光に第2符号化パターンPT2を付与する。
【0049】
第2符号化パターンPT2は、光が照射される領域である明画素bpxと、光が照射されない領域である暗画素dpxとが配列されたパターンであり、第1符号化パターンPT1と同様に構成されている。第2符号化パターンPT2は、符号化パターンの一例である。
【0050】
第2ミラーアレイデバイス14は、第1ミラーアレイデバイス13の基板131およびマイクロミラー132に対応する基板141およびマイクロミラー142を備えている。
【0051】
第2符号化パターンPT2においては、複数の画素pxが格子状に配列されており、各画素pxは、光が照射される領域である明画素bpxまたは光が照射されない領域である暗画素dpxの何れかとなっている。第2符号化パターンPT2における各画素pxは、矩形状に形成されている。
【0052】
第2符号化パターンPT2の明画素bpxは、第2ミラーアレイデバイス14に入射したレーザ光がオン姿勢にあるマイクロミラー142aにより反射されることで形成され、暗画素dpxは、第2ミラーアレイデバイス14に入射したレーザ光がオフ姿勢にあるマイクロミラー142bにより反射されることで形成される。
【0053】
第1ミラーアレイデバイス13によって反射され、第1符号化パターンPT1が付与されたレーザ光は、第1照射光L1としてガラスセルGCに照射される。第2ミラーアレイデバイス14によって反射され、第2符号化パターンPT2が付与されたレーザ光は、第2照射光L2としてガラスセルGCに照射される。
【0054】
3次元情報取得装置1においては、偏光ビームスプリッタ12、第1ミラーアレイデバイス13、1/2波長板31、1/4波長板32、およびレンズ等によって、光源11から出射されたレーザ光に対して第1符号化パターンPT1を付与し、第1符号化パターンPT1が付与された第1照射光L1をガラスセルGCに照射する第1光学系OS1が構成されている。
【0055】
また、3次元情報取得装置1においては、偏光ビームスプリッタ12、第2ミラーアレイデバイス14、1/2波長板31、1/4波長板33、およびレンズ等によって、光源11から出射されたレーザ光に対して第2符号化パターンPT2を付与し、第2符号化パターンPT2が付与された第2照射光L2をガラスセルGCに照射する第2光学系OS2が構成されている。
【0056】
図1、
図3に示すように、第1照射光L1のガラスセルGCに対する照射方向と、第2照射光L2のガラスセルGCに対する照射方向とは直交している。本実施形態においては、第1照射光L1の照射方向をX方向と規定し、第2照射光L2の照射方向をX方向と直交するY方向と規定する。また、X方向およびY方向と直交し、
図3における上方から下方へ向かう方向をZ方向と規定する。
【0057】
第1照射光L1と第2照射光L2とは、ガラスセルGCに対して同時に照射される。ガラスセルGCに照射された第1照射光L1は、第1符号化パターンPT1を有したまま、3次元情報の取得空間となるガラスセルGC内を透過する。同様に、ガラスセルGCに照射された第2照射光L2は、第2符号化パターンPT2を有したまま、3次元情報の取得空間となるガラスセルGC内を透過する。
【0058】
図3に示す第1符号化パターンPT1および第2符号化パターンPT2は、それぞれ3行3列の画素pxを有している。この場合、第1符号化パターンPT1の行はY方向に沿って並んでおり、列はZ方向に沿って並んでいる。第2符号化パターンPT2の行はX方向に沿って並んでおり、列はZ方向に沿って並んでいる。
【0059】
第1符号化パターンPT1について、上層の行における画素pxを、Y方向における上流側から下流側へ向かって画素px011、画素px021、画素px031と規定し、中層の行における画素pxを、Y方向における上流側から下流側へ向かって画素px012、画素px022、画素px032と規定し、下層の行における画素pxを、Y方向における上流側から下流側へ向かって画素px013、画素px023、画素px033と規定する。
【0060】
図3に示す第1符号化パターンPT1においては、画素px011、画素px013、画素px022、画素px023、画素px031は明画素bpxに設定され、画素px012、画素px021、画素px032、画素px033は暗画素dpxに設定されている。
【0061】
第2符号化パターンPT2について、上層の行における画素pxを、X方向における上流側から下流側へ向かって画素px101、画素px201、画素px301と規定し、中層の行における画素pxを、X方向における上流側から下流側へ向かって画素px102、画素px202、画素px302と規定し、下層の行における画素pxを、X方向における上流側から下流側へ向かって画素px103、画素px203、画素px303と規定する。
【0062】
図3に示す第2符号化パターンPT2においては、画素px102、画素px201、画素px202、画素px303は明画素bpxに設定され、画素px101、画素px103、画素px203、画素px301、画素px302は暗画素dpxに設定されている。
【0063】
図4に示すように、ガラスセルGC内においては、第1符号化パターンPT1および第2符号化パターンPT2の各画素pxに対応して区画した区画セルscを規定することができる。具体的には、3行3列の画素pxを有する第1符号化パターンPT1と、3行3列の画素pxを有する第2符号化パターンPT2とが交差することにより、3行3列3層の合計27個の区画セルscが規定される。この場合、区画セルscの行はX方向に沿って並んでおり、列はY方向に沿って並んでおり、層はZ方向に沿って並んでいる。
【0064】
区画セルscについて、Z方向の上層かつY方向の上流に位置する行の区画セルscを、X方向における上流側から下流側へ向かって区画セルsc111、区画セルsc211、区画セルsc311と規定し、Z方向の上層かつY方向の中流に位置する行の区画セルscを、X方向における上流側から下流側へ向かって区画セルsc121、区画セルsc221、区画セルsc321と規定し、Z方向の上層かつY方向の下流に位置する行の区画セルscを、X方向における上流側から下流側へ向かって区画セルsc131、区画セルsc231、区画セルsc331と規定する。
【0065】
また、区画セルscについて、Z方向の中層かつY方向の上流に位置する行の区画セルscを、X方向における上流側から下流側へ向かって区画セルsc112、区画セルsc212、区画セルsc312と規定し、Z方向の中層かつY方向の中流に位置する行の区画セルscを、X方向における上流側から下流側へ向かって区画セルsc122、区画セルsc222、区画セルsc322と規定し、Z方向の中層かつY方向の下流に位置する行の区画セルscを、X方向における上流側から下流側へ向かって区画セルsc132、区画セルsc232、区画セルsc332と規定する。
【0066】
さらに、区画セルscについて、Z方向の下層かつY方向の上流に位置する行の区画セルscを、X方向における上流側から下流側へ向かって区画セルsc113、区画セルsc213、区画セルsc313と規定し、Z方向の下層かつY方向の中流に位置する行の区画セルscを、X方向における上流側から下流側へ向かって区画セルsc123、区画セルsc223、区画セルsc323と規定し、Z方向の下層かつY方向の下流に位置する行の区画セルscを、X方向における上流側から下流側へ向かって区画セルsc133、区画セルsc233、区画セルsc333と規定する。
【0067】
第1照射光L1が照射されたガラスセルGC内における、第1符号化パターンPT1の明画素bpxに対応する領域では、ガラスセルGC内に封入されたセシウムがスピン偏極して、磁界に対して感度を有する有感領域Saとなる。一方、第1照射光L1が照射されたガラスセルGC内における、第1符号化パターンPT1の暗画素dpxに対応する領域では、ガラスセルGC内のセシウムはスピン偏極せず、磁界に対して感度を持たない不感領域Daとなる。
【0068】
また、第2照射光L2が照射されたガラスセルGC内における、第2符号化パターンPT2の明画素bpxに対応する領域では、ガラスセルGC内に封入されたセシウムがスピン偏極して、磁界に対して感度を有する有感領域Saとなる。一方、第2照射光L2が照射されたガラスセルGC内における、第2符号化パターンPT2の暗画素dpxに対応する領域では、ガラスセルGC内のセシウムはスピン偏極せず、磁界に対して感度を持たない不感領域Daとなる。
【0069】
ただし、第1照射光L1および第2照射光L2が照射されたガラスセルGC内において、第1符号化パターンPT1の明画素bpxに対応する領域と、第2符号化パターンPT2の明画素bpxに対応する領域とが交差した領域については、セシウムは第1照射光L1と第2照射光L2とのそれぞれの光によって直交する方向へスピン偏極することはできないため、第1照射光L1および第2照射光L2の両方が通過しない領域と同様に、磁界に対して感度を持たない不感領域Daとなる。
【0070】
つまり、ガラスセルGC内においては、第1照射光L1および第2照射光L2の何れか一方が通過する領域が有感領域Saとなり、第1照射光L1および第2照射光L2の両方が通過しない領域、ならびに第1照射光L1および第2照射光L2の両方が通過する領域が不感領域Daとなる。
【0071】
図5に示すように、例えば、第1ミラーアレイデバイス13により反射された第1照射光L1の第1符号化パターンPT1において、光が照射される明画素bpxに相当する画素pxを「1」で表し、光が照射されない暗画素dpxに相当する画素pxを「0」で表すと、上層の行における明画素bpxである画素px011、画素px031は「1」で表され、暗画素dpxである画素px021は「0」で表される。
【0072】
第2ミラーアレイデバイス14により反射された第2照射光L2の第2符号化パターンPT2において、光が照射される明画素bpxに相当する画素pxを「-1」で表し、光が照射されない暗画素dpxに相当する画素pxを「0」で表すと、上層の行における明画素bpxである画素px201は「1」で表され、暗画素である画素px101、画素px301は「0」で表される。
【0073】
また、ガラスセルGC内における区画セルscについて、有感領域Saとなる区画セルscを「1」または「-1」で表し、不感領域Daとなる区画セルscを「0」で表すと、ガラスセルGCにおける上層の区画セルsc111~sc331は、
図5に示すように表される。
【0074】
つまり、明画素bpxである画素px011と暗画素dpxである画素px101とが交差する区画セルsc111、明画素bpxである画素px031と暗画素dpxである画素px101とが交差する区画セルsc131、暗画素dpxである画素px021と明画素bpxである画素px201とが交差する区画セルsc221、明画素bpxである画素px011と暗画素dpxである画素px301とが交差する区画セルsc311、および明画素bpxである画素px031と暗画素dpxである画素px301とが交差する区画セルsc331は、スピン偏極して有感領域Saとなり、「1」または「-1」で表される。
【0075】
一方、暗画素dpxである画素px021と暗画素dpxである画素px101とが交差する区画セルsc121、明画素bpxである画素px011と明画素bpxである画素px201とが交差する区画セルsc211、明画素bpxである画素px031と明画素bpxである画素px201とが交差する区画セルsc231、および暗画素dpxである画素px021と暗画素dpxである画素px301とが交差する区画セルsc321は、スピン偏極せずに不感領域Daとなり、「0」で表される。
【0076】
また、ガラスセルGCにおける中層の区画セルsc112~sc332、および下層の区画セルsc113~sc333については、区画セルsc112、区画セルsc132、区画セルsc212、区画セルsc232、区画セルsc322、区画セルsc113、区画セルsc123、区画セルsc213、区画セルsc223、および区画セルsc333は、スピン偏極して有感領域Saとなる。
【0077】
一方、区画セルsc122、区画セルsc222、区画セルsc312、区画セルsc332、区画セルsc133、区画セルsc233、区画セルsc313、および区画セルsc323は、スピン偏極せずに不感領域Daとなる。
【0078】
ガラスセルGC内を透過した第1照射光L1は、第1フォトディテクタ15によって受光され、ガラスセルGC内を透過した第2照射光L2は、第2フォトディテクタ16によって受光される。第1フォトディテクタ15はガラスセルGCを透過した第1照射光L1を全体的に受光し、第2フォトディテクタ16はガラスセルGCを透過した第2照射光L2を全体的に受光する。第1フォトディテクタ15は第1受光器の一例であり、第2フォトディテクタ16は第2受光器の一例である。
【0079】
コントローラ20は、パーソナルコンピュータ21と、第1ロックインアンプ22と、第2ロックインアンプ23と、信号発生機24とを備えている。第1ロックインアンプ22は第1フォトディテクタ15と接続されており、第2ロックインアンプ23は第2フォトディテクタ16と接続されている。パーソナルコンピュータ21は、光源11、第1ミラーアレイデバイス13、第2ミラーアレイデバイス14、第1ロックインアンプ22、および第2ロックインアンプ23と接続されている。第1ロックインアンプ22および第2ロックインアンプ23には、信号発生機24が接続されている。信号発生機24には、3次元ヘルムホルツコイルHCおよび金属線Wが接続されている。
【0080】
第1フォトディテクタ15が受光する第1照射光L1の光信号は、第1照射光L1における有感領域Saとなる区画セルscから取得した光信号であり、不感領域Daとなる区画セルscからは光信号を取得しない。第1フォトディテクタ15が受光した第1照射光L1の光信号の強度は、ガラスセルGCの内部に印加されている交流磁界によって変調されている。第1フォトディテクタ15が取得した第1照射光L1の光信号は第1ロックインアンプ22に入力され、第1ロックインアンプ22によって位相検波されることにより、変調された光信号の振幅が測定される。
【0081】
第2フォトディテクタ16が受光する第2照射光L2の光信号は、第2照射光L2における有感領域Saとなる区画セルscから取得した光信号であり、不感領域Daとなる区画セルscからは光信号を取得しない。第2フォトディテクタ16が受光した第2照射光L2の光信号の強度は、ガラスセルGCの内部に印加されている交流磁界によって変調されている。第2フォトディテクタ16が取得した第2照射光L2の光信号は第2ロックインアンプ23に入力され、第2ロックインアンプ23によって位相検波されることにより、変調された光信号の振幅が測定される。なお、第1ロックインアンプ22および第2ロックインアンプ23には、信号発生機24から参照信号が入力される。
【0082】
有感領域Saとなっている区画セルscにおいては、印加される交流磁界の大きさによって透過した光信号の振幅が異なり、区画セルscに印加される交流磁界が大きいほど、当該区画セルscを透過した光信号の振幅は大きくなる。
【0083】
例えば、
図4において、金属線WがX方向に沿って区画セルsc113、sc213、sc313の下方(Z方向における下流側)に配置されていた場合、区画セルsc113よりも金属線Wから遠くに位置する区画セルsc112、sc123に印加される磁界は、区画セルsc113に印加される磁界に対して小さくなる。
【0084】
従って、区画セルsc112、sc123を透過した光信号の振幅は、区画セルsc113を透過した光信号の振幅よりも小さくなる。さらに、区画セルsc112よりも金属線Wから遠くに位置する区画セルsc111を透過した光信号の振幅は、区画セルsc112を透過した光信号の振幅に対して小さくなる。
【0085】
第1フォトディテクタ15が取得した第1照射光L1の光信号は、第1照射光L1において有感領域Saとなっている各区画セルscに対応する光信号が加算されたものであり、第1ロックインアンプ22により測定された振幅の大きさで表される。従って、第1ロックインアンプ22により測定される振幅の大きさは、第1照射光L1に含まれる有感領域Saである区画セルscの数、および有感領域Saである区画セルscに印加されている交流磁界の大きさによって変化する。
【0086】
同様に、第2フォトディテクタ16が取得した第2照射光L2の光信号は、第2照射光L2において有感領域Saとなっている各区画セルscに対応する光信号が加算されたものであり、第2ロックインアンプ23により測定された振幅の大きさで表される。従って、第2ロックインアンプ23により測定される振幅の大きさは、第2照射光L2に含まれる有感領域Saである区画セルscの数、および有感領域Saである区画セルscに印加されている交流磁界の大きさによって変化する。
【0087】
第1ロックインアンプ22による振幅の測定値および第2ロックインアンプ23による振幅の測定値は、パーソナルコンピュータ21に入力される。
【0088】
パーソナルコンピュータ21は、第1ミラーアレイデバイス13におけるマイクロミラー132の駆動を制御して、マイクロミラー132のオン姿勢とオフ姿勢とを切り替えることができる。これにより、複数の異なる第1符号化パターンPT1を形成することができる。
【0089】
パーソナルコンピュータ21は、第2ミラーアレイデバイス14におけるマイクロミラー142の駆動を制御して、マイクロミラー142のオン姿勢とオフ姿勢とを切り替えることができる。これにより、複数の異なる第2符号化パターンPT2を形成することができる。
【0090】
3次元情報取得装置1においては、異なる第1符号化パターンPT1を有した第1照射光L1および異なる第2符号化パターンPT2を有した第2照射光L2を、ガラスセルGCに対して複数回照射し、複数の第1照射光L1の光信号を第1フォトディテクタ15によって取得するとともに、複数の第2照射光L2の光信号を第2フォトディテクタ16によって取得することができる。
【0091】
第1ロックインアンプ22は、取得された複数の第1照射光L1の光信号に基づいて光信号の振幅を測定し、測定された複数の振幅の測定値はパーソナルコンピュータ21に入力される。第2ロックインアンプ23は、取得された複数の第2照射光L2の光信号に基づいて光信号の振幅を測定し、測定された複数の振幅の測定値はパーソナルコンピュータ21に入力される。
【0092】
パーソナルコンピュータ21は、異なる複数の第1符号化パターンPT1と、異なる複数の第2符号化パターンPT2と、異なる複数の第1符号化パターンPT1に対応する複数の第1照射光L1の光信号に基づく振幅の測定値と、異なる複数の第2符号化パターンPT2に対応する複数の第2照射光L2の光信号に基づく振幅の測定値とを用いて、ガラスセルGCの内部における3次元情報である交流磁界の3次元分布を取得することが可能である。
【0093】
[3次元情報取得装置による3次元情報取得方法の実行]
3次元情報取得装置1によって3次元情報取得方法を実行する際には、まずパーソナルコンピュータ21の制御により、光源11からレーザ光を出射する。この場合、光源11から出射するレーザ光は、ガラスセルGCに封入されているセシウムの共鳴波長である852nmに調整されている。
【0094】
次に、パーソナルコンピュータ21は、第1ミラーアレイデバイス13におけるマイクロミラー132の動作を制御して、光源11から出射され、1/2波長板31および1/4波長板32を通過して円偏光となったレーザ光が第1ミラーアレイデバイス13によって反射される際に、レーザ光に第1符号化パターンPT1を付与する。
【0095】
同様に、パーソナルコンピュータ21は、第2ミラーアレイデバイス14におけるマイクロミラー142の動作を制御して、光源11から出射され、1/2波長板31および1/4波長板33を通過して円偏光となったレーザ光が第2ミラーアレイデバイス14によって反射される際に、レーザ光に第2符号化パターンPT2を付与する。
【0096】
第1符号化パターンPT1が付与されたレーザ光は、第1照射光L1としてガラスセルGC内に照射され、ガラスセルGC内のセシウムを透過する。第2符号化パターンPT2が付与されたレーザ光は、第2照射光L2として第1照射光L1と直交する方向からガラスセルGCに照射され、ガラスセルGC内のセシウムを透過する。
【0097】
このように、3次元情報取得装置1においては、明画素bpxと暗画素dpxとを有した第1照射光L1および第2照射光L2を、第1照射光L1および第2照射光L2と相互作用するセシウムが封入されたガラスセルGCに対して2方向から照射する光照射工程が実行される。
【0098】
ガラスセルGC内のセシウムを透過した第1照射光L1は、第1フォトディテクタ15により受光され、ガラスセルGC内のセシウムを透過した第2照射光L2は、第2フォトディテクタ16により受光される。
【0099】
このように、3次元情報取得装置1においては、セシウムが封入されたガラスセルGCに照射され、ガラスセルGC内のセシウムを透過した第1照射光L1および第2照射光L2を、それぞれ第1フォトディテクタ15および第2フォトディテクタ16により受光する受光工程が実行される。
【0100】
第1フォトディテクタ15により受光された第1照射光L1の光信号は、第1ロックインアンプ22に入力されて振幅が測定され、振幅の測定値がパーソナルコンピュータ21に入力される。第2フォトディテクタ16により受光された第2照射光L2の光信号は、第2ロックインアンプ23に入力されて振幅が測定され、振幅の測定値がパーソナルコンピュータ21に入力される。
【0101】
パーソナルコンピュータ21は、第1ロックインアンプ22によって第1照射光L1における光信号の振幅が測定されるとともに、第2ロックインアンプ23によって第2照射光L2における光信号の振幅が測定された後に、第1ミラーアレイデバイス13を制御してレーザ光に前回とは異なる第1符号化パターンPT1を付与するとともに、第2ミラーアレイデバイス14を制御してレーザ光に前回とは異なる第2符号化パターンPT2を付与する。
【0102】
異なる第1符号化パターンPT1が付与されたレーザ光は第1照射光L1として再度ガラスセルGCに照射され、異なる第2符号化パターンPT2が付与されたレーザ光は第2照射光L2として再度ガラスセルGCに照射される。つまり、光照射工程を再度実行して、異なる第1符号化パターンPT1を有した第1照射光L1および異なる第2符号化パターンPT2を有した第2照射光L2をガラスセルGCに照射する。
【0103】
異なる第1符号化パターンPT1が付与された第1照射光L1は、ガラスセルGCを透過した後に第1フォトディテクタ15により受光され、第1フォトディテクタ15により受光された第1照射光L1における光信号の振幅が第1ロックインアンプ22により測定されて、パーソナルコンピュータ21に入力される。
【0104】
異なる第2符号化パターンPT2が付与された第2照射光L2は、ガラスセルGCを透過した後に第2フォトディテクタ16により受光され、第2フォトディテクタ16により受光された第2照射光L2における光信号の振幅が第2ロックインアンプ23により測定されて、パーソナルコンピュータ21に入力される。
【0105】
つまり、受光工程を再度実行して、ガラスセルGCを透過した、異なる第1符号化パターンPT1を有した第1照射光L1および異なる第2符号化パターンPT2を有した第2照射光L2を受光する。
【0106】
光照射工程および受光工程は、異なる第1符号化パターンPT1を有した第1照射光L1および異なる第2符号化パターンPT2を有した第2照射光L2について、さらに繰り返して実行することができる。
【0107】
このように、3次元情報取得装置1においては、光照射工程および取得工程は、異なる第1符号化パターンPT1を有した複数の第1照射光L1、および第2符号化パターンPT2を有した複数の第2照射光L2を用いて複数回実行される。
【0108】
光照射工程および取得工程が複数回実行されると、異なる第1符号化パターンPT1および第2符号化パターンPT2に基づく振幅の測定値がパーソナルコンピュータ21に複数入力される。
【0109】
異なる第1符号化パターンPT1および異なる第2符号化パターンPT2に対応する区画セルscにおいては、有感領域Saとなる区画セルscの位置および数が互いに異なる。
【0110】
例えば、
図6に示す第1符号化パターンPT1および第2符号化パターンPT2のように、
図4に示した第1符号化パターンPT1および第2符号化パターンPT2とは異なった符号化パターンを有する第1照射光L1および第2照射光L2をガラスセルGCに照射した場合、有感領域Saとなる区画セルscの位置および数は、
図4に示した区画セルscの場合と異なっている。
【0111】
具体的には、
図6に示す区画セルscにおいては、区画セルsc111、区画セルsc131、区画セルsc211、区画セルsc231、区画セルsc321、区画セルsc122、区画セルsc212、区画セルsc232、区画セルsc322、区画セルsc123、区画セルsc213、区画セルsc233、区画セルsc323が有感領域Saとなっている。
【0112】
また、区画セルsc121、区画セルsc221、区画セルsc311、区画セルsc331、区画セルsc112、区画セルsc132、区画セルsc222、区画セルsc312、区画セルsc332、区画セルsc113、区画セルsc133、区画セルsc223、区画セルsc313、および区画セルsc333が不感領域Daとなっている。
【0113】
さらに、
図6に示す区画セルscにおいては、有感領域Saとなる区画セルscが13区画存在し、不感領域Daとなる区画セルscが14区画存在しており、
図4に示す区画セルscにおいては、有感領域Saとなる区画セルscが15区画存在し、不感領域Daとなる区画セルscが12区画存在していて、両者における有感領域Saおよび不感領域Daの数は異なっている。
【0114】
有感領域Saとなる区画セルscのガラスセルGC内における位置が異なると、有感領域Saとなる区画セルscに印加される交流磁界の大きさは、有感領域Saとなる区画セルscの位置に応じた大きさとなる。
【0115】
また、第1符号化パターンPT1を有した第1照射光L1における光信号の振幅の測定値、および第2符号化パターンPT2を有した第2照射光L2における光信号の振幅の測定値は、第1符号化パターンPT1および第2符号化パターンPT2に対応した特有の値となる。
【0116】
従って、パーソナルコンピュータ21は、第1照射光L1に付与した複数の第1符号化パターンPT1、第2照射光L1に付与した複数の第2符号化パターンPT2、複数の第1照射光L1の光信号に基づいて測定された複数の振幅の測定値、および複数の第2照射光L2の光信号に基づいて測定された複数の振幅の測定値を用いて、ガラスセルGC内の各区画セルscに印加されている磁界の大きさを精度良く推定することができる。
【0117】
これにより、パーソナルコンピュータ21は、ガラスセルGC内における3次元情報である3次元磁界分布を高精度に取得することができる。特に、3次元情報取得装置1においては、照射光と相互作用する物質としてアルカリ金属であるセシウムを用いているため、ガラスセルGC内における3次元情報として、3次元磁界分布を取得することが可能となっている。
【0118】
このように、パーソナルコンピュータ21は、光照射工程および受光工程を実行した後に、光照射工程においてガラスセルGCに照射された第1照射光L1の第1符号化パターンPT1および第2照射光L2の第2符号化パターンPT2と、受光工程において受光した第1照射光L1の光信号および第2照射光L2の光信号とを用いて、ガラスセルGC内における3次元情報である3次元磁界分布を取得する取得工程を実行する。
【0119】
特に、パーソナルコンピュータ21は、光照射工程および受光工程を複数回実行した後に取得工程を実行し、取得工程においては、複数回実行された光照射工程および受光工程における、複数の符号化パターンPT1および複数の符号化パターンPT2と、第1照射光L1の複数の光信号および第2照射光L2の複数の光信号とを用いて、ガラスセルGCに封入されたセシウムの内部における3次元情報である3次元磁界分布を取得する。
【0120】
この場合、パーソナルコンピュータ21は、光照射工程および受光工程を、ガラスセルGCの内部に区画される区画セルscの数以上の回数だけ実行することで、各区画セルscに印加されている交流磁界の大きさを精度良く求めることができ、ガラスセルGC内における3次元磁界分布を高精度に取得することが可能となる。
【0121】
また、ガラスセルGCに第1照射光L1および第2照射光L2を照射する場合、第1照射光L1および第2照射光L2は直交する2方向からガラスセルGCに照射されている。このように、第1照射光L1と第2照射光L2とを、直交する2方向から照射することにより、ガラスセルGCにおいて、有感領域Saとなる区画セルscと不感領域Daとなる区画セルscとを、明確に区画することが可能となる。
【0122】
また、従来から存在するセンサ部が金属配線にて形成された磁界センサにより磁界を測定する場合は、センサ部の金属配線によって測定対象となる磁界に空間的な歪みや強度減衰が生じるため、磁界センサを密に配置して多点を同時に測定しようとすると、測定精度の低下を招いてしまうおそれがある。しかし、3次元情報取得装置1のように、セシウム等のアルカリ金属を封入したガラスセルGCを光学式の磁気センサとして用いることで、測定対象となる磁界に対する侵襲性を大きく低下させることができ、3次元磁界分布を高精度に取得することが可能である
【0123】
また、金属線Wから発生する磁界は金属線Wに近い程大きくなることから、3次元情報取得装置1によってガラスセルGC内における3次元磁界分布を取得することで、磁界の発生源となる金属線Wの配置位置を高精度に推定することが可能となる。
【0124】
また、3次元情報取得装置1は、磁界の発生源を高精度に検出することができるため、電子回路内のノイズ発生源の推定や、橋梁等の非破壊検査といった産業分野に用いることが可能である。さらに、生体内における磁性微粒子の位置検出等、医療分野における画像診断装置等に用いることが可能である。
【0125】
また、本実施形態における3次元情報取得装置1においては、ガラスセルGC内における3次元情報を得るために、第1照射光L1および第2照射光L2における光信号の振幅を用いているが、これに限るものではなく、第1照射光L1および第2照射光L2における偏光等、ガラスセルGC内の状態に応じて変化する光信号の特性を用いることができる。
【0126】
また、本実施形態における3次元情報取得装置1においては、セシウムが封入されたガラスセルGCに2方向から照射する第1照射光L1および第2照射光L2として、共に、セシウムの共鳴波長に調整された波長を有するポンプ光となるレーザ光を用いているが、これに限るものではない。
【0127】
つまり、第1照射光L1および第2照射光L2は、ガラスセルGCの内部において、光信号が得られる領域と光信号が得られない領域とを区画することができるものであればよい。
【0128】
例えば、アルカリ金属が封入されたガラスセルGCに2方向から照射する第1照射光L1および第2照射光L2の一方に、アルカリ金属に対する共鳴波長を有するポンプ光となるレーザ光を用い、第1照射光L1および第2照射光L2の他方に、アルカリ金属の共鳴波長から離調された波長を有するプローブ光となるレーザ光を用いて3次元情報取得装置1を構成することも可能である。この場合、ポンプ光とプローブ光とが交差した領域のみにおいて光信号を得ることが可能となる。
【0129】
また、第1照射光L1および第2照射光L2としては、STED顕微鏡に用いられる、観察用励起光としてのレーザ光(Excitation beam)、および誘導放出用のレーザ光(STED beam)を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0130】
1 3次元情報取得装置
11 光源
13 第1ミラーアレイデバイス
14 第2ミラーアレイデバイス
15 第1フォトディテクタ
16 第2フォトディテクタ
20 コントローラ
21 パーソナルコンピュータ
22 第1ロックインアンプ
23 第2ロックインアンプ
GC ガラスセル
HC 3次元ヘルムホルツコイル
L1 第1照射光
L2 第2照射光
OS1 第1光学系
OS2 第2光学系
W 金属線