(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025030904
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】ボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法
(51)【国際特許分類】
F22B 37/38 20060101AFI20250228BHJP
【FI】
F22B37/38 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136594
(22)【出願日】2023-08-24
(71)【出願人】
【識別番号】515177088
【氏名又は名称】株式会社JERA
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】春名 祐介
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 宏
(72)【発明者】
【氏名】草本 佑紀
(72)【発明者】
【氏名】梅沢 修一
(57)【要約】
【課題】ボイラ内部の伝熱管の任意の位置に対し、瞬時にもしくは任意の時間において伝熱管の管壁温度を簡易的に把握することができ、また、代表ボイラ以外の過熱器および再熱器の伝熱管の管壁温度を簡易的に把握することができるボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法を提供する。
【解決手段】ボイラの伝熱管の熱負荷倍率を用い、ボイラ炉内の伝熱管の管壁温度を解析する方法であって、燃焼ガスに晒されていない伝熱管の入口側と出口側の蒸気条件と、伝熱管仕様から導き出される平均熱負荷及び熱負荷倍率に基づき前記平均熱負荷と前記熱負荷倍率より求められる前記伝熱管の任意の位置における局所熱負荷から前記伝熱管の管壁温度を算出するボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラの伝熱管の熱負荷倍率を用い、ボイラ炉内の伝熱管の管壁温度を解析する方法であって、
燃焼ガスに晒されていない伝熱管の入口側と出口側の蒸気条件と、伝熱管仕様から導き出される平均熱負荷および熱負荷倍率とに基づき、前記平均熱負荷と前記熱負荷倍率より求められる、前記伝熱管の任意の位置における局所熱負荷から、前記伝熱管の管壁温度を算出する、ボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法。
【請求項2】
ボイラの伝熱管の熱負荷倍率を求め、ボイラ炉内の伝熱管の管壁温度を解析する方法であって、
前記ボイラは、代表ボイラと前記代表ボイラ以外のボイラとに分類され、
前記代表ボイラは、少なくとも過熱器Aを有し、前記代表ボイラ以外のボイラは、少なくとも前記代表ボイラと相似性のある過熱器Bを有し、
前記代表ボイラにおいて、CFD解析もしくはボイラ炉内の伝熱管の管壁温度の計測により、前記代表ボイラの熱負荷倍率Aを算出し、少なくとも前記代表ボイラにおける過熱器Aの熱負荷倍率分布Aのマスターデータを取得する第1の工程と、
前記代表ボイラ以外のボイラにおいて、前記代表ボイラとの前記過熱器Bの相似性から、前記代表ボイラ以外の伝熱管の熱負荷倍率分布Bを設定する第2の工程と、
前記第2の工程における熱負荷倍率分布Bを補正する第3の工程と、
前記第3までの工程で得られた熱負荷倍率分布Bから伝熱管の管壁温度を算出する第4の工程と、を有する、ボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法。
【請求項3】
前記代表ボイラは、少なくとも過熱器Aおよび再熱器Aを有し、前記代表ボイラ以外のボイラは、前記代表ボイラと相似性のある過熱器Bおよび再熱器Bを有し、
前記第1の工程は、前記代表ボイラにおいて、CFD解析もしくはボイラ炉内の伝熱管の管壁温度の計測により、前記代表ボイラの熱負荷倍率Aを算出し、前記代表ボイラにおける過熱器Aおよび再熱器Aの熱負荷倍率分布Aのマスターデータを取得する工程であり、
前記第2の工程は、前記代表ボイラ以外のボイラにおいて、前記代表ボイラとの前記過熱器Bおよび前記再熱器Bの相似性から、前記代表ボイラ以外の伝熱管の熱負荷倍率分布Bを設定する工程である、請求項2に記載のボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラは、ボイラ炉内に複数の過熱器や再熱器を有する。過熱器や再熱器は、並列に設けられた複数の伝熱管を有する。この複数の伝熱管では、燃焼ガスによる対流熱や火炉の輻射熱により高温に晒されるため、伝熱管の管壁の温度は内部流体温度より高温になる。
【0003】
ボイラ炉内では、燃焼ガスが1000℃以上となる。その中で、伝熱管の管壁温度を把握する方法として、CFD(Computational Fluid Dynamics)解析や伝熱管に熱電対を埋め込み温度計測する方法などがあるが、都度実施するCFD解析は費用と時間を要することや、上記伝熱管の温度計測は高温ガスに直接晒されることから安定的に長期計測が出来なく、伝熱管の管壁温度を把握することはいずれも容易ではない(例えば、非特許文献1参照)。一方、ボイラの伝熱管は、高温高圧の環境であることからクリープによる損傷(以下、「クリープ損傷」と言う。)が懸念される。前記クリープ損傷を未然に防ぐためには、クリープ寿命評価が必要である。また、クリープ寿命評価に適した精度の伝熱管の管壁温度算出方法も求められる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】遠藤喜彦、宮前茂弘、安藤安則、“ボイラ火炉内3次元流動・伝熱・燃焼シミュレーション”、石川島播磨技報、第34巻第2号、平成6年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法では、CFD解析あるいは温度計測を都度実施する必要があり、時間やコストを要する方法でしか解決できないという課題があった。また、従来のCFD解析では、伝熱管の任意の位置に対して瞬時にもしくは任意の時間における温度を算出することや、伝熱管の温度計測は高温ガスに直接晒されることから、安定的に長期計測することが現実的に困難である点も課題であった。なお、時間経過による運転状態の変化に応じて温度も変化するが、任意の時間とは、運転状態が変化することを示すものである。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、CFD解析や伝熱管の管壁温度の実測に基づいて得られた熱負荷倍率を用いることにより、伝熱管の任意の位置、任意の時間において伝熱管の管壁温度を簡易的に把握することができる、ボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法を提供することを目的とする。更に、本発明は、代表ボイラの過熱器や再熱器における熱負荷倍率をマスターデータ化し、代表ボイラと相似性のある過熱器や再熱器を有する代表ボイラ以外のボイラにマスターデータ化した熱負荷倍率を適用することにより、代表ボイラ以外の過熱器や再熱器の伝熱管の管壁温度を簡易的に把握することができる、ボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]ボイラの伝熱管の熱負荷倍率を用いた、ボイラ炉内の伝熱管の管壁温度を解析する方法であって、
燃焼ガスに晒されていない伝熱管の入口側と出口側の蒸気条件と、伝熱管仕様から導き出される平均熱負荷および熱負荷倍率とに基づき、前記平均熱負荷と前記熱負荷倍率より求められる、前記伝熱管の任意の位置における局所熱負荷から、前記伝熱管の管壁温度を算出する、ボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法。
[2]ボイラの伝熱管の熱負荷倍率を求め、ボイラ炉内の伝熱管の管壁温度を解析する方法であって、
前記ボイラは、代表ボイラと前記代表ボイラ以外のボイラとに分類され、
前記代表ボイラは、少なくとも過熱器Aを有し、前記代表ボイラ以外のボイラは、少なくとも前記代表ボイラと相似性のある過熱器Bを有し、
前記代表ボイラにおいて、CFD解析もしくはボイラ炉内の伝熱管の管壁温度の計測により、前記代表ボイラの熱負荷倍率Aを算出し、少なくとも前記代表ボイラにおける過熱器Aの熱負荷倍率分布Aのマスターデータを取得する第1の工程と、
前記代表ボイラ以外のボイラにおいて、前記代表ボイラとの前記過熱器Bの相似性から、前記代表ボイラ以外の伝熱管の熱負荷倍率分布Bを設定する第2の工程と、
前記第2の工程における熱負荷倍率分布Bを補正する第3の工程と、
前記第3までの工程で得られた熱負荷倍率分布Bから伝熱管の管壁温度を算出する第4の工程と、を有する、ボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法。
[3]前記代表ボイラは、少なくとも過熱器Aおよび再熱器Aを有し、前記代表ボイラ以外のボイラは、前記代表ボイラと相似性のある過熱器Bおよび再熱器Bを有し、
前記第1の工程は、前記代表ボイラにおいて、CFD解析もしくはボイラ炉内の伝熱管の管壁温度の計測により、前記代表ボイラの熱負荷倍率Aを算出し、前記代表ボイラにおける過熱器Aおよび再熱器Aの熱負荷倍率分布Aのマスターデータを取得する工程であり、
前記第2の工程は、前記代表ボイラ以外のボイラにおいて、前記代表ボイラとの前記過熱器Bおよび前記再熱器Bの相似性から、前記代表ボイラ以外の伝熱管の熱負荷倍率分布Bを設定する工程である、[2]に記載のボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱負荷倍率を用いることにより、伝熱管の管壁温度をより簡易的な方法によって把握することができる、ボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法を提供することができる。また、代表ボイラにおいてCFD解析や伝熱管の管壁温度の計測に基づいて得られた過熱器または再熱器における熱負荷倍率を用いることにより、代表ボイラ以外のボイラ炉内に設置される過熱器または再熱器の伝熱管の管壁温度を、より簡易的な方法によって把握することができる、ボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法も提供することができる。これにより、例えば、ボイラの運転データを用いて瞬時に伝熱管の管壁温度が算出でき、瞬時かつ伝熱管の管壁温度の変化を適切に反映した当該伝熱管のクリープ寿命評価も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態のボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法が適用されるボイラの一例を示す模式図である。
【
図2】本実施形態のボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法が適用されるボイラ内に設けられた過熱器や再熱器を構成する伝熱管の管群を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
[熱負荷倍率を用いたボイラの伝熱管の管壁温度解析方法]
本発明の一実施形態に係るボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法は、ボイラの伝熱管の熱負荷倍率を用い、ボイラ炉内の伝熱管の管壁温度を解析する方法であって、燃焼ガスに晒されていない伝熱管の入口側と出口側の蒸気条件と、伝熱管仕様から導き出される平均熱負荷および熱負荷倍率とに基づき、前記平均熱負荷と前記熱負荷倍率より求められる、前記伝熱管の任意の位置における局所熱負荷から、前記伝熱管の管壁温度を算出する、ボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法。
【0012】
図1は、本実施形態のボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法が適用されるボイラの一例を示す模式図である。
【0013】
熱負荷倍率から伝熱管の管壁温度を算出する方法を説明する。
伝熱管の管壁温度は、平均熱負荷、熱負荷倍率から局所熱負荷を求めて、局所熱負荷から定常熱伝導計算で管壁温度を求める。局所熱負荷は、下記の式(1)、式(2)に基づいて算出する。
下記の式(1)、式(2)において、Qaは平均熱負荷(kW/m)、E0は伝熱管の出口における蒸気のエンタルピー(kJ/kg)、Eiは伝熱管の入口における蒸気のエンタルピー(kJ/kg)、Fsは伝熱管内を流れる蒸気の流量(kg/s)、Lは伝熱管の長さ(m)、Qmは局所熱負荷(kW/m)、Mqは熱負荷倍率(-)、を表す。なお、熱負荷倍率は、ボイラ炉内における局所的な最大吸熱量と平均吸熱量の比であり、吸熱量の分布状態を表す指標である。
【0014】
下記の式(1)に基づいて、平均熱負荷(Qa)を算出する。
Qa=((E0-Ei)×Fs)/L (1)
【0015】
下記の式(2)に基づいて、局所熱負荷(Qm)を算出する。
Qm=Mq×Qa (2)
【0016】
得られた局所熱負荷(Qm)より定常熱伝導計算で伝熱管の管壁温度を算出する。
【0017】
本実施形態のボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法によれば、熱負荷倍率を用いることにより、伝熱管の任意の位置、任意の時間における伝熱管温度を求めることができるボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法を提供することができる。
【0018】
(第2の実施形態)
[熱負荷倍率の算出と熱負荷倍率を用いたボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法]
本発明の一実施形態に係るボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法は、ボイラの伝熱管の熱負荷倍率を求め、ボイラ炉内の伝熱管の管壁温度を解析する方法であって、前記ボイラは、代表ボイラと前記代表ボイラ以外のボイラとに分類され、前記代表ボイラは、少なくとも過熱器Aを有し、前記代表ボイラ以外のボイラは、少なくとも前記代表ボイラと相似性のある過熱器Bを有し、前記代表ボイラにおいて、CFD解析もしくはボイラ炉内の伝熱管の管壁温度の計測により、前記代表ボイラの熱負荷倍率Aを算出し、少なくとも前記代表ボイラにおける過熱器Aの熱負荷倍率分布Aのマスターデータを取得する第1の工程と、前記代表ボイラ以外のボイラにおいて、前記代表ボイラとの前記過熱器Bの相似性から、前記代表ボイラ以外の伝熱管の熱負荷倍率分布Bを取得する第2の工程と、前記第2の工程における熱負荷倍率分布Bを補正する第3の工程と、前記第3までの工程で得られた熱負荷倍率分布Bから伝熱管の管壁温度を算出する第4の工程と、を有するボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法。
【0019】
本実施形態のボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法も、
図1に示すようなボイラに適用される。
図2は、本実施形態のボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法が適用されるボイラ内に設けられた過熱器や再熱器を構成する伝熱管を示す模式図である。
図1に示すように、ボイラ1は、燃焼室(ボイラ炉)2と、バーナー3と、一次過熱器4と、二次過熱器5と、三次過熱器6と、再熱器7と、を有する。
【0020】
バーナー3は、燃焼室2の下部において、火炎の噴出口が燃焼室2の内部にあるように設けられている。
二次過熱器5は、燃焼室2の上部において、燃焼室2の内部のバーナー3からの火炎もしくは燃焼ガスによる輻射をより多く受ける位置に設けられている。
三次過熱器6は、燃焼室2の上部において、燃焼ガスの流れ方向から二次過熱器5の後流側の位置に設けられている。
【0021】
図2に示すように、過熱器(一次過熱器4、二次過熱器5、三次過熱器6)または再熱器7は、並列に設けられた複数の伝熱管10を有する。
【0022】
複数のボイラのうち、
図1に示すような過熱器(一次過熱器4、二次過熱器5、三次過熱器6)や再熱器7を有する一般的なボイラを、代表ボイラとする。
【0023】
「第1の工程」
第1の工程では、少なくとも代表ボイラの過熱器Aにおける熱負荷倍率分布Aのマスターデータを取得する。すなわち、第1の工程では、少なくとも代表ボイラが過熱器Aのみを有する場合に、その過熱器Aにおける熱負荷倍率分布Aのマスターデータを取得する。
【0024】
熱負荷倍率分布のマスターデータを取得する方法を説明する。
熱負荷倍率分布は、過熱器および再熱器のボイラ設備内の配置により異なることから、伝熱管の温度解析が必要となる位置に配置されている全ての過熱器および再熱器の熱負荷倍率分布を求める対象の過熱器および再熱器として選定する。熱負荷倍率分布は、複数の代表点の熱負荷分布から求めることから、選定した過熱器および再熱器のそれぞれにおいて、熱負荷倍率分布を求めるのに必要となる代表点を選定する。なお、代表点を適切に選定すること、および代表点の数を増やすことで、本手法の解析精度は向上する。
【0025】
CFD解析もしくはボイラ炉内の伝熱管の管壁温度の計測により、選定した代表点の管壁温度を把握する。
次に、定常熱伝導計算を用い、CFD解析もしくはボイラ炉内の伝熱管の管壁温度の計測により把握した伝熱管の代表点の管壁温度と合致する局所熱負荷(Qm)を求める。
次に、選定した過熱器および再熱器において、常時、計測を実施している過熱器や再熱器の入口側と出口側の蒸気条件、過熱器や再熱器の伝熱管仕様から、上記の式(1)に基づいて平均熱負荷(Qa)を算出する。
次に、上記の式(2)の式変形に基づいて、局所熱負荷(Qm)を平均熱負荷(Qa)で除することにより、熱負荷倍率を算出する。
同様の方法で選定した代表点全ての熱負荷倍率を算出する。
【0026】
少なくとも過熱器Aの代表点の熱負荷倍率から線形補間などを行い、任意の位置の熱負荷倍率を定め、熱負荷倍率分布Aを求める。これを代表ボイラの熱負荷倍率分布Aのマスターデータとする。
【0027】
第1の工程では、代表ボイラが少なくとも過熱器Aおよび再熱器Aを有する場合には、代表ボイラの過熱器Aおよび再熱器Aにおける熱負荷倍率分布Aのマスターデータを取得してもよい。熱負荷倍率分布Aのマスターデータの取得方法は上述の通りである。
【0028】
「第2の工程」
第2の工程では、上記マスターデータに基づいて、上記代表ボイラとは異なる代表ボイラ以外のボイラにおいて、過熱器Bの熱負荷倍率分布Bを設定する。すなわち、第2の工程では、代表ボイラ以外のボイラが過熱器Bのみを有する場合に、その過熱器Bにおける熱負荷倍率分布Bのマスターデータを設定する。
代表ボイラ以外のボイラの過熱器Bと相似性がある代表ボイラの過熱器Aを選定する。ここで、相似性とは過熱器のボイラ設備内の配置と伝熱管群構成を指す。代表ボイラ以外の過熱器Bの伝熱管群の任意の位置の相対位置を選定した代表ボイラの過熱器Aの伝熱管群の相対位置に対応させることで、選定した代表ボイラの過熱器Aの熱負荷倍率分布Aを代表ボイラ以外の過熱器Bの熱負荷倍率分布Bとして設定する。
【0029】
第2の工程では、代表ボイラが少なくとも過熱器Aおよび再熱器Aを有し、代表ボイラ以外のボイラが代表ボイラと相似性のある過熱器Bおよび再熱器Bを有する場合には、代表ボイラ以外のボイラの過熱器Bおよび再熱器Bと相似性がある代表ボイラの過熱器Aおよび再熱器Aを選定する。ここで、相似性とは過熱器および再熱器のボイラ設備内の配置と伝熱管群構成を指す。代表ボイラ以外の過熱器Bおよび再熱器Bの伝熱管群の任意の位置の相対位置を選定した代表ボイラの過熱器Aおよび再熱器Aの伝熱管群の相対位置に対応させることで、選定した代表ボイラの過熱器Aおよび再熱器Aの熱負荷倍率分布Aを代表ボイラ以外の過熱器Bおよび再熱器Bの熱負荷倍率分布Bとして設定する。
【0030】
「第3の工程」
第3の工程では、前記第2の工程にて得られた熱負荷倍率分布Bに対して、伝熱管群において管ピッチが局所的に変化する位置に対するCFD解析結果などを反映した補正や、伝熱管に生成した水蒸気酸化スケール厚さの計測値と計算による水蒸気酸化スケール厚さが整合する熱負荷倍率への補正を行う。
【0031】
「第4の工程」
第4の工程では、第3の工程までの工程で得られた熱負荷倍率分布Bから第1の実施形態に記載した内容により伝熱管の管壁温度を算出する。
【0032】
本実施形態のボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法によれば、代表ボイラにおいてCFD解析や伝熱管の管壁温度の計測に基づいて得られた過熱器Aおよび再熱器Aにおける熱負荷倍率Aを用いることにより、代表ボイラ以外の炉内に設置される過熱器Bおよび再熱器Bの伝熱管の管壁温度をより簡易的な方法によって把握することができる、ボイラ炉内の伝熱管の管壁温度解析方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 ボイラ
2 燃焼室(ボイラ炉)
3 バーナー
4 一次過熱器
5 二次過熱器
6 三次過熱器
7 再熱器
10 伝熱管