(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003094
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】配信システム
(51)【国際特許分類】
H04N 21/262 20110101AFI20241226BHJP
H04N 21/218 20110101ALI20241226BHJP
H04N 21/235 20110101ALI20241226BHJP
H04L 67/131 20220101ALI20241226BHJP
H04L 67/1001 20220101ALI20241226BHJP
H04L 67/561 20220101ALI20241226BHJP
【FI】
H04N21/262
H04N21/218
H04N21/235
H04L67/131
H04L67/1001
H04L67/561
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103578
(22)【出願日】2023-06-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼配信日(最先):令和 4年10月29日 ▲2▼配信プラットフォーム:アプリケーション「VARK」(Meta Quest 2,Android,iOS) ▲3▼公開者:株式会社VARK
(71)【出願人】
【識別番号】518010625
【氏名又は名称】株式会社VARK
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 卓也
【テーマコード(参考)】
5C164
【Fターム(参考)】
5C164FA06
5C164MA03S
5C164SA23P
5C164SA26S
5C164SB08P
5C164SB29S
5C164SC11S
5C164SC22P
5C164UB90S
5C164YA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】興趣性の高いインタラクティブコンテンツ、特に両眼立体視コンテンツを配信可能なシステムを提供する。
【解決手段】配信システムは、共通のコンテンツを並行配信する配信群サーバ200と、クライアント装置400と、付加的な演出の発生要求を管理する管理装置100と、を含む。配信サーバ群は、親サーバ210と、リレーサーバ220と、クライアント装置が接続する複数の子サーバ230と、を含み、親サーバが、コンテンツの観賞体験の提供に必要な情報を取得し、リレーサーバが、複数の第2の配信サーバに転送し、子サーバが、クライアント装置に、転送された情報を配信する。クライアント装置は、情報を取得し、コンテンツに係る画面を描画して表示させ、操作入力に基づいて、管理装置に発生要求を出力する。管理装置は、発生要求を蓄積し、蓄積された発生要求を読み出し、対応する演出を発生させる付加情報を構成して親サーバに送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通のコンテンツを並行配信する複数の配信サーバと、観賞者が使用するクライアント装置であって、前記複数の配信サーバのいずれかに接続することで前記コンテンツの観賞体験を前記観賞者に提供するクライアント装置と、前記コンテンツについて付加的な演出の発生要求を管理する管理装置と、を含んで構成される配信システムであって、
前記複数の配信サーバは、第1の配信サーバと、前記クライアント装置が接続する複数の第2の配信サーバと、を含み、
前記第1の配信サーバは、
前記コンテンツの観賞体験の提供に必要な情報を取得する第1取得手段と、
前記第1取得手段により取得された前記必要な情報を複数の前記第2の配信サーバに転送する転送手段と、
を有し、
前記第2の配信サーバは、接続中の前記クライアント装置に対して、前記転送手段により転送された情報を配信する配信手段を有し、
前記クライアント装置は、
接続中の前記第2の配信サーバから、前記配信手段により配信された情報を取得する第2取得手段と、
前記第2取得手段により取得された情報に基づいて、前記コンテンツに係る画面を描画して表示手段に表示させる第1表示制御手段と、
前記観賞者によりなされた前記付加的な演出の発生に係る操作入力に基づいて、前記管理装置に前記発生要求を出力する出力手段と、
を有し、
前記管理装置は、
前記出力手段による前記発生要求の出力に応じて、当該発生要求を記憶装置に蓄積して管理する管理手段と、
前記記憶装置に蓄積された前記発生要求を読み出し、当該発生要求に対応する演出を発生させる付加情報を構成する構成手段と、
前記構成手段により構成された前記付加情報を前記第1の配信サーバに送信する送信手段と、
を有し、
前記転送手段は、前記送信手段により送信された前記付加情報を受信したことに応じて、前記必要な情報と共に当該付加情報を複数の前記第2の配信サーバに転送する
ことを特徴とする配信システム。
【請求項2】
前記第1表示制御手段は、前記第2取得手段により取得された情報に前記付加情報が含まれる場合に、当該付加情報に基づく演出を発生させて前記コンテンツに係る画面を描画することを特徴とする請求項1に記載の配信システム。
【請求項3】
前記コンテンツは、演者の身体運動に基づいて挙動制御がなされる演者キャラクタの表示を含むコンテンツであることを特徴とする請求項1に記載の配信システム。
【請求項4】
前記第1取得手段が取得する前記必要な情報には、前記演者の身体運動を示す運動情報が含まれることを特徴とする請求項3に記載の配信システム。
【請求項5】
前記演者が使用する演者端末であって、前記第1の配信サーバに接続する演者端末をさらに含み、
前記第1の配信サーバは、前記送信手段により送信された前記付加情報を受信したことに応じて、当該付加情報を前記演者端末に配信する手段を有し、
前記演者端末は、
前記演者の身体運動を検出して前記運動情報を前記第1の配信サーバに送信する手段と、
前記運動情報に基づいて前記コンテンツに係る画面を描画して表示手段に表示させる第2表示制御手段と、
を有し、
前記第2表示制御手段は、前記第1の配信サーバにより前記付加情報が配信された場合に、当該付加情報に基づく演出を発生させて前記コンテンツに係る画面を描画する
ことを特徴とする請求項4に記載の配信システム。
【請求項6】
前記付加的な演出には、第1種類の演出と、前記第1種類の演出とは異なる第2種類の演出とが含まれ、
前記送信手段は、少なくとも前記第1種類の演出に係る前記付加情報を前記第1の配信サーバに送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の配信システム。
【請求項7】
前記送信手段は、前記第1種類の演出に係る前記付加情報を前記第1の配信サーバに送信する一方で、前記第2種類の演出に係る前記付加情報を、当該演出の前記発生要求を出力した前記クライアント装置が接続中の前記第2の配信サーバに送信する
ことを特徴とする請求項6に記載の配信システム。
【請求項8】
前記管理装置は、各々が前記管理手段と前記構成手段と前記送信手段とを有する第1管理装置及び第2管理装置で構成され、
前記出力手段は、前記第1種類の演出の前記発生要求を前記第1管理装置に出力し、前記第2種類の演出の前記発生要求を前記第2管理装置に出力する
ことを特徴とする請求項7に記載の配信システム。
【請求項9】
前記第1管理装置の前記送信手段による前記付加情報の送信頻度が、前記第2管理装置の前記送信手段による前記付加情報の送信頻度よりも高いことを特徴とする請求項8に記載の配信システム。
【請求項10】
前記第1種類の演出が有償で発生可能に設定される一方で、前記第2種類の演出が無償で発生可能に設定されることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の配信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配信システムに関し、特に両眼立体視コンテンツの配信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ受像機やヘッドマウンテッドディスプレイ(HMD)等、両眼立体視を可能ならしめる機器が一般に流通しており、観賞者は、このような機器(クライアント装置)を用いることで両眼立体視コンテンツ(以下、3Dコンテンツとして言及)を手軽に観賞することが可能になってきている。
【0003】
このようなクライアント装置で観賞可能な両眼立体視コンテンツの1つに、音楽ホールやライブハウス等の会場を模した空間のステージ上に、演者の挙動に連動したキャラクタ(以下、演者キャラクタとして言及)を配置し、当該演者キャラクタを介して行われる歌唱やダンス等のパフォーマンスを、同空間のフロア中の特定の位置から観賞する体験を提供するバーチャルリアリティライブ(以下、VRライブとして言及)がある。特許文献1には、複数の観賞者が同時に観賞可能なVRライブを提供するコンテンツ配信システムが開示されている。
【0004】
ところで、VRライブへの没入感を高めるべく、このような配信システムでは、観賞者の頭部の動きに追従させて表示内容が変化する等、観賞者が所望する視点での観賞が可能なように構成される。より詳しくは、クライアント装置において個々の観賞者が所望する視点に応じたVRライブが提示されるよう、各クライアント装置には演者により行われたモーションデータ及び表示用の各種データが提供され、当該装置において視点に応じたVRライブに係る画面が生成されて表示されている。即ち、VRライブの観賞に係るコンテンツ配信は、一般的な動画観賞に係るコンテンツ配信よりも多くの通信帯域を使用して行われる。
【0005】
従って、VRライブを同時観賞する観賞者の人数が多くなるほど、配信を行うサーバの負荷が高くなる。故に、観賞者数が多く見込まれるコンテンツの配信では、特許文献2のようなオンラインゲームサービスと同様に、複数のサーバにクライアント装置の接続を分散させることで、サーバ負荷を低下させる手法が採用される。即ち、演者の使用する端末から取得した演者に係るモーションデータ等が、リレーサーバを介して複数のサーバに共有され、各サーバに接続中のクライアント装置に送信される手法で、多人数が観賞可能なVRライブの提供は実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6688378号公報
【特許文献2】特開2007-061616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、観賞者間や演者と観賞者の間の一体感を提供するとの観点では、VRライブはインタラクティブな要素を含んで構成されることが好ましい。このため、近年のVRライブは、観賞者が入力したコメントや観賞者により指定された追加演出が共有される等、任意の観賞者によりなされた操作入力に起因する観賞体験の変化が、演者や他の観賞者にも提供可能なよう構成されている。例えば、演者キャラクタに対するコメントやパフォーマンスに対する感想コメント、くす玉や花火といったステージ上に生じる演出等の賑やかし要素がリアルタイムに提示されることで、VRライブの観賞体験がより興趣的なものになる。
【0008】
しかしながら、観賞者のクライアント装置を複数のサーバに分散して接続させる態様では、観賞者によりなされた操作入力に起因する観賞体験の変化が同一のサーバに接続中のクライアント装置にのみ共有される。このため、同時観賞中の人数に対して賑やかし要素の発生が少ない印象を観賞者に与え得、結果、観賞体験における観賞者間の一体感や没入感が低減する可能性があった。また、例えば一部のサーバで提示されている賑やかし要素について演者がリアクションをとった場合に、他のサーバにクライアント装置が接続されている観賞者に対して脈絡のないリアクションが伝わることになるため、各サーバでの賑やかし要素の発生状況は演者側にフィードバックしないことが好ましいが、この態様では演者に対して提供される興趣要素が少なかった。
【0009】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、興趣性の高いインタラクティブコンテンツを配信する配信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の目的を達成するために、本発明の配信システムは、共通のコンテンツを並行配信する複数の配信サーバと、観賞者が使用するクライアント装置であって、複数の配信サーバのいずれかに接続することでコンテンツの観賞体験を観賞者に提供するクライアント装置と、コンテンツについて付加的な演出の発生要求を管理する管理装置と、を含んで構成される配信システムであって、複数の配信サーバは、第1の配信サーバと、クライアント装置が接続する複数の第2の配信サーバと、を含み、第1の配信サーバは、コンテンツの観賞体験の提供に必要な情報を取得する第1取得手段と、第1取得手段により取得された必要な情報を複数の第2の配信サーバに転送する転送手段と、を有し、第2の配信サーバは、接続中のクライアント装置に対して、転送手段により転送された情報を配信する配信手段を有し、クライアント装置は、接続中の第2の配信サーバから、配信手段により配信された情報を取得する第2取得手段と、第2取得手段により取得された情報に基づいて、コンテンツに係る画面を描画して表示手段に表示させる第1表示制御手段と、観賞者によりなされた付加的な演出の発生に係る操作入力に基づいて、管理装置に発生要求を出力する出力手段と、を有し、管理装置は、出力手段による発生要求の出力に応じて、当該発生要求を記憶装置に蓄積して管理する管理手段と、記憶装置に蓄積された発生要求を読み出し、当該発生要求に対応する演出を発生させる付加情報を構成する構成手段と、構成手段により構成された付加情報を第1の配信サーバに送信する送信手段と、を有し、転送手段は、送信手段により送信された付加情報を受信したことに応じて、必要な情報と共に当該付加情報を複数の第2の配信サーバに転送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このような構成により本発明によれば、興趣性の高いインタラクティブコンテンツを配信することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態及び変形例に係る配信システムの構成を例示した図
【
図2】本発明の実施形態及び変形例に係る演者端末300のハードウェア構成を例示したブロック図
【
図3】本発明の実施形態及び変形例に係るクライアント装置400のハードウェア構成を例示したブロック図
【
図4】本発明の実施形態及び変形例に係る配信サーバ群200のハードウェア構成を例示したブロック図
【
図5】本発明の実施形態及び変形例に係る管理装置100の機能構成を例示したブロック図
【
図6】本発明の実施形態1に係る配信システムにおける配信処理を例示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態1]
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0014】
以下に説明する一実施形態は、配信システムの一例としての、演者の身体運動に基づいて挙動制御がなされる演者キャラクタが登場する両眼立体視コンテンツ(以下、単にVRコンテンツとして言及)の観賞体験を提供可能な配信システムに、本発明を適用した例を説明する。しかし、本発明は、観賞者による操作入力に応じた効果が発生可能に構成された任意のインタラクティブコンテンツの観賞体験を提供することが可能な任意の配信システムに適用可能である。
【0015】
また、本明細書において、「演者キャラクタ」とは、VRコンテンツに登場する被観賞キャラクタを指すものとして説明する。以下の実施形態では、演者キャラクタは、人物である演者により実際に行われた身体運動(身体部位の運動及び発声を含む)に基づいて挙動の制御が行われるものとして説明する。本実施形態においてVRコンテンツは、演者キャラクタによるライブパフォーマンスの観賞体験を提供するライブコンテンツであるものとして説明する。即ち、VRコンテンツは、ライブ会場を模した仮想空間において演者キャラクタがステージ上でライブパフォーマンスを行い、観賞者が当該観賞者に対応して空間中のフロアに配置された仮想キャラクタ(以下、観客キャラクタとして言及)を介して当該パフォーマンスを観賞するコンテンツである。本実施形態ではVRコンテンツは、興趣性を向上させるべく、観賞者の反応や演者の反応を互いに直接的または間接的に伝えることが可能なように構成されたインタラクティブコンテンツであるものとし、演者の行うライブパフォーマンスがライブ配信の態様でリアルタイムに提供される。しかしながら、本発明の実施はこれに限定されるものではなく、複数の配信サーバから並行配信されるインタラクティブコンテンツであれば、演者キャラクタの登場を必須とするものではないことは容易に理解されよう。
【0016】
《配信システムの構成》
以下、本発明の実施形態に係るVRコンテンツの観賞体験を提供する観賞サービスに係る配信システムの構成を、
図1を参照して説明する。
【0017】
図示されるように、配信システムは、VRコンテンツを配信する配信サーバ群200と、演者キャラクタの振る舞い(挙動及び発声)を制御する演者が使用する演者端末300と、当該VRコンテンツの観賞者が使用するクライアント装置400を含む。本実施形態の配信システムでは、演者の身体運動に基づいて挙動制御された演者キャラクタについての共通のVRコンテンツを並行配信すべく、配信サーバ群200は親サーバ210、リレーサーバ220及び複数の子サーバ230を含む。
【0018】
本実施形態の配信システムでは、VRコンテンツの配信を効率的に行うべく、ライブパフォーマンスを行う演者キャラクタの3次元モデルやライブ会場に係るステージ等の背景オブジェクトの3次元モデルのデータは、配信に先立ってクライアント装置400や演者端末300に事前にダウンロードされているものとする。各装置にダウンロードされる情報(以下、事前情報として言及する場合がある)には、この他、演者が歌唱パフォーマンスを行う予定の楽曲の演奏データ(伴奏やコーラス等を含む)や当該楽曲中に発生させることが決定されている演出(照明等)のデータも含まれる。また配信されるVRコンテンツについては、観賞者によって発生可能とする付加的な演出の種類が予め設定されており、事前情報には、当該付加的な演出を表示するためのデータも含まれるものとする。
【0019】
従って、VRコンテンツの配信中は、基本的には、演者キャラクタの挙動を制御するための情報と当該演者キャラクタが発するボーカルやMCに係る音声の情報が配信サーバ群200を介して配信されることで、クライアント装置400におけるVRコンテンツの提示が可能となる。即ち、これらの演者キャラクタの振る舞いを制御するための情報が、VRコンテンツの配信中において、クライアント装置400における当該VRコンテンツの提示に必要な情報であり、以下では「必要情報」として言及する。
【0020】
親サーバ210は、必要情報を取得し、これを並行配信用に格納する。本実施形態の配信システムでは演者キャラクタの振る舞いは演者の身体運動や発声により制御されるため、親サーバ210は演者端末300から必要情報を取得する。演者端末300は、演者が行う身体運動の検出及び取得と演者が発した音声の取得が可能に構成されており、取得した情報に基づいて必要情報を構成して通信接続中の親サーバ210に順次送出する。ここで、必要情報は、演者により行われた身体運動を示す運動情報、及び演者の発声に係る音声情報の少なくともいずれかを含む。並行配信用に格納された必要情報は、間欠的に読み出されてリレーサーバ220に送信され、リレーサーバ220により各子サーバ230に転送される。子サーバ230は、リレーサーバ220により転送された必要情報を配信用に格納する。配信用に格納された必要情報は、当該子サーバ230に接続中のクライアント装置400により取得される。このように、本実施形態の配信システムでは演者端末300から送出された必要情報が、配信サーバ群200を介して複数の子サーバ230のそれぞれに接続中のクライアント装置400に伝達し、VRコンテンツの並行配信が実現される。
【0021】
演者の使用する演者端末300は、VRコンテンツにおける演者キャラクタの身体動作制御及び音声配信に対応すべく、モーションキャプチャシステム320及び
図1には不図示のマイクが接続される。モーションキャプチャシステム320は、例えば演者に取り付けられるセンサ群であり、演者により行われた身体運動を検出し、演者キャラクタに適用するためのモーションデータ(運動情報)を生成することができる。モーションキャプチャシステム320としてはこの他、演者に装着されたマーカを撮像装置により検出するシステムを採用することもできる。
【0022】
観賞者の使用するクライアント装置400は、両眼立体視のVRコンテンツを観賞可能なよう、例えばHMD等の左眼用と右眼用の異なる画面を表示する表示装置420が接続される。本実施形態の配信システムでは、観賞者の頭部位置に応じた視点でのVRコンテンツの観賞体験を提供すべく、クライアント装置400において必要情報を用いて表示装置420の位置や姿勢に応じたVRコンテンツに係る画面が描画される。図の例では、表示装置420はクライアント装置400と分離した態様を主として示しているが、本発明の実施はこれに限られるものではなく、表示装置420はクライアント装置400と一体となって構成された所謂眼鏡型デバイスであってもよい。
【0023】
安定的なコンテンツ観賞を実現すべく、配信システムにおいてクライアント装置400が通信接続する子サーバ230は配信にのみ用いられ、観賞サービスの利用に係りクライアント装置400から送信された情報の処理等は管理装置100が行う。管理装置100は、例えばクライアント装置400から配信中のVRコンテンツの観賞要求を受信すると、当該クライアント装置400に対して必要情報の配信を行う子サーバ230を決定し、当該子サーバ230のIPアドレスを返送する。クライアント装置400は、受信したIPアドレスに基づいて子サーバ230に通信接続することで、必要情報を取得してVRコンテンツの観賞体験を提供可能な状態となる。
【0024】
また詳細は後述するが、本実施形態の配信システムではVRコンテンツの観賞中、観賞者により入力されたコメントの表示に加え、観賞者がサイリウムを振るジェスチャに基づく観客キャラクタの盛り上がり動作の提示、くす玉や花火、照明等の観賞者によって希望された追加のライブ演出(ステージ演出等)の提示が可能に構成される。これらの表示演出は、演者のライブパフォーマンスを主として進行するVRコンテンツには予めデザインされたものではなく、観賞者の操作入力に起因する発生要求に応じて適応的に発生する「付加的な」演出である。このため管理装置100は、VRコンテンツを観賞中の各クライアント装置400から付加的な演出の発生要求も受信する。管理装置100は、発生要求を受信するとこれを蓄積し、所定のタイミングで読み出してVRコンテンツに付加的な演出を発生させるための付加情報に変換して親サーバ210に送信する。親サーバ210は当該付加情報を受信すると、VRコンテンツにおいて該当の演出を発生させるべく、当該付加情報も並行配信用に格納する。
【0025】
これらの装置は、ネットワーク500を介して通信接続可能に構成される。
図1の例では、発明の理解を容易にすべく、1つのネットワーク500を介して各装置が通信接続するものとして説明するが、本発明の実施がこれに限られるものではないことは理解されよう。ネットワークは通信接続する装置間について個別に設けられるものであってよい。
【0026】
〈演者端末のハードウェア構成〉
以下、本実施形態の配信システムに係る演者端末300のハードウェア構成を、
図2のブロック図を参照して説明する。
【0027】
制御部301は、例えばCPUであり、演者端末300が有する各ブロックの動作を制御する。具体的には制御部301は、例えば記憶装置302に記録されている各ブロックの動作プログラムや、VRコンテンツに係るライブ配信用のアプリケーション(配信アプリケーション)のプログラムを読み出し、メモリ303に展開して実行することにより各ブロックの動作を制御する。
【0028】
記憶装置302は、例えば不揮発性メモリやHDD等の、恒久的にデータを保持可能な記録装置である。記憶装置302は、演者端末300が有する各ブロックの動作プログラム及び配信アプリケーションのプログラムに加え、各ブロックの動作において必要となるパラメータ等の情報を記憶する。メモリ303は、例えば揮発性メモリ等の一時的なデータ記憶に使用される記憶装置である。メモリ303は、各ブロックの動作プログラムの展開領域としてだけでなく、各ブロックの動作において出力されたデータ等を一時的に記憶する格納領域としても用いられる。
【0029】
描画装置304は、例えばGPUやグラフィックチップ等の描画装置である。描画装置304は、演者がVRコンテンツの配信中に演者キャラクタの状態や仮想空間(ライブ会場の3次元空間)の状態を確認するための画面を生成する。基本的には描画装置304は、事前情報及びモーションキャプチャシステム320により検出・取得された運動情報に基づいて確認用の画面を生成する。また描画装置304は、親サーバ210から付加情報を取得した場合には、事前情報、運動情報及び当該付加情報に基づいて確認用の画面を生成する。より詳しくは描画装置304は、演者キャラクタや観客キャラクタのモデルを含むオブジェクトや演出効果を3次元空間に配置し、予め定められた視点について当該空間を描画することにより確認用の画面を生成する。描画装置304により生成された確認要の画面は、出力I/F306を介して表示装置340に表示される。
【0030】
入力I/F305は、演者端末300が備える種々の入力を受け付けるインタフェースである。本実施形態の演者端末300では、モーションキャプチャシステム320により検出・取得された演者の身体運動を示す運動情報だけでなく、例えばキーボードやマウス等の入力装置310においてなされた操作入力に関する情報を入力I/F305は取得する。この他、入力I/F305は、マイク330を介して入力された音声信号も取得する。入力I/F305は、受け付けられた入力に関する情報を例えばメモリ303に格納する。
【0031】
出力I/F306は、演者端末300が備える情報提示のための各種情報出力を行うインタフェースである。本実施形態の演者端末300では、演者に対する情報提示として、ライブ会場に係る3次元空間を示す画面の表示装置340への表示、及びVRコンテンツに係る音声のスピーカ350からの出力が出力I/F306を介して行われる。
【0032】
通信I/F307は、演者端末300が有する外部装置との通信インタフェースである。通信I/F307は、ネットワーク500(有線・無線を問わない)を介して外部装置と接続し、データの送受信を可能とすることができる。通信I/F307は、例えば送信対象として入力された情報を所定の形式のデータに変換し、ネットワーク500を介して親サーバ210等の外部装置に送信する。また通信I/F307は、例えばネットワーク500を介して外部装置から情報を受信すると、必要に応じて該情報を復号してメモリ303に格納する。
【0033】
〈配信サーバのハードウェア構成〉
続いて、本実施形態の配信システムに係る配信サーバ群200のハードウェア構成を、
図3のブロック図を参照して説明する。上述したように、配信サーバ群200は、親サーバ210、リレーサーバ220及び子サーバ230を含む。
図3では、
図3(a)として親サーバ210のハードウェア構成が、
図3(b)として1つの子サーバ230のハードウェア構成が例示されている。なお、リレーサーバ220については、単に親サーバ210により送信された並行配信用の情報を受信し、VRコンテンツの配信に使用中の子サーバ230を特定して転送する装置であるため、ハードウェア構成の詳細は省略する。
【0034】
制御部211は、例えばCPUであり、親サーバ210が有する各ブロックの動作を制御する。具体的には制御部211は、例えば記憶装置212に記録されている各ブロックの動作プログラムを読み出し、メモリ213に展開して実行することにより各ブロックの動作を制御する。
【0035】
記憶装置212は、例えば不揮発性メモリやHDD等の、恒久的にデータを保持可能な記録装置である。記憶装置212は、親サーバ210が有する各ブロックの動作プログラムに加え、各ブロックの動作において必要となるパラメータ等の情報を記憶する。メモリ213は、例えば揮発性メモリ等の一時的なデータ記憶に使用される記憶装置である。メモリ213は、各ブロックの動作プログラムの展開領域としてだけでなく、各ブロックの動作において出力されたデータ等を一時的に記憶する格納領域としても用いられる。メモリ213は、並行配信用の情報が格納される領域を含む。当該領域は、演者端末300から受信した必要情報が格納される領域と、管理装置100から受信した付加情報が格納される領域とが分離して設けられる。このように構成することで、リレーサーバ220により各子サーバ230に並行配信用の情報が転送される際に、転送が必要である情報のみが送信され、また転送された情報を容易に識別することが可能となる。これらの領域に格納される情報は、例えばVRコンテンツの各フレームや各シーケンスに係り順次更新される。
【0036】
通信I/F214は、親サーバ210が有する外部装置との通信インタフェースである。通信I/F214は、ネットワーク500(有線・無線を問わない)を介して外部装置と接続し、データの送受信を可能とすることができる。通信I/F214は、例えば送信対象として入力された情報を所定の形式のデータに変換し、ネットワーク500を介してリレーサーバ220等の外部装置に送信する。また通信I/F214は、例えばネットワーク500を介して外部装置から情報を受信すると、必要に応じて該情報を復号してメモリ213に格納する。
【0037】
制御部231は、例えばCPUであり、子サーバ230が有する各ブロックの動作を制御する。具体的には制御部231は、例えば記憶装置232に記録されている各ブロックの動作プログラムを読み出し、メモリ233に展開して実行することにより各ブロックの動作を制御する。
【0038】
記憶装置232は、例えば不揮発性メモリやHDD等の、恒久的にデータを保持可能な記録装置である。記憶装置232は、子サーバ230が有する各ブロックの動作プログラムに加え、各ブロックの動作において必要となるパラメータ等の情報を記憶する。メモリ233は、例えば揮発性メモリ等の一時的なデータ記憶に使用される記憶装置である。メモリ233は、各ブロックの動作プログラムの展開領域としてだけでなく、各ブロックの動作において出力されたデータ等を一時的に記憶する格納領域としても用いられる。メモリ233は、子サーバ230に接続したクライアント装置400への配信用の情報が格納される領域を含む。当該領域は、親サーバ210と同様に、演者端末300から受信した必要情報が格納される領域と、管理装置100から受信した付加情報が格納される領域とが分離して設けられる。このように構成することで、各クライアント装置400が情報取得する際に、取得が必要である情報のみを受信し、また受信した情報を容易に識別することが可能となる。
【0039】
通信I/F234は、子サーバ230が有する外部装置との通信インタフェースである。通信I/F234は、ネットワーク500(有線・無線を問わない)を介して外部装置と接続し、データの送受信を可能とすることができる。通信I/F234は、例えば送信対象として入力された情報を所定の形式のデータに変換し、ネットワーク500を介して接続中のクライアント装置400等の外部装置に送信する。また通信I/F234は、例えばネットワーク500を介して外部装置から情報を受信すると、必要に応じて該情報を復号してメモリ233に格納する。
【0040】
〈クライアント装置のハードウェア構成〉
続いて、本実施形態の配信システムに係る各クライアント装置400のハードウェア構成を、
図4のブロック図を参照して説明する。
【0041】
制御部401は、例えばCPUであり、クライアント装置400が有する各ブロックの動作を制御する。具体的には制御部401は、例えば記憶装置402に記録されている各ブロックの動作プログラムや、VRコンテンツに係るライブ観賞用のアプリケーション(観賞アプリケーション)のプログラムを読み出し、メモリ403に展開して実行することにより各ブロックの動作を制御する。
【0042】
記憶装置402は、例えば不揮発性メモリやHDD等の、恒久的にデータを保持可能な記録装置である。記憶装置402は、クライアント装置400が有する各ブロックの動作プログラム、観賞アプリケーションのプログラム及び事前情報に加え、各ブロックの動作において必要となるパラメータ等の情報を記憶する。メモリ403は、例えば揮発性メモリ等の一時的なデータ記憶に使用される記憶装置である。メモリ403は、各ブロックの動作プログラムの展開領域としてだけでなく、各ブロックの動作において出力されたデータ等を一時的に記憶する格納領域としても用いられる。
【0043】
描画装置404は、例えばGPUやグラフィックチップ等の描画装置である。描画装置404は、サービスの利用中、VRコンテンツの観賞体験を提供するための画面を生成する。上述したように、本実施形態のVRコンテンツは、観賞者に対応してライブ会場に係る3次元空間に配置された観客キャラクタの視点に基づくライブパフォーマンスの観賞体験を提供する。また観賞者の頭部の動きに応じて当該視点のパラメータを変更することで、観賞者があたかもライブ会場にいるかの如き観賞体験を提供することができる。ここで、観賞者の頭部の動きは、例えば表示装置420であるHMDに内蔵された姿勢センサ421のセンサ出力に基づいて特定されてよい。姿勢センサ421は、例えば加速度センサやジャイロセンサ等であってよく、後述の入力I/F405を介して姿勢センサ421のセンサ出力が取得される。あるいは、姿勢センサ421として、撮像装置によって順次撮像された画像における特徴点の分布を解析し、光学的にHMDの姿勢を検出するモジュールを用いることもできる。従って、描画装置404は、接続中の子サーバ230から取得した必要情報に基づいて、演者キャラクタや観客キャラクタのモデルを含むオブジェクトや演出効果を3次元空間に配置し、観賞者の頭部の動きや視点操作に係る操作入力に基づいて決定された視点について当該空間を描画することにより画面を生成する。描画装置404により生成された画面は、出力I/F406を介して表示装置420に表示される。
【0044】
入力I/F405は、クライアント装置400が備える種々の入力を受け付けるインタフェースである。本実施形態のクライアント装置400では、表示装置420が備える姿勢センサ421からのセンサ出力の取得だけでなく、例えばコントローラやキーボード等の入力装置410においてなされた操作入力に関する情報を入力I/F405は取得する。入力I/F405は、受け付けられた入力に関する情報を例えばメモリ403に格納する。
【0045】
出力I/F406は、クライアント装置400が備える情報提示のための各種情報出力を行うインタフェースである。本実施形態のクライアント装置400では、観賞者に対するVRコンテンツの観賞体験の提供として、ライブ会場に係る3次元空間を示す画面の表示装置420への表示、及びVRコンテンツに係る音声のスピーカ422からの出力が出力I/F406を介して行われる。
【0046】
通信I/F407は、クライアント装置400が有する外部装置との通信インタフェースである。通信I/F407は、ネットワーク500(有線・無線を問わない)を介して外部装置と接続し、データの送受信を可能とすることができる。通信I/F407は、例えば送信対象として入力された情報を所定の形式のデータに変換し、ネットワーク500を介して管理装置100等の外部装置に送信する。また通信I/F407は、例えばネットワーク500を介して外部装置から情報を受信すると、必要に応じて該情報を復号してメモリ403に格納する。
【0047】
〈管理装置の機能構成〉
次に、本実施形態の配信システムに係る管理装置100の機能構成を、
図5のブロック図を参照して説明する。管理装置100に係る各機能構成は、例えば管理装置100が有する不図示のCPUが、記憶装置に格納された管理装置100の動作プログラムをメモリに展開して実行することにより実現されるものとする。
【0048】
制御部101は、管理装置100が有する各ブロックの動作を制御する。制御部101は、管理装置100の動作プログラムを実行するCPUであってよい。
【0049】
要求受信部102は、配信システムにおいて配信中のVRコンテンツについて、観賞者によりなされた付加的な演出の発生要求を各クライアント装置400から受信する。上述したように、本実施形態の配信システムにおいて観賞体験が提供されるVRコンテンツは、インタラクティブな興趣要素として、複数の観賞者及び演者に提示される付加的な演出を観賞者が発生させることが可能に構成される。要求受信部102は、不図示の通信I/Fを介してサービス利用中のクライアント装置400から発生要求を受信すると、当該発生要求を要求DB103に登録する。
【0050】
要求DB103は、配信中のVRコンテンツについて受信した付加的な演出の発生要求を登録(蓄積)するデータベースである。発生要求は、例えば当該発生要求を行った観賞者を識別する情報及び当該発生要求を受信した日時の情報が関連付けられて登録されるものであってよい。
【0051】
読出部104は、VRコンテンツに演出を反映させる発生要求を要求DB103から読み出す。読出部104による発生要求の読み出しは、例えば500ms等の予め定められた時間間隔で行われ、都度、前回の読み出し以後に要求DB103に登録された発生要求が読み出されるものであってよい。読み出しがなされた発生要求の情報は要求DB103から削除されるものであってもよいし、他のDBに移動されるものであってもよいし、そのまま要求DB103に保持されるものであってもよい。
【0052】
構成部105は、読出部104による発生要求の読み出しに応じて、当該発生要求に対応する演出をVRコンテンツに発生させる情報(以下、付加情報として言及)を構成する。付加情報は、例えば当該付加情報がクライアント装置400及び演者端末300における描画処理に参照された場合に、VRコンテンツに対応する3次元空間を、該当の演出に係る効果が発生した状態にせしめることが可能な形式の情報であるとする。本実施形態では管理装置100において、構成部105が読み出した発生要求を例えばマージして親サーバ210において処理しやすい形式の付加情報に変換するものとして説明するが、付加情報は単に発生要求を組み合わせた情報としてもよい。
【0053】
送信部106は、構成部105により生成された付加情報を親サーバ210に送信する。より詳しくは送信部106は、構成部105により付加情報が構成されると、その都度、不図示の通信I/Fを介して親サーバ210に送信する。これにより、親サーバ210のメモリ213の並行配信用の領域に当該付加情報が格納され、クライアント装置400及び演者端末300への付加情報の配信が可能となる。
【0054】
なお、本実施形態の配信システムでは、管理装置100という1つの装置によりこれらの機能構成が実現されるものとして説明するが、本発明の実施はこれに限られるものではない。管理装置100に係る機能構成は、複数の装置により実現されるものであってもよい。例えば、要求受信部102はクライアント装置400からのVRコンテンツの観賞要求や付加的な演出の発生要求を受信可能に構成された専用のAPIサーバが、要求DB103は専用のデータベースサーバが、読出部104、構成部105及び送信部106は、専用のデータベースサーバから定期的に情報取得を行うサーバが行うよう分離構成されるものであってもよい。
【0055】
《コンテンツ配信》
以下、上述した配信システムにおけるVRコンテンツの配信の概要を説明する。
【0056】
一態様においてVRコンテンツの配信は、配信事業者等により予め定められたスケジュールに従って実施される。演者は、例えば当該スケジュールで計画された配信開始時刻に先立って演者端末300において配信アプリケーションを実行することで、親サーバ210に当該演者端末300を通信接続させる。より詳しくは配信アプリケーションは、親サーバ210にセッション確立要求を送信して、親サーバ210と当該演者端末300との間のセッションを確立させる。当該セッションにおいて配信アプリケーションは、ライブパフォーマンスに係る必要情報を順次取得して親サーバ210に送信する。より詳しくは配信アプリケーションは、情報送信が可能な状態に遷移している期間、モーションキャプチャシステム320により取得された演者の身体運動を示す運動情報及びマイク330により取得された演者の音声情報の少なくともいずれかを含んだ必要情報を構成し、親サーバ210に送信する。親サーバ210に送信された必要情報はメモリ213の並行配信用に領域に格納され、リレーサーバ220を介して子サーバ230に順次転送される。また必要情報は子サーバ230に転送されると、メモリ233の配信用の領域に格納される。
【0057】
また配信アプリケーションは、構成した必要情報と事前情報とに基づいて描画処理を描画装置304に行わせ、生成されたVRコンテンツに係る画面を表示装置340に表示させることで演者に提示する。当該描画処理は、例えば演者により指定された視点に基づいてライブ会場に係る3次元空間を描画する。演者は、表示装置340に表示された画面により、パフォーマンス中の演者キャラクタやライブ会場の様子等を確認することができる。
【0058】
観賞者は、使用するクライアント装置400において観賞アプリケーションを実行することで、管理装置100から観賞可能なVRコンテンツの情報を取得する。観賞アプリケーションは観賞可能なVRコンテンツを提示し、観賞するVRコンテンツがなされると管理装置100に観賞要求を送信する。また観賞アプリケーションは、観賞要求に対する接続先の子サーバ230の情報を管理装置100から受信すると、当該子サーバ230にセッション確立要求を送信して、当該子サーバ230とクライアント装置400との間のセッションを確立させる。当該セッションにおいて観賞アプリケーションは、接続中の子サーバ230のメモリ233に配信用の領域に格納された情報を順次取得する。
【0059】
また観賞アプリケーションは、取得した配信用の情報と事前情報とに基づいて描画処理を描画装置404に行わせ、生成されたVRコンテンツに係る画面(左眼用及び右眼用)を表示装置420に表示させることで観賞者に提示する。より詳しくは描画装置404は、必要情報に基づいてライブ会場に係る3次元空間に必要なオブジェクト等を配置し、姿勢センサ421のセンサ出力や視点変更に係る操作入力に基づいて設定された視点(左眼及び右眼)について当該空間を描画することで、VRコンテンツに係る画面を生成する。観賞者は、当該画面により、配信中のVRコンテンツを観賞することができる。
【0060】
このようなVRコンテンツの配信を効率的に行うべく、ライブパフォーマンスを行う演者キャラクタの3次元モデルやライブ会場に係るステージ等の背景オブジェクトの3次元モデルのデータは、配信に先立ってクライアント装置400や演者端末300に事前にダウンロードすることができる。各装置にダウンロードされる情報には、この他演者が歌唱パフォーマンスを行う予定の楽曲の演奏データや当該楽曲中に発生させることが決定されている演出(照明等)のデータも含まれる。また配信されるVRコンテンツについては、観賞者によって発生可能とする付加的な演出の種類が予め設定され、クライアント装置400に予めダウンロードされる情報には、当該付加的な演出を表示するためのデータも含まれるものであってよい。
【0061】
(付加的な演出の発生)
観賞アプリケーションは、VRコンテンツの観賞体験の興趣性を増大させるべく、例えばコメント入力、拍手、くす玉・花火追加、照明変更等の追加演出の発生に係る操作入力を受け付け可能に構成される。一方で、クライアント装置400においてなされた付加的な演出の発生要求が、当該クライアント装置400が接続中の子サーバ230に送信され、当該子サーバ230に接続中のクライアント装置400にのみ共有される態様では、上述したように配信システム全体の観賞者間のコンテンツ観賞に係る一体感や没入感が低減し得る。このため、本実施形態の配信システムでは、観賞者による付加的な演出の発生に係る操作入力がなされた場合、その発生要求を管理装置100が受信するよう構成される。より詳しくは、観賞アプリケーションは当該操作入力がなされた場合に、観賞者を識別する識別情報を関連付けて該当の演出の発生要求を管理装置100に送信する。
【0062】
管理装置100において発生要求が受信されると、要求受信部102は当該発生要求を要求DB103に登録する。要求DB103に登録された発生要求は、読出部104により定期的に読み出される。構成部105は、読出部104により発生要求が読み出された場合に当該発生要求を付加情報に変換し、送信部106を介して親サーバ210に送信する。
【0063】
親サーバ210は、管理装置100において生成された付加情報を受信すると、当該付加情報をメモリ213の並行配信用の領域に必要情報とは別に格納する。配信アプリケーションは、接続中の親サーバ210のメモリ213に並行配信用の領域に付加情報が格納されると、当該付加情報を取得する。配信アプリケーションは、付加情報を取得すると、当該付加情報、必要情報及び事前情報に基づいて描画処理を描画装置304に行わせ、生成されたVRコンテンツに係る画面を表示装置340に表示させることで演者に提示する。これにより、演者は、付加的な演出が発生した状態のライブ会場の様子を確認することができる。また付加情報が並行配信用の領域に格納されると、リレーサーバ220は必要情報と共にこれを各子サーバ230に転送する。付加情報は子サーバ230に転送されると、メモリ233の配信用の領域に必要情報とは分離されて格納される。観賞アプリケーションは、接続中の子サーバ230のメモリ233の配信用の領域に付加情報が格納されると、当該付加情報を取得する。観賞アプリケーションは、付加情報を取得すると、当該付加情報、必要情報及び事前情報に基づいて描画処理を描画装置404に行わせ、生成されたVRコンテンツに係る画面を表示装置420に表示させることで観賞者に提示する。これにより、観賞者は、付加的な演出が発生した状態のVRコンテンツを観賞することができる。
【0064】
《配信処理》
このような構成をもつ本実施形態の配信システムにおいて行われるVRコンテンツの配信処理について、
図6のフローチャートを用いて具体的な処理を説明する。該フローチャートに対応する処理は、各装置の制御部が、例えば対応する記憶装置に記憶されている対応する処理プログラムを読み出し、それぞれのメモリに展開して実行することにより実現することができる。なお、本配信処理は、配信されるVRコンテンツの1フレームごとに実行されるものとして説明する。また
図6のフローチャートの例では、親サーバ210、リレーサーバ220及び子サーバ230は配信サーバ群として示されるが、主体がこれらのいずれであるかは、当該配信サーバ群の動作に係るステップの詳細な説明にて説明する。
【0065】
S601で、管理装置100の読出部104は制御部101の制御の下、予め定めた発生要求の読み出しタイミングに至ったか否かを判断する。読出部104は、読み出しタイミングに至ったと判断した場合は処理をS602に移し、なっていないと判断した場合は処理をS612に移す。
【0066】
S602で、読出部104は制御部101の制御の下、要求DB103に前回の読み出し以降に新たに登録された付加的な演出の発生要求が存在するか否かを判断する。読出部104は、新たに登録された発生要求が存在すると判断した場合は処理をS603に移し、存在しないと判断した場合は処理をS612に移す。
【0067】
S603で、読出部104は制御部101の制御の下、要求DB103から新たに登録された発生要求を読み出す。また構成部105は制御部101の制御の下、読み出された発生要求に基づいて付加情報を構成する。
【0068】
S604で、送信部106は制御部101の制御の下、構成部105により構成された付加情報を親サーバ210に送信する。
【0069】
一方、演者端末300の制御部301はS605で、モーションキャプチャシステム320を介して取得した運動情報及びマイク330を介して取得した音声情報に基づいて必要情報を構成して親サーバ210に送出する。当該必要情報には、この他、例えばライブパフォーマンスについて予定されていたステージ照明演出等のシーケンスの情報を含むこともできる。
【0070】
S606で、親サーバ210の制御部211は、メモリ213の並行配信用の領域にVRコンテンツの観賞に係る情報を格納する。より詳しくは、制御部211は、演者端末300から必要情報を受信した場合には、当該必要情報を並行配信用の領域に格納する。また制御部211は、管理装置100から付加情報を受信した場合には、当該付加情報を並行配信用の領域に格納する。
【0071】
S607で、制御部211は、並行配信用の領域に格納された情報をリレーサーバ220を介して各子サーバ230に転送させる。当該転送は、制御部211が当該領域に格納された情報を通信I/F214を介してリレーサーバ220に送信したことにより行われてもよい。リレーサーバ220は受信した情報を複数の子サーバ230の各々に送信し、各子サーバ230の制御部231は、受信した情報をメモリ233の配信用の領域に格納する。このようにして、各子サーバ230の配信用の領域には、親サーバ210の並行配信用の領域と同様の内容が格納された状態となる。即ち、当該配信用の領域には、必要情報と付加情報の少なくともいずれかが格納される。また必要情報と付加情報の両方が格納される際には、これらの情報は廃位信用の領域において分離して格納される。このような転送が完了すると、配信サーバ群200における本フレームに係る配信処理は完了する。
【0072】
S608で、演者端末300の描画装置304は制御部301の制御の下、描画処理を実行してVRコンテンツに係る画面を生成して表示装置340に表示させる。本ステップの描画処理は、S605において構成した必要情報と事前情報を用いて実行される。また接続中の親サーバ210のメモリ213の並行配信用の領域に付加情報が格納されている場合には、制御部301は通信I/F307を介してこれを取得してVRコンテンツに係る画面に反映させる。即ち、この場合描画装置304は、当該付加情報と必要情報と事前情報を用いて描画処理を実行する。制御部301は、表示装置340への画面表示を行うと、本フレームに係る演者端末300での配信処理を完了する。
【0073】
またS609で、クライアント装置400の制御部401は、接続中の子サーバ230の配信用の領域に格納されている情報を通信I/F407を介して取得する。また制御部401は、取得した情報とクライアント装置400において設定されている視点パラメータとに基づいて描画装置404に描画処理を実行させ、生成されたVRコンテンツに係る画面を表示装置420に表示する。当該描画処理は、子サーバ230の配信用の領域に付加情報が格納されているか否かに応じて変化する。即ち、付加情報が格納されていない場合には、描画装置404は必要情報と事前情報とを用いて描画処理を実行し、付加情報が格納されている場合には、描画装置404はさらに付加情報を用いて描画処理を実行する。換言すれば、親サーバ210が管理装置100から付加情報を受信した場合には、VRコンテンツを並行配信している全ての子サーバ230に接続中のクライアント装置400において、付加的な演出を発生させた画面表示がなされる。また制御部401は、取得した情報に含まれる音声情報に基づいてスピーカ422への音声出力を行う。これにより、観賞者に対してVRコンテンツの観賞体験を提供することができる。
【0074】
S610で、制御部401は、付加的な演出の発生に係る操作入力がなされたか否かを判断する。制御部401は、付加的な演出の発生に係る操作入力がなされたと判断した場合は処理をS611に移し、なされていないと判断した場合は本フレームに係るクライアント装置400での配信処理を完了する。
【0075】
S611で、制御部401は、なされた付加的な演出の発生に係る操作入力に応じた発生要求を、通信I/F407を介して管理装置100に送信する。制御部401は、管理装置100への発生要求の送信が完了すると、本フレームに係るクライアント装置400での配信処理を完了する。
【0076】
S612で、制御部101は、いずれかのクライアント装置400から発生要求を受信したか否かを判断する。制御部101は、発生要求を受信したと判断した場合は処理をS613に移し、受信していないと判断した場合は本フレームに係る管理装置100での配信処理を完了する。
【0077】
S613で、要求受信部102は制御部101の制御の下、受信した発生要求を要求DB103に登録する。制御部101は、発生要求の登録が完了すると、本フレームに係る管理装置100での配信処理を完了する。
【0078】
以上説明したように、本実施形態の配信システムによれば、興趣性の高いインタラクティブコンテンツを配信することができる。観賞者は、使用するクライアント装置400が接続されている子サーバ230に依らず、配信システム全体の観賞者の操作入力に基づいて付加的な演出が発生したVRコンテンツを観賞することができる。また演者は、配信システム全体の観賞者に起因して発生した付加的な演出を確認することができ、よりインタラクティブ性の高いライブパフォーマンスを提供することができる。結果、配信システムは、観賞者間及び観賞者と演者間の一体感や没入感を向上させた興趣性の高いインタラクティブコンテンツの観賞体験を提供することができる。
【0079】
[実施形態2]
上述した実施形態では観賞者の操作入力に基づく付加的な演出の発生要求が、いずれも1つの管理装置の要求DB103に登録されて管理されるものとして説明したが、本発明の実施はこれに限られるものではない。付加的な演出には複数の種類が設けられ、種類ごとに異なる管理装置で管理され、それぞれの管理装置から親サーバ210に付加情報が送信されるものとしてもよい。このとき、各クライアント装置400の通信I/F407は、観賞者によりなされた操作入力に対応する付加的な演出の種類に応じて、発生要求の送信先を異ならせる。
【0080】
例えば、付加的な演出は、その発生に金銭の支払い(課金)が必要であるか否かによって2種類に分類される、即ち、有償の演出と無償の演出とに分類されるものであってもよい。一例として、コメント、拍手、サイリウムの動作等を無償の演出に分類し、くす玉や花火等のそれ以外の演出を有償の演出に分類することができる。有償の演出は、ユーザサポート用に各観賞者の金銭の支払い履歴を一定の期間保持しておく必要があるため、当該演出が管理される管理装置100(第1管理装置)の要求DB103は、付加情報の送信用に第1管理装置の読出部104により読み出された後も、各発生要求を管理し続けるよう構成される。一方、無償の演出は、金銭の支払いが発生しないため有償の演出のように履歴を保持しておく必要性は低い。従って、無償の演出が管理される管理装置100(第2管理装置)の要求DB103は、付加情報の送信用に第2管理装置の読出部104により読み出された後は、各発生要求を削除するよう構成することができる。従って、第1管理装置の要求DB103と第2管理装置の要求DB103とは、性能を異ならせることができ、配信システムの構築に係り発生するコストを低減することができる。
【0081】
なお、本実施形態では付加的な演出の種類ごとに管理装置100を設ける態様について説明したが、本発明の実施はこれに限られるものではない。即ち、演出の種類ごとの管理は、少なくともその種類ごとに発生要求を管理する要求DBが異なっていればよい。従って、上述したように管理装置が要求受信部102に対応するAPIサーバ、要求DB103に対応するデータベースサーバ、読出部104と構成部105と送信部106に対応する情報取得(読み出し)サーバに分離して実装される態様では、少なくともデータベースサーバが付加的な演出の種類ごとに設けられればよく、情報取得サーバは共通であってもよい。即ち、情報取得サーバは、発生要求の読み出しタイミングに至った場合に、複数のデータベースサーバから前回の読み出し以降に新たに登録された発生要求を取得するよう構成してもよい。また有償の演出の発生要求の受け付け時に決済処理等を行う態様では、APIサーバも有償の演出と無償の演出のそれぞれについて設けられるものとしてもよい。
【0082】
[変形例]
上述した実施形態2では、発生要求の読み出しタイミングに至った場合に各演出種類に対応する要求DBから発生要求を取得するものとして説明したが、本発明の実施はこれに限られるものではない。上述したように付加的な演出を有償の演出と無償の演出とに分類する態様では、観賞されるVRコンテンツにおいて有償の演出の方が提示の優先度が高い。換言すれば、有償の演出は観賞者による代価の支払いに対して該当の演出を伴う観賞体験を提供する契約に基づいており、配信事業者側には当該契約を履行する義務が生じているため、有償の演出に係る発生要求は確実にVRコンテンツに反映されるようにする必要がある。対して、無償の演出の提示は特段の契約なしに受け付け可能に構成されるものであるため、必ずしもVRコンテンツに反映されなくともよい。特に、同時期に発生要求が集中した場合に、これらを処理する構成部105の演算負荷が高くなり、結果、処理遅延や必要情報の伝送遅延が発生し得る。また付加情報の情報量が増大した場合に、必要情報としてこれを取得したクライアント装置400等において画面描画に係る演算負荷が増大し、好適な観賞体験が担保されない可能性がある。
【0083】
故に一態様では、親サーバ210への付加情報の送信は有償の演出に関連するものに限定して行われるものとしてもよい。このとき、無償の演出については、少なくとも同一の子サーバ230に接続中のクライアント装置400において観賞可能に制御されてもよい。即ち、無償の演出に関連する付加情報については、その発生要求を送信したクライアント装置400が接続中の子サーバ230に送信されて配信用の領域に直接格納されるようにすることで、構成部105やクライアント装置400における処理負荷を分散することができる。このような制御は、例えば第1管理装置の要求DBと第2管理装置の要求DBに蓄積されている未反映の発生要求が閾値を上回る場合に、適応的に行われるように構成されてもよい。
【0084】
この他、VRコンテンツへの反映優先度を異ならせる制御は、例えば読出部104による読み出し頻度や送信部106による付加情報の送信頻度を、演出種類に応じて異ならせることにより実現されてもよい。例えば、有償の演出と無償の演出に付加的な演出が分類される場合、有償の演出に係る付加情報が第1管理装置から親サーバ210に送信される頻度が、無償の演出に係る付加情報が第2管理装置から親サーバ210に送信される頻度よりも高くなるよう制御すればよい。
【0085】
なお、実施形態2及び本変形例では、発生要求の管理やVRコンテンツへの反映を異ならせる演出種類として「有償の演出」と「無償の演出」を例示して説明したが、本発明の実施がこれに限られるものでないことは理解されよう。演出種類は、反映に優先度を設ける別の概念について設けられるものであってよいし、その種類も2種類に限定されるものではない。
【0086】
[その他の実施形態]
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0087】
100:管理装置、101:制御部、102:要求受信部、103:要求DB、104:読出部、105:構成部、106:送信部、200:配信サーバ群、210:親サーバ、211:制御部、212:記憶装置、213:メモリ、214:通信I/F、220:リレーサーバ、230:子サーバ、231:制御部、232:記憶装置、233:メモリ、234:通信I/F、300:演者端末、301:制御部、302:記憶装置、303:メモリ、304:描画装置、305:入力I/F、306:出力I/F、310:入力装置、320:モーションキャプチャシステム、330:マイク、340:表示装置、350:スピーカ、307:通信I/F、400:クライアント装置、401:制御部、402:記憶装置、403:メモリ、404:描画装置、405:入力I/F、406:出力I/F、407:通信I/F、410:入力装置、420:表示装置、421:姿勢センサ、422:スピーカ、500:ネットワーク