(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003097
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】エネルギ利用システム、および、炭素含有物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20241226BHJP
C25B 9/015 20210101ALI20241226BHJP
C25B 11/052 20210101ALI20241226BHJP
C25B 11/032 20210101ALI20241226BHJP
C25B 1/23 20210101ALI20241226BHJP
H02J 15/00 20060101ALI20241226BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
C25B9/00 Z
C25B9/015
C25B11/052
C25B11/032
C25B1/23
H02J15/00 H
H02J3/38 120
H02J3/38 170
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103581
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】後藤 琢也
(72)【発明者】
【氏名】石川 正道
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 崇
(72)【発明者】
【氏名】菊池 芳正
(72)【発明者】
【氏名】古庄 和宏
(72)【発明者】
【氏名】武田 信明
(72)【発明者】
【氏名】岸川 洋介
(72)【発明者】
【氏名】山内 昭佳
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 智弘
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
5G066
【Fターム(参考)】
4K011AA12
4K011AA20
4K011AA29
4K021AB25
4K021CA01
4K021CA12
4K021CA15
4K021DA05
5G066HB06
5G066HB07
5G066JB06
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素の排出を抑制しながら二酸化炭素を削減して炭素含有物を得ることが可能なエネルギ利用システム、および、炭素含有物の製造方法を提供する。
【解決手段】再生可能エネルギまたは排熱により得られるエネルギを利用して熱媒体の温度を調整する高温利用熱交換部(36)を有し、熱媒体が循環する熱利用サイクル(30)と、二酸化炭素が溶解した電解液を電解還元する電解還元装置(70)と、を備えたエネルギ利用システム(1)であって、電解還元装置(70)は、熱媒体と熱的に接触することで温度が調整された電解液を電解還元し、電解還元装置(70)は、第1方向に延びた筒状の電解槽ケーシング(79)と、電解槽ケーシング(79)内部に設けられ、第1方向に延びたアノード(71)と、第1方向視において電解槽ケーシング(79)内部であってアノード(71)の外側に位置しており、第1方向に延びた筒状のカソード(72)と、電解液をアノード(71)とカソード(72)の間で第1方向に流す電解液流路(73)と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギまたは排熱により得られるエネルギを利用して熱媒体の温度を調整する温度調整部(36)を有し、前記熱媒体が循環する循環回路(30)と、二酸化炭素が溶解した電解液を電解還元する電解還元装置(70)と、を備えたエネルギ利用システム(1)であって、
前記電解還元装置は、前記熱媒体と熱的に接触することで温度が調整された前記電解液を電解還元し、
前記電解還元装置は、
第1方向に延びた筒状のケーシング(79)と、
前記ケーシング内部に設けられ、前記第1方向に延びた第1電極(71)と、
前記第1方向視において前記ケーシング内部であって前記第1電極の外側に位置しており、前記第1方向に延びた筒状の第2電極(72)と、
前記電解液を前記第1電極と前記第2電極の間で前記第1方向に流す電解液流路(73)と、
を有する、
エネルギ利用システム。
【請求項2】
前記第1電極は、アノードであり、
前記第2電極は、カソードである、
請求項1に記載のエネルギ利用システム。
【請求項3】
前記アノードは、前記第1方向に延びた筒状であり、
前記電解還元装置は、前記第1方向視において前記アノードの内側に設けられ、前記電解液の酸化反応により生じるガスを通過させる第1ガス流路(71x)を有する、
請求項2に記載のエネルギ利用システム。
【請求項4】
前記アノードは、前記第1方向に延びた筒状のアノード触媒層(71a)と、前記第1方向視において前記アノード触媒層の内側であって前記第1ガス流路の外側に設けられており前記第1方向に延びた筒状のアノードガス拡散層(71b)と、を有する、
請求項3に記載のエネルギ利用システム。
【請求項5】
前記電解還元装置は、前記第1方向視において前記カソードの外側であって前記ケーシングの内側に設けられ、前記電解液の還元反応により生じるガスを通過させる第2ガス流路(72x)を有する、
請求項2または3に記載のエネルギ利用システム。
【請求項6】
前記カソードは、前記第1方向に延びた筒状のカソード触媒層(72a)と、前記第1方向視において前記カソード触媒層の外側であって前記第2ガス流路の内側に設けられており前記第1方向に延びた筒状のカソードガス拡散層(72b)と、を有する、
請求項5に記載のエネルギ利用システム。
【請求項7】
前記再生可能エネルギにより発電された電力を利用して駆動され、第1冷媒が循環するヒートポンプ(10)をさらに備え、
前記温度調整部は、前記ヒートポンプにより温度が調整された前記第1冷媒の熱によって、前記熱媒体の温度を調整する、
請求項1または2に記載のエネルギ利用システム。
【請求項8】
前記熱媒体の熱を利用して発電するヒートエンジン(20)を備え、
前記電解還元装置は、前記ヒートエンジンにより発電された電力を利用して前記電解液に電圧を印加する、
請求項1または2に記載のエネルギ利用システム。
【請求項9】
前記循環回路は、前記熱媒体の熱を貯蔵エネルギとして貯蔵する貯蔵部(37)を有する、
請求項1または2に記載のエネルギ利用システム。
【請求項10】
循環回路(30)を循環する熱媒体の温度を、再生可能エネルギまたは排熱により得られるエネルギを利用して調整する工程と、
二酸化炭素が溶解した電解液の温度を、前記熱媒体と熱的に接触させることで調整する工程と、
温度調整された前記電解液を電解還元する工程と、
を備え、
前記電解還元する工程では、第1方向に延びた第1電極(71)と、前記第1方向視において前記第1電極を周囲から覆うように前記第1方向に延びた筒状の第2電極(72)と、の間を、前記電解液が前記第1方向に流れる、
炭素含有物の製造方法。
【請求項11】
前記第1電極は、アノードであり、
前記第2電極は、カソードである、
請求項10に記載の炭素含有物の製造方法。
【請求項12】
前記熱媒体の温度は、第1冷媒が循環するヒートポンプ(10)を用いて、前記第1冷媒の熱によって調整され、
前記ヒートポンプは、前記再生可能エネルギにより発電された電力を利用して駆動される、
請求項10または11に記載の炭素含有物の製造方法。
【請求項13】
前記熱媒体の熱を利用してヒートエンジン(20)において発電する工程をさらに備え、
前記電解還元する工程では、前記ヒートエンジンにより発電された電力を利用して前記電解液に電圧を印加する、
請求項10または11に記載の炭素含有物の製造方法。
【請求項14】
前記循環回路は、前記熱媒体の熱を貯蔵エネルギとして貯蔵する貯蔵部(37)を有する、
請求項13に記載の炭素含有物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エネルギ利用システム、および、炭素含有物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策として二酸化炭素等を削減する観点から、二酸化炭素を還元することにより炭素化合物等を得て再利用を図るカーボンリサイクルに係る技術の開発が進んでいる。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2016-89230号公報)によれば、反応容器を密閉した状態として二酸化炭素を電解還元することにより炭素材料を製造することが提案されている。また、例えば、特許文献2(特開2023-15104号公報)によれば、同じく二酸化炭素を電解還元することにより一酸化炭素及び各種有機化合物(炭化水素、エーテル、環状エーテル、アルコール、又はカルボニル化合物)を製造することが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、二酸化炭素の削減を目的として二酸化炭素から炭素含有物を製造するため、二酸化炭素の増大を招くようなエネルギの使用を抑制させつつ、二酸化炭素を効率的に電解還元することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1観点に係るエネルギ利用システムは、循環回路と、電解還元装置と、を備えている。循環回路は、温度調整部を有している。循環回路は、熱媒体が循環する。温度調整部は、再生可能エネルギまたは排熱により得られるエネルギを利用して熱媒体の温度を調整する。電解還元装置は、二酸化炭素が溶解した電解液を電解還元する。電解還元装置は、熱媒体と熱的に接触することで温度が調整された電解液を電解還元する。電解還元装置は、ケーシングと、第1電極と、第2電極と、電解液流路と、を有する。ケーシングは、筒状であり、第1方向に延びている。第1電極は、ケーシング内部に設けられ、第1方向に延びている。第2電極は、筒状であり、第1方向に延びている。第2電極は、第1方向視においてケーシング内部であって第1電極の外側に位置している。電解液流路は、電解液を第1電極と第2電極の間で第1方向に流す。
【0006】
ここで、再生可能エネルギとしては、例えば、太陽光発電、風力発電、水力発電、バイオマス発電、地熱発電、潮汐発電、水素燃焼発電、および、アンモニア燃焼発電からなる群より選択される1種または2種以上により得られるエネルギであってよい。この再生可能エネルギは、電力会社が運用する主要な電力ネットワークを経て供給される電力等のようなエネルギと比較して、時間帯等に応じて得られるエネルギ量が一定でない不安定なものであってよい。
【0007】
ここで、排熱は、特に限定されず、例えば、火力発電所、原子力発電所、化学工場、精錬所、清掃工場、地熱、温泉水等において排出される熱を挙げることができる。
【0008】
このエネルギ利用システムによれば、再生可能エネルギまたは排熱により得られるエネルギを利用して、熱媒体の温度を調整する。そして、温度調整された熱媒体は、循環回路を循環して、電解液と熱的に接触することで、二酸化炭素が溶解した電解液の温度を調整する。このため、電解液の還元効率が高まる。しかも、電解還元装置の電解液流路では、電解液が、第1電極と第2電極の間を第1方向に流れる。このため、第1電極と第2電極の間に対する電解液の供給を続けながら、電解液の電解還元を行うことが可能になる。したがって、第1電極と第2電極の近傍における電解液中の二酸化炭素または炭酸イオンの濃度を高く維持させやすい点においても、電解液の還元効率を高めることが可能になる。さらに、二酸化炭素の電解還元において、再生可能エネルギまたは排熱により得られるエネルギを利用して温度調整された熱媒体を用いて電解液の温度を調整できるため、二酸化炭素の削減を、二酸化炭素の排出を抑制しながら行うことが可能になる。
【0009】
第2観点に係るエネルギ利用システムは、第1観点に係るエネルギ利用システムにおいて、第1電極は、アノードである。第2電極は、カソードである。
【0010】
このエネルギ利用システムでは、第1方向視においてアノードよりも外側に設けられたカソードにおいて二酸化炭素を還元することができる。このため、カソードがアノードの内側に設けられている場合と比べて、カソードがアノードの外側に設けられている方が、カソードの表面積をより大きく確保することができ、二酸化炭素の還元を効率的に行うことが可能になる。
【0011】
第3観点に係るエネルギ利用システムは、第2観点に係るエネルギ利用システムにおいて、アノードは、第1方向に延びた筒状である。電解還元装置は、第1ガス流路を有する。第1ガス流路は、第1方向視においてアノードの内側に設けられ、電解液の酸化反応により生じるガスを通過させる。
【0012】
このエネルギ利用システムでは、電解液の酸化反応で生じたガスがその場で滞留することが抑制され、第1方向に送られるため、アノードにおける酸化反応の効率を高めることが可能になる。
【0013】
第4観点に係るエネルギ利用システムは、第3観点に係るエネルギ利用システムにおいて、アノードは、アノード触媒層と、アノードガス拡散層と、を有する。アノード触媒層は、筒状であり、第1方向に延びている。アノードガス拡散層は、第1方向視においてアノード触媒層の内側であって第1ガス流路の外側に設けられている。アノードガス拡散層は、筒状であり、第1方向に延びている。
【0014】
このエネルギ利用システムでは、アノードにおける酸化反応を効率的に行うことが可能となる。
【0015】
第5観点に係るエネルギ利用システムは、第2観点から第4観点のいずれかに係るエネルギ利用システムにおいて、電解還元装置は、第2ガス流路を有する。第2ガス流路は、第1方向視においてカソードの外側であってケーシングの内側に設けられ、電解液の還元反応により生じるガスを通過させる。
【0016】
このエネルギ利用システムでは、電解液の還元反応で生じたガスがその場で滞留することが抑制され、第1方向に送られるため、カソードにおける還元反応の効率を高めることが可能になる。
【0017】
第6観点に係るエネルギ利用システムは、第5観点に係るエネルギ利用システムにおいて、カソードは、カソード触媒層と、カソードガス拡散層と、を有する。カソード触媒層は、筒状であり、第1方向に延びている。カソードガス拡散層は、筒状であり、第1方向に延びている。カソードガス拡散層は、第1方向視においてカソード触媒層の外側であって第2ガス流路の内側に設けられている。
【0018】
このエネルギ利用システムでは、カソードにおける還元反応を効率的に行うことが可能となる。
【0019】
第7観点に係るエネルギ利用システムは、第1観点から第6観点のいずれかに係るエネルギ利用システムにおいて、ヒートポンプをさらに備える。ヒートポンプは、再生可能エネルギにより発電された電力を利用して駆動される。ヒートポンプは、第1冷媒が循環する。温度調整部は、ヒートポンプにより温度調整された第1冷媒の熱によって、熱媒体の温度を調整する。
【0020】
このエネルギ利用システムでは、再生可能エネルギにより発電された電力を利用してヒートポンプを駆動させるため、ヒートポンプを駆動させることに伴う環境負荷を低減させることができる。
【0021】
第8観点に係るエネルギ利用システムは、第1観点から第7観点のいずれかに係るエネルギ利用システムにおいて、ヒートエンジンを備える。ヒートエンジンは、熱媒体の熱を利用して発電する。電解還元装置は、ヒートエンジンにより発電された電力を利用して電解液に電圧を印加する。
【0022】
このエネルギ利用システムでは、熱媒体の熱のうち電解液の温度調整に用いられなかった熱を利用して発電して得られる電圧を、電解還元に用いることが可能になる。
【0023】
第9観点に係るエネルギ利用システムは、第1観点から第8観点のいずれかに係るエネルギ利用システムにおいて、循環回路は、貯蔵部を有する。貯蔵部は、熱媒体の熱を貯蔵エネルギとして貯蔵する。
【0024】
このエネルギ利用システムでは、再生可能エネルギまたは排熱の供給が不安定なことがあっても、熱媒体の熱を貯蔵エネルギとして貯蔵することで、不安定さを緩和させることが可能になる。
【0025】
なお、再生可能エネルギまたは排熱により得られるエネルギが不安定になることで循環回路を流れる熱媒体の温度が変動することがあっても、その温度変動を平準化させて、高品質な熱エネルギを利用することが可能となる。このため、電解還元される電解液の温度を、電解還元を効率的に進めることが可能な温度に調整することが可能になる。
【0026】
第10観点に係る炭素含有物の製造方法は、循環回路を循環する熱媒体の温度を、再生可能エネルギまたは排熱により得られるエネルギを利用して調整する工程と、電解液の温度を調整する工程と、温度調整された電解液を電解還元する工程と、を備える。温度調整される電解液は、二酸化炭素が溶解した電解液である。電解液は、熱媒体と熱的に接触されることで温度調整される。電解還元する工程では、第1方向に延びた第1電極と、第1方向視において第1電極を周囲から覆うように第1方向に延びた筒状の第2電極と、の間を、電解液が第1方向に流れる。
【0027】
ここで、再生可能エネルギとしては、例えば、太陽光発電、風力発電、水力発電、バイオマス発電、地熱発電、潮汐発電、水素燃焼発電、および、アンモニア燃焼発電からなる群より選択される1種または2種以上により得られるエネルギであってよい。この再生可能エネルギは、電力会社が運用する主要な電力ネットワークを経て供給される電力等のようなエネルギと比較して、時間帯等に応じて得られるエネルギ量が一定でない不安定なものであってよい。
【0028】
ここで、排熱は、特に限定されず、例えば、火力発電所、原子力発電所、化学工場、精錬所、清掃工場、地熱、温泉水等において排出される熱を挙げることができる。
【0029】
この炭素含有物の製造方法では、再生可能エネルギまたは排熱により得られるエネルギを利用して、熱媒体の温度を調整する。そして、温度調整された熱媒体は、循環回路を循環して、電解液と熱的に接触することで、二酸化炭素が溶解した電解液の温度を調整する。このため、電解液の還元効率が高まる。しかも、電解還元は、電解液を、第1電極と第2電極の間を第1方向に流しながら行われる。このため、第1電極と第2電極の間に対する電解液の供給を続けながら、電解液の電解還元を行うことが可能になる。したがって、第1電極と第2電極の近傍における電解液中の二酸化炭素または炭酸イオンの濃度を高く維持させやすい点においても、電解液の還元効率を高めることが可能になる。さらに、二酸化炭素の電解還元において、再生可能エネルギまたは排熱により得られるエネルギを利用して温度調整された熱媒体を用いて電解液の温度が調整されるため、二酸化炭素の削減を、二酸化炭素の排出を抑制しながら行うことが可能になる。
【0030】
第11観点に係る炭素含有物の製造方法は、第10観点に係る炭素含有物の製造方法において、第1電極は、アノードである。第2電極は、カソードである。
【0031】
この炭素含有物の製造方法では、第1方向視においてアノードよりも外側に設けられたカソードにおいて二酸化炭素を還元することができる。このため、カソードがアノードの内側に設けられている場合と比べて、カソードがアノードの外側に設けられている方が、カソードの表面積をより大きく確保することができ、二酸化炭素の還元を効率的に行うことが可能になる。
【0032】
第12観点に係る炭素含有物の製造方法は、第10観点または第11観点に係る炭素含有物の製造方法において、熱媒体の温度は、第1冷媒が循環するヒートポンプを用いて、第1冷媒の熱によって調整される。ヒートポンプは、再生可能エネルギにより発電された電力を利用して駆動される。
【0033】
この炭素含有物の製造方法では、再生可能エネルギにより発電された電力を利用してヒートポンプを駆動させるため、ヒートポンプを駆動させることに伴う環境負荷を低減させることができる。
【0034】
第13観点に係る炭素含有物の製造方法は、第10観点から第12観点のいずれかに係る炭素含有物の製造方法において、熱媒体の熱を利用してヒートエンジンにおいて発電する工程をさらに備える。電解還元する工程では、ヒートエンジンにより発電された電力を利用して電解液に電圧を印加する。
【0035】
この炭素含有物の製造方法では、熱媒体の熱のうち電解液の温度調整に用いられなかった熱を利用して発電して得られる電力を、電解還元に用いることが可能になる。
【0036】
第14観点に係る炭素含有物の製造方法は、第13観点に係る炭素含有物の製造方法において、循環回路は、前記熱媒体の熱を貯蔵エネルギとして貯蔵する貯蔵部を有する。
【0037】
この炭素含有物の製造方法では、再生可能エネルギまたは排熱の供給が不安定なことがあっても、熱媒体の熱を貯蔵エネルギとして貯蔵することで、不安定さを緩和させることが可能になる。
【0038】
なお、再生可能エネルギまたは排熱により得られるエネルギが不安定になることで循環回路を流れる熱媒体の温度が変動することがあっても、その温度変動を平準化させて、高品質な熱エネルギを利用することが可能となる。このため、電解還元される電解液の温度を、電解還元を効率的に進めることが可能な温度に調整することが可能になる。
【0039】
付記1に係る電解還元装置は、二酸化炭素が溶解した電解液の電解還元を行う電解還元装置であって、第1方向に延びた筒状のケーシングと、ケーシング内部に設けられ、第1方向に延びたアノードと、第1方向視においてケーシング内部であってアノードの外側に位置しており、第1方向に延びた筒状のカソードと、電解液をアノードとカソードの間で第1方向に流す電解液流路と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】第1実施形態に係るエネルギ利用システムの概略構成図である。
【
図3】電解還元装置の長手方向視における部分断面図である。
【
図4】マイクログリッドシステムで用いられるネットワークの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本実施形態に係るエネルギ利用システムおよび材料の製造方法について、例を挙げつつ説明する。
【0042】
(1)第1実施形態
エネルギ利用システム1は、再生可能エネルギを利用して、熱エネルギと電力と炭素含有物を得てこれらを活用するシステムであって、
図1に示すように、ヒートポンプ10と、ヒートエンジン20と、熱利用サイクル30と、二酸化炭素処理装置40と、を備えている。
【0043】
(1-1)ヒートポンプ
ヒートポンプ10は、第1冷媒が充填された第1冷媒回路11を備えている。第1冷媒としては、例えば、R1233zd(E)、R1234yf、R1234ze(E)、R1234ze(Z)、R134a、R32、R410a、R245fa、水、二酸化炭素等を用いることができる。これらの第1冷媒によれば、熱媒体を200℃未満の温度領域まで加熱する際のヒートポンプ10の駆動を効率化させることが可能となる。第1冷媒回路11は、第1圧縮機12と、第1高温熱交換器13と、膨張弁15と、第1低温熱交換器16と、第1中間熱交換器14と、を有している。
【0044】
第1圧縮機12は、再生可能エネルギ供給部91を介して供給される再生可能エネルギが動力源として用いられる。なお、ヒートポンプ10の駆動制御には、再生可能エネルギ供給部91を介して供給される再生可能エネルギのみが動力源として用いられてもよいし、当該再生可能エネルギと電力会社から供給される電力との両方が駆動源として用いられてもよい。なお、再生可能エネルギと電力会社から供給される電力との両方が用いられる場合には、再生可能エネルギの電力の方が、電力会社から供給される電力よりも多く用いられることが好ましい。
【0045】
再生可能エネルギは、例えば、太陽光発電、風力発電、水力発電、バイオマス発電、地熱発電、潮汐発電、水素燃焼発電、アンモニア燃焼発電等により得られるエネルギであり、なかでも、比較的定常的に発電を行うことが可能であり、排出される二酸化炭素の量も抑制される観点から、太陽光発電、風力発電、地熱発電が好ましい。
【0046】
第1高温熱交換器13は、第1高温熱交換器13を流れる第1冷媒と、熱利用サイクル30の高温利用熱交換部36を流れる第1熱媒体と、の間で互いに混ざり合うことなく熱交換を行わせることで、第1熱媒体を加熱し、第1冷媒を冷却させる。第1高温熱交換器13を通過した第1冷媒は、第1中間熱交換部14aに送られ、第1中間熱交換器14を流れる第1冷媒と、互いに混ざり合うことなく熱交換される。第1中間熱交換部14aを通過した第1冷媒は、膨張弁15において減圧され、第1低温熱交換器16に送られる。
【0047】
第1低温熱交換器16では、第1低温熱交換器16を流れる第1冷媒と、排熱供給部92を流れる排ガスと、の間で熱交換を行わせ、第1冷媒を加熱し、排ガスを冷却させる。なお、排熱供給部92は、工場等で用いられた燃焼ガス等の80℃以上120℃以下の高温で二酸化炭素を多く含む排ガスが用いられてもよい。なお、排熱供給部92に対する排熱の熱エネルギ供給量は、図示しない排ガス輸送手段により調節される。
【0048】
第1低温熱交換器16を通過した第1冷媒は、第1中間熱交換器14に送られる。第1中間熱交換器14では、上述の通り、第1中間熱交換器14を流れる第1冷媒が、第1中間熱交換部14aを流れる第1冷媒により加熱される。第1中間熱交換器14を通過した第1冷媒は、第1圧縮機12に吸入される。
【0049】
(1-2)ヒートエンジン
ヒートエンジン20は、第2冷媒が充填された第2冷媒回路21を備えている。第2冷媒としては、例えば、R1233zd(E)、R1234yf、R1234ze(E)、R1234ze(Z)、R134a、R32、R410a、R245fa、水、二酸化炭素等を用いることができる。
【0050】
第2冷媒回路21は、第2ポンプ22と、第2高温熱交換部23と、膨張機24と、第2低温熱交換器26と、第2中間熱交換器28と、を有している。
【0051】
第2ポンプ22は、第2冷媒回路21における第2冷媒の流れを形成する。第2ポンプ22から流れ出た第2冷媒は、第2中間熱交換部28aを介して、第2高温熱交換部23に送られる。
【0052】
第2高温熱交換部23は、第2高温熱交換部23を流れる第2冷媒と、熱利用サイクル30の低温利用熱交換器34を流れる第1熱媒体と、の間で互いに混ざり合うことなく熱交換を行わせることで、第2冷媒を加熱し、第1熱媒体を冷却させる。第2高温熱交換部23を通過した第2冷媒は、膨張機24に送られる。膨張機24に送られた第2冷媒は、減圧され、第2中間熱交換器28に送られる。なお、膨張機24は、第2冷媒を減圧する際に回収されるエネルギを用いて発電を行う。この膨張機24で発電された電力は、ヒートポンプ10の第1圧縮機12の動力源、電解還元装置70で印加する電圧のための電源等として用いることができる。
【0053】
第2中間熱交換器28では、第2中間熱交換器28を流れる第2冷媒と、第2ポンプ22から第2高温熱交換部23に向かう第2中間熱交換部28aを流れる第2冷媒と、の間で互いに混ざり合わせることなく熱交換を行わせる。第2低温熱交換器26は、第2低温熱交換器26を流れる第2冷媒と、第2冷媒冷却部93を介して屋外から供給される空気と、の間で熱交換を行わせる。第2低温熱交換器26を通過した第2冷媒は、第2ポンプ22に送られる。
【0054】
(1-3)熱利用サイクル
熱利用サイクル30は、熱媒体が充填された熱利用回路31を備えている。当該熱媒体としては、高温の熱エネルギの貯蔵を可能とする観点から、例えば、砂または岩石と空気とを含む混合流体、水、サーマルオイル、イオン液体、溶融塩等の潜熱蓄熱材等を用いることができる。熱利用回路31は、熱媒体ポンプ32と、電解還元温調部33と、低温利用熱交換器34と、加圧ライン38と、低温タンク35と、高温利用熱交換部36と、高温タンク37と、を有している。
【0055】
熱媒体ポンプ32は、熱媒体を熱利用サイクル30に循環させる流れを生じさせる。熱媒体ポンプ32を通過した熱媒体は、電解還元温調部33に送られる。電解還元温調部33は、後述の電解還元装置70の恒温容器70x内の恒温槽33xを通過する。恒温槽33xは、熱保持媒体で満たされている。熱媒体は、恒温槽33xの熱保持媒体を加熱する。熱保持媒体は、電解槽ケーシング79内の電解液を加熱する。電解還元温調部33に送られた熱媒体は、電解還元装置70において電解還元される電解液を加熱等して、電解液の温度を調整する。
【0056】
電解還元温調部33を通過した熱媒体は、低温利用熱交換器34に送られる。なお、電解還元温調部33と低温利用熱交換器34との間には、当該熱媒体を熱利用回路31内に加圧注入させる加圧ライン38が接続されている。加圧ライン38には、開閉制御可能な開閉弁38aが設けられている。加圧ライン38によって熱利用回路31内を循環する熱媒体が加圧されることにより、高温下においても熱媒体が気化することが抑制される。例えば、熱媒体として水を用いる場合においては、100℃を超えても気化することが抑制される。
【0057】
低温利用熱交換器34は、低温利用熱交換器34を流れる熱媒体と、ヒートエンジン20の第2高温熱交換部23を流れる第2冷媒と、の間で互いに混ざり合うことなく熱交換を行わせることで、第2冷媒を加熱し、熱媒体を冷却する。低温利用熱交換器34を通過した熱媒体は、低温タンク35に送られる。低温タンク35に貯留される熱媒体の温度は、例えば、80℃以上120℃以下であり、90℃以上110℃以下であってもよい。低温タンク35を通過した熱媒体は、高温利用熱交換部36に送られる。
【0058】
高温利用熱交換部36を流れる熱媒体は、ヒートポンプ10の第1高温熱交換器13を流れる第1冷媒との間で互いに混ざり合うことなく熱交換し、加熱される。高温利用熱交換部36を通過した熱媒体は、高温タンク37に送られる。高温タンク37に貯留される熱媒体の温度は、例えば、120℃以上150℃以下であり、130℃以上140℃以下であってもよい。高温タンク37を通過した熱媒体は、熱媒体ポンプ32に送られる。
【0059】
なお、低温タンク35と高温タンク37とは、いずれも断熱材によって周囲から覆われていることが好ましい。
【0060】
(1-4)二酸化炭素処理装置
二酸化炭素処理装置40は、
図2に示すように、二酸化炭素を電解質に溶解させ、回収しつつ、熱利用サイクル30を循環する熱媒体により電解液を加熱して適温とし、電解還元を行うことで、炭素含有物を得るための装置である。
【0061】
この二酸化炭素処理装置40は、二酸化炭素回収装置50と、電解還元装置70と、電解液ポンプ42と、電解液熱交換器43と、を有し、電解液が循環する電解液回路41を備えている。
【0062】
電解液ポンプ42は、電解液を取り込んで送り出すことで、電解液回路41内において電解液を循環させる。電解液ポンプ42から流れ出た電解液は、電解液熱交換器43において、外部の冷却源から電解液冷却部94に供給される水や空気等の冷却媒体と熱交換を行うことで冷却される。電解液冷却部94に供給される冷却媒体の温度としては、例えば、15℃以上35℃以下であってよく、20℃以上30℃以下であることが好ましい。冷却された電解液は、二酸化炭素回収装置50に送られる。二酸化炭素回収装置50に送られる電解液が十分に冷却されているために、二酸化炭素回収装置50において回収された二酸化炭素は、電解液に溶け込みやすくなっている。二酸化炭素回収装置50において二酸化炭素が溶け込んだ電解液は、電解還元装置70に送られる。電解還元装置70に送られた電解液に含まれる二酸化炭素は、電解還元されることにより、炭素含有物となる。
【0063】
なお、電解液としては、電解還元により得ようとする炭素含有物の種類に応じたものを用いることができ、例えば、イミダゾリウム系イオン液体、芳香族系イオン液体、ピロリジニウム系イオン液体、アンモニウム系イオン液体、ピペリジニウム系イオン液体、および、四級ホスホニウム系イオン液体からなる群より選択される1種または2種以上とすることができる。なお、電解液としては、二酸化炭素の溶解度が高く、粘度の低いイオン液体、もしくは支持電解質や塩基性触媒等の添加物を含有した水溶液等を添加したイオン液体溶液を好ましく用いることができる。また、電解液としては、二酸化炭素および水の電解反応に対して電気化学窓が十分広いものを好ましく用いることができる。
このような好ましい電解液を構成するイオン液体としては、例えば、[BuMePyrr][TFO]、[BMIm][TFO]、[DEME][BF4]、[P2225][TFSI]、[BMIM][BF4]、[BMIM][TFSI]、[PP13][TFSI]等が挙げられる。また、支持電解質としては、例えば、MCl、M2CO3、MHCO3、MBF4、MPF6、MClO4、MAsF6、MTf、MTFSI、M(CF3SO2)2N、MHPO4(M=Li、Na、K、Rb、Cs)等が挙げられる。また、塩基性触媒としては、LiOH、NaOH、KOH、CsOH、Ca(OH)2等が挙げられる。なお、このような電解液によれば、室温で作動させることが可能であるだけでなく、効率を高めるために80℃以上150℃以下の高温環境下で作動させることも可能である点で好ましい。また、このような電解液は、二酸化炭素の吸収能が高く、二酸化炭素の回収と分解を連続的に行うことが可能になる点で好ましい。さらに、このような電解液は、室温にて液状であり、蒸気圧が比較的低いことから、運転時の電解液の蒸発による散逸、減少が少なく、装置外部に送り出される空気に水蒸気以外の電解液由来の化学物質が実質的に含まれない点においても好ましい。
【0064】
(1-4-1)二酸化炭素回収装置
二酸化炭素回収装置50は、二酸化炭素供給ライン81を介して外部から供給される二酸化炭素を回収し、電解液に溶解させる装置である。二酸化炭素供給ライン81は、工場等で用いられた燃焼ガス等の二酸化炭素を多く含む排ガスを対象として、二酸化炭素の回収を行うための流路である。なお、本実施形態においては、二酸化炭素供給ライン81では、二酸化炭素だけでなく、さらに水分を含んだ気体が流れ、当該気体が二酸化炭素回収装置50に供給される。この場合、当該気体は、低濃度の二酸化炭素を含む環境大気であって良い。なお、二酸化炭素供給ライン81に対する二酸化炭素の供給量は、図示しない二酸化炭素輸送手段により調節される。
【0065】
二酸化炭素回収装置50は、電解液が通過する複数の吸収流路51と、二酸化炭素供給ライン81から供給される二酸化炭素が通過する複数の二酸化炭素流路52と、各吸収流路51と各二酸化炭素流路52の間に設けられた中空糸膜53と、を有している。
【0066】
二酸化炭素回収装置50において、吸収流路51を電解液が流れる方向と、二酸化炭素流路52を二酸化炭素が流れる方向とは、互いに対向するように構成されている。これにより、吸収流路51を電解液は、吸収流路51を進むにつれて、中空糸膜53を通過した二酸化炭素を多く取り込むことができる。なお、二酸化炭素を含んだ電解液としては、二酸化炭素ガスが溶け込んだ電解液であってもよいし、炭酸イオンもしくは炭酸水素イオンを有する電解液であってもよいし、二酸化炭素ガスが溶け込みつつ炭酸イオンもしくは炭酸水素イオンを有する電解液であってもよい。
【0067】
二酸化炭素を多く取り込んだ電解液は、電解液回路41を流れて、電解還元装置70に供給される。なお、二酸化炭素流路52の下流側は、二酸化炭素濃度が低減したクリーンな空気が、空気流出ライン82においてまとめられ、二酸化炭素回収装置50の外部に送り出される。
【0068】
(1-4-2)電解還元装置
電解還元装置70は、電解還元装置70は、二酸化炭素を含む電解液を電解還元することにより、炭素含有物を得る装置である。なお、本実施形態の電解還元装置70では、固体電解質膜を用いないものであることが好ましい。
【0069】
電解還元装置70は、
図2および
図2におけるSS断面の断面図である
図3に示すように、電解槽ケーシング79と、恒温槽33xと、恒温容器70xと、アノード71と、カソード72と、電解液流路73と、第1回収路83と、第2回収路84と、を有している。
【0070】
電解槽ケーシング79は、二酸化炭素を含む電解液が通過する。電解槽ケーシング79は、電解液の通過方向が長手方向であって軸方向となる略円筒形状に構成されている。電解槽ケーシング79の内部は、二酸化炭素回収装置50を流れ出た電解液が供給される上流領域77と、電解還元された後の電解液が電解槽ケーシング79から流出する前に通過する下流領域78と、を有している。
【0071】
恒温容器70xは、電解槽ケーシング79と恒温槽33xと熱利用サイクル30における電解還元温調部33とを内部に収容する容器である。恒温槽33xは、恒温容器70xの内部であって電解槽ケーシング79の外部を熱保持媒体で満たさすことで構成されている。熱保持媒体は、特に限定されるものではなく、水や金属等であってもよい。恒温槽33xの熱保持媒体は、熱利用サイクル30における電解還元温調部33を流れる熱媒体と熱交換することにより加熱される。この加熱された熱保持媒体は、電解槽ケーシング79と熱的に接触することにより、電解槽ケーシング79内部の電解液を加熱する。これにより、電解液の温度が、電解還元を効率的に行うことが可能な温度に調節される。
【0072】
アノード71は、電解槽ケーシング79の内部において、電解槽ケーシング79の長手方向視における中央近傍に設けられている。アノード71は、電解槽ケーシング79における上流領域77と下流領域78との間において、電解槽ケーシング79の長手方向に沿うように延びている。電解槽ケーシング79の長手方向視において、アノード71の径方向内側には、アノード回収路71xが設けられている。アノード71は、アノード回収路71xの径方向外側に円筒形状となるように設けられたアノードガス拡散層71bと、アノードガス拡散層71bの径方向外側に円筒形状となるように設けられたアノード触媒層71aと、を有している。アノード回収路71xとアノードガス拡散層71bとアノード触媒層71aは、いずれも電解槽ケーシング79の長手方向に沿うように延びている。アノード回収路71xは、電解液流路73の一部とカソード72の一部を径方向に貫通しつつ、さらに、電解槽ケーシング79の枠部分も径方向に貫通するように径方向外側に延びた部分を有することで、アノード連絡部71cと接続されている。アノード連絡部71cは、第1回収路83が接続されている。なお、アノード連絡部71cの位置は、特に限定されないが、例えば、電解槽ケーシング79における上流側に位置していてよい。
【0073】
なお、アノード71では、下記式(1)に示すように、水の酸化反応が起こり、酸素と水素イオンが生成される。
2H2O→4H++O2+4e-・・・(1)
【0074】
アノード触媒層71aとしては、高い電流密度で酸化反応物を生成し、酸化反応に対して安定であり、表面積を大きく確保しやすい観点から、銀微粒子、白金メッシュ、多孔質ニッケル、カーボンフェルト等を好ましく用いることができる。
【0075】
アノードガス拡散層71bとしては、触媒層と高強度で接合し、導電性が高く、粒子が小さくて均一であり等方性に優れる観点から、グラファイト等を好ましく用いることができる。
【0076】
カソード72は、電解槽ケーシング79の長手方向視において、アノード71の外周から離れた外側であって電解槽ケーシング79の外枠の内側において、管状に設けられている。カソード72は、電解槽ケーシング79における上流領域77と下流領域78との間において、電解槽ケーシング79の長手方向に沿うように円筒形状に延びている。カソード72は、カソード72の内周部分を構成するカソード触媒層72aと、カソード触媒層72aの径方向外側に円筒形状となるように設けられたカソードガス拡散層72bと、を有している。電解槽ケーシング79の長手方向視において、カソード72の径方向外側には、カソードガス拡散層72bの径方向外側であって電解槽ケーシング79の枠の内側において円筒形状となるように設けられたカソード回収路72xが設けられている。カソード触媒層72aとカソードガス拡散層72bとカソード回収路72xは、いずれも電解槽ケーシング79の長手方向に沿うように延びている。カソード回収路72xは、電解槽ケーシング79の枠部分を径方向外側に貫通し、カソード連絡部72cと接続されている。カソード連絡部72cは、第2回収路84と接続されている。なお、カソード連絡部72cの位置は、特に限定されないが、例えば、電解槽ケーシング79における下流側に位置していてよい。
【0077】
なお、カソード72では、二酸化炭素の還元反応が起こる。具体的には、下記式(2)に示すように、二酸化炭素と水素イオンと電子が反応し、炭素含有物である一酸化炭素と水が生じる。なお、電解条件に応じて水素が更に生じるものであってもよい。
2CO2+4H++4e-→2CO+2H2O・・・(2)
【0078】
カソード触媒層72aとしては、例えば、(100))面をもつCuナノクリスタル等を高い割合で含む複合材料膜等を好ましく用いることができる。
【0079】
カソードガス拡散層72bとしては、触媒層と高強度で接合し、導電性が高く、粒子が小さくて均一であり等方性に優れる観点から、グラファイト等を好ましく用いることができる。
【0080】
なお、本実施形態では、カソード72は、アノード71の径方向外側において円筒形状となるように設けられているため、アノード71における酸化反応が生じる表面積よりもカソード72において還元反応が生じる表面積の方が、広く確保されやすい構造とすることができている。これにより、二酸化炭素を還元して得られる炭素含有物を効率的に得ることが可能になっている。
【0081】
電解液流路73は、電解槽ケーシング79の長手方向視において、アノード71の外側であってカソード72の内側において、管状に設けられた部分であり、電解液を電解槽ケーシング79の長手方向に沿うように流す円筒形状の部分である。電解液は、この電解液流路73を通過する際に、アノード71とカソード72に電圧印加されることにより、電解される。なお、電解液流路73における電解液は、電解液ポンプ42により形成される流れにより、未電解の電解液が電解液流路73に対して連続的に供給され、電解済みの電解液を電解液流路73から排出することができる。これにより、効率的な電解還元を行うことが可能になる。
【0082】
第1回収路83は、アノード連絡部71cと接続されており、アノード71における電解液の電解により生じたものを、外部に送り回収する流路である。第1回収路83の途中には、開閉弁83aが設けられている。なお、第1回収路83は、必要に応じて、図示しない減圧ポンプ等が設けられており、反応生成物等を回収することが可能になっている。
【0083】
第2回収路84は、カソード連絡部72cと接続されており、カソード72における電解液の電解により生じたものを、外部に送り回収する流路である。第2回収路84の途中には、開閉弁84aが設けられている。なお、第2回収路84は、必要に応じて、図示しない減圧ポンプ等が設けられており、反応生成物等を回収することが可能になっている。
【0084】
なお、電解還元の際にアノード71とカソード72に対して印加される電圧の電力としては、膨張機24により得られた電力を用いることができる。
【0085】
(1-5)第1実施形態の特徴
本実施形態のエネルギ利用システム1によれば、ヒートポンプ10が、再生可能エネルギにより駆動される。この再生可能エネルギは、一般的な電力会社より提供される電力と比較して、時間帯等に応じて得られる電力が一定でなく、供給量が不安定になるおそれがある。しかし、ヒートポンプ10が、再生可能エネルギを、熱利用サイクル30において蓄える熱に変換することで、再生可能エネルギを十分に有効利用することが可能になっている。
【0086】
また、エネルギ利用システム1によれば、ヒートポンプ10が熱利用サイクル30に蓄えた熱を、第2冷媒の加熱に用いることで、膨張機24において動力回収することで発電することが可能になっている。そして、膨張機24で得られた電力を、電解還元装置70における電圧印加において用いることが可能になっている。
【0087】
また、エネルギ利用システム1によれば、ヒートポンプ10が熱利用サイクル30に蓄えた熱を、電解還元装置70の電解液の加熱に用いることができ、電解液の温度を調節することができる。本実施形態では、電解液を加熱することによって、電解還元に必要な電位の絶対値を下げることが可能になるとともに、電解液の粘度が下がることで導電率を上げることも可能になっている。これらにより、電解還元を効率化させることが可能になっている。
【0088】
しかも、電解還元装置70では、排ガスに由来する二酸化炭素、あるいは大気中の稀薄な二酸化炭素を用いて炭素含有物を得ることが可能になっている。
【0089】
以上により、二酸化炭素による環境負荷を低減させつつ、再生可能エネルギを有効利用しつつ、二酸化炭素に由来する有用な炭素含有物を効率的に得ることが可能になっている。
【0090】
そして、本実施形態では、電解還元装置70において、カソード72が、アノード71の径方向外側において円筒形状となるように設けられることで、アノード71よりも十分に広い表面積を有するものとなっている。これにより、二酸化炭素を還元して得られる炭素含有物を効率的に得ることが可能になっている。
【0091】
また、電解還元装置70は、アノード71とカソード72との間に対して電解液が連続的に供給され、電解された電解液が連続的に排出される構造となっている。このため、アノード71の表面が反応により生じたもので覆われ続けることが抑制され、カソード72の表面が反応により生じたもので覆われ続けることも抑制され、電解を継続的に効率良く行うことが可能になっている。
【0092】
(2)他の実施形態
(2-1)他の実施形態A
上記実施形態では、炭素含有物として一酸化炭素を得る場合を例に挙げて説明した。
【0093】
これに対して、二酸化炭素を還元して得られる炭素含有物としては、特に限定されず、電解液や電極材料等の諸条件を変更させることで、例えば、一酸化炭素、ダイヤモンド、グラファイト、グラッシーカーボン、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラフェン、および、金属カーバイドからなる群より選択される1種または2種以上を得ることができる。
【0094】
また、電解される電解液に二酸化炭素に加えて水が含まれている場合には、電解還元により各種有機化合物を得ることが可能になる。
【0095】
なお、ここでの有機化合物としては、例えば、炭化水素、エーテル、環状エーテル、アルコール、カルボニル化合物等が挙げられ、さらに具体的には、メタン、メタノール、エタン、エチレン、アセチレン、エタノール、ギ酸、ホルムアルデヒド、シュウ酸、酢酸、プロパン、プロピレン、プロパノール、ブタン、ブテン、ブタノール、アセトン、ベンゼン、トルエン、および、キシレンからなる群より選択される1種または2種以上が挙げられる。
【0096】
また、電解される電解液に窒素がさらに含まれている場合には、アミン等を得ることも可能になる。
【0097】
(2-2)他の実施形態B
上記実施形態では、電解還元装置70を電解液の流れに対して1つ設けた場合を例に挙げて説明した。
【0098】
これに対して、電解液の流れに対して電解還元装置70を複数並列に配置させるようにしてもよい。これにより、電解還元を行う箇所を増大させることが可能になるため、処理規模を調節することが可能になる。
【0099】
(2-3)他の実施形態C
上記実施形態に係るエネルギ利用システム1では、再生可能エネルギにより駆動されるヒートポンプ10を循環する第1冷媒が、熱利用サイクル30を循環する熱媒体を加熱し、熱利用サイクル30を循環する熱媒体が、電解還元装置70の電解液を加熱する場合について例に挙げて説明した。
【0100】
これに対して、エネルギ利用システム1としては、電解還元装置70の電解液を加熱する態様に限られるものではなく、電解還元装置70の電解液を冷却するものであってもよいし、電解還元装置70の電解液の加熱と冷却を切替可能に構成されたものであってもよい。
【0101】
この場合には、再生可能エネルギにより駆動されるヒートポンプ10を循環する第1冷媒が、熱利用サイクル30を循環する熱媒体を冷却するものであってもよいし、加熱と冷却を切換可能に構成されたものであってもよい。
【0102】
電解液の温度上昇を抑制させることにより、二酸化炭素への電解液の溶解度の低下を小さく抑えることが可能になる。また、電解還元の際に副反応が生じる場合には、当該副反応の反応速度を小さく抑えることが可能になる。
【0103】
さらに、電解液を冷却させるために、外部の冷却源から供給される水や空気等の冷却媒体が、恒温容器70x内の恒温槽33xを通過するように、冷却媒体が流れる流路が設けられていてもよい。
【0104】
(2-4)他の実施形態D
上記第1実施形態のエネルギ利用システム1の利用形態は、特に限定されるものではなく、例えば、マイクログリッドシステムにおいて利用することができる。
【0105】
マイクログリッドシステムは、分散型エネルギや蓄エネルギ設備等の分散型エネルギリソース(DER:Distributed Energy Resources)と、エネルギネットワークと、を一定の規模で統合し運用するエネルギシステムである。例えば、マイクログリッドシステムは、電力会社が運用する主要な電力ネットワークから完全に切り離されて常に自立したエネルギ運用を行うシステムであってもよいし、平常時は電力会社が運用する主要な電力ネットワークと接続され、災害時等の非常時はその接続を切り離して自立したエネルギ運用を行うシステムであってもよい。
【0106】
図4に、第1実施形態のエネルギ利用システム1を含むマイクログリッドシステムのネットワーク構成の一例を示す。
【0107】
マイクログリッドシステムは、例えば、太陽光発電所、風力発電所、水力発電所等の再生可能エネルギ供給部91と、再生可能エネルギの管理を行う再生可能エネルギ管理装置180と、ヒートポンプ10と、ヒートエンジン20と、熱利用サイクル30と、排熱供給部92と、二酸化炭素回収装置50と電解還元装置70を含む二酸化炭素処理装置40と、火力発電所、原子力発電所、プラント、温泉等の図示しない排出物供給部と、排出物供給部の管理を行う排出物管理装置150と、ヒートエンジン20により発電された電力エネルギを消費する図示しない需要家設備と、需要家設備の管理を行う需要家端末160と、これらの設備をつなぐ図示しないエネルギネットワーク設備と、エネルギの供給と消費を適切に制御するエネルギマネジメントコントローラ100と、再生可能エネルギ管理装置180と需要家端末160とエネルギマネジメントコントローラ100等を通信可能に接続する通信ネットワーク111等を備えるものであってもよい。
【0108】
再生可能エネルギ管理装置180は、CPU等のプロセッサ181と、ROM、RAM等のメモリ182と、再生可能エネルギ供給部91において発電された電力量を把握する電気エネルギ量把握部183等を有しており、再生可能エネルギ供給部91に配置されている。再生可能エネルギ管理装置180は、通信ネットワーク111を介して、エネルギマネジメントコントローラ100と通信可能に接続されている。
【0109】
排出物管理装置150は、CPU等のプロセッサ151と、ROM、RAM等のメモリ152と、熱エネルギ量把握部153と、排出二酸化炭素量把握部154と、を有しており、火力発電所や原子力発電所等の排出物供給部に配置されている。排出物管理装置150は、通信ネットワーク111を介して、エネルギマネジメントコントローラ100と通信可能に接続されている。熱エネルギ量把握部153は、火力発電所や原子力発電所等の排出物供給部から排出された熱エネルギ量を把握する。排出二酸化炭素量把握部154は、火力発電所等の排出物供給部から排出された二酸化炭素量を把握する。
【0110】
需要家設備は、ヒートエンジン20によって発電された電気エネルギのうち、電解還元装置70において利用された後の残りの電気エネルギを消費するか、ヒートポンプ10によって得られる熱エネルギのうち、電解還元装置70において利用された後の残りの熱エネルギを消費するか、これらの両方を消費する設備であり、例えば、工場、オフィスビル、住宅、電気自動車への給電装置、植物工場等が挙げられる。このうち、例えば、工場、オフィスビル、住宅、植物工場に対しては、これらからの求めに応じて、熱利用サイクル30で蓄えられている熱が供給される。なお、熱の供給は、例えば、熱を蓄えることができる蓄熱材を需要家設備の所在地まで運ぶことで需要家に供給されてもよい。また、工場、オフィスビル、住宅、電気自動車への給電装置、植物工場に対しては、これらの求めに応じて、ヒートエンジン20で発電された電気エネルギが供給される。なお、電気エネルギは、電線または蓄電池等を用いて需要家設備の所在地まで運ぶことで供給されてもよい。これらの蓄熱材、電線、蓄電池は、エネルギネットワーク設備として用いられる。なお、需要家からの求めに応じて、電解還元装置70で得られた炭素含有物が輸送される等により供給される。
【0111】
需要家端末160は、CPU等のプロセッサ161と、メモリ162と、入力部163等を有しており、需要家設備に配置されている。需要家端末160は、通信ネットワーク111を介して、エネルギマネジメントコントローラ100と通信可能に接続されている。入力部163は、タッチパネルまたはキーボード等により構成されており、需要家端末160の所持者である需要家からの、熱エネルギ供給の要求と、電気エネルギ供給の要求と、電解還元で得られた炭素含有物の要求と、の少なくともいずれかの要求を受け付ける。
【0112】
エネルギマネジメントコントローラ100は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ101と、ROM、RAM等のメモリ102を有している。エネルギマネジメントコントローラ100は、ヒートポンプ10、ヒートエンジン20、熱利用サイクル30、排熱供給部92、二酸化炭素回収装置50と電解還元装置70を含む二酸化炭素処理装置40等と通信可能に接続されている。エネルギマネジメントコントローラ100は、通信ネットワーク111を介して受け付けた各種情報に基づいて、ヒートポンプ10、ヒートエンジン20、熱利用サイクル30、排熱供給部92、二酸化炭素回収装置50と電解還元装置70を含む二酸化炭素処理装置40等の運転制御を行う。
【0113】
エネルギマネジメントコントローラ100は、再生可能エネルギ管理装置180の再生可能エネルギ供給部91が把握した電気エネルギ量に基づいて、当該電気エネルギを貯留される熱エネルギに変換するために、ヒートポンプ10における第1圧縮機12の回転数を制御することでヒートポンプ10を駆動制御する。再生可能エネルギ管理装置180で得られる再生可能エネルギの量は、電力会社が提供する一般的な電気エネルギと比べて不安定になりがちではあるが、再生可能エネルギとして供給されるエネルギを、ヒートポンプ10を介して、熱エネルギに変換して熱利用サイクル30に蓄えることが可能になる。そして、熱利用サイクル30において熱媒体に蓄えられた熱エネルギは、電解還元装置70において電解液を電解還元させる際に利用することができる。具体的には、電解還元装置70での電解液の加熱には、熱利用サイクル30において熱媒体に蓄えられている熱エネルギを用い、電解還元装置70での電解液への電圧印加には、熱利用サイクル30において熱媒体に蓄えられている熱エネルギがヒートエンジン20によって変換された電気エネルギが用いられる。これにより、電解還元装置70での電解液の加熱と電圧印加に要するエネルギを、不安定な再生可能エネルギではなく、熱利用サイクル30において蓄えられているエネルギで賄うことが可能になり、電解還元を安定的に行うことが可能になる。また、具体的には、電解還元装置70で電解還元される電解液の望ましい温度や、望ましい印加電圧等の各データを、エネルギマネジメントコントローラ100が備えるメモリ102に予め保存しておき、当該データに基づいて電解液の温度条件と印加電圧条件が満たされるように、熱媒体ポンプ32における熱媒体の流量や電解液ポンプ42における電解液の流量や電解液冷却部94への冷熱供給量等が制御される。
【0114】
また、エネルギマネジメントコントローラ100は、熱エネルギ量把握部153が把握している、火力発電所や原子力発電所等の排出物供給部から排出された熱エネルギ量と、第1圧縮機12の回転数制御の情報と、に基づいて、排ガス輸送手段等を制御することで、排熱供給部92に対する排熱の熱エネルギ供給量を調節する。
【0115】
さらに、エネルギマネジメントコントローラ100は、排出二酸化炭素量把握部154が把握している、火力発電所等の排出物供給部から排出された二酸化炭素量に基づいて、二酸化炭素輸送手段等を制御することで、二酸化炭素供給ライン81に対する二酸化炭素の供給量を調節する。
【0116】
なお、エネルギマネジメントコントローラ100は、熱エネルギ量把握部153が把握した熱エネルギ量が十分にある場合には、ヒートポンプ10の第1中間熱交換器14の第1冷媒を加熱したり、熱利用サイクル30の低温タンク35と高温タンク37における熱媒体を加熱することで、運転効率を高めることができる。
【0117】
(付記)
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0118】
1 エネルギ利用システム
10 ヒートポンプ
12 第1圧縮機
13 第1高温熱交換器
15 膨張弁
20 ヒートエンジン
23 第2高温熱交換部
24 膨張機
30 熱利用サイクル(循環回路)
32 熱媒体ポンプ
34 低温利用熱交換器
35 低温タンク
36 高温利用熱交換部(温度調整部)
37 高温タンク(貯蔵部)
40 二酸化炭素処理装置
41 電解液回路
42 電解液ポンプ
43 電解液熱交換器
50 二酸化炭素回収装置
70 電解還元装置
70x 恒温容器
71 アノード(第1電極)
71x アノード回収路(第1ガス流路)
71a アノード触媒層
71b アノードガス拡散層
72 カソード(第2電極)
72a カソード触媒層
72b カソードガス拡散層
72x カソード回収路(第2ガス流路)
73 電解液流路
79 電解槽ケーシング(ケーシング)
81 二酸化炭素供給ライン
82 空気流出ライン
83 第1回収路
84 第2回収路
91 再生可能エネルギ供給部
92 排熱供給部
93 第2冷媒冷却部
94 電解液冷却部
100 エネルギマネジメントコントローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0119】
【特許文献1】特開2016-89230号公報
【特許文献2】特開2023-15104号公報
【手続補正書】
【提出日】2024-10-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギまたは排熱により得られるエネルギを利用して熱媒体の温度を調整する温度調整部(36)を有し、前記熱媒体が循環する循環回路(30)と、二酸化炭素が溶解した電解液を電解還元する電解還元装置(70)と、を備えたエネルギ利用システム(1)であって、
前記電解還元装置は、前記熱媒体と熱的に接触することで温度が調整された前記電解液を電解還元し、
前記電解還元装置は、
第1方向に延びた筒状のケーシング(79)と、
前記ケーシング内部に設けられ、前記第1方向に延びた第1電極(71)と、
前記第1方向視において前記ケーシング内部であって前記第1電極の外側に位置しており、前記第1方向に延びた筒状の第2電極(72)と、
前記電解液を前記第1電極と前記第2電極の間で前記第1方向に流す電解液流路(73)と、
を有し、
前記第1電極は、アノードであり、
前記第2電極は、カソードである、
エネルギ利用システム。
【請求項2】
前記アノードは、前記第1方向に延びた筒状であり、
前記電解還元装置は、前記第1方向視において前記アノードの内側に設けられ、前記電解液の酸化反応により生じるガスを通過させる第1ガス流路(71x)を有する、
請求項1に記載のエネルギ利用システム。
【請求項3】
前記アノードは、前記第1方向に延びた筒状のアノード触媒層(71a)と、前記第1方向視において前記アノード触媒層の内側であって前記第1ガス流路の外側に設けられており前記第1方向に延びた筒状のアノードガス拡散層(71b)と、を有する、
請求項2に記載のエネルギ利用システム。
【請求項4】
前記電解還元装置は、前記第1方向視において前記カソードの外側であって前記ケーシングの内側に設けられ、前記電解液の還元反応により生じるガスを通過させる第2ガス流路(72x)を有する、
請求項1または2に記載のエネルギ利用システム。
【請求項5】
前記カソードは、前記第1方向に延びた筒状のカソード触媒層(72a)と、前記第1方向視において前記カソード触媒層の外側であって前記第2ガス流路の内側に設けられており前記第1方向に延びた筒状のカソードガス拡散層(72b)と、を有する、
請求項4に記載のエネルギ利用システム。
【請求項6】
前記再生可能エネルギにより発電された電力を利用して駆動され、第1冷媒が循環するヒートポンプ(10)をさらに備え、
前記温度調整部は、前記ヒートポンプにより温度が調整された前記第1冷媒の熱によって、前記熱媒体の温度を調整する、
請求項1または2に記載のエネルギ利用システム。
【請求項7】
前記循環回路は、前記熱媒体の熱を貯蔵エネルギとして貯蔵する貯蔵部(37)を有する、
請求項1または2に記載のエネルギ利用システム。
【請求項8】
再生可能エネルギまたは排熱により得られるエネルギを利用して熱媒体の温度を調整する温度調整部(36)を有し、前記熱媒体が循環する循環回路(30)と、二酸化炭素が溶解した電解液を電解還元する電解還元装置(70)と、を備えたエネルギ利用システム(1)であって、
前記電解還元装置は、前記熱媒体と熱的に接触することで温度が調整された前記電解液を電解還元し、
前記電解還元装置は、
第1方向に延びた筒状のケーシング(79)と、
前記ケーシング内部に設けられ、前記第1方向に延びた第1電極(71)と、
前記第1方向視において前記ケーシング内部であって前記第1電極の外側に位置しており、前記第1方向に延びた筒状の第2電極(72)と、
前記電解液を前記第1電極と前記第2電極の間で前記第1方向に流す電解液流路(73)と、
を有し、
前記熱媒体の熱を利用して発電するヒートエンジン(20)を備え、
前記電解還元装置は、前記ヒートエンジンにより発電された電力を利用して前記電解液に電圧を印加する、
エネルギ利用システム。
【請求項9】
循環回路(30)を循環する熱媒体の温度を、再生可能エネルギまたは排熱により得られるエネルギを利用して調整する工程と、
二酸化炭素が溶解した電解液の温度を、前記熱媒体と熱的に接触させることで調整する工程と、
温度調整された前記電解液を電解還元する工程と、
を備え、
前記電解還元する工程では、第1方向に延びた第1電極(71)と、前記第1方向視において前記第1電極を周囲から覆うように前記第1方向に延びた筒状の第2電極(72)と、の間を、前記電解液が前記第1方向に流れ、
前記第1電極は、アノードであり、
前記第2電極は、カソードである、
炭素含有物の製造方法。
【請求項10】
前記熱媒体の温度は、第1冷媒が循環するヒートポンプ(10)を用いて、前記第1冷媒の熱によって調整され、
前記ヒートポンプは、前記再生可能エネルギにより発電された電力を利用して駆動される、
請求項9に記載の炭素含有物の製造方法。
【請求項11】
循環回路(30)を循環する熱媒体の温度を、再生可能エネルギまたは排熱により得られるエネルギを利用して調整する工程と、
二酸化炭素が溶解した電解液の温度を、前記熱媒体と熱的に接触させることで調整する工程と、
温度調整された前記電解液を電解還元する工程と、
を備え、
前記電解還元する工程では、第1方向に延びた第1電極(71)と、前記第1方向視において前記第1電極を周囲から覆うように前記第1方向に延びた筒状の第2電極(72)と、の間を、前記電解液が前記第1方向に流れ、
前記熱媒体の熱を利用してヒートエンジン(20)において発電する工程をさらに備え、
前記電解還元する工程では、前記ヒートエンジンにより発電された電力を利用して前記電解液に電圧を印加する、
炭素含有物の製造方法。
【請求項12】
前記循環回路は、前記熱媒体の熱を貯蔵エネルギとして貯蔵する貯蔵部(37)を有する、
請求項11に記載の炭素含有物の製造方法。