(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003098
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】芯糸供給装置、空気紡績機、芯糸紡績方法及びパッケージ
(51)【国際特許分類】
D01H 13/10 20060101AFI20241226BHJP
D01H 1/115 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
D01H13/10
D01H1/115 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103583
(22)【出願日】2023-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄太
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056AA19
4L056AA47
4L056BA07
4L056BC01
4L056BD12
4L056CA06
4L056CA08
4L056CA53
4L056CA54
4L056CA57
4L056CA60
4L056EB04
4L056EB08
4L056EC01
4L056EC03
(57)【要約】
【課題】伸縮性を有する芯糸を用いる場合でも、芯糸を適正に供給することができる芯糸供給装置、空気紡績機及び芯糸紡績方法を提供する。
【解決手段】芯糸供給装置200は、芯糸Cが巻き付けられた芯糸ボビンCBを保持する芯糸ボビン保持部50と、芯糸Cを送出する芯糸送出部100と、芯糸Cの走行方向において芯糸ボビン保持部50と芯糸送出部100の間に設けられ、芯糸Cの弛みを確保する弛み確保部80と、芯糸Cの走行方向において芯糸ボビン保持部50と弛み確保部80の間に設けられ、弛み確保部80により弛みが確保された芯糸Cの弛み確保部分が走行方向とは反対方向に戻ることを防止するクランプ装置110と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯糸が巻き付けられた芯糸ボビンを保持する芯糸ボビン保持部と、
前記芯糸を送出する芯糸送出部と、
前記芯糸の走行方向において前記芯糸ボビン保持部と前記芯糸送出部の間に設けられ、前記芯糸の弛みを確保する弛み確保部と、
前記走行方向において前記芯糸ボビン保持部と前記弛み確保部の間に設けられ、前記弛み確保部により弛みが確保された前記芯糸の弛み確保部分が前記走行方向とは反対方向に戻ることを防止する戻り防止部と、を備える芯糸供給装置。
【請求項2】
前記戻り防止部は、前記芯糸の前記弛み確保部分の戻りを防止する戻り防止状態と、前記芯糸の前記弛み確保部分を自由にする開放状態とに切り替わることができ、
前記芯糸送出部による前記芯糸の送出の開始時又は開始直後に、前記戻り防止部が前記戻り防止状態から前記開放状態に切り替わる、請求項1に記載の芯糸供給装置。
【請求項3】
前記戻り防止部は、前記芯糸を挟むクランプ装置である、請求項1又は2に記載の芯糸供給装置。
【請求項4】
前記走行方向において前記芯糸ボビン保持部と前記芯糸送出部の間に設けられ、前記芯糸の供給中に前記芯糸に張力を付与する張力付与部を更に備える、請求項1又は2に記載の芯糸供給装置。
【請求項5】
前記走行方向において前記芯糸ボビン保持部と前記芯糸送出部の間に設けられ、前記芯糸の供給中に前記芯糸に張力を付与する張力付与部を更に備える、請求項3に記載の芯糸供給装置。
【請求項6】
前記クランプ装置は、前記走行方向において前記張力付与部と前記弛み確保部との間に配置されている、請求項5に記載の芯糸供給装置。
【請求項7】
前記張力付与部は、前記芯糸の供給停止中に前記芯糸に張力を付与することにより、前記戻り防止部として機能する、請求項4に記載の芯糸供給装置。
【請求項8】
前記弛み確保部を支持するベース部を更に備え、
前記ベース部には、前記芯糸の供給中において前記芯糸が直線状の通常糸道を走行するように前記芯糸をガイドする少なくとも1つの糸道ガイドが固定され、
前記弛み確保部は、
前記ベース部に移動可能に取り付けられ、2つの芯糸通過部が形成されたアームと、
前記アームを移動させる駆動部と、を有し、
前記アームが通常位置に配置された状態では、前記糸道ガイドと前記2つの芯糸通過部は前記通常糸道上に配置され、
前記アームが弛み確保位置に配置された状態では、前記芯糸は少なくとも4回屈曲して案内される、請求項1~7の何れか一項に記載の芯糸供給装置。
【請求項9】
前記弛み確保部には、前記芯糸の前記弛み確保部分の経路長を調整可能な調整部が設けられている、請求項1~8の何れか一項に記載の芯糸供給装置。
【請求項10】
前記芯糸送出部は、前記芯糸の前記弛み確保部分の経路長に応じて送出力を変更する、請求項1~9の何れか一項に記載の芯糸供給装置。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の芯糸供給装置と、
繊維束をドラフトするドラフト装置と、
前記芯糸供給装置から供給された前記芯糸を芯として前記ドラフト装置でドラフトされた繊維束を紡績することにより前記芯糸を含有する糸を生成するエアジェット紡績装置と、
前記糸をパッケージに巻き取る巻取装置と、を備え、
前記芯糸供給装置の前記芯糸送出部は、前記ドラフト装置のミドルローラ対とフロントローラ対の間の位置に対向するように設けられている、空気紡績機。
【請求項12】
前記弛み確保部によって形成される前記芯糸の前記弛み確保部分の長さは、前記芯糸送出部内のクランプ部から前記フロントローラ対のトップローラまでの間の距離の1倍以上3倍以下である、請求項11に記載の空気紡績機。
【請求項13】
芯糸が巻き付けられた芯糸ボビンを保持する芯糸ボビン保持部と、前記芯糸を送出する芯糸送出部と、前記芯糸の走行方向において前記芯糸ボビン保持部と前記芯糸送出部の間に設けられ、前記芯糸の弛みを確保する弛み確保部と、前記走行方向において前記芯糸ボビン保持部と前記弛み確保部の間に設けられ、前記弛み確保部により弛みが確保された前記芯糸の弛み確保部分が前記走行方向とは反対方向に戻ることを防止する戻り防止部と、を備える芯糸供給装置と、
繊維束をドラフトするドラフト装置と、
前記芯糸供給装置から供給された前記芯糸を芯として前記ドラフト装置でドラフトされた繊維束を紡績することにより前記芯糸を含有する糸を生成するエアジェット紡績装置と、を備える空気紡績機において、
前記ドラフト装置のミドルローラ対とフロントローラ対の間の位置に対向するように設けられた前記芯糸送出部から伸縮性を有する前記芯糸を送出し、
エアジェット紡績装置により前記芯糸を含有する糸を生成する、芯糸紡績方法。
【請求項14】
エアジェット紡績により生成された伸縮性を有する芯糸を含有する糸が巻かれたパッケージであって、
前記糸に含まれる複数の継ぎ目の間隔が、管糸交換に起因する周期的な継ぎ目の間隔よりも長く、且つ、前記糸が、芯糸交換に起因する継ぎ目を有していない、パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯糸供給装置、空気紡績機、芯糸紡績方法及びパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
芯糸供給装置によって芯糸をドラフト装置に供給し、その芯糸を芯として、空気紡績装置によって糸を生成する紡績機が知られている(例えば、特許文献1参照)。この紡績機は、芯糸を送出する芯糸送出ユニットと、芯糸に弛みを付与する弛み付与部とを有する。紡績機において糸欠陥が検出されるか又は糸(芯糸又は紡績糸)が無いことが検出されると、芯糸の供給が中断され、芯糸送出ユニットの下流側の芯糸が切断される。弛み付与部が弛み付与状態に切り換えられ、芯糸に弛みが付与される。これにより、芯糸の供給の再開時に空気の作用により芯糸をドラフト装置に確実に送出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
芯糸供給装置において、伸縮性を有する芯糸が用いられる場合がある。上記した従来の芯糸供給装置では、弛み付与部によって芯糸に弛みが付与されるが、芯糸が送出される際に、伸縮性を有する芯糸は、送出方向とは反対方向に縮む傾向にある。その場合、芯糸がドラフト装置に適正に送出されない可能性がある。
【0005】
本発明は、伸縮性を有する芯糸を用いる場合でも、芯糸を適正に送出することができる芯糸供給装置、空気紡績機及び芯糸紡績方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る芯糸供給装置は、芯糸が巻き付けられた芯糸ボビンを保持する芯糸ボビン保持部と、芯糸を送出する芯糸送出部と、芯糸の走行方向において芯糸ボビン保持部と芯糸送出部の間に設けられ、芯糸の弛みを確保する弛み確保部と、走行方向において芯糸ボビン保持部と弛み確保部の間に設けられ、弛み確保部により弛みが確保された芯糸の弛み確保部分が走行方向とは反対方向に戻ることを防止する戻り防止部と、を備える。
【0007】
この芯糸供給装置によれば、芯糸走行方向において弛み確保部よりも上流の位置に設けられた戻り防止部は、芯糸の弛み確保部分が上流に戻ることを防止する。よって、伸縮性を有する芯糸を用いる場合でも、芯糸送出部による芯糸の適正な送出距離が実現される。これにより、芯糸を適正に送出することができる。
【0008】
戻り防止部は、芯糸の弛み確保部分の戻りを防止する戻り防止状態と、芯糸の弛み確保部分を自由にする開放状態とに切り替わることができ、芯糸送出部による芯糸の送出の開始時又は開始直後に、戻り防止部が戻り防止状態から開放状態に切り替わってもよい。この場合、芯糸が送出される際、芯糸の弛み確保部分が上流に戻ることを確実に防止できる。
【0009】
戻り防止部は、芯糸を挟むクランプ装置であってもよい。この場合、クランプ装置が芯糸を物理的に挟むので、芯糸が上流にずれることを防止できる。
【0010】
芯糸供給装置が、走行方向において芯糸ボビン保持部と芯糸送出部の間に設けられ、芯糸の供給中に芯糸に張力を付与する張力付与部を更に備えてもよい。この場合、芯糸送出部によって、芯糸が好適に送出される。
【0011】
クランプ装置は、走行方向において張力付与部と弛み確保部との間に配置されていてもよい。このレイアウトによれば、弛み確保部とクランプ装置との間の距離が近くなり、芯糸の縮みの伝播が軽減される。その結果として、弛み量の減少を回避できる。
【0012】
張力付与部は、芯糸の供給停止中に芯糸に張力を付与することにより、戻り防止部として機能してもよい。この場合、張力付与部が、芯糸の供給中には芯糸に張力を付与し、芯糸の供給停止中には、弛み確保部分が戻ることを防止する。張力付与部が2つの機能を兼ね備えるので、クランプ装置を別途設置する必要がない。
【0013】
芯糸供給装置が、弛み確保部を支持するベース部を更に備えてもよい。ベース部には、芯糸の供給中において芯糸が直線状の通常糸道を走行するように芯糸をガイドする少なくとも1つの糸道ガイドが固定され、弛み確保部は、ベース部に移動可能に取り付けられ、2つの芯糸通過部が形成されたアームと、アームを移動させる駆動部と、を有し、アームが通常位置に配置された状態では、糸道ガイドと2つの芯糸通過部は通常糸道上に配置され、アームが弛み確保位置に配置された状態では、芯糸は少なくとも4回屈曲して案内されてもよい。この場合、芯糸をM字状に屈曲させることにより、小さなスペースで大きな弛みを確保できる。
【0014】
弛み確保部には、芯糸の弛み確保部分の経路長を調整可能な調整部が設けられていてもよい。芯糸の伸縮性に応じて弛み確保部分の経路長を調整することにより、芯糸の種類によらず、芯糸をドラフト装置に適正に送出することができる。
【0015】
芯糸送出部は、芯糸の弛み確保部分の経路長に応じて送出力を変更してもよい。芯糸の伸縮性に応じて送出力を変更することにより、芯糸の種類によらず、芯糸をドラフト装置に適正に供給することができる。
【0016】
本発明の別の態様として、上記した何れか一つの芯糸供給装置と、繊維束をドラフトするドラフト装置と、芯糸供給装置から供給された芯糸を芯としてドラフト装置でドラフトされた繊維束を紡績することにより芯糸を含有する糸を生成するエアジェット紡績装置と、糸をパッケージに巻き取る巻取装置と、を備える空気紡績機が提供されてもよい。この空気紡績機において、芯糸供給装置の芯糸送出部は、ドラフト装置のミドルローラ対とフロントローラ対の間の位置に対向するように設けられている。この空気紡績機によれば、上述した作用により、芯糸をドラフト装置に適正に供給することができる。伸縮性を有する芯糸を含有する糸を好適に生成して、パッケージを形成することができる。
【0017】
空気紡績機において、弛み確保部によって形成される芯糸の弛み確保部分の長さは、芯糸送出部内のクランプ部からフロントローラ対のトップローラまでの間の距離の1倍以上3倍以下であってもよい。この場合、芯糸送出部によって送出された芯糸が確実にフロントローラ対に到達する。
【0018】
本発明の更に別の態様として、芯糸が巻き付けられた芯糸ボビンを保持する芯糸ボビン保持部と、芯糸を送出する芯糸送出部と、芯糸の走行方向において芯糸ボビン保持部と芯糸送出部の間に設けられ、芯糸の弛みを確保する弛み確保部と、走行方向において芯糸ボビン保持部と弛み確保部の間に設けられ、弛み確保部により弛みが確保された芯糸の弛み確保部分が走行方向とは反対方向に戻ることを防止する戻り防止部と、を備える芯糸供給装置と、繊維束をドラフトするドラフト装置と、芯糸供給装置から供給された芯糸を芯としてドラフト装置でドラフトされた繊維束を紡績することにより芯糸を含有する糸を生成するエアジェット紡績装置と、を備える空気紡績機における芯糸紡績方法が提供されてもよい。芯糸紡績方法では、ドラフト装置のミドルローラ対とフロントローラ対の間の位置に対向するように設けられた芯糸送出部から伸縮性を有する芯糸を送出し、エアジェット紡績装置により芯糸を含有する糸を生成する。この芯糸紡績方法によっても、上述した作用により、芯糸をドラフト装置に適正に供給することができる。伸縮性を有する芯糸を含有する糸を好適に生成して、パッケージを形成することができる。
【0019】
本発明の更に別の態様として、エアジェット紡績により生成された伸縮性を有する芯糸を含有する糸が巻かれたパッケージが提供されてもよい。パッケージは、糸に含まれる複数の継ぎ目の間隔が、管糸交換に起因する周期的な継ぎ目の間隔よりも長く、且つ、糸が、芯糸交換に起因する継ぎ目を有していない。継ぎ目の数が少ない好ましいパッケージが提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、伸縮性を有する芯糸を用いる場合でも、芯糸を適正に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態の紡績機の正面図である。
【
図3】
図3は
図2の紡績ユニットの芯糸供給ユニットの斜視図である。
【
図4】
図4は弛み確保部及びクランプ装置付近の拡大図である。
【
図5】
図5は空気によって作動する各部のブロック図である。
【
図6】
図6は弛み確保部が弛み確保位置に配置された状態の一例を示す図である。
【
図7】
図7は
図6の状態における弛み確保部及びクランプ装置付近の拡大図である。
【
図8】
図8は弛み確保部が弛み確保位置に配置された状態の別の例を示す図である。
【
図9】
図9(a)は本発明の一実施形態のパッケージにおける継ぎ目の間隔を示す図、
図9(a)は参考形態のパッケージにおける継ぎ目の間隔を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
図1に示されるように、紡績機1(空気紡績機)は、複数の紡績ユニット2と、糸継台車3と、玉揚台車(図示省略)と、第1エンドフレーム4と、第2エンドフレーム5と、を備えている。複数の紡績ユニット2は、一列に配列されている。各紡績ユニット2は、糸Yを生成してパッケージPに巻き取る。糸継台車3は、ある紡績ユニット2において糸Yが切断されたり、何らかの理由により糸Yが切れたりした場合、当該紡績ユニット2に対して糸継動作を行う。玉揚台車は、ある紡績ユニット2においてパッケージPが満巻になった場合、パッケージPを玉揚げし、新しいボビンBを当該紡績ユニット2に供給する。第1エンドフレーム4には、紡績ユニット2において発生した繊維屑及び糸屑等を回収する回収装置等が収容されている。
【0024】
第2エンドフレーム5には、紡績機1に供給される圧縮空気(空気)の空気圧を調整して紡績機1の各部に空気を供給する空気供給部、及び紡績ユニット2の各部に動力を供給するための駆動モータ等が収容されている。第2エンドフレーム5には、機台制御装置41と、表示画面42と、入力キー43と、が設けられている。機台制御装置41は、紡績機1の各部を集中的に管理及び制御する。表示画面42は、紡績ユニット2の設定内容及び状態に関する情報等を表示することができる。オペレータが入力キー43を用いて適宜の操作を行うことにより、紡績ユニット2の設定作業を行うことができる。
【0025】
以下の説明では、スライバS、繊維束F(
図2参照)及び糸Yの走行経路において、スライバSが供給される側を上流といい、糸Yが巻き取られる側を下流という。紡績ユニット2に対して糸Yが走行する側を前という。本実施形態では、複数の紡績ユニット2の配列方向に延在する作業通路(図示省略)が紡績機1の前に設けられている。オペレータは、作業通路から各紡績ユニット2の操作及び監視等を行うことができる。
【0026】
図1及び
図2に示されるように、各紡績ユニット2は、糸Yの走行方向において上流から順に、ドラフト装置6及び芯糸供給装置200と、空気紡績装置7と、糸監視装置8と、テンションセンサ9と、糸貯留装置11と、ワキシング装置12と、巻取装置13と、を備えている。ユニットコントローラ10は、所定数の紡績ユニット2ごとに設けられており、紡績ユニット2の動作を制御する。
【0027】
ドラフト装置6は、スライバ(繊維束)Sをドラフトする。ドラフト装置6は、スライバSの走行方向において上流から順に、バックローラ対14と、サードローラ対15と、ミドルローラ対16と、フロントローラ対17と、を有している。各ローラ対14,15,16及び17は、ボトムローラと、トップローラと、を有している。ボトムローラは、第2エンドフレーム5に設けられた駆動モータ又は各紡績ユニット2に設けられた駆動モータにより回転駆動される。ミドルローラ対16のボトムローラに対しては、エプロンベルト18aが設けられている。ミドルローラ対16のトップローラに対しては、エプロンベルト18bが設けられている。
【0028】
芯糸供給装置200は、芯糸パッケージCPから芯糸Cを解舒して、空気紡績装置7に芯糸Cを供給する。具体的には、芯糸供給装置200は、ドラフト装置6のミドルローラ対16とフロントローラ対17との間から、繊維束Fの走行経路上に芯糸Cを供給する。これにより、芯糸供給装置200は、芯糸Cを空気紡績装置7に供給する。
【0029】
空気紡績装置7は、芯糸供給装置200から供給された芯糸Cを芯として、ドラフト装置6においてドラフトされた繊維束Fに旋回空気流によって撚りを与えて糸Yを生成する。より詳細には(ただし、図示省略)、空気紡績装置7は、紡績室と、繊維案内部と、旋回空気流発生ノズルと、中空ガイド軸体と、を有している。繊維案内部は、上流に配置された芯糸供給装置200から供給された芯糸Cとドラフト装置6から供給された繊維束Fとを紡績室内に案内する。旋回空気流発生ノズルは、芯糸C及び繊維束Fが走行する経路の周囲に配置されている。旋回空気流発生ノズルから空気が噴射されることにより、紡績室内に旋回空気流が発生する。この旋回空気流によって、繊維束Fを構成する複数の繊維の各繊維端が反転されて旋回させられる。中空ガイド軸体は、糸Yを紡績室内から空気紡績装置7の外部に案内する。
【0030】
糸監視装置8は、空気紡績装置7と糸貯留装置11との間において、走行する糸Yの情報を監視して、監視した情報に基づいて糸欠陥の有無を検出する。糸監視装置8は、糸欠陥を検出した場合、糸欠陥検出信号をユニットコントローラ10に送信する。糸監視装置8は、糸欠陥として、例えば、糸Yの太さ異常及び/又は糸Yに含有されている異物を検出する。糸監視装置8は、糸切れ(糸Yの有無)等も検出する。テンションセンサ9は、空気紡績装置7と糸貯留装置11との間において、走行する糸Yのテンションを測定し、テンション測定信号をユニットコントローラ10に送信する。糸監視装置8及び/又はテンションセンサ9の検出結果に基づきユニットコントローラ10が異常有りと判断した場合、紡績ユニット2において、糸Yが切断される。具体的には、空気紡績装置7への空気の供給が停止されて、糸Yの生成が中断されることにより、糸Yが切断される。或いは、別途設けられたカッターにより糸Yが切断されるようにしてもよい。
【0031】
ワキシング装置12は、糸貯留装置11と巻取装置13との間において、糸Yにワックスを付与する。
【0032】
糸貯留装置11は、空気紡績装置7と巻取装置13との間において、糸Yを貯留する。糸貯留装置11は、外周面に糸Yが巻かれることにより糸Yを貯留する糸貯留ローラを備えている。糸貯留装置11は、空気紡績装置7から糸Yを安定して引き出す機能、糸継台車3による糸継動作時等に空気紡績装置7から送り出される糸Yを滞留させて糸Yが弛むのを防止する機能、及び糸貯留装置11よりも下流における糸Yのテンションの変動が空気紡績装置7に伝わるのを防止する機能を有している。
【0033】
巻取装置13は、空気紡績装置7により生成された糸YをボビンBに巻き取ってパッケージPを形成する。巻取装置13は、クレードルアーム21と、巻取ドラム22と、トラバースガイド23と、を有している。クレードルアーム21は、ボビンBを回転可能に支持する。クレードルアーム21は、支軸24によって揺動可能に支持されており、ボビンBの表面又はパッケージPの表面を巻取ドラム22の表面に適切な圧力で接触させる。第2エンドフレーム5に設けられた駆動モータ(図示省略)が、複数の紡績ユニット2の巻取ドラム22を一斉に駆動する。これにより、各紡績ユニット2において、ボビンB又はパッケージPが巻取方向に回転させられる。各紡績ユニット2のトラバースガイド23は、複数の紡績ユニット2により共有されるシャフト25に設けられている。第2エンドフレーム5の駆動モータがシャフト25を巻取ドラム22の回転軸方向に往復駆動することによって、回転するボビンB又はパッケージPに対してトラバースガイド23が糸Yを所定幅でトラバースする。
【0034】
糸継台車3は、ある紡績ユニット2において糸Yが切断されたり、何らかの理由により糸Yが切れたりした場合、当該紡績ユニット2まで走行して、糸継動作を行う。糸継台車3は、糸継装置26と、サクションパイプ27と、サクションマウス28と、を有している。サクションパイプ27は、支軸31によって回動可能に支持されており、空気紡績装置7からの糸Yを捕捉して糸継装置26に案内する。サクションマウス28は、支軸32によって回動可能に支持されており、巻取装置13からの糸Yを捕捉して糸継装置26に案内する。糸継装置26は、案内された糸Y同士の糸継ぎを行う。糸継装置26は、圧縮空気を用いるスプライサ、又は糸Yを機械的に継ぐノッター等である。
【0035】
糸継台車3が糸継動作を行うとき、パッケージPを反巻取方向に回転(逆回転)させる。このときには、パッケージPが巻取ドラム22から離間するようにクレードルアーム21がエアシリンダ(図示省略)によって移動させられ、糸継台車3に設けられた逆回転用ローラ(図示省略)によってパッケージPが逆回転させられる。
【0036】
上述した芯糸供給装置200について、より詳細に説明する。
図2に示されるように、芯糸供給装置200は、芯糸ボビン保持部50と、芯糸供給ユニット51と、芯糸案内部52と、を備えている。
【0037】
芯糸ボビン保持部50は、芯糸ボビンCBに芯糸Cが巻き付けられて形成された芯糸パッケージCPを保持する。この芯糸ボビン保持部50は、芯糸Cの走行方向(以下、芯糸走行方向という)において芯糸供給ユニット51よりも上流の位置において、芯糸パッケージCPを支持する。芯糸供給ユニット51は、芯糸パッケージCPから解舒されると共に、ガイドローラ53を介して案内された芯糸Cに張力を付与しながら、芯糸Cを供給する。芯糸案内部52は、芯糸供給ユニット51から供給された芯糸Cをドラフト装置6のミドルローラ対18とフロントローラ対19との間に案内する。
【0038】
本実施形態の芯糸供給装置200は、伸縮性を有する芯糸Cを供給可能である。しかし、芯糸供給装置200は、他の種類の芯糸C(例えば、モノフィラメント系の芯糸、マルチフィラメント糸の芯糸)を供給可能であってもよい。
【0039】
伸縮性を有する芯糸Cは、2種類のポリマーから構成されていてもよいし(いわゆるデュアルコアヤーン)、1種類のポリマーから構成されていてもよい(いわゆるシングルコアヤーン)。デュアルコアヤーンの一例として、芯糸Cは、ポリウレタン(PU)とポリエステル系フィラメント(T400;東レ・オペロンテックス株式会社製)とから構成された糸であってもよい。芯糸Cの伸縮性は、例えば、JIS L 1013における伸縮性測定において、伸縮伸長率50%以上の値を示すことを意味する。
【0040】
図3に示されるように、芯糸供給ユニット51は、ユニットベース60(ベース部)と、芯糸検出装置90と、張力付与部70と、弛み確保部80と、芯糸送出部100と、を備えている。以下の説明では、芯糸走行方向における芯糸ボビン保持部50に近い位置を上流といい、芯糸案内部52に近い位置を下流という。
【0041】
ユニットベース60は、芯糸検出装置90、弛み確保部80、張力付与部70、及び芯糸送出部100を支持している。ユニットベース60上には、芯糸Cの供給中において直線状の通常糸道が形成される。芯糸検出装置90、張力付与部70、及び芯糸送出部100は、通常糸道に沿って配置されている。ユニットベース60の最上流には、芯糸Cを案内する芯糸ガイド61が設けられている。
【0042】
張力付与部70は、芯糸Cの供給中に芯糸Cに張力を付与する。張力付与部70は、芯糸走行方向における芯糸ガイド61よりも下流において芯糸Cに張力を付与する。張力付与部70は、上方に開放された矩形箱状の固定片73と、固定片73に対して回動可能に取り付けられた可動片74とを有する。可動片74は、固定片73に設けられたバネ(図示省略)によって、固定片73から開く方向に付勢されている。固定片73には、芯糸走行方向に直交または略直交するシャフト(図示せず)が複数設けられており、複数のシャフトは芯糸走行方向に沿って所定の間隔ごとに設けられている。可動片74に設けられた複数の突起の各先端には孔が形成されている(何れも図示せず)。芯糸Cは、これらのシャフトと孔に対して、交互に掛けられる。このため、
図3に示されるように、固定片73に対して可動片74が開くと、芯糸Cは複数回屈曲させられる。この状態において、ドラフト装置6及び空気紡績装置7によって芯糸Cが下流に引っ張られると(すなわち、芯糸Cが走行していると)、芯糸走行方向における張力付与部70よりも下流(張力付与部70を含む)の芯糸Cに張力が付与される。このときの張力付与部70の状態を、張力付与状態とする。
【0043】
固定片73に対して可動片74が閉じると、芯糸Cは略直線状となる。これにより、張力付与部70を含む張力付与部70よりも下流において芯糸Cに付与される張力が解除される(若しくは、張力がゼロに近い状態となる)。このときの張力付与部70の状態を、張力非付与状態とする。張力付与部70は、可動片74を回動させるための操作部材75と、エアシリンダ76(
図5参照)と、を有している。操作部材75は、エアシリンダ76によって移動させられることにより、可動片74に対して当接及び離間する。エアシリンダ76に空気が供給されると、操作部材75が下側(固定片73に対して可動片74が閉じる方向)に移動する。これにより、可動片74が閉じ、張力付与部70は張力非付与状態に切り換えられる。操作部材75は、エアシリンダ76への空気の供給が停止されると、可動片74から離間して上側(固定片73に対して可動片74が開く方向)に移動させられる。これにより、可動片74が開き、張力付与部70は張力付与状態に切り換えられる。
【0044】
図3に示されるように、弛み確保部80は、芯糸走行方向において、芯糸ボビン保持部50(
図2参照)と芯糸送出部100の間に設けられている。弛み確保部80は、芯糸走行方向における張力付与部70よりも下流において芯糸Cに弛みを付与する。弛み確保部80は、芯糸走行方向における張力付与部70よりも下流において芯糸Cの弛みを確保する。弛み確保部80は、アーム81と、エアシリンダ82と、を有している。アーム81は、支軸81cを介してユニットベース60に回動可能に取り付けられている。アーム81は、エアシリンダ82によって回動させられる。アーム本体81aの先端部81bは、エアシリンダ82に空気が供給されると、通常糸道から離れた位置(
図3における二点鎖線の位置)に移動させられる。このとき、アーム81は弛み確保位置P2に配置される。アーム本体81aの先端部81bは、エアシリンダ82への空気の供給が停止されると、芯糸Cの走行経路(
図3における実線の位置)に移動させられる。このとき、アーム81は通常位置P1に配置される。
【0045】
図3及び
図4に示されるように、アーム81は、支軸81cに支持される支点部81eから延びる例えば細長い板状のアーム本体81aと、アーム本体81aの先端部81bに取り付けられた調整部85とを有する。アーム本体81aの先端部81bには、アーム本体81aから垂直に延びる板状の第1突片83が設けられている。調整部85は、アーム本体81aの先端部81bに対して支軸85cを介して回動可能に取り付けられている。調整部85の支軸85cは、アーム本体81aの支軸81cと平行である。調整部85は、アーム本体81aに対して展開された状態(
図3、
図4及び
図6参照)と、アーム本体81aに対して回動及び退避した状態(
図8参照)のそれぞれにおいて、アーム本体81aに固定され得る。
【0046】
調整部85は、アーム本体81aの先端部81bに部分的に重なり合う例えば板状のベース片85aを含む。ベース片85aは第1突片83とは反対側に取り付けられており、調整部85は第1突片83とは干渉しない。
図3及び
図4に示されるように、ベース片85aは、調整部85が展開された状態で、アーム本体81aの仮想延長面に沿ってアーム本体81aの先端部81bから突出する。ベース片85aの先端には、ベース片85aに対して垂直に延びる板状の第2突片84が設けられている。調整部85が展開された状態では、第1突片83と第2突片84は例えば平行である。アーム81が通常位置P1に配置された状態で、第1突片83と第2突片84は、芯糸Cの通常糸道に交差する。第1突片83には、芯糸Cを通過させる円形の第1係合孔83aが形成されている。第2突片84には、芯糸Cを通過させる円形の第2係合孔84aが形成されている。第1係合孔83a及び第2係合孔84aは、アーム81の先端に設けられた2つの芯糸係合部(芯糸通過部)である。
【0047】
アーム81が弛み確保位置P2に配置されると、芯糸Cには弛みが確保される。アーム81が弛み確保位置P2に配置されたときの弛み確保部80の状態を、弛み確保状態と呼ぶ。アーム81が通常位置P1に配置されたときの弛み確保部80の状態を、弛み非確保状態と呼ぶ。
【0048】
芯糸送出部100は、芯糸Cをドラフト装置6に送出する機能、芯糸Cをクランプする機能、及び芯糸Cを切断する機能を有している。芯糸送出部100の下流端(出口)は、芯糸案内部52を介して、ドラフト装置6のミドルローラ対16とフロントローラ対17の間の位置に対向するように設けられている。芯糸送出部100は、クランプ部106(
図3参照)と、カッター(図示せず)と、エアシリンダ108(
図5参照)と、を有している。
【0049】
芯糸送出部100は、芯糸走行方向における張力付与部70及び弛み確保部80よりも下流において芯糸Cをドラフト装置6に送出する。「芯糸Cを送出する」とは、芯糸Cの供給開始(再開)時において、芯糸送出部100が芯糸C(芯糸Cの糸端)をドラフト装置6に送出する動作をいう。「芯糸Cを供給する」とは、芯糸Cの供給開始(再開)後(芯糸送出部100による芯糸Cの送出後)において、芯糸供給装置200が、芯糸Cに張力を付与しながら芯糸Cをドラフト装置6に連続的に供給する動作(すなわち、紡績中の動作)をいう。
【0050】
クランプ部106は、芯糸送出部100内において芯糸C(芯糸Cの糸端)をクランプする。カッターは、クランプ部106がクランプした芯糸Cを切断する機能を有している。
【0051】
エアシリンダ108(
図5参照)に空気が供給されると、クランプ部106は、芯糸Cをクランプする。このときのクランプ部106の状態をクランプ状態と呼ぶ。エアシリンダ108への空気の供給が停止されると、クランプ部106は、芯糸Cを開放する。このときのクランプ部106の状態を非クランプ状態と呼ぶ。
【0052】
カッターは、芯糸走行方向におけるクランプ部106よりも下流において、芯糸Cを切断する。カッターは、エアシリンダ108によって、クランプ部106と連動して稼動させられる。カッターは、クランプ部106が非クランプ状態からクランプ状態に切り換えられるときに、芯糸Cを切断する。
【0053】
図3に示されるように、芯糸検出装置90は、例えば、芯糸走行方向における張力付与部70よりも上流の位置において芯糸Cの状態を検出する。例えば、芯糸検出装置90は、芯糸Cの状態として、芯糸Cの有無を検出する。これにより、芯糸検出装置90は、芯糸Cの糸切れ及び/又は芯糸パッケージCPの芯糸Cがなくなったことを検出できる。芯糸走行方向における芯糸検出装置90よりも上流には、芯糸Cを案内する芯糸ガイド62が配置されている。
【0054】
芯糸検出装置90は、投光部91と受光部92とを有する光学式センサである。投光部91は、芯糸検出装置90を通過する芯糸Cに対して光を投光する。投光部91は、例えば発光ダイオードにより構成されている。投光部91の投光は、ユニットコントローラ10によって制御されている。投光部91と受光部92の間に糸道が形成されている。芯糸検出装置90は、糸道を走行する芯糸Cの状態を非接触で検出する。
【0055】
受光部92は、投光部91からの光のうち、芯糸Cを透過した光を受光する。受光部92は、例えばフォトダイオードであり、受光した光の強度を電気信号に変換して、その電気信号をユニットコントローラ10に出力する。なお、受光部92は、投光部91からの光のうち、芯糸Cによって反射された光を受光してもよい。芯糸検出装置90、張力付与部70、及び芯糸送出部100としては、例えば、上記特許文献1に記載された構成、又はその他公知の構成を採用することができる。
【0056】
図4に示されるように、芯糸供給ユニット51は、更に、芯糸走行方向において芯糸ボビン保持部50と弛み確保部80の間に設けられたクランプ装置110を備える。言い換えれば、芯糸走行方向において、通常位置P1に位置する弛み確保部80の第1係合孔83a(調整部85が展開された状態では第1係合孔83a及び第2係合孔84a)よりも上流に、クランプ装置110が配置されている。芯糸供給ユニット51は、更に、芯糸走行方向においてクランプ装置110の下流に近接して配置されたガイド部120を備える。
【0057】
クランプ装置110は、張力付与部70と弛み確保部80との間に配置されている。言い換えれば、クランプ装置110は、張力付与部70と、通常位置P1に位置する弛み確保部80の第1係合孔83aとの間に配置されている。クランプ装置110は、受け部114と、フレーム部112と、クランプバー113と、を有する。受け部114は、通常糸道に平行に延びる板状部材であり、ガイド部120のベース板121(後述)に固定されている。フレーム部112は、受け部114を包囲するように配置されている。受け部114、フレーム部112、及びクランプバー113は、例えばセラミック製である。受け部114とクランプバー113との間に、芯糸Cの通常糸道が位置する。クランプバー113が待機位置に位置している状態では、クランプバー113は芯糸Cの通常糸道から離間している。受け部114も、芯糸Cの通常糸道から離間している。受け部114には、ゴムパッド等のゴム部材116が取り付けられている。ゴム部材116は、受け部114を包囲するように設けられてもよいが、少なくとも、通常糸道に対面する受け部114の表面に取り付けられる。
【0058】
クランプ装置110は、エアシリンダ118(
図5参照)を有する。フレーム部112は、通常糸道に直交する方向に往復移動可能な出没軸111の先端に取り付けられている。フレーム部112は、例えば、バネ(図示省略)によって、上方(糸道ガイド95の基端面から離れる方向)に付勢されている。エアシリンダ118に空気が供給されると、出没軸111を介してフレーム部112が下降し、クランプバー113と受け部114と間において芯糸Cがクランプされる(
図7参照)。このときのクランプ装置110の状態をクランプ状態と呼ぶ。エアシリンダ118への空気の供給が停止されると、出没軸111を介してフレーム部112が上昇し、クランプバー113は芯糸Cから離れる(
図4参照)。このときのクランプ装置110の状態を非クランプ状態と呼ぶ。
【0059】
クランプ装置110は、弛み確保部80により弛みが確保された芯糸Cの弛み確保部分が、芯糸走行方向とは反対方向に戻ることを防止する戻り防止部である。クランプ装置110は、弛み確保部80により弛みが確保された芯糸Cの弛み確保部分が、クランプ装置110よりも上流へと(すなわち張力付与部70に向けて)戻ることを防止する。上記クランプ状態は、芯糸Cの弛み確保部分の戻りを防止する戻り防止状態に相当する。上記非クランプ状態は、芯糸Cの弛み確保部分を開放する開放状態に相当する。
【0060】
ガイド部120は、ベース板121と、糸通過部122aと、一対の逸脱規制片122と、を有する。ベース板121は、糸道ガイド95の基端面に平行に設けられた固定部と、固定部から垂直に伸びる本体部と、を有する。糸通過部122aは、ベース板121の本体部の幅方向中央に形成されている。一対の逸脱規制片122は、ベース板121の上部(固定部とは反対側)に連続して設けられており、クランプバー113を覆うように互いに平行な状態で延在している。糸通過部122aには、通常糸道上を走行する芯糸Cが通過する。一対の逸脱規制片122は、芯糸Cの走行経路を規制している。弛み確保部80が弛み確保状態に切り替えられたとき、芯糸Cは、アーム81の先端部81bの回動範囲を中心とする扇状の領域付近を移動する。芯糸Cは、常に一対の逸脱規制片122の間に配置される(
図7参照)。一対の逸脱規制片122は、その扇状の領域から芯糸Cが左右方向に(支軸81cの軸方向に)逸脱することを規制する。
【0061】
ガイド部120は、アーム81が通常位置P1に配置された状態で、第1突片83と第2突片84の間に配置される板状の糸道ガイド123を有する。糸道ガイド123には、円形の糸通過孔123aが形成されている。
【0062】
ユニットベース60の下流端であって糸道ガイド123と芯糸送出部100との間には、板状の糸道ガイド95が設けられている。糸道ガイド95の先端には、例えばV字状の係合溝95aが形成されている。係合溝95aは、芯糸Cが係合溝95aの頂部又は斜辺部に当接することにより、芯糸Cを案内する。
【0063】
図3に示されるように、芯糸供給ユニット51は、第1空気供給管54と、第2空気供給管55と、中継基板56と、多芯ケーブル57と、を更に備えている。
【0064】
図5に示されるように、第1空気供給管54は、図略の空気供給源に第2エンドフレーム5の空気供給部を介して接続された空気供給管と、各エアシリンダ118,76,82,108のそれぞれに対応して接続された複数の空気供給管と、を中継している。これにより、第1空気供給管54を介して、第1エンドフレーム4から各エアシリンダ118,76,82,108に空気が供給される。
【0065】
第1空気供給管54には、第1電磁弁58が取り付けられている。第1電磁弁58は、第1エンドフレーム4から各エアシリンダ118,76,82,108に供給される空気の供給と停止を行う。例えば糸監視装置8が糸欠陥を検出して紡績ユニット2において糸Yの生成を停止する場合、第1電磁弁58が開かれ、クランプ装置110はクランプ状態に、張力付与部70は張力非付与状態に、弛み確保部80は弛み確保状態に、クランプ部106はクランプ状態にそれぞれ切り換えられる。このとき、
図6及び
図7に示されるように、糸通過部122a、糸通過孔123a、及び係合溝95aは略一直線上に並んでいるが、第1突片83及び第2突片84は、ベース板121及び糸道ガイド95の間の領域から離脱して上方へと移動する。芯糸Cは、クランプバー113及び受け部114によって挟まれ、第1係合孔83a、糸通過孔123a及び第2係合孔84aの内部を通過する。アーム81が弛み確保位置P2に配置された状態では、芯糸Cは、クランプバー113、第1係合孔83a、糸通過孔123a及び第2係合孔84aによって4回屈曲される。
【0066】
紡績ユニット2において糸Yの生成を開始(再開)する場合、第1電磁弁58が閉じられ、クランプ装置110は非クランプ状態に、張力付与部70は張力付与状態に、弛み確保部80は弛み非確保状態に、クランプ部106は非クランプ状態にそれぞれ切り換えられる。このとき、
図3及び
図4に示されるように、糸通過部122a、第1係合孔83a、糸通過孔123a、第2係合孔84a、及び係合溝95aが略一直線上に並ぶ。芯糸Cは、クランプバー113及び受け部114の間の空間を非接触で通過し、さらに、糸通過部122a、第1係合孔83a、糸通過孔123a及び第2係合孔84aの内部を通過し、係合溝95aによって案内される。アーム81が通常位置P1に配置された状態では、糸道ガイド123と、第1係合孔83a及び第2係合孔84aは通常糸道上に配置される。
【0067】
第2空気供給管55は、空気供給源に接続された空気供給管と、芯糸送出部100に接続された空気供給管と、を中継している。これにより、第2空気供給管55を介して、第2エンドフレーム5から芯糸送出部100に空気が供給される。
【0068】
第2空気供給管55には、第2電磁弁59が取り付けられている。第2電磁弁59は、第2エンドフレーム5から芯糸送出部100に供給される空気の供給と停止を行う。紡績ユニット2において糸Yの生成を開始(再開)する場合、第2電磁弁59が開かれる。その結果、芯糸送出部100の内部における芯糸Cの走行経路に空気が噴射され、芯糸送出部100から芯糸Cが送出される。第2電磁弁59が閉じられると、芯糸送出部100における芯糸Cの走行経路への空気の噴射が停止するので、芯糸送出部100による芯糸Cの送出動作も停止する。
【0069】
中継基板56は、芯糸検出装置90、第1電磁弁58、及び第2電磁弁59のそれぞれと電気的に接続されている。
【0070】
多芯ケーブル57は、中継基板56と、ユニットコントローラ10に接続された多芯ケーブル(図示省略)と、を電気的に中継している。これにより、ユニットコントローラ10は、芯糸供給ユニット51を制御することができる。
【0071】
上述した芯糸供給装置200の動作及び芯糸供給装置200による芯糸紡績方法について説明する。
図3に示されるように、芯糸Cの供給時において、芯糸Cは、ドラフト装置6及び空気紡績装置7によって引っ張られることにより、芯糸走行方向の下流に向かって走行する。このとき張力付与部70は張力付与状態に保持されおり、芯糸Cは、張力付与部70により張力を付与されながら、ドラフト装置6に向かって走行する。芯糸Cの供給中、弛み確保部80は弛み非確保状態となっており、クランプ部106は非クランプ状態となっている。
【0072】
続いて、
図6に示されるように、芯糸検出装置90と糸監視装置8とテンションセンサ9の少なくとも何れかによって糸欠陥又は糸(芯糸C又は糸Y)が無いことが検出されると、ユニットコントローラ10から中継基板56に芯糸Cの供給を中断させる制御信号が送られて、芯糸Cの供給が中断される。具体的には、第1電磁弁58が開かれ、芯糸送出部100のクランプ部106がクランプ状態に切り換えられる。これに連動して芯糸送出部100のカッターが稼動し、芯糸走行方向におけるクランプ部106よりも下流に位置する芯糸Cが切断される。張力付与部70が張力非付与状態に切り換えられ、弛み確保部80が弛み確保状態に切り換えられ、クランプ装置110がクランプ状態に切り替えられる。これにより、芯糸Cへの張力付与が解除されて、芯糸Cの弛みが確保される。なお、紡績ユニット2による紡績が正常に終了した場合も、ユニットコントローラ10から中継基板56に芯糸Cの供給を終了させる制御信号が送られて、上記同様の動作が行われる。
【0073】
芯糸Cの供給開始時には、第1電磁弁58が閉じられ、クランプ部106が非クランプ状態に、張力付与部70が張力付与状態に、クランプ装置110が非クランプ状態に、弛み確保部80が弛み非確保状態にそれぞれ切り換えられる。第2電磁弁59が開き、弛み確保部80によって弛みが確保された芯糸Cが芯糸送出部100によってドラフト装置6に送出される。これにより、芯糸Cの供給が開始される。クランプ装置110は、芯糸送出部100による芯糸Cの送出の開始時に、戻り防止状態から開放状態に切り替わる。なお、芯糸Cの送出タイミングを調整する等により、クランプ装置110は、芯糸送出部100による芯糸Cの送出の開始直後に、戻り防止状態から開放状態に切り替わってもよい。「芯糸Cの送出の開始直後」とは、芯糸Cの送出の開始後で、且つ、芯糸Cの弛み確保部分が無くなり芯糸Cが通常糸道上に配置されるまでの何れかの時点を意味する。
【0074】
芯糸送出部100は、ミドルローラ対16とフロントローラ対17の間の位置に向けて、伸縮性を有する芯糸Cを送出する。ドラフト装置6と空気紡績装置7により、芯糸Cを含有する糸Yが生成される。通常紡績中においては、芯糸送出部100は作動しない。芯糸Cは、フロントローラ対17の回転駆動により連続供給される。
【0075】
芯糸供給装置200において、芯糸Cの伸縮性の大きさ(程度)に応じて、芯糸Cの弛み確保部分の経路長を調整してもよい。
図8に示されるように、調整部85を回動させて退避させることで、芯糸Cが、第2係合孔84aを通らず第1係合孔83aのみを通るように芯糸Cの経路を変更できる。調整部85は、芯糸Cの弛み確保部分の経路長を変更可能である。「芯糸Cの弛み確保部分の経路長」とは、弛み確保状態における芯糸Cの経路長と、弛み非確保状態における芯糸Cの経路長(通常糸道の長さ)との差分である。「芯糸Cの弛み確保部分の経路長」は、弛み確保量(又は弛み付与量)と言い換えられてもよい。なお、エアシリンダ82の変位量を調整し、アーム81の回動量(上昇量)を調整することで、弛み確保量を調整してもよい。この場合、エアシリンダ82が調整部に該当する。調整部は、芯糸Cの伸縮性が大きいほど、弛み確保量を大きくする。調整部は、芯糸Cの伸縮性が小さいほど、弛み確保量を小さくする。
【0076】
芯糸送出部100は、芯糸Cの弛み確保部分の経路長に応じて、送出力を調整してもよい。芯糸送出部100における送出力は、供給される空気の圧力を調整することにより調整されてもよく、空気の供給時間(第2電磁弁59の開時間)を調整することにより調整されてもよい。芯糸送出部100は、芯糸Cの弛み確保部分の経路長が長いほど、送出力を強くする。芯糸送出部100は、芯糸Cの弛み確保部分の経路長が短いほど、送出力を弱くする。
【0077】
芯糸Cの弛み確保部分の経路長は、芯糸送出部100のクランプ部106からフロントローラ対17のトップローラまでの間の距離の1倍以上3倍以下であることが好ましい。上記距離が1倍よりも短いと、芯糸送出部100により送出する芯糸Cがドラフト装置6に到達しない恐れがある。上記距離が3倍よりも長いと、芯糸送出部100による芯糸Cの送出時に芯糸Cが周辺部品に絡んでしまう恐れがある。上記距離の基準すなわち始点と終点についてより厳密に説明する。上記距離の始点は、クランプ部106のうち芯糸Cをクランプする領域(挟持面)の下流端点である。上記距離の終点は、フロントローラ対17のニップ点である。
【0078】
本実施形態の芯糸供給装置200、紡績機1及び芯糸紡績方法によれば、継ぎ目の非常に少ないパッケージPが形成される。
図9(a)に示されるように、本実施形態では、パッケージPにおいて、糸Yに含まれる複数の継ぎ目の間隔は、管糸交換に起因する周期的な継ぎ目の間隔Lよりも長い。
図9(b)には、参考形態のパッケージPXに関して、管糸交換に起因する周期的な継ぎ目Zの間隔Lが示されている。すなわち、パッケージPには、管糸交換による継ぎ目形成に相当する周期Lでは、継ぎ目が含まれていない。なお、
図9(a)に示される例では、パッケージPにおける継ぎ目の数が少ないため、継ぎ目が図示されていない。「管糸交換」とは、リング精紡機で巻かれた管糸(精紡ボビン)を自動ワインダによりパッケージに巻き返す工程において実施される動作であり、1つの管糸を巻き返した後に次の管糸に交換する動作である。1つの管糸の終端と、次の管糸の始端とは自動ワインダの糸継装置により継がれ、その結果として、継ぎ目が生成される。自動ワインダにより1つのパッケージを形成する間に複数(多数)の管糸を巻き返すため、自動ワインダが形成するパッケージに含まれる継ぎ目の数は、本実施形態に比べて多い。
【0079】
本実施形態では、パッケージPは、芯糸パッケージCPの交換に起因する継ぎ目も有していないが、当該継ぎ目が含まれていてもよい。含まれている場合であっても、1つの芯糸パッケージCPに巻かれている芯糸Cの全長は、一般的に1つの管糸の全長よりも長い。したがって、芯糸パッケージCPの交換に起因する継ぎ目が含まれていたとしても、当該継ぎ目の数は少ない。
【0080】
本実施形態の芯糸供給装置200によれば、芯糸走行方向における弛み確保部80よりも上流の位置に設けられたクランプ装置110(戻り防止部)は、芯糸Cの弛み確保部分が上流に戻ることを防止する。よって、伸縮性を有する芯糸Cを用いる場合でも、芯糸送出部100による芯糸の適正な送出距離が実現される。これにより、芯糸Cをドラフト装置6に適正に供給することができる。
【0081】
芯糸送出部100による芯糸Cの送出の開始時又は開始後に、クランプ装置110(戻り防止部)が戻り防止状態から開放状態に切り替わる。これにより、芯糸Cが送出される際、芯糸Cの弛み確保部分が上流に戻ることを確実に防止できる。
【0082】
戻り防止部としてのクランプ装置110が芯糸Cを物理的に挟むので、芯糸Cが上流に戻ることを防止できる。
【0083】
芯糸供給装置200が張力付与部70を備える構成によれば、芯糸Cを好適に供給することができる。
【0084】
上記実施形態のレイアウトでは、弛み確保部80とクランプ装置110との間の距離が近くなっており、芯糸Cの縮みの伝播が軽減される。その結果として、弛み量の減少を回避できる。
【0085】
弛み確保部80によって芯糸CをM字状に屈曲させることにより、小さなスペースで大きな弛みを確保できる。
【0086】
調整部85等により、芯糸Cの伸縮性に応じて弛み確保部分の経路長を調整することにより、芯糸Cの種類によらず、芯糸Cをドラフト装置6に適正に供給することができる。
【0087】
芯糸Cの伸縮性に応じて芯糸送出部100における送出力を変更することにより、芯糸Cの種類によらず、芯糸Cをドラフト装置6に適正に送出することができる。
【0088】
本実施形態の紡績機1によれば、上述した作用により、芯糸Cをドラフト装置6に適正に供給することができる。伸縮性を有する芯糸Cを含有する糸Yを好適に生成して、パッケージPを形成することができる。
【0089】
弛み確保部80によって形成される芯糸Cの弛み確保部分の経路長は、芯糸送出部100のクランプ部106からフロントローラ対17のトップローラまでの間の距離の1倍以上3倍以下である。これにより、芯糸送出部100によって送出された芯糸Cが確実にフロントローラ対17に到達する。
【0090】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態と以下の変形例は、適宜組み合わせてもよい。
【0091】
例えば、弛み確保部80による弛み確保時に(すなわち芯糸Cの供給停止中に)、張力付与部70が芯糸Cに張力を付与することにより、戻り防止部として機能してもよい。この場合、張力付与部70が芯糸Cに付与する張力の大きさは、通常紡績中に付与する張力の大きさとは異なっていてもよい。上記実施形態とは異なり、張力付与部70の空気系統が、芯糸送出部100及び弛み確保部80とは別系統とされてもよく、或いは、張力付与部70において空気の供給により可動片74を閉じる仕組みに変更されてもよい。この構成によれば、張力付与部70が、芯糸Cの供給中には芯糸Cに張力を付与し、芯糸Cの送出前には(すなわち芯糸Cの供給停止中には)弛み確保部分が戻ることを防止する。張力付与部70が2つの機能を兼ね備えるので、上記実施形態のクランプ装置110は省略してもよい。
【0092】
上記実施形態では、弛み確保部80が、ユニットベース60(ベース部)に回動可能に取り付けられたアーム81を有する形態を一例に説明した。しかし、ベース部に移動可能に取り付けられたアームを有する弛み確保部が適用されてもよい。その場合、支軸81cは存在しない。アームは、アームの全体がベース部に対して近接及び離間するように(並進運動するように)設けられてもよい。アームを移動させるための移動手段(駆動部)がエアシリンダ82とは別に設けられてもよい。アームに形成された1つ又は2つの芯糸通過部は、アームが弛み確保位置に配置された状態では、ガイド部120及びクランプ装置110から離間する。そのとき芯糸Cは複数回屈曲する。
【0093】
上記実施形態では、弛み確保部80に調整部85が設けられる形態を一例に説明した。しかし、調整部85が省略されてもよい。アーム本体81aの先端部81bに、第1係合孔83aが形成された第1突片83と第2係合孔84aが形成された第2突片84とが一体的に形成されてもよい。すなわち、アーム81に、2つの芯糸通過部が一体的に形成され、2つの芯糸通過部の配置により弛み確保部分の経路長が決まっていてもよい。2つの芯糸通過部は、円形の孔部である形態に限られず、楕円形又は多角形の孔部であってもよく、芯糸Cが係合可能なノッチ形状(V字状)を呈してもよい。
【0094】
張力付与部70が省略されてもよい。クランプ装置110の配置は、張力付与部70と弛み確保部80の間に限られず、適宜に変更されてもよい。
【0095】
弛み確保部80は、別の呼称で呼ばれてもよい。弛み確保部80の動作前に比べて動作後においては、芯糸Cは弛んでいる。しかし芯糸Cの弛みの度合いは、芯糸Cによって異なり得る。弛み確保部80は、例えば、芯糸Cを迂回させるという意味に基づき「芯糸迂回部」又は「経路迂回部」と呼ばれてもよい。弛み確保部80は、例えば、芯糸Cを保持する保持長を拡大するという意味に基づき「保持長拡大部」と呼ばれてもよい。弛み確保部80は、例えば、芯糸Cの経路を移動させるという意味に基づき「芯糸経路移動部」と呼ばれてもよい。
【0096】
上記実施形態では、ドラフト装置6が、バックローラ対14と、サードローラ対15と、ミドルローラ対16と、フロントローラ対17と、を備える形態を一例に説明した。しかし、バックローラ対14よりも上流にローラ対が1つ以上設けられていてもよい。また、フロントローラ対(繊維束Fの搬送経路において空気紡績装置7に最も近い位置に配置されるローラ対)は、他の装置の一部として構成されていてもよい。例えば、紡績ユニット2は、ドラフト装置6でドラフトされた繊維束Fを空気紡績装置7に供給する供給装置を備え、フロントローラ対17は、供給装置の一部に含まれていてもよい。フロントローラ対17は、繊維束Sをドラフトするドラフト装置6又は繊維束Fを空気紡績装置7に供給する供給装置に含まれていてもよいし、他の装置に含まれずに単独で設けられていてもよい。
【0097】
紡績ユニット2では、糸貯留装置11が空気紡績装置7から糸Yを引き出す機能を有していたが、デリベリローラとニップローラとで空気紡績装置7から糸Yが引き出されてもよい。デリベリローラとニップローラとで空気紡績装置7から糸Yを引き出す場合、糸貯留装置11の代わりに、あるいは糸貯留装置11に加えて、吸引空気流を用いたスラックチューブ及び/又は機械的なコンペンセータ等を設けてもよい。
【0098】
紡績ユニット2では、糸継装置26により2つの糸端を接続する構成に代えて、パッケージPからの糸Yを空気紡績装置7に挿入し、ドラフト装置6のドラフト動作と空気紡績装置7の紡績動作を開始することにより、空気紡績装置7からの糸YとパッケージPの糸Yとを接続(ピーシング)してもよい。
【0099】
紡績機1では、機台高さ方向において、上側で供給された糸Yが下側で巻き取られるように各装置が配置されていた。しかし、下側で供給された糸が上側で巻き取られるように各装置が配置されていてもよい。
【0100】
紡績機1では、ドラフト装置6のボトムローラの少なくとも一つ及びトラバースガイド23が、第2エンドフレーム5からの動力によって(すなわち、複数の紡績ユニット2共通で)駆動されていた。しかし、紡績ユニット2の各部(例えば、ドラフト装置6、空気紡績装置7、巻取装置13等)が紡績ユニット2ごとに独立して駆動されてもよい。
【0101】
糸Yの走行方向において、テンションセンサ9が糸監視装置8よりも上流に配置されてもよい。ユニットコントローラ10は、1つの紡績ユニット2ごとに設けられてもよい。紡績ユニット2において、ワキシング装置12、テンションセンサ9及び糸監視装置8の少なくとも何れかは、省略されてもよい。糸Yにワックスを付与しない場合には、ワキシング装置12を省略せずに、ワキシング装置12からワックスのみを取り外してもよい。
【0102】
図1では、紡績機1は、チーズ形状のパッケージPを巻き取るように図示されているが、コーン形状のパッケージを巻き取ることも可能である。コーン形状のパッケージの場合、糸Yのトラバースにより糸Yの弛みが発生するが、当該弛みは、糸貯留装置11で吸収することができる。各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。
【符号の説明】
【0103】
1…紡績機(空気紡績機)、2…紡績ユニット、6…ドラフト装置、7…空気紡績装置(エアジェット紡績装置)、50…芯糸ボビン保持部、51…芯糸供給ユニット、60…ユニットベース(ベース部)、70…張力付与部、80…弛み確保部、81…アーム、82…エアシリンダ(駆動部)、83a…第1係合孔(芯糸通過部)、84a…第2係合孔(芯糸通過部)、100…芯糸送出部、106…クランプ部、100…芯糸送出部、110…クランプ装置(戻り防止部)、200…芯糸供給装置、C…芯糸、CP…芯糸パッケージ、F…繊維束、P…パッケージ、Y…糸。