(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025031061
(43)【公開日】2025-03-07
(54)【発明の名称】情報処理装置および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G01W 1/10 20060101AFI20250228BHJP
【FI】
G01W1/10 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023137029
(22)【出願日】2023-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂木 孝之
(57)【要約】
【課題】天候を精度良く推定することができる情報処理装置および情報処理方法を提供すること。
【解決手段】情報処理装置は、においセンサによる第1の計測値を取得し、ユーザの情報端末から送信された出力要求に応じて第1の計測値に対応した天候を示す第1の天候情報を出力するプロセッサを備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
においセンサによる第1の計測値を取得し、ユーザの情報端末から送信された出力要求に応じて前記第1の計測値に対応した天候を示す第1の天候情報を出力するプロセッサ
を備える情報処理装置。
【請求項2】
第1モデルが格納されるメモリを有し、前記メモリは第1の計測値に基づいて天候を推定可能に構成された前記第1モデルが格納され、
前記プロセッサは、前記第1の計測値と前記第1モデルとに基づいて前記第1の天候情報を出力する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第1モデルは、複数の地区のそれぞれに配置されたにおいセンサによる計測値に基づいて前記複数の地区のそれぞれの天候を推定可能に構成され、
前記出力要求は、前記複数の地区から1以上の地区の指定を含み、
前記第1の計測値は、指定された前記地区に配置されたにおいセンサによる計測値であり、
前記第1の天候情報は、前記指定された前記地区の天候を示す、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記複数の地区に配置されたそれぞれのにおいセンサによる第2の計測値を取得し、
前記複数の地区のそれぞれに位置するユーザの情報端末から天候を示す第2の天候情報を取得し、
前記第2の計測値と前記第2の天候情報とに基づいて前記第1モデルを生成する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記複数の地区のうちの1つである第1の地区に位置する複数のユーザの情報端末から複数の第3の天候情報を取得した場合、前記複数の第3の天候情報から多数決によって前記第2の天候情報を選択する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記複数の第3の天候情報のうちの特定のユーザの情報端末からの第3の天候情報に重みを付けた重み付き多数決によって前記第2の天候情報を選択する、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記第3の天候情報の取得のタイミングと前記第2の計測値の取得のタイミングとの差分に応じた重み付き多数決によって前記第2の天候情報を選択する、
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項8】
メモリと、
地区に配置されたにおいセンサから第1の計測値を取得し、前記地区に位置するユーザの情報端末から天候を示す天候情報を取得し、前記第1の計測値と前記天候情報とに基づいて、前記第1の計測値に基づいて天候を推定可能に構成されたモデルを生成し、前記モデルを前記メモリに格納するプロセッサと、
を備える情報処理装置。
【請求項9】
地区に配置されたにおいセンサから第1の計測値を取得するステップと、
前記地区に位置するユーザの情報端末から天候を示す天候情報を取得するステップと、
前記第1の計測値と前記天候情報とに基づいて、前記第1の計測値に基づいて天候を推定可能に構成されたモデルを生成するステップと、
を備える情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、情報処理装置および情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気象観測データを用いて天候の予報を行う技術がある。ここで使用される気象観測データは、気圧データ、気温データ、湿度データ、風向データ、風速データ、降水量データ、または日射量データ、等である。また、雨雲の配置や動きを画像化した雨雲レーダの情報に基づき、時間ごとの降水確率を提供するサービスが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の天候の予報の精度や、雨雲レーダの情報による降水確率の推定の精度は、不十分であるという課題があった。
【0005】
本発明は、天候を精度良く推定することができる情報処理装置および情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる情報処理装置は、においセンサによる第1の計測値を取得し、ユーザの情報端末から送信された出力要求に応じて第1の計測値に対応した天候を示す第1の天候情報を出力するプロセッサを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、天候を精度良く推定することができる情報処理装置および情報処理方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、情報処理装置が適用されたシステムの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、サーバの構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、サーバの機能構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、データ格納部に格納された或る地区にかかる教師データセットのデータ構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、サーバにおける天候推定モデルの生成の動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、サーバにおける天候の推定の動作を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図5に示した一連の動作の際において各構成要素間で転送される情報を説明するための図である。
【
図8】
図8は、
図6に示した一連の動作の際において各構成要素間で転送される情報を説明するための図である。
【
図9】
図9は、サーバの機能構成の別の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、サーバの機能構成のさらに別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる情報処理装置および情報処理方法を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
(実施形態)
雨の降り始めにはペトリコールと称されるにおいが発生し、雨上がりにはゲオスミオンという匂い成分によるにおいが強まることが知られている。これらのにおいは降雨と直接の関係があるため、これらのにおいを検出できれば、雨雲レーダの情報や気象観測データに基づいて天候を推定する方法に比べて精度よく天候を推定できる。
【0011】
そこで、実施形態では、ゲオスミンの匂い成分によるにおいやペトリコールのにおいなどの天候と密接な関係を有するにおいがにおいセンサによって計測される。情報処理装置は、そのにおいセンサの計測値に基づいて天候を推定する。情報処理装置は、天候の推定には、においセンサの計測値から現在の天候を推定可能に構成されたトレーニング済みのモデルを使用する。
【0012】
以降では、においセンサによる計測値を、単に、センサデータと表記する。また、天候の推定に使用されるモデルを、天候推定モデルと表記する。また、天候推定モデルによって推定された天候を、推定天候と表記する。
【0013】
図1は、情報処理装置が適用されたシステムの一例を示す図である。
【0014】
複数の地区のそれぞれに1以上のにおいセンサ2aが配置される。各地区は、1つの県であってもよいし、県よりも小さいエリア(例えば市、区、町、または村)であってもよい。各地区は、都道府県や市区町村のいずれとも異なる、何らかの方法で区分された領域であってもよい。
【0015】
ここでは一例として、複数の地区として、地区A1~A3が示されている。そして、地区A1にはにおいセンサ2a-1が配置され、地区A2にはにおいセンサ2a-2、2a-3が配置され、地区A3にはにおいセンサ2a-4、2a-5、2a-6が配置される。
【0016】
各においセンサ2aは、無線または有線の通信路とネットワーク3とを介してサーバ1に接続される。それぞれの地区に配置されたにおいセンサ2aは、それが配置された位置でのにおいを計測し、計測によって得られたセンサデータをサーバ1に送信する。
【0017】
また、本システムは、ユーザが所有するにおいセンサを利用することも可能である。
図1に示す例では、地区A1に位置するユーザ5-1は、情報端末4-1およびにおいセンサ2bを所有している。においセンサ2bは、そのにおいセンサ2bの位置でのにおいを計測し、計測によって得られたセンサデータを出力する。においセンサ2bが出力したセンサデータは、情報端末4-1を介してサーバ1に送信される。
【0018】
配置された各においセンサ2aおよびユーザ所有のにおいセンサ2bを、においセンサ2と総称する。また、情報端末4-1および後述する情報端末4-2~4-6を、情報端末4と総称する。また、ユーザ5-1および後述するユーザ5-2~5-6をユーザ5と総称する。
【0019】
においセンサ2は、においセンサ素子を備える。においセンサ2は、においセンサ2の周辺の空気を取り込み、においセンサ素子はこの取り込んだ空気に曝露される。すると、においセンサ素子は、取り込んだ空気に含まれる特定のにおい成分の量を計測する。においセンサ素子としては、天候と密接な関係を有するにおいを構成するにおい成分と反応し、におい成分の量に応じた電気的信号を出力する素子が選択される。においセンサ2は、1つのセンサ素子を備えていてもよいし、それぞれ反応するにおい成分の種類が異なる2以上のセンサ素子を備えていてもよい。においセンサ2は、においセンサ素子によって得られたデータをセンサデータとして出力する。
【0020】
なお、においセンサ素子としては、QCM(Quartz Crystal Microbalance)型のセンサ素子、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)型のセンサ素子、FBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)型のセンサ素子、またはこれら以外の任意のセンサ素子が、採用され得る。
【0021】
サーバ1は、実施形態の情報処理装置の一例である。つまり、サーバ1は、センサデータを用いて天候を推定することができる。
【0022】
例えば、或るユーザ5-6が情報端末4-6を介してサーバ1に或る地区を指定して天候の出力を要求した場合、サーバ1は、指定された地区に配置されたにおいセンサ2bから事前にまたは要求に応じてセンサデータを取得する。そして、サーバ1は、取得したセンサデータに対応した天候、即ち推定天候、を示す天候情報を情報端末4-6に出力する。
【0023】
さらに、実施形態では、サーバ1は、天候の推定だけでなく、天候の推定に用いられる天候推定モデルを生成することができる。そのために、サーバ1は、天候推定モデルのトレーニングのための教師データを収集する。
【0024】
教師データは、少なくとも、センサデータと、正解データとしての天候情報と、の対を含む。正解データとは、例えば、地区に位置するユーザが、そのときの天候を入力した情報である。例えば、「晴れ」と入力する。他にも、「晴れ」の代わりに、「雨」や、「曇り」などと入力できる。正解データは、天候の回答と呼ぶこともある。サーバ1は、教師データとして使用するためのセンサデータを配置済みの各においセンサ2aおよびユーザ所有のにおいセンサ2bから取得することができる。
【0025】
当該センサデータの取得の際に、ユーザ5に情報端末4を介して現在の天候の入力を依頼する。サーバ1は、ユーザ5による天候の回答を受信すると、天候の回答とセンサデータとを関連づけて記憶する。
【0026】
例えば
図1によれば、地区A1には、情報端末4-1を携帯し、センサ2bを所有するユーザ5-1がいる。地区A2には、情報端末4-2を携帯するユーザ5-2と、情報端末4-3を携帯するユーザ5-3と、がいる。地区A3には、情報端末4-5を携帯するユーザ5-5がいる。サーバ1は、情報端末4-1~4-5に現在の天候の入力を依頼する天候入力依頼を送信する。そして、サーバ1は、情報端末4-1~4-5から天候の回答を受信する。
【0027】
サーバ1は、天候の回答とセンサデータとの対の収集を各地区について複数回、実行する。こうしてサーバ1はセンサデータと回答された天候との対を多数取得し、トレーニングに使用する。
【0028】
天候とセンサデータとの対に基づくトレーニングによって、センサデータと天候との間の関係が学習される。トレーニングによって最適化されたセンサデータと天候との間の関係に基づき、センサデータから当該センサデータに対応した天候を、推定天候として得ることが可能になる。
【0029】
なお、情報端末4は、情報の入力および出力が可能なコンピュータである。情報端末4は、スマートフォン、ウェアラブルデバイス、またはパーソナルコンピュータなどである。情報の入力は、キーボードやタッチパネルを介して実行される。情報の出力は、表示装置や音声出力装置を介して実行される。
【0030】
以降、ユーザから取得した天候情報を、単に、ユーザ回答、と表記する。
【0031】
【0032】
サーバ1は、コンピュータプログラムを実行可能な構成を備える。具体的には、サーバ1は、プロセッサ10、ネットワークインタフェース11、およびメモリ12を備える。
【0033】
ネットワークインタフェース11は、外部装置に対してネットワーク3を介した通信を行うためのインタフェース装置である。ここでは、においセンサ2および情報端末4が外部装置に該当する。
【0034】
プロセッサ10は、コンピュータプログラムに基づいて種々の演算を実行し得る回路である。プロセッサ10は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。
【0035】
メモリ12には、処理プログラム100が予め格納される。
【0036】
プロセッサ10は、処理プログラム100を実行することによって、教師データを収集したり、教師データに基づいて天候推定モデルを生成したり、生成した天候推定モデルを用いて天候を推定したりする機能を実現する。
【0037】
【0038】
サーバ1は、収集部101、データ格納部102、モデル生成部103、モデル格納部104、天候推定部105、および出力部106を備える。収集部101、モデル生成部103、および出力部106は、プロセッサ10が処理プログラム100を実行することによって実現される。データ格納部102およびモデル格納部104は、メモリ12によって実現される。
【0039】
収集部101は、教師データの収集を実行する。収集部101は、収集した教師データをデータ格納部102に格納する。収集部101は、教師データは地区毎に分類してデータ格納部102に格納する。つまり、データ格納部102には、地区A1にかかる教師データのセットである教師データセット200-A1と、地区A2にかかる教師データのセットである教師データセット200-A2と、地区A3にかかる教師データのセットである教師データセット200-A3と、が格納されている。
【0040】
教師データセット200-A1~200-A3を、教師データセット200と総称する。
【0041】
データ格納部102は、教師データセット200が格納される。データ格納部102は、単なる記憶領域であってもよいし、データベースであってもよい。
【0042】
モデル生成部103は、天候推定モデルを生成する。具体的には、モデル生成部103は、教師データセット200-A1を用いたトレーニングによって、地区A1の現在の天候を推定できる天候推定モデルである天候推定モデル300-A1を生成する。モデル生成部103は、教師データセット200-A2を用いたトレーニングによって、地区A2の現在の天候を推定できる天候推定モデルである天候推定モデル300-A2を生成する。モデル生成部103は、教師データセット200-A3を用いたトレーニングによって、地区A3の現在の天候を推定できる天候推定モデルである天候推定モデル300-A3を生成する。
【0043】
天候推定モデル300-A1~300-A3を、天候推定モデル300と総称する。
【0044】
天候推定モデル300は、一例では、ニューラルネットワークモデルである。天候推定モデル300がニューラルネットワークモデルである場合、天候推定モデル300は、少なくとも入力層と出力層とを備える。天候推定モデル300の入力層は、センサデータが入力可能とされる。天候推定モデル300の出力層は、入力層にセンサデータが入力されたとき、推定天候を示す天候情報を出力する。
【0045】
なお、天候推定モデル300は、必ずしも地区毎に生成されなくてもよい。天候推定モデル300は、センサデータに加えて地区を特定する情報が入力されると、その地区の推定天候を示す天候情報を出力することが可能に構成されていてもよい。
【0046】
また、少なくともセンサデータに基づいて推定天候を示す天候情報を取得可能に構成されている限り、天候推定モデル300の構成例は上記の構成に限定されない。
【0047】
モデル生成部103は、生成した天候推定モデル300をモデル格納部104に格納する。
【0048】
天候推定部105は、ユーザ5の情報端末4からの要求に応じて、推定天候を示す天候情報を取得する。天候推定部105は、推定天候を示す天候情報の取得のために、天候推定モデル300を使用する。
【0049】
出力部106は、要求を送信したユーザ5の情報端末4に天候推定部105によって取得された推定天候を示す天候情報を出力する。情報端末4では、受信した天候情報は、情報端末4の表示装置に画像情報として出力されてもよいし、情報端末4の音声出力装置から音声情報として出力されてもよい。
【0050】
図4は、データ格納部102に格納された或る地区にかかる教師データセット200のデータ構成例を示す図である。
【0051】
教師データセット200には、それぞれ異なるタイミングで収集されたユーザ天候とセンサデータとの対が多数、含まれている。
【0052】
なお、
図4に示した例では、においセンサ2はN個のセンサ素子を備えることとしている。よって、1つのセンサデータは、N個のセンサ素子による計測値Dx1~DxNを含む。「x」は「a」~「d」のいずれかである。この計測値Dx1~DxNは、においを計測したN個センサ素子が出力する電気的信号の値でもよいし、この出力信号を基準値で補正した値であってもよい。この出力信号または補正値を、においセンサ素子の周辺環境の温度または湿度、その他の環境センサの出力値で補正した値であってもよい。
【0053】
このように、教師データセット200は、晴れのときのセンサデータ、曇りのときのセンサデータ、雨のときのセンサデータ、など、多種の天候について、正解データとセンサデータとの対を含む。よって、この教師データセット200を用いることによって、センサデータから天候を推定することが可能な天候推定モデル300の生成が可能である。
【0054】
続いて、サーバ1を用いたシステムの動作の詳細を説明する。
【0055】
図5は、サーバ1における天候推定モデル300の生成の動作を示すフローチャートである。ここでは、モデル格納部104には既に天候推定モデル300が格納されており、その天候推定モデル300を新しい天候推定モデル300で更新する際の動作を説明する。
【0056】
収集部101は、各情報端末4に天候入力依頼を送信する(S101)。また、収集部101は、においの計測を要求する計測要求を各においセンサ2に送信する(S102)。
【0057】
S101の処理とS102の処理との順序はこれに限定されない。また、S101~S102の処理の後、S103~S104の処理と、S105~S106の処理と、は並行して実行される。
【0058】
S103では、収集部101は、情報端末4からユーザ回答および情報端末4の位置情報を取得する。情報端末4は、位置センサを含んでいる。情報端末4は、ユーザ5からユーザ回答が入力されると、位置センサによって位置情報を取得し、当該位置情報をユーザ回答に付してサーバ1に送信する。これによって、サーバ1は、ユーザ回答および情報端末4の位置情報を取得することができる。
【0059】
S104では、収集部101は、全ての情報端末4からのユーザ回答の取得が完了したか、またはタイムアウトしたかのどちらかが起こったか否かを判定する(S104)。S104の処理におけるタイムアウトとは、S101の処理の後から所定の時間が経過したことである。
【0060】
まだユーザ回答の取得が完了していない情報端末4が残っており、かつまだタイムアウトしていない場合(S104:No)、制御がS103に遷移する。
【0061】
S105では、収集部101は、においセンサ2からセンサデータを取得する。においセンサ2は、計測要求に応じてにおいの計測を行い、計測によって得られたセンサデータをサーバ1に送信する。これによって、サーバ1は、センサデータを取得することがきる。
【0062】
S106では、収集部101は、全てのにおいセンサ2からのセンサデータの取得が完了したか、またはタイムアウトしたかのどちらかが起こったか否かを判定する(S106)。S106の処理におけるタイムアウトとは、S102の処理の後から所定の時間が経過したことである。
【0063】
まだセンサデータの取得が完了していないにおいセンサ2が残っており、かつまだタイムアウトしていない場合(S106:No)、制御がS105に遷移する。
【0064】
全ての情報端末4からのユーザ回答の取得が完了したか、またはタイムアウトしたと判定され(S104:Yes)、かつ、全てのにおいセンサ2からのセンサデータの取得が完了したか、またはタイムアウトしたと判定された場合(S106:Yes)、収集部101は、ユーザ回答とセンサデータとを地区毎に選択する(S107)。そして、収集部101は、選択したユーザ回答とセンサデータとを関連付けてデータ格納部102に格納することを地区毎に実行する(S108)。
【0065】
例えば、
図1に示した地区A2には、ユーザ5およびにおいセンサ2aが複数存在する。収集部101は、地区A2に関して、複数存在するユーザ5から取得した複数のユーザ回答のうちから1つのユーザ回答と、複数存在するにおいセンサ2aから取得した複数のセンサデータのうちから1つのセンサデータと、を選択する。そして、収集部101は、選択したユーザ回答とセンサデータとを関連付けて教師データセット200-A2に加える。
【0066】
複数のユーザ回答のうちから1つのユーザ回答を選択する方法は特定の方法に限定されない。
【0067】
例えば、収集部101は、多数決によって1つのユーザ回答を選択してもよい。複数のユーザ回答に「晴れ」が最も多い場合には、収集部101は、1つのユーザ回答として「晴れ」を選択する。
【0068】
多数決としては、重み付き多数決が用いられてもよい。例えば、気象に対して造詣が深いユーザ5には、気象に関する知識が通常レベルのユーザ5に比べて大きな重みが与えられてもよい。
【0069】
また、収集部101は、センサデータの取得のタイミングとユーザ回答の取得のタイミングとの差に応じた重み付き多数決を実行してもよい。センサデータの取得のタイミングとユーザ回答の取得のタイミングとが大きく乖離している場合、センサデータの取得のタイミングとユーザ回答の取得のタイミングとの乖離が小さい場合に比べて、ユーザ回答の正解データとしての信頼性が劣る。よって、収集部101は、センサデータの取得のタイミングとユーザ回答の取得のタイミングとが小さいほど、重みを大きくする。これによって、信頼性が高い正解データを得ることができ、ひいてはトレーニングによって得られる天候推定モデル300の推定精度が向上する。
【0070】
また、複数存在するにおいセンサ2aから取得した複数のセンサデータのうちから1つのセンサデータを選択する方法は特定の方法に限定されない。
【0071】
また、サーバ1がにおいセンサ2aが配置された地区を知る方法は、特定の方法に限定されない。例えば、各においセンサ2aには固有IDが与えられている。また、各においセンサ2aが配置されたとき、配置された位置を示す位置情報が、固有IDと関連付けられてサーバ1に登録される。各においセンサ2は、センサデータをサーバ1に送信する際に、自身の固有IDを同送する。サーバ1は、センサデータと同送された固有IDに基づき、そのセンサデータの送信元のにおいセンサ2が配置された地区を特定することができる。
【0072】
なお、S107の処理によって選択され、その後S108の処理によってデータ格納部102に格納されたそれぞれのユーザ回答は、第2の天候情報の一例である。また、一つの地区に位置する複数のユーザ5から複数のユーザ回答が取得された場合、その複数のユーザ回答は、複数の第3の天候情報の一例である。
【0073】
S108の処理に続いて、モデル生成部103は、データ格納部102に格納された各地区の教師データセット200に基づいて各地区の天候推定モデル300を生成する(S109)。モデル生成部103は、モデル格納部104に格納されている各地区の天候推定モデル300を、S108の処理によって生成した各地区の天候推定モデル300で更新する(S110)。そして、天候推定モデル300の生成の動作が終了する。
【0074】
S101~S110の処理は、それぞれ異なる複数のタイミングで実行される。それぞれ異なる複数のタイミングは、所定時間間隔の複数のタイミングであってもよい。各地区の天候推定モデル300は、S101~S110の処理が実行される毎に更新される。
【0075】
なお、S109およびS110の処理は、S101~S108の処理とは非同期に実行されてもよい。例えば、S109およびS110の処理の実行の頻度は、S101~S108の処理の実行の頻度よりも低くてもよい。
【0076】
また、収集部101は、ユーザ回答とセンサデータとの対を取得する際に、教師データセット200を更新してもよい。具体的には、収集部101は、或る教師データセット200にユーザ回答とセンサデータとの第1の数の対を加えるとき、その教師データセット200に含まれている最も古い第1の数のユーザ回答とセンサデータとの対をその教師データセット200から削除してもよい。第1の数は、1以上である。
【0077】
上記した教師データセット200の更新は、モデル生成部103によって実行されてもよい。つまり、モデル生成部103は、或る地区から得られたユーザ回答とセンサデータとの複数の対のうちの、最新の第2の数の対のセットをその地区の教師データセット200として使用してもよい。第2の数は2以上である。
【0078】
図6は、サーバ1における天候の推定の動作を示すフローチャートである。
【0079】
前述したように、ユーザ5は、情報端末4を介して天候出力要求をサーバ1に送信することができる。天候出力要求は、現在の天候を知りたい1以上の地区の指定を含み得る。
【0080】
なお、ここでは、天候出力要求は1つの地区の指定を含むとして説明する。天候出力要求が複数の地区の指定を含む場合には、S202~S204は、地区の指定毎に実行される。
【0081】
サーバ1が情報端末4から或る地区の指定を含む天候出力要求を受信した場合(S201)、天候推定部105は、指定された地区のにおいセンサ2aからセンサデータを取得する(S202)。なお、
図6の説明において、S201の天候出力要求によって指定された地区を、対象地区、と表記する。
【0082】
続いて、天候推定部105は、取得したセンサデータを対象地区の天候推定モデル300に入力することによって、対象地区の推定天候を示す天候情報を取得する(S203)。
【0083】
出力部106は、天候推定部105が取得した対象地区の推定天候を示す天候情報を天候出力要求の送信元の情報端末4に出力する(S204)。そして、サーバ1における天候の推定の動作が終了する。
【0084】
なお、S204において出力される天候情報は、第1の天候情報の一例である。
【0085】
図7は、
図5に示した一連の動作の際において各構成要素間で転送される情報を説明するための図である。
【0086】
まず、サーバ1は、各情報端末4に天候入力依頼を送信する(S301)。また、サーバ1は、各においセンサ2aに計測要求を送信する(S302)。
【0087】
においセンサ2bを所有するユーザ5-1の情報端末4-1は、天候入力依頼に応じてにおいセンサ2bに計測要求を送信し(S303)、においセンサ2bからセンサデータを取得する。
【0088】
各情報端末4は、ユーザ5からの現在の天候の入力に応じてユーザ回答をサーバ1に送信する(S304)。なお、情報端末4-1は、ユーザ回答とともに、においセンサ2bから取得したセンサデータを送信する。
【0089】
また、各においセンサ2aは、センサデータを送信する(S305)。
【0090】
図8は、
図6に示した一連の動作の際において各構成要素間で転送される情報を説明するための図である。
【0091】
或るユーザ5の情報端末4がサーバ1に天候出力要求を送信すると(S401)、サーバ1は、天候出力要求によって指定された地区に配置されたにおいセンサ2aに、計測要求を送信する(S402)。
【0092】
サーバ1は、そのにおいセンサ2aからセンサデータを取得すると(S403)、推定天候を示す天候情報を取得する。そして、サーバ1は、その天候情報を情報端末4に出力する(S404)。
【0093】
なお、以上の説明では、サーバ1は、天候の推定に使用するためのセンサデータの取得を、天候出力要求の受信をトリガとして実行した。天候の推定に使用するためのセンサデータの取得のタイミングは、天候出力要求の受信のタイミングに応じたタイミングでなくてもよい。
【0094】
例えば、天候推定部105は、各地区のにおいセンサ2aから定期的にセンサデータを取得する。そして、天候出力要求を受信した場合、天候推定部105は、天候出力要求によって指定された地区のにおいセンサ2aから取得した最新のセンサデータを天候の推定に使用してもよい。
【0095】
また、サーバ1は天候の推定だけでなく天候推定モデル300の生成を実行する、として説明した。サーバ1は、天候推定モデル300を用いた天候の推定および天候推定モデル300の生成の一方のみを実行してもよい。
【0096】
図9は、サーバ1(サーバ1aと表記する)の機能構成の別の一例を示す図である。
【0097】
サーバ1aは、収集部101、データ格納部102、モデル生成部103、およびモデル格納部104を備える。収集部101およびモデル生成部103は、協働して、
図5および
図7に示した動作を実行する。
【0098】
図10は、サーバ1(サーバ1bと表記する)の機能構成のさらに別の一例を示す図である。
【0099】
サーバ1bは、モデル格納部104、天候推定部105、および出力部106を備える。天候推定部105および出力部106は、協働して、
図6および
図8に示した動作を実行する。
【0100】
このように、天候推定モデル300を生成する機能と、天候推定モデル300を用いて天候を推定する機能と、はそれぞれ異なる情報処理装置に実装されてもよい。
【0101】
以上述べたように、実施形態によれば、情報処理装置としてのサーバ1は、においセンサ2aによる値であるセンサデータを取得し、ユーザ5の情報端末4からの天候出力要求に応じて当該センサデータに対応した天候を示す天候情報を出力するプロセッサ10を備える。
【0102】
よって、天候と直接の関係があるにおいに基づく天候の推定が可能となるので、雨雲レーダの情報や気象観測データに基づいて天候を特定する方法に比べて精度よく天候を推定することが可能となる。
【0103】
また、実施形態によれば、メモリ12には、少なくともにおいセンサ2aによるセンサデータに基づいて現在の天候を推定可能に構成された天候推定モデル300が格納される。プロセッサ10は、においセンサ2aによるセンサデータと天候推定モデル300とに基づいて当該センサデータに対応した天候を示す天候情報を取得する。
【0104】
よって、雨雲レーダの情報や気象観測データに基づいて天候を特定する方法に比べて精度よく天候を推定することが可能となる。
【0105】
また、実施形態によれば、天候推定モデル300(より正確には天候推定モデル300-A1~300-A3の群)は、複数の地区のそれぞれのにおいセンサ2aによるセンサデータに基づいて当該複数の地域のそれぞれの現在の天候を推定可能に構成される。天候出力要求は、地区の指定を含む。プロセッサ10は、指定された地区のにおいセンサ2aによるセンサデータを取得し、当該センサデータに基づいて、指定された地区の現在の天候を推定する。
【0106】
よって、ユーザ5は、遠隔地の現在の天候を知ることが可能となる。
【0107】
また、実施形態によれば、プロセッサ10は、複数の地区のそれぞれのにおいセンサ2aからセンサデータを取得し、複数の地区のそれぞれに位置するユーザ5の情報端末4から現在の天候を示す天候情報を取得する。プロセッサ10は、複数の地区のそれぞれのにおいセンサ2aから取得したセンサデータと、複数の地区のそれぞれに位置するユーザ5の情報端末4から現在の天候を示す天候情報と、に基づいて天候推定モデル300を生成する。
【0108】
よって、地区毎の現在の天候を推定することが可能となる。
【0109】
また、実施形態によれば、プロセッサ10は、1つの地区に位置する複数のユーザ5の情報端末4から複数のユーザ回答を取得した場合、複数のユーザ回答から多数決によって正解データとしての天候を選択する。
【0110】
なお、プロセッサ10は、特定のユーザ5、例えば気象に対して造詣が深いユーザ5の情報端末4からのユーザ回答に重みを付けた重み付き多数決によって正解データとしての天候を選択してもよい。
【0111】
また、プロセッサ10は、ユーザ回答の取得のタイミングとセンサデータの取得のタイミングとの差分に応じた重み付き多数決によって正解データとしての天候を選択してもよい。
【0112】
また、実施形態によれば、情報処理装置としてのサーバ1aは、地区のにおいセンサ2からセンサデータを取得し、当該地区に位置するユーザ5の情報端末4から現在の天候を示すユーザ回答を取得し、取得したセンサデータとユーザ回答とに基づいて、現在の天候を推定可能に構成された天候推定モデル300を生成する、プロセッサ10を備える。天候推定モデル300は、においセンサ2による計測値に基づいて、現在の天候を推定する。
【0113】
よって、天候と直接の関係があるにおいに基づく天候の推定が可能となるので、雨雲レーダの情報や気象観測データに基づいて天候を特定する方法に比べて精度よく天候を推定することが可能となる。
【0114】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0115】
1,1a,1b サーバ、2,2a,2a-1~2a-6,2b においセンサ、3 ネットワーク、4,4-1~4-6 情報端末、5,5-1~5-6 ユーザ、10 プロセッサ、11 ネットワークインタフェース、12 メモリ、100 処理プログラム、101 収集部、102 データ格納部、103 モデル生成部、104 モデル格納部、105 天候推定部、106 出力部、200,200-A1~200-A3 教師データセット、300,300-A1~300-A3 天候推定モデル、A1~A3 地区。